【発明の詳細な説明】
多薬物耐性に対する作用物質としてのカルバゾール誘導体
本発明は、抗腫瘍剤に対する多薬物耐性を避けるかまたは除去するために公知
または新規スタウロスポリン誘導体(インドロ- カルバゾール誘導体)を使用す
ること、生成物としての新規誘導体、新規スタウロスポリン誘導体の調製方法、
および新規誘導体を含む医薬組成物に関する。
スタウロスポリンは、本発明の誘導体の基礎を形成するものであり、ストレプ
トミセス スタウロスポレウス(Streptomyces staurosporeus)AWAYA,TAKAHASH
I and OMURA,sp.nov.AM2282の培養物から早くも1977年には単離された(エス
.オームラ(S.Omura)ら、J.Antibiot.30,275 - 281(1977))参照)。これまで
は、絶対的ではなく相対的なスタウロスポリンの配置のみが知られていた。絶対
配置は、最近になってからエヌ.フナト(N.Funato)らにより、Tetrahedron Let
ters 35:8,1251-1254(1994)で公開され、これはスタウロスポリンの相対的配置
を示す文献に予め使用された構造の鏡像体に相当する。したがって、Tetrahedro
n Letters 刊行物は、文字通り“これまでに通常使用されてきたスタウロスポリ
ンについての立体化学表記は訂正されるべきである”と勧告している。これまで
絶対的配置が知られていなかったとはいえ、用語“スタウロスポリン誘導体”に
より明らかに確立されていた。本明細書においては、新しい式を使用する。
これまで知られてきたスタウロスポリンおよびほとんどのスタウロスポリン誘
導体は、プロテインキナーゼC における強力な阻害作用を示す。プロテインキナ
ーゼC は、リン脂質およびカルシウムに
依存するものであり、これはいくつかの形で細胞内に生じ、様々な基本的方法た
とえば信号伝達、増殖および分化ならびにホルモンおよび神経伝達物質の分泌に
関与する。この酵素の活性化は、レセプター仲介による細胞膜のリン脂質の加水
分解または特定の腫瘍形成促進活性剤との直接の相互反応のいずれかによりもた
らされる。レセプター仲介による信号伝達に対する細胞の感受性は、プロテイン
キナーゼC (信号伝達物質としての)の活性を変性することにより著しく影響され
うる。プロテインキナーゼC の活性に影響を与えうる化合物は、腫瘍阻害剤、抗
- 炎症剤、免疫調節剤および抗菌性有効成分として使用されることができ、これ
はアテローム性動脈硬化症および冠血管系および中枢神経系の疾患に対する作用
物質として興味あるものである。
プロテインキナーゼC における阻害作用は、スタウロスポリンのラクタム窒素
原子が水素原子の代わりに他の置換基を有する場合、すなわち以後に示す式I に
おける置換基R1が水素原子以外である場合、ほぼ20倍- 100 倍以上弱くなる。特
に、以下の式I において基R2も同時に水素原子以外である場合、プロテインキナ
ーゼC における阻害作用は、すべての実際的目的に対し失われる。以下に示す式
I における置換基R1が水素原子以外である場合、抗腫瘍活性もまた著しく低下す
る。これが、多くの研究が最近この分野で行われそしてR1が水素原子である非常
に多くの誘導体が調製されているのに、文献にはR1が水素原子以外であるスタウ
ロスポリン誘導体のごくわずかだけが記載されているという理由であろう。すな
わち、R1がベンジル基であり、R2がベンゾイル基であり、R3が水素原子である以
下の式I に相当する化合物は、主に陰性の対照物としてだけ言及されてきた。
古くからある細胞静止剤に対する耐性の出現は、癌の化学療法に
おいて重要な問題である。耐性は多くの場合有効成分の細胞内濃度における減少
を伴う。この減少はしばしば膜結合した170 キロダルトンの糖たんぱく質(Pgp)
の出現に関係する。このたんぱく質は広い特異性を有するポンプとして作用し、
頻繁に使用される抗腫瘍剤たとえばビンカアルカロイド(Vinca alkaloids)、ア
ントラサイクリン、ポドフィロトキシンおよびアクチノマイシンD を細胞外へ運
び出すことができる。
驚くべきことに、ここにおいて以下に示す式I のスタウロスポリン誘導体、な
かでも耐性ヒトKB-8511 細胞の例により示されうるように、抗腫瘍剤たとえば細
胞静止剤の作用に対して多薬物耐性細胞を完全に再- 感受性化することができる
ことがわかった。これは、前記のように、すべての誘導体がプロテインキナーゼ
C において阻害作用を非常に弱められるかまたは阻害作用を全く示さず、そして
抗腫瘍活性もまた著しく減少していても達成される。また驚くべきことに、高度
の感受性化である。この点において、式I のスタウロスポリン誘導体はR1が水素
原子である同様の誘導体と大体等しい。通常の細胞静止剤と著しい抗腫瘍活性お
よびプロテインキナーゼC における阻害作用を有するスタウロスポリン誘導体と
の組合せと比べて、通常の細胞静止剤と以下に示す式I で表されるスタウロスポ
リン誘導体との組合せはプロテインキナーゼC 阻害作用に関係する副作用が生じ
ないかまたは非常に弱い形でのみ起きる点で有利である。プロテインキナーゼC
阻害スタウロスポリン誘導体をたとえば犬に投与すると、その結果、嘔吐といっ
てもよい程のむかつきが起きる。後者は有効成分もまた吐き出され、有効的に摂
取された有効成分の投与量が予定しそして投与された量と異なる結果になるので
、特に経口投与による抗腫瘍剤にとって不利であることは理解されるであろう。
本発明は、次式 I
(式中、
R1は、ホルミル基、非置換もしくはアリールで置換された炭素原子29個までの脂
肪族炭化水素基、またはアリール基であり、
R2は、水素原子、C1-C5アルキル基、ベンゾイル基、低級アルカノイル基または
遊離もしくは保護されたアミノ基を有するα- アミノアシル基であり、
R3は、水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基またはオキソ基であり、
または
R1はメトキシカルボニルメチル基であり、
R2はベンゾイル基であり、
R3は水素原子である)
で表されるスタウロスポリン誘導体および少なくとも一つの塩形成基を有する
式I で表される化合物の作用物質上許容されうる塩を、抗腫瘍剤に対する多薬物
耐性を避けるかまたは除去するために使用することに関する。
特記しないかぎり、この開示において、“低級”と記した有機基は、炭素原子
7個以下、好ましくは4個以下を含む。
炭素原子29個までの非置換脂肪族炭化水素基R1は、炭素原子29個まで特に18個
までの非環式炭化水素基であり、飽和または不飽和である。不飽和基は、一つ以
上の、特に結合したおよび/または単離した、多重結合(二重および/または三
重結合)のものである。非置換された脂肪族炭化水素基は、特に直線または枝分
かれした低級アルキル、低級アルケニル、低級アルカジエニルまたは低級アルキ
ニル基である。低級アルキル基は、たとえば、メチル、エチル、n-プロピル、イ
ソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチルまたはtert- ブチル基、または
n-ペンチル、イソペンチル、n-ヘキシル、イソヘキシルまたはn-ヘプチル基であ
る;低級アルケニル基は、たとえばアリル、プロペニル、イソプロペニル、2-も
しくは3-メタリルまたは2-もしくは3-ブテニル基である;低級アルカジエニル基
は、たとえば1-ペンタ−2,4-ジエニル基である;低級アルキニル基は、たとえば
プロパルギルまたは2-ブチニル基である。相当する不飽和基において、二重結合
は特に遊離基に対してα- 位より高い位置にある。
アリール基で置換された脂肪族炭化水素基R1は、脂肪族炭化水素基特に最大7
個まで、好ましくは最大4 個までの炭化水素基、たとえばメチル、エチルおよび
ビニル基で、以下に定義するアリール基一つ以上を有するようなものである。
アリール基は特にフェニル基であるが、ナフチルたとえば1-または2-ナフチル
基、ビフェニリルたとえば特に4-ビフェニリル基または、ならびにアンスリル、
フルオレニルまたはアズレニル基でよく、または一つ以上の飽和環を有するその
芳香族類似物である。好ましいアリール- 低級アルキル基およびアリール- 低級
アルケニル基
は、たとえば末端フェニル基を含むフェニル- 低級アルキルまたはフェニル- 低
級アルケニル基、たとえばベンジル、フェネチル、1-、2-または3-フェニルプロ
ピル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、トリチルおよびシンナミル基であ
り、ならびに1-または2-ナフチルメチル基である。非環式基たとえば低級アルキ
ル基を有するアリール基の中では、特に異なった位置にメチル基を有する特にo-
、m-およびp-トリルおよびキシリル基が言及される。
C1-C5アルキル基R2は、たとえば、エチル、n-プロピル、n-ブチルまたは好ま
しくはメチル基である。
低級アルカノイル基R2は、たとえばアセチル基である。
遊離アミノ基を有するα- アミノアシル基としてのR2は、α- アミノ酸、特に
天然産生のL 形α- アミノ酸たとえばグリシン、フェニルグリシン、アラニン、
フェニルアラニン、プロリン、ロイシン、セリン、バリン、チロシン、アルギニ
ン、ヒスチジンまたはアスパラギンから誘導されるアシル基である。
保護されたアミノ基を有するα- アミノアシル基としてのR2において、アミノ
基は、アミノ- 保護基、特に以下に記載のものの一つたとえば低級アルコキシカ
ルボニルまたはベンジルオキシカルボニルの一つにより保護されている。
低級アルコキシ基R3は好ましくはメトキシ基である。
それらの性質にしたがって、本発明の化合物は、これらが塩形成基を含む場合
には、塩の形、特に作用物質上許容されうるすなわち生理学的に寛容されうる塩
でもよい。単離または精製の目的で、作用物質上不適当な塩を使用することもで
きる。作用物質上許容されうる塩だけが治療に使用され、これらが好ましい。
したがって、遊離酸基たとえば遊離スルホ、ホスホリルまたはカルボキシ基を
有する式I の化合物は、塩形成塩基成分とともに、塩
の形好ましくは生理学的に寛容される塩の形でもよい。特に金属またはアンモニ
ウム塩たとえばアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩たとえばナトリウム、カ
リウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩、またはアンモニアもしくは好適な
有機アミンとのアンモニウム塩、特に第三モノアミンおよび複素環式塩基たとえ
ばトリエチルアミン、トリ-(2-ヒドロキシエチル)- アミン、N-エチルピペリ
ジンまたはN,N'- ジメチルピペラジンとのアンモニウム塩が考慮される。
塩基性の本発明化合物は、また付加塩特に無機および有機酸との酸付加塩の形
でもよいが、また第四塩の形でもよい。したがって、たとえば、塩基性基たとえ
ばアミノ基を置換基として有する式I の化合物は、通常使用される酸との酸付加
塩を形成してもよい。好適な酸は、たとえばハロゲン化水素酸、たとえば塩酸お
よび臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸または過塩素酸および脂肪族、脂環式、芳
香族または複素環式カルボン酸もしくはスルホン酸たとえば蟻酸、酢酸、プロピ
オン酸、琥珀酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、フマル酸
、マレイン酸、ヒドロキシマレンイ酸、オキザル酸、ピルビン酸、フェニル酢酸
、安息香酸、p-アミノ安息香酸、アントラニル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、サリ
チル酸、p-アミノサリチル酸、エンボン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン
酸、ヒドロキシエタンスルホン酸、エチレンジスルホン酸、ハロベンゼンスルホ
ン酸、トルエン- スルホン酸、ナフタレンスルホン酸またはスルファニル酸、ま
たメチオニン、トリプトファン、リシンもしくはアルギニン、またはアスコルビ
ン酸である。
式I で表されるスタウロスポリン誘導体は、ヒトKB-8511 細胞の場合において
本明細書の実施例の項で示すように、抗- 腫瘍剤たとえば細胞静止剤の作用に対
し多薬物耐性細胞を十分に再感受性化す
ることができる。このような抗- 腫瘍剤は、たとえばドクソルビシン、ダウノル
ビシン、ビンクリスチン、エトポサイド、タクソール、ミトマイシンC 、アクチ
ノマイシンD 、ミトザントロンおよび特にビンブラスチンおよびアドリアマイシ
ンである。式I で表されるスタウロスポリン誘導体および少なくとも一つ塩形成
基を有するこのような誘導体の作用物質上許容されうる塩はしたがって腫瘍疾患
の治療のためにこれらの抗- 腫瘍剤の一つと組み合わせて使用されうる。
前記したように、プロテインキナーゼC における式I の阻害作用はもはや存在
しないかまたはR1が水素原子である類似化合物と比べても非常に弱い。プロテイ
ンキナーゼC 阻害作用を測定するために、ブタ大脳プロテインキナーゼC を使用
し、これはティ.ウチダおよびシー.アール.フィルバーン(T.Uchida and C.R
.Filburn)、J.Biol.Chem.259,12311-4(1984)にしたがって精製される。式I
で表される化合物のプロテインキナーゼC の阻害作用は、ディ.ファブロ(D.Fab
bro)ら、Arch.Biochem.Biophys.239,102-111(1985)の方法に従って予め測定
された。前記の方法で使用されたブタ大脳プロテインキナーゼC はプロテインキ
ナーゼC の異なったタイプ(イソタイプ)の混合物である。この理由のために、
今日では、純粋な組換えイソタイプがブタ大脳プロテインキナーゼC の代わりに
ほとんど使用される。
組換えPKC イソタイプは、以下のようにクローン化し、発現しそして精製され
る:
バキュロウィルスおよびそのクローニングの助けを借りた様々なたんぱく質の
調製およびSf9 昆虫細胞からの単離は、エム.ディ.サマーズ(M.D.Summers)お
よびジィ.イー.スミス(G.E.Smith)“バキュロウィルスおよび昆虫細胞培養手
段のための手作業方法(A
manual method for baculovirus vectors and insect cell culture procedure)
”、Texas Agricul.Exptl.Station Bull.(1987),1555に記載されているよう
に行われる。Sf9 細胞におけるPKC-α(ウシ)、PKC-β1(ヒト)、PKC-β2(ヒト)お
よびPKC-γ(ヒト/ウシハイブリッド)の発現のための組換えウィルスの構築およ
び単離が、ステイブルら(Stable et al.)、[エス.ステイブル(S.Stable)、エ
ム.リアナゲ(M.Liyanage)およびディ.フリス(D.Frith)、“Expression of pro
tein kinase C isozymes in insect cells and isolation of recombinant prot
eins”,Meth.Neurosc.(1933)]に記載のように行われる。Sf9 細胞におけるPK
C イソタイプの調製はステイブルらにより特定されたように行われ、そして酵素
の精製はマックグリンらにより公開された方法により行われる[イー.マックグ
リン(E.McGlynn)、ジェ イリベタンツ(J.Liebetanz)、エス.ロイテナー(S.Reu
tener)、ジェイ.ウッド(J.Wood)、エヌ.ビィ.リドン(N.B.Lydon)、エッチ.
ホフスター(H.Hofstetter)、エム.バネック(M.Vanek)、ティ.メイヤー(T.Mey
er)およびディ.ファブロ(D.Fabbro)、“Expression and partial characteriza
tion of rat protein kinase C- δand protein kinase C- ζ in insect cells
using recombinant baculovirus”、J.Cell.Biochem.49.239-250(1992)]。組
換えPKC-δ(ラット)、PKC-ε(ラット)、PKC- ζ iラット)およびPKC- η(マウ
ス)の生成およびその発現ならびに精製について、リアナゲ(Liyanage)らにより
記載された手法[“Protein kionase C group B menbers PKC- δ,-ε,-ζおよび
PKC-λ:Comparision of properties of recombinant proteins in vitro and i
n vivo”,Biochem.J.283,781-787(1992)]およびマックグリンらの手法(前記
参照)は、以下のようであるが、さらにPKC-ηの発現についてトランスファー
ベクターpAc360を使用することを付け加える[ブィ.ルクノウおよびエム.デイ
.サマーズ(V.Luckow and M.D.Summers)“Trends in the development of bacul
ovirus expression”,Biotechnology 6,47-55(1988)]。
前記方法で得られる組換えPKC イソタイプの活性の測定は、脂質およびカルシ
ウム(補因子)の不存在下に行われる。硫酸プロタミンは補因子の不存在下にホス
ホリル化されるが、これに対し基質として使用される。酵素の活性は硫酸プロタ
ミンに対し32Pからγ- [32P]-ATPへのトランスファーを反映する。硫酸プロタミ
ンは、各々4 個のC 末端アルギニン残基を含むポリペプチドであるの混合物であ
る。ホスフェート組込みの測定は、以下の条件下に行われる:反応混合物100 μ
l は、最終濃度20ミリモルTRIS-HClpH 7.4、10ミリモルMg[NO3]2、0.5 mg/ml 硫
酸プロタミン、10μモル ATP(0.1μCiγ-[32P]-ATP;10 Ci/mol;アマーシャム社
(Amersham)、英国のリトルカルフォント(Little Chalfont United Kingdom)、様
々な阻害基質濃度および酵素0.5-2.5U(単位;1 単位は、前述のγ-[32P]-ATPか
ら32ヒストンHI[シグマ社(Sigma),V-S型]へ1 分間にP 1 ナノモルがトランスフ
ァーする酵素の量/ たんぱく質1mg である)を含む。反応は、酵素を添加しそし
て32℃まで移すことにより開始する。反応時間は20分間である。その後、反応は
、P81 クロマトグラフ紙(英国、メイドストーンのワットマン社(Whatman,Maids
tone,United Kingdom))へ50μl アリコートを滴下することにより停止される。
非結合γ-[32P]-ATPおよびヌクレオチドフラグメントをジェイ.ジェイ.ウィッ
ト(J.J.Witt)およびアール.ロスコスキー(R.Roskoski)、“Rapid protein kina
se assay using Phospho-cellulose-paper absorption”,Anal.Biochem.66,253
-258(1975)に記載のように洗浄手段により除去後、基質のホスホリル化を
シンチレーション測定により調べる。本明細書において、式I で表される化合物
は、これらがR1が水素原子である類似化合物に見られるIC50値より約20-1000 倍
大きい濃度IC50になるまでプロテインキナーゼC(PKC)の様々なイソタイプを一般
には阻害しない。
R1が炭素原子29個までを有し低級アルキル基以外の非置換脂肪族炭化水素基、
または炭素原子29個までを有しアリール基により置換された脂肪族炭化水素基、
またはアリール基であり、そして他の置換基は前記定義のものである式I で表さ
れる化合物、および少なくとも一つの塩形成基を有する式I で表される化合物の
作用物質上許容されうる塩の前記使用が特に好ましい。
R1が低級アルキル基たとえば特にメチル基またはベンジル基であり、R2が水素
原子、ベンゾイル基またはグリシル、フェニルグリシル、アラニル、フェニルア
ラニル、プロピル、ロイシル、セリル、バリル、チロシル、アルギニル、ヒスチ
ジル、およびアスパラギルであり、R3は水素原子またはオキソ基であるか、また
はR1はメトキシカルボニルメチル基であり、R2はベンゾイル基であり、R3は水素
原子である式I で表される化合物、および少なくとも一つの塩形成基を有する式
I で表される化合物の作用物質上許容されうる塩を抗- 腫瘍剤に対する多薬物耐
性を避けるかまたは除去することに使用することが特に好ましい。
特に好ましくは、実施例に記載の式I で表される化合物および少なくとも一つ
の塩形成基を有するこのような化合物の作用物質上許容されうる塩の前記使用で
ある。
本発明はまた先行技術に属さない式I で表される化合物自体、すなわち式中R1
が炭素原子6-29個の非置換脂肪族炭化水素基、アリール基で置換された炭素原子
29個までの脂肪族炭化水素基であってベンジル基以外の基、またはアリール基で
あり、R2が水素原子、C1-C5
アルキル基、ベンゾイル基、低級アルカノイル基またはグリシル、フェニルグ
リシル、アラニル、フェニルアラニル、プロピル、ロイシル、セリル、バリル、
チロシル、アルギニル、ヒスチジルおよびアスパラギルから選択されるα- アミ
ノアシル基であり、そしてR3は水素原子、ヒドロキシ基、低級アルコキシ基また
はオキソ基である式I で表される化合物、および少なくとも一つの塩形成基を有
する式I で表されるこのような化合物の塩に関する。
好ましくは、式中R1が炭素原子6-29個の非置換脂肪族炭化水素基、アリール基
で置換された炭素原子29個までの脂肪族炭化水素基であってベンジル基以外の基
、またはアリール基であり、R2がグリシル、フェニルグリシル、アラニル、フェ
ニルアラニル、プロピル、ロイシル、セリル、バリル、チロシル、アルギニル、
ヒスチジルおよびアスパラギルから選択されるα- アミノアシル基であり、そし
てR3は水素原子またはオキソ基である式I で表される化合物、および少なくとも
一つの塩形成基を有する式I で表されるこのような化合物の塩である。
特に好ましくは、式中R1がベンジル基であり、R2が遊離または保護されたアミ
ノアシル基、特にグリシル、フェニルグリシル、アラニル、フェニルアラニル、
プロピル、ロイシル、セリル、バリル、チロシル、アルギニル、ヒスチジルおよ
びアスパラギルから選択されるα- アミノアシル基であり、そしてR3はヒドロキ
シ基、低級アルコキシ基、オキソ基または好ましくは水素原子である式I で表さ
れる化合物、および少なくとも一つの塩形成基を有する式I で表されるこのよう
な化合物の塩である。
最も好ましくは、先行技術を越えた新規の実施例に記載の式I で表される化合
物、および少なくとも一つの塩形成基を有する式I で表されるこのような化合物
の塩である。
式 Iの化合物および少なくとも一つの塩形成基を有するこのような化合物の塩
は、それ自体公知の方法で調製される。本発明の方法は以下a)又はb)の方法を含
んでなる:
a) 式II
(式中、置換基は前記定義のものであり、式IIの化合物に存在する官能基はいず
れも、必要ならば保護された形である)で表される化合物、または少なくとも一
つの塩形成基を有するこのような化合物の塩を、式
R1 Y (III)
(式中、R1は前記定義のものであり、ここに存在する官能基はいずれも必要なら
ば保護された形であり、そしてY は脱離基またはその一方の端が基R1における水
素原子に代わるものである別の単結合である)で表される化合物、または少なく
とも一つの塩形成基を有するこれらの化合物の塩と反応させ、次いでいずれの保
護基も除去するか、または
b) 式IV
(式中、置換基は前記定義のものであり、ここに存在する官能基はいずれも必要
ならば保護された形である)で表される化合物、または少なくとも一つ塩形成基
を有するこのような化合物の塩を、式
R2 a X (V)
(式中、R2 aはR2の前記定義のものであるが但し水素原子を除くものであり、基R2 a
に存在する官能基はいずれも必要ならば保護された形であり、X は脱離基また
は別の単結合であり、その一方の端部が基R2 aにおける水素原子と代わるもので
ある)で表される化合物または少なくとも一つの塩形成基を有するこれらの化合
物の塩と反応させ、次いでいずれの保護基をも除去し、
そして所望により、得られた式 Iで表される化合物を式 Iで表される異なった化
合物へ変転し、および/または遊離形で得られる式 Iの化合物をその塩へ変換し
、および/または塩の形で得られる式 Iの化合物をその遊離形または異なった塩
へ変換する。
前記方法の変形を実施する方法を、以下に詳細に説明する:
一般的注意:
式 Iの最終生成物は、式 Iの別の最終生成物の調製のための出発材料において
保護基としても使用されることができる置換基を含んでもよい。このテキストの
範囲において、特に内容から逸脱しない限り、用語“保護基”は、特に好ましい
式 Iの最終生成物の構成部分ではない容易に脱離可能な基のみを意味する。
方法a):式IIおよびIII の化合物に存在しうる遊離官能基は、好ましくは容易
に脱離可能な保護基により保護されたものであり、これは特に遊離アミノまたは
カルボキシ基である。また遊離ヒドロキシ基を保護することが有利であるかもし
れない。所望の反応に関与すると思われる官能基は、もちろん保護されない。
保護基およびこれらの導入および除去方法は、たとえば以下に記載されている
:“有機化学における保護基(Protective Groups in Organic Chemistry)”,プ
レナム プレス社(Plenum Press)、ロンドン、ニューヨーク、1973 および“有
機化学の方法(Methoden der organischen Chemie)”ホーベン- ウェイル(Houben
-Weyl)、4版、Vol.15/1 、ゲオルグ- ティーメ フェアラーク(Georg-Thieme-Ve
rlag)、シュトゥットガルト(Stuttgart)、1974ならびにテオドラ ダブリュ.グ
リーネ(Theodora W.Greene)、“有機合成における保護基(Protective Groups i
n Organic Synthesis)”ジョン ウィリーアンドサンズ社(John Wiley & Sons)
、ニューヨーク 1981。これらが簡単に、すなわちたとえば加溶媒分解、還元、
光分解によりまたは生理学的条件下に不所望な二次反応を起こすことなく除去さ
れうることが保護基の特徴である。
保護されたアミノ基は、たとえば容易に分解可能なアシルアミノ、アリールメ
チルアミノ、エーテル化メルカプトアミノ、2-アシル- 低級アルケ-1- エン- イ
ル- アミノ、シリル- アミノまたはスタニルアミノ基の形またはアジド基の形で
ある。
相当するアシルアミノ基において、アシル基はたとえば炭素原子18個までを有
する有機カルボン酸のアシル基、特に非置換または置換たとえばハロ- またはア
リール置換されたアルカンカルボン酸または非置換もしくは置換たとえばハロ-
、低級アルコキシ- またはニトロ- 置換された安息香酸、またはカルボン酸半エ
ステルのアシル基である。このようなアシル基は、たとえば低級アルカノイル、
たとえばホルミル、アセチルもしくはプロピオニル基、ハロ- 低級アルカノイル
、たとえば2-ハロアセチル、特に2-クロロ- 、2-ブロモ- 、2-ヨード- 、2,2,2,
- トリフルオロ- もしくは2,2,2-トリクロロ- アセチル、非置換または置換たと
えばハロ- 、低級アルコキシ- もしくはニトロ- 置換されたベンゾイル、たとえ
ばベンゾイル、4-クロロベンゾイル、4-メトキシベンゾイルもしくは4-ニトロベ
ンゾイル、または低級アルキル基の1-位が枝分かれしたまたは1-もしくは2-位が
好適に置換された低級アルコキシカルボニル、特にtert- 低級アルコキシカルボ
ニルたとえばtert- ブトキシカルボニル基、好ましくはフェニル基である一つま
たは二つのアリール基を有し、非置換またはたとえば低級アルキル、特にtert-
低級アルキルたとえばtert- ブチル、低級アルコキシたとえばメトキシ基、ヒド
ロキシ基、ハロゲンたとえば塩素原子、および/またはニトロ基により置換され
たアリールメトキシカルボニル基、たとえば非置換または置換されたベンジルオ
キシカルボニル、たとえば4-ニトロベンジルオキシカルボニル、または置換され
たジフェニルメトキシカルボニルたとえばベンズヒドロキシカルボニルまたはジ
-(4-メトキシフェニル)- メトキシカルボニル基、アロイルメトキシカルボニ
ル基(式中、アロイル基は好ましくは非置換またはたとえばハロゲン原子たとえ
ば臭素で置換されたベンゾイル基である)、たとえばフェニルアシルオキシカル
ボニル、2-ハロ- 低級アルコキシカルボ
ニル、たとえば2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、2-ブロモエトキシカルボ
ニルまたは2-ヨード- エトキシカルボニルまたは2-(トリ置換シリル)- エトキシ
カルボニルであって各置換基は独立して非置換またはたとえば低級アルキル、低
級アルコキシ、アリール、ハロゲンまたはニトロ基により置換されたもの、たと
えば相当する非置換または置換された、低級アルキル、フェニル- 低級アルキル
、シクロアルキルまたはフェニルたとえば2-トリ- 低級アルキルシリルエトキシ
カルボニル、たとえば2-トリメチルシリルエトキシカルボニルまたは2-(ジ- n-
ブチル- メチル- シリル)- エトキシカルボニル、または2-トリアリールシリル
エトキシカルボニルたとえば2-トリフェニルシリルエトキシカルボニル基である
。
アミノ保護基として好適な他のアシル基は、また有機リン酸基、ホスホン酸も
しくはホスフィン酸、たとえばジ- 低級アルキルホスホリル、たとえばジメチル
ホスホリル、ジエチルホスホリル、ジ-n- プロピルホスホリル、ジイソプロピル
ホスホリル、ジシクロアルキルホスホリル、ジシクロヘキシルホスホリル、非置
換または置換されたジフェニルホスホリル、たとえばジフェニルホスホリル、非
置換または置換されたたとえばニトロ- 置換された、ジ(フェニル- 低級アルキ
ル)- ホスホリル、たとえばジベンジルホスホリルまたはジ-(4-ニトロベンジル
)- ホスホリル、非置換または置換されたフェニルオキシ- フェニル- ホスホリ
ルたとえばフェニルオキシフェニル- ホスホリル、ジ- 低級アルキルホスフィニ
ル、たとえばジエチルホスフィニル、または非置換または置換されたジフェニル
ホスフィニル、たとえばジフェニルホスフィニルである。
モノ- 、ジ- または特にトリ- アリールメチルアミノ基であるアリールメチル
アミノ基において、アリール基は特に非置換または置換されたフェニル基である
。このような基は、たとえばベンジル、
ジフェニルメチル- およびとくにトリチル- アミノ基である。
このような基で保護されたアミノ基におけるエーテル化メルカプト基は、特に
アリールチオ- またはアリール- 低級アルキルチオであってその際アリールは特
に非置換またはたとえば低級アルキル、たとえばメチルまたはtert- ブチル基、
低級アルコキシ、たとえばメトキシ基、ハロゲンたとえばクロロにより、および
/またはニトロ基により置換されたフェニルである。相当するアミノ保護基は、
たとえば4-ニトロフェニルチオ基である。
アミノ保護基として使用されうる2-アシル- 低級アルケ-1-エン-1- イル基に
おいて、アシル基は、たとえば低級アルカンカルボン酸、非置換またはたとえば
低級アルキル、たとえばメチルまたはtert- ブチル基、低級アルコキシ、たとえ
ばメトキシ基、ハロゲンたとえばクロロにより、および/またはニトロ基により
置換された安息香酸の相当する基、または特にカルボン酸半エステル、たとえば
カルボン酸低級アルキル半エステルである。相当する保護基は特に- 低級アルカ
ノイル- プロプ- 1-エン- 2-イル基たとえば1-アセチル- プロプ- 1-エン−2-イ
ル基または1-低級アルコキシカルボニル- プロプ- 1-エン−2-イル基たとえば1-
エトキシカルボニル- プロプ- 1-エン- 2-イル基である。
好ましいアミノ保護基は、カルボン酸半エステルのアシル基、特にtert- ブト
キシカルボニル、たとえば非置換または前記のように置換されたベンジルオキシ
カルボニル、たとえば4-ニトロ- ベンジルオキシカルボニル、またはジフェニル
メトキシカルボニル、または2-ハロ- 低級アルコキシカルボニル、たとえば2,2,
2-トリクロロエトキシカルボニル、ならびにトリチルまたはホルミル基である。
カルボキシ基は通常エステル形で保護されており、たとえばエステル基は穏やか
な条件下で容易に分解されうる。この方法で保護され
たカルボキシ基は、エステル化基特に1 位が枝分かれしたまたは1-または2-位が
好適に置換された低級アルキル基を含む。エステル化形における好ましいカルボ
キシ基は、とりわけtert- 低級アルコキシカルボニルたとえばtert- ブトキシカ
ルボニル、非置換または低級アルキル基たとえばtert- 低級アルキルたとえばte
rt- ブチル基、低級アルコキシたとえばメトキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲンた
とえば塩素により、および/またはニトロ基によりモノ- もしくはポリ- 置換さ
れた一つまたは二つのアリール基を有するアリールメトキシカルボニル、ベンジ
ルオキシカルボニル基、または非置換または前記のように置換されたジフェニル
メトキシカルボニル基たとえばジフェニルメトキシカルボニルまたはジ-(4- メ
トキシフェニル)- メトキシカルボニル基、1-低級アルコキシ- 低級アルコキシ
カルボニルたとえばメトキシメトキシカルボニル、1-メトキシエトキシカルボニ
ルまたは1-エトキシメトキシカルボニル、1-低級アルキル- チオ- 低級アルコキ
シカルボニル基たとえば1-メチルチオメトキシカルボニルまたは1-エチルチオエ
トキシカルボニル、アロイルメトキシカルボニルであり、その際アロイル基は非
置換またはたとえばハロゲンたとえば臭素により置換された基、たとえばフェナ
シルオキシカルボニル基、2-ハロ- 低級アルコキシカルボニル基たとえば2,2,2-
トリクロロエトキシカルボニル、2-ブロモエトキシカルボニルまたは2-ヨードエ
トキシカルボニル、または2-(トリ置換シリル)エトキシカルボニル基であって、
各置換基は独立して非置換またはたとえば低級アルキル、低級アルコキシ、アリ
ール、ハロゲンおよび/またはニトロ基により置換された脂肪族、芳香脂肪族、
脂環式または芳香族炭化水素基、たとえば相当する非置換またはたとえば低級ア
ルキル、フェニル- 低級アルキル、シクロアルキルまたはフェニル、たとえば2-
トリ- 低級アルキルシリルエトキシカ
ルボニル、2- トリメチルシリルエトキシカルボニルまたは2-(ジ-n- ブチル- メ
チル- シリル)- エトキシカルボニル、または2-トリアリールシリルエトキシカ
ルボニル、たとえば2-トリフェニルシリルエトキシカルボニルである。
ここで記載する有機シリルおよびスタニル基は、好ましくは珪素またはスズ原
子の置換基として低級アルキル基、特にメチル基を有する。相当するシリルおよ
びスタニル基は、特に、トリ- 低級アルキルシリル、とくにトリメチルシリル基
、またはジメチル- tert- ブチル- シリル基、または相当する置換されたスタニ
ル基、たとえばトリ- n-ブチル- スタニル基である。
好ましい保護カルキシ基は、tert- 低級アルコキシカルボニル、たとえばtert
- ブトキシ- カルボニル、および特に非置換またはたとえば前記基で置換された
ベンゾイルオキシカルボニル基、たとえば4-ニトロベンジルオキシカルボニルま
たはジフェニルメトキシカルボニル基、特に2-(トリメチルシリル)エトキシカル
ボニル基である。
ヒドロキシ保護基は、たとえばアシル基たとえば非置換または置換されたたと
えばハロ- 置換、低級アルカノイル、たとえば2,2-ジクロロアセチル基またはカ
ルボン酸半水和物のアシル基特にtert--ブトキシカルボニル基、非置換または置
換されたベンジルオキシカルボニル基、たとえば4-ニトロベンジルオキシカルボ
ニル基、またはジフェニルメトキシカルボニル、または2-ハロ- 低級アルコキシ
カルボニル、たとえば2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、またトリチルもし
くはホルミル、または有機シリルまたはスタニル基、または容易に除去されうる
エーテル化基、たとえばtert- 低級アルキル、たとえばtert- ブチル、2-オキサ
- または2-チア- 脂肪族もしくは脂環式炭化水素基、特に1-低級アルコキシ- 低
級アルキルま
たは1-低級アルキルチオ- 低級アルキル基、たとえばメトキシメチル基または1-
メトキシ- エチル、1-エトキシ- エチル、メチルチオメチル、1-メチルチオエチ
ルもしくは1-エチルチオエチル基、または5または6個の環構成原子を有する2-
オキサ- または2-チア- シクロアルキル基、たとえばテトラヒドロフリルもしく
は2-テトラヒドロピラニル基または相当するチア類似物、また非置換または置換
された1-フェニル- 低級アルキル基たとえば非置換または置換されたベンジルま
たはジフェニルメチル基であり、その際フェニル基の好適な置換基はたとえばハ
ロゲン原子、たとえば塩素、低級アルコキシたとえばメトキシおよび/またはニ
トロ基である。
式 Iの所望の最終産物の構成ではない保護基たとえばカルボキシ- 、アミノ-
、ヒドロキシ- 、またはカルバモイル- 保護基の除去は、それ自体公知の方法、
たとえば溶媒和、特に加水分解、アルコール分解または酸分解により、または還
元特に水素添加または化学還元により、好適な段階に分けてまたは同時に行われ
、これはまた酵素的方法たとえばトリフルオロ酢酸または蟻酸で処理するアシド
リシスまたは亜鉛および酢酸でもしくは水素およびパラジウム担持炭触媒のよう
な水素添加触媒で処理する還元を使用してもよい。
保護された官能基が幾つかある場合、保護基は好ましくはこのような基が同時
に除去されうるように二つ以上を選択する。
保護されたアミノ基は、それ自体公知の方法で遊離し、そして保護基の性質に
したがって、様々な方法で、好ましくは溶媒和または還元により行われる。2-ハ
ロ- 低級アルコキシカルボニルアミノ基(その際、2-ブロモ- 低級アルコキシカ
ルボニルアミノ基を2-ヨード- 低級アルコキシカルボニルアミノ基へ変換後都合
良く)、アロイルメトキシカルボニルアミノ基または4-ニトロベンジルオキシカ
ルボニルアミノ基を、たとえば好適なカルボン酸たとえば水性酢酸
の存在下に好適な化学還元剤たとえば亜鉛で処理することにより分解されうる。
アロイルメトキシカルボニルアミノはまた、親核剤好ましくは塩形成試薬たとえ
ばナトリウムチオフェノレートで処理することにより分解され、そして4-ニトロ
ベンジルオキシカルボニルアミノ基はまたアルカリ金属ジチオナイトたとえばナ
トリウムジチオナイトで処理することにより分解される。非置換または置換され
たジフェニルメトキシカルボニルアミノ、tert- 低級アルコキシカルボニルアミ
ノまたは2-トリ- 置換シリルエトキシカルボニルアミノ基は、好適な酸たとえば
蟻酸またはトリフルオロ酢酸で、または酢酸エチルもしくはジオキサンにおいて
塩酸で処理することにより分解される;非置換または置換されたベンジルオキシ
カルボニルアミノ基はたとえば好適な水素添加触媒たとえばパラジウム触媒の存
在下に水素で処理することにより水素添加の方法で分解される;非置換または置
換されたトリアリールメチルアミノまたはホルミルアミノ基は、たとえば酸たと
えば鉱酸たとえば塩酸または有機酸たとえば蟻酸、酢酸もしくはトリフルオロ酢
酸を用い、水の適当の存在下に、処理することにより分解される;そして有機シ
リル基で保護されたアミノ基は、たとえば加水分解またはアルコール分解により
遊離される。2-ハロアセチル、たとえば2-クロロアセチルで保護されたアミノ基
は、塩基の存在下にチオウレアで処理するか、またはチオウレアのチオレート塩
たとえばアルカリ金属チオレートで処理し、次いでアルコリシスまたは加水分解
のような溶媒和により遊離化され、最終の縮合生成物が得られる。2-置換シリル
エトキシカルボニルにより保護されたアミノ基は、フルオライド陰イオンを得る
臭化水素酸の塩で処理することにより遊離アミノ基へ変換されうる。
tert- 低級アルコキシカルボニル、2-位が有機シリル基によりま
たは1-位が低級アルコキシもしくは低級アルキルチオ基により置換された低級ア
ルコキシカルボニル基、または非置換または置換されたジフェニルメトキシカル
ボニル基は、たとえば好適な酸たとえば蟻酸またはトリフルオロ酢酸で処理する
ことにより、好適には親核性化合物たとえばフェノールまたはアニソールを添加
して、遊離カルボキシ基へ変換されうる。非置換または置換されたベンジルオキ
シカルボニル基は、たとえば金属水素添加触媒たとえばパラジウム触媒の存在下
に水素で処理することにより、水素添加の手法により遊離することができる。さ
らに、好適には置換されたベンジルオキシカルボニル、たとえば4-ニトロベンジ
ルオキシカルボニルを、たとえばアルカリ金属ジチオナイトたとえばナトリウム
ジチオナイト、または還元金属たとえば亜鉛、または還元金属塩たとえばクロム
(II)塩たとえば塩化クロム(II)を用いて、通常は金属と一緒に発生期水素を生成
しうる水素生成剤たとえば酸特に好適なカルボン酸たとえば非置換または置換た
とえばヒドロキシ基で置換された低級アルカンカルボン酸たとえば酢酸、蟻酸、
グリコール酸、ジフェニルグリコール酸、乳酸、マンデリン酸、4-クロロマンデ
リン酸または酒石酸の存在下に、またはアルコールもしくはチオールの存在下に
、好ましくは水を添加して、化学的還元することにより遊離カルボキシ基へ変換
することができる。前記のような還元金属または金属塩で処理することにより、
2-ハロ- 低級アルコキシカルボニル(その際、2-ブロモ- 低級アルコキシカルボ
ニル基を相当する2-ヨード- 低級アルコキシカルボニル基へ変換後に好適である
)またはアロイルメトキシカルボニル基は遊離カルボキシ基へ変換することもで
きる。アロイルメトキシカルボニル基は、また親核性の好ましくは塩形成性試薬
たとえばナトリウムチオフェノレート またはナトリウムヨージドで処理するこ
とにより分解することもできる。置換され
た2-シリルエトキシカルボニルはまた、たとえばフルオリド陰イオンを得るフッ
化水素酸の塩、たとえばマトリックスまたはカリウムフルオリドを用いて、巨大
環状ポリエーテル(“クラウンエーテル”)の存在下に、または有機第四塩基のフ
ルオリド、たとえばテトラ- 低級アルキルアンモニウムフルオリドまたはトリ-
低級アルキル- アリールアンモニウムフルオリドたとえばテトラエチルアンモニ
ウムフルオリドまたはテトラブチルアンモニウムフルオリドの存在下に、中性の
極性溶媒、たとえばジメチルスルホキシドまたはN,N - ジメチルアセトアミドの
存在下に処理することにより遊離カルボキシ基へ変換することもできる。
適当なアシル基、有機シリル基または非置換または置換された1-フェニル- 低
級アルキル基により保護されるヒドロキシ基は、相当する保護されたアミノ基の
ように遊離形にされる。非置換または置換された1-フェニル- 低級アルキル基た
とえばベンジル基により保護されたヒドロキシ基は、たとえばパラジウム担持炭
触媒の存在下に接触水素添加により遊離形となることが好ましい。2,2-ジクロロ
アセチルにより保護されたヒドロキシ基は、たとえば塩基性加水分解により遊離
形となり、またはtert- 低級アルキル基によりまたは2-オキサ- または2-チア-
脂肪族または- 脂環式炭化水素基によりエーテル化されたヒドロキシ基はアシド
リシスたとえば鉱酸または強カルボン酸たとえばトリフルオロ酢酸で処理される
ことにより遊離形となる。有機シリル基たとえばトリメチルシリル基によりエー
テル化されるヒドロキシ基はまた、フルオリド陰イオンを得るフッ化水素酸の塩
たとえばテトラブチルアンモニウムフルオリドで遊離化されうる。
Y が基R1において非- 芳香族炭素原子と結合する脱離基の場合、Y は特に反応
性エステル化ヒドロキシ基、すなわち強無機酸たとえ
ばハロゲン化水素酸(たとえば、塩化水素酸、臭化水素酸またはヨウ化水素酸)に
より、酸素含有鉱酸たとえばリン酸および特に硫酸、または強有機酸たとえば脂
肪または芳香族スルホン酸(メタン- およびエタン- またはベンゼン- 、p-トル
エン、p-ニトロベンゼンおよびp-クロロベンゼン- スルホン酸)によりエステル
化されるものの一つである。
Y が基R1において芳香族炭素原子と結合する脱離基の場合、Y は特にジアゾニ
ウム基である。
Y が基R1においてその一つが水素原子に代わった追加の単結合である場合、R1
Y は、たとえばアルケン、特に二重結合がさらに2-メチルプロペンにおけるよう
に、構造的特殊性によりまたは特にアクリロニトリルのように置換により活性化
されたものである。また、Y の定義にはその一端が基R1における炭素原子と直接
結合しないが置換基、たとえば酸素(たとえばヒドロキシ基において)またはニト
ロ基(アミノ基において)(該基の水素原子と代わる)として生じる異原子と結合す
る単結合である。この種の特に好ましい試薬は、α- エポキシド(オキシラン)ま
たはα- イミン(アジリジン)基を含み、それぞれ2-ヒドロキシアルキル基または
2-アミノアルキル基を有する基R0の有利な供給源として働く。
R1がホルミル基である場合、試薬R1Y は反応性カルボン酸誘導体である。ここ
でY は、たとえば反応性エステル化ヒドロキシ基、たとえば特にハロゲン原子で
ある。このような式IIIで表される反応性カルボン酸誘導体は、特に反応性活性
化エステルまたは反応性無水物であり、または反応性環化アミドであり、アシル
化剤として使用される式R1- OHで表されるカルボン酸の活性化を式IIで表される
化合物の存在下にその場で行うことができるようにもなる。
酸の活性化エステルは、エステル化基たとえばビニルエステルタ
イプたとえばビニルエステル(たとえば、相当するエステルを酢酸ビニルでトラ
ンスエステル化することにより得られうる;活性化ビニルエステル法)、カルバ
モイルビニルエステル(たとえば、相当する酸をイソキサゾリウム剤で処理する
ことにより得られうる;1,2-オキサゾリウムまたはウッドワード法)、または1-
低級アルコキシビニルエステル(たとえば、相当する酸を低級アルコキシアセチ
レンで処理することにより得られうる;エトキシアセチレン法)、またはアミジ
ノ型のエステルたとえばN,N'- ジ置換アミジノエステル(たとえば、相当する酸
を好適なN,N'- ジ置換カルボジイミドたとえばN,N'- ジシクロヘキシルカルボジ
イミドで処理することにより得られうる;カルボジイミド法)、またはN,N - ジ
置換アミジノエステル(たとえば、相当する酸をN,N - ジ置換シアナミドで処理
することにより得られうる;シアナミド法)、好適なアリールエステル、特に電
子吸引性置換基で好適に置換されたフェニルエステル(たとえば、相当する酸を
好適に置換されたフェノールたとえば4-ニトロフェノール、4-メチルスルホニル
フェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,3,4,5,6-ペンタクロロフェノール
または4-フェニルジアゾフェノールで、縮合剤たとえばN,N'- ジシクロヘキシル
カルボジイミドの存在下に処理することにより得られうる;活性化アリールエス
テル法)、シアノメチルエステル(たとえば、相当する酸を塩基の存在下にクロロ
アセトニトリルで処理することにより得られうる;シアノメチルエステル化方法
)、チオエステル、特に非置換または置換たとえばニトロ- 置換された、フェニ
ルチオエステル(たとえば、相当する酸を非置換または置換たとえばニトロ- 置
換された、チオフェノール、とりわけ無水物またはカルボジイミド法により処理
することにより得られうる;活性化チオールエステル法)、アミノまたはアミド
エステル(たとえば、相当する酸をN-
ヒドロキシアミノまたはN-ヒドロキシアミド化合物たとえばN-ヒドロキシスクシ
ンイミド、N-ヒドロキシピペリジン、N-ヒドロキシフタルイミドまたは1-ヒドロ
キシベンゾチアゾールを用いて、たとえば無水物またはカルボジイミド法により
処理することにより得られうる;活性化N-ヒドロキシエステル法)、またはシリ
ルエステル(たとえば、相当する酸をシリル化剤たとえばヘキサメチルジシラザ
ンで処理することにより得られ、これはアミノ基ではなくヒドロキシ基と容易に
反応する)のエステル化基の連結する結合炭素原子において不飽和であるエステ
ルである。
酸の無水物はこれらの酸の対称的な、または好ましくは混合無水物であり、た
とえば無機酸、たとえば酸ハライド、特に酸クロリド(たとえば、相当する酸を
塩化チオニル、五塩化リンまたは塩化オキザリルで処理することにより得られう
る;酸クロリド法)との無水物、アジド(たとえば、相当するヒドラジドを経た相
当する酸エステルからそして亜硝酸で処理することにより得られうる;アジド法
)、カルボン酸半誘導体たとえば相当するエステル、たとえばカルボン酸低級ア
ルキル半エステルの無水物(たとえば、相当する酸をハロゲン化蟻酸のたとえば
クロロ蟻酸の低級アルキルエステルでまたは1-低級アルコキシカルボニル- 2-低
級アルコキシ- 1,2-ジヒドロキノリンたとえば1-低級アルコキシカルボニル-2-
エトキシ- 1,2-ジヒドロキノリンで処理することにより得られうる;混合O-アル
キルカルボン酸無水物方法)の、またはジハロゲン化特にジ塩素化リン酸(たとえ
ば、相当する酸をオキシ塩化リンで処理することにより得られうる;オキシ塩化
リン法)との無水物、または有機酸との無水物たとえば有機カルボン酸との混合
無水物(たとえば、相当する酸を非置換または置換された低級アルカン- または
フェニル- アルカンカルボン酸ハライド、たとえばフェニル酢酸クロリド、
ピバロイル酸クロリドまたはトリフルオロ酢酸クロリドで処理することにより得
られうる;混合カルボン酸無水物法)または有機スルホン酸(たとえば、相当する
酸の塩たとえばアルカリ金属塩を好適な有機スルホン酸ハライドたとえば低級ア
ルカン- またはアリール- 、たとえばメタン- またはp-トルエン- スルホン酸ク
ロリドで処理することにより得られる;混合スルホン酸無水物法)および対称無
水物(たとえば、相当する酸をカルボジイミドまたは1-ジエチルアミノプロピン
の存在下に縮合することにより得られうる;対称無水物法)である。
好適な環状アミドは、特に芳香族性の5 員ジアザ環を有するアミド、たとえば
イミダゾール類、たとえばイミダゾール(たとえば、相当する酸をN,N'- カルボ
ニルジイミダゾールで処理することにより得られうる;イミダゾリド法)または
ピラゾールたとえば3,5-ジメチルピラゾール(たとえば、酸ヒドラジドを介して
アセチルアセトンで処理することにより得られうる;ピラゾリド法)を有するア
ミドである。
言及したように、アシル化剤として使用される酸の誘導体を、その場で形成す
ることもできる。すなわち、たとえばN,N'- ジ置換アミジノエステルは、式IIで
表される出発物質およびアシル化剤として使用される酸の混合物を、好適なN,N
- ジ置換カルボジイミドたとえばN,N'- ジシクロヘキシルカルボジイミドの存在
下に反応させることによりその場で形成することもできる。また、アシル化され
るべき式IIで表される出発物質の存在下にアシル化剤として使用される酸のアミ
ノまたはアミドエステルを、N,N'- ジ置換カルボジイミドたとえばN,N'- ジシク
ロヘキシルカルボジイミド、およびN -ヒドロキシアミンまたはN - ヒドロキシ
アミド、たとえばN - ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシ- ノルボルナン
- 2,3-ジカル
ボキシイミドまたはN-ヒドロキシベンゾトリアゾールの存在下に相当する酸およ
びアミノ出発物質の混合物を反応させることにより、形成することができ、その
際、好適な塩基たとえば4-ジメチルアミノピリジンまたはテトラメチルグアニジ
ンが存在するのが好ましい。
アシル基(ホルミル基)以外の基R1を導入するために、方法 a)は、好適な溶媒
たとえばジメチルホルムアミドまたはテトラヒドロフラン中の式IIで表される出
発物質を、テトラヒドロフランまたは水素化ナトリウム中の好適な塩基たとえば
ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドと、好ましくは-20 ℃から +70℃、特
に0 ℃から室温までの温度で最初に反応させ、次いで好適な溶媒たとえばテトラ
ヒドロフラン中式III で表される化合物を添加することにより行われる。
アシル基(ホルミル基)R1を導入するために、方法 a)は、好適な溶媒たとえば
塩化メチレン中の式IIで表される出発物質を、好適な塩基たとえばトリエチルア
ミンの存在下に、式III で表される反応性酸誘導体(相当する酸からその場で形
成されうる)と、たとえば還流下に0 ℃から+150℃までの温度で反応させること
により行われる。これに代わり、式IIで表される出発物質は、最初に好適な溶媒
たとえば無水テトラヒドロフラン中で好適な塩基たとえばナトリウムビス(トリ
メチルシリル)アミドと0 ℃から室温までの温度で反応させ、次いで式III で表
される反応性酸誘導体を添加することができる。
方法b):
式IVおよびV の反応物において保護される官能基およびこの目的で使用される
保護基は、方法 a)で記載のものに相当する。望ましい反応に関与するとおもわ
れる官能基たとえば基-NH-CH3は、もち
ろん保護されない。保護基の導入および除去もまた、方法a)で記載されている方
法と同じようにして行われる。非- 芳香族基R2の場合、式 Vで表される化合物に
おける脱離基X は式III で表される化合物における反応活性化ヒドロキシ基Y に
相当し、そして式 Vで表される試薬は式III の試薬と同じである。芳香族基R2の
場合、脱離基X はたとえばジアゾニウム基である。
アシル基以外の基R2 aを導入するために、方法b)は、好ましくは好適な溶媒ジ
メチルホルムアミドまたはハロゲン化炭化水素たとえばクロロホルム中、好適な
塩基たとえばN,N - ジイソプロピルエチルアミンの存在下に、好適な温度たとえ
ば室温または約+150 ℃までの高めた温度で、式IVで表される出発物質を反応さ
せることにより行われるのが好ましく、特にX がその一端が基R2 aにおける水素
原子に代わる追加の単結合である場合たとえば式 Vで表される化合物がオキシラ
ンまたはアクリロニトリルである場合に、密閉容器たとえばボンベ中加圧下に高
温で反応させることが好ましい。
方法 a)または b)により得られる式I で表される化合物を式I で表される異
なった化合物へ変換するために、たとえばエステル基を加水分解してカルボキシ
基とするかまたはカルボニル基を還元することができる。前記加水分解は、たと
えばそれ自体公知の方法で、低級アルカノールたとえばエタノールの2-N 希水酸
化ナトリウム溶液中、室温にて行われる。アミドまたはラクタム基の一部を形成
するカルボニル基を含む、カルボニル基の還元に対しては、考慮される還元剤は
、たとえば複合金属水素化物たとえばアルカリ金属アルミニウム水素化物および
特にアルカリ金属ホウ水素化物たとえばリチウムアルミニウム水素化物、カリウ
ムホウ水素化物、リチウムホウ水素化物および特にナトリウムホウ水素化物、お
よび一つ以上の水素原子がアルコキシ基またはシアノ基により置換された誘導体
たとえばメトキシナトリウムホウ水素化物、トリ-(tert- ブトキシ)リチウム
ホウ水素化物またはジ-(2-メトキシエトキシ)- ジナトリウムリチウム水素化
物またはナトリウムシアノホウ水素化物ならびにジボランである。
式II-Vで表される化合物における塩形成基およびその塩は、式I で表される化
合物について前記したものである。
所望により行われる塩形成、またはこれらの塩からの基本形の遊離は、一般に
それ自体公知の通常の方法で行われる。すなわち、カルボキシ基を有する化合物
は、相当する塩基特にアルカリ反応を与える化合物たとえばヒドロキシド、炭酸
塩または重炭酸塩で処理することにより、塩基とともに相当する塩特にアルカリ
金属塩へ変換される。塩は、たとえば無機酸たとえば特にヒドロハロゲン化酸で
酸性化することにより遊離カルボキシ化合物へ変換されうる。塩基反応を行う最
終生成物たとえばアミンは、たとえば塩形成に適する酸たとえば前記のうちの一
つで処理することにより酸との塩へ変換される;逆に、塩基反応を行う剤たとえ
ば無機水酸化物、炭酸塩および重炭酸塩、または有機塩基およびイオン交換剤で
処理することによりアミンの塩基性基本形が遊離する。
塩たとえばピクレート を得られた化合物の精製のために使用して、遊離化合
物を塩へ変換し、これらを分離しそして再び塩から遊離化合物を回収することも
できる。
遊離形およびその塩形の密接な関係の点で、本明細書中、遊離化合物について
の言及は好適で都合のよい相当する塩(第四塩も含む)をも含むものと理解される
。
式IVに相当するがしかしR1が水素原子である出発物質は、公知であるかまたは
それ自体公知の方法で調製されうる。式中、R1およびR3がそれぞれ水素原子であ
る式IVに相当する出発物質すなわちスタ
ウロスポリンは市販されており、そして菌株ストレプトミセス スタウロスポレ
ウス(Streptomyces staurosporeus)を発酵することにより得られうる。菌株は、
1982年11月11日に公開された日本国特許公告[公告]第57-53076号(エス.オーム
ラ(S.Omura)ら、J.Antibiot.30,275-281(1977)参照)との関連で、日本の発酵
調査研究所(Fermentaion Research Institute,Japan)に番号FERM P-3725で寄託
した。式中R3が水素原子以外の式IVに相当するスタウロスポリン誘導体は、たと
えばアイ.タカハシ(I.Takahashi)ら、J.Pharmacol.Exp.Ther.255(3)(1990)1218
-1221および国際特許第 WO-A-8907-105-A号(出願人:協和発酵工業株式会社(KYO
WA Hakko Kogyo KK)、優先権番号第 024571 号、1988 年4 月2 日)に記載されて
いる。式中R3がオキソ基である式IIで表される化合物は、たとえばR3が水素原子
である相当する式IIで表される化合物から、ピリジン中三酸化クロムで酸化する
ことにより得られる。このようにして得られた7-オキソ化合物から、R3がヒドロ
キシ基である相当する7-ヒドロキシ化合物は、ナトリウムホウ水素化物で還元す
ることにより得られる。R3がヒドロキシまたはオキソ基である式I で表される相
当する化合物は、またR3が水素原子である式I で表される化合物の合成において
副産物として得られる。新規の式IIおよび式IVで表される出発物質は、公知スタ
ウロスポリン誘導体から、前記の方法 a)および b)と類似の反応を好適に行う
ことにより得られる。
特記しない限り、保護基を除去する方法も含む、前記のすべての方法は、それ
自体公知の方法でたとえば好ましくは不活性溶媒および希釈剤の存在または不存
在下に必要ならば、縮合剤または触媒の存在下に、下降または上昇した温度たと
えば-70 ℃〜ほぼ+150℃まで、特にほぼ-20 ℃〜ほぼ+100℃まで、主として0 ℃
〜ほぼ+70 ℃まで、好ましくはほぼ0 ℃〜ほぼ+50 ℃までの温度範囲、主として
室温にて、好適な容器中、そして必要ならば不活性ガス雰囲気下たとえば窒素雰
囲気下で行われる。
これらの方法において、分子における置換基のすべてを考慮すると、必要なら
ば、たとえば容易に加水分解可能な基が存在する場合、特に穏やかな反応条件た
とえば短い反応時間、低濃度の穏やかな酸性剤または塩基性剤の使用、化学量論
的量の比率、好適な触媒、溶媒および温度および/または圧力条件の選択が使用
される。
本発明はまた、方法のいかなる段階でも中間体として得られる化合物を出発物
として使用しそして残りの工程を実施し、または方法をいかなる段階でも中止し
、または出発物質を反応条件下で形成し、または反応性誘導体または塩の形で使
用することに関する。使用される出発物質は、本発明方法にしたがって特に価値
あるものとして上記された化合物が得られるものが好ましい。
本発明はまた、新規出発物質および/または中間体ならびにその調製方法に関
する。使用される出発物質および選択される反応条件は特に好ましいものとして
本出願中言及した化合物が得られるようなものが好ましい。
本発明はまた、ヒトまたは動物の身体の治療、特に前記した疾患の場合の治療
に、式I で表される化合物およびこれらの作用物質上許容されうる酸付加塩を、
好ましくは作用物質組成物の形で使用することに関する。本発明はまた、治療が
必要な温血動物において存在する多薬物耐性を除去しそして多薬物耐性の発生を
避ける方法に関し、その際多薬物耐性を除去しそしてその発生を避ける式I で表
される化合物またはその作用物質上許容されうる塩の有効投与量を温血動物へ経
腸たとえば経口または腸管外投与たとえば腹腔内もしくは静脈内に投与すること
からなる。有効成分の投与量はとりわけ疾患の性質、治療される種およびその大
きさ、守るべき生物の状態
および投与経路による。たとえば、式I で表される化合物の日用量10mg-1000mg
、主に 50mg-500mg、好ましくは70mg-300mgたとえば150mg が、体重ほぼ70kgの
温血動物へ、腸管内または腸管外でたとえば腹腔内投与されであろう。この日用
量の合計を1 日当たり2 または3 回に分けてもよい。
本発明はまた、有効成分の有効量、特に前記の疾患の一つを予防または治療す
るために有効な量を、局所、経腸たとえば経口もしくは直腸投与、または腸管外
たとえば静脈もしくは腹腔内投与に適しそして無機もしくは有機および固体もし
くは液体の作用物質上許容されうる担体とともに含むことからなる作用物質組成
物に関する。経口投与に対しては、希釈剤たとえば乳糖、デキストロース、ショ
糖、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリセロール、お
よび/または滑剤たとえばシリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩、たとえ
ばステアリン酸マグネシウムもしくはカルシウム、および/またはポリエチレン
グリコールと一緒に有効成分を含む特に錠剤またはゼラチンカプセルが使用され
る。錠剤はまた、結合剤たとえばマグネシウムアルミニウムシリケート、スター
チ、たとえばコーン、コムギまたはライススターチ、ゼラチン、メチルセルロー
ス、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリド
ン、および所望により、崩壊剤たとえばスターチ、寒天、アルギン酸またはその
塩、たとえばアルギン酸ナトリウムおよび/または起泡性混合物、または吸着剤
、着色剤、香料および甘味剤を含んでもよい。これはまた、本発明の薬理学的に
活性な化合物を腸管外投与可能な組成物または灌注用溶液の形で使用することが
できる。このような溶液は、好ましくは等張性の水溶液または懸濁液であり、た
とえば有効成分だけまたは担体たとえばマンニトールとともに含む凍結乾燥組成
物の場合、溶液または懸濁
液を使用前に作ることができる。作用物質組成物は殺菌されるかおよび/または
賦形剤たとえば保存剤、安定剤、湿潤剤および/または乳化剤、溶解剤、等張圧
力を調節するための塩および/または緩衝剤を含んでもよい。問題となる作用物
質組成物は、所望により、他の薬理学的に活性な物質たとえば抗生剤を含んでも
よく、これはそれ自体公知の方法たとえば通常の混合、造粒、糖衣化、溶解また
は凍結乾燥方法により調製され、そしてこれは有効成分0.01%-90%、凍結乾燥組
成物の場合ほぼ100%まで、特にほぼ0.1%- ほぼ50% 、最も特に1%- 30% までを含
み、局所投与用の組成物に対しては有効成分1%未満が特に適する。
以下の実施例は本発明を説明するものであり、いかなる制限をも加えるもので
はない。Rf値はシリカゲル薄層プレート(ドイツ国、ダルムシュタットのメルク
社により作られた)において測定される。使用される溶出混合物における溶出物
の相互の比は容量部(v/v)で与えられ、温度は摂氏度で与えられる。旋光度の場
合、溶媒または溶媒混合物における物質の濃度c はパーセント(w/v)で与えられ
る。
この明細書の範囲内で、以下の命名法が式I の化合物を特定するために使用さ
れる:式I におけるテトラヒドロピラン環の窒素原子N-R2は、“N”として示さ
れる。たとえば、N-BOC - スタウロスポリンは、基R2が BOCであるスタウロスポ
リン誘導体である。一方、窒素原子N-R1は“6”で示され、これは式 Iで示され
る番号付けから明らかであろう。たとえば、6-メチル- スタウロスポリンは、基
R1がメチル基であるスタウロスポリン誘導体である。略号:
BOC : tert- ブトキシカルボニル
DMF : ジメチルホルムアミド
HPLC : 高圧液体クロマトグラフィー
THF : テトラヒドロフラン
実施例 1 : 0.7g(0.0012モル)のN-BOC-6-メチル- スタウロスポリンを酢酸エチ
ル4 mlに溶かし、そして室温にて塩酸で飽和した酢酸エチル溶液4ml をこれへ添
加する。3.5 時間後、懸濁液を酢酸エチルおよび炭酸水素ナトリウム溶液の間に
分配し、有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発により濃縮する。酢酸
エチル/エタノール(8:2)を用いてシリカゲル60におけるフラッシュクロマトグラ
フィーにかけると、6-メチル- スタウロスポリン、m.p.210-215℃、Rf = 0.28(
酢酸エチル:エタノール = 8:2)が得られる。
出発物質は、以下のように得られる:
工程1.1: テトラヒドロフラン中のナトリウムビス(トリメチルシリル)アミドの
1M溶液2.2ml を、室温で窒素雰囲気下に、乾燥ジメチルホルムアミド10ml中にN-
BOC スタウロスポリン(ヨーロッパ特許公開(EP-A)第296110号の実施例36に記
載)1.13g(0.002モル)が溶解した液へ添加し、1 時間撹拌する。次いでジメチル
ホルムアミド2ml 中にヨウ化メチル0.14ml(0.0022 モル)が溶解した液を滴下し
、室温で2 時間攪拌を続ける。反応混合物を氷上へ注入し、酢酸エチルで抽出す
る。有機層を冷0.1N塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、そして蒸発濃縮す
る。残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(ドイツ、ダルムスタット
のメルク社の60型)により分離する。溶出液として酢酸エチル/ 石油エーテル(1:
1)を使用する。相互に分離した二つの化合物が個々のフラクションから得られる
。すなわち、N-BOC-6-メチル- 7-オキソ- スタウロスポリン、m.p.180-185 ℃、
Rf = 0.58(塩化メチレン:エタノール = 95:5)およびN-BOC-6-メチル- スタウロ
スポリン、m.p.225-228 ℃、Rf=0.4
5(塩化メチレン:エタノール=95:5)である。
実施例 2: 実施例1 と同様であるが、N-BOC-6-メチル- 7-オキソ- スタウロスポ
リン(工程1.1 参照)175mg(0.0003 モル)から、12時間の反応時間の後に、6-メチ
ル- 7-オキソ- スタウロスポリン;m.p.180-185℃、Rf=0.41(酢酸エチル:エタ
ノール = 8:2)が得られる。
実施例 3: N-ベンゾイル- スタウロスポリン4.4g(7.7ミリモル)を、無水テトラ
ヒドロフラン200ml 中にホワイトオイルに80% 水素化ナトリウム分散液350mg(11
.5ミリモル)が懸濁している液へ添加する。混合物を室温で4 時間攪拌する。臭
化ベンジル1.4ml(11.5ml)を添加し、反応混合物を室温でさらに56時間攪拌する
。加水分解のために、水40mlを添加する。反応混合物を塩化メチレンで希釈する
と、有機層が分離し、0.1-N 塩酸で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、
そして蒸発濃縮する。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル:石油
エーテル = 1:1)を用いて精製する。N-ベンゾイル- 6-ベンジル- スタウロスポ
リンが黄色の泡状物として得られる;Rf =0.48(酢酸エチル:石油エーテル = 1:
1)。
実施例 4: 塩化ベンゾイル20μl(0.18 ミリモル)を、塩化メチレン5ml 中に6-メ
チル- スタウロスポリン(実施例1 参照)75mg(0.15ミリモル)およびN,N - ジイソ
プロピルエチルアミン38μl(0.225ミリモル)へ室温にて添加し、反応混合物を
室温で1 時間攪拌する。次いで、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナ
トリウムで乾燥し、そして蒸発濃縮する。シリカゲル60において残渣をフラッシ
ュクロマトグラフィー(塩化メチレン:エタノール = 98:2)にかけると、N-ベン
ゾイル- 6-メチル- スタウロスポリンが得られる;m.p.225-227℃、Rf=0.47(塩
化メチレン:エタノール=95:5)
実施例 5:実施例1 と同様にすると、N-BOC-6-ベンジル- スタウロ
スポリン0.55g(0.84ミリモル)から6-ベンジル- スタウロスポリンが得られる
:m.p.187-190 ℃、Rf=0.34(塩化メチレン:エタノール=95:5)。
実施例 6:実施例3 と同様にすると、N-ベンゾイル- スタウロスポリンおよびブ
ロモ酢酸メチルエステルからN-ベンゾイル-6- メトキシカルボニルメチル- スタ
実施例 7: 本明細書に記載の方法と同様にして、N-[(L)-アラニル]-6-ベンジル-
スタウロスポリンは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールおよびN-エチル- N'-(3
-ジアミノプロピル)- カルボジイミド塩酸塩(EDC)54.3mg(0.283ミリモル)の存在
下に、6-ベンジル- スタウロスポリンをN-ベンジルオキシカルボニル- L-アラニ
ンと反応させ、次いでH2/Pd/C を用いた水素添加によりベンジルオキシカルボニ
ル保護基を除去することにより得られる。
実施例 8: 1-ヒドロキシベンゾトリアゾールおよびN-エチル- N'-(3-ジアミノプ
ロピル)- カルボジイミド塩酸塩(EDC)の存在下に、無水N,N - ジメチルホルムア
ミド中で6-ベンジル- スタウロスポリンをN-BOC- L- アラニンと反応させること
により、N-[N-BOC-(L)-アラニル]-6-ベンジル- スタウロスポリン塩酸塩が得ら
れる:m.p.262-264 ℃、Rf=0.79(塩化メチレン:メタノール=95:5)、Rf=0.50(酢
酸エチル:ヘキサン = 4:1)。
実施例 9: N-[N-BOC-(L)- アラニル]-6-ベンジル- スタウロスポリン(実施例8
参照)から、ジオキサン中で4-N 塩酸を用いてBOC 保護基を除去することにより
、N-[(L)- アラニル]-6-ベンジル- スタウロスポリン塩酸塩が得られる:m.p.29
9-304 ℃(分解)、Rf=0.69(塩化メチレン:メタノール=4 :1)、Rf=0.42(塩化メチ
レン:メタノール=9 :1)。
実施例10: ヒトKB-31(感受性)およびKB-8511(作用物質耐性、P-糖
たんぱく質[Pgp]過剰発現)細胞を、リボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレ
オシドを添加しそして5%ウシ胎児血清、抗生剤ペニシリン50単位/ mlおよび抗生
剤ストレプトマイシン50μg / mlの存在下に、MEM-α- 培地において5%二酸化炭
素下にインキュベーションする。KB-8511 細胞を、抗腫瘍活性物質コルセミド(C
olcemid)(デメコルシン)10ng/ml の存在下に貯蔵物として保存する。細胞増殖の
阻止を測定するために、1500細胞のバッチ(コルセミドは添加しない)を、96凹部
微量滴定プレート に播種し、そして前記の条件下で一晩インキュベーションす
る。試験物質(A:抗腫瘍活性物質ビンブラスチン、B:式I で表される化合物 N-
ベンゾイル- 6-ベンジル- スタウロスポリン)を、1 日目に連続した希釈率で添
加する。次いでプレートを前記条件下で4 日間インキュベーションする。この間
に、対照細胞は数回の細胞分割を行う。インキュベーション後、細胞を3.3%(w/v
)グルタルアルデヒド水溶液で固定し、水洗し、0.05%(w/v)メチレンブルー溶液
で染色する。洗浄後、染料を3%(w/v)塩酸水溶液で溶出する。1 凹部あたりの光
学濃度(OD)は細胞の数に直接比例するものであり、これは、光度計を用いて665n
m で測定する。IC50値は、式
[OD665(試験)-OD665(出発)]/[OD665(対照)-OD665(出発)]x 100
を用いて、コンピューターシステムの手法で計算する。
IC50値は、インキュベーション期間の最後において1 凹部当たりの細胞の数が
対照培養物における細胞の数のわずか50% になる有効成分の濃度として定義され
る。
試験物質[濃度] KB 8511 細胞の増殖%
A[2.34 ng/ml] 101
A[4.69 ng/ml] 101
A[9.38 ng/ml] 98
A[18.8 ng/ml] 98
A[37.5 ng/ml] 98
A[75.0 ng/ml] 90
A[150 ng/ml] 66
A[300 ng/ml] 14
B[1 マイクロモル] 95
B[1 マイクロモル]+ A[2.34 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[4.69 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[9.38 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[18.8 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[37.5 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[75.0 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[150 ng/ml] 0
B[1 マイクロモル]+ A[300 ng/ml] 0
B[0.1 マイクロモル] 92
B[0.1 マイクロモル]+ A[2.34 ng/ml 91
B[0.1 マイクロモル]+ A[4.69 ng/ml 81
B[0.1 マイクロモル]+ A[9.38 ng/ml 74
B[0.1 マイクロモル]+ A[18.8 ng/ml 66
B[0.1 マイクロモル]+ A[37.5 ng/ml 52
B[0.1 マイクロモル]+ A[75.0 ng/ml 28
B[0.1 マイクロモル]+ A[150 ng/ml 6
B[0.1 マイクロモル]+ A[300 ng/ml 0
試験物質 A : ビンブラスチン
試験物質 B : N-ベンゾイル- 6-ベンジル- スタウロスポリン
実施例11: ビンブラスチン(A)の代わりに抗腫瘍活性試験物質アドリアマイシン(
C)を用いて、実施例10と同様に以下の結果が得られ
る:
試験物質[濃度] KB 8511 細胞の増殖%
C[1.56 ng/ml] 99
C[3.13 ng/ml] 100
C[6.25 ng/ml] 97
C[12.5 ng/ml] 101
C[25 ng/ml] 99
C[50 ng/ml] 97
C[100 ng/ml] 96
C[200 ng/ml] 93
B[1 マイクロモル] 82
B[1 マイクロモル]+ A[1.56 ng/ml] 90
B[1 マイクロモル]+ A[3.13 ng/ml] 89
B[1 マイクロモル]+ A[6.25 ng/ml] 82
B[1 マイクロモル]+ A[12.5 ng/ml] 56
B[1 マイクロモル]+ A[25 ng/ml] 14
B[1 マイクロモル]+ A[50 ng/ml] 1
B[1 マイクロモル]+ A[100 ng/ml] 4
B[1 マイクロモル]+ A[200 ng/ml] 7
試験物質 C : アドリアマイシン
試験物質 B : N-ベンゾイル- 6-ベンジル- スタウロスポリン
実施例12: 作用物質感受性母細胞KB-31 およびKB-31 の多薬物耐性変種に対する
試験物質 B(N- ベンゾイル- 6-ベンジル- スタウロスポリン)のインビボ抗腫瘍
活性の測定を、連続継代培養した(三回の連続移植の最小)ヒト母細胞作用物質感
受性KB-31 腫瘍またはヒトKB-8511 腫瘍のいずれかを有する雌Balb/cヌードマウ
ス(デンマーク、コペンハーゲンのボムホールドガード(Bomholdgaard,Cop
enhagen,Denmark))において実施する。KB-8511 腫瘍はPgb、mdr-1 遺伝子の産
物を過剰発現する(エス.アキイマら(S.Akiyma et al.)、“複数の作用物質に
耐性のヒトKB細胞列の単離および遺伝子的特性決定(Isolation and genetic cha
racterization of human KB cell lines resistant to multiple drug)”、Soma
tic Cell and Mol.Gen.11,117-126[1985])。ほぼ25mgの腫瘍断片を各動物(一
群当たりn = 6)の左脇腹へ移植する。治療は、腫瘍が平均腫瘍容量150-200mm3に
なった時に開始する:試験物質B の25mg/kg p.o.を、腫瘍移植後7 日目にアド
リアマイシン9.0 mg/kg i.v.を一回投与する4 時間前に一回の投与で一度に投与
する。腫瘍増殖は、垂直面の径を測定することにより一週間に二回モニターする
。腫瘍容量は、ティ.メイヤーら(T.Meyer el al.)によりInt.,J.Cancer 43,85
1-856(1989)に記載されているように測定され、そして相対的腫瘍サイズ(すなわ
ち、処理の開始時点で腫瘍容量と比較した腫瘍容量における増加)として表され
る。最大腫瘍退行(% として表わされ、すなわち治療開始時点の容量と比較した
腫瘍容量における低下)は、KB-8511 の場合、物質B(1 x 25mg/ kg p.o.)および
アドリアマイシン(1 x 9.0mg/kg i.v.)の混合物により達成され、これは6 日目
に29% まで達成した。KB-31 の場合、腫瘍最大腫瘍退行は、アドリアマイシン(1
x 9.0mg/kg i.v.)単独で達成され、5 日目に24% まで達成した。
処理群と対照群における平均腫瘍容量の商(%)、すなわち以下の表に示すT/C
値(%)から明らかなように、試験物質B は、アドリアマイシン感受性KB-31 腫瘍
に対するアドリアマイシンの活性と同程度まで多薬物耐性KB-8511 腫瘍に対し感
受性を示す。T/C 値(%)がより小くなると、与えられた投与量はより活性になる
。
実施例 13 : 有効成分、たとえば前記実施例に記載の式 Iで表される化合物の一
つ20mgを各々有する錠剤を、以下の組成を有するように、通常の方法で調製する
:
調 製:有効成分をコムギスターチの一部、ラクトースおよびコロイド状珪酸と
ともに混合し、混合物を篩に通過させる。さらに別の部分のコムギスターチを水
浴において5 倍の容量の水を用いてペースト状とし、薄いプラスチック塊ができ
るまで粉末混合物をペーストとともにこねる。
プラスチック塊をほぼ3mm メッシュサイズの篩にかけ、乾燥し、得られた乾燥
顆粒をさらにもう一度篩に通過させる。コムギスターチの残りの部分、タルクお
よびステアリン酸マグネシウムを添加し、混合物を圧縮して各々145mg の重量で
破断ノッチを有する錠剤を形成する。
実施例 14: 有効成分、たとえば前記実施例に記載の式 Iで表される化合物の一
つ25mgを各々有するカプセルを、以下のように調製する:組 成
有効成分 25.0 mg
ゲルシレ(gelucire)44/14 183.3 mg
(ゲルシレ 44/14は、分子量ほぼ1500を有するグリセロールおよびポリエチレン
グリコールとの混合物である;フランス、F-69800 セイント プリーのガット-
フォセイ(Gatte-fosse)により製造されている)調 製
:ゲルシレ 44/14の一部を50℃-100℃の温度で溶融する。有効成分を加熱
した粉砕機中で混合しペーストを形成する。残りのゲルシレ 44/14もまた溶融し
、ペーストへ添加する。混合物を溶液が得られるまで50℃で攪拌するこれをカプ
セルへ導入し、その間温めそして冷却する。このようにして得られたワックスは
、有効成分の12% 重量を含む。
ワックス様分散液はまた超音波処理により水中で処理され経口投与することの
できる乳状液体を形成することもできる。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07D 209:00)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ,UG),
AM,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CN,C
Z,EE,FI,GE,HU,IS,JP,KG,KP
,KR,KZ,LK,LR,LT,LV,MD,MG,
MN,MX,NO,NZ,PL,RO,RU,SG,S
I,SK,TJ,TM,TT,UA,US,UZ,VN
(72)発明者 バッケル,オスカル
スイス国,ツェーハー−4059 バーゼル,
ルーベンベルクシュトラーセ 60