JPH0768603B2 - 建築建材用二相ステンレス鋼 - Google Patents

建築建材用二相ステンレス鋼

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JPH0768603B2
JPH0768603B2 JP1126665A JP12666589A JPH0768603B2 JP H0768603 B2 JPH0768603 B2 JP H0768603B2 JP 1126665 A JP1126665 A JP 1126665A JP 12666589 A JP12666589 A JP 12666589A JP H0768603 B2 JPH0768603 B2 JP H0768603B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は建築建材用として使用される強度が高くレラク
セーション(ステンレス鋼にある応力を与え、その時に
生ずる歪が一定に保たれるような条件で放置すると、時
間の経過とともに初めに与える応力が次第に減少する現
象で、その減少の小さい程すぐれた性質と評価されてい
る。)の小さい安価なオーステナイト・フェライト系二
相ステンレス鋼に関する。
(従来の技術) 従来建築建材用には安価で強度が高い理由で、例えばJI
Sに規定されたSM鋼のような普通炭素鋼が使用されてき
たが、普通炭素鋼は耐食性をもたないために無塗装で使
用される場合はもちろん、たとえ塗装して使用される場
合でも腐食による消耗は避けられず建築構造物としての
寿命が短くなる原因になり、また発錆により美観も損な
われるなどの欠点をもっている。このような現状におい
て、将来は耐久性や美観の点でこれらの普通炭素鋼にか
わりステンレス鋼の使用が期待されている。しかしなが
ら、従来のステンレス鋼をこのような用途に使用する場
合幾つかの問題がある。たとえば、SUS304やSUS316など
に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼は、溶接性
が優れているためステンレス鋼の中でも最も適している
ように思われるが、一般に強度(耐力)がやゝ低いため
レラクセーションが大きい。その上、多量のNiを含有す
るために高価である。また、SUS410で代表されるマルテ
ンサイト系ステンレス鋼やSUS430に代表されるフェライ
ト系ステンレス鋼はレラクセーションも小さく、オース
テナイト系ステンレス鋼に比べれば安価であるが、溶接
性が劣る問題点がある。またこれらのオーステナイト系
と、マルテンサイト系やフェライト系ステンレス鋼の中
間的な特性をもつ鋼としてSUS329J1に代表されるオース
テナイト・フェライト二相ステンレス鋼があるが、この
鋼はオーステナイト系と同等程度に溶接性が優れ、オー
ステナイト系ステンレス鋼の欠点である粒界腐食や応力
腐食割れに対する抵抗性も強いことから化学機器などに
多く使用されている。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は上述したような溶接性に優れた二相ステンレス
鋼に着目し、その成分を特定することによってレラクセ
ーションが著しく小さく且つ建築建材用に一般的に要求
されるJIS SM 41,50と同等あるいはそれ以上の機械的性
質すなわち、室温での耐力(PS)が40kgf/mm2以上、引
張り強さ(TS)が60kgf/mm2以上、伸び(El)が20%以
上、0℃におけるシャルピー吸収エネルギー(vEo)が
2.8kg・m以上であって、室温におけるレラクセーショ
ンが小さいという特性を有する建築建材用二相ステンレ
ス鋼を提供することを目的とするものである。
(課題を解決するための手段) 本発明は、 (1) C:0.10%以下、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜4.0%
未満、Cr:19.0〜26.0%、Ni:1.0〜6.0%、N:0.05〜0.40
%を含有し、残りが鉄および不可避的不純物から成り、
かつオーステナイト相面積率が20〜80%であることを特
徴とする建築建材用二相ステンレス鋼、 (2) C:0.10%以下、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜4.0%
未満、Cr:19.0〜26.0%、Ni:1.0〜6.0%、N:0.05〜0.40
%、およびNb:0.01〜2.0%、Ti:0.01〜2.0%、V:0.01〜
2.0%のうち1種あるいは2種以上を含有し、残りが鉄
および不可避的不純物から成り、かつオーステナイト相
面積率が20〜80%であることを特徴とする建築建材用二
相ステンレス鋼、 である。
以下に、本発明鋼について詳細に説明する。
SUS329J1で代表される現行二相ステンレス鋼は孔食や応
力腐食割れに対する抵抗性を高めるために高価な合金成
分のMoを通常数%含有している。しかし、建築材料とし
て使用される場合には、Cl-環境は少いので孔食や応力
腐食割れに起因する損傷が起こることは少なく、必然的
に適正な鋼成分も変わってくる。このような前提のもと
に、各種機械的性質に与える二相ステンレス鋼の相バラ
ンス支配元素としてCr,Ni,Mn,N,Siなど、および強化元
素としてNb,Ti,Vなどの各種元素の影響を調べた結果、
C:0.10%以下、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜4.0%未満、C
r:19.0〜26.0%、Ni:1.0〜6.0%、N:0.05〜0.40%を含
有しあるいはさらにNb:0.01〜2.0%、Ti:0.01〜2.0%、
V:0.01〜2.0%の1種または2種以上を含む鋼により目
標の特性を満足できることがわかった。
このように鋼成分を限定した理由は次のとおりである。
C:Crを多量に含むステンレス鋼においてCの含有はクロ
ム炭化物を生成して粒界に析出し、耐食性を低下させる
ため、その含有量を0.15%以下にした。
Si:フェライト形成元素で二相鋼におけるフェライト相
の量をコントロールする。そしてこの元素の添加により
有効に強度を上げることができる。この強化のためには
少なくとも0.1%添加しなければその効果を発揮するこ
とができず、この含有量の増加に強度を増大せしめるが
過剰の添加は熱間加工性を低下させるため3%以下とす
る必要がある。
Mn:Niのかわりに使用する安価で有力なオーステナイト
形成元素で、二相鋼におけるオーステナイト相の量をコ
ントロールし、レラクセーションを安定して小さくする
作用する役目をもつ。そしてこの成分の添加により有効
に強度を増大する。この強化のためには少なくとも0.1
%添加しなければその効果を発揮することができない。
また、Mnの過剰添加はオーステナイト相を増やしレラク
セーションを高めるため、4%未満でなければならな
い。
Cr:耐食性保有のためと、フェライト形成元素であるた
めフェライト相の量のコントロールのために必要な元素
で、そのためには少なくとも19.0%以上含有しなければ
ならない。しかし、いたずらに多量の含有は合金コスト
が高くなるだけである。したがって、その上限を26%に
した。
Ni:二相鋼におけるオーステナイト相形成に必要な元素
で、そのためには少なくとも1%含有しなければならな
い。しかし多量の添加は相バランスとしてオーステナイ
ト相の割合を増やし、レラクセーションを高め、その上
合金コストが高くなるのでその量は6%以下でなければ
ならない。
N:Niと同じように二相鋼においてオーステナイト相を増
やし強度を上げる元素で、そのためには少なくとも0.05
%含有しなければならない。しかし多量の添加は相バラ
ンスとしてオーステナイト相の割合を増やし、さらに気
泡発生による内部欠陥生成の原因になるため、0.40%以
下でなければならない。
これらの合金元素の他に、強化元素として、Nb:0.01〜
2.0%、Ti:0.01〜2.0%、およびV:0.01〜2.0%のうち1
種または2種以上を含有させることができる。すなわ
ち、これらの元素を0.01%以上含有することにより結晶
粒が微細になり強度とくに降伏強度を上昇せしめる。し
かし多量の添加は靱性を著しく低下せしめる結果となる
ため、2.0%以下でなければならない。
また、本発明鋼は、このような合金成分範囲を満足する
と同時に、製品として、必ずオーステナイト相とフェラ
イト相との二相から成らなければならず、それの存在比
率は面積百分率で20〜80%好ましくは30〜70%である。
第1図に本発明鋼すなわち建築建材用鋼の特性の一つと
して要求されるレラクセーションと、オーステナイト相
面積百分率(%)との関係を示したが、これによりオー
ステナイト相が80%を超えるとレラクセーションが急激
に大きくなることがわかる。また20%を切ると、後述す
る実施例からもわかるように目標とする機械的性質が得
られない。本発明はこのような比率を満足することによ
って、建築建材用として必要な諸性質を一層改善する。
以下に実施例により説明する。
実施例 1 C:0.01〜0.03%、Si:0.4〜0.7%、Mn:1.7〜1.8%、Cr:1
7.0〜23.0%、Ni:6%以下、Mo:3%以下、N:0.12〜0.17
%を含む20kgの鋼塊を真空誘導溶解炉により溶製し、こ
れらの鋼塊を厚さ13mmに熱間圧延した後、1100℃で30分
間保定したのち水焼入れよりなる溶体化処理を行い、材
質調査を行った。Cr及びNiの含有量とγ相の面積百分
率、PS,TS,El,vEoの値との関係を第2図(A)〜(E)
に示す。この結果から、Cr量が19%に満たない場合には
γ相面積百分率は20%に満たずまたα′マルテンサイト
が生成してPSやTSが著しく高くElは20%に満たない。す
なわち、本発明の目標特性を満足するためにはCrは19.0
%以上でなければならない。Niについては、1%に満た
ない場合にはα相だけより成り、したがってvEoは極め
て低い。6%を超えた場合にはγ相が多くなり、レラク
セーションを小さくできない。このような理由から、Ni
量は1.0〜6.0%の範囲でなければならない。
実施例 2 真空誘導溶解炉により、C:0.01〜0.08%、Si:0.5〜2.7
%、Mn:0.8〜3.9%、Ni:1.9〜4.5%、Cr:19〜26%、N:
0.09〜0.32%、その他に選択元素として、Nb:0.05〜0.1
2%、Ti:0.10〜0.20%およびV:0.05〜0.10%を含む第1
表に示すような組成の鋼塊を作製した。これらの鋼塊を
厚さ25mmに熱間圧延した後、1050〜1150℃で溶体化熱処
理を行った。これらの鋼板の引張特性値、衝撃特性値お
よびレラクセーション率を第2表に示した。レラクセー
ション率は初期応力=耐力×0.8、試験温度=20℃±0.5
℃、試験時間=10hrにて、自動制御槓桿型レラクセーシ
ョン試験機により、JIS Z 2276に準拠して測定した。
第1表および第2表において、鋼No.1〜15の鋼は本発明
鋼であるが、No.16はSUS304、No.17はSUS410、No.18はS
M40の代表例を比較鋼として示している。
No.1〜15の本発明鋼はオーステナイト相とフェライト相
より成る二相組織でそれらのオーステナイト相の占める
面積百分率は30〜70%の範囲に入っていた。これらの本
発明鋼の機械的性質は目標とするPS40kgf/mm2以上、TS6
0kgf/mm2以上、El20%以上、vEo2.8kgf・m以上を十分
に満足し、特にPSとTSの強度は比較鋼のSUS304,SUS410
およびSM40よりはるかに高い。また本発明鋼の常温にお
けるレラクセーションはSM鋼に近くきわめて小さく建築
構造物用として適している。
なお、本発明鋼は、ステンレス鋼の溶製法としてよく知
られた、転炉や電気炉と真空脱炭精錬などとの組合せで
溶製され、連続鋳造、または造塊と分塊圧延によりスラ
ブにされる。このスラブは一旦室温にまで冷却されるか
あるいは必ずしも室温にまで冷却されることなく加熱炉
に装入して加熱した後1200〜600℃の温度範囲で厚板に
圧延される。圧延後の冷却は自然放冷でもよいし水冷な
どの強制冷却でもよい。続いて必要に応じ950〜1200℃
の温度範囲で溶体化熱処理が行われる。
(発明の効果) 以上説明したように、本発明は成分を特定することによ
り、SM41,50クラスと同等或はそれ以上の特性をもち、
しかもレラクセーションが小さいことから建築建材用に
適した二相ステンレス鋼を安価に製造できるので、工業
的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
第1図はオーステナイト相面積率(%)とレラクセーシ
ョン率の関係、第2図(A)〜(E)は実施例1におけ
る材質調査結果を示すもので、(A)は耐力(SP)、
(B)は引張り強さ(TS)、(C)は破断伸び(El)、
(D)はシャルピー吸収エネルギー(vEo)、(E)は
オーステナイト相面積分率(Fγ)をNi−Cr含有量との
関係で示した。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で C:0.10%以下、 Si:0.1〜0.3%、 Mn:0.1〜4.0%未満、 Cr:19.0〜26.0%、 Ni::1.0〜6.0%、 N:0.05〜0.40% を含有し、残りが鉄および不可避的不純物からなり、か
    つオーステナイト相面積率が20〜80%である建築建材用
    二相ステンレス鋼。
  2. 【請求項2】重量%で C:0.10%以下、 Si:0.1〜0.3%、 Mn:0.1〜4.0%未満、 Cr:19.0〜26.0%、 Ni:1.0〜6.0%、 N:0.05〜0.40%、 および Nb:0.01〜2.0%、 Ti:0.01〜2.0%、 V:0.01〜2.0%のうちの1種又は2種以上を含有し、残
    りが鉄および不可避的不純物からなり、かつオーステナ
    イト相面積率が20〜80%である建築建材用二相ステンレ
    ス鋼。
JP1126665A 1989-05-22 1989-05-22 建築建材用二相ステンレス鋼 Expired - Lifetime JPH0768603B2 (ja)

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