JPH1086705A - 車両挙動制御装置 - Google Patents

車両挙動制御装置

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JPH1086705A
JPH1086705A JP8243584A JP24358496A JPH1086705A JP H1086705 A JPH1086705 A JP H1086705A JP 8243584 A JP8243584 A JP 8243584A JP 24358496 A JP24358496 A JP 24358496A JP H1086705 A JPH1086705 A JP H1086705A
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JP
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vehicle
wheel
turning
wheels
braking force
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JP8243584A
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Masahiko Taniguchi
雅彦 谷口
Toshiro Nagata
敏郎 永田
Mamoru Sawada
護 沢田
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Denso Corp
Original Assignee
Denso Corp
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Publication date
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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
  • Hydraulic Control Valves For Brake Systems (AREA)
  • Control Of Driving Devices And Active Controlling Of Vehicle (AREA)
  • Regulating Braking Force (AREA)
  • Control Of Vehicle Engines Or Engines For Specific Uses (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 車両旋回時の操舵性及び安定性を向上するこ
とを目的とする。 【解決手段】 ステアリング操作に対応した目標ヨー加
速度と実ヨー加速度との偏差から車両状態を推定し(S12
0)、車両がアンダステア(US)傾向にあれば、エンジン出
力補正値△TEUP、及び旋回外輪及び内輪となる駆動輪の
目標スリップ率λiT,λoTを演算し(S160,S170)、スロ
ットル開度及び駆動輪のブレーキ油圧を制御して(S20
0,S210)、左右駆動輪間にトルク差を発生させることに
より旋回に必要なヨーモーメントを発生させる。また、
車両がオーバステア(OS)傾向にあれば、△TEUP、λiT,
λoTを演算すると共に旋回外輪側従動輪の目標スリップ
率λoTF を演算し(S160,S170)、スロットル開度と駆動
輪及び旋回外輪側従動輪のブレーキ油圧を制御して(S20
0,S210)、左右駆動輪のトルク差と従動輪に加えた制動
力とにより旋回に必要なヨーモーメントを発生させる。
この結果、車両旋回時の操舵性及び安定性を共に確保で
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両旋回時の操縦
安定性を確保する車両挙動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車両旋回時の操縦安定性を高
める技術として、ヨーレート制御が知られている。この
ヨーレート制御は、乗員のステアリング操作等から目標
ヨーレートを求め、車両の実際のヨーレートが目標ヨー
レートとなるように、左右駆動輪へのトルク配分比や、
左右駆動輪に駆動力を与えるエンジン出力を制御する技
術であり、具体的には、例えば、特開平7−16492
4号公報に開示されているように、目標ヨーレートが実
ヨーレートよりも大きいアンダステア時には、エンジン
出力を増大すると共に、左右駆動輪の内の旋回外輪側へ
の伝達トルク配分を大きくすることにより、左右駆動輪
のトルク差を増大し、目標ヨーレートが実ヨーレートよ
りも小さいオーバステア時には、エンジン出力を低下さ
せることにより、駆動輪をエンジンブレーキ状態とし
て、左右駆動輪のトルク差を減少するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、こうした従来
のヨーレート制御は、左右駆動輪のトルク差だけで実ヨ
ーレートを目標ヨーレートに制御するものであるため、
車両の安定性を確保できないことがあった。
【0004】つまり、例えば、後輪駆動車において、乗
員が車線変更やS字カーブの走行のためにステアリング
を左方向・右方向に順に操舵したような場合、上記ヨー
レート制御によれば、まず、最初のステアリング操作
(左方向の操舵)に対応して、駆動輪のトルク差を増大
させて車両に回頭モーメントを発生させ、次のステアリ
ング操作(右方向の操舵)に対応して、駆動輪のトルク
差を今までとは逆方向に増大させることになるが、この
2回目のステアリング操作に伴うヨーレート制御時に
は、車両は極めて大きなアンダステア傾向となるので、
駆動輪のトルク差を極めて大きくすることになる。この
結果、その後ステアリングが直進方向に戻され、駆動輪
のトルク差をゼロに戻そうとしても、間に合わず、車両
がスピンしてしまうことがある。
【0005】特に、車両の走行路が、路面の摩擦係数μ
が低い低μ路である場合には、車輪が路面から受ける反
力(路面反力)が小さく、駆動トルク差により発生でき
るヨーモーメントも小さくなることから、こうした低μ
路の走行時には、乗員のステアリング操作に応じて車両
を速やかに回頭させるためのヨーモーメントを与える
と、その後、ステアリングが逆方向に操作されて、逆方
向のヨーモーメントが必要になったときに、その必要な
ヨーモーメントを発生できず、車両が極めて不安定な状
態となって、車両がよりスピンし易くなる。
【0006】即ち、従来のヨーレート制御では、操舵性
を高めることはできるが、車両の安定性を確保すること
ができないのである。本発明は、こうした問題に鑑みな
されたものであり、車両の操舵性と安定性とを共に確保
できる車両挙動制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
めに、請求項1に記載の車両挙動制御装置においては、
車両の旋回時に、駆動力増大手段が、車両の旋回の度合
に応じて、駆動力発生手段が駆動輪に与える駆動力の大
きさを増大し、且つ、制御手段が、車両の実際の旋回状
態と乗員のステアリング操作に応じた目標旋回状態とを
比較して、実旋回状態を目標旋回状態に近付けるよう
に、左右の従動輪に設けられた制動力発生手段の一方に
対して、ブレーキ液圧発生源からのブレーキ液圧を加
え、従動輪の一方に制動力を発生させる。
【0008】即ち、車両の旋回時には、旋回の度合が大
きくなると、駆動輪の駆動力が転がり抵抗に負けて、駆
動輪の横力が減少することから、本発明では、駆動力増
大手段によって、車両の旋回の程度に応じて駆動輪の駆
動力を増加させることにより、駆動輪の横力の減少を防
いで、駆動輪において生じる横方向の滑りを抑制し、駆
動輪の挙動を安定させる。
【0009】また、駆動輪の挙動を安定させただけで
は、車両の旋回状態を目標旋回状態に制御することがで
きないので、本発明では、更に、制御手段によって、従
動輪の一方に制動力を発生させることにより、車両の旋
回状態を目標旋回状態に制御するのに必要なヨーモーメ
ントを発生させる。
【0010】従って、本発明によれば、車両の安定性を
低下させることなく、車両の旋回状態を目標旋回状態に
制御することが可能になり、操舵性及び安定性を共に確
保することができる。ここで、制御手段がブレーキ液圧
を制御するのに使用する旋回状態,目標旋回状態として
は、前記従来公報に記載のようにヨーレートを使用する
ことができる。そして、実際に制御手段により車両の旋
回状態を目標旋回状態に制御するには、請求項2に記載
のように、制御手段を、アンダステア時に前記従動輪の
旋回内輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧を加えるア
ンダステア時制御、及び、オーバステア時に前記従動輪
の旋回外輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧を加える
オーバステア時制御、の少なくとも一方を実行するよう
に構成すればよい。
【0011】つまり、車両のヨーレートが乗員のステア
リング操作に対応した目標ヨーレートよりも小さいアン
ダステア時には、車両の旋回内輪側に制動力を加えれば
ヨーレートを増加させることができ、逆に、車両のヨー
レートが目標ヨーレートよりも大きいアンダステア時に
は、車両の旋回外輪側に制動力を加えればヨーレートを
低下させることができるため、制御手段を、請求項2に
記載のように構成すれば、アンダステア時或はオーバス
テア時のヨーレートを乗員が要求する目標ヨーレートに
近付けることができ、車両の操舵性を向上できる。
【0012】そしてこの場合、特に、オーバステア時に
旋回外輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧を加えて、
旋回該輪側の従動輪に制動力を発生させれば、車両がス
ピン傾向になるのを防止できるので、安全性をより向上
することが可能になり、好ましい。また、旋回状態,目
標旋回状態として、ヨーレートの微分値であるヨー加速
度を使用するようにすれば、制御の応答性をより向上す
ることができる。
【0013】また次に、請求項3に記載のように、制御
手段を、従動輪の一方の制動力を発生させるだけでな
く、左右の駆動輪に設けられた制動力発生手段の一方に
対してもブレーキ液圧発生源からのブレーキ液圧を加え
て、駆動輪の一方に制動力を発生させるように構成すれ
ば、車両の操舵性及び安定性をより向上することができ
る。
【0014】つまり、制御手段を、請求項3に記載のよ
うに構成すれば、駆動輪の一方に加えた制動力により左
右駆動輪間において駆動力を移動させることができるこ
とから、この駆動力の移動に伴い生じる左右駆動輪のト
ルク差と、左右従動輪の一方に発生する制動力とによっ
て、実旋回状態を目標旋回状態に近付けるのに必要なヨ
ーモーメントを、より速やかに確実に発生させることが
可能になり、車両の操舵性及び安定性をより向上するこ
とができるようになるのである。
【0015】また特に、この場合、左右駆動輪のトルク
差により車両にヨーモーメントを発生させ、従動輪に発
生させた制動力により、従動輪のコーナリングフォース
を駆動輪よりも減らして、アンチスピンモーメントを発
生させることができるので、駆動輪のトルク差のみを制
御する従来装置に比べて、車両の安定性をより向上する
ことが可能になる。
【0016】そして、このように、車両旋回時に、駆動
輪の一方にも制動力を与えて、左右駆動輪のトルク差に
よりヨーモーメントを制御する際には、請求項4に記載
のように、制御手段を、アンダステア時には、駆動輪の
旋回内輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧を加え、オ
ーバステア時には、駆動輪の旋回外輪側の制動力発生手
段にブレーキ液圧を加えるように構成すればよい。
【0017】また、本発明では、上記のように、駆動輪
の駆動力を増大し、しかも、従動輪の一方,或は従動輪
と駆動輪の一方に制動力を与えることにより、車両旋回
時の操舵性及び安定性を向上するが、制御手段が制御す
る、従動輪,或は従動輪と駆動輪とに制動力を発生させ
るためのブレーキ液圧は、請求項5に記載のように、駆
動力増大手段による駆動力の増大によって生じる車両推
進力を相殺するように決定することが望ましい。
【0018】つまり、制御手段を、駆動輪の駆動力の増
大によって生じる車両推進力を相殺するように従動輪,
或は従動輪と駆動輪とに制動力を発生させるためのブレ
ーキ液圧を決定するように構成すれば、車両推進力が乗
員の意思に反して増加或は減少するようなことがなくな
り、乗員に違和感を与えることなく、車両旋回時の操縦
性及び安定性を向上することが可能になる。
【0019】そして、このように車両推進力を変動させ
ることなく、車両旋回時の操舵性及び安定性を向上する
には、例えば、請求項6に記載のように、制御手段を、
車両の実旋回状態を目標旋回状態に制御するのに必要な
要求ヨーモーメントを演算し、この要求ヨーモーメント
に基づき駆動力増大手段による駆動力の増大量,及び制
動力発生手段に加えるブレーキ液圧を夫々決定するよう
にすればよい。
【0020】尚、この要求ヨーモーメントは、ヨーレー
トと目標ヨーレートとの偏差、或はヨー加速度と目標ヨ
ー加速度との偏差等により求めることができる。そし
て、ヨー加速度と目標ヨー加速度との偏差から要求ヨー
モーメントを求めるようにすれば、旋回状態を目標旋回
状態により速やかに制御することができるようになり、
好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を図面と共
に説明する。まず図1は、本発明が適用された実施例の
車両挙動制御装置の全体構成を表す概略構成図である。
尚、本実施例の車両挙動制御装置は、内燃機関2を駆動
力発生源とするフロントエンジン・リヤドライブ(F
R)方式の車両に適用される。
【0022】図1に示す如く、内燃機関2の吸気通路4
には、吸入空気の脈動を抑えるサージタンク4aが形成
され、その上流には、スロットル駆動モータ10により
開閉されるスロットルバルブ12が設けられている。こ
のスロットルバルブ12は運転者が操作するアクセルペ
ダル6によって直接開閉されるものではなく、いわゆる
リンクレススロットルである。
【0023】そして、アクセルペダル6及びスロットル
バルブ12には、これらの開度を夫々検出するアクセル
開度センサ14及びスロットル開度センサ16が設けら
れており、これら各センサからの検出信号は、本発明の
主要部である制・駆動力制御回路20に入力される。
【0024】また、吸気通路4には、内燃機関制御回路
26からの燃料噴射指令により開弁されて内燃機関2へ
燃料を噴射供給する燃料噴射弁24が設けられている。
燃料噴射指令は、内燃機関2の運転状態(吸気管圧力,
回転速度,冷却水温等)に応じて決定されるもので、サ
ージタンク4a内の圧力を検出する吸気圧センサ28を
はじめとする各種センサからの情報を、内燃機関制御回
路26の燃料噴射制御プログラムに基づき処理すること
で作成される。
【0025】次に、制・駆動力制御回路20には、上述
のアクセル開度センサ14及びスロットル開度センサ1
6の他、エンジン回転数センサ30、従動輪速度センサ
32FL,32FR、駆動輪速度センサ32RL,32RR、ヨ
ーレートセンサ40、操舵角センサ44等からの検出信
号も入力される。
【0026】ここで、エンジン回転数センサ30は、内
燃機関2のクランク軸2aの回転速度(エンジン回転
数)を検出するものであり、内燃機関制御回路26によ
る燃料噴射指令の作成にも利用される。また、従動輪速
度センサ32FL,32FRは、左右従動輪(前輪)22F
L,22FRの回転速度を夫々検出するためのセンサであ
り、これら左右従動輪22FL,22FRの回転軸に夫々設
けられている。
【0027】また、駆動輪速度センサ32RL,32RR
は、左右駆動輪(後輪)22RL,22RRの回転速度を夫
々検出するためのセンサであり、内燃機関2のクランク
軸2aの回転が、変速機38,プロペラシャフト34及
びディファレンシャルギヤ36を介して伝達される左右
駆動輪22RL,22RRの回転軸に夫々設けられている。
【0028】そして、制・駆動力制御回路20は、これ
ら各センサからの入力信号に基づきスロットル駆動モー
タ10を駆動して、スロットルバルブ12の開度(スロ
ットル開度)を制御することにより、内燃機関2から左
右駆動輪22RL,22RRに伝達される駆動力を制御する
と共に、ブレーキ液圧発生源としての油圧回路50内に
設けられた各種電磁弁を駆動して、各車輪22FL〜22
RRに設けられた制動力発生手段としてのホイールシリン
ダ51FL,51FR,51RL,51RRに加わる圧力(ブレ
ーキ油圧)を調節することにより、各車輪22FL〜22
RRに加わる制動力を制御する。
【0029】即ち、制・駆動力制御回路20は、車両の
通常運転時に、アクセル開度センサ14からの入力信号
に基づき、スロットル開度を運転者のアクセル操作に応
じた開度に制御するスロットル制御、車両の加速時に、
スロットル開度(換言すれば内燃機関2が発生する駆動
力)や左右駆動輪22RL,22RRの制動力を制御して、
駆動輪22RL,22RRに発生した加速スリップを抑制す
るトラクション制御、車両の制動時(ブレーキペダルの
踏み込み時)に、各車輪22FL〜22RRの制動力を制御
するアンチスキッド制御、車両旋回時に、スロットル開
度(内燃機関2が発生する駆動力)や各車輪22FL〜2
2RRの制動力を制御して、車両旋回時の操縦安定性を確
保する旋回時制御等を実行する。
【0030】次に、こうした制動力制御のために用いら
れる油圧回路50について説明する。図2に示す様に、
この油圧回路50は、左従動輪22FL−右駆動輪22R
R、右従動輪22FR−左駆動輪22RLの各配管系統を備
えるX配管にて構成されている。
【0031】そして、これら配管系統のうち、運転者の
ブレーキ操作によってブレーキ油を圧送するマスタシリ
ンダ52から、左従動輪22FL,右駆動輪22RRのホイ
ールシリンダ51FL,51RRに至る管路53A1 には、
油圧回路の切り替えに用いられる(2位置に切り替えら
れる)3方向切替弁54A、左従動輪22FLのホイール
シリンダ51FLに高い油圧を加えるためのプロポーショ
ンバルブ55A、マスタシリンダ52からホイールシリ
ンダ51RR,51FLに至る管路を開閉制御する増圧制御
弁56,57、ホイールシリンダ51RR,51FLからリ
ザーバ66Aに至る管路を開閉制御する減圧制御弁6
1,62、ホイールシリンダ51RR,51FLからのブレ
ーキ油を貯溜するリザーバ66A、リザーバ66Aから
マスタシリンダ52側にブレーキ油を汲み上げるポンプ
67Aが設けられている。また、マスタリザーバ69か
ら前記3方向切替弁54Aに至る管路53A2 には、ブ
レーキ油圧を増圧するためのポンプ71A、ポンプ71
Aの下流側とマスタリザーバ69との管路を開閉制御す
る加圧制御弁72Aが設けられている。
【0032】このうち、3方向切替弁54Aは、A位置
に切り替えられた場合には、管路53A1 にて、通常の
運転者によるブレーキ操作や、増圧制御弁56,57、
減圧制御弁61,62、リザーバ66A、ポンプ67A
等を用いた周知のアンチスキッド制御を行うことが可能
になる。一方、B位置に切り替えられた場合には、ポン
プ71Aによる高いブレーキ油圧によって、トラクショ
ン制御や旋回時挙動制御が可能になる。
【0033】また、前記配管系統のうち、マスタシリン
ダ52から、右従動輪22FR,左駆動輪22RLのホイー
ルシリンダ51FR,51RLに至る他方の管路53B1 に
は、前記管路53A1 と同様に、2位置に切り替えられ
る3方向切替弁54B、プロポーションバルブ55B、
増圧制御弁58,59、減圧制御弁63,64、リザー
バ66B、ポンプ67Bが設けられている。また、マス
タリザーバ69から3方向切替弁54Bに至る管路53
B2 には、前記管路53A2 と同様に、ポンプ71B及
び加圧制御弁72Bが設けられている。
【0034】そして、この油圧回路50には、各ポンプ
71A,71Bから各3方向切替弁54A,54Bの間
の油圧を検出する第1,第2圧力センサ75、76と、
マスタシリンダ52から各3方向切替弁54A,54B
の間の油圧を検出する第3,第4圧力センサ77,78
とが設けられており、これら各センサ75〜78からの
検出信号も、制・駆動力制御回路20に入力される。そ
して、制・駆動力制御回路20は、これら検出信号に基
づき、増圧制御弁56〜59、減圧制御弁61〜64、
加圧制御弁72A,72B、66A,66B,ポンプ7
1A,71Bを制御することにより、各ホイールシリン
ダ51FL〜51RRに加わるブレーキ油圧(つまり各車輪
22FL〜22RRの制動力)を制御する。
【0035】次に、制・駆動力制御回路20にて実行さ
れる制御処理の内、本発明に関わる主要な処理である旋
回時挙動制御のための制御処理(旋回時挙動制御処理)
について説明する。尚、この処理は、本発明の制御手段
及び駆動力増大手段を実現する処理であり、制・駆動力
制御回路20において、操舵角センサ44からの信号に
より得られるステアリングの操舵角が所定角度以上とな
る車両の旋回時に、制・駆動力制御回路20において繰
返し実行される。
【0036】図3に示す如く、旋回時挙動制御処理が開
始されると、まずS110(Sはステップを表わす)に
て、上記各センサからの信号を読み込むことにより、車
両の走行状態を検出する。そして、続くS120では、
この検出した車両の走行状態に基づき、車両状態を推定
する車両状態推定処理を実行する。
【0037】この車両状態推定処理は、車両の走行状態
がアンダステア(US)傾向にあるか、オーバステア
(OS)傾向にあるか、或は最適状態(NS)にあるか
を推定するための処理であり、図4に示す如く実行され
る。即ち、車両状態推定処理では、まずS310にて、
操舵角速度dmaと、車速(車体速度)Vと、ホイール
ベースLと、ステアリングギヤ比Nと、スタビリティフ
ァクタKhと、をパラメータとする次式(1) を用いて、
運転者のステアリング操作に対応した車両の目標ヨー加
速度dyro を演算する。
【0038】 dyro =dma・V/L・N(1+Kh・V2 ) …(1) 尚、上記パラメータの内、操舵角速度dmaは、操舵角
の微分値であるため、操舵角センサ44からの入力信号
に基づき求められ、車速Vは、例えば、従動輪速度セン
サ32FL,32FRにより得られる左右従動輪22FL,2
2FRの回転速度の平均値(平均従動輪速度)を演算する
ことにより求められる。また、ホイールベースL、ステ
アリングギヤ比N、スタビリティファクタKhは、車両
固有の値であり、予めROM内に記憶されている。
【0039】次に、このように目標ヨー加速度dyro が
算出されると、S320にて、ヨーレートセンサ40か
らの入力信号に基づき、車両の実際のヨー加速度(実ヨ
ー加速度)dyrを求め、目標ヨー加速度dyro から実ヨ
ー加速度dyrを減じることにより、ヨー加速度偏差△d
yr(=dyro −dyr)を演算する。
【0040】そして、続くS325で実ヨー加速度dyr
の符号(正・負)を判定し、dyr≧0の場合には、S3
30にて、ヨー加速度偏差△dyrが予め設定されたOS
傾向判定値Kdyr1 (但し、Kdyr1 は負の定数)より
も小さいか否かを判断し、△dyr<Kdyr1 であれば、
S340にて、車両はOS傾向にある旨を記憶する。
【0041】また逆に、△dyr≧Kdyr1 であれば、S
350に移行して、ヨー加速度偏差△dyrが予め設定さ
れたUS傾向判定値Kdyr2 (但し、Kdyr2 は正の定
数)よりも大きいか否かを判断する。そして、△dyr>
Kdyr2 であれば、S360にて、車両はUS傾向にあ
る旨を記憶し、逆に、△dyr≦Kdyr2 であり、ヨー加
速度偏差△dyrが、OS傾向判定値以上,US傾向判定
値以下である場合には、S370にて、車両は最適な状
態で旋回している旨(NS)を記憶する。
【0042】一方、続くS325でdyr<0と判断され
た場合には、S380にて、△dyr>−Kdyr1 か否か
を判断し、△dyr>−Kdyr1 であれば、車両はOS傾
向にある旨を記憶し(S340)、△dyr≦−Kdyr1
であれば、続くS390で△dyr<−Kdyr2 か否かを
判断する。そして、△dyr<−Kdyr2 であれば、車両
はUS傾向にある旨を記憶し(S360)、△dyr≧−
Kdyr2 であれば、車両は最適な状態で旋回している旨
(NS)を記憶する(S370)。
【0043】こうして、車両状態推定処理(S120)
により、車両の走行状態が推定されると、今度は、S1
30にて、その推定結果に基づき車両はUS傾向にある
か否かを判断する。そして、車両がUS傾向にある場合
には、S160にて、車両の旋回状態(US傾向)に応
じて内燃機関2の出力を増加するためのエンジン出力補
正値△TEUPを演算し、S170にて、左右駆動輪2
2RL,22RRの制動力を制御するための各車輪22RL,
22RRの目標スリップ率λiT及びλoTを演算する。
【0044】一方、S130にて、車両がUS傾向には
ないと判断された場合には、S140にて、上記S12
0での推定結果に基づき、車両はOS傾向にあるか否か
を判断する。そして、車両がOS傾向にあれば、S18
0にて、車両の旋回状態(OS傾向)に応じて内燃機関
2の出力を増加するためのエンジン出力補正値△TEU
Pを演算し、S190にて、左右駆動輪22RL,22RR
の制動力と、左右従動輪22FL,22FRの内の旋回外輪
となる一方の従動輪22oFの制動力とを夫々制御するた
めの各車輪22RL,22RR,22oFの目標スリップ率λ
iT,λoT,λoTF を演算する。
【0045】尚、上記目標スリップ率λに付与した添え
字「iT」は、左右駆動輪22RL,22RRの内の旋回内輪に
対する目標スリップ率を表わし、添え字「oT」は、左右駆
動輪22RL,22RRの内の旋回外輪に対する目標スリッ
プ率を表わし、添え字「oTF」は、左右従動輪22FL,2
2FRの内の旋回外輪に対する目標スリップ率を表わす。
【0046】また、S140にて、車両がOS傾向では
ないと判断された場合には、車両の旋回状態は最適な状
態となっており、旋回時挙動制御は不要であると判断し
て、制御を初期化し、再度S110に移行する。ここ
で、S160及びS170の処理は、車両がUS傾向に
ある場合には、図5(a)に示す如く、車両の重心位置
に加わるヨーモーメント(図に点線で示す)が、ステア
リング操作によって運転者が要求する要求ヨーモーメン
ト(図に実線で示す)よりも小さいことから、内燃機関
2からの出力トルクを増加すると共に、左右駆動輪22
RT,22RRの内の旋回内輪となる駆動輪(図では左駆動
輪22RLに制動力を加えて、左右駆動輪22RT,22RR
へのトルク配分比を制御することにより、旋回外輪(図
では右駆動輪22RR)の駆動力を、旋回内輪(図では左
駆動輪22RL)の駆動力よりも大きくして、車両のヨー
モーメントを運転者のステアリング操作に対応した要求
ヨーモーメントに制御するための制御量を演算するため
の処理である。
【0047】そして、S160の処理は、上記S320
にて求めたヨー加速度偏差△dyrと車両の慣性モーメン
トIとに基づき、次式(2) を用いて、要求ヨーモーメン
トMreq を求めると共に、 Mreq =I・△dyr …(2) エンジン回転数センサ30にて検出されたエンジン回転
数とスロットル開度センサ16にて検出されたスロット
ル開度とをパラメータとする図示しないマップを用いて
現在のエンジントルクTE を求め、更に、このエンジン
トルクTE と、内燃機関2から左右駆動輪22RL,22
RRに至る動力伝達系での駆動力の総伝達効率ηと、同じ
く動力伝達系での総ギヤ比iとに基づき、次式(3) を用
いて、現在の駆動輪22RL,22RRの駆動トルクTNを
求め、 TN =TE ・i・η …(3) 最後に、次式(4) を用いてエンジントルクの補正値(つ
まりエンジン出力補正値)△TEUPを演算する、とい
った手順で実行される。
【0048】 △TEUP={(r/LT)・Mreq−(TN−Rt)}/i・η …(4) 尚、(4) 式において、rは駆動輪の有効半径,LT はト
レッドの2分の1の値、Rtは転がり抵抗のトルク換算
値Rtである。そして、上記のように求めたエンジン出
力補正値△TEUPが負の値になった場合には、△TE
UP=0として、値「0」でガードされる。
【0049】一方、S170の処理は、まず要求ヨーモ
ーメントMreq と、トレッドの2分の1の値LT とに基
づき、次式(5) を用いて、左右駆動輪22RL,22RRの
目標駆動力差△DR を求め、 △DR =Mreq /LT …(5) 次に、この目標駆動力差△DR と、車輪のスリップ率λ
に対する制・駆動力の変化率K1とに基づき、次式(6)
を用いて、左右駆動輪22RL,22RRのスリップ率差△
SDLTを求め、 △SDLT=△DR /K1 …(6) 更に、このスリップ率差△SDLTと旋回内輪側の駆動
輪の現在のスリップ率λiとに基づき、次式(7) を用い
て旋回内輪側の駆動輪の目標スリップ率λiTを求め、 λiT=λi−△SDLT/2 …(7) 最後に、旋回内輪側の駆動輪の目標スリップ率λiTとス
リップ率差△SDLTとに基づき、次式(8) を用いて旋
回外輪側の駆動輪の目標スリップ率λoTを求める、とい
った手順で実行される。
【0050】λoT=λiT+△SDLT …(8) 尚、スリップ率差△SDLTを求めるのに使用される変
化率K1は、図6に示すように、車体速度Vが車輪速度
よりも低い制動スリップ領域(図においてスリップ率λ
が負の領域)から、車体速度Vに対して車輪速度が高い
駆動スリップ領域(図においてスリップ率λが制の領
域)にかけて、スリップ率λの変化に対して制・駆動力
が略比例して変化し、この変化を線形近似可能な領域内
での、スリップ率λに対する制・駆動力の変化割合(換
言すれば図6に示す直線区間の傾き)である。
【0051】そして、本実施例では、上記のように旋回
内輪及び旋回内輪となる各駆動輪の目標スリップ率λiT
及びλoTを求めることにより、旋回内輪側の駆動輪には
制動力を、旋回外輪側の駆動輪には駆動力を与えて、U
S傾向にある車両のヨーモーメントを目標ヨーモーメン
トまで増大させ、車両の旋回状態を運転者のステアリン
グ操作に対応した目標旋回状態に制御できるようにする
のである。
【0052】またこのように、本実施例では、変化率K
1に基づき旋回内輪側及び旋回外輪側の駆動輪の目標ス
リップ率λiT及びλoTを求めるが、これら各目標スリッ
プ率λiT及びλoTは、スリップ率λに対する制・駆動力
の変化が線形近似可能な領域から外れると、車両に所望
のヨーモーメントを発生させることができず、車両挙動
が却って不安定になることから、各目標スリップ率λiT
及びλoTには、上記領域に対応して上下限値λLimit が
設定されており、各目標スリップ率λiT及びλoTは、夫
々、その絶対値が上下限値λLimit を越えることにない
ように制限される。
【0053】一方、S180及びS190の処理は、車
両がOS傾向にある場合には、図5(b)に示す如く、
車両の重心位置に加わるヨーモーメント(図に点線で示
す)が、ステアリング操作によって運転者が要求する要
求ヨーモーメント(図に実線で示す)よりも大きいこと
から、内燃機関2からの出力トルクを増加すると共に、
旋回外輪となる駆動輪(図では右駆動輪22RR)に制動
力を加えることにより、左右駆動輪22RT,22RRへの
トルク配分比を制御し、更に、旋回外輪となる従動輪
(図では右従動輪22FR)に制動力を加えることによっ
て、旋回外輪側の駆動輪の駆動力を旋回内輪側の駆動輪
の駆動力よりも小さくすると共に、旋回外輪側の従動輪
の横力(図の右従動輪22FRに付与した横矢印)を図に
示す点線から実線へと減少させて、車両のヨーモーメン
トを運転者のステアリング操作に対応した要求ヨーモー
メントに制御するための制御量を演算するための処理で
ある。
【0054】そして、S180の処理は、上記S160
と同様に実行され、S190の処理は、まず上記(2) 式
を用いて求められた要求ヨーモーメントMreq と、トレ
ッドの2分の1の値LT と、制動力に対する横力の変化
率Kfと、従動輪(前輪)側の車軸と車両重心位置との
距離Lfとに基づき、次式(9) を用いて、左右駆動輪2
2RL,22RRの目標駆動力差△DR を求め、 △DR =Mreq /(LT・1.5+0.5・Kf・Lf) …(9) 次に、この目標駆動力差△DR と、車輪のスリップ率λ
に対する制・駆動力の変化率K1とに基づき、前述の
(6) 式を用いて、左右駆動輪22RL,22RRのスリップ
率差△SDLTを求め、このスリップ率差△SDLTと
旋回内輪側及び旋回外輪側の駆動輪の現在のスリップ率
λi,λoとに基づき、次式(10),(11)を用いて旋回内
輪側及び旋回外輪側の駆動輪の目標スリップ率λiT,λ
oTを夫々求め、 λiT=λi+△SDLT/2 …(10) λoT=λo−△SDLT/2 …(11) 最後に、上記スリップ率差△SDLTと旋回外輪側の従
動輪の現在のスリップ率λoFとに基づき、次式(12)を用
いて旋回外輪側の従動輪の目標スリップ率λoTFを求め
る、といった手順で実行される。
【0055】λoTF=λiT+△SDLT …(12) 尚、各駆動輪の目標スリップ率λiT及びλoTは、S17
0での演算時と同様、その絶対値が上下限値λLimit を
越えることにないように制限される。また、左右駆動輪
22RL,22RRの目標駆動力差△DR を求めるための演
算式(9) は、以下のように設定されている。
【0056】即ち、左右駆動輪間に発生させる駆動力差
を△DR 、旋回外輪側の従動輪に加える制動力を△BF
、旋回外輪側の従動輪に加わる横力を△Fy、トレッ
ドの2分の1の値をLT 、従動輪の車軸と重心との距離
をLfとすると、要求ヨーモーメントMreq は、次式(1
3)の如く記述できる。
【0057】 Mreq =△DR・LT+△BF・LT+△Fy・Lf …(13) また、(13)式において、△BF =△DR/2 、△Fy=
△BF・Kf と近似すれば、上記(13)は、次式(14)のよ
うに既述できる。 Mreq =△DR・LT+(△DR/2)・LT +(△DR/2)・Kf・Lf …(14) そして、この(14)式から目標駆動力差△DR を求めるた
めの演算式を導けば、上記(9) 式が得られる。
【0058】以上のようにして、S160及び170、
或は180及び190にて、エンジン出力補正値△TE
UP及び各車輪の目標スリップ率λiT,λoT,λoTF が
算出されると、今度は、S200に移行する(図3参
照)。そして、S200では、エンジン回転数と内燃機
関2の軸トルクとスロットル開度との関係を表わす図7
に示すマップを用いて、内燃機関2の軸トルクを現在の
トルクから上記算出されたエンジン出力補正値△TEU
P分だけ増大するのに必要なスロットル開度(目標スロ
ットル開度)を演算し、スロットル開度センサ16にて
検出されるスロットル開度がこの目標開度となるように
スロットル駆動モータ10を駆動する、駆動力増大手段
としての処理を実行する。
【0059】また次に、続くS210では、左右駆動輪
22RL,22RRの内、旋回内輪側の駆動輪のスリップ率
λiを目標スリップ率λiTに、旋回外輪側の駆動輪のス
リップ率λoを目標スリップ率λoTに、夫々制御すると
共に、旋回外輪側の従動輪の目標スリップ率λoTF が設
定されている場合には、その従動輪のスリップ率λoFを
目標スリップ率λoTF に制御する、油圧制御処理を実行
する。そして、この油圧制御処理が一旦終了すると、再
度S110に移行する。
【0060】次に、S210の油圧制御処理は、制御対
象となる各車輪(つまり、左右駆動輪22RL,22RR、
及び左右従動輪22FL,22FRの一方の各々)に対し
て、図8に示す如き手順で実行される。即ち、まずS4
10にて、制御対象となる車輪のスリップ率λW (λ
i,λo,又はλoF)を求め、続くS420にて、その
車輪に対する目標スリップ率λW0(λiT,λoT,又はλ
oTF) を読み込む。
【0061】尚、S410において、車輪のスリップ率
λW は、その車輪の回転速度(車輪速度VW )が車体速
度Vよりも低く(V>VW )、車輪に制動スリップが生
じている場合には、次式(15)を用いて算出され、逆に車
輪速度VW が車体速度Vよりも高く(V<VW )、車輪
に加速スリップが生じている場合には、次式(16)を用い
て算出され、車輪速度VW が車体速度Vと一致している
場合には、スリップ率λW =0が設定される。
【0062】λW =−(V−VW )/V …(15) λW =(VW−V)/VW …(16) そして、続くS430では、S410にて求めたスリッ
プ率λW が目標スリップ率λW0よりも大きいか否かを判
断し、スリップ率λW が目標スリップ率λW0よりも大き
い場合には、S440に移行して、その車輪のホイール
シリンダへのブレーキ油圧を制御する制御パターンを、
油圧回路50内の増圧制御弁を開閉制御して、ブレーキ
油圧を増圧する増圧パターンに設定し、その車輪に加わ
る制動力を増加する。
【0063】尚、この増圧パターンは、ブレーキ油圧の
増圧量が、スリップ率に対する制・駆動力の変化率K1
と、ブレーキ油圧の変化に対する制動力の変化率K2
と、スリップ率λW と、目標スリップ率λW0とをパラメ
ータとする次式(17)となるように設定される。
【0064】 増圧量=(K1/K2)×(λW −λW0) …(17) 一方、S430にて、スリップ率λW が目標スリップ率
λW0以下であると判断された場合には、S450に移行
して、今度は、スリップ率λW が目標スリップ率λW0よ
りも小さいか否かを判断する。そして、スリップ率λW
が目標スリップ率λW0よりも小さい場合には、S460
に移行して、その車輪のホイールシリンダへのブレーキ
油圧を制御する制御パターンを、油圧回路50内の減圧
制御弁を開閉制御して、ブレーキ油圧を減圧する減圧パ
ターンに設定し、その車輪に加わる制動力を減少させ
る。
【0065】尚、この減圧パターンは、ブレーキ油圧の
減圧量が、スリップ率に対する制・駆動力の変化率K1
と、ブレーキ油圧の変化に対する制動力の変化率K2
と、スリップ率λW と、目標スリップ率λW0とをパラメ
ータとする次式(18)となるように設定される。
【0066】 増圧量=(K1/K2)×(λW0−λW ) …(18) また、S450にて、スリップ率λW が目標スリップ率
λW0以上であると判断された場合(つまりスリップ率λ
W を目標スリップ率λW0に制御できている場合)には、
S470に移行し、その車輪のホイールシリンダへのブ
レーキ油圧を制御する制御パターンを、油圧回路50内
の増圧制御弁及び減圧制御弁を閉状態に制御して、ブレ
ーキ油圧を保持する保持パターンに設定して、その車輪
に加わる制動力を現在の状態に保持させる。
【0067】尚、この油圧制御処理実行時には、制御対
象となる車輪のホイールシリンダのブレーキ油圧を制御
できるようにするために、油圧回路50内のポンプ71
A,71Bが駆動される。次に、上述した旋回時挙動制
御処理による動作を、図8の説明図に基づいて説明す
る。尚、図8は、車線変更やS字カーブの走行のために
運転者がステアリングを左方向・右方向に順に大きく操
舵した場合を表わす。
【0068】図8に示すように、時点t1 にて、運転者
がステアリングを左方向に操舵すると、その操舵角に応
じて、運転者の要求する目標ヨーレートが+方向に増加
し、操舵角速度に応じて、運転者の要求する目標ヨー加
速度も+方向に増加する。そして、実ヨー加速度が目標
ヨー加速度よりも小さい場合には、車両がUS傾向にあ
ると判定して、車両に必要なヨーモーメントを発生すべ
く、スロットル開度を運転者のアクセル操作に対応した
基準開度よりも大きく開弁して、内燃機関2の出力トル
クを増大すると共に、旋回内輪側の駆動輪,つまり左駆
動輪22RLに対するブレーキ油圧PRLを増圧して、左駆
動輪22RLに制動力を加えることにより、左右駆動輪2
2RL,22RRにトルク差(駆動力差)を発生させる。
【0069】また、この制御によって、車両の実ヨー加
速度が目標ヨー加速度に達し、実ヨー加速度が目標ヨー
加速度よりも大きくなると(時点t2)、今度は、車両
がOS傾向にあると判定し、車両に発生したヨーモーメ
ントを抑制すべく、スロットル開度を運転者のアクセル
操作に対応した基準開度よりも大きく開弁して、内燃機
関2の出力トルクを増大すると共に、旋回外輪側の駆動
輪,つまり右駆動輪22RRに対するブレーキ油圧PRRを
増圧して、左駆動輪22RLに制動力を加えることによ
り、左右駆動輪22RL,22RRに今までとは逆方向のト
ルク差(駆動力差)を発生させ、更に、旋回外輪側の従
動輪,つまり右従動輪22FRに対するブレーキ油圧PFR
を増圧して、従動輪22FRの横力を低減する。
【0070】従って、本実施例によれば、運転者がステ
アリング操作によって車両を旋回させる際には、車両
に、その旋回に必要なヨーモーメントを発生させて、運
転者が要求する旋回状態を実現できる。また、次に、上
記のように運転者がステアリングを一旦左操舵した後、
右操舵に切り換えると、目標ヨー加速度は、今までとは
逆方向(図では−方向)に変化する。
【0071】そして、このように目標ヨー加速度が変化
すると、実ヨー加速度が「0」に達するまでの間は、車
両はOS傾向にあると判断されて、上記制御が継続さ
れ、実ヨー加速度が目標ヨー加速度と同じ方向(−方
向)になると(時点t3)、車両はUS傾向にあると判
断される。
【0072】そして、このように車両がUS傾向にある
と判断されると、車両を右旋回するのに必要なヨーモー
メントを発生すべく、スロットル開度を運転者のアクセ
ル操作に対応した基準開度よりも大きく開弁して、内燃
機関2の出力トルクを増大すると共に、旋回内輪側の駆
動輪,つまり右駆動輪22RRに対するブレーキ油圧PRR
を増圧して(この場合、右駆動輪22RRに対するブレー
キ油圧PRRの増圧が継続される)、右駆動輪22RRに制
動力を加えることにより、左右駆動輪22RL,22RRに
右旋回に必要なトルク差(駆動力差)を発生させる。
【0073】また、この制御によって、車両の実ヨー加
速度が目標ヨー加速度に達し、実ヨー加速度が目標ヨー
加速度よりも大きくなると(時点t4)、今度は、車両
がOS傾向にあると判定し、車両に発生したヨーモーメ
ントを抑制すべく、スロットル開度を運転者のアクセル
操作に対応した基準開度よりも大きく開弁して、内燃機
関2の出力トルクを増大すると共に、旋回外輪側の駆動
輪,つまり左駆動輪22RLに対するブレーキ油圧PRLを
増圧して、左駆動輪22RLに制動力を加えることによ
り、左右駆動輪22RL,22RRに今までとは逆方向のト
ルク差(駆動力差)を発生させ、更に、旋回外輪側の従
動輪,つまり左従動輪22FLに対するブレーキ油圧PFL
を増圧して、従動輪22FLの横力を低減する。
【0074】また、次に運転者がステアリングの操舵を
止めて、操舵角を「0」に戻すと、目標ヨー加速度は、
再び+方向に変化する。そして、このように目標ヨー加
速度が変化すると、実ヨー加速度が「0」に達するまで
の間は、車両はOS傾向にあると判断されて、上記制御
が継続され、実ヨー加速度が目標ヨー加速度と同じ+方
向になると(時点t5)、車両はUS傾向にあると判断
される。
【0075】そして、このように車両がUS傾向にある
と判断されると、車両に必要なヨーモーメントを発生す
べく、スロットル開度を運転者のアクセル操作に対応し
た基準開度よりも大きく開弁して、内燃機関2の出力ト
ルクを増大すると共に、旋回内輪側の駆動輪,つまり左
駆動輪22RLに対するブレーキ油圧PRLを増圧して(こ
の場合、左駆動輪22RLに対するブレーキ油圧PRLの増
圧が継続される)、左駆動輪22RLに制動力を加えるこ
とにより、左右駆動輪22RL,22RRに必要なトルク差
(駆動力差)を発生させる。
【0076】また、この制御によって、車両の実ヨー加
速度が目標ヨー加速度に達し、実ヨー加速度が目標ヨー
加速度よりも大きくなると(時点t6)、今度は、車両
がOS傾向にあると判定し、車両に発生したヨーモーメ
ントを抑制すべく、スロットル開度を運転者のアクセル
操作に対応した基準開度よりも大きく開弁して、内燃機
関2の出力トルクを増大すると共に、旋回外輪側の駆動
輪,つまり右駆動輪22RRに対するブレーキ油圧PRRを
増圧して、右駆動輪22RRに制動力を加えることによ
り、左右駆動輪22RL,22RRに今までとは逆方向のト
ルク差(駆動力差)を発生させ、更に、旋回外輪側の従
動輪,つまり右従動輪22FRに対するブレーキ油圧PFR
を増圧して、従動輪22FRの横力を低減する。
【0077】従って、本実施例の車両挙動制御装置によ
れば、車線変更やS字カーブの走行のためにステアリン
グを左方向・右方向に順に操舵した場合であっても、左
右駆動輪のトルク差だけで車両に旋回に必要なヨーモー
メントを発生させる従来装置のように、車両に一旦回頭
モーメントを与えた後のステアリング操舵によって車両
が不安定となって、車両がスピンしてしまうようなこと
はなく、車両の操舵性を確保しつつ安定性を向上するこ
とが可能になる。
【0078】つまり、図9に点線で示す左右駆動輪22
RL,22RRに対するブレーキ油圧PRL,PRRの変化は、
従来装置ように、車両のヨーレートが操舵角に対応した
目標ヨーレートとなるように左右駆動輪22RL,22RR
にトルク差を発生させるために、各駆動輪22RL,22
RRに対して制動力を加えた場合の油圧変化を表わしてい
るが、このように、左右駆動輪22RL,22RRのトルク
差だけで車両旋回時の操縦安定性を確保しようとして
も、左右駆動輪22RL,22RRのトルク差によって車両
に回頭モーメントを発生させると、その後のステアリン
グ操作に応じて車両のヨー運動を変えるには、時間がか
かるので、その間、車両が極めて不安定な状態となり、
車両がスピンし易くなる(図に点線で示す従来のヨーレ
ート変化参照)。
【0079】これに対して、本実施例では、左右駆動輪
22RL,22RRのトルク差と、従動輪の一方に加える制
動力とにより、旋回に必要なヨーモーメントを発生させ
るようにしているので、車両旋回時には、操舵性のみな
らず、安定性をも確保することができるようになるので
ある。
【0080】また特に、本実施例では、従来装置のよう
に、目標ヨーレートと実ヨーレートとの差に応じて左右
駆動輪のトルク差や従動輪に加える制動力を制御するの
ではなく、目標ヨー加速度と実ヨー加速度との偏差(ヨ
ー加速度偏差)に基づき、左右駆動輪のトルク差及び従
動輪に加える制動力を制御しているので、ステアリング
操舵後の制御の応答性を向上でき、操舵性及び安定性を
より向上することが可能になる。
【0081】以上、本発明の一実施例について説明した
が、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種
々の態様を採ることができる。例えば、上記実施例で
は、本発明をフロントエンジン・リヤドライブ(FR)
方式の車両(換言すれば後輪駆動車)に適用した場合に
ついて説明したが、本発明は、フロントエンジン・フロ
ントドライブ(FF)方式の車両(換言すれば前輪駆動
車)に適用しても、上記実施例と同様の効果を得ること
ができる。
【0082】また、上記実施例では、車両旋回時に、駆
動輪の駆動力(つまり内燃機関の出力トルク)を増大す
るだけではなく、左右駆動輪間にトルク差を発生させる
ために、旋回外輪側の駆動輪に制動力を加えるものにつ
いて説明したが、駆動輪については、こうしたトルク差
の制御は実行せず、単に車両の旋回の程度に応じて駆動
輪の駆動力を増大するようにしてもよい。そして、この
ようにすれば、車両旋回時には、駆動輪側の横力を増大
して、車両の安定性を確保しつつ、従動輪の一方に加え
た制動力により、車両の旋回特性(つまり操舵性)を向
上できるので、従来装置に比べて、車両旋回時の操舵性
及び安定性を向上できる。
【0083】また更に、上記実施例では、車両がOS傾
向にあるときにだけ、旋回外輪側の従動輪に制動力を加
えることによって、車両がスピンし易くなるのを防止す
るように構成したが、車両がUS傾向にあるときには、
旋回内輪側の従動輪に制動力を加えるようにすれば、車
両の操舵性をより向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例の車両挙動制御装置の概略構成図であ
る。
【図2】 実施例の油圧回路の構成を説明する説明図で
ある。
【図3】 制・駆動力制御回路において実行される旋回
時挙動制御処理を表わすフローチャートである。
【図4】 図3のS120にて実行される車両状態推定
処理を表わすフローチャートである。
【図5】 旋回時挙動制御によるUS時の制御動作
(a)及びOS時の制御動作(b)を説明する説明図で
ある。
【図6】 駆動輪のスリップ率λに対する制・駆動力の
変化特性及び左右駆動輪の目標スリップ率の設定手順を
説明する説明図である。
【図7】 内燃機関の軸トルクをエンジン出力補正値△
TEUP分だけ増加するのに必要なスロットル開度を求
めるためのマップを表わす説明図である。
【図8】 図3のS210にて各車輪毎に実行される油
圧制御処理を表わすフローチャートである。
【図9】 旋回時挙動制御による動作の一例を示す説明
図である。
【符号の説明】
2…内燃機関 10…スロットル駆動モータ 12
…スロットルバルブ 14…アクセル開度センサ 16…スロットル開度セ
ンサ 20…制・駆動力制御回路 26…内燃機関制御回路 30…エンジン回転数センサ 32FR,32FL…従動
輪速度センサ 32RL,32RR…駆動輪速度センサ 40…ヨーレー
トセンサ 44…操舵角センサ 50…油圧回路 51FL〜51RR…ホイールシリンダ 54A,54B
…3方向切替弁 56〜59…増圧制御弁 61〜64…減圧制御弁 67A,67B,71A,71B…ポンプ 72A,
72B…加圧制御弁
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI F02D 29/02 311 F02D 29/02 311A 41/04 301 41/04 301G

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両の前後・左右の夫々の車輪に対し
    て、ブレーキ液圧作用により車輪制動力を発生する制動
    力発生手段と、 前記各車輪の制動力発生手段に対するブレーキ液圧を発
    生するブレーキ液圧発生源と、 前記車輪の内、前輪側の左右輪及び後輪側の左右輪の一
    方を駆動輪として駆動力を与える駆動力発生源と、 車両の旋回時に、旋回の度合に応じて、前記駆動力発生
    手段が前記駆動輪に与える駆動力の大きさを増大する駆
    動力増大手段と、 車両の旋回時に、車両の実際の旋回状態と乗員のステア
    リング操作に応じた目標旋回状態とを比較し、実旋回状
    態を目標旋回状態に近付けるように、前記駆動力発生源
    からの駆動力を受けない左右の従動輪に設けられた制動
    力発生手段の一方に対して、前記ブレーキ液圧発生源か
    らのブレーキ液圧を加える制御手段と、 を備えたことを特徴とする車両挙動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記制御手段は、アンダステア時に前記
    従動輪の旋回内輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧を
    加えるアンダステア時制御、及び、オーバステア時に前
    記従動輪の旋回外輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧
    を加えるオーバステア時制御、の少なくとも一方を実行
    することを特徴とする請求項1に記載の車両挙動制御装
    置。
  3. 【請求項3】 前記制御手段は、前記左右の駆動輪に設
    けられた制動力発生手段の一方に対しても、前記ブレー
    キ液圧発生源からのブレーキ液圧を加え、該ブレーキ液
    圧により左右駆動輪の一方に発生する制動力による左右
    駆動輪間における駆動力の移動と、前記左右従動輪の一
    方に発生する制動力とによって、実旋回状態を目標旋回
    状態に近付けることを特徴とする請求項1又は請求項2
    に記載の車両挙動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記制御手段は、アンダステア時に前記
    駆動輪の旋回内輪側の制動力発生手段にブレーキ液圧を
    加え、オーバステア時に前記駆動輪の旋回外輪側の制動
    力発生手段にブレーキ液圧を加えることを特徴とする請
    求項3に記載の車両挙動制御装置。
  5. 【請求項5】 前記制御手段は、前記制動力発生手段に
    加えるブレーキ液圧を、前記駆動力増大手段による駆動
    力の増大によって生じる車両推進力を相殺するように決
    定することを特徴とする請求項1〜請求項4いずれか記
    載の車両挙動制御装置。
  6. 【請求項6】 前記制御手段は、車両の実旋回状態を目
    標旋回状態に制御するのに必要な要求ヨーモーメントを
    演算し、該要求ヨーモーメントに基づき、前記駆動力増
    大手段による前記駆動力の増大量を決定すると共に、前
    記制動力発生手段に加えるブレーキ液圧を決定すること
    を特徴とする請求項5に記載の車両挙動制御装置。
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