JPH0628318B2 - 半導体圧力変換器及びその製造方法 - Google Patents

半導体圧力変換器及びその製造方法

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JPH0628318B2
JPH0628318B2 JP10355286A JP10355286A JPH0628318B2 JP H0628318 B2 JPH0628318 B2 JP H0628318B2 JP 10355286 A JP10355286 A JP 10355286A JP 10355286 A JP10355286 A JP 10355286A JP H0628318 B2 JPH0628318 B2 JP H0628318B2
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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明は、サファイア基板上にピエゾ抵抗素子を設け圧
力測定を行う半導体圧力変換器及びその製造方法に関す
るものである。
[従来技術] 従来よりサファイア基板を使用した半導体圧力変換器が
周知であり、この半導体圧力変換器は絶縁正に優れたサ
ファイア基板上に半導体エピタキシャル層を被覆し、こ
の半導体エピタキシャル層を拡散処理し圧力測定用のピ
エゾ抵抗素子を形成している。このため、従来のPN接
合絶縁構造型の半導体圧力変換器に比しリーク電流が極
めて少なく、しかも高温環境下においても使用できると
いう優れた特徴を有している。
ところで、このような圧力変換器は、サファイア基板を
圧力測定用のダイアフラムとして機能させるため、基板
を筒状の支持体と接合してやる必要がある。
しかし、このような両部材の接合に、接着剤や低融点ガ
ス等の糊剤を用いると、この糊剤に起因する残留歪み、
クリープ、ヒステリスシスなどの悪影響により充分な初
期接着性能とダイアフラム固定条件を満足することがで
きず、しかもこの糊剤を使用したことに起因して接合部
に残留歪み変化、気密性劣化、変質等が発生しその接着
信頼性が不安定なものとなるという問題があった。
このため、近年においては糊剤によらずサファイア基板
と支持体とを直に静電接合する方法が多用されるように
なってきた。
第6図にはこのような半導体圧力変換器の好適な一例が
示されている。
この圧力変換器は、ダイアフラムとして機能するサファ
イア基板10と、このサファイア基板10の第1の表面
10a側に静電接合される支持体12とを含む。そし
て、圧力導入孔14を介して基板10の第1の表面10
aに印加される圧力Pと、基板10の第2の表面10b
に印加される圧力Psと、の差圧をピエゾ抵抗素子16
を用いて測定するよう形成されている。
このような半導体圧力変換器の製造は、まずサファイア
基板10の一方の表面10bの略中央に第1の半導体エ
ピタキシャル層(図示せず)を被覆形成し、他方の表面
10a上に静電接合用の第2の半導体エピタキシャル層
20を被覆形成する。
次に、基板10の片方表面10bに設けられた第1の半
導体エピタキシャル層に、拡散などのICプロセス処理
を施し、これをピエゾ抵抗素子16として形成する。こ
のとき、前記拡散処理により基板10の両面10b及び
10aに設けられたピエゾ抵抗素子16及び第2の半導
体エピタキシャル層20の各表面は、同質の絶縁保護膜
22により被覆されることになる。
そして、前記ピエゾ抵抗素子16上には、電気的信号の
入出力を目的として形成したピエゾ抵抗素子用電極24
が設けられ、その電気的信号はリード線26を介して外
部と電気的に導通されるよう形成される。
また、前記支持体12は、例えば結晶化ガラス又は非晶
質ガラス等の絶縁性部材を用いて形成されており、前述
したようにその中央部には直径Rの圧力導入孔14が形
成されている。
そして、この支持体12と基板10との静電接合を行う
ために、第2の半導体エピタキシャル層20の表面には
静電接合用電極28が設けられている。通常、この電極
28は基板表面10aの外縁部に設けられることが多い
ため、基板10は支持体12の接合面12a及び22a
の幅より大きなものを用いる必要がある。
周知のように、静電接合は、熱膨脹係数の近接した金属
やシリコン半導体などの導電性部材と、ガラス、ガラス
セラミックなどの高温で固定電解質として作用する絶縁
部材と、の接合に好適である。例えばシリコン半導体
と、パイレックスガラスから成る支持体との静電接合
は、予め平滑平面に仕上げたシリコン半導体の接合面
と、パイレックス支持体の接合面とを当接し、次に両者
を 400゜C前後に昇温加熱した後、シリコン半導体を陽
極として両者の間に数100Vの直流電圧を数分間印加
することにより行われる。
従って、サファイア基板10と支持体12との静電接合
も同様にして行われ、まず支持体10,12の接合面1
2a及び22aを平滑平面に研磨仕上げし、次に支持体
12と基板10との位置合せを行い、その後、静電接合
用電極28と支持体12との間に外部電源30から所定
の直流電圧を同様に印加することにより行われる。
このようにして形成された半導体圧力変換器は、圧力導
入孔14により囲まれた基板部分がダイアフラム領域1
00として機能することとなる。従って、ダイアフラム
領域100の第1の表面10a側から測定圧力Pを印加
し、第2の表面10b側から基準圧力Ps を印加するこ
とにより、両者の差圧をピエゾ抵抗素子16の抵抗変化
として良好に測定することが可能となる。
特に、静電接合を用いて形成された従来装置は、その接
合に糊剤を用いた従来装置に比し格段に優れた初期性能
及び信頼性を発揮することができる。
[発明が解決しようとする問題点] ところで、今日の激しい技術革新及び軽薄短小の時代的
風潮を背景として、このような半導体変換器に対して
も、より高い性能と小型化が求められている。
しかし、このような観点から見ると、従来の半導体圧力
変換器及びその製造方法では、以下に示す問題点を有し
ているため、前述した時代の要請に十分応えることがで
きず、その有効な対策が求められていた。
(A)第1にこのような従来技術では、半導体圧力変換
器の初期性能のばらつきを抑制し、信頼性の高い圧力測
定を行うことが難しいという問題があった。
すなわち、従来の半導体圧力変換器では、支持体12に
設けた圧力導入孔14の口径Rによりサファイア基板1
0のダイアフラム領域100の大きさが決定してしま
う。
しかし、支持体12の圧力導入孔14は、一般に超音波
加工などの機械的方法により形成されるため、加工精度
の不揃い、加工歪みなどが発生しやすい。
従って、ダイアフラム領域100と大きさにばらつきが
発生しやすく、各半導体圧力変換器の初期性能のばらつ
き、信頼性の低下を招いていた。
また、前記圧力導入孔14の領域の、加工歪み、加工精
度の不揃いが生じることないよう化学的方法により行っ
たとしても、このような従来技術では、サファイア基板
10と支持体12との静電接合を、ピエゾ抵抗素子16
とダイアフラム領域100との相対位置がずれることの
ないよう精度良く行うことが難しく、この結果、各半導
体圧力変換器の出力電圧のばらつきが避けられないとい
う問題があった。
(B)第2に、従来の製造方法によれば、支持体12に
比しサファイア基板10が大きなものとなり、装置全体
の小型軽量化を図ることができないという問題があっ
た。
すなわち、従来の装置は、基板10の表面上にピエゾ抵
抗素子用の電極24と、静電接合用の電極28とが形成
されており、しかも静電接合用の電極28は、基板10
の表面10a上において、支持体12との接合面外周側
に位置して設けられている。
従って、サファイア基板10は、支持体12の静電接合
面12aの面積より大きく形成してやることが必要とな
る。
しかし、このようにすると、支持体12に対し基板10
の円縁部がでっぱった形状となってしまい、圧力変換基
の取扱い時に人為的な破損を招きやすく、しかも装置全
体を小型軽量化することができないという問題があっ
た。
(C)第3、このような従来技術ではサファイア基板1
0と支持体12との接合部に測定圧力による大きな剥離
力が作用し、その耐圧特性が低いという問題があった。
すなわち、このような従来装置では、サファイア基板1
0の第2の表面10b側にピエゾ抵抗素子16が設けら
れている。このため、このピエゾ抵抗素子16に高温、
高圧でかつ腐蝕性の高い圧力媒体が作用することがない
よう、圧力導入孔14を介して第1の表面10a側から
測定圧力Pが印加されている。
しかし、通常、この測定圧力Pは極めて高い値であるた
め、基板10と支持体14との接合部に大きな剥離力が
作用する。このため、このような圧力変換器では、その
構造上、耐圧が極めて低い値となってしまうという問題
があった。
特に、このような半導体圧力変換器は、高温、高圧の圧
力媒体が測定用として用いられる場合が多いため、その
有効な対策が望まれていた。
(D)第4のこのような従来技術によれば、サファイア
基板10と支持体12との静電接合を簡単に行うことが
できないという問題があった。
すなわち、サファイア基板10の一方の表面上に被覆さ
れた第1の半導体エピタキシャル層に、拡散等のICプ
ロセス処理を施しピエゾ抵抗素子16を形成すると、こ
のピエゾ抵抗素子16の表面には絶縁保護膜22が形成
される。
このとき、前記ICプロセス処理により、基板10の他
の表面上に被覆された第2の半導体エピタキシャル層2
0上にも、前記絶縁保護膜22と同質の絶縁保護膜が形
成される。
従来、第2の半導体エピタキシャル層20上に形成され
たこのような絶縁保護膜は、基板10と支持体12との
静電接合を行う上で支障をきたすと考えられていた。こ
のため、この絶縁保護膜の除去を、静電接合に先立ち行
う必要があり、基板10に対するICプロセス処理工程
を簡単に行うことができないという問題があった。
更に、このように絶縁保護膜を除去すると、静電接合面
である第2の半導体エピタキシャル層20の表面が粗大
化され、支持体12との静電接合に支障をきたす恐れが
あるという問題があった。
[発明の目的] 本発明はこのような従来の課題に鑑み為されたものであ
り、その目的は印加圧力に対する測定精度及び耐圧が高
く、しかも小型でその制作工程を簡略化することが可能
な半導体圧力変換器及びその製造方法を提供することに
ある。
[問題点を解決するための手段] 前記目的を達成するため、本発明は、 サファイア基板と、 このサファイア基板の一方の表面に形成された静電接合
用半導体エピタキシャル層と、 前記サファイア基板のダイアフラム領域を囲む口径をも
つ圧力導入孔を有し、前記サファイア基板の一方の表面
に前記静電接合用半導体エピタキシャル層を介して静電
接合される支持体と、 前記ダイアフラム領域に形成されたピエゾ抵抗素子と、 を含み、前記ダイアフラム領域に印加される圧力を前記
ピエゾ抵抗素子を用いて測定する半導体圧力変換器であ
って、 前記静電接合用半導体エピタキシャル層は、前記ダイア
フラム領域を囲むとともに、前記支持体の圧力導入孔の
口径よりもやや大きめの口径をもって、前記サファイア
基板の一方の表面の周縁に設け、 前記ピエゾ抵抗素子は、不純物拡散処理がされた半導体
エピタキシャル層で形成され、前記サファイア基板の一
方の表面のダイアフラム領域内に前記静電接合用半導体
エピタキシャル層と離隔して設け、 前記静電接合用半導体エピタキシャル層とピエゾ抵抗素
子との間に夫々の間を電気的に接続するリード部を設
け、 前記リード部に電気的に接続され、静電接合用とピエゾ
抵抗素子用とに兼用される電極を設け、 測定圧力は前記サファイア基板の他の一方の表面のダイ
アフラム領域から印加され、圧力測定が行われる ことを特徴とする。
また、本発明は、半導体圧力変換器を製造する方法にお
いて、 サファイア基板の少なくとも一方の表面上に半導体エピ
タキシャル層を被覆形成するエピタキシャル層形成工程
と、 この半導体エピタキシャル層を、前記サファイア基板中
央の素子形成領域、サファイア基板周縁の静電接合領
域、これら両領域を電気的に接続するリード領域を残し
てエチング除去するエッチング処理工程と、 前記素子形成領域及びリード領域に不純物拡散処理を行
いピエゾ抵抗素子及びリード部を形成するとともに、ピ
エゾ抵抗素子、リード部及び静電接合領域として残され
た静電接合用半導体エピタキシャル層上に絶縁保護膜を
形成する拡散処理工程と、 前記リード部上の絶縁保護膜に開口部を形成する開口部
形成工程と、 前記開口部を通して前記リード部に電気的に接続され、
静電接合用ピエゾ抵抗素子用とに兼用される電極を形成
する電極形成工程と、 圧力導入孔の口径が前記静電接合用半導体エピタキシャ
ル層の素子形成領域を囲む口径より小さな支持体と前記
サファイア基板とが前記絶縁保護膜及び静電接合用半導
体エピタキシャル層を介して位置合せ当接し、その後前
記電極と支持体との間に静電接合電圧を印加し、前記支
持体をサファイア基板に静電接合する静電接合工程と、 を含み、 前記サファイア基板の静電接合用半導体エピタキシャル
層により囲まれた領域をダイアフラム領域とし、サファ
イア基板の他の一方の表面側から印加される測定圧力を
ピエゾ抵抗素子の抵抗変化として測定する、半導体圧力
変換器を製造する ことを特徴とする。
[作用] 次に本発明に係る半導体圧力変換器及びその製造方法の
作用を説明する。
本発明の半導体圧力変換器は、サファイア基板の同一面
上にピエゾ抵抗素子と静電接合用半導体エピタキシャル
層とを設け、この半導体エピタキシャル層を用いてサフ
ァイア基板と支持体とを静電接合することにより形成さ
れている。
従って、サファイア基板のダイアフラム領域には、ピエ
ゾ抵抗素子が設けられている側と反対側の表面、すなわ
ち、サファイア基板の他の一方の表面側から測定圧力が
印加されることになる。
このように、本発明によれば支持体の設けられている表
面と反対側の表面からサファイア基板に対して測定圧力
が印加されることとなるため、仮にこの測定圧力の圧力
媒体が高温、高圧で腐蝕姓として作用するものであって
も、基板と支持体との静電接合部に従来のように剥離力
が生ずることがなく、半導体圧力変換器の性能、特に耐
圧を著しく向上することができる。
また、本発明の半導体圧力変換器は、サファイア基板上
にそのダイアフラム領域を囲むよう一定の段差をもって
静電接合用半導体エピタキシャル層を設けている。
従って、本発明に係る半導体圧力変換器は、この段差を
有効に利用し、前記半導体エピタキシャル層の口径を支
持体に設けた圧力導入孔の口径よりわずかに大きく形成
することを特徴とするものである。
このようにすることにより、支持体と、表面中央部にピ
エゾ抵抗素子を配置したサファイア基板との静電接合時
に、若干の位置合せ誤差があったとしても、サファイア
基板のダイアフラム領域は前記静電接合用半導体エピタ
キシャル層により安定に支持され、半導体圧力変換器の
出力電圧のばらつきを有効に抑制することが可能とな
る。
また、本発明に係る半導体圧力変換器を製造する方法
は、まずサファイア基板の一方の表面上に半導体エピタ
キシャル層を形成し、この半導体エピタキシャル層を、
基板中央部の素子形成領域、基板周縁部の静電接合領
域、前記各領域を電気的に接続するリード領域の3つの
領域を残し、基板表面からエッチング除去する。
そして、前記素子形成領域及びリード領域を拡散処理す
ることにより、これらの領域をピエゾ抵抗素子及びリー
ド部として形成する。このとき、前記拡散処理により、
ピエゾ抵抗素子、リード部、前記静電接合用半導体エピ
タキシャル層には絶縁保護膜が形成される。
本発明の特徴的事項は、このようにして、静電接合用半
導体エピタキシャル層とピエゾ抵抗素子とをリード部を
介して電気的に接続し、ピエゾ抵抗素子用電極を静電接
合用の電極として兼用することにある。
このようにすることにより、本発明によれば、従来装置
のような特別な静電接合用電極を必要としないため、基
板の大きさを支持体の接合面の大きさとほぼ同一に形成
し、装置全体を小型軽量なものとすることが可能とな
る。
また、本発明者らは、静電接合用半導体エピタキシャル
層上に被覆形成された絶縁保護膜を、静電接合に先立っ
て予め除去しておく必要があるか否かの検討を行った。
この検討の結果、前記絶縁保護膜を除去しなくても、静
電接合時の接合条件、特に電界強度を調整することによ
り、基板と支持体との静電接合を良好に行うことができ
ることが確認された。
従って、本発明の方法によれば、静電接合用半導体エピ
タキシャル層上に被覆された絶縁保護膜を除去すること
なく、サファイア基板と支持体とを、半導体エピタキシ
ャル層を介して良好に静電接合することができ、従来技
術に比しその製造工程の大幅に簡素化することができ
る。
本発明と従来技術との比較 次に、本発明の理解を更に確実なものとするために、本
発明の作用を従来技術に対比して説明する。
(イ)第1に、従来技術では、サファイア基板の一方の
表面にピエゾ抵抗素子が形成され、他方の表面側に支持
体が静電接合されている。このため、高温高圧で腐蝕性
として作用する圧力媒体は、支持体に設けた圧力導入孔
側からサファイア基板に印加されることになる。
この結果、このような従来技術では支持体とサファイア
基板との接合部に剥離力が作用し、半導体圧力変換器の
耐圧が低いものとなる。
これに対し本発明は、サファイア基板との同一表面上に
ピエゾ抵抗素子と静電接合用半導体エピタキシャル層を
形成しているため、ピエゾ抵抗素子は基板と支持体との
接合部側に設けられることとなる。
従って、高温高圧で腐蝕性として作用する圧力媒体は、
サファイア基板の他の一方の表面に印加されることにな
るため、前記静電接合部には従来技術のように剥離力が
生ずることなく、半導体圧力変換器の性能、特に耐圧を
著しく向上可能であることが理解される。
(ロ)第2に、従来技術ではサファイア基板の表面上に
静電接合用半導体エピタキシャル層を均一に設けている
ため、基板と支持体とを静電接合した場合に、サファイ
ア基板は支持体の圧力導入孔と対向する領域がそのまま
ダイアフラムとして機能することとなる。
従って基板中央部にピエゾ抵抗素子を予め配置したとし
ても圧力導入孔の口径にばらつきがあったり、また基板
と支持体との静電接合時に若干の位置合せに誤差がある
と、半導体圧力変換器の電圧が出力にばらつきが発生す
るという問題があった。
これに対し本発明では、半導体エピタキシャル層の表面
上にそのダイアフラム領域を囲むよう静電接合用半導体
エピタキシャル層を被覆形成しているため、ダイアフラ
ム領域の表面半導体エピタキシャル層の表面との間に段
差が生ずることになる。
従って、この半導体エピタキシャル層の口径より幾分小
さな口径の圧力導入孔を有する支持体を用いることによ
り、圧力導入孔の口径に多少のばらつきがあっても、ま
た静電接合時に基板と支持体との間に多少の位置合せ誤
差が生じても、半導体エピタキシャル層により囲まれた
ダイアフラム領域が感圧部として確実に作動することに
なり、前記従来技術の問題点を良好に解決することがで
きる。
(ハ)第3に、従来技術では、サファイア基板と支持体
の静電接合に先立って、静電接合用半導体エピタキシャ
ル層上の絶縁保護膜の除去を行っていた。
これに対し本発明では、静電接合条件、特に電界強度を
調整することにより、半導体圧力変換器の製造を、その
絶縁保護膜を除去する工程を省略した簡単な工程で行う
ことが可能となる。
(ニ)第4に、従来技術では、サファイア基板の表面上
に形成された静電接合用半導体エピタキシャル層上に、
静電接合専用の電極を設ける必要があり、特にその電極
は支持体との接合面外周部に設けられていた。従って、
サファイア基板を支持体の接合面より大きくする必要が
あり、装置全体が大型で取扱性が良くないものとなると
いう問題があった。
これに対し、本発明では、サファイア基板の周縁部側に
設けられた静電接合用半導体エピタキシャル層をそのダ
イアフラム領域に設けられたピエゾ抵抗素子とリード部
を介して電気的に導通させ、ピエゾ抵抗素子用電極を静
電接合用電極として兼用している。従って、サファイア
基板を支持体の接合面とほぼ同程度まで小さくすること
ができ、装置全体を小型かつ取扱いの良いものとするこ
とができる。
[発明の効果] 以上説明したように、本発明によれば、印加圧力を精度
良く測定することができ、しかも印加圧力に対し充分な
破壊耐圧を有する半導体圧力変換器を提供することがで
きる。
更に、本発明の方法によれば、その製造工程を簡単化し
しかも小型で特性のばらつきのない優れた特性の半導体
圧力変換器を製造することが可能となる。
[実施例] 次に本発明の好適な実施例を図面に基づき説明する。
第1実施例 第1図及び第2図には本発明に係る半導体圧力変換器の
好適な一例が示されており、第1図はその側断面の概略
説明図を表し、第2図はこの圧力変換器を底面側から見
た場合の概略説明図を表している。
本発明の圧力変換器は、サファイア基板10と支持体1
2とを静電接合することにより形成され、基板10のダ
イアフラム領域100の両面側から基準圧力Ps 及び測
定圧力Pを印加し、このとき発生するピエゾ抵抗素子1
6の抵抗変化に基づいて圧力Pの測定を行うよう形成さ
れている。
実施例において、前記サファイア基板10は、厚さ25
0μm、その表面が4×4mm2の正方形状に形成されて
おり、また、支持体12は硼硅酸ガラスを用いて形成さ
れている。
そして、前記サファイア基板10の一方の表面10a上
にはピエゾ抵抗素子16及び静電接合用半導体エピキシ
ャル層40が設けられている。
実施例のピエゾ抵抗素子16は、ダイアフラム領域10
0の表面中央に設けられ4個のピエゾ抵抗素子から成
り、各素子16は拡散リード部17を介して互いに接続
されホイートストーンブリッジを構成している。そし
て、これら各ピエゾ抵抗素子16は、表面不純物濃度が
約1×1020/cmとなるようボロンを拡散形成したシ
リコンの半導体エピタキシャル層を用い、約1.5μm
の厚さに形成されている。
また、前記静電接合用半導体エピタキシャル層40は、
サファイア基板10の表面10a上にそのダイアフラム
領域100を取囲むよう被覆形成されている。ここにお
いて、この半導体エピタキシャル層40は、エピタキシ
ャル層表面とダイアフラム領域表面との間に段差が生ず
るよう所定の厚みをもって形成する必要があり、このた
め約1.5μmの膜厚に形成されている。
そして、この半導体エピタキシャル層40は、基板10
の表面上に設けられたリード部42を介してピエゾ抵抗
素子16に電気的に接続され、ピエゾ抵抗素子16用電
極を、基板10と支持体12との静電接合時における静
電接合電極として兼用できるように形成されている。
また、前記ピエゾ抵抗素子16を形成する際に行う拡散
処理により、このピエゾ抵抗素子16及び静電接合用半
導体エピタキシャル層40の表面には膜厚約3000Å
のSiOから成る絶縁保護膜44が被覆形成されてい
る。
そして、各ピエゾ抵抗素子16の抵抗変化を電圧出力と
して取出すために、基板10の表面所定位置にアルミ電
極48が設けられ、この電極48は、絶縁保護膜22に
形成された開口部46を介して対応するピエゾ抵抗素子
16に接続されている。実施例において、このアルミ電
極48はEB蒸着法により厚さ1.5μmに形成されて
いる。
このアルミ電極48には、ピエゾ抵抗素子16よりの電
気的信号の入出力を目的としてアルミリード50の一端
側が超音波ボンディングにより接続されている。
ところで、前記静電接合用半導体エピタキシャル層40
は、その口径Rが支持体12の圧力導入孔14の口径
Rより幾分大きめに形成され、具体的には基板10のダ
イアフラム領域100が直径2mmの円形となるよう形
成されている。
本実施例において、前記サファイア基板10と支持体1
2との静電接合は、両部材を第1図に示すように位置合
せし、これを350゜C前後まで昇温加熱した後、外部
電源30から約1000Vの直流電圧を印加することに
より行われた。
このとき、半導体エピタキシャル層40上に被覆される
絶縁保護膜44は、前述したように3000Å程度の厚
みを有する。このため、その電界強度は3×10V/μ
mと十分大きな値となり、基板10及び支持体12は充
分な強度をもって静電接合されることになる。
なお、実施例の半導体圧力変換器は、前述したように4
×4mm基板10を用い、しかも各ピエゾ抵抗素子1
6を定電流作動させ、測定温度の変動に対し電圧出力の
変動を自己制御する小型の自己感度補償タイプのものと
して形成されている。
本実施例は以上の構成から成り次にその作用を説明す
る。
本実施例の半導体圧力変換器は、ピエゾ抵抗素子16が
基板10の圧力導入孔側表面10aに設けられている。
従って、サファイア器板10のダイアフラム領域100
には、圧力導入孔側表面10aに基準圧力Ps が印加さ
れ、その反対側表面10bに測定圧力Pが印加されるこ
とになる。
このように、本発明においては、サファイア基板10の
他の一方の表面10b側から測定圧力Pが印加されるた
め、仮にこの測定圧力Pの圧力媒体が高温、高圧で腐蝕
性のものとして作用する場合であっても、基板10と支
持体12との静電接合部に剥離力が生ずることなく、そ
の耐圧が著しく向上することが理解される。
また、本実施例の半導体圧力変換器は、サファイア基板
10の表面10a上にそのダイアフラム領域100を囲
むよう静電接合用半導体エピタキシャル層40が形成さ
れている。そして、この半導体エピタキシャル層40の
静電接合面と、その内側のサファイア基板10の表面1
0aとの間には一定の厚みをもって段差が存在する。
従って、実施例のようにこの半導体エピタキシャル層4
0の口径Rを圧力導入孔14の口径Rよりわずかに大
きく形成することにより、基板10と支持体12との静
電接合時に若干の位置合せ誤差があったとしても、サフ
ァイア基板10のダイアフラム領域100はこの半導体
エピタキシャル層40により安定に支持され、確実に感
圧部とし機能することになる。
このようにして、本実施例によれば、静電接合時におけ
る基板10と支持体12との位置合せ誤差の影響を受け
ることなく、かつ性能のばらつきが少なく、しかも信頼
性の高い半導体圧力変換器を得ることが可能となる。
また、実施例の半導体変換器は、静電接合用半導体エピ
タキシャル層40とピエゾ抵抗素子16とがリード部4
2を介して電気的に接続され、ピエゾ抵抗素子16用電
極48を、静電接合用の電極としても兼用している。
従って、従来のように特別な静電接合用の電極を必要と
しないため、基板10の大きさを支持体12の接合面の
大きさとほぼ同一に形成することができ、装置全体の取
り扱いが容易で、しかも小型軽量のものとすることが可
能となる。
なお、前記実施例においては、基板10の両面側から圧
力を印加する差圧タイプの圧力変換器を例に採り説明し
たが、本発明はこれに限らず、圧力導入孔14側を真空
とし、基板10の表面10b側から追加する圧力を測定
する絶対圧タイプの圧力変換器に対しても有効であるこ
とは言うまでもない。
製造方法 第3図には、前記第1実施例に係る半導体圧力変換器の
製造方法の好適な一例が示されている。
なお、前記第1図及び第2図に示す半導体圧力変換器と
対応する部材には同一符号を付しその説明は省略する。
まず、第3図(1)に示すように、サファイア基板10
の主表面上に半導体エピタキシャル層200を成長させ
る。
なお、本実施例では、サファイア基板10の片面にのみ
半導体エピタキシャル層200を成長する場合を例に採
り説明するが、本発明はこれに限らず基板10の両面に
半導体エピタキシャル層200を成長させ、これら両面
のいずれか一方を主表面として用いることも可能であ
る。
次に、第3図(2)に示すように、基板10の主表面上
に形成された半導体エピタキシャル層200を、基板中
央の素子形成領域200a、基板周縁の静電接合領域2
00b、これらの両領域200a及び200bを電気的
に接続するリード領域200cを残して、基板表面から
全てエッチング除去する。
このとき前記静電接合領域200bは、基板10のダイ
アフラム領域100を取囲むよう形成する必要がある。
また、この静電接合領域200bは、その口径Rを支
持体12の圧力導入孔14の口径Rよりいくらか大きく
形成する必要がある。
次に、第3図(3)に示すように、静電接合領域200
bを除いた各領域200a,200cを拡散処理し、素
子形成領域200aをP型のピエゾ抵抗素子16及び拡
散リード部17として形成し、またリード領域200c
を半導体エピタキシャル層リード部42として形成す
る。
このとき、残された静電接合領域200bは、後工程に
おいて、前記第1実施例の静電接合用半導体エピタキシ
ャル層40として用いられることとなる。
また、このような拡散処理を行うと、ピエゾ抵抗素子1
6、拡散リード部17、静電接合用半導体エピタキシャ
ル層40及びリード部42上にはSiOより成る同質
の絶縁保護膜44が被覆形成される。
次に、第3図(4)に示すように、ピエゾ抵抗素子16
よりの電気的信号の入出力を行うため、前記絶縁保護膜
44を選択的に除去し開口部46を形成する。
次に、第3図(5)に示すように、絶縁保護膜44を介
してピエゾ抵抗素子16上にアルミを蒸着し電極48を
設ける。このアルミ電極48は、開口部46を介してピ
エゾ抵抗素子16と電気的に接続されることになる。な
お、この電極48として、前記アルミに代え、耐薬品性
に優れた金属、例えば金などを使用した場合には、より
信頼性の高い半導体圧力変換器を形成可能であることは
言うまでもない。
次に、第3図(6)に示すように、電極48へ電圧出力
取出し用のアルミリード50をボンディングする。
ここにおいて、ピエゾ抵抗素子16用電極48及びアル
ミリード50は、従来の半導体圧力変換器では電圧出力
取出しのみを目的として形成されていた。これに対し、
本発明では、ピエゾ抵抗素子16の拡散リード17と静
電接合用半導体エピタキシャル層40とがリード部42
を介して電気的に導通されていることから、サファイア
基板10と支持体12との静電接合用の電極又はリード
として兼用することができる。
次に、第3図(7)に示すように、静電接合用半導体エ
ピタキシャル層40上に被覆形成された絶縁保護膜44
を除去することなく、サファイア基板10と支持体12
とを位置合せ当接し、これを350゜C前後に昇温加熱
する。
これに続いて、アルミリード50を陽極とし、支持体1
2の底面に図示しない陰極電極板を配置して、電源30
から約1000Vの電流電圧を5分間通電する。このよ
うにすることにより、基板10と支持体12とは絶縁保
護膜44及び半導体エピタキシャル層40を介して良好
に静電接合されることになる。
特に、本発明によれば、サファイア基板10の半導体エ
ピタキシャル層40により囲まれる領域が、測定圧力に
対しダイアフラム領域100として良好に作用する。こ
のため、静電接合時に基板10と支持体12との間に若
干の位置合せ誤差があったとしても、ピエゾ抵抗素子1
6から出力される電圧にばらつきがなく、信頼性の高い
半導体圧力変換器を提供することができる。
更に、本発明によれば、静電接合用半導体エピタキシャ
ル層40上に被覆された絶縁保護膜44を除去すること
なく、静電接合を行うことができるため、従来技術に比
しその製造工程を極めて簡素化することができる。
その他の実施例 また、前記第1実施例においては、ピエゾ抵抗素子16
及び半導体エピタキシャル層40をリード部42を介し
て電気的に接続し、ピエゾ抵抗素子16用電極を支持体
との静電接合用電極として兼用した。
しかし、本発明はこれに限らず、例えば第4図に示すよ
うに、ダイアフラム領域100の第1の表面10a上に
静電接合用の電極52を設け、該電極52と半導体エピ
タキシャル層40を同様にしてリード部42を介して電
気的に接続してもよい。
ただし、このようにすると、前記第1実施例に比しその
製造工程が複雑化し作業性が若干損われることは言うま
でもない。
また、これ以外にも、例えば第5図に2点鎖線で示すよ
うに、サファイア基板10を支持体12の接合面12a
より幅広に形成し、支持体12の接合面外周側に位置し
て静電接合専用の電極を設けてもよい。この場合には、
基板10と支持体12との静電接合を行った後、静電接
合用電極が設けられた基板10の外周部を切断除去すれ
ばよい。ただしこのようにすると、前記第1実施例に比
し半導体圧力変換器の製造工程が複雑化することは避け
られない。
【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は本発明に係る半導体圧力変換器の好
適な第1実施例を示す説明図、 第3図は本発明に係る半導体圧力変換器の製造方法の好
適な一例を示す説明図、 第4図及び第5図は本発明の半導体圧力変換器の他の実
施例を示す説明図、 第6図は従来の半導体圧力変換器の一例を示す説明図で
ある。 10……サファイア基板 10a……第1の表面 10b……第2の表面 12……支持体 14……圧力導入孔 16……ピエゾ抵抗素子 40……静電接合用半導体エピタキシャル層 42……リード部 44……絶縁保護膜 48……アルミ電極 100……ダイアフラム領域 200……半導体エピタキシャル層 200a……素子形成領域 200b……静電接合領域 200c……リード領域
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 塚田 厚志 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 川口 一義 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】サファイア基板と、 このサファイア基板の一方の表面に形成された静電接合
    用半導体エピタキシャル層と、 前記サファイア基板のダイアフラム領域を囲む口径をも
    つ圧力導入孔を有し、前記サファイア基板の一方の表面
    に前記静電接合用半導体エピタキシャル層を介して静電
    接合される支持体と、 前記ダイアフラム領域に形成されたピエゾ抵抗素子と、 を含み、前記ダイアフラム領域に印加される圧力を前記
    ピエゾ抵抗素子を用いて測定する半導体圧力変換器であ
    って、 前記静電接合用半導体エピタキシャル層は、前記ダイア
    フラム領域を囲むとともに、前記支持体の圧力導入孔の
    口径よりもやや大きめの口径をもって、前記サファイア
    基板の一方の表面の周縁に設け、 前記ピエゾ抵抗素子は、不純物拡散処理がされた半導体
    エピタキシャル層で形成され、前記サファイア基板の一
    方の表面のダイアフラム領域内に前記静電接合用半導体
    エピタキシャル層と離隔して設け、 前記静電接合用半導体エピタキシャル層とピエゾ抵抗素
    子との間に夫々の間を電気的に接続するリード部を設
    け、 前記リード部に電気的に接続され、静電接合用とピエゾ
    抵抗素子用とに兼用される電極を設け、 測定圧力は前記サファイア基板の他の一方の表面のダイ
    アフラム領域から印加され、圧力測定が行われる ことを特徴とする半導体圧力変換器。
  2. 【請求項2】サファイア基板の少なくとも一方の表面上
    に半導体エピタキシャル層を被覆形成するエピタキシャ
    ル層形成工程と、 この半導体エピタキシャル層を、前記サファイア基板中
    央の素子形成領域、サファイア基板周縁の静電接合領
    域、これら両領域を電気的に接続するリード領域を残し
    てエッチング除去するエッチング処理工程と、 前記素子形成領域及びリード領域に不純物拡散処理を行
    いピエゾ抵抗素子及びリード部を形成するとともに、ピ
    エゾ抵抗素子、リード部及び静電接合領域として残され
    た静電接合用半導体エピタキシャル層上に絶縁保護膜を
    形成する拡散処理工程と、 前記リード部上の絶縁保護膜に開口部を形成する開口部
    形成工程と、 前記開口部を通して前記リード部に電気的に接続され、
    静電接合用とピエゾ抵抗素子用とに兼用される電極を形
    成する電極形成工程と、 圧力導入孔の口径が前記静電接合用半導体エピタキシャ
    ル層の素子形成領域を囲む口径より小さな支持体と前記
    サファイア基板とが前記絶縁保護膜及び静電接合用半導
    体エピタキシャル層を介して位置合せ当接し、その後前
    記電極と支持体との間に静電接合電圧を印加し、前記支
    持体をサファイア基板に静電接合する静電接合工程と、 を含み、 前記サファイア基板の静電接合用半導体エピタキシャル
    層により囲まれた領域をダイアフラム領域とし、サファ
    イア基板の他の一方の表面側から印加される測定圧力を
    ピエゾ抵抗素子の抵抗変化として測定する、半導体圧力
    変換器を製造する ことを特徴とする半導体圧力変換器の製造方法。
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