JPWO2003071116A1 - エンジンの締結構造 - Google Patents
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Abstract
クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造において、シリンダボディ3のクランクケース側端部に形成されたケース側フランジ部3bをケースボルト30aによりクランクケース2に締結し、シリンダヘッド4とシリンダボディ3とを締結するヘッドボルト30cの少なくとも一部を上記ケース側フランジ部3bに螺挿した。
Description
技術分野
本発明は、クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造に関し、特にシリンダボディに作用する燃焼圧力による荷重を軽減してシリンダボディの耐久性を向上できるようにしたものに関する。
背景技術
例えば自動二輪車用エンジンの締結構造として、シリンダボディのクランクケース側フランジ部をクラクケースにボルト締め固定し、シリンダボディのシリンダヘッド側フランジ部をシリンダヘッドにボルト締め固定したものがある。
しかし上記従来構造の場合、単気筒大排気量エンジンのように燃焼圧力による大荷重が作用するものでは、この大荷重がシリンダボディの軸方向中間部において大きな引っ張り応力を生じることとなる。
そこで従来は、シリンダボディの上記軸方向中間部の肉厚を厚くすることにより必要な耐久性を確保するのが一般的である。しかしこのようなシリンダボディの厚肉化はエンジン重量の増大の原因となる。
一方、上記エンジン重量の増大を回避できる従来の締結構造として、例えば特開平8−28210号公報に記載されたものがある。この締結構造では、シリンダボディ2のクランクケース側フランジ部をクランクケース3,4にケースボルト11で締め付け固定し、シリンダボディ2のシリンダヘッド側フランジ部をシリンダヘッド1にボルト15で締め付け固定し、さらにシリンダヘッド1をシリンダボディ2を貫通するボルト17によりクランクケース3,4に締め付け固定している。
上記公報記載の締結構造の場合、シリンダヘッド1をシリンダボディ2を貫通するボルト17によりクランクケース3,4に締め付け固定しているので、シリンダボディに作用する燃焼圧力の一部をボルト17が負担することとなり、それだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
しかしながら上記公報に記載されたものでは、ヘッドボルトをシリンダヘッドの固定位置に合わせた位置でクランクケースに螺挿することとなるが、シリンダヘッド側には冷却水ジャケットがあるためこれを避けてヘッドボルトを外方に配置せざるを得なくなる。そのため平面視でシリンダ軸線から離れた位置にてクランクケースを締め付けることとなり、それだけクランクケースが不要に大型化してしまう。またヘッドボルトをクランクケースに螺挿する構造であるため、該ヘッドボルトをクランク軸のクランクウェブと干渉しない位置に配置するとともに、シリンダヘッドの固定位置とクランクケースの固定位置とを一致させなければならないので、設計上の自由度が低下する。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、クラクケースを不要に大型化することなく、またヘッドボルトの配置位置上の自由度を低下させることなく、エンジンの耐久性を確保できるエンジンの締結構造を提供することを課題としている。
発明の開示
請求項1の発明は、クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造において、シリンダボディのクランクケース側端部に形成されたケース側フランジ部をケースボルトによりクランクケースに締結し、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部を上記ケース側フランジ部に螺挿されるフランジ螺挿ヘッドボルトとしたことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合していることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトは、該ケースボルトからシリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、該ヘッドボルトからシリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの軸方向における一部が外方に露出していることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1ないし6の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトが配置され、上記第2直線方向中央のヘッドボルトは上記ケース側フランジ部に達しない長さに設定されていることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1ないし7の何れかにおいて、シリンダボアの側方に形成され、クランク軸とカム軸とを連結するカム軸駆動チェーンが配置されるチェーン室と上記シリンダボアとの間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置したことを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1ないし8の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、一端は上記ケース側フランジ部に螺挿され、他端はシリンダヘッドに袋ナットで締め付け固定されていることを特徴としている。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図21は、本発明の一実施形態によるエンジンを説明するための図である。図において、1は水冷式4サイクル単気筒5バルブエンジンであり、これはクランクケース2上にシリンダボディ3,シリンダヘッド4及びヘッドカバー5を積層締結し、シリンダボディ3のシリンダボア3a内に摺動自在に配置されたピストン6をコンロッド7によりクランク軸8に連結した概略構造を有する。
上記シリンダボディ3とクランクケース2とは、下フランジ部(ケース側フランジ部)3bを貫通する4本のケースボルト30aを上記クランクケース2のシリンダ側合面2e部分にねじ込むことにより結合されている。より具体的には、上記ケースボルト30aはアルミニウム合金製のクランクケース2の左,右壁部内にインサート鋳造により埋設された鉄合金製の軸受ブラケット12,12′(後述する)のボルト結合部(結合ボス部)12cに螺挿されている。なお、図10において、31aはクランクケース2とシリンダボディ3との位置決め用ドエルピンである。
また上記シリンダボディ3とシリンダヘッド4とは2本の短ヘッドボルト30b及び4本の長ヘッドボルト(フランジ螺挿ヘッドボルト)30cにより結合されている。上記短ヘッドボルト30bは、シリンダヘッド4の吸気ポート4c下部及び排気ポート下部に螺挿によって植設されて下方に延び、シリンダブロック3の上フランジ部3fを貫通して下方に突出している。そしてこの短ヘッドボルト30bの下方突出部に袋ナット32aを螺着することにより該上フランジ部3fひいてはシリンダボディ3がシリンダヘッド4のシリンダ側合面4aに締め付けられている。
また上記長ヘッドボルト30cは、シリンダボディ3の下フランジ部3bに螺挿により植設されて上方に延び、シリンダブロック3の上フランジ部3fからさらにシリンダヘッド4のフランジ部4bを貫通して上方に突出している。そしてこの長ヘッドボルト30cの上方突出部に袋ナット32bを螺着することにより該下フランジ部3bひいてはシリンダボディ3がシリンダヘッド4のシリンダ側合面4aに締め付けられている。なお、上記長ヘッドボルト30cの、シリンダボディ3の下フランジ部3bと上フランジ部3fとの間の部分30c′は外方に露出している。
ここでシリンダボア軸線Aと直角方向にみたとき(図10参照)、上記長ヘッドボルト30cと上記ケースボルト30aとは、シリンダボア軸線A方向において上記下フランジ部(ケース側フランジ部)3bの厚さと略同じだけ重合している。
また上記シリンダボア軸線A方向にみたとき(図6,図7参照)、上記長ヘッドボルト30cと上記ケースボルト30aとは以下の関係をなすように、かつ近接配置されている。即ち上記ケースボルト30aは、該ケースボルト30aからシリンダボア軸線Aを通るクランク軸と直角な第1直線C1までの距離a1が上記長ヘッドボルト30cから第1直線C1までの距離a2より小さくなるように、つまりクランク軸方向にシリンダボア中心に寄せて配置されている。
また上記長ヘッドボルト30cは、該ヘッドボルト30cからシリンダボア軸線Aを通るクランク軸と平行な第2直線C2までの距離b2が上記ケースボルト30aから第2直線C2までの距離b1より小さくなるように、つまりクランク軸側に寄せて配置されている。
さらにまた上記第2直線C2を挟んだ両側のそれぞれに3本のヘッドボルト30c,30b,30cが配置されており、そのうちの上記第2直線C2方向中央のヘッドボルトが上記短ヘッドボルト30bとなっている。この短ヘッドボルト30bは上記上フランジ部3fに対応した長さで、かつ上記下フランジ部3bに達しない長さに設定されている。
そして上記第2直線C2方向両側に上記長ヘッドボルト30c,30cが配置されている。ここで、シリンダボア3aのクランク軸方向一側(図7左側)には、クランク軸の回転をカム軸に伝達するカム軸駆動チェーン40が配置されるチェーン室3dが形成されている。上記第2直線C2方向一側に位置する長ヘッドボルト30cは、上記チェーン室3dと上記シリンダボア3aとの間に配置されている。
このようにシリンダボディ3とシリンダヘッド4とを結合するに当たって、シリンダボディ3の上フランジ部3fを短ヘッドボルト30b及び袋ナット32aでシリンダヘッド4に締め付け固定するだけでなく、クランクケース2の合面2eにボルト締め結合された下フランジ部3bに長ヘッドボルト30cを植設し、該長ヘッドボルト30c及び袋ナット32bによりシリンダボディ3をシリンダヘッド4のフランジ部4bに締め付け固定したので、燃焼圧力による引っ張り荷重をシリンダボディ3及び上記4本の長ヘッドボルト30cで負担することとなり、それだけシリンダボディ3に作用する荷重を軽減できる。その結果、シリンダボディ3の特に軸方向中間部に発生する応力を小さくでき、該シリンダボディ3の肉厚を薄くした場合でも耐久性を確保できる。
ちなみに、シリンダボディ3の上フランジ部3fのみをシリンダヘッド4に結合した場合には、シリンダボディ3の軸方向中間部に過大な引張り応力が発生し、極端な場合は該部分にクラックが生じる懸念があるが、本実施形態では上記長ヘッドボルト30cの存在により上記過大な応力のシリンダボディ中間部での発生を回避でき、クラックの発生を防止できる。
また上記長ヘッドボルト30cを下フランジ部3bに植設するにあたり、該長ヘッドボルト30cをクランクケース締め付け用のケースボルト30aの近傍に配置したので、長ヘッドボルト30cが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部3b伝達し、さらに該荷重をケース側フランジ部3bがケースボルト30aを介してクランクケース2に伝達し、このようにしてシリンダボディ3に作用する荷重を確実に軽減できる。この点から上記荷重に対するシリンダボディ3の耐久性を向上できる。
また長ヘッドボルト30cとケースボルト30aとをシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部3bの厚さと略同じだけ重合させたので、上記長ヘッドボルト30cが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部3bに確実に伝達でき、シリンダボディ3の中間部に作用する荷重を軽減できる。
またシリンダボア軸線A方向にみたとき、上記ケースボルト30aを、シリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線C1までの距離a1が上記長ヘッドボルト30cから第1直線C1までの距離より小さくなるように配置したので、つまりケースボルト30aをクランク軸方向にシリンダボア中心側に寄せて配置したので、図7に二点鎖線で示すように、クランクケース2のシリンダボディ取付合面2eのクランク軸方向寸法を長ヘッドボルト30cの配置位置付近まで小さくでき、その結果クランクケース2のクラク軸方向寸法を小さくできる。
さらにまた長ヘッドボルト30cを、シリンダボディ2のケース側フランジ部3bに螺挿する構成を採用したので、つまりクランクケース2のシリンダボディ取付合面2eには螺挿しないようにしたので、クランクケース2に内蔵されているクランク軸8のウェブ8bとの干渉の問題を生じることはなく、長ヘッドボディ30cを、シリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線C2までの距離b2が上記ケースボルト30aから第2直線C2までの距離b1より小さくなるように、つまりクランク軸側に寄せて配置でき、シリンダヘッド4,シリンダボディ3のクランク軸直角方向寸法を小さくできる。
また、上記長ヘッドボルト30cの軸方向における一部30c′をシリンダボルト3の側壁から外方に露出させたので、長ヘッドボルト30cを囲む壁を少なくできそれだけシリンダボディ3を軽量化できる。
また、上記第2直線C2を挟んだ両側にそれぞれ3本のヘッドボルトを配置したので、該第2直線C2方向中央のヘッドボルト30bはシリンダボア軸線Aからクランク軸直角方向に離れて位置することとなるが、該ヘッドボルト30bについてはケース側フランジ部3bに達しない長さに設定したので、上記ケース側フランジ部3bは上記中央のヘッドボルト30bに対応する部分については最小限にすることができ、シリンダボディ,クランクケースの大型化を回避できる。
また、シリンダボア3aと、これの側方に形成されたチェーン室3dとの間に上記長ヘッドボルト30cを配置したので、デッドスペースを有効利用して長ヘッドボルト30cを配置できる。
さらにまた、上記長ヘッドボルト30cの一端をケース側フランジ部3bに螺挿し、他端をシリンダヘッド4に袋ナット32bで締め付け固定したので、シリンダヘッド上方スペースを大きくとることなくシリンダヘッドの取り外しが可能であり、エンジンのメンテナンス性を確保できる。
ここで上記右側の軸受ブラケット12′は、図5,図16に示すように、クランク軸8の右側軸受11a′が軸受穴12a内に圧入等により勘合挿入されるボス部12bを有する。そしてこのボス部12bの、クランク軸8方向に見た時、該クランク軸8を挟んだ前側及び後側部分から上記ボルト結合部12c,12cが上方に、クランクケース2のシリンダ側合面2eの近傍まで延びている。
また左側の軸受ブラケット12では、図5,図17に示すように、クランク軸8方向に見た時、該クランク軸8を挟んだ前側及び後側部分から上記ボルト結合部12c,12cが上方に、クランクケース2のシリンダ側合面2eの近傍まで延びている。またボス部12bには鉄製で後述するバランサ駆動ギヤ25aより大きい外径を有する軸受カラー12dが圧入されるカラー穴12eが形成されている。そしてこの軸受カラー12dの軸受穴12a内に左側のクランク軸軸受11aが勘合挿入されている。
ここで上記軸受カラー12dは、クランク軸8に上記バランサ駆動ギヤ25aを有するギヤ体25が圧入装着された状態で該クランク軸8をクランクケース2内に組み立てることができるようにするためのものである。
また図5に示すように、上記クランク軸8の左軸部8cの上記ギヤ体25と軸受11aとの間の部分にはシールプレート25dが介在されている。このシールプレート25dの内径側部分は上記ギヤ体25と軸受11aのインナレースとで挟持され、その外径側部分と軸受11aのアウタレースとの間には両者の干渉を回避する僅かな隙間がある。また該シールプレート25dの外周面は上記軸受カラー12dのフランジ部12hの内周面の摺接している。
さらにまたクランク軸8の右軸部8c′の上記軸受11a′とカバープレート17g間部分にはシール筒17iが介在されている。このシール筒17iの内周面は上記右軸部8c′に勘合固定されている。またシール筒17iの外周面にはラビリンス構造のシール溝が形成され、かつ右ケース部2bに形成されたシール孔2pの内面に摺接している。
このようにクランク軸8の左,右軸部8c,8c′の軸受11a,11a′外側にシールプレート25d,シール筒17iを介在させることによりクランク室2c内の圧力洩れが防止されている。
このように本実施形態によれば、アルミニウム合金製クランクケース2に鋳ぐるまれたクランク軸支持用の鉄合金製軸受部材12,12′の、シリンダボア軸線Aを挟んだ両側にシリンダボディ3側に延びるボルト結合部(結合ボス部)12c,12cを一体形成し、該ボルト結合部12cにシリンダボディ3をクランクケース2に結合するためのケースボルト30aを螺挿したので、燃焼圧力による荷重をシリンダボア軸線Aを挟んだ前,後2箇所のボルト結合部12cにより均等に負担することができ、シリンダボディ3とクランクケース2との結合剛性を向上できる。
また、クランク軸8の近傍に該クランク軸8と平行に配置されているバランサ軸22,22′の少なくとも一端部を上記鉄合金製の軸受部材12,12′により支持したので、バランサ軸22,22′の支持剛性を高めることができる。
さらにまた、鉄製の軸受ブラケット12,12′をアルミニウム合金製のクランクケース2内に埋設するに当たり、ボルト結合部12cの上端面12fをクランクケース2のシリンダ側合面2eに露出させることなく内方に位置させたので、クランクケース2とシリンダブロック3との接合面に硬度,材質の異なる金属部材が混在することがなく、シール性の低下を回避できる。即ち、鉄製のボルト結合部12cの上端面12fをアルミニウム合金製のシリンダボディ3の下フランジ3bに形成されたケース側合面3cに当接させると熱膨張係数差等が起因してシール性が低下する。
また左側の軸受ブラケット12においては、バランサ駆動ギヤ25aより外径の大きい軸受カラー12を軸受11aの外周に装着したので、上記バランサ駆動ギヤ25aをクランク軸8に圧入等(一体形成でも勿論構わない)により装着固定した状態で該クランク軸8をクランクケース2内に組み付ける際に、該バランサ駆動ギヤ25aが軸受ブラケット12のボス部12bの最小内径部に干渉することがなく、支障無く組み付けできる。
上記クランクケース2は左,右ケース部2a,2bからなる左,右2分割式のものである。左ケース部2aには左ケースカバー9が着脱可能に装着されており、該左ケース部2aと左ケースカバー9で囲まれた空間はフラマグ室9aとなっている。このフラマグ室9a内に、クランク軸8の左端部に装着されたフラマグ式発電機35が収容されている。なお、上記フラマグ室9aは、後述するチェン室3d,4dを介してカム軸配置室に連通しており、カム軸を潤滑した潤滑油の大部分はチェン室4d,3dを介してフラマグ室9a内に落下する。
また上記右ケース部2bには右ケースカバー10が着脱可能に装着されており、該右ケース部2bと右ケースカバー10とで囲まれた空間はクラッチ室10aとなっている。
上記クランクケース2の前部にはクランク室2cが、後部にはミッション室2dがそれぞれ形成されている。上記クランク室2cは上記シリンダボア3aに向かって開放され、かつミッション室2d等他の室とは実質的に画成されている。そのため上記ピストン6の上昇下降によりミッション室2d内の圧力が変動し、ポンプとして機能するようになっている。
上記クランク軸8は上記クランク室2c内に左,右のアーム部8a,8a及び左,右のウェイト部8b,8bを収容するように配置されている。このクランク軸8は、上記左のアーム部8a,ウェイト部8b及び軸部8cを一体化した左クランク軸部分と右のアーム部8a,ウェイト部8b及び軸部8c′を一体形成した右クランク軸部分とを筒状のクランクピン8dを介して一体的に結合した組立式のものである。
上記左,右の軸部8c,8c′は左,右ケース部2a,2bによりクランク軸受11a,11a′を介して回転自在に支持されている。この軸受11a,11a′は、上述の通り、アルミニウム合金製の左,右ケース部2a,2bにインサート鋳造された鉄合金製の軸受ブラケット12,12′の軸受穴12a内に圧入されている。
上記ミッション室2d内には変速機構13が収納配設されている。この変速機構13は、クランク軸8と平行に配置されたメイン軸14とドライブ軸15とを備え、メイン軸14に装着された1速〜5速ギヤ1p〜5pと、ドライブ軸15に装着された1速〜5速ギヤ1w〜5wとを常時噛合させた常時噛み合い式の構造のものである。
上記メイン軸14は、上記左,右ケース部2a,2bによりメイン軸軸受11b,11bを介して軸支され、上記ドライブ軸15は、上記左,右ケース部2a,2bによりドライブ軸軸受11c,11cを介して軸支されている。
上記メイン軸14の右端部は上記右ケース部2bを貫通して右側に突出しており、該突出部に上述のクラッチ機構16が装着され、該クラッチ機構16は上記クラッチ室10a内に位置している。そしてこのクラッチ機構16の減速大ギヤ(入力ギヤ)16aは上記クランク軸8の右端部に固定装着された減速小ギヤ17に噛合している。
上記ドライブ軸15の左端部は左ケース部2aから外方に突出しており、該突出部にドライブスプロケット18が装着されている。このドライフスプロケット18は後輪のドリブンスプロケットにドライブチェンにより連結されている。
本実施形態のバランサ装置19は、上記クランク軸8を挟むように配置された、実質的に同一構造の前,後バランサ20,20′からなる。この前,後バランサ20,20′は、非回転式のバランサ軸22,22′とこれにより軸受23,23を介して回転自在に支持されたウェイト24,24とからなる。
ここで上記バランサ軸22,22′は、上記左,右ケース部2a,2b同士をクランク軸方向に締め付け結合するためのケースボルト(結合ボルト)に兼用されている。該各バランサ軸22,22′は上記軸支されたウェイト24のエンジン幅方向内側に形成されたフランジ部22aを左,右ケース部2a,2b内にインサートされた上述の軸受ブラケット12′,12のボス部12gに当接させ、反対側端部に固定ナット21b,21aを螺装することにより左,右ケース部2a,2bを結合している。
上記ウェイト24は略半円状のウェイト本体24aとこれに一体形成された円形のギヤ支持部24bとからなり、該ギヤ支持部24bにはリング状のバランサ従動ギヤ24cが装着固定されている。なお、24bはウエイト本体24aと反対側の重量をできるだけ小さくする肉抜き穴である。
上記後側のバランサ20′に装着されたバランサ従動ギヤ24cは上記クランク軸8の左の軸部8cに圧入により固着されたギヤ体25に相対回転可能に装着されたバランサ駆動ギヤ25aに噛合している。
なお、25bは上記ギヤ体25に一体形成されたタイミングチェン駆動用のスプロケットであり、図11に示すようにバルブタイミングを合わせるための合せワーク25cを有する。上記ギヤ体25はクランク軸8が圧縮上死点位置にあるときに上記合せマーク25cがクランク軸方向に見てシリンダボア軸線Aに一致するようにクランク軸8に圧入される。
また前側のバランサ20に装着されたバランサ従動ギヤ24cは上記クランク軸8の右の軸部8c′に装着固定された減速小ギヤ17に相対回転可能に支持されたバランサ駆動ギヤ17aに噛合している。
ここで上記後側用のバランサ駆動ギヤ25aはギヤ体25に対して相対回転可能に支持されており、また前側用のバランサ駆動ギヤ17aは減速小ギヤ17に対して相対回転可能に支持されている。そして上記バランサ駆動ギヤ25a,17aとギヤ体25,減速小ギヤ17との間にはU字形状の板ばねからなる緩衝ばね33が介在されており、これによりエンジンのトルク変動等による衝撃がバランサ20,20′に伝達されるのを抑制するようになっている。
ここでは上記前側駆動用のバランサ駆動ギヤ17aについて、図14に沿ってさらに詳述するが、後側駆動用のバランサ駆動ギヤ25aについても同様である。上記バランサ駆動ギヤ17aはリング状をなしており、減速小ギヤ17の側面にこれよりも小径に形成されたスライド面17bにより相対回転可能に支持されている。そしてこのスライド面17bには多数のU字状のばね保持溝17cがクランク軸芯を中心とする放射状をなすように凹設されており、該ばね保持溝17c内に上記U字状をなす緩衝ばね33が挿入配置されている。この緩衝ばね33の開口側端部33a,33aは上記バランサ駆動ギヤ17aの内周面に凹設された係止凹部17dの前,後段部に係止している。
上記減速小ギヤ17とバランサ駆動ギヤ17aとの間にトルク変動等により相対回転が生じると緩衝ばね33が上記端部33a,33aの間隔が狭くなる方向に弾性変形してトルク変動を吸収する。なお、17gは上記緩衝ばね33を保持溝17c内に保持するためのカバープレート、17hは減速小ギヤ17とクランク軸8を結合するキーであり、また17e,17fは減速小ギヤ17とバランサ駆動ギヤ17aの組立時の合せマークである。
上記バランサ20,20′には、バランサ従動ギヤ24c,24cと、バランサ駆動ギヤ25a,17aとの間のバックラッシュを調整するための機構が設けられている。この調整機構は、上記バランサ軸22,22′のバランサ軸線と上記バランサ従動ギヤ24cの回転中心線とを極僅か偏心させた構成となっている。即ち、上記バランサ軸22,22′をバランサ軸線回りに回動させると、上記偏心により上記バランサ従動ギヤ24cの回転中心線と上記バランラ駆動ギヤ25a,17aの回転中心線との間隔が僅かに変化し、もってバックラッシュが変化するようになっている。
ここで、上記バランサ軸22,22′をバランサ軸線回りに回転させるための機構は前側バランサ20と後側バランサ20′とでは異なる。まず、後側バランサ20′では、後側のバランサ軸22′の左端部に六角形状の係止突部22bが形成され、該係止突部22bに回動レバー26の一端に形成されたスプライン状(多角形星形状)の係止穴26aが係止している。またこの回動レバー26の他端部には上記バランサ軸線を中心とする円弧状のボルト穴26bが形成されている。
上記ボルト穴26bに挿入された固定ボルト27はガイドプレート28に植設されている。このガイドプレート28は概ね円弧状をなしており、クランクケース2にボルト締め固定されている。なお、このガイドプレート28は、潤滑油の流れを調整する機能をも有する。
後側のバランサ20′のバックラッシュ調整は、上記固定ナット21aを緩めた状態で上記回動レバー26を上記バックラッシュが適正な状態となるように回動した後、上記固定ボルト27a,ナット27bにより回動レバー26を固定することにより行われ、その後上記固定ナット21aが締め付けられる。
上記前側のバランサ軸22の左端部には断面円形の両側に平坦部22eを形成してなる断面小判状の把持部22fが形成されている(図12参照)。該把持部22fにはこれの外周形状に合致する内周形状を有するカラー29aが装着され、さらに該カラー29aの外側に保持レバー29の保持部29bが軸方向移動可能かつ相対回転不能に装着されている。この保持レバー29の先端部29eは左ケース部2aのボス部2fにボルト29fで固定されている。また、上記保持レバー29の保持部29bには締め付け用スリット29cが形成されており、固定ボルト29dを締め込むことにより上記カラー29aひいてはバランサ軸22の回転を阻止するようになっている。さらにまた上記バランサ軸22のカラー29aより軸方向外側にワッシャを介して上記固定ナット21bが螺着されている。
前側のバランサ20のバックラッシュの調整は、上記固定ナット21bを緩めて、好ましくは取り外して上記バランサ軸22の把持部22fを工具で把持してバックラッシュが適正な状態となるように回動させた後、上記固定ボルト29dを締め込むことにより行われ、その後上記固定ナット21bが締め付けられる。
また上記バランサ軸22,22′の係止突部22bの上部には潤滑油導入部22cが円弧状に切欠き形成されている。該導入部22cには、ガイド孔22dが開口し、該ガイド孔22dは該バランサ軸22内に延びて外周面下部に貫通し、これにより上記潤滑油導入部22cを上記バランサ軸受23の内周面に連通させている。このようにして上記潤滑油導入部22cに落下した潤滑油がバランサ軸受23に供給される。
ここで上記ウェイト24及びバランサ従動ギヤ24cは、前バランサ20においてはクランク軸方向右側端部に配置されているのに対し、後バランサ20′においては左側端部に配置されている。また上記バランサ従動ギヤ24cはウェイト24に対して、前,後バランサ20,20′とも右側に位置しており、従ってウェイト24とバランサ従動ギヤ24cは前,後とも同一形状に設定されている。
このよう本実施形態によれば、前バランサ軸(第1バランサ軸)22のクランク軸方向右側(一側)にバランサ24のウェイト本体24a及びバランサ従動ギヤ24cを配設し、後バランサ軸(第2バランサ軸)22′のクランク軸方向左側(他側)にウェイト本体24a及びバランサ従動ギヤ24cを配設したので、2軸式バランサ装置を設ける場合のクランク軸方向における重量バランスの低下を回避できる。
また、上記前,後バランサ軸22,22′を左,右ケース部2a,2bを結合するケースボルトに兼用したので、2軸式バランサ装置を採用する場合に構造の複雑化,部品点数の増加を抑制しながらクランクケースの結合剛性を高めることができる。
また上記各バランサウェイト本体24aとバランサギヤ24cとを一体化し、かつバランサ軸22,22′により回転自在に支持したので、バランサウェイト本体24a及びバランサ駆動ギヤ24cからなるウェイト24のみを回転駆動すれば良く、バランサ軸自体を回転駆動する必要がない分、エンジン出力の有効利用を図ることができる。
またバランサウェイトとバランサ軸とが一体化されているものに比較して組立上の自由度を向上できる。
また、上記バランサ従動ギヤ24cの回転中心線をバランサ軸22,22′の軸線に対して偏位させたので、簡単な構造により、またバランサ軸を回転させるという簡単な操作によって上記バランサ従動ギヤ24cとクランク軸8側のバランサ駆動ギヤ25a,17aとのバックラッシュを調整することが可能であり、騒音の発生を防止できる。
上記バックラッシュ調整は、前のバランサ軸22では、該バランサ軸22の車幅方向左側に形成された把持部22fを工具で把持して該バランサ軸22を回動させ、また後のバランサ軸22′ではこれの左側に設けられた回動レバー26を回動させることにより行われる。このように前,後のバランサ軸22,22′の何れもエンジン左側からバックラッシュの調整を行うことが可能であり、バックラッシュ調整作業を能率よく行なうことができる。
また、バランサ従動ギヤ24cと噛合するクランク軸8側のバランサ駆動ギヤ17aを、クランク軸8に固定される減速小ギヤ17のスライド面17bに相対回転可能に配設した構造とし、該スライド面17dに凹設したばね保持溝17cにU字状の緩衝ばね33を配設したので、コンパクトな構造によりエンジンのトルク変動等による衝撃を吸収してバランサ装置を円滑に作動させることができる。なお、バランサ駆動ギヤ25a側についても同様である。
さらにまた上記前側のバランサ軸22の右端部にはこれと同軸をなすように冷却水ポンプ48が配設されている。この冷却水ポンプ38の回転軸は、後述する潤滑油ポンプ52の場合と同様の構造を有するオルダム継ぎ手等によりバランサ軸22に、これとの間の若干の芯ずれを吸収可能に接続されている。
本実施形態の動弁装置は、上記クランク軸8により上記ヘッドカバー5内に配置された吸気カム軸36,及び排気カム軸37を回転駆動するようになっている。具体的には、上記クランク軸8の左の軸部8cに圧入装着されたギヤ体25のクランクスプロケット25bと、上記シリンダヘッド4に植設された支持軸39によって軸支された中間スプロケット38aとがタイミングチェン40で連結され、該中間スプロケット38aに一体形成された、該中間スプロケット38aより小径の中間ギヤ38bが上記吸気,排気カム軸36,37の端部に固着された吸気,排気ギヤ41,42に噛合している。なお、上記タイミングチェン40はシリンダブロック3,シリンダヘッド4の左壁に形成されたチェン室3d,4d内を通るように配置されている。
上記中間スプロケット38a及び中間ギヤ38bは、シリンダヘッド4のチェン室4dをシリンダボア軸線A上にてクランク軸方向に貫通する上記支持軸39により2組のニードル軸受44を介して軸支されている。上記支持軸39はそのフランジ部39aが2本のボルト39bによりシリンダヘッド4に固定されている。なお、39c,39dはシール用ガスケットである。
ここで上記2組のニードル軸受44,44には市販品(規格品)が採用されており、該各軸受41,41間には間隔調整用のカラー44aが配設され、両端にはスラスト荷重を受けるためのスラストワッシャ44b,44bが配設されている。このスラストワッシャ44bは中間スプロケットの端面に摺接する大径部と上記ニードル軸受44に向けて軸方向に突出する段部とを有する段付き形状のものである。
このように2組の軸受44,44の間に間隔調整用のカラー44aを介在させたので、カラー44aの長さ調整によりニードル軸受として市販の規格品を採用することができ、コストを低減できる。
またスラストワッシャ44bとして段付き形状のものを採用したので、上記中間スプロケット38aの組立作業性を向上できる。即ち、中間スプロケット38aの組立に当たっては、該中間スプロケット38a及び中間ギヤ38bを両端にスラストワッシャを落下しないよう位置させてチェン室4d内に配置した状態で支持軸39を外側から挿入することとなるが、上記スラストワッシャ44bの段部を中間スプロケット38aの軸穴に係止させておくことにより該スラストワッシャ44bの落下を防止でき、従ってそれだけ組立性を改善できる。
また上記支持軸39にはシリンダヘッド4に形成されたオイル導入孔4eによりカム室内から導入された潤滑油をニードル軸受44に供給するオイル孔39eが形成されている。
また上記中間スプロケット38aには4つの肉抜き穴38cと2つの肉抜き兼用組立時覗き穴38c′が60度間隔毎に形成されている。そして上記中間ギヤ38bの覗き穴38c′の略中心に位置する歯に合せマーク38dが刻印されており、吸気,排気カムギヤ41,42の、上記合せマーク38dに対応する2つの歯にも合せマーク41a,42aが刻印されている。ここで左,右の合せマーク38d,38dと合せマーク41a,42aを合致させると、吸気,排気カム軸41,42は圧縮上死点に位置するようになっている。
さらにまた、上記中間スプロケット38aの、上記合せマーク38dと41a,42aが合致した時点でシリンダヘッド4のカバー側合面4f上に位置する部分に合せマーク38e,38eが形成されている。
バルブタイミングを合わせるには、まず上述の合せマーク25c(図11参照)をシリンダボア軸線Aに一致させることによりクランク軸8を圧縮上死点位置に保持する。また支持軸39を介してシリンダヘッド4に取り付けられている上記中間スプロケット38a及び中間ギヤ38bを、該中間スプロケット38aの合せマーク38eがカバー側合面4fに一致するように位置決めし、この状態でカムスプロケット25bと中間スプロケット38aとをタイミングチェン40で連結する。そして上記吸気,排気カム軸36,37の上記吸気,排気カムギヤ41,42を、これらの合せマーク41a,42aが中間ギヤ38bの合せマーク38dと一致するよう覗き穴38c′から確認しながら該中間ギヤ38bに噛合させ、上記吸気,排気カム軸36,37をシリンダヘッド4の上面にカムキャリアを介して固定する。
このように、大径の中間スプロケット38aに軽量化用肉抜き兼用の覗き穴38c′を設け、該覗き穴38c′から背面側の小径の中間ギヤ38bの合せマーク38dとカムギヤ41,42の合せマーク41a,42aとの一致状態を確認できるようにしたので、小径の中間ギヤ38bを大径の中間スプロケット38aの背面に配設しながら、中間ギヤ38bとカムギヤ41,42との噛合位置を容易確実に目視により確認でき、バルブタイミングを支障なく合わせることができる。
また中間ギヤ38bを中間スプロケット38aの背面側に配置できるので、中間ギヤ38bと噛合するカムギヤ41,42からカムノーズ36aまでの寸法を短くでき、それだけカム軸の捩れ角を小さくでき、バルブの開閉タイミングの制御精度を向上できる。また、カム軸回りをコンパクト化できる。
即ち、例えば中間ギヤ38bを中間スプロケット38aの前面に配置した場合には、バルブタイミング合せを容易に行うことができるが、上述のカムギヤ41,42からカムノーズまでの寸法が長くなり、それだけカム軸の捩れ角が大きくなってバルブ開閉タイミングの制御精度が低下する。
また中間ギヤ38bを中間スプロケット38aの前面に配置した場合には、中間スプロケット38aとカム軸36,37との干渉を回避するために中間スプロケット支持軸39とカム軸36,37との間隔を拡げる必要があり、それだけカム軸回りが大型化する懸念がある。
ここで上記中間ギヤ38bとカムギヤ41,42との間にはバックラッシュ調整機構が設けられている。この調整機構は、吸気カムギヤ41及び排気カムギヤ42を、それぞれドライブギヤ(動力電動ギヤ)46とシフトギヤ((調整ギヤ)45との2枚のギヤで構成し、かつドライブギヤ46,シフトギヤ45の角度位置を調整可能とした構造のものである。
即ち、カム軸36,37の端部に形成されたフランジ部36b,37bにシフトギヤ45,及びドライブギヤ46が4つの周方向に長い長孔45a,46a及び4本の長ボルト68aで角度位置を調整可能に固定されるとともに、外側に配置されているドライブギヤ46に逃げ部46bが切欠き形成され、該逃げ部46bを利用してシフトギヤ45のみが2つの長孔45b及び2本の短ボルト68bにより角度位置を調整可能に固定されている。
バックラッシュの調整は以下の手順で行われる。なお本実施形態エンジンでは、中間ギヤ38bは図3に示すようにエンジンの左側から見た状態で反時計回りに回転する。従って吸気カムギヤ41,排気カムギヤ42は何れも時計回りに回転する。またここではバックラッシュ調整を吸気カムギヤ41について説明するが、排気カムギヤ42についても同様である。
まず、吸気側カムギヤ41の固定ボルト68a,68bを全て緩め、シトフギヤ45を時計回りに回動させて該シトフギヤ45の時計方向前側の歯面を中間ギヤ38bの反時計方向後側の歯面に軽く当接させ、この状態で2本の短ボルト68bによりシフトギヤ45をカム軸36のフランジ部36bに固定する。そしてドライブギヤ46を反時計方向に回動させてこれの反時計方向前側の歯面(被駆動面)を中間ギヤ38の反時計方向前側の歯面(駆動面)に所要のバックラッシュが得られるように当接させ、この状態で4本の長ボルト68aを締め込むことによりドライブギヤ46及びシフトギヤ45を吸気カム軸36に固定する。
このように、吸気,排気カムギヤ41,42をドライブギヤ(動力伝達ギヤ)46と該ギヤに対して相対回転可能のシフトギヤ(調整ギヤ)45とで構成したので、シフトギヤ45をドライブギヤ46に対して回転方向前進側又は後進側に相対回転させることによりバックラッシュを調整することができる。
なお、本実施形態では、カムギヤ41,42を構成するドライブギヤ46とシフトギヤ45の両方ともがカム軸に対して相対回転可能の場合を説明したが、該ドライブギヤ46,シフトギヤ45の何れか一方のギヤを相対回転可能とし、他方のギヤはカム軸に一体化したものであっても良い。この場合カム軸に一体化されている方を動力伝達用ギヤとすることが望ましい。このような構成の場合でも、上記実施形態におけるのと同様の作用効果が得られる。
また本実施形態ではチェン駆動方式のものに本発明を適用した場合を説明したが、歯付きベルトによる駆動方式にも勿論本発明を適用できる。
次に潤滑構造について説明する。
本実施形態エンジンの潤滑装置50は、別体の潤滑油タンク51内に貯留された潤滑油を車体フレーム56のダウンチューブ56cを介して潤滑油ポンプ52で吸引加圧し、該ポンプ52からの吐出油をカム潤滑系53と、ミッション潤滑系54と、クランク潤滑系55の3系統に分離して各被潤滑部に供給し、これらの各被潤滑部を潤滑した潤滑油を上記ピストン6の昇降に伴うクランク室2c内の圧力変動を利用して上記潤滑油タンク51に戻すように構成されている。
上記潤滑油タンク51は、車体フレーム56のヘッドパイプ56a,メインチューブ56b,ダウンチューブ56c,及び補強ブラケット56dで囲まれた空間に一体形成されている。この潤滑油タンク51は上記ダウンチューブ56cから該ダウンチューブ56cの下部同士を接続するクロスパイプ56eに連通している。
そして上記クロスパイプ56eはこれに接続された出口管56f,オイルホース57a,継ぎ手パイプ57b,クランクケースカバーに形成されたオイル吸込み通路58aを介して上記潤滑油ポンプ52の吸込み口に接続されている。この潤滑油ポンプ52の吐出口はオイル吐出通路58b,外部接続室58c,オイル通路58dを介してオイルフィルタ59に接続され、該オイルフィルタ59の二次側で上述の3つの潤滑系53,54,55に分離される。
上記オイルフィルタ59は、上記右ケースカバー10に凹設されたフィルタ凹部10bにフィルタカバー47を着脱自在に装着して構成されたフィルタ室59d内にオイルエレメント59eを配設してなるものである。
上記カム潤滑系53は、上記フィルタカバー47から上記フィルタ凹部10bの外側に形成されたオイル通路のカム側出口59aにT字状の潤滑油パイプの縦辺部53aの下端を接続し、該潤滑油パイプの横辺部53bの左,右端をカム軸給油通路53cに接続し、該通路53cを介して潤滑油をカム軸36,37の軸受部等の被潤滑部に供給するようにした概略構成を有する。
上記ミッション潤滑系54は以下の構成を有する。上記オイルフィルタ59のミッション側出口59bに、右ケース部2b内に形成された右ミッション給油通路54aが接続され、該給油通路54aは左ケース部2a内に形成された左ミッション給油通路54bを介してメイン軸14の軸芯に形成されたメイン軸孔14a内に連通している。そしてこのメイン軸孔14aは複数の分岐孔14bによりメイン軸14と変速ギヤとの摺動部に連通しており、該メイン軸孔14aに供給された潤滑油が分岐孔14bを通って上記摺動部に供給される。
また上記左ミッション給油通路54bの途中部分は左,右ケース部2a,2bを結合するためのケースボルト60を挿通するボルト孔60aに連通している。このボルト孔60aは、上記左,右ケース部2a,2bにこれらの合面で対向当接するよう形成された筒状のボス部60c,60cに上記ケースボルト60の外径より若干大きい内径の孔を形成してなるものである。このボス部60cはメイン軸14とドライブ軸15のギヤ列の噛合部近傍に位置しており、また上記ボルト孔60a内の潤滑油を上記噛合部に向けて噴出させる複数の分岐孔60bが形成されている。なお、図19におけるボルト60は、左,右ケース部分を展開して記載されているがこれらは同一ボルトである。
さらにまた上記ボルト孔60aの右端部は連通孔54cを介して上記ドライブ軸15の軸芯に形成されたドライブ軸孔15aに連通している。そしてこのドライブ軸孔15aは、その左側部分が仕切壁15cで閉塞され、また複数の分岐孔15bによりドライブ軸15とドライブギヤとの摺動部に連通している。このようにして、該ドライブ軸孔15aに供給された潤滑油が分岐孔15bを通って上記摺動部に供給される。
上記クランク潤滑系55は以下の構成を有する。上記フィルタカバー47に、クランク側出口59cから潤滑油ポンプ52に向けて延びるようにクランク給油通路55aが形成され、該通路55aを上記潤滑油ポンプ52の回転軸62の軸芯に貫通形成された連通孔62aに連通させ、さらに該連通孔62aは連結パイプ64を介してクランク軸8の軸芯に形成されたクランク給油孔8eに連通されている。そしてこのクランク給油孔8eは、分岐孔8fを介してクランクピン65のピン孔65a内に連通し、該ピン孔65aは分岐孔65bを介してコンロッド7の大端部7aのニードル軸受7bの転動面に開口している。このようにして、オイルフィルタ59で濾過された潤滑油が上記ニードル軸受7bの転動面に供給される。
上記潤滑油ポンプ52は以下の構造を有する。左,右ケース61a,61bからなる二分割式のケーシング61の右ケース61bにポンプ室61cが凹設され、該ポンプ室61c内に回転子63が回転自在に配設されている。この回転子63の軸芯に回転軸62が貫通するように挿入配置され、該回転軸62と回転子63とがピン63aにより固定された概略構造のものである。なお、上記左ケース61aのポンプ室上流側,下流側に上記オイル吸込み通路58a,オイル吐出通路58bがそれぞれ接続されている。また66は潤滑油ポンプ52の吐出圧を所定値以下に保持するためのリリーフ弁であり、該潤滑油ポンプ52の吐出側の圧力が所定値以上となったとき該吐出側の圧力をオイル吸込み通路58a側に逃がすようになっている。
上記回転軸62は上記ポンプケース61を軸方向に貫通する筒状のものであり、図示右端部は上記クランク給油通路55aに開口している。また回転軸62の図示左端部には動力伝達用フランジ部62bが一体形成されている。該フランジ部62bは上記クランク軸8の右端面に対向しており、上記フランジ部62bとクランク軸8とはオルダム継ぎ手67により、若干の芯ずれを吸収可能に連結されている。
上記オルダム継ぎ手67は、詳細にはクランク軸8とフランジ部62bとの間に継ぎ手プレート67aを配置し、該継ぎ手プレート67aの連結孔67d内にクランク軸8の端面に植設されたピン67b及びフランジ部62bに植設されたピン67cを挿入した構造のものである。
また上記連結パイプ64は上記クランク軸8の右端開口と回転軸62の左端開口とを連通するためのものであり、クランク軸開口内周及び回転軸開口内周と連結パイプ64の外周との間はオイルシール64aによりシールされている。
ここで上述のようにクランク室2cは他のミッション室2d,フラマグ室9a,クラッチ室10a等と画成されており、これによりピストン6のストロークに伴って該クランク室2c内の圧力を正負に変動させ、該圧力変動により上記各室内の潤滑油を上述の潤滑油タンク51に戻すオイル戻し機構が構成されている。
詳細には、上記クランク室2cには吐出口2g及び吸込み口2hが形成されている。この吐出口2gにはクランク室内圧力が正のとき開く吐出口リード弁69が配設されており、上記吸込み口2hにはクランク室内圧力が負のとき開く吸込み口リード弁70が配設されている。
そして上記吐出口2gはクランク室2cから連通孔21を介してクラッチ室10aに連通し、該クラッチ室10aから連通孔2jを介してミッション室2dに連通し、さらに該ミッション室2dは連通孔2kを介してフラマグ室9aに連通している。このフラマグ室9aに連通するように形成された戻り口2mは戻りホース57c,オイルストレーナ57d,戻りホース57eを介して上記潤滑油タンク51に連通している。
ここで上記戻り口2mにはガイドプレート2nが配設されている。このガイドプレート2nは上記戻り口mを、底壁2pとの隙間aを狭くしかつ幅bを広く確保することにより潤滑油を確実に吐出する機能を有する。
また上記潤滑油タンク51には、該タンク内の空気中に含まれるオイルミストを遠心力で分離して上記クランク室2cに戻すオイル分離機構が接続されている。このオイル分離機構は、円錐状の分離室71の上部に、潤滑油タンク51の上部に一端が接続された導入ホース72aの他端を接線方向に接続し、該分離室71の底部に接続した戻りホース72bを上記クランク室2cの吸込み口2hに接続した構造のものである。なお、上記オイルミストが分離された空気は排気ホース72cを介して大気に排出される。
以上のように本実施形態では、クランク室2cをピストン6の昇降により圧力が変動するように略密閉空間とし、該クランク室2c内に流入した潤滑油を該クランク室2内圧力の変動により上記潤滑油貯留タンク51に送油するようにしたので、専用の送油ポンプ(スカベンジングポンプ)を不要にでき、構造の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
また、クランク室2cの送油通路接続部付近にクランク室内圧力が上昇したとき開き、低下したとき閉じる吐出口リード弁(出側逆止弁)69を配設したので、クランク室内の潤滑油をより確実に潤滑油貯留タンク51に送油できる。
また、上記潤滑油貯留タンク51内の油面より上側と上記クランク室2cとを戻りホース72a,72bで接続し、該クランク室2cの戻りホース接続部付近にクランク室2c内圧力が下降したとき開き、上昇したとき閉じる吐出口リード弁(吸込み側逆止弁)70を配設したので、ピストン上昇時にクランク室2c内に必要な空気が吸入され、ピストン6の下降時にクランク室2c内圧が高くなり、クランク室2c内の潤滑油をより一層確実に送油できる。
ちなみにクランク室内への外部からの空気供給経路を有しない場合、ピストン,シリンダボア間のシール性が高いと、ピストン上昇時にクランク室内が負圧となり、ピストンが下降してもクランク室内圧が負圧又は低い正圧にしかならず、送油ができなくなる場合が懸念される。
さらにまた、潤滑油ミストを分離する遠心式潤滑油ミスト分離器71を上記戻り通路72a,72bの途中に介設し、分離された潤滑油を戻りホース72bを介してクラク室2cに戻し、ミスト分が分離された空気を大気に排出するようにしたので、潤滑油ミスト分だけをクランク室内に戻すことができ、クランク室内に過剰の空気が流入することによる送油効率の低下を回避でき、大気汚染を防止しながらより確実にクランク室内の潤滑油を送油できる。
また、潤滑油ポンプ52をクランク軸8の一端に接続配置し、該潤滑油ポンプ52の吐出口を該潤滑油ポンプ52内に形成した連通孔(ポンプ内給油通路)62a及び連結パイプ64を介してクランク軸8内に形成されたクランク給油孔(クランク軸内給油通路)8eに連通させたので、簡単でかつコンパクトな構造によりクランク軸8の被潤滑部に潤滑油を供給できる。
また、上記クランク軸8と潤滑油ポンプ52とを軸直角方向の変位を吸収可能のオルダム継ぎ手67により接続するとともに、連通孔62aとクランク給油孔8eとを連結パイプ64で連通させ、該連結パイプ64と上記連通孔62a,クランク給油孔8eとの間に弾性を有するOリング64aを介在させたので、クランク軸8とポンプ軸62との間に多少の芯ずれが発生した場合でも支障なく潤滑油を上記被潤滑部に供給でき、必要な潤滑性を確保できる。
さらにまた、変速装置を構成する上記メイン軸14,ドライブ軸15の近傍に筒状のボス部60cを形成するとともに、これのボルト孔60a内にクランクケース結合用のケースボルト60を挿入し、該ボルト孔60a内面とケースボルト60外面との空間を潤滑油通路とし、上記ボス部60c変速ギヤに指向する分岐孔(潤滑油供給孔)60bを形成したので、専用の潤滑油供給通路を設けることなく変速ギヤの噛合面に潤滑油を供給できる。
また、上記ボルト孔60c内面とケースボルト60外面とで形成される潤滑油通路の他端を、上記ドライブ軸15内に形成されたドライブ軸孔(潤滑油通路)15aの反出力側開口に連通させたので、専用の潤滑油供給通路を設けることなくドライブ軸15の変速ギヤ摺動部に潤滑油を供給できる。
産業上の利用可能性
請求項1の発明によれば、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部をケース側フランジ部に螺挿したので、燃焼圧力による荷重のうち上記ヘッドボルトが負担する分だけシリンダボディに作用する荷重が減少し、従ってそれだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
即ち、例えばシリンダボディのヘッド側フランジ部とシリンダヘッドとをボルト締め締結し、ケース側フランジ部とクランクケースとをボルト締め締結しただけの構造の場合、上記燃焼圧力による荷重がそのままシリンダボディに作用することとなり、シリンダボディの肉厚等の如何によっては耐久性が不十分となり、極端な場合はシリンダボディにクラックが生じる懸念があるが、本発明ではこのような問題を回避できる。
請求項2の発明によれば、フランジ螺挿ヘッドボルトとケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合しているので、フランジ螺挿ヘッドボルトが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部に確実に伝達でき、シリンダボディの中間部に作用する荷重を軽減できる。
請求項3の発明によれば、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されているので、フランジ螺挿ヘッドボルトが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部により一層確実に伝達でき、さらに該荷重をケース側フランジ部がケースボルトを介してクランクケースに確実に伝達でき、シリンダボディに作用する荷重を確実に軽減できる。
また請求項4の発明によれば、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトを、シリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置したので、つまりケースボルトをクランク軸方向にシリンダボア中心側に寄せて配置したので、クランクケースのシリンダボディ取付合面のクランク軸方向寸法をフランジ螺挿ヘッドボルトの配置位置付近まで小さくでき、その結果クランクケースのクラク軸方向寸法を小さくできる。
請求項5の発明によれば、フランジ螺挿ヘッドボルトを、シリンダボディのケース側フランジ部に螺挿する構成を採用したので、つまりクランクケースには螺挿しないようにしたので、クランクケースに内蔵されているクランク軸ウェブとの干渉の問題を生じることはなく、フランジ螺挿ヘッドボルトを、シリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように、つまりクランク軸側に寄せて配置でき、シリンダヘッド,シリンダボディのクランク軸直角方向寸法を小さくできる。
請求項6の発明によれば、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの軸方向における一部を外方に露出させたので、それだけシリンダボディを軽量化できる。
請求項7の発明によれば、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトを配置したので、該第2直線方向中央のヘッドボルトはシリンダ軸線から離れて位置することとなるが、該ヘッドボルトについてはケース側フランジ部に達しない長さに設定したので、上記ケース側フランジ部は上記中央に対応する部分については最小限にすることができ、シリンダボディ,クランクケースの大型化を回避できる。
請求項8の発明によれば、シリンダボアと、これの側方に形成されたチェーン室との間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置したので、デッドスペースを有効利用してフランジ螺挿ヘッドボルトを配置できる。
請求項9の発明によれば、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの一端をケース側フランジ部に螺挿し、他端をシリンダヘッドに袋ナットで締め付け固定したので、シリンダヘッド上方スペースを大きくとることなくシリンダヘッドの取り外しが可能であり、エンジンのメンテナンス性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態によるエンジンの右側面図である。
図2は、上記エンジンの断面平面展開図である。
図3は、上記エンジンの動弁装置を示す左側面図である。
図4は、上記動弁装置の断面背面図である。
図5は、上記エンジンのバランサ装置を示す断面平面展開図である。
図6は、上記エンジンのシリンダヘッドの底面図である。
図7は、上記エンジンのシリンダボディの底面図である。
図8は、上記エンジンのシリンダボディ−シリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図9は、上記エンジンのシリンダボディ−シリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図10は、上記エンジンのシリンダボディ−クランクケース結合部の断面側面図である。
図11は、上記エンジンのバランサ装置を示す左側面図である。
図12は、上記バランサ装置の保持レバー取り付け部の拡大断面図である。
図13は、上記バランサ装置の回動レバー構成部品の側面図である。
図14は、上記バランサ装置のバランサ駆動ギヤの緩衝構造を示す側面図である。
図15は、上記バランサ装置の右側面図である。
図16は、上記エンジンの軸受ブラケットの断面右側面図である。
図17は、上記エンジンの軸受ブラケットの断面左側面図である。
図18は、上記エンジンの潤滑装置の模式構成図である。
図19は、上記潤滑装置の構成図である。
図20は、上記潤滑装置の潤滑油ポンプ回りの断面側面図である。
図21は、上記潤滑装置の断面左側面図である。
本発明は、クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造に関し、特にシリンダボディに作用する燃焼圧力による荷重を軽減してシリンダボディの耐久性を向上できるようにしたものに関する。
背景技術
例えば自動二輪車用エンジンの締結構造として、シリンダボディのクランクケース側フランジ部をクラクケースにボルト締め固定し、シリンダボディのシリンダヘッド側フランジ部をシリンダヘッドにボルト締め固定したものがある。
しかし上記従来構造の場合、単気筒大排気量エンジンのように燃焼圧力による大荷重が作用するものでは、この大荷重がシリンダボディの軸方向中間部において大きな引っ張り応力を生じることとなる。
そこで従来は、シリンダボディの上記軸方向中間部の肉厚を厚くすることにより必要な耐久性を確保するのが一般的である。しかしこのようなシリンダボディの厚肉化はエンジン重量の増大の原因となる。
一方、上記エンジン重量の増大を回避できる従来の締結構造として、例えば特開平8−28210号公報に記載されたものがある。この締結構造では、シリンダボディ2のクランクケース側フランジ部をクランクケース3,4にケースボルト11で締め付け固定し、シリンダボディ2のシリンダヘッド側フランジ部をシリンダヘッド1にボルト15で締め付け固定し、さらにシリンダヘッド1をシリンダボディ2を貫通するボルト17によりクランクケース3,4に締め付け固定している。
上記公報記載の締結構造の場合、シリンダヘッド1をシリンダボディ2を貫通するボルト17によりクランクケース3,4に締め付け固定しているので、シリンダボディに作用する燃焼圧力の一部をボルト17が負担することとなり、それだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
しかしながら上記公報に記載されたものでは、ヘッドボルトをシリンダヘッドの固定位置に合わせた位置でクランクケースに螺挿することとなるが、シリンダヘッド側には冷却水ジャケットがあるためこれを避けてヘッドボルトを外方に配置せざるを得なくなる。そのため平面視でシリンダ軸線から離れた位置にてクランクケースを締め付けることとなり、それだけクランクケースが不要に大型化してしまう。またヘッドボルトをクランクケースに螺挿する構造であるため、該ヘッドボルトをクランク軸のクランクウェブと干渉しない位置に配置するとともに、シリンダヘッドの固定位置とクランクケースの固定位置とを一致させなければならないので、設計上の自由度が低下する。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、クラクケースを不要に大型化することなく、またヘッドボルトの配置位置上の自由度を低下させることなく、エンジンの耐久性を確保できるエンジンの締結構造を提供することを課題としている。
発明の開示
請求項1の発明は、クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造において、シリンダボディのクランクケース側端部に形成されたケース側フランジ部をケースボルトによりクランクケースに締結し、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部を上記ケース側フランジ部に螺挿されるフランジ螺挿ヘッドボルトとしたことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合していることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトは、該ケースボルトからシリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、該ヘッドボルトからシリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの軸方向における一部が外方に露出していることを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1ないし6の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトが配置され、上記第2直線方向中央のヘッドボルトは上記ケース側フランジ部に達しない長さに設定されていることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1ないし7の何れかにおいて、シリンダボアの側方に形成され、クランク軸とカム軸とを連結するカム軸駆動チェーンが配置されるチェーン室と上記シリンダボアとの間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置したことを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1ないし8の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、一端は上記ケース側フランジ部に螺挿され、他端はシリンダヘッドに袋ナットで締め付け固定されていることを特徴としている。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1〜図21は、本発明の一実施形態によるエンジンを説明するための図である。図において、1は水冷式4サイクル単気筒5バルブエンジンであり、これはクランクケース2上にシリンダボディ3,シリンダヘッド4及びヘッドカバー5を積層締結し、シリンダボディ3のシリンダボア3a内に摺動自在に配置されたピストン6をコンロッド7によりクランク軸8に連結した概略構造を有する。
上記シリンダボディ3とクランクケース2とは、下フランジ部(ケース側フランジ部)3bを貫通する4本のケースボルト30aを上記クランクケース2のシリンダ側合面2e部分にねじ込むことにより結合されている。より具体的には、上記ケースボルト30aはアルミニウム合金製のクランクケース2の左,右壁部内にインサート鋳造により埋設された鉄合金製の軸受ブラケット12,12′(後述する)のボルト結合部(結合ボス部)12cに螺挿されている。なお、図10において、31aはクランクケース2とシリンダボディ3との位置決め用ドエルピンである。
また上記シリンダボディ3とシリンダヘッド4とは2本の短ヘッドボルト30b及び4本の長ヘッドボルト(フランジ螺挿ヘッドボルト)30cにより結合されている。上記短ヘッドボルト30bは、シリンダヘッド4の吸気ポート4c下部及び排気ポート下部に螺挿によって植設されて下方に延び、シリンダブロック3の上フランジ部3fを貫通して下方に突出している。そしてこの短ヘッドボルト30bの下方突出部に袋ナット32aを螺着することにより該上フランジ部3fひいてはシリンダボディ3がシリンダヘッド4のシリンダ側合面4aに締め付けられている。
また上記長ヘッドボルト30cは、シリンダボディ3の下フランジ部3bに螺挿により植設されて上方に延び、シリンダブロック3の上フランジ部3fからさらにシリンダヘッド4のフランジ部4bを貫通して上方に突出している。そしてこの長ヘッドボルト30cの上方突出部に袋ナット32bを螺着することにより該下フランジ部3bひいてはシリンダボディ3がシリンダヘッド4のシリンダ側合面4aに締め付けられている。なお、上記長ヘッドボルト30cの、シリンダボディ3の下フランジ部3bと上フランジ部3fとの間の部分30c′は外方に露出している。
ここでシリンダボア軸線Aと直角方向にみたとき(図10参照)、上記長ヘッドボルト30cと上記ケースボルト30aとは、シリンダボア軸線A方向において上記下フランジ部(ケース側フランジ部)3bの厚さと略同じだけ重合している。
また上記シリンダボア軸線A方向にみたとき(図6,図7参照)、上記長ヘッドボルト30cと上記ケースボルト30aとは以下の関係をなすように、かつ近接配置されている。即ち上記ケースボルト30aは、該ケースボルト30aからシリンダボア軸線Aを通るクランク軸と直角な第1直線C1までの距離a1が上記長ヘッドボルト30cから第1直線C1までの距離a2より小さくなるように、つまりクランク軸方向にシリンダボア中心に寄せて配置されている。
また上記長ヘッドボルト30cは、該ヘッドボルト30cからシリンダボア軸線Aを通るクランク軸と平行な第2直線C2までの距離b2が上記ケースボルト30aから第2直線C2までの距離b1より小さくなるように、つまりクランク軸側に寄せて配置されている。
さらにまた上記第2直線C2を挟んだ両側のそれぞれに3本のヘッドボルト30c,30b,30cが配置されており、そのうちの上記第2直線C2方向中央のヘッドボルトが上記短ヘッドボルト30bとなっている。この短ヘッドボルト30bは上記上フランジ部3fに対応した長さで、かつ上記下フランジ部3bに達しない長さに設定されている。
そして上記第2直線C2方向両側に上記長ヘッドボルト30c,30cが配置されている。ここで、シリンダボア3aのクランク軸方向一側(図7左側)には、クランク軸の回転をカム軸に伝達するカム軸駆動チェーン40が配置されるチェーン室3dが形成されている。上記第2直線C2方向一側に位置する長ヘッドボルト30cは、上記チェーン室3dと上記シリンダボア3aとの間に配置されている。
このようにシリンダボディ3とシリンダヘッド4とを結合するに当たって、シリンダボディ3の上フランジ部3fを短ヘッドボルト30b及び袋ナット32aでシリンダヘッド4に締め付け固定するだけでなく、クランクケース2の合面2eにボルト締め結合された下フランジ部3bに長ヘッドボルト30cを植設し、該長ヘッドボルト30c及び袋ナット32bによりシリンダボディ3をシリンダヘッド4のフランジ部4bに締め付け固定したので、燃焼圧力による引っ張り荷重をシリンダボディ3及び上記4本の長ヘッドボルト30cで負担することとなり、それだけシリンダボディ3に作用する荷重を軽減できる。その結果、シリンダボディ3の特に軸方向中間部に発生する応力を小さくでき、該シリンダボディ3の肉厚を薄くした場合でも耐久性を確保できる。
ちなみに、シリンダボディ3の上フランジ部3fのみをシリンダヘッド4に結合した場合には、シリンダボディ3の軸方向中間部に過大な引張り応力が発生し、極端な場合は該部分にクラックが生じる懸念があるが、本実施形態では上記長ヘッドボルト30cの存在により上記過大な応力のシリンダボディ中間部での発生を回避でき、クラックの発生を防止できる。
また上記長ヘッドボルト30cを下フランジ部3bに植設するにあたり、該長ヘッドボルト30cをクランクケース締め付け用のケースボルト30aの近傍に配置したので、長ヘッドボルト30cが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部3b伝達し、さらに該荷重をケース側フランジ部3bがケースボルト30aを介してクランクケース2に伝達し、このようにしてシリンダボディ3に作用する荷重を確実に軽減できる。この点から上記荷重に対するシリンダボディ3の耐久性を向上できる。
また長ヘッドボルト30cとケースボルト30aとをシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部3bの厚さと略同じだけ重合させたので、上記長ヘッドボルト30cが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部3bに確実に伝達でき、シリンダボディ3の中間部に作用する荷重を軽減できる。
またシリンダボア軸線A方向にみたとき、上記ケースボルト30aを、シリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線C1までの距離a1が上記長ヘッドボルト30cから第1直線C1までの距離より小さくなるように配置したので、つまりケースボルト30aをクランク軸方向にシリンダボア中心側に寄せて配置したので、図7に二点鎖線で示すように、クランクケース2のシリンダボディ取付合面2eのクランク軸方向寸法を長ヘッドボルト30cの配置位置付近まで小さくでき、その結果クランクケース2のクラク軸方向寸法を小さくできる。
さらにまた長ヘッドボルト30cを、シリンダボディ2のケース側フランジ部3bに螺挿する構成を採用したので、つまりクランクケース2のシリンダボディ取付合面2eには螺挿しないようにしたので、クランクケース2に内蔵されているクランク軸8のウェブ8bとの干渉の問題を生じることはなく、長ヘッドボディ30cを、シリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線C2までの距離b2が上記ケースボルト30aから第2直線C2までの距離b1より小さくなるように、つまりクランク軸側に寄せて配置でき、シリンダヘッド4,シリンダボディ3のクランク軸直角方向寸法を小さくできる。
また、上記長ヘッドボルト30cの軸方向における一部30c′をシリンダボルト3の側壁から外方に露出させたので、長ヘッドボルト30cを囲む壁を少なくできそれだけシリンダボディ3を軽量化できる。
また、上記第2直線C2を挟んだ両側にそれぞれ3本のヘッドボルトを配置したので、該第2直線C2方向中央のヘッドボルト30bはシリンダボア軸線Aからクランク軸直角方向に離れて位置することとなるが、該ヘッドボルト30bについてはケース側フランジ部3bに達しない長さに設定したので、上記ケース側フランジ部3bは上記中央のヘッドボルト30bに対応する部分については最小限にすることができ、シリンダボディ,クランクケースの大型化を回避できる。
また、シリンダボア3aと、これの側方に形成されたチェーン室3dとの間に上記長ヘッドボルト30cを配置したので、デッドスペースを有効利用して長ヘッドボルト30cを配置できる。
さらにまた、上記長ヘッドボルト30cの一端をケース側フランジ部3bに螺挿し、他端をシリンダヘッド4に袋ナット32bで締め付け固定したので、シリンダヘッド上方スペースを大きくとることなくシリンダヘッドの取り外しが可能であり、エンジンのメンテナンス性を確保できる。
ここで上記右側の軸受ブラケット12′は、図5,図16に示すように、クランク軸8の右側軸受11a′が軸受穴12a内に圧入等により勘合挿入されるボス部12bを有する。そしてこのボス部12bの、クランク軸8方向に見た時、該クランク軸8を挟んだ前側及び後側部分から上記ボルト結合部12c,12cが上方に、クランクケース2のシリンダ側合面2eの近傍まで延びている。
また左側の軸受ブラケット12では、図5,図17に示すように、クランク軸8方向に見た時、該クランク軸8を挟んだ前側及び後側部分から上記ボルト結合部12c,12cが上方に、クランクケース2のシリンダ側合面2eの近傍まで延びている。またボス部12bには鉄製で後述するバランサ駆動ギヤ25aより大きい外径を有する軸受カラー12dが圧入されるカラー穴12eが形成されている。そしてこの軸受カラー12dの軸受穴12a内に左側のクランク軸軸受11aが勘合挿入されている。
ここで上記軸受カラー12dは、クランク軸8に上記バランサ駆動ギヤ25aを有するギヤ体25が圧入装着された状態で該クランク軸8をクランクケース2内に組み立てることができるようにするためのものである。
また図5に示すように、上記クランク軸8の左軸部8cの上記ギヤ体25と軸受11aとの間の部分にはシールプレート25dが介在されている。このシールプレート25dの内径側部分は上記ギヤ体25と軸受11aのインナレースとで挟持され、その外径側部分と軸受11aのアウタレースとの間には両者の干渉を回避する僅かな隙間がある。また該シールプレート25dの外周面は上記軸受カラー12dのフランジ部12hの内周面の摺接している。
さらにまたクランク軸8の右軸部8c′の上記軸受11a′とカバープレート17g間部分にはシール筒17iが介在されている。このシール筒17iの内周面は上記右軸部8c′に勘合固定されている。またシール筒17iの外周面にはラビリンス構造のシール溝が形成され、かつ右ケース部2bに形成されたシール孔2pの内面に摺接している。
このようにクランク軸8の左,右軸部8c,8c′の軸受11a,11a′外側にシールプレート25d,シール筒17iを介在させることによりクランク室2c内の圧力洩れが防止されている。
このように本実施形態によれば、アルミニウム合金製クランクケース2に鋳ぐるまれたクランク軸支持用の鉄合金製軸受部材12,12′の、シリンダボア軸線Aを挟んだ両側にシリンダボディ3側に延びるボルト結合部(結合ボス部)12c,12cを一体形成し、該ボルト結合部12cにシリンダボディ3をクランクケース2に結合するためのケースボルト30aを螺挿したので、燃焼圧力による荷重をシリンダボア軸線Aを挟んだ前,後2箇所のボルト結合部12cにより均等に負担することができ、シリンダボディ3とクランクケース2との結合剛性を向上できる。
また、クランク軸8の近傍に該クランク軸8と平行に配置されているバランサ軸22,22′の少なくとも一端部を上記鉄合金製の軸受部材12,12′により支持したので、バランサ軸22,22′の支持剛性を高めることができる。
さらにまた、鉄製の軸受ブラケット12,12′をアルミニウム合金製のクランクケース2内に埋設するに当たり、ボルト結合部12cの上端面12fをクランクケース2のシリンダ側合面2eに露出させることなく内方に位置させたので、クランクケース2とシリンダブロック3との接合面に硬度,材質の異なる金属部材が混在することがなく、シール性の低下を回避できる。即ち、鉄製のボルト結合部12cの上端面12fをアルミニウム合金製のシリンダボディ3の下フランジ3bに形成されたケース側合面3cに当接させると熱膨張係数差等が起因してシール性が低下する。
また左側の軸受ブラケット12においては、バランサ駆動ギヤ25aより外径の大きい軸受カラー12を軸受11aの外周に装着したので、上記バランサ駆動ギヤ25aをクランク軸8に圧入等(一体形成でも勿論構わない)により装着固定した状態で該クランク軸8をクランクケース2内に組み付ける際に、該バランサ駆動ギヤ25aが軸受ブラケット12のボス部12bの最小内径部に干渉することがなく、支障無く組み付けできる。
上記クランクケース2は左,右ケース部2a,2bからなる左,右2分割式のものである。左ケース部2aには左ケースカバー9が着脱可能に装着されており、該左ケース部2aと左ケースカバー9で囲まれた空間はフラマグ室9aとなっている。このフラマグ室9a内に、クランク軸8の左端部に装着されたフラマグ式発電機35が収容されている。なお、上記フラマグ室9aは、後述するチェン室3d,4dを介してカム軸配置室に連通しており、カム軸を潤滑した潤滑油の大部分はチェン室4d,3dを介してフラマグ室9a内に落下する。
また上記右ケース部2bには右ケースカバー10が着脱可能に装着されており、該右ケース部2bと右ケースカバー10とで囲まれた空間はクラッチ室10aとなっている。
上記クランクケース2の前部にはクランク室2cが、後部にはミッション室2dがそれぞれ形成されている。上記クランク室2cは上記シリンダボア3aに向かって開放され、かつミッション室2d等他の室とは実質的に画成されている。そのため上記ピストン6の上昇下降によりミッション室2d内の圧力が変動し、ポンプとして機能するようになっている。
上記クランク軸8は上記クランク室2c内に左,右のアーム部8a,8a及び左,右のウェイト部8b,8bを収容するように配置されている。このクランク軸8は、上記左のアーム部8a,ウェイト部8b及び軸部8cを一体化した左クランク軸部分と右のアーム部8a,ウェイト部8b及び軸部8c′を一体形成した右クランク軸部分とを筒状のクランクピン8dを介して一体的に結合した組立式のものである。
上記左,右の軸部8c,8c′は左,右ケース部2a,2bによりクランク軸受11a,11a′を介して回転自在に支持されている。この軸受11a,11a′は、上述の通り、アルミニウム合金製の左,右ケース部2a,2bにインサート鋳造された鉄合金製の軸受ブラケット12,12′の軸受穴12a内に圧入されている。
上記ミッション室2d内には変速機構13が収納配設されている。この変速機構13は、クランク軸8と平行に配置されたメイン軸14とドライブ軸15とを備え、メイン軸14に装着された1速〜5速ギヤ1p〜5pと、ドライブ軸15に装着された1速〜5速ギヤ1w〜5wとを常時噛合させた常時噛み合い式の構造のものである。
上記メイン軸14は、上記左,右ケース部2a,2bによりメイン軸軸受11b,11bを介して軸支され、上記ドライブ軸15は、上記左,右ケース部2a,2bによりドライブ軸軸受11c,11cを介して軸支されている。
上記メイン軸14の右端部は上記右ケース部2bを貫通して右側に突出しており、該突出部に上述のクラッチ機構16が装着され、該クラッチ機構16は上記クラッチ室10a内に位置している。そしてこのクラッチ機構16の減速大ギヤ(入力ギヤ)16aは上記クランク軸8の右端部に固定装着された減速小ギヤ17に噛合している。
上記ドライブ軸15の左端部は左ケース部2aから外方に突出しており、該突出部にドライブスプロケット18が装着されている。このドライフスプロケット18は後輪のドリブンスプロケットにドライブチェンにより連結されている。
本実施形態のバランサ装置19は、上記クランク軸8を挟むように配置された、実質的に同一構造の前,後バランサ20,20′からなる。この前,後バランサ20,20′は、非回転式のバランサ軸22,22′とこれにより軸受23,23を介して回転自在に支持されたウェイト24,24とからなる。
ここで上記バランサ軸22,22′は、上記左,右ケース部2a,2b同士をクランク軸方向に締め付け結合するためのケースボルト(結合ボルト)に兼用されている。該各バランサ軸22,22′は上記軸支されたウェイト24のエンジン幅方向内側に形成されたフランジ部22aを左,右ケース部2a,2b内にインサートされた上述の軸受ブラケット12′,12のボス部12gに当接させ、反対側端部に固定ナット21b,21aを螺装することにより左,右ケース部2a,2bを結合している。
上記ウェイト24は略半円状のウェイト本体24aとこれに一体形成された円形のギヤ支持部24bとからなり、該ギヤ支持部24bにはリング状のバランサ従動ギヤ24cが装着固定されている。なお、24bはウエイト本体24aと反対側の重量をできるだけ小さくする肉抜き穴である。
上記後側のバランサ20′に装着されたバランサ従動ギヤ24cは上記クランク軸8の左の軸部8cに圧入により固着されたギヤ体25に相対回転可能に装着されたバランサ駆動ギヤ25aに噛合している。
なお、25bは上記ギヤ体25に一体形成されたタイミングチェン駆動用のスプロケットであり、図11に示すようにバルブタイミングを合わせるための合せワーク25cを有する。上記ギヤ体25はクランク軸8が圧縮上死点位置にあるときに上記合せマーク25cがクランク軸方向に見てシリンダボア軸線Aに一致するようにクランク軸8に圧入される。
また前側のバランサ20に装着されたバランサ従動ギヤ24cは上記クランク軸8の右の軸部8c′に装着固定された減速小ギヤ17に相対回転可能に支持されたバランサ駆動ギヤ17aに噛合している。
ここで上記後側用のバランサ駆動ギヤ25aはギヤ体25に対して相対回転可能に支持されており、また前側用のバランサ駆動ギヤ17aは減速小ギヤ17に対して相対回転可能に支持されている。そして上記バランサ駆動ギヤ25a,17aとギヤ体25,減速小ギヤ17との間にはU字形状の板ばねからなる緩衝ばね33が介在されており、これによりエンジンのトルク変動等による衝撃がバランサ20,20′に伝達されるのを抑制するようになっている。
ここでは上記前側駆動用のバランサ駆動ギヤ17aについて、図14に沿ってさらに詳述するが、後側駆動用のバランサ駆動ギヤ25aについても同様である。上記バランサ駆動ギヤ17aはリング状をなしており、減速小ギヤ17の側面にこれよりも小径に形成されたスライド面17bにより相対回転可能に支持されている。そしてこのスライド面17bには多数のU字状のばね保持溝17cがクランク軸芯を中心とする放射状をなすように凹設されており、該ばね保持溝17c内に上記U字状をなす緩衝ばね33が挿入配置されている。この緩衝ばね33の開口側端部33a,33aは上記バランサ駆動ギヤ17aの内周面に凹設された係止凹部17dの前,後段部に係止している。
上記減速小ギヤ17とバランサ駆動ギヤ17aとの間にトルク変動等により相対回転が生じると緩衝ばね33が上記端部33a,33aの間隔が狭くなる方向に弾性変形してトルク変動を吸収する。なお、17gは上記緩衝ばね33を保持溝17c内に保持するためのカバープレート、17hは減速小ギヤ17とクランク軸8を結合するキーであり、また17e,17fは減速小ギヤ17とバランサ駆動ギヤ17aの組立時の合せマークである。
上記バランサ20,20′には、バランサ従動ギヤ24c,24cと、バランサ駆動ギヤ25a,17aとの間のバックラッシュを調整するための機構が設けられている。この調整機構は、上記バランサ軸22,22′のバランサ軸線と上記バランサ従動ギヤ24cの回転中心線とを極僅か偏心させた構成となっている。即ち、上記バランサ軸22,22′をバランサ軸線回りに回動させると、上記偏心により上記バランサ従動ギヤ24cの回転中心線と上記バランラ駆動ギヤ25a,17aの回転中心線との間隔が僅かに変化し、もってバックラッシュが変化するようになっている。
ここで、上記バランサ軸22,22′をバランサ軸線回りに回転させるための機構は前側バランサ20と後側バランサ20′とでは異なる。まず、後側バランサ20′では、後側のバランサ軸22′の左端部に六角形状の係止突部22bが形成され、該係止突部22bに回動レバー26の一端に形成されたスプライン状(多角形星形状)の係止穴26aが係止している。またこの回動レバー26の他端部には上記バランサ軸線を中心とする円弧状のボルト穴26bが形成されている。
上記ボルト穴26bに挿入された固定ボルト27はガイドプレート28に植設されている。このガイドプレート28は概ね円弧状をなしており、クランクケース2にボルト締め固定されている。なお、このガイドプレート28は、潤滑油の流れを調整する機能をも有する。
後側のバランサ20′のバックラッシュ調整は、上記固定ナット21aを緩めた状態で上記回動レバー26を上記バックラッシュが適正な状態となるように回動した後、上記固定ボルト27a,ナット27bにより回動レバー26を固定することにより行われ、その後上記固定ナット21aが締め付けられる。
上記前側のバランサ軸22の左端部には断面円形の両側に平坦部22eを形成してなる断面小判状の把持部22fが形成されている(図12参照)。該把持部22fにはこれの外周形状に合致する内周形状を有するカラー29aが装着され、さらに該カラー29aの外側に保持レバー29の保持部29bが軸方向移動可能かつ相対回転不能に装着されている。この保持レバー29の先端部29eは左ケース部2aのボス部2fにボルト29fで固定されている。また、上記保持レバー29の保持部29bには締め付け用スリット29cが形成されており、固定ボルト29dを締め込むことにより上記カラー29aひいてはバランサ軸22の回転を阻止するようになっている。さらにまた上記バランサ軸22のカラー29aより軸方向外側にワッシャを介して上記固定ナット21bが螺着されている。
前側のバランサ20のバックラッシュの調整は、上記固定ナット21bを緩めて、好ましくは取り外して上記バランサ軸22の把持部22fを工具で把持してバックラッシュが適正な状態となるように回動させた後、上記固定ボルト29dを締め込むことにより行われ、その後上記固定ナット21bが締め付けられる。
また上記バランサ軸22,22′の係止突部22bの上部には潤滑油導入部22cが円弧状に切欠き形成されている。該導入部22cには、ガイド孔22dが開口し、該ガイド孔22dは該バランサ軸22内に延びて外周面下部に貫通し、これにより上記潤滑油導入部22cを上記バランサ軸受23の内周面に連通させている。このようにして上記潤滑油導入部22cに落下した潤滑油がバランサ軸受23に供給される。
ここで上記ウェイト24及びバランサ従動ギヤ24cは、前バランサ20においてはクランク軸方向右側端部に配置されているのに対し、後バランサ20′においては左側端部に配置されている。また上記バランサ従動ギヤ24cはウェイト24に対して、前,後バランサ20,20′とも右側に位置しており、従ってウェイト24とバランサ従動ギヤ24cは前,後とも同一形状に設定されている。
このよう本実施形態によれば、前バランサ軸(第1バランサ軸)22のクランク軸方向右側(一側)にバランサ24のウェイト本体24a及びバランサ従動ギヤ24cを配設し、後バランサ軸(第2バランサ軸)22′のクランク軸方向左側(他側)にウェイト本体24a及びバランサ従動ギヤ24cを配設したので、2軸式バランサ装置を設ける場合のクランク軸方向における重量バランスの低下を回避できる。
また、上記前,後バランサ軸22,22′を左,右ケース部2a,2bを結合するケースボルトに兼用したので、2軸式バランサ装置を採用する場合に構造の複雑化,部品点数の増加を抑制しながらクランクケースの結合剛性を高めることができる。
また上記各バランサウェイト本体24aとバランサギヤ24cとを一体化し、かつバランサ軸22,22′により回転自在に支持したので、バランサウェイト本体24a及びバランサ駆動ギヤ24cからなるウェイト24のみを回転駆動すれば良く、バランサ軸自体を回転駆動する必要がない分、エンジン出力の有効利用を図ることができる。
またバランサウェイトとバランサ軸とが一体化されているものに比較して組立上の自由度を向上できる。
また、上記バランサ従動ギヤ24cの回転中心線をバランサ軸22,22′の軸線に対して偏位させたので、簡単な構造により、またバランサ軸を回転させるという簡単な操作によって上記バランサ従動ギヤ24cとクランク軸8側のバランサ駆動ギヤ25a,17aとのバックラッシュを調整することが可能であり、騒音の発生を防止できる。
上記バックラッシュ調整は、前のバランサ軸22では、該バランサ軸22の車幅方向左側に形成された把持部22fを工具で把持して該バランサ軸22を回動させ、また後のバランサ軸22′ではこれの左側に設けられた回動レバー26を回動させることにより行われる。このように前,後のバランサ軸22,22′の何れもエンジン左側からバックラッシュの調整を行うことが可能であり、バックラッシュ調整作業を能率よく行なうことができる。
また、バランサ従動ギヤ24cと噛合するクランク軸8側のバランサ駆動ギヤ17aを、クランク軸8に固定される減速小ギヤ17のスライド面17bに相対回転可能に配設した構造とし、該スライド面17dに凹設したばね保持溝17cにU字状の緩衝ばね33を配設したので、コンパクトな構造によりエンジンのトルク変動等による衝撃を吸収してバランサ装置を円滑に作動させることができる。なお、バランサ駆動ギヤ25a側についても同様である。
さらにまた上記前側のバランサ軸22の右端部にはこれと同軸をなすように冷却水ポンプ48が配設されている。この冷却水ポンプ38の回転軸は、後述する潤滑油ポンプ52の場合と同様の構造を有するオルダム継ぎ手等によりバランサ軸22に、これとの間の若干の芯ずれを吸収可能に接続されている。
本実施形態の動弁装置は、上記クランク軸8により上記ヘッドカバー5内に配置された吸気カム軸36,及び排気カム軸37を回転駆動するようになっている。具体的には、上記クランク軸8の左の軸部8cに圧入装着されたギヤ体25のクランクスプロケット25bと、上記シリンダヘッド4に植設された支持軸39によって軸支された中間スプロケット38aとがタイミングチェン40で連結され、該中間スプロケット38aに一体形成された、該中間スプロケット38aより小径の中間ギヤ38bが上記吸気,排気カム軸36,37の端部に固着された吸気,排気ギヤ41,42に噛合している。なお、上記タイミングチェン40はシリンダブロック3,シリンダヘッド4の左壁に形成されたチェン室3d,4d内を通るように配置されている。
上記中間スプロケット38a及び中間ギヤ38bは、シリンダヘッド4のチェン室4dをシリンダボア軸線A上にてクランク軸方向に貫通する上記支持軸39により2組のニードル軸受44を介して軸支されている。上記支持軸39はそのフランジ部39aが2本のボルト39bによりシリンダヘッド4に固定されている。なお、39c,39dはシール用ガスケットである。
ここで上記2組のニードル軸受44,44には市販品(規格品)が採用されており、該各軸受41,41間には間隔調整用のカラー44aが配設され、両端にはスラスト荷重を受けるためのスラストワッシャ44b,44bが配設されている。このスラストワッシャ44bは中間スプロケットの端面に摺接する大径部と上記ニードル軸受44に向けて軸方向に突出する段部とを有する段付き形状のものである。
このように2組の軸受44,44の間に間隔調整用のカラー44aを介在させたので、カラー44aの長さ調整によりニードル軸受として市販の規格品を採用することができ、コストを低減できる。
またスラストワッシャ44bとして段付き形状のものを採用したので、上記中間スプロケット38aの組立作業性を向上できる。即ち、中間スプロケット38aの組立に当たっては、該中間スプロケット38a及び中間ギヤ38bを両端にスラストワッシャを落下しないよう位置させてチェン室4d内に配置した状態で支持軸39を外側から挿入することとなるが、上記スラストワッシャ44bの段部を中間スプロケット38aの軸穴に係止させておくことにより該スラストワッシャ44bの落下を防止でき、従ってそれだけ組立性を改善できる。
また上記支持軸39にはシリンダヘッド4に形成されたオイル導入孔4eによりカム室内から導入された潤滑油をニードル軸受44に供給するオイル孔39eが形成されている。
また上記中間スプロケット38aには4つの肉抜き穴38cと2つの肉抜き兼用組立時覗き穴38c′が60度間隔毎に形成されている。そして上記中間ギヤ38bの覗き穴38c′の略中心に位置する歯に合せマーク38dが刻印されており、吸気,排気カムギヤ41,42の、上記合せマーク38dに対応する2つの歯にも合せマーク41a,42aが刻印されている。ここで左,右の合せマーク38d,38dと合せマーク41a,42aを合致させると、吸気,排気カム軸41,42は圧縮上死点に位置するようになっている。
さらにまた、上記中間スプロケット38aの、上記合せマーク38dと41a,42aが合致した時点でシリンダヘッド4のカバー側合面4f上に位置する部分に合せマーク38e,38eが形成されている。
バルブタイミングを合わせるには、まず上述の合せマーク25c(図11参照)をシリンダボア軸線Aに一致させることによりクランク軸8を圧縮上死点位置に保持する。また支持軸39を介してシリンダヘッド4に取り付けられている上記中間スプロケット38a及び中間ギヤ38bを、該中間スプロケット38aの合せマーク38eがカバー側合面4fに一致するように位置決めし、この状態でカムスプロケット25bと中間スプロケット38aとをタイミングチェン40で連結する。そして上記吸気,排気カム軸36,37の上記吸気,排気カムギヤ41,42を、これらの合せマーク41a,42aが中間ギヤ38bの合せマーク38dと一致するよう覗き穴38c′から確認しながら該中間ギヤ38bに噛合させ、上記吸気,排気カム軸36,37をシリンダヘッド4の上面にカムキャリアを介して固定する。
このように、大径の中間スプロケット38aに軽量化用肉抜き兼用の覗き穴38c′を設け、該覗き穴38c′から背面側の小径の中間ギヤ38bの合せマーク38dとカムギヤ41,42の合せマーク41a,42aとの一致状態を確認できるようにしたので、小径の中間ギヤ38bを大径の中間スプロケット38aの背面に配設しながら、中間ギヤ38bとカムギヤ41,42との噛合位置を容易確実に目視により確認でき、バルブタイミングを支障なく合わせることができる。
また中間ギヤ38bを中間スプロケット38aの背面側に配置できるので、中間ギヤ38bと噛合するカムギヤ41,42からカムノーズ36aまでの寸法を短くでき、それだけカム軸の捩れ角を小さくでき、バルブの開閉タイミングの制御精度を向上できる。また、カム軸回りをコンパクト化できる。
即ち、例えば中間ギヤ38bを中間スプロケット38aの前面に配置した場合には、バルブタイミング合せを容易に行うことができるが、上述のカムギヤ41,42からカムノーズまでの寸法が長くなり、それだけカム軸の捩れ角が大きくなってバルブ開閉タイミングの制御精度が低下する。
また中間ギヤ38bを中間スプロケット38aの前面に配置した場合には、中間スプロケット38aとカム軸36,37との干渉を回避するために中間スプロケット支持軸39とカム軸36,37との間隔を拡げる必要があり、それだけカム軸回りが大型化する懸念がある。
ここで上記中間ギヤ38bとカムギヤ41,42との間にはバックラッシュ調整機構が設けられている。この調整機構は、吸気カムギヤ41及び排気カムギヤ42を、それぞれドライブギヤ(動力電動ギヤ)46とシフトギヤ((調整ギヤ)45との2枚のギヤで構成し、かつドライブギヤ46,シフトギヤ45の角度位置を調整可能とした構造のものである。
即ち、カム軸36,37の端部に形成されたフランジ部36b,37bにシフトギヤ45,及びドライブギヤ46が4つの周方向に長い長孔45a,46a及び4本の長ボルト68aで角度位置を調整可能に固定されるとともに、外側に配置されているドライブギヤ46に逃げ部46bが切欠き形成され、該逃げ部46bを利用してシフトギヤ45のみが2つの長孔45b及び2本の短ボルト68bにより角度位置を調整可能に固定されている。
バックラッシュの調整は以下の手順で行われる。なお本実施形態エンジンでは、中間ギヤ38bは図3に示すようにエンジンの左側から見た状態で反時計回りに回転する。従って吸気カムギヤ41,排気カムギヤ42は何れも時計回りに回転する。またここではバックラッシュ調整を吸気カムギヤ41について説明するが、排気カムギヤ42についても同様である。
まず、吸気側カムギヤ41の固定ボルト68a,68bを全て緩め、シトフギヤ45を時計回りに回動させて該シトフギヤ45の時計方向前側の歯面を中間ギヤ38bの反時計方向後側の歯面に軽く当接させ、この状態で2本の短ボルト68bによりシフトギヤ45をカム軸36のフランジ部36bに固定する。そしてドライブギヤ46を反時計方向に回動させてこれの反時計方向前側の歯面(被駆動面)を中間ギヤ38の反時計方向前側の歯面(駆動面)に所要のバックラッシュが得られるように当接させ、この状態で4本の長ボルト68aを締め込むことによりドライブギヤ46及びシフトギヤ45を吸気カム軸36に固定する。
このように、吸気,排気カムギヤ41,42をドライブギヤ(動力伝達ギヤ)46と該ギヤに対して相対回転可能のシフトギヤ(調整ギヤ)45とで構成したので、シフトギヤ45をドライブギヤ46に対して回転方向前進側又は後進側に相対回転させることによりバックラッシュを調整することができる。
なお、本実施形態では、カムギヤ41,42を構成するドライブギヤ46とシフトギヤ45の両方ともがカム軸に対して相対回転可能の場合を説明したが、該ドライブギヤ46,シフトギヤ45の何れか一方のギヤを相対回転可能とし、他方のギヤはカム軸に一体化したものであっても良い。この場合カム軸に一体化されている方を動力伝達用ギヤとすることが望ましい。このような構成の場合でも、上記実施形態におけるのと同様の作用効果が得られる。
また本実施形態ではチェン駆動方式のものに本発明を適用した場合を説明したが、歯付きベルトによる駆動方式にも勿論本発明を適用できる。
次に潤滑構造について説明する。
本実施形態エンジンの潤滑装置50は、別体の潤滑油タンク51内に貯留された潤滑油を車体フレーム56のダウンチューブ56cを介して潤滑油ポンプ52で吸引加圧し、該ポンプ52からの吐出油をカム潤滑系53と、ミッション潤滑系54と、クランク潤滑系55の3系統に分離して各被潤滑部に供給し、これらの各被潤滑部を潤滑した潤滑油を上記ピストン6の昇降に伴うクランク室2c内の圧力変動を利用して上記潤滑油タンク51に戻すように構成されている。
上記潤滑油タンク51は、車体フレーム56のヘッドパイプ56a,メインチューブ56b,ダウンチューブ56c,及び補強ブラケット56dで囲まれた空間に一体形成されている。この潤滑油タンク51は上記ダウンチューブ56cから該ダウンチューブ56cの下部同士を接続するクロスパイプ56eに連通している。
そして上記クロスパイプ56eはこれに接続された出口管56f,オイルホース57a,継ぎ手パイプ57b,クランクケースカバーに形成されたオイル吸込み通路58aを介して上記潤滑油ポンプ52の吸込み口に接続されている。この潤滑油ポンプ52の吐出口はオイル吐出通路58b,外部接続室58c,オイル通路58dを介してオイルフィルタ59に接続され、該オイルフィルタ59の二次側で上述の3つの潤滑系53,54,55に分離される。
上記オイルフィルタ59は、上記右ケースカバー10に凹設されたフィルタ凹部10bにフィルタカバー47を着脱自在に装着して構成されたフィルタ室59d内にオイルエレメント59eを配設してなるものである。
上記カム潤滑系53は、上記フィルタカバー47から上記フィルタ凹部10bの外側に形成されたオイル通路のカム側出口59aにT字状の潤滑油パイプの縦辺部53aの下端を接続し、該潤滑油パイプの横辺部53bの左,右端をカム軸給油通路53cに接続し、該通路53cを介して潤滑油をカム軸36,37の軸受部等の被潤滑部に供給するようにした概略構成を有する。
上記ミッション潤滑系54は以下の構成を有する。上記オイルフィルタ59のミッション側出口59bに、右ケース部2b内に形成された右ミッション給油通路54aが接続され、該給油通路54aは左ケース部2a内に形成された左ミッション給油通路54bを介してメイン軸14の軸芯に形成されたメイン軸孔14a内に連通している。そしてこのメイン軸孔14aは複数の分岐孔14bによりメイン軸14と変速ギヤとの摺動部に連通しており、該メイン軸孔14aに供給された潤滑油が分岐孔14bを通って上記摺動部に供給される。
また上記左ミッション給油通路54bの途中部分は左,右ケース部2a,2bを結合するためのケースボルト60を挿通するボルト孔60aに連通している。このボルト孔60aは、上記左,右ケース部2a,2bにこれらの合面で対向当接するよう形成された筒状のボス部60c,60cに上記ケースボルト60の外径より若干大きい内径の孔を形成してなるものである。このボス部60cはメイン軸14とドライブ軸15のギヤ列の噛合部近傍に位置しており、また上記ボルト孔60a内の潤滑油を上記噛合部に向けて噴出させる複数の分岐孔60bが形成されている。なお、図19におけるボルト60は、左,右ケース部分を展開して記載されているがこれらは同一ボルトである。
さらにまた上記ボルト孔60aの右端部は連通孔54cを介して上記ドライブ軸15の軸芯に形成されたドライブ軸孔15aに連通している。そしてこのドライブ軸孔15aは、その左側部分が仕切壁15cで閉塞され、また複数の分岐孔15bによりドライブ軸15とドライブギヤとの摺動部に連通している。このようにして、該ドライブ軸孔15aに供給された潤滑油が分岐孔15bを通って上記摺動部に供給される。
上記クランク潤滑系55は以下の構成を有する。上記フィルタカバー47に、クランク側出口59cから潤滑油ポンプ52に向けて延びるようにクランク給油通路55aが形成され、該通路55aを上記潤滑油ポンプ52の回転軸62の軸芯に貫通形成された連通孔62aに連通させ、さらに該連通孔62aは連結パイプ64を介してクランク軸8の軸芯に形成されたクランク給油孔8eに連通されている。そしてこのクランク給油孔8eは、分岐孔8fを介してクランクピン65のピン孔65a内に連通し、該ピン孔65aは分岐孔65bを介してコンロッド7の大端部7aのニードル軸受7bの転動面に開口している。このようにして、オイルフィルタ59で濾過された潤滑油が上記ニードル軸受7bの転動面に供給される。
上記潤滑油ポンプ52は以下の構造を有する。左,右ケース61a,61bからなる二分割式のケーシング61の右ケース61bにポンプ室61cが凹設され、該ポンプ室61c内に回転子63が回転自在に配設されている。この回転子63の軸芯に回転軸62が貫通するように挿入配置され、該回転軸62と回転子63とがピン63aにより固定された概略構造のものである。なお、上記左ケース61aのポンプ室上流側,下流側に上記オイル吸込み通路58a,オイル吐出通路58bがそれぞれ接続されている。また66は潤滑油ポンプ52の吐出圧を所定値以下に保持するためのリリーフ弁であり、該潤滑油ポンプ52の吐出側の圧力が所定値以上となったとき該吐出側の圧力をオイル吸込み通路58a側に逃がすようになっている。
上記回転軸62は上記ポンプケース61を軸方向に貫通する筒状のものであり、図示右端部は上記クランク給油通路55aに開口している。また回転軸62の図示左端部には動力伝達用フランジ部62bが一体形成されている。該フランジ部62bは上記クランク軸8の右端面に対向しており、上記フランジ部62bとクランク軸8とはオルダム継ぎ手67により、若干の芯ずれを吸収可能に連結されている。
上記オルダム継ぎ手67は、詳細にはクランク軸8とフランジ部62bとの間に継ぎ手プレート67aを配置し、該継ぎ手プレート67aの連結孔67d内にクランク軸8の端面に植設されたピン67b及びフランジ部62bに植設されたピン67cを挿入した構造のものである。
また上記連結パイプ64は上記クランク軸8の右端開口と回転軸62の左端開口とを連通するためのものであり、クランク軸開口内周及び回転軸開口内周と連結パイプ64の外周との間はオイルシール64aによりシールされている。
ここで上述のようにクランク室2cは他のミッション室2d,フラマグ室9a,クラッチ室10a等と画成されており、これによりピストン6のストロークに伴って該クランク室2c内の圧力を正負に変動させ、該圧力変動により上記各室内の潤滑油を上述の潤滑油タンク51に戻すオイル戻し機構が構成されている。
詳細には、上記クランク室2cには吐出口2g及び吸込み口2hが形成されている。この吐出口2gにはクランク室内圧力が正のとき開く吐出口リード弁69が配設されており、上記吸込み口2hにはクランク室内圧力が負のとき開く吸込み口リード弁70が配設されている。
そして上記吐出口2gはクランク室2cから連通孔21を介してクラッチ室10aに連通し、該クラッチ室10aから連通孔2jを介してミッション室2dに連通し、さらに該ミッション室2dは連通孔2kを介してフラマグ室9aに連通している。このフラマグ室9aに連通するように形成された戻り口2mは戻りホース57c,オイルストレーナ57d,戻りホース57eを介して上記潤滑油タンク51に連通している。
ここで上記戻り口2mにはガイドプレート2nが配設されている。このガイドプレート2nは上記戻り口mを、底壁2pとの隙間aを狭くしかつ幅bを広く確保することにより潤滑油を確実に吐出する機能を有する。
また上記潤滑油タンク51には、該タンク内の空気中に含まれるオイルミストを遠心力で分離して上記クランク室2cに戻すオイル分離機構が接続されている。このオイル分離機構は、円錐状の分離室71の上部に、潤滑油タンク51の上部に一端が接続された導入ホース72aの他端を接線方向に接続し、該分離室71の底部に接続した戻りホース72bを上記クランク室2cの吸込み口2hに接続した構造のものである。なお、上記オイルミストが分離された空気は排気ホース72cを介して大気に排出される。
以上のように本実施形態では、クランク室2cをピストン6の昇降により圧力が変動するように略密閉空間とし、該クランク室2c内に流入した潤滑油を該クランク室2内圧力の変動により上記潤滑油貯留タンク51に送油するようにしたので、専用の送油ポンプ(スカベンジングポンプ)を不要にでき、構造の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
また、クランク室2cの送油通路接続部付近にクランク室内圧力が上昇したとき開き、低下したとき閉じる吐出口リード弁(出側逆止弁)69を配設したので、クランク室内の潤滑油をより確実に潤滑油貯留タンク51に送油できる。
また、上記潤滑油貯留タンク51内の油面より上側と上記クランク室2cとを戻りホース72a,72bで接続し、該クランク室2cの戻りホース接続部付近にクランク室2c内圧力が下降したとき開き、上昇したとき閉じる吐出口リード弁(吸込み側逆止弁)70を配設したので、ピストン上昇時にクランク室2c内に必要な空気が吸入され、ピストン6の下降時にクランク室2c内圧が高くなり、クランク室2c内の潤滑油をより一層確実に送油できる。
ちなみにクランク室内への外部からの空気供給経路を有しない場合、ピストン,シリンダボア間のシール性が高いと、ピストン上昇時にクランク室内が負圧となり、ピストンが下降してもクランク室内圧が負圧又は低い正圧にしかならず、送油ができなくなる場合が懸念される。
さらにまた、潤滑油ミストを分離する遠心式潤滑油ミスト分離器71を上記戻り通路72a,72bの途中に介設し、分離された潤滑油を戻りホース72bを介してクラク室2cに戻し、ミスト分が分離された空気を大気に排出するようにしたので、潤滑油ミスト分だけをクランク室内に戻すことができ、クランク室内に過剰の空気が流入することによる送油効率の低下を回避でき、大気汚染を防止しながらより確実にクランク室内の潤滑油を送油できる。
また、潤滑油ポンプ52をクランク軸8の一端に接続配置し、該潤滑油ポンプ52の吐出口を該潤滑油ポンプ52内に形成した連通孔(ポンプ内給油通路)62a及び連結パイプ64を介してクランク軸8内に形成されたクランク給油孔(クランク軸内給油通路)8eに連通させたので、簡単でかつコンパクトな構造によりクランク軸8の被潤滑部に潤滑油を供給できる。
また、上記クランク軸8と潤滑油ポンプ52とを軸直角方向の変位を吸収可能のオルダム継ぎ手67により接続するとともに、連通孔62aとクランク給油孔8eとを連結パイプ64で連通させ、該連結パイプ64と上記連通孔62a,クランク給油孔8eとの間に弾性を有するOリング64aを介在させたので、クランク軸8とポンプ軸62との間に多少の芯ずれが発生した場合でも支障なく潤滑油を上記被潤滑部に供給でき、必要な潤滑性を確保できる。
さらにまた、変速装置を構成する上記メイン軸14,ドライブ軸15の近傍に筒状のボス部60cを形成するとともに、これのボルト孔60a内にクランクケース結合用のケースボルト60を挿入し、該ボルト孔60a内面とケースボルト60外面との空間を潤滑油通路とし、上記ボス部60c変速ギヤに指向する分岐孔(潤滑油供給孔)60bを形成したので、専用の潤滑油供給通路を設けることなく変速ギヤの噛合面に潤滑油を供給できる。
また、上記ボルト孔60c内面とケースボルト60外面とで形成される潤滑油通路の他端を、上記ドライブ軸15内に形成されたドライブ軸孔(潤滑油通路)15aの反出力側開口に連通させたので、専用の潤滑油供給通路を設けることなくドライブ軸15の変速ギヤ摺動部に潤滑油を供給できる。
産業上の利用可能性
請求項1の発明によれば、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部をケース側フランジ部に螺挿したので、燃焼圧力による荷重のうち上記ヘッドボルトが負担する分だけシリンダボディに作用する荷重が減少し、従ってそれだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
即ち、例えばシリンダボディのヘッド側フランジ部とシリンダヘッドとをボルト締め締結し、ケース側フランジ部とクランクケースとをボルト締め締結しただけの構造の場合、上記燃焼圧力による荷重がそのままシリンダボディに作用することとなり、シリンダボディの肉厚等の如何によっては耐久性が不十分となり、極端な場合はシリンダボディにクラックが生じる懸念があるが、本発明ではこのような問題を回避できる。
請求項2の発明によれば、フランジ螺挿ヘッドボルトとケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合しているので、フランジ螺挿ヘッドボルトが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部に確実に伝達でき、シリンダボディの中間部に作用する荷重を軽減できる。
請求項3の発明によれば、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されているので、フランジ螺挿ヘッドボルトが燃焼圧力による荷重の一部をケース側フランジ部により一層確実に伝達でき、さらに該荷重をケース側フランジ部がケースボルトを介してクランクケースに確実に伝達でき、シリンダボディに作用する荷重を確実に軽減できる。
また請求項4の発明によれば、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトを、シリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置したので、つまりケースボルトをクランク軸方向にシリンダボア中心側に寄せて配置したので、クランクケースのシリンダボディ取付合面のクランク軸方向寸法をフランジ螺挿ヘッドボルトの配置位置付近まで小さくでき、その結果クランクケースのクラク軸方向寸法を小さくできる。
請求項5の発明によれば、フランジ螺挿ヘッドボルトを、シリンダボディのケース側フランジ部に螺挿する構成を採用したので、つまりクランクケースには螺挿しないようにしたので、クランクケースに内蔵されているクランク軸ウェブとの干渉の問題を生じることはなく、フランジ螺挿ヘッドボルトを、シリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように、つまりクランク軸側に寄せて配置でき、シリンダヘッド,シリンダボディのクランク軸直角方向寸法を小さくできる。
請求項6の発明によれば、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの軸方向における一部を外方に露出させたので、それだけシリンダボディを軽量化できる。
請求項7の発明によれば、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトを配置したので、該第2直線方向中央のヘッドボルトはシリンダ軸線から離れて位置することとなるが、該ヘッドボルトについてはケース側フランジ部に達しない長さに設定したので、上記ケース側フランジ部は上記中央に対応する部分については最小限にすることができ、シリンダボディ,クランクケースの大型化を回避できる。
請求項8の発明によれば、シリンダボアと、これの側方に形成されたチェーン室との間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置したので、デッドスペースを有効利用してフランジ螺挿ヘッドボルトを配置できる。
請求項9の発明によれば、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの一端をケース側フランジ部に螺挿し、他端をシリンダヘッドに袋ナットで締め付け固定したので、シリンダヘッド上方スペースを大きくとることなくシリンダヘッドの取り外しが可能であり、エンジンのメンテナンス性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の一実施形態によるエンジンの右側面図である。
図2は、上記エンジンの断面平面展開図である。
図3は、上記エンジンの動弁装置を示す左側面図である。
図4は、上記動弁装置の断面背面図である。
図5は、上記エンジンのバランサ装置を示す断面平面展開図である。
図6は、上記エンジンのシリンダヘッドの底面図である。
図7は、上記エンジンのシリンダボディの底面図である。
図8は、上記エンジンのシリンダボディ−シリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図9は、上記エンジンのシリンダボディ−シリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図10は、上記エンジンのシリンダボディ−クランクケース結合部の断面側面図である。
図11は、上記エンジンのバランサ装置を示す左側面図である。
図12は、上記バランサ装置の保持レバー取り付け部の拡大断面図である。
図13は、上記バランサ装置の回動レバー構成部品の側面図である。
図14は、上記バランサ装置のバランサ駆動ギヤの緩衝構造を示す側面図である。
図15は、上記バランサ装置の右側面図である。
図16は、上記エンジンの軸受ブラケットの断面右側面図である。
図17は、上記エンジンの軸受ブラケットの断面左側面図である。
図18は、上記エンジンの潤滑装置の模式構成図である。
図19は、上記潤滑装置の構成図である。
図20は、上記潤滑装置の潤滑油ポンプ回りの断面側面図である。
図21は、上記潤滑装置の断面左側面図である。
【0002】
している。
上記公報記載の締結構造の場合、シリンダヘッド1をシリンダボディ2を貫通するボルト17によりクランクケース3,4に締め付け固定しているので、シリンダボディに作用する燃焼圧力の一部をボルト17が負担することとなり、それだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
しかしながら上記公報に記載されたものでは、ヘッドボルトをシリンダヘッドの固定位置に合わせた位置でクランクケースに螺挿することとなるが、シリンダヘッド側には冷却水ジャケットがあるためこれを避けてヘッドボルトを外方に配置せざるを得なくなる。そのため平面視でシリンダ軸線から離れた位置にてクランクケースを締め付けることとなり、それだけクランクケースが不要に大型化してしまう。またヘッドボルトをクランクケースに螺挿する構造であるため、該ヘッドボルトをクランク軸のクランクウェブと干渉しない位置に配置するとともに、シリンダヘッドの固定位置とクランクケースの固定位置とを一致させなければならないので、設計上の自由度が低下する。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、クラクケースを不要に大型化することなく、またヘッドボルトの配置位置上の自由度を低下させることなく、エンジンの耐久性を確保できるエンジンの締結構造を提供することを課題としている。
発明の開示
請求項1の発明は、クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造において、ケースボルトをシリンダボディのクランクケース側端部に形成されたケース側フランジ部を貫通させて該クランクケースのシリンダボディ側端部にねじ込むことにより該シリンダボディをクランクケースに締結し、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部をフランジ螺挿ヘッドボルトとし、該フランジ螺挿ヘッドボルトを上記ケース側フランジ部に形成されたねじ部に螺挿
している。
上記公報記載の締結構造の場合、シリンダヘッド1をシリンダボディ2を貫通するボルト17によりクランクケース3,4に締め付け固定しているので、シリンダボディに作用する燃焼圧力の一部をボルト17が負担することとなり、それだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
しかしながら上記公報に記載されたものでは、ヘッドボルトをシリンダヘッドの固定位置に合わせた位置でクランクケースに螺挿することとなるが、シリンダヘッド側には冷却水ジャケットがあるためこれを避けてヘッドボルトを外方に配置せざるを得なくなる。そのため平面視でシリンダ軸線から離れた位置にてクランクケースを締め付けることとなり、それだけクランクケースが不要に大型化してしまう。またヘッドボルトをクランクケースに螺挿する構造であるため、該ヘッドボルトをクランク軸のクランクウェブと干渉しない位置に配置するとともに、シリンダヘッドの固定位置とクランクケースの固定位置とを一致させなければならないので、設計上の自由度が低下する。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、クラクケースを不要に大型化することなく、またヘッドボルトの配置位置上の自由度を低下させることなく、エンジンの耐久性を確保できるエンジンの締結構造を提供することを課題としている。
発明の開示
請求項1の発明は、クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造において、ケースボルトをシリンダボディのクランクケース側端部に形成されたケース側フランジ部を貫通させて該クランクケースのシリンダボディ側端部にねじ込むことにより該シリンダボディをクランクケースに締結し、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部をフランジ螺挿ヘッドボルトとし、該フランジ螺挿ヘッドボルトを上記ケース側フランジ部に形成されたねじ部に螺挿
【0003】
したことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合していることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトは、該ケースボルトからシリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、該ヘッドボルトからシリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記シリンダボディのシリンダヘッド側端部には上フランジ部が形成され、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、上記上フランジ部を貫通するとともに上記ケース側フランジ部に螺挿され、該ケース側フランジ部と上記上フランジ部との間の部分が外方に露出しているを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1ないし6の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトが配置され、上記第2直線方向中央のヘッドボルトは上記ケース側フランジ部に達しない長さに設定されていることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1ないし7の何れかにおいて、シリンダボアの側方に形成され、クランク軸とカム軸とを連結するカム軸駆動チェーンが配置されるチェーン室と上記シリンダボアとの間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置し
したことを特徴としている。
請求項2の発明は、請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合していることを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されていることを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトは、該ケースボルトからシリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、該ヘッドボルトからシリンダ軸心を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴としている。
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記シリンダボディのシリンダヘッド側端部には上フランジ部が形成され、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、上記上フランジ部を貫通するとともに上記ケース側フランジ部に螺挿され、該ケース側フランジ部と上記上フランジ部との間の部分が外方に露出しているを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項1ないし6の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトが配置され、上記第2直線方向中央のヘッドボルトは上記ケース側フランジ部に達しない長さに設定されていることを特徴としている。
請求項8の発明は、請求項1ないし7の何れかにおいて、シリンダボアの側方に形成され、クランク軸とカム軸とを連結するカム軸駆動チェーンが配置されるチェーン室と上記シリンダボアとの間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置し
【0004】
たことを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1ないし8の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、一端は上記ケース側フランジ部に螺挿され、他端はシリンダヘッドに袋ナットで締め付け固定されていることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの先端を、クランクケースのシリンダボディ側端面よりもシリンダボディ側に位置させたことを特徴としている。
図面の簡単な説明
図1は、本発明の一実施形態によるエンジンの右側面図である。
図2は、上記エンジンの断面平面展開図である。
図3は、上記エンジンの動弁装置を示す左側面図である。
図4は、上記動弁装置の断面背面図である。
図5は、上記エンジンのバランサ装置を示す断面平面展開図である。
図6は、上記エンジンのシリンダヘッドの底面図である。
図7は、上記エンジンのシリンダボディの底面図である。
図8は、上記エンジンのシリンダボディーシリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図9は、上記エンジンのシリンダボディーシリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図10は、上記エンジンのシリンダボディークランクケース結合部の断面側面図である。
図11は、上記エンジンのバランサ装置を示す左側面図である。
図12は、上記バランサ装置の保持レバー取り付け部の拡大断面図である。
図13は、上記バランサ装置の回動レバー構成部品の側面図である。
図14は、上記バランサ装置のバランサ駆動ギヤの緩衝構造を示す側面図である。
図15は、上記バランサ装置の右側面図である。
図16は、上記エンジンの軸受ブラケットの断面右側面図である。
たことを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項1ないし8の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、一端は上記ケース側フランジ部に螺挿され、他端はシリンダヘッドに袋ナットで締め付け固定されていることを特徴としている。
請求項10の発明は、請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの先端を、クランクケースのシリンダボディ側端面よりもシリンダボディ側に位置させたことを特徴としている。
図面の簡単な説明
図1は、本発明の一実施形態によるエンジンの右側面図である。
図2は、上記エンジンの断面平面展開図である。
図3は、上記エンジンの動弁装置を示す左側面図である。
図4は、上記動弁装置の断面背面図である。
図5は、上記エンジンのバランサ装置を示す断面平面展開図である。
図6は、上記エンジンのシリンダヘッドの底面図である。
図7は、上記エンジンのシリンダボディの底面図である。
図8は、上記エンジンのシリンダボディーシリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図9は、上記エンジンのシリンダボディーシリンダヘッド結合部の断面側面図である。
図10は、上記エンジンのシリンダボディークランクケース結合部の断面側面図である。
図11は、上記エンジンのバランサ装置を示す左側面図である。
図12は、上記バランサ装置の保持レバー取り付け部の拡大断面図である。
図13は、上記バランサ装置の回動レバー構成部品の側面図である。
図14は、上記バランサ装置のバランサ駆動ギヤの緩衝構造を示す側面図である。
図15は、上記バランサ装置の右側面図である。
図16は、上記エンジンの軸受ブラケットの断面右側面図である。
【0028】
8eとを連結パイプ64で連通させ、該連結パイプ64と上記連通孔62a,クランク給油孔8eとの間に弾性を有するOリング64aを介在させたので、クランク軸8とポンプ軸62との間に多少の芯ずれが発生した場合でも支障なく潤滑油を上記被潤滑部に供給でき、必要な潤滑性を確保できる。
さらにまた、変速装置を構成する上記メイン軸14,ドライブ軸15の近傍に筒状のボス部60cを形成するとともに、これのボルト孔60a内にクランクケース結合用のケースボルト60を挿入し、該ボルト孔60a内面とケースボルト60外面との空間を潤滑油通路とし、上記ボス部60c変速ギヤに指向する分岐孔(潤滑油供給孔)60bを形成したので、専用の潤滑油供給通路を設けることなく変速ギヤの噛合面に潤滑油を供給できる。
また、上記ボルト孔60c内面とケースボルト60外面とで形成される潤滑油通路の他端を、上記ドライブ軸15内に形成されたドライブ軸孔(潤滑油通路)15aの反出力側開口に連通させたので、専用の潤滑油供給通路を設けることなくドライブ軸15の変速ギヤ摺動部に潤滑油を供給できる。
産業上の利用可能性
請求項1,10の発明によれば、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部をケース側フランジ部に螺挿したので、燃焼圧力による荷重のうち上記ヘッドボルトが負担する分だけシリンダボディに作用する荷重が減少し、従ってそれだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
即ち、例えばシリンダボディのヘッド側フランジ部とシリンダヘッドとをボルト締め締結し、ケース側フランジ部とクランクケースとをボルト締め締結しただけの構造の場合、上記燃焼圧力による荷重がそのままシリンダボディに作用することとなり、シリンダボディの肉厚等の如何によっては耐久性が不十分となり、極端な場合はシリンダボディにクラックが生じる懸念があるが、本発明ではこの
8eとを連結パイプ64で連通させ、該連結パイプ64と上記連通孔62a,クランク給油孔8eとの間に弾性を有するOリング64aを介在させたので、クランク軸8とポンプ軸62との間に多少の芯ずれが発生した場合でも支障なく潤滑油を上記被潤滑部に供給でき、必要な潤滑性を確保できる。
さらにまた、変速装置を構成する上記メイン軸14,ドライブ軸15の近傍に筒状のボス部60cを形成するとともに、これのボルト孔60a内にクランクケース結合用のケースボルト60を挿入し、該ボルト孔60a内面とケースボルト60外面との空間を潤滑油通路とし、上記ボス部60c変速ギヤに指向する分岐孔(潤滑油供給孔)60bを形成したので、専用の潤滑油供給通路を設けることなく変速ギヤの噛合面に潤滑油を供給できる。
また、上記ボルト孔60c内面とケースボルト60外面とで形成される潤滑油通路の他端を、上記ドライブ軸15内に形成されたドライブ軸孔(潤滑油通路)15aの反出力側開口に連通させたので、専用の潤滑油供給通路を設けることなくドライブ軸15の変速ギヤ摺動部に潤滑油を供給できる。
産業上の利用可能性
請求項1,10の発明によれば、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部をケース側フランジ部に螺挿したので、燃焼圧力による荷重のうち上記ヘッドボルトが負担する分だけシリンダボディに作用する荷重が減少し、従ってそれだけシリンダボディに発生する応力を小さくでき、シリンダボディの耐久性を向上できる。
即ち、例えばシリンダボディのヘッド側フランジ部とシリンダヘッドとをボルト締め締結し、ケース側フランジ部とクランクケースとをボルト締め締結しただけの構造の場合、上記燃焼圧力による荷重がそのままシリンダボディに作用することとなり、シリンダボディの肉厚等の如何によっては耐久性が不十分となり、極端な場合はシリンダボディにクラックが生じる懸念があるが、本発明ではこの
Claims (9)
- クランクケースにシリンダボディ,シリンダヘッドを積層締結するようにしたエンジンの締結構造において、シリンダボディのクランクケース側端部に形成されたケース側フランジ部をケースボルトによりクランクケースに締結し、シリンダヘッドとシリンダボディとを締結するヘッドボルトの少なくとも一部を上記ケース側フランジ部に螺挿されるフランジ螺挿ヘッドボルトとしたことを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1において、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとがシリンダボア軸線方向に上記ケース側フランジ部の厚さと略同じだけ重合していることを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1又は2において、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトと上記ケースボルトとが近接配置されていることを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1ないし3の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記ケースボルトは、該ケースボルトからシリンダボア軸線を通るクランク軸と直角な第1直線までの距離が上記フランジ螺挿ヘッドボルトから第1直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1ないし4の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、該ヘッドボルトからシリンダボア軸線を通るクランク軸と平行な第2直線までの距離が上記ケースボルトから第2直線までの距離より小さくなるように配置されていることを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1ないし5の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトの軸方向における一部が外方に露出していることを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1ないし6の何れかにおいて、シリンダボア軸線方向にみたとき、上記第2直線を挟んだ両側にそれぞれ少なくとも3本のヘッドボルトが配置され、上記第2直線方向中央のヘッドボルトは上記ケース側フランジ部に達しない長さに設定されていることを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1ないし7の何れかにおいて、シリンダボアの側方に形成され、クランク軸とカム軸とを連結するカム軸駆動チェーンが配置されるチェーン室と上記シリンダボアとの間に上記フランジ螺挿ヘッドボルトを配置したことを特徴とするエンジンの締結構造。
- 請求項1ないし8の何れかにおいて、上記フランジ螺挿ヘッドボルトは、一端は上記ケース側フランジ部に螺挿され、他端はシリンダヘッドに袋ナットで締め付けられていること特徴とするエンジンの締結構造。
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