【発明の詳細な説明】
抗菌活性を有するセフェム化合物
技術分野
この発明は、新規セフェム化合物およびそれらの医薬として許容される塩に関
する。より詳しくは、この発明は、抗菌活性を有する新規セフェム化合物および
それらの医薬として許容される塩、それらの製造法、それらを含有する医薬組成
物ならびに人類および動物における感染症の予防および/または治療方法に関す
る。
従って、この発明の一目的は、一群の病原菌に対して高い活性を示す該セフェ
ム化合物およびそれらの医薬として許容される塩を提供することである。
この発明の他の一目的は、該セフェム化合物およびそれらの塩の製造法を提供
することである。
この発明の別の一目的は、該セフェム化合物またはそれらの医薬として許容さ
れる塩を有効成分として含有する医薬組成物を提供することである。
この発明のさらに一つの目的は、感染した人類または動物に該セフェム化合物
を投与することからなる病原菌により惹起される感染症を予防および/または治
療する方法を提供することである。
背景技術
グラム陽性菌およびグラム陰性菌を含む広い範囲の病
原菌に対して高い抗菌活性を有するセフェム化合物が、たとえばEP−A−306863
において知られているが、それらは、メチシリン抵抗性ぶどう状球菌(MRSA)お
よび緑膿菌に対する抗菌剤としては未だ不十分である。
発明の開示
この発明の目的とするセフェム化合物は新規であり、下記の一般式[I]で表
わすことができる。
[式中、R1はアミノ基または保護されたアミノ基、
R2はエチル基、プロピル基、シクロ(低級)アルキル基、1−メチルプロペニ
ル基または2−メチルプロペニル基、
R3はヒドロキシ(低級)アルキル基または保護されたヒドロキシ(低級)アル
キル基、
R4はアミノ基または保護されたアミノ基を意昧する]。
目的化合物[I]については下記の点を指摘しておく。
すなわち、部分構造式:
(式中、R1およびR2はそれぞれ前と同じ意味)
は、目的化合物[I]および後記の出発化合物[III]がシン異性体であること
を示している。
指摘しておくべきもう一つの点は、化合物[I]のピラゾリオ部分が互変異性
の関係に存在しうることであり、そのような互変異性平衡は下記式で示すことが
できる。
(式中、R3およびR4はそれぞれ前と同じ意味)。
上記互変異性体は両方ともこの発明の範囲内に包含されるが、この明細書およ
び請求の範囲中では、目的化合物[I]は便宜上式(A)のピラゾリオ基の一つ
の表現で示すことにする。
この発明のセフェム化合物[I]は下記反応式で示されるような製造法によっ
て製造することができる。製造法1
またはアミノ基におけるその反応性
誘導体またはその塩
またはカルボキシ基におけるそ
の反応性誘導体またはその塩
またはその塩
[式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ前と同じ意昧]
この明細書の以上および以下の記載における種々の定義の好適な例を以下詳細
に説明する。
「低級」とは、特に指示がなければ、炭素原子1個ないし6個を意昧するもの
とする。
「保護されたアミノ基」の好適な「アミノ保護基」としては後記アシル基、例
えばベンジリデン、ヒドロキシ
ベンジリデン等の置換されたまたは非置換アル(低級)アルキリデン基、例えば
ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル、トリチル等のモノまたはジまたはトリ
フェニル(低級)アルキル基のようなアル(低級)アルキル基、等が挙げられる
。
好適な「アシル基」としては例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ヘキ
サノイル、ピバロイル等の低級アルカノイル基、例えばクロロアセチル、トリフ
ルオロアセチル等のモノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルカノイル基、
例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、第三級ブトキシカルボニル、
第三級ペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等の低級アルコキ
シカルボニル基、カルバモイル基、例えばベンゾイル、トルオイル、ナフトイル
等のアロイル基、例えばフェニルアセチル、フェニルプロピオニル等のアル(低
級)アルカノイル基、例えばフェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル
等のアリールオキシカルボニル基、例えばフェノキシアセチル、フェノキシプロ
ピオニル等のアリールオキシ(低級)アルカノイル基、例えばフェニルグリオキ
シロイル、ナフチルグリオキシロイル等のアリールグリオキシロイル基、例えば
ベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、p−ニトロベンジル
オキシカルボニル等の適当な置換基を有していてもよいアル(低級)アルコキシ
カルボニル基等が挙げられる。
「ヒドロキシ(低級)アルキル基」および「保護されたヒドロキシ(低級)ア
ルキル基」の好適な「低級アルキル部分」としては、メチル、エチル、プロピル
、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、ペンチル、ヘキシル等の
ような直鎖または分技鎖アルキル基が挙げられる。
好適な「ヒドロキシ(低級)アルキル基」としては例えばヒドロキシメチル、
ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ジヒドロキシエチル、ジヒドロキシプ
ロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、ヒドロキシヘキシル等のよう
なモノ−またはジヒドロキシ(低級)アルキル基が挙げられ、好ましくは、モノ
−またはジヒドロキシ(C1−C4)アルキル基、さらに好ましくはヒドロキシ(
C1−C2)アルキル基、最も好ましくはヒドロキシエチル基が挙げられる。
好適な「シクロ(低級)アルキル基」としては例えばシクロプロピル、シクロ
ブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルのような炭素数3ないし6個を有
する基が挙げられる。
「保護されたヒドロキシ(低級)アルキル基」の好適な「保護されたヒドロキ
シ基」としてはアシルオキシ基等が挙げられる。「アシルオキシ基」の好適な「
アシル部分」としては例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ヘキサノイル
、ピバロイル等の低級アルカノイル基、例えばクロロアセチル、トリフルオロア
セチル等の
モノ(またはジまたはトリ)ハロ(低級)アルカノイル基、例えばメトキシカル
ボニル、エトキシカルボニル、第三級ブトキシカルボニル、第三級ペンチルオキ
シカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル等の低級アルコキシカルボニル基、カ
ルバモイル基等が挙げられる。
目的化合物[I]の好適な医薬として許容される塩は常用の無毒性塩であり、
例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩および例えばカルシウム塩
、マグネシウム塩等のアルカリ土金属塩のような金属塩、アンモニウム塩、例え
ばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシク
ロヘキシルアミン塩、N,N′−ジベンジルエチレンジアミン塩等の有機塩基塩
、例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタ
ンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等の有機酸付加
塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等の無機酸付加塩、例えばア
ルギニン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等のアミノ酸との塩等が挙げら
れる。
目的化合物[I]の好ましい実施態様は下記のとおりである。
R1の好ましい実施態様はアミノ基、
R2の好ましい実施態様はエチル基、プロピル基、シクロ(低級)アルキル基[
さらに好ましくはシクロ(C4−C6)アルキル基]、1−メチルプロペニル基ま
たは
2−メチルプロペニル基(さらに好ましくは1−メチル−2−プロペニル基また
は2−メチル−2−プロペニル基)であり、この中で最も好ましいのはエチル基
である、
R3の好ましい実施態様はヒドロキシ(低級)アルキル基[さらに好ましくはモ
ノーまたはジヒドロキシ(C1−C4)アルキル基、最も好ましくはヒドロキシエ
チル基]、
R4の好ましい実施態様はアミノ基である。
この発明の目的化合物の製造法を以下詳細に説明する。製造法1
化合物[I]またはその塩は、化合物[II]またはアミノ基におけるその反応
性誘導体またはその塩を、化合物[III]またはカルボキシ基におけるその反応
性誘導体またはその塩と反応させることにより製造することができる。
化合物[II]のアミノ基における好適な反応性誘導体としては、化合物[II]
とアルデヒド、ケトン等のようなカルボニル化合物との反応によって生成するシ
ッフの塩基型イミノまたはそのエナミン型互変異性体;化合物[II]とビス(ト
リメチルシリル)アセトアミド、例えばN−トリメチルシリルアセトアミドのよ
うなモノ(トリメチルシリル)アセトアミド、ビストリメチルシリル尿素等のよ
うなシリル化合物との反応によって生成する
シリル誘導体;化合物[II]と三塩化燐またはホスゲンとの反応によって生成す
る誘導体等が挙げられる。
化合物[II]およびその反応性誘導体の好適な塩については、化合物[I]に
ついて例示したものを参照すればよい。
化合物[III]のカルボキシ基における好適な反応性誘導体としては、酸ハロ
ゲン化物、酸無水物、活性化アミド、活性化エステル等が挙げられる。反応性誘
導体の好適な例としては、酸塩化物;酸アジド;例えばジアルキル燐酸、フェニ
ル燐酸、ジフェニル燐酸、ジベンジル燐酸、ハロゲン化燐酸等の置換された燐酸
、ジアルキル亜燐酸、亜硫酸、チオ硫酸、硫酸、例えばメタンスルホン酸等のス
ルホン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、ピバリン酸、ペンタン
酸、イソペンタン酸、2−エチル酪酸、トリクロロ酢酸等の脂肪族カルボン酸ま
たは例えば安息香酸等の芳香族カルボン酸のような酸との混合酸無水物;対称酸
無水物;イミダゾール、4−置換イミダゾール、ジメチルピラゾール、トリアゾ
ールまたはテトラゾールとの活性化アミド;または例えばシアノメチルエステル
、メトキシメチルエステル、ジメチルイミノメチル〔(CH3)2N+=CH-〕エステル
、ビニルエステル、プロパルギルエステル、p−ニトロフェニルエステル、2,
4−ジニトロフェニルエステル、トリクロロフェニルエステル、ペンタクロロフ
ェニルエステル、メシルフェニルエステル、フェニルアゾフェニルエステ
ル、フェニルチオエステル、p−ニトロフェニルチオエステル、p−クレジルチ
オエステル、カルボキシメチルチオエステル、ピラニルエステル、ピリジルエス
テル、ピペリジルエステル、8−キノリルチオエステル等の活性化エステル、ま
たは例えばN,N−ジメチルヒドロキシアミン、1−ヒドロキシ−2−(1H)
−ピリドン、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシフタルイミド、1
−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール等のN−ヒドロキシ化合物とのエステ
ル等が挙げられる。これらの反応性誘導体は使用すべき化合物[III]の種類に
応じてそれらの中から任意に選択することができる。
化合物[III]およびその反応性誘導体の好適な塩としては、化合物[I]に
ついて例示したようなものが挙げられる。
反応は通常、水、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、アセトン、
ジオキサン、アセトニトリル、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン、テ
トラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ピリジンのよ
うな常用の溶媒中で行われるが、反応に悪影響を及ぼさない溶媒であれば、その
他のいかなる有機溶媒中でも反応を行うことができる。これらの常用の溶媒は水
との混合物として使用してもよい。
この反応において化合物[III]を遊離酸の形または塩の形で使用する場合に
は、N,N′−ジシクロヘキシルカルボジイミド;N−シクロヘキシル−N′−
モルホリ
ノエチルカルボジイミド;N−シクロヘキシル−N′−(4−ジエチルアミノシ
クロヘキシル)カルボジイミド;N,N′−ジエチルカルボジイミド;N,N′
−ジイソプロピルカルボジイミド;N−エチル−N′−(3−ジメチルアミノプ
ロピル)カルボジイミド;N,N′−カルボニルビス(2−メチルイミダゾール
);ペンタメチレンケテン−N−シクロヘキシルイミン;ジフェニルケテン−N
−シクロヘキシルイミン;エトキシアセチレン;1−アルコキシ−1−クロロエ
チレン;亜燐酸トリアルキル;ポリ燐酸エチル;ポリ燐酸イソプロピル;オキシ
塩化燐(塩化ホスホリル);三塩化燐;塩化チオニル;塩化オキサリル;例えば
クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソプロピル等のハロギ酸低級アルキル;トリフ
ェニルホスフィン;2−エチル−7−ヒドロキシベンズイソオキサゾリウム塩;
2−エチル−5−(m−スルホフェニル)イソオキサゾリウムヒドロキシド分子
内塩;1−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシ)−6−クロロ−1H−ベン
ゾトリアゾール;N,N−ジメチルホルムアミドと塩化チオニル、ホスゲン、ク
ロロギ酸トリクロロメチル、オキシ塩化燐等との反応によって調製したいわゆる
ビルスマイヤー試薬等のような常用の縮合剤の存在下に反応を行うのが好ましい
。
反応はまた、アルカリ金属炭酸水素塩、トリ(低級)アルキルアミン、ピリジ
ン、N−(低級)アルキルモルホリン、N,N−ジ(低級)アルキルベンジルア
ミン等
のような無機塩基または有機塩基の存在下に行ってもよい。
反応温度は特に限定されないが、通常は冷却下ないし加温下に反応が行われる
。
目的化合物[I]およびその医薬として許容される塩は新規であり、高い抗菌
活性を発揮してグラム陽性菌およびグラム陰性菌を含む広汎な病原菌特にMRSAお
よび緑膿菌の生育を阻止し、抗菌剤として有用である。
目的化合物[I]の有用性を示すために、この発明の代表的な化合物について
のMIC(最小発育阻止濃度)値を以下に示す。試験法
試験管内抗菌活性を下記寒天平板希釈法により測定した。
各試験菌株をトリプトケース−ソイ−ブロス中一夜培養してその1白金耳(生
菌数106個/ml)を、各濃度段階の代表的試験化合物を含むハートインフュージ
ョン寒天(HI−寒天)に接種し、37℃、20時間インキュベートした後、最小発育
阻止濃度(MIC)をμg/mlで表わした。試験化合物
7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−
エトキシイミノアセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチ
ル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシ
ラート塩酸塩(シン異性体)試験結果
治療を目的として投与するために、この発明の目的化合物[I]およびその医
薬として許容される塩は、経口投与、例えば静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射
または関節内注射のような非経口投与および外用(経皮)投与に適した有機もし
くは無機固体状もしくは液状賦形剤のような医薬として許容される担体と混合し
て前記化合物を有効成分として含有する常用の医薬製剤の形で使用される。
医薬製剤は錠剤、顆粒、粉末、カプセルのような固体状であっても、溶液、懸
濁液、シロップ、エマルジョン、レモネード等のような液状であってもよい。
必要に応じて上記製剤中に、例えば乳糖、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、
ステアリン酸マグネシウム、白土、蔗糖、コーンスターチ、タルク、ゼラチン、
寒天、ペクチン、落花生油、オリーブ油、カカオ脂、エチレングリコール、アル
ギニン、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナ
トリウム等のような助剤、安定剤、湿潤剤およびその他の通常使用される添加剤
が含まれていてもよい。
化合物[I]の投与量は患者の年齢、条件、疾患の種類、適用する化合物の種
類等によって変化する。一般的には患者に1日当り1mg〜約4000mgの量もしくは
それ以上投与すればよい。この発明の目的化合物[I]は病原菌感染症予防およ
び/または治療に平均1回投与量約50mg、100mg、250mg、 500mg、1000mg、 200
0mgを使用すればよい。
実施例
以下製造例および実施例に従ってこの発明をさらに詳細に説明する。製造例1
2−シアノ−3−エトキシアクリル酸エチル(5.7g)のエタノール(100ml)
−水(10m1)懸濁液に、2,3−O−ベンジリデン−2,3−ジヒドロキシプロ
ピルヒドラジン(10g)を加え、この反応混合物を2時間加熱還流させる。減圧
下でエタノールを除去後、残留物をシリカゲル(150g)カラムクロマトグラフ
ィーに付し、ジクロロメタン−酢酸エチル(1:2、v/v)混合物で溶出する。
目的化合物含有画分を合せ、減圧下で蒸発させて、4−エトキシカルボニル−1
−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−アミノピラゾール(830mg)を得る
。
NMR(DMSO-d6,δ):1.24(3H,t,J=7Hz),3.25-3.40
(2H,m),3.70-4.10(3H,m),4.16(2H,q,J=7Hz),
4.78(1H,t,J=6Hz),5.09(1H,d,J=4Hz),6.05
(2H,br s),7.46(1H,s)製造例2
4−エトキシカルボニル−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−アミ
ノピラゾール(4.2g)の1N水酸化ナトリウム水溶液(37ml)懸濁液を70℃で3
0分間撹拌する。反応混合物を酢酸エチル(80ml)と水(40ml)との中に注ぎ、
つぎに、混合物を6N塩酸でpH3.0に調整する。有機層を分離し、食塩水(40ml
)で洗い、硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に蒸発させて、4−カルボキシ−
1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−アミノピラゾール(2.95g)を得
る。
NMR(DMSO-d6,δ):3.34(2H,d,J=4Hz),3.40-4.10
(3H,m),4.77(1H,br s),5.08(1H,br s),6.00
(2H,br s),7.43(1H,s),11.08(1H,br s)製造例3
4−カルボキシ−1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−アミノピラゾ
ール(400mg)のシクロヘキサノール(4ml)溶液を135℃で30分間撹拌する。反
応混合物をシリカゲル(20g)カラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル−
メタノール(10:1、v/v)混合物で溶出する。目的化合物含有画分を合せ、減
圧下に蒸発させて、1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−アミノピラゾ
ール(140mg)を得る。
NMR(DMSO-d6,δ):3.29(2H,t,J=4Hz),3.40-3.80
(2H,m),3.80-4.00(1H,m),4.74(1H,t,J=4Hz),
5.03(2H,br s),5.07(1H,d,J=4Hz),5.28(1H,
d,J=3Hz),7.04(1H,d,J=3Hz)製造例4
無水酢酸(5ml)と蟻酸(2.8ml)との混合物を30℃で20分間撹拌する。これ
に、氷冷下に撹拌しながら、1−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−5−アミ
ノピラゾール(1.67g)を加え、混合物を10〜20℃で30分間撹拌する。反応混合
物を酢酸エチル(30ml)と水(30ml)との中に注ぎ、混合物を5%炭酸水素ナト
リウム水溶液でpH6.0に調整する。有機層を分離し、食塩水(30ml)で洗い、硫
酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に蒸発させて、1−[2,3−ビス(ホルミル
オキシ)プロピル]−5−ホルミルアミノピラゾール(2g)を得る。
NMR(DMSO-d6,δ):4.10-4.45(2H+2H,m),5.35−
5.55(1H,m),6.20 (0.2H,d,J=3Hz),6.32
(0.8H,d,J=3Hz),7.40(1H,d,J=3Hz),8.13
(1H,s),8.26(1.8H,s),8.34(0.2H,s),10.43
(1H,br s)製造例5
7β−第三級ブトキシカルボニルアミノ−3−クロロメチル−3−セフェム−
4−カルボン酸ジフェニルメチル(2.1g)、1−[2,3−ビス(ホルミルオ
キシ)プロピル]−5−ホルミルアミノピラゾール(2.0g)お
よび沃化ナトリウム(620mg)のN,N−ジメチルホルムアミド(4ml)懸濁液
を室温で36時間撹拌する。生じた混合物を酢酸エチル(50ml)−水(50ml)混合
物中に注ぎ、有機層を分離し、水(50ml)で2回洗い、硫酸マグネシウムで乾燥
し、約10mlにまで濃縮する。濃縮液をジイソプロピルエーテル(200ml)に撹拌
下に滴下する。生じた沈殿を濾取し、減圧下で乾燥して、7β−第三級ブトキシ
カルボニルアミノ−3−[2−[2,3−ビス(ホルミルオキシ)プロピル]−
3−ホルミルアミノ−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボン酸
ジフェニルメチル・ヨージド(3g)を得る。
NMR(DMSO-d6,δ):1.46(9H,s),3.20-3.65(2H,
m),4.10-4.50(4H,m),4.70-4.85(1H,m),5.07
(1H,d,J=5Hz),5.13-5.65(2H,m),5.66(1H,dd,
J=5Hz,8Hz),6.90(1H,d,J=3Hz),7.07(1H,s),
7.20-7.60(10H,m),8.10(1H,d,J=8Hz),8.27
(1H,d,J=3Hz)製造例6
7β−第三級ブトキシカルボニルアミノ−3−[2−[2,3−ビス(ホルミ
ルオキシ)プロピル]−3−ホルミルアミノ−1−ピラゾリオ]メチル−3−セ
フェム−4−カルボン酸ジフェニルメチル・ヨージド(3g)とアニソール(3
ml)とのジクロロメタン(9ml)溶液に、氷冷、撹拌下、トリフルオロ酢酸(6
ml)を加え、混合物を同温度で2時間撹拌する。生じた溶液をジイソ
プロピルエーテル(250ml)に加える。沈殿を沢取し、減圧下で乾燥して、7β
−アミノ−3−[2−[2,3−ビス(ホルミルオキシ)プロピル]−3−ホル
ミルアミノ−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラートニ
トリフルオロ酢酸塩(1.21g)を得る。
NMR(DMSO-d6,δ):3.30-3.80(2H+2H,m),4.20-
4.60(1H+2H,m),5.10-5.60(1H+2H+1H,m),7.11
(1H,d,J=3Hz),8.29(1H,d,J=3Hz)製造例7
7β−アミノ−3−[2−[2,3−ビス(ホルミルオキシ)プロピル]−3
−ホルミルアミノ−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラ
ート二トリフルオロ酢酸塩(1g)のメタノール(7ml)懸濁液に、25℃で撹拌
下、塩酸(1.2ml)を加え、30℃で3時間撹拌を続ける。反応混合物を酢酸エチ
ル(100ml)中に注ぐ。沈殿を濾取し、減圧下で乾燥して、7β−アミノ−3−
[2−(2,3−ジヒドロキシプロピル)−3−アミノ−1−ピラゾリオ]メチ
ル−3−セフェム−4−カルボキシラート三塩酸塩(482mg)を得る。
NMR(DMSO-d6,δ):3.20-3.60(2H,m),3.70-4.30
(2H+2H,m),4.30-4.50(1H,m),5.10-5.50(1H+
1H+2H,m),5.91(1H,d,J=3Hz),7.50(2H,br s),
8.12(1H,d,J=3Hz)実施例1
五塩化燐(0.89g)の塩化メチレン(18ml)懸濁液に、-15℃で、(Z)−2
−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−シクロペンチ
ルオキシイミノ酢酸(1g)を加える。-10℃〜-15℃で30分間撹拌後、混合物を
減圧下で蒸発させて塩化メチレンを除去する。残留物をテトラヒドロフラン(16
ml)に懸濁させ、これを、-10℃で、7β−アミノ−3−[3−アミノ−2−(
2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボ
キシラート塩酸塩二水和物(1.6g)とN−(トリメチルシリル)アセトアミド
(5.1g)とのN,N−ジメチルホルムアミド(16ml)−テトラヒドロフラン(1
6ml)混合物溶液に加える。氷冷下に1時間撹拌後、混合物を酢酸エチルに滴下
する。生じた沈殿を濾取し、水に溶解させ、重炭酸ナトリウム水溶液でpH4に調
整する。この水溶液をダイヤイオンHP−20(商標:三菱化成)によるカラムクロ
マトグラフィーに付し、10%イソプロピルアルコールで溶出する。目的化合物含
有画分を集め、減圧下に蒸発させてイソプロピルアルコールを除去する。水溶液
を凍結乾燥して、7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3
−イル)−2−シクロペンチルオキシイミノアセトアミド]−3−[3−アミノ
−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4
−カルボキシラート(シン異性体)(0.16g)を得
る。
IR(ヌジョール):3300,1765,1660cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):1.27-2.02(8H,m),2.94および
3.23(2H,ABq,J=18Hz),3.67-3.82(2H,m),4.20
-4.52(2H,m),4.57-4.83(1H,m),5.01(1H,d,
J=5Hz),5.02および5.28(2H,ABq,J=15Hz),
5.61(1H,dd,J=5Hz,8Hz),5.81(1H,d,J=3Hz),
7.31(2H,br s),8.06(1H,d,J=3Hz),8.07(2H,
br s),9.38(1H,d,J=8Hz)実施例2
実施例1と同様にして、7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾ
ール−3−イル)−2−シクロブトキシイミノアセトアミド]−3−[3−アミ
ノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−
4−カルボキシラート(シン異性体)を得る。
IR(ヌジョール):3250,1765,1660cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):1.45-1.70(2H,m),2.10-2.30
(4H,m),2.99および3.20(2H,ABq,J=18Hz),
4.20-4.60(4H,m),4.71(1H,m),4.90-5.40
(2H,m),5.04(1H,d,J=5Hz),5.65(1H,dd,
J=8Hz,5Hz),5.82(1H,d,J=3Hz),7.38(2H,
br s),8.10(1H,d,J=3Hz),8.19(2H,br s),
9.53(1H,d,J=8Hz)実施例3
7β−アミノ−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラ
ゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラート塩酸塩(50g)のアセト
ニトリル(500m1)−水(500ml)混合物溶液を、重炭酸ナトリウム水溶液でpH6.
0に調整する。生じた溶液に、5℃で撹拌下、(Z)−2−(5−アミノ−1,
2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−エトキシイミノアセチルクロリド塩
酸塩(40g)を加え、混合物を同温度で1.5時間撹拌する。この間、重炭酸ナト
リウム水溶液でpHを5.0〜6.5に維持する。反応混合物を蒸発させて、含有有機溶
媒を除去する。水溶液をセパビーズ(Sepabeads)SP−205(商標:三菱化成)(
1.3l)によるカラムクロマトグラフィーに付す。カラムを水(5l)で洗い、目
的化合物を15%イソプロピルアルコールで溶出し、溶出液を凍結乾燥して、7β
−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−エトキ
シイミノアセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−
1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラート(シン異性体)
(51.2g)を得る。
IR(ヌジョール):3300,1750,1660,1600cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):1.23(3H,t,J=7Hz),2.93およ
び3.18(2H,ABq,J=18Hz),3.58(2H,br s),
4.15(2H,q,J=7Hz),4.13-4.25(2H,m),5.01
(1H,d,J=5Hz),5.03および5.23(2H,ABq,
J=16Hz),5.63(1H,dd,J=5Hz,8Hz),5.81(1H,
d,J=3Hz),7.27(2H,br s),8.10(1H,d,J=3Hz),
8.15(2H,br s),9.50(1H,d,J=8Hz)実施例4
実施例3と同様にして、次の化合物を得る。
(1)7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−
2−(n−プロポキシイミノ)アセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−
ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシ
ラート(シン異性体)
IR(ヌジョール):3350,3130,1765,1610cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):0.84-0.93(3H,m),1.53-1.73
(2H,m),3.00および3.22(2H,ABq,J=18Hz),
3.60(2H,br s),4.00-4.10(2H,m),4.15-4.30
(2H,m),5.05(1H,d,J=5Hz),5.06および5.25
(2H,ABq,J=16Hz),5.69(1H,dd,J=5Hz,8Hz),
5.84(1H,d,J=3Hz),7.40(2H,br s),8.08(1H,
d,J=3Hz),8.17(2H,br s),9.52(1H,d,J=8Hz)
(2)7β−[2-(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−
2−(1−メチル−2−プロペニルオキシイミノ)アセトアミド]−3−[3−
アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェ
ム−4−カルボキシラート(シン異性体)
IR(ヌジョール):1755cm-1
(3)7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−
2−(2−メチル−2−プロペニルオキシイミノ)アセトアミド]−3−[3−
アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェ
ム−4−カルボキシラート(シン異性体)
IR(ヌジョール):1760cm-1
(4)7β−[2-(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−
2−エトキシイミノアセトアミド]−3−[2−(2,3−ジヒドロキシプロピ
ル)−3−アミノ−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラ
ート(シン異性体)
IR(ヌジョール):1755,1640,1610,1520cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):1.23(3H,t,J=7Hz),2.95およ
び3.18(2H,ABq,J=18Hz),3.20,4.00(2H+2H,
m),4.15(2H,q,J=7Hz),4.10-4.30(1H,m),
5.02(1H,d,J=5Hz),4.90-5.35(2H,m),5.66
(1H,dd,J=5Hz,8Hz),5.83(1H,d,J=3Hz),7.19
(2H,br s),8.11(1H,d,J=3Hz),8.15(2H,br
s),9.52 (1H,d,J=8Hz)実施例5
7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−
エトキシイミノアセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチ
ル)−1
−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラート(シン異性体)(
30g)の4N塩酸(22.4ml)溶液に、20℃で撹拌下、アセトン(120ml)を加え
る。同温度で10時間撹拌を続け、生じた結晶を濾取し、乾燥して、7β−[2−
(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−エトキシイミノ
アセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラ
ゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラート塩酸塩(シン異性体)(
13.46g)を得る。
IR(ヌジョール):3250,3150,3120,1785,1705,1650,
1620,1575,1530 cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):1.23(3H,t,J=7Hz),3.24およ
び3.30(2H,ABq,J=18Hz),3.60(2H,br s),
4.03-4.25(2H,m),4.13(2H,q,J=7Hz),5.14
および5.32(2H,d,J=16Hz),5.18(1H,d,
J=5Hz),5.86(1H,dd,J=5Hz,8Hz),5.89(1H,d,
J=3Hz),7.50(2H,br s),8.03(1H,d,J=3Hz),
8.21(2H,br s),8.58(1H,d,J=8Hz)実施例6
7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−
エトキシイミノアセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチ
ル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフェム−4−カルボキシラート(シン異
性体)(5g)の水(50ml)溶液に1M
硫酸(8ml)を加える。溶液を凍結乾燥して、7β−[2−(5−アミノ−1,
2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−エトキシイミノアセトアミド]−3
−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル−3
−セフェム−4−カルボキシラート硫酸塩(シン異性体)(5.2g)を得る。
IR(ヌジョール):3150,1760,1640,1610cm-1
NMR(DMSO-d6,δ):1.23(3H,t,J=7Hz),3.21およ
び3.32(2H,ABq,J=18Hz),3.62(2H,br s),
4.03-4.26(2H,m),4.13(2H,q,J=7Hz),5.88
(1H,dd,J=5Hz,8Hz),5.90(1H,d,J=3Hz),7.50
(2H,br s),8.04(1H,d,J=3Hz),8.21(2H,br
s),8.59(1H,d,J=8Hz)実施例7
7β−[2−(5−アミノ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−
エトキシイミノアセトアミド]−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチ
ル)−1−ピラゾリオ]メチル−3−セフエム−4−カルボキシラート(シン異
性体)と2M硫酸とから、実施例5と同様にして、7β−[2−(5−アミノ−
1,2,4−チアジアゾール−3−イル)−2−エトキシイミノアセトアミド]
−3−[3−アミノ−2−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピラゾリオ]メチル
−3−セフェム−4−カルボキシラート硫酸塩(シン異性体)の結晶を得る。
IR(KBr):3257,3060,1799,1697,1670,1639,
1579,1546cm-1
NMR(D2O,δ):1.31(3H,t,J=7Hz),3.18および
3.48(2H,ABq,J=18Hz),3.85(2H,t,J=5Hz),
4.22-4.45(4H,m),5.20(2H,s),5.26(1H,d,
J=5Hz),5.88(1H,d,J=5Hz),5.97(1H,d,
J=3Hz),7.89(1H,d,J=3Hz)
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(72)発明者 大木 秀徳
大阪府池田市緑丘2―2―10
(72)発明者 山中 秀昭
大阪府枚方市楠葉中之芝2丁目77―10