JPWO2005012369A1 - 吸水性樹脂の製造方法 - Google Patents

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Abstract

架橋剤の存在下、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる工程を有する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体の重合を、さらに乳酸および/またはその塩を存在させて行うことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法、当該製造方法により得られる吸水性樹脂、並びに当該吸水性樹脂を含んでなる衛生材料。

Description

本発明は、吸水性樹脂の製造方法に関する。さらに詳しくは、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料等の分野に好適に使用され得る吸水性樹脂の製造方法に関する。
従来、吸水性樹脂は、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ケーブル用止水剤等の工業材料等に幅広く用いられている。
吸水性樹脂としては、例えば、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の中和物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物等が知られている。
これらの吸水性樹脂は、一般的に、大気圧より高い圧力が負荷された条件下での吸水量(以下、加圧下吸水量という)は高いものの、大気圧下での吸水量(以下、無加圧下吸水量という)は不充分である。そのため、近年、ニーズが高まってきている大人用の紙おむつ等に、これらの吸水性樹脂を用いた場合には、無加圧下吸水量が低く、充分な吸収性能を発揮させることができない。
無加圧下吸水量および加圧下吸水量に優れた吸水剤の製造方法としては、例えば、カルボキシル基を有する吸水性樹脂に、水性液に溶解し得る無機酸または有機酸と、カルボキシル基と反応し得る架橋剤を混合する方法等が知られている(例えば、特開平7−278225号公報参照)。
しかしながら、かかる吸水剤の製造方法によって得られた吸水剤の無加圧下吸水量および加圧下吸水量は、実用面から未だ不充分である。
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、無加圧下吸水量および加圧下吸水量が共に優れ、衛生材料等に好適に使用され得る吸水性樹脂の製造方法を提供することを課題とする。
すなわち、本発明は、
〔1〕 架橋剤の存在下、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる工程を有する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体の重合を、さらに乳酸および/またはその塩を存在させて行うことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法、
〔2〕 乳酸および/またはその塩の使用量が、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、0.0001〜0.1モルである前記〔1〕記載の吸水性樹脂の製造方法、
〔3〕 重合を、水溶液重合法または逆相懸濁重合法により行う前記〔1〕または〔2〕記載の吸水性樹脂の製造方法、
〔4〕 前記〔1〕〜〔3〕いずれかに記載の吸水性樹脂の製造方法により得られる吸水性樹脂、並びに
〔5〕 前記〔4〕に記載の吸水性樹脂を含んでなる衛生材料、
に関する。
本発明によれば、無加圧下吸水量および加圧下吸水量が共に優れ、衛生材料等に好適に使用され得る吸水性樹脂を効率的に製造することができる。
第1図は、加圧下吸水量を測定する際に用いられた測定装置Xの概略説明図である。図中、Xは測定装置、1は電子天秤、2はボトル、3は空気吸入管、4は導管、5はガラスフィルター、6は測定部、7はコンピュータ、8は生理食塩水、9は吸水性樹脂、60は円筒、61はナイロンメッシュ、62は重り、をそれぞれ示す。
本発明の吸水性樹脂の製造方法は、架橋剤の存在下、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる工程を有する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体の重合反応を、さらに乳酸および/またはその塩を存在させて行うことを大きな特徴の1つとする。かかる構成を有することから、本発明によれば、無加圧下吸水量および加圧下吸水量が共に優れた吸水性樹脂を効率的に製造することができる。
なお、本明細書において、単に吸水量という場合、無加圧下吸水量と加圧下吸水量の両者を意味する。吸水性樹脂の重量をいう場合、特段の事情がない限り、乾燥重量をいう。乾燥重量とは、吸水性樹脂を105℃で2時間乾燥させた後の該樹脂の重量(g)をいう。
本発明に用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体における「水溶性」とは、該単量体が水に溶解する性質をいい、水に溶解するのであればその溶解温度とは無関係である。また、該単量体としては、重合性のエチレン基を有する化合物であれば、特に限定されるものではない。
該単量体としては、具体的に、例えば、(メタ)アクリル酸〔「(メタ)アクリ」とは「アクリ」および「メタクリ」を意味する。以下同じ〕、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸またはそれらのアルカリ金属塩;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のノニオン性単量体;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有不飽和単量体またはそれらの四級化物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、アルカリ金属塩におけるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、吸水量に優れ、経済的である観点から、中でもナトリウムおよび/またはカリウムが好ましい。
前記水溶性エチレン性不飽和単量体のうち好ましいものとしては、工業的に入手が容易な点で、アクリル酸またはそのアルカリ金属塩、メタクリル酸またはそのアルカリ金属塩、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびN,N−ジメチルアクリルアミドが挙げられる。
前記水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常、水溶液として用いるのが好適である。水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液(以下、単量体水溶液という)における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度は、25重量%〜飽和濃度であることが好ましい。使用される水は、特に限定されるものではなく、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
前記単量体水溶液は、用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体が酸基を含む場合、その酸基をアルカリ金属によって中和して用いてもよい。前記アルカリ金属による中和度は、得られる吸水性樹脂の浸透圧を高くし、吸水速度を高める一方、余剰のアルカリ金属の存在により安全性等に問題が生じないようにする観点から、中和前の水溶性エチレン性不飽和単量体の酸基の10〜100モル%であることが好ましい。前記アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。これらの中では、ナトリウムおよび/またはカリウムが好ましい。酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属を含有する化合物の水溶液を前記単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。アルカリ金属を含有する化合物の水溶液中の該化合物の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、20〜50重量%程度である。
なお、単量体としては、本発明の所望の効果の発現が阻害されない限り、水溶性エチレン性不飽和単量体以外の水溶性単量体が一部使用されてもよい。かかる水溶性単量体は、例えば、前記単量体水溶液に混合して用いることができる。
前記単量体を重合させる方法としては、特に限定されないが、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂の吸水性能の確保や重合反応の制御の容易性の観点から、水溶液重合法または逆相懸濁重合法が、とりわけ逆相懸濁重合法が好ましい。なお、これらの重合法の詳細については、例えば、特開昭56−13160号公報を参照のこと。
以下においては、前記水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明するが、重合方法はこれに限定されるものではない。
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤および/または高分子保護コロイドを含む炭化水素系溶媒中で単量体水溶液を分散し、架橋剤の存在下に水溶性ラジカル重合開始剤等を用いて水溶性エチレン性不飽和単量体の重合が行われる。そして、本発明の吸水性樹脂の製造方法においては、該単量体の重合を、さらに乳酸および/またはその塩を存在させて行う。なお、当該反応系には、さらに、遷移金属を含む化合物や連鎖移動剤等のその他の成分が含まれていてもよい。
重合反応の際に使用される界面活性剤、高分子保護コロイド、架橋剤、炭化水素系溶媒、水溶性ラジカル重合開始剤、その他の成分等は、特に限定されるものではなく、逆相懸濁重合法において、通常使用されうるものを用いればよい。
本発明に用いられる界面活性剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン系界面活性剤;脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩等のアニオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中では、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、およびショ糖脂肪酸エステルが好ましい。
本発明に用いられる高分子保護コロイドとしては、例えば、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレンオキサイド、無水マレイン化ポリエチレン、無水マレイン化ポリブタジエン、無水マレイン化EPDM(エチレン/プロピレン/ジエン/ターポリマー)等が挙げられる。
前記界面活性剤および/または高分子保護コロイドの量は、水溶性エチレン性不飽和単量体の水溶液100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、0.2〜3重量部がより好ましい。両者を用いる場合の両者の混合比は特に限定されるものではない。
前記水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化ベンゾイル、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ化合物等が挙げられる。また、水溶性ラジカル重合開始剤と亜硫酸塩等とを併用してレドックス系重合開始剤として用いることができる。これらの中では、入手が容易で保存安定性が良好である観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ベンゾイルおよび2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩が好ましい。
前記水溶性ラジカル重合開始剤の量は、重合反応の時間を短縮し、急激な重合反応を防ぐ観点から、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005〜0.01モルが好ましい。
前記炭化水素系溶媒としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン、リグロイン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等を挙げることができる。これらの中では、工業的に入手が容易で、品質が安定し、かつ安価であることから、n−ヘキサン、n−ヘプタン、およびシクロヘキサンが好ましい。
前記炭化水素系溶媒の量は、重合熱を除去し、重合温度を制御しやすくする観点から、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、50〜600重量部が好ましく、100〜550重量部がさらに好ましい。
本発明に用いられる架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;前記ポリオール類とマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N’’−トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル〔(ポリ)とは、「ポリ」の接頭語がある場合と無い場合とを意味する。以下同じ。〕、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の、反応性官能基を2個以上有する化合物等が挙げられる。
前記架橋剤の量は、得られる重合体が適度な架橋により水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量を示すようにするために、前記水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、0.00001〜0.01モルであることが好ましい。
本発明で用いられる乳酸および/またはその塩としては、例えば、乳酸、乳酸銀、乳酸マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム等が挙げられる。前記乳酸またはその塩のうち、工業的に入手が容易で安価である点で、乳酸が好ましく用いられる。
乳酸および/またはその塩の使用量は、前記水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して、好ましくは0.0001〜0.1モル、より好ましくは0.0001〜0.05モル、さらに好ましくは0.001〜0.02モルである。乳酸および/またはその塩の使用量が0.0001モル以上であれば、充分に乳酸および/またはその塩の添加効果が得られ、一方、乳酸および/またはその塩の使用量が0.1モル以下であれば、無加圧下吸水量および加圧下吸水量が共に優れた樹脂が得られ望ましい。
前記単量体水溶液、界面活性剤および/または高分子保護コロイド、水溶性ラジカル重合開始剤等、乳酸および/またはその塩、架橋剤、および所望によりその他の成分と、炭化水素系溶媒とを混合して、攪拌下で加熱し、油中水系において、逆相懸濁重合を行う。各成分の添加順序等は適宜調整でき、特に限定されるものではないが、例えば、界面活性剤および/または高分子保護コロイドと炭化水素系溶媒とを、また、水溶性ラジカル重合開始剤、乳酸および/またはその塩、架橋剤、および所望によりその他の成分と単量体水溶液とを、予めそれぞれ混合しておき、それぞれで得られる混合液を混合して、重合を開始するのが好適である。また、単量体水溶液を複数回に分割して添加する多段重合法であってもよい。得られる吸水性樹脂の平均粒径および吸水量の制御が容易である観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合は、多段重合法により行うのが好ましい。なお、多段重合法により重合を行う場合、上記各成分の好適な使用量範囲は各段に使用した各成分の合計量に基づく。
重合反応の反応温度は、使用する水溶性ラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20〜110℃が好ましく、40〜90℃がより好ましく、40〜80℃がさらに好ましい。反応時間は、通常、好ましくは0.5〜4時間である。なお、重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止を確認することにより確認することができる。これにより、吸水性樹脂は、通常、含水ゲルの状態で得られる。
重合反応終了後、得られた含水ゲルを、例えば、減圧乾燥機、熱風乾燥機等を用いて乾燥することにより、本発明の吸水性樹脂が得られる。
得られる吸水性樹脂の形状は、特に限定されるものではないが、吸水性能の向上の観点から、該樹脂の平均粒径としては、好ましくは200〜600μmである。平均粒径は、例えば、ロータップ式篩振動器によって篩分けする方法により測定することができる。
本発明において、乳酸および/またはその塩の存在下に、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させて得られる吸水性樹脂が、無加圧下吸水量および加圧下吸水量に共に優れる機構については定かではないが以下のように推測される。通常、加圧下吸水量の優れた吸水性樹脂を得ようとする場合、架橋剤の使用量を多くして架橋密度を高くする必要があるが、架橋剤の使用量を多くすると、得られる吸水性樹脂の無加圧下吸水量が低下する。しかしながら、乳酸および/またはその塩の存在下に重合反応を行うことによって、架橋剤の使用量を多くすることなく、適度に架橋密度を高くすることができるようになり、無加圧下吸水量および加圧下吸水量が共に優れた吸水性樹脂が得られるものと推測される。乳酸および/またはその塩による吸水性樹脂の微細構造に対する影響は未だ不明であり、該樹脂を、その構造により定義付けることは困難であるが、後述の実施例に示すように、本発明により得られる吸水性樹脂の無加圧下吸水量および加圧下吸水量は、従来のものに比し明らかに優れる。
以上の吸水性樹脂にカルボキシル基が存在する場合、カルボキシル基と反応性を有する官能基を2個以上含有する架橋剤を用いて後架橋処理(表面架橋処理)を施しておくのが、ゲル強度や加圧下吸水量の向上という観点から好ましい。
後架橋剤としては、吸水性樹脂中のカルボキシル基と反応し得るものであればよく、例えば、前記架橋剤と同様のものを用いることができる。
用いる後架橋剤の量は、後架橋前の吸水性樹脂の無加圧下吸水量や使用する後架橋剤の種類により異なるが、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、好ましくは0.005〜7重量部、より好ましくは0.005〜5重量部、さらに好ましくは0.01〜2重量部、特に好ましくは0.01〜1重量部である。水溶性エチレン性不飽和単量体100重量部に対して後架橋剤の量が0.005重量部以上であれば、吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を充分に高めることができ、一方、7重量部以下であれば、架橋剤の使用量としては適度である。
後架橋剤による吸水性樹脂の後架橋の時期は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応終了後であればよく、特に限定されないが、得られる吸水性樹脂のゲル強度や加圧下吸水量の制御が容易である観点から、吸水性樹脂の含水率が5〜45重量%の時点で後架橋を行うのが好ましい。なお、吸水性樹脂の含水率(重量%)は、重合反応終了後の乾燥前の含水ゲルの重量a(g)、および105℃で2時間乾燥した後の重量b(g)を測定し、以下の式:
Figure 2005012369
により求められる。
後架橋剤による吸水性樹脂の後架橋処理は、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応終了後、直接、後架橋剤を、粉末若しくは0.5〜50重量%程度の水溶液の形態で吸水性樹脂に添加し、50〜150℃で0.5〜8時間程度、両者を反応させることにより行うことができる。
後架橋反応終了後、公知の方法により水や炭化水素系溶媒を留去することにより、後架橋された吸水性樹脂の乾燥品を得ることができる。
本発明の吸水性樹脂は、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、シリカ等と混合して用いることができる。また、所望により、公知の方法に従って、該樹脂に対し造粒や成型を施して用いてもよい。
以上のようにして得られる吸水性樹脂、特に後架橋された吸水性樹脂は、無加圧下吸水量および加圧下吸水量が共に優れた吸水性樹脂である。かかる吸水性樹脂は、本発明に包含される。また、かかる吸水性樹脂を用いることにより、例えば、吸水能に非常に優れた、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料、ケーブル用止水剤等の工業材料等が得られる。本発明の吸水性樹脂は、中でも、衛生材料の製造に好適に使用される。本発明は、かかる衛生材料をも提供する。
前記衛生材料等は、本発明の吸水性樹脂を用い、公知の方法に従って製造することができる(例えば、米国特許第5147343号明細書、特開平5−200068号公報参照)。該樹脂の使用量は、特に限定されるものではなく、その用途に応じ、所望の効果が得られ得る量であればよい。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。以下においては、逆相懸濁重合法により各樹脂の調製を行った。
[実施例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン340g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学株式会社の商品名;S−370)0.92gを加え、分散、昇温して溶解後、55℃まで冷却した。
別に、500mL容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液92g(1.02mol)を加えた。これに、外部から冷却しつつ、30重量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g(0.76mol)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム0.11g(0.41mmol)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.047mmol)、乳酸0.046g(0.51mmol)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この単量体水溶液を、前記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、1段目の重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却した。
別の500mL容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液119.1g(1.32mol)を加え、冷却しつつ30重量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99mol)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4g、過硫酸カリウム0.14g(0.52mmol)、乳酸0.059g(0.66mmol)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液を、前記重合スラリー液に全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水分のみ260gを系外に除去し、ゲル状物を得た。得られたゲル状物の含水率は30重量%であった。
得られたゲル状物に2重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.15gを添加し、さらに水分およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、吸水性樹脂213.5gを得た。なお、該樹脂の平均粒径は356μmであった。
ここで、吸水性樹脂の平均粒径は、吸水性樹脂を篩で分級したときに各篩上に残っている吸水性樹脂の重量を順次積算して得られた積算重量が、吸水性樹脂の全重量の50重量%に達したときの篩の目開きに相当する。
具体的には、吸水性樹脂100gを秤量し、これをJIS−Z8801−1982対応の7つの標準篩(上から850μm、500μm、300μm、250μm、180μm、106μm、75μmの目開きの篩を順に積み重ねて使用)の一番上の篩に吸水性樹脂を入れ、ロータップ式篩振動器を用いて30分間振動させて篩分けした後に秤量し、その結果に基づいて積算重量が50重量%になる粒子径を式:
平均粒径(μm)=〔(50−A)/(C−A)〕×(D−B)+B
に従って求めた。
なお、式中、Aは、粒子径の大きい方から順次重量を積算し、積算重量が50重量%未満であり、かつ、50重量%に最も近い時点の積算値を求めた場合の当該積算値(g)であり、また、Bは、当該積算値を求めた時点の篩の目開き(μm)である。Cは、粒子径の大きい方から順次重量を積算し、積算重量が50重量%以上であり、かつ、50重量%に最も近い時点の積算値を求めた場合の当該積算値(g)であり、また、Dは、当該積算値を求めた時点の篩の目開き(μm)である。
[実施例2]
実施例1において、1段目重合用の単量体水溶液中の乳酸の量を0.460g(5.10mmol)、2段目重合用の単量体水溶液中の乳酸の量を0.590g(6.58mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂220.1gを得た。なお、該樹脂の平均粒径は372μmであった。
[実施例3]
実施例1において、1段目重合用の単量体水溶液中の乳酸の量を0.230g(2.55mmol)、2段目重合用の単量体水溶液中の乳酸の量を0.295g(3.29mmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂218.2gを得た。なお、該樹脂の平均粒径は360μmであった。
比較例1
実施例1において、乳酸を用いない以外は、実施例1と同様にして吸水性樹脂212.1gを得た。なお、該樹脂の平均粒径は345μmであった。
比較例2
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート、温度計および窒素ガス導入管を備えた1000mL容の五つ口円筒型丸底フラスコにn−ヘプタン340g、ショ糖脂肪酸エステル(三菱化学株式会社の商品名;S−370)0.92gを加え、分散、昇温して溶解後、55℃まで冷却した。
別に、500mL容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液92g(1.02mol)を加えた。これに、外部から冷却しつつ、30重量%水酸化ナトリウム水溶液102.2g(0.76mol)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和した。さらに、水50.2g、水溶性ラジカル重合開始剤の過硫酸カリウム0.11g(0.41mmol)および架橋剤のエチレングリコールジグリシジルエーテル8.3mg(0.047mmol)を添加し、1段目重合用の単量体水溶液を調製した。
この単量体水溶液を、前記の五つ口円筒型丸底フラスコに、撹拌下で全量加えて分散させ、系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、1段目の重合反応を1時間行った後、重合スラリー液を室温まで冷却した。
別の500mL容の三角フラスコに、80重量%アクリル酸水溶液119.1g(1.32mol)を加え、冷却しつつ30重量%水酸化ナトリウム水溶液132.2g(0.99mol)を滴下して、アクリル酸の75モル%を中和し、さらに水27.4g、過硫酸カリウム0.14g(0.52mmol)を添加し、2段目重合用の単量体水溶液を調製し、氷水浴内で冷却した。
この2段目重合用の単量体水溶液を、前記重合スラリー液に全量添加後、再び系内を窒素で十分に置換した後に昇温し、浴温を70℃に保持して、2段目の重合反応を2時間行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により水分のみ260gを系外に除去し、ゲル状物を得た。得られたゲル状物の含水率は30重量%であった。
得られたゲル状物に、2重量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.15gに乳酸0.105g(1.17mmol)を溶解した溶液を添加し、さらに水分およびn−ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、吸水性樹脂213.5gを得た。なお、該樹脂の平均粒径は356μmであった。
試験例
前記各実施例および各比較例で得られた吸水性樹脂の評価を以下の方法により行った。なお、吸水性樹脂の吸水量の測定は室温で行った。
(1)吸水性樹脂の無加圧下吸水量
吸水性樹脂の無加圧下吸水量を大気圧下での該樹脂による生理食塩水の吸水量として求め、前記各実施例および各比較例で得られた吸水性樹脂について比較した。
吸水性樹脂2.0gを、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に計り取り、500mL容のビーカー中に入れた。綿袋に生理食塩水500gを一度に注ぎ込み、吸水性樹脂のママコが発生しないように食塩水を分散させた。綿袋の上部を輪ゴムで縛り、1時間放置して、吸水性樹脂を充分に膨潤させた。遠心力が167Gとなるように設定した脱水機〔国産遠心機(株)製、品番:H−122〕を用いて綿袋を1分間脱水して、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の重量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時空重量Wb(g)を測定し、以下の式から無加圧下吸水量を算出した。
Figure 2005012369
(2)吸水性樹脂の加圧下吸水量
吸水性樹脂の加圧下吸水量を2.07kPaの圧力下での該樹脂による生理食塩水の吸水量として求め、前記各実施例および各比較例で得られた吸水性樹脂について比較した。
吸水性樹脂の加圧下吸水量の測定は、第1図に示す測定装置Xを用いて行った。
第1図に示された測定装置Xは、電子天秤1と、この電子天秤1上に置かれたボトル2と、空気吸入管3と、導管4と、ガラスフィルター5と、このガラスフィルター5上に置かれた測定部6とからなる。
電子天秤1はコンピュータ7に連結され、秒単位または分単位でその重量変化を記録することができるようになっている。ボトル2は、その内部に生理食塩水8を保持するものであり、その頂部の開口部に空気吸入管3が入れられている一方、胴体部に導管4が取り付けられている。空気吸入管3の下端部は、生理食塩水8中に没している。ガラスフィルター5の直径は、25mmである。ガラスフィルター5としては、相互理化学ガラス研究所のガラスフィルターNo.1(孔径100〜160μm)を用いた。
ボトル2およびガラスフィルター5は、導管4によって互いに連通されている。また、ガラスフィルター5は、空気吸入管3の下端に対して僅かに高い位置に固定されている。測定部6は、円筒60と、この円筒60の底部に貼着されたナイロンメッシュ61と、直径が19mmで重量が59.8gの重り62とを有している。円筒60の内径は、20mmである。ナイロンメッシュ61は、200メッシュ(目の大きさ75μm)に形成されている。そして、ナイロンメッシュ61上に所定量の吸水性樹脂9が均一に撒布されるようになっている。重り62は、吸水性樹脂9上に置かれ、吸水性樹脂9に対して2.07kPaの荷重を均一に加えることができるようになっている。
このような構成を有する測定装置Xでは、まず、ボトル2に所定量の生理食塩水8および空気吸入管3を入れて測定の準備を行う。次に、円筒60のナイロンメッシュ61上に0.10gの吸水性樹脂9を均一に撒布し、この吸水性樹脂9上に重り62を置く。測定部6は、その中心部がガラスフィルター5の中心部に一致するようにしてガラスフィルター5上に置く。
一方、電子天秤1に連結されているコンピュータ7を起動し、吸水し始めた時点から継続的に、ボトル2内の生理食塩水8の減少重量(吸水性樹脂9が吸水した生理食塩水8の重量)Wc(g)を、電子天秤1から得られる値に基づいて、秒単位にてコンピュータ7に記録した。吸水開始から60分間経過後における吸水性樹脂9の加圧下吸水量は、60分間経過後の重量Wc(g)を吸水性樹脂9の重量(0.10g)で除することにより求めた。
以上の(1)および(2)の方法による評価結果を表1にまとめて示す。
Figure 2005012369
表1に示された結果から、実施例1〜3で得られた吸水性樹脂は、いずれも、加圧下吸水量については比較例1〜2と同レベルであるものの、無加圧下吸水量は多く、無加圧下吸水量および加圧下吸水量の両方に優れたものであることがわかる。比較例1の吸水性樹脂は重合反応を乳酸の非存在下に行って得られたものであり、一方、比較例2の吸水性樹脂は比較例1と同様にして重合反応を行い、反応終了後に乳酸で処理して得られたものであるが、無加圧下吸水量については、実施例の吸水性樹脂に比し明らかに劣っていることがわかる。
本発明により、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料等の分野に好適に使用され得る吸水性樹脂の製造方法が提供される。

Claims (5)

  1. 架橋剤の存在下、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合させる工程を有する吸水性樹脂の製造方法であって、該単量体の重合を、さらに乳酸および/またはその塩を存在させて行うことを特徴とする吸水性樹脂の製造方法。
  2. 乳酸および/またはその塩の使用量が、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルあたり、0.0001〜0.1モルである請求項1記載の吸水性樹脂の製造方法。
  3. 重合を、水溶液重合法または逆相懸濁重合法により行う請求項1または2記載の吸水性樹脂の製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の吸水性樹脂の製造方法により得られる吸水性樹脂。
  5. 請求項4に記載の吸水性樹脂を含んでなる衛生材料。
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