食べ物にまつわることわざとして「粟(あわ)一粒は汗一粒」がある。小さな粟の粒でも、作り出すのには農家の汗が流されている。農家の苦労に思いを致し、食べ物を粗末にしないようにとの教えだ。まだ食べられるのに廃棄される食品ロスの削減が社会課題となる中、心に留めておきたい言葉だろう▼そんな昔ながらのことわざが案外、高齢世帯ほど縁遠くなっているのかもしれない。立命館大などのチームが今秋発表した研究成果に、そんなことを思った。家庭から出る食品ロスは、世帯主の年代が高くなるほど1人当たりの量が多くなることが分かった▼各種のデータを基に2015年に家庭から出た食品ロスの量を世代ごとに推計した。世帯主の年代別に1人当たりの食品ロス量を見ると、最多は70歳以上で46・0キロだった一方、最少は29歳以下で16・6キロ。その差は約2・8倍だった▼高齢世帯は外食の頻度が少ないことが食品ロスが増える理由の一つのようだ。その分、自炊することが多いためだ▼それに加え、魚など傷みやすい生鮮品の購入が多いことや、野菜の皮を厚くむきすぎるといった過剰除去になりがちなことも要因とみられる▼食卓に並ぶ食べ物の大半は、生産や加工、流通の過程で幾多の人々の働きがあったからこその“たまもの”だろう。その苦労を忘れずロスをなくしたい。