2021年9月に誕生した新進気鋭の中国のゲームメーカーSPARK NEXA(スパークネクサ)。同社は夢をテーマにしたスマートフォン向けローグライクアクションアドベンチャー『プロジェクト夢遊』と、『三国志演義』の世界が楽しめるシミュレーションRPG『神州の戦:三国編』を開発中だ。
『プロジェクト夢遊』では、プレイヤーは“捕夢者”となり、無秩序な夢の大陸を仲間と冒険。“夢霊”と呼ばれるキャラクターを捕らえて契約を結び、夢の中の怪物を討伐していく。その中で、それぞれの大陸に眠っている秘密を探し出し、真実を解き明かしていく物語が楽しめる。日本国内では、2025年の後半にリリースを予定している。
一方の『神州の戦:三国編』は、中国の古典的名作『三国志演義』を各武将の視点で楽しめる、水墨画のビジュアルが印象的なタイトル。個性豊かな兵科を使った戦略や戦術、さまざまな策略奇謀(猛火計・洪水計・機関罠)を用いた戦略性の高いバトルが特徴。また、戦闘の間には自由に探索できるマップも登場し、戦闘と探索を組み合わせることで、より完璧な『三国志演義』の世界を体験できる。
そんな『プロジェクト夢遊』と『神州の戦:三国編』について、2タイトルのプロデューサーへのインタビューや実際に遊んでみたレビューで、その魅力に迫っていく。
陳彦江氏(上)(チェン イェンジャン)
『プロジェクト夢遊』プロデューサー。SPARK NEXAに所属する前は、中国の大手ゲーム会社・NetEaseで活躍した経歴を持つ。
方経緯氏(下)(ファン ジンウェイ)
『神州の戦:三国編』プロデューサー。ゲーム業界歴は18年で、過去にNetEaseで西遊記をモチーフにしたタイトルを中国国内で制作。
※この記事はSPARK NEXAの提供でお届けします。『プロジェクト夢遊』インタビュー:いまの若者が抱える問題を、夢をテーマに描く
――まずは、SPARK NEXAがどのような会社なのか教えてください。
チェン
私たちSPARK NEXAは、設立3年目を迎えた若い会社です。若い会社ではありますが、さまざまなゲーム会社からメンバーが集められていまして、たとえば会社の創設者や私は、NetEase出身です。このように各ゲーム会社で経験を積んだクリエイターが集結し、自分たちの作りたいゲームを存分に制作できる環境が整っています。そんな我々が初めて制作するタイトルが、本作『プロジェクト夢遊』です。
――では改めて、本作がどのようなタイトルか教えてください。
チェン
『プロジェクト夢遊』は、夢をテーマにしたローグライクゲームです。もともと、ローグライクのゲームを作りたいという思いから本作の企画を立ち上げました。その中で、夢というのはいろいろな形がありますので、ローグライクジャンルにふさわしいテーマであると考え、本作に取り入れることにしました。物語も相当作り込まれています。
――ローグライクというジャンルにこだわりがあるのですか?
チェン
はい。開発チームはローグライクを愛するメンバーが多数在籍していますので、このジャンルのゲームを作ることはスムーズに決まりました。
我々は、ローグライクのおもしろいところは、ランダム要素がある中で、少しずつ自身を強化していくことだと考えます。決まったステージを攻略していくのではないので、プレイをするたびにさまざまな遊びかたができるのが魅力です。
本作では、夢というテーマのもと、このローグライクのおもしろさを存分に表現しています。とあるチャプターでは、深海の夢が登場します。ここでキャラクターを強化していくと、船舶を召喚するスキルなどを習得できます。このスキルなどを通じて、深海の夢に囚われている人々を救う遊びが楽しめます。
ほかには、お金の夢というものがあります。この夢では、お金をばら撒くスキルが登場します。このように、さまざまな夢が登場し、そこで夢に関連するユニークなスキルを習得できますので、多彩な遊びかたで本作を楽しめます。
――夢をモチーフにしたステージが登場して、それに関連した遊びが用意されているのですね。
チェン
そうです。現時点では、5つの夢のステージが登場する予定です。先ほどお話しした深海の夢のほか、お金、社畜、童話などの夢がステージとして登場します。
――お金や社畜などを夢のモチーフにしているのですね。
チェン
はい。いまの若者が理解しやすく、かつ共感できるものを選定し、物語を描きたかったからです。
たとえば、童話の夢の中では、中国では子どもにきびしい教育を行って、子どもの心が抑制されてしまっている、という社会問題を取り上げて描いています。ほかには、ネット上での誹謗中傷なども大きな問題となっていますが、そうした、中国の若者が抱えている問題を夢として作り上げて、物語を描いています。そうすることで、おもなプレイ層となるであろう若いプレイヤーに共感してもらえる物語を作ることを大事にしています。
――キャラクターも夢をモチーフにしているそうですが、外見からも非常に個性が溢れていますね。
チェン
ありがとうございます! キャラクターのビジュアルは我々がとくに大事にしている点です。おっしゃる通り、それぞれ夢をモチーフにしていますが、たとえば残業で苦労している社畜の夢がテーマの場合、目の下のクマが印象的なキャラクターが登場します。また、深海の夢に関連するキャラクターとして、海賊船の船長のような人物などもお目見えします。
――ユニークですね。
チェン
当然、キャラクターごとに攻撃方法は異なり、近接攻撃、遠距離攻撃など、得意とする戦闘方法は各キャラクターで決められています。弾幕攻撃のような豪快な遠距離攻撃が可能なキャラクターが登場したり、それぞれユニークなアクションを用意していますので、そこも注目していただきたいです。もちろん、キャラクターボイスは日本語に対応しています。なお、キャラクターはリリース時には40人ほど登場する予定です、
――日本でのリリース時期は決まっているのですか?
チェン
日本では、2025年の後半ころになるかと思います。中国では、2024年の年末にリリース予定です。
――それでは最後に、本作に期待している日本の方にメッセージをお願いします。
チェン
我々が大好きなローグライクというジャンルをとことん突き詰めました。ユニークな夢というテーマとともに、ぜひ日本の皆さんにも楽しんでいただけたらうれしいです。
『プロジェクト夢遊』レビュー:多彩な攻撃手段を持つ“夢霊”たちによる爽快アクションがウリ
『プロジェクト夢遊』のゲーム内容としては、見下ろし型のダンジョン探索RPGとなっている。多彩な夢をモチーフとしたキャラクター“夢霊”を操作して、迫りくる敵キャラクターを撃退しながらダンジョンの深層へと潜っていくのが目的だ。
今回のインタビューに際し、開発チームによる実際のプレイ映像を見させてもらったのだが、非常に個性的な“夢霊”の戦闘姿がとにかく印象的だった。
マジシャンのような姿の“夢霊”は、瞬間移動のスキルを駆使しながらトランプのカードを弾幕のように敵に浴びせたり、ギターリストのような“夢霊”は、ギターで音楽を演奏して周囲の敵にダメ―ジを与えたり、ダメージが発生するエリアを生成して継続的な攻撃を可能にしたりするなど、“夢霊”の特徴に合わせて多彩な攻撃方法が存在しているのがおもしろかった。
ボス戦の様子。画面いっぱいに敵の攻撃が発生しているが、事前に予兆範囲が表示されるので、慌てる必要はなさそうだ。
戦闘で敵がドロップするアイテムを集めていくと“夢霊”がレベルアップ。その際、3つのスキルからひとつを選択可能。攻撃力をアップさせるようなパッシブスキルのほか、さらなる攻撃手段を追加するものも存在。どのスキルが登場するかはランダムなので、スキルの組み合わせは無限大。ハクスラ的な魅力も味わえる。
ダンジョン攻略中は複数の“夢霊”を切り替えることができるとのこと。お気に入りの“夢霊”たちでの攻略や、ダンジョン内に登場する敵に合った“夢霊”のパーティーなど、ユーザーによってパーティー編成の幅が広がりそうだ。
キャラクターボイスは日本語に対応予定。各ダンジョンで描かれる“夢霊”が織り成す物語にも力が入れられているとのことなので、大いに期待が高まるところだ。
『神州の戦:三国編』インタビュー:日本の偉大な三国志ゲームに匹敵する作品を作りたいとの想いに突き動かされて
――『神州の戦:三国編』がどのようなタイトルなのか教えてください。
ファン
本作は、三国志をテーマにしたシミュレーションRPGです。曹操や劉備の生き様を描いた物語など、歴史上のさまざまな戦いを楽しめる作品です。
――本作の開発の経緯を教えてください。
ファン
まず、約30年前から中国のゲーマーは日本で作られた三国志のゲームを遊んで育ってきました。ですがここ最近、三国志の作品の新作が少なくなっているように感じます。
ですので、我々中国人としては、往年の日本の三国志ゲームのような素晴らしい作品に匹敵するゲームを作りたいという想いを抱いていました。
また、スマートフォンゲームにおいて、中国市場では三国志のシミュレーションゲームはまだ世の中には存在しておらず、可能性を感じていましたので、本作を制作する運びとなりました。
――曹操や劉備たちの物語が楽しめるとのことですが、三国志に登場するすべての武将の物語を楽しめるようになっているのでしょうか?
ファン
ゲームリリース時には全武将の物語は実装されていませんが、プレイヤーさんの反応を見て、たとえば諸葛亮や袁紹、馬超など、著名な武将の物語を作ることは可能です。武将視点からステージやストーリーを作っていますので、日本の大河ドラマを見てるのような体験を提供できるように努力しています。
――戦闘システムについて、本作ではキャラクターどうしで敵を挟み込んで攻撃すると強力な攻撃が発動できたり、ターンを巻き戻せる能力が登場していたり、戦場のキャラクターにバフを与えたりする固有の戦略のシステムなどが登場します。戦略性を高めるにあたって大事にした点などはありますか?
ファン
戦略性の高いバトルというのは、制作においてとても大事にした点です。本作は歴史上の戦いを追体験できる作品ですので、実際に用いられた火計や、孫子の兵法などを実際に戦場で行えるようにしています。これらはひとつの戦いで使用できる回数は限られていますが、適切なタイミングで使用することで戦況を大きく変えることができます。これらのシステムを通じて、戦略性を担保しています。
――戦闘のほかに、三国志の世界を探索できる遊びなどは登場しますか?
ファン
本作はシミュレーションRPGですので、日本のRPGも参考にしながら自由に探索できる世界も作っています。たとえば、中国の伝統的な切紙をモチーフにしたマップが登場しまして、ユーザーはそこに入って散策できます。三国志の世界を存分に楽しめる要素が登場しますので、ぜひご期待いただければと思います。
――本作のビジュアルについて、水墨画のようなテイストの味わい深い仕上がりになっていますが、ビジュアルについてのこだわりなどがありましたらお聞かせください。
ファン
私たちがリスペクトする作品に、『三國志11』があります。本作は発売から18年ほどが経過しましたが、中国国内には熱狂的ファンが存在しています。この『三國志11』は、シリーズで唯一、水墨画を採用した作品だと思います。私も、当時はとても魅了されました。
ですので、私たちも、自分たちが作る三国志のゲームには水墨画を採用したいと考えました。
――ファンさん自身も、日本の三国志のゲームに多大な影響を受けているのですね。
ファン
はい。私はもちろん、中国のゲーマーはみんな、さまざまな日本の三国志ゲームに親しんできました。先ほど挙げたコーエーテクモゲームスさんの『三國志』や『真・三國無双』シリーズなどですね。
一方で、たくさん偉大な作品があるがゆえに、中国では、日本の素晴らしい三国志のゲームを超えるものはなかなか作れないという風潮がありました。
ですので、我々としても、三国志のゲームを作ることは怖くて、なかなかその第一歩を踏み出すことはできませんでした。ただ、長いあいだゲームを作り続けてきたので、今度は自分の好きな三国志のゲームを作りたいという気持ちがあり、本作で挑戦してみることにしました。
そうして開発中の本作では、憧れの水墨画のビジュアルを始め、歴史上の戦いを追体験できる戦闘、自由な探索要素など魅力が盛りだくさんですので、ぜひ楽しんでいただきたいです!
――ちなみに、ファンさんお気に入りの武将などはいますか?
ファン
曹操ですね。一般的に、劉備はゼロから自身の帝国を作ってきたということもあり、成功者のようなイメージで、尊敬されていますよね。ですが、私からすると、曹操のほうが劉備より難しい人生を歩んだと感じています。周囲が敵だらけという中で才能を発揮して魏の創始者となりました。そして、曹操がいたからこそ、三国志の運命が決定したとも思います。ですので、私は彼の生き様をとても尊敬しています。
――日本でのリリース時期は決まっていますか?
ファン
中国では2025年にリリース予定ですので、日本では2026年にリリースできたらうれしいですね。
――対応機種はPCとスマートフォンですが、今後、家庭用ゲーム機への対応などは考えていますか?
ファン
私たちはプレイステーションハードにも親しんでいます。リリース時はPCとスマートフォンで快適に遊んでいただけるように整えますが、その後はプレイステーションハードでのリリースについても検討したいと思います。
――最後に、本作に期待している日本のファンにメッセージをお願いします。
ファン
我々中国のゲーマーは、日本のクリエイターさんが作ってきた三国志のゲームに魅了されてきました。本作では、影響を受けた作品をリスペクトして、我々の表現したい三国志のゲームを存分に作っています。まずは中国国内のファンに楽しんでもらえる作品を目指し、そこからクオリティーをアップさせて、日本のゲーマーさんにも納得いただける作品にできればと思いますので、今後の展開をぜひご期待いただければうれしいです。
『神州の戦:三国編』レビュー:水墨画で描かれた三国志の世界は、まるで歴史絵巻に入り込んだかのような味わい
『神州の戦:三国編』は、大河ドラマのようなドラマティックな歴史体験を目指したシミュレーションRPG。リリース時には、曹操と劉備、ふたりの君主の物語をメインストーリーとして楽しめる。後のアップデートでは、呂布や袁紹などの物語を短いストーリーとして実装予定とのこと。
本作の流れとしては、舞台劇スタイルでメインストーリーを表現した後、物語上に登場する街を探索。このとき、出会った武将との交流が楽しめるほか、場合によってはサブミッションに挑戦できるようだ。メインストーリーや、探索時などの街中の光景は水墨画で描かれており、まるで歴史絵巻の中に引き込まれるような感覚で、壮大な三国志の物語を楽しめるのが魅力的だと思う。
ストーリー中に挿入されるカットシーンイラスト。歴史画のようなテイストによって、三国志世界への没入感をさらに高めてくれる。
街を探索した後はバトルへ。内容としてはオーソドックスなシミュレーションRPGとなっており、武将を駒のように動かしながら敵陣へと攻め込んでいく。特徴的なのは、味方武将どうしで敵を挟み込んだ際などに発生する“合わせ攻撃”。通常攻撃はもちろん、スキルや大技まで仲間と“合わせ攻撃”を行える。強力な武将でどんどん敵陣に切り込んでいくか、それとも仲間と足並みを揃えながら進行していくか。多彩な戦略が味わえる。
また、戦闘中に限られた回数ではあるが、火計、水計といった計略を発動可能。使いかた次第で戦況を大きく変えることができるので、使いどころを見極めることが重要。そのほか、近年のシミュレーションRPGでよく見かける、時間を巻き戻せるシステムも搭載。シミュレーションRPG初心者でも安心して遊べるのはうれしいところだ。
武将たちの育成要素については、武将それぞれに職業システムが存在しており、好みの職種に成長させることが可能。特定の職業に昇進後は、ゲーム内で獲得できる資源などを与えることで、一層武将たちを強く強化できる模様。奥深い育成要素も本作の魅力だ。
そのほか、現時点では詳細が明らかになっていないが、PvPモードも存在するとか。自分好みに鍛え上げた武将たちで軍を形成し、ほかのプレイヤーとしのぎを削る対戦要素は白熱しそうな予感だ。
日本での対応時期は、インタビューによると「2026年にリリースできたら」とのこと。現時点でも、水墨画タッチで描かれる物語と、戦略性の高いバトル、奥深い育成要素によって、三国志の壮大な歴史と戦いを存分に体感できる仕上がりになっているため、日本の三国志ゲームファンにもきっと受け入れられることだろう。