JP7562368B2 - 密封装置 - Google Patents

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Description

本発明は、転がり軸受の内部を密封する密封装置に関する。
鉄道車両またはトラック、バスなどの大型自動車に使用される転がり軸受は、大きな荷重を受け、多量のダストにさらされ、大幅な温度変化の影響を受ける。したがって、転がり軸受は、しばしば補修する必要性に迫られる。特に鉄道車両の周囲には、鉄道の摩耗により発生した多量の鉄粉が存在する。
特許文献1は、鉄道車両での使用に適した転がり軸受の内部を密封する密封装置を開示する。この密封装置は、転がり軸受の補修に伴って、交換するのに適している。具体的には、この密封装置は、転がり軸受から密封装置を引っ張り出す治具の先端で捕捉される凹部を有する。
国際公開第2019/074042号
上記のタイプの密封装置について、凹部へ治具を簡単に挿入することができるのが望ましい。
そこで、本発明は、転がり軸受から密封装置を引っ張り出す治具で簡単に捕捉することができる密封装置を提供する。
本発明のある態様においては、転がり軸受の相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置が提供される。この密封装置は、前記内側部材に固定される環状の内側シール部材と、前記外側部材の孔の内面に固定される環状の外側シール部材とを備える。前記外側シール部材は、剛性材料から形成された剛性部と、前記剛性部に固定された弾性材料から形成された弾性部とを備える。前記弾性部は、前記内側シール部材に向けて延びる少なくとも1つのリップを有する。前記剛性部は、前記外側部材の孔の内面に嵌め込まれる円筒部分と、前記円筒部分の大気側の端部から径方向内側に向けて延びる円環部分と、前記円環部分から大気側に向けて軸線方向に突出する複数の軸線方向突出部分と、前記軸線方向突出部分の少なくとも1つに形成され、前記外側シール部材を前記外側部材から引っ張り出す治具の先端を引っ掛け可能な少なくとも1つのフック部を有する。前記外側シール部材は、さらに、前記フック部の径方向外側に位置し、前記治具の前記先端を嵌め入れることが可能な少なくとも1つの案内凹部を有する。
この態様においては、治具の先端を引っ掛け可能なフック部の径方向外側に、治具の先端を嵌め入れることが可能な案内凹部が設けられている。したがって、治具の先端を案内凹部に嵌め入れて、さらに径方向内側に移動させることによって、治具の先端を剛性部のフック部に簡単かつ円滑に引っ掛けることができる。すなわち、案内凹部は、治具をフック部に対して容易に位置決めすることを可能とし、治具をフック部に円滑に引っ掛けることができるように案内する。このため作業効率が向上する。
本発明の実施形態に係る密封装置の断面図である。 実施形態に係る密封装置の他の断面を示す断面図である。 密封装置の外側シール部材の剛性部の断面図である。 剛性部の斜視図である。 密封装置の外側シール部材の平面図である。 転がり軸受から取り外される最初の段階の実施形態に係る密封装置の断面図である。 図6の次の段階の密封装置の断面図である。 図7の次の段階の密封装置の断面図である。 本発明の他の実施形態に係る密封装置の断面図である。
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
図1および図2は、本発明の実施形態に係る密封装置1が使用される転がり軸受2の一例である鉄道車両の車軸の軸受を示す。但し、本発明の用途は、鉄道車両の軸受には限定されず、トラック、バスなどの大型自動車の車軸の軸受にも本発明は適用可能である。また、図示の転がり軸受2は、RCT(Rotating End Cap Tapered Roller)軸受であるが、本発明の用途は、RCT軸受には限定されず、他の種類の転動体を有する、RCC(Rotating End Cap Cylindrical Roller)軸受、玉軸受、針軸受などの他の転がり軸受にも本発明は適用可能である。
転がり軸受2は、車軸4が内部に挿入される内輪(内側部材)6と、内輪6の外側に配置された外輪(外側部材)8と、内輪6と外輪8の間に1列に配置された複数のローラー10と、ローラー10を定位置に保持する保持器14とを有する。外輪8が固定されている一方で、内輪6は、車軸4の回転に伴って回転する。保持器14は外輪8に固定されている。
密封装置1は、相対的に回転する内輪6と外輪8との間に配置され、内輪6と外輪8との間の間隙を封止する。密封装置1の作用により、転がり軸受2の内部からのグリース、すなわち潤滑剤の流出が防止または低減されるとともに、外部から転がり軸受2の内部への異物(水(泥水または塩水を含む)および/またはダスト(鉄粉を含む))の流入が防止または低減される。図1および図2において、矢印Dは、外部からの異物の流れの方向の例を示す。
図1および図2においては、車軸4に対する左側部分のみが示されているが、密封装置1および転がり軸受2は回転対称な形状を有する。図1および図2の上側は、軸受内部側Bであり、下側は大気側Aである。
転がり軸受2には、軸受内部側Bを挟んで密封装置1の反対側にも密封装置1と類似の密封装置が設けられる。
密封装置1は、環状の内側シール部材20と、環状の外側シール部材30とを備える。内側シール部材20は、内輪6に固定される。外側シール部材30は、外輪8の孔8Aの内面に固定され、外側シール部材30は内側シール部材20に摺動可能に接触する。
内側シール部材20は、剛性材料、例えば金属から形成されている。内側シール部材20は、スリーブ22と、フランジ24と、外側スリーブ26とを備える。スリーブ22は内輪6に固定される。固定の方式は、例えば締まり嵌めであってよい。フランジ24は、スリーブ22の大気側の端部に一体に連結されて径方向外側に広がる。外側スリーブ26は、フランジ24の外端縁から軸受内部側Bに向けて延びる。外側スリーブ26はスリーブ22と同軸である。
外側シール部材30は、剛性材料、例えば金属から形成された剛性部31と、弾性材料、例えばエラストマーから形成された弾性部40とを備える二重構造を有する。剛性部31は弾性部40を補強する。
剛性部31は、円筒部分32と、円環部分33と、複数の軸線方向突出部分34と、複数の内側延長部分35とを有する。
円筒部分32は、外輪8の孔8Aに締まり嵌めによって嵌め込まれ、孔8Aの内面に固定される。円筒部分32の軸受内部側Bの端部32aは、径方向外側に広がったフックとして形成されている。孔8Aには周溝すなわち凹部8Bが形成されており、円筒部分32の端部32aは凹部8Bに嵌め込まれる。
円環部分33は、円筒部分32の大気側Aの端部に一体に連結されて、径方向内側に向けて延びる。円環部分33は、外側シール部材30の軸線方向に垂直な平面内に延びている。
複数の軸線方向突出部分34は、円環部分33から大気側Aに向けて外側シール部材30の軸線方向に突出する。図3および図4に示すように、軸線方向突出部分34は、円環部分33のうち周方向に角間隔をおいて離れた複数の箇所が折り曲げられた形状を有する。また、円環部分33のうち軸線方向突出部分34が形成されていない複数の箇所は、円環部分33から径方向内側に向けて延びた複数の内側延長部分35に連続している。好ましくは、軸線方向突出部分34は等角間隔をおいて配置され、内側延長部分35も等角間隔をおいて配置されるが、これらの角間隔が等しくなくてもよい。この実施形態では、8つの軸線方向突出部分34および8つの内側延長部分35が設けられているが、軸線方向突出部分34の個数および内側延長部分35の個数は、2以上の限定されない数であってよい。
少なくとも1つの軸線方向突出部分34には貫通孔36が形成されている。後述するように、貫通孔36は、外側シール部材30を外輪8から引っ張り出すために使用される。この実施形態では、貫通孔36は、軸線方向突出部分34の各々に形成されている。
この実施形態では、貫通孔36は、軸線方向突出部分34から円環部分33まで延びている。つまり、貫通孔36は、剛性部31の径方向において、軸線方向突出部分34を貫通し、剛性部31の軸線方向において、円環部分33を貫通する。
貫通孔36が設けられていることにより、軸線方向突出部分34は、貫通孔36の両側の側部34aと、側部34aを連結する連結部(フック部)34bに区分することができる。連結部34bには、外側シール部材30を外輪8から引っ張り出すために治具の先端が引っ掛けられる。
図5は、密封装置1の外側シール部材30の平面図である。図1は図5のI-I線断面を示し、図2は図5のII-II線断面を示す。
図1、図2および図5に示すように、弾性部40は、円環部分41、筒壁部分42、ブロック部43、シールリップ44、ダストリップ45、および径方向突起46を有する。
円環部分41は、剛性部31の円環部分33を被覆する。剛性部31の円環部分33には貫通孔36が形成されているが、円環部分41はこれらの貫通孔36を閉塞する。
筒壁部分42は、円筒形状を有しており、円環部分41から内側シール部材20のフランジ24に向けて延びる。筒壁部分42は、剛性部31の複数の軸線方向突出部分34に固定されている。周方向に連続する円筒状の筒壁部分42には、周方向に間欠的に配置された複数の軸線方向突出部分34の全体が埋設されており、軸線方向突出部分34は筒壁部分42を補強する。
ブロック部43は、筒壁部分42の径方向内側に配置され、円環部分41の内端に形成された厚さが大きい円環状の部分である。ブロック部43は、剛性部31の複数の内側延長部分35に固定されている。周方向に連続する円環状のブロック部43には、周方向に間欠的に配置された複数の内側延長部分35の全体が埋設されており、内側延長部分35はブロック部43を補強する。
シールリップ44は、ブロック部43から延びて、内側シール部材20のスリーブ22の外周面に摺動可能に接触する厚さが小さい環である。シールリップ44は、軸受内部側Bから大気側Aへのグリースの漏れを防止または低減する。シールリップ44は、ブロック部43から径方向内側に向けて延びる基端部分44aと、基端部分44aから軸受内部側Bかつ径方向内側に向けて延びる先端部分44bとを有しており、先端部分44bが内側シール部材20のスリーブ22の外周面に全周にわたって摺動可能に接触する。
ダストリップ45は、ブロック部43から内側シール部材20のフランジ24に向けて延びる厚さが小さい環である。ダストリップ45は、大気側Aから軸受内部側Bへの異物の侵入を防止または低減する。ダストリップ45は、ブロック部43から大気側Aかつ径方向内側に向けて延びる基端部分45aと、基端部分45aから大気側Aかつ径方向外側に向けて延びる先端部分45bとを有する。この実施形態では、ダストリップ45はフランジ24に接触していないが、ダストリップ45の先端部分45bが内側シール部材20のフランジ24に摺動可能に接触してもよい。
径方向突起46は、ブロック部43の内端縁から径方向内側に向けて突出する。径方向突起46はブロック部43の内端縁の全周にわたって設けられている。径方向突起46は、径方向外側が広く、内側が狭い台形の断面を有する。径方向突起46は、内側シール部材20とは接触せず、径方向突起46と内側シール部材20のスリーブ22との間には、円環状の小さい間隙48が設けられる。間隙48は、軸受内部側Bから大気側Aへのグリースの流れを阻害し、シールリップ44に到達するグリースの量を低減することによって、シールリップ44の封止性能を補助する。
外側シール部材30の剛性部31に間欠的に設けられた複数の軸線方向突出部分34および弾性部40の筒壁部分42は、内側シール部材20のフランジ24に向けて延びている。筒壁部分42は、フランジ24には接触せず、筒壁部分42とフランジ24との間には間隙49が設けられている。
内側シール部材20の外側スリーブ26は、筒壁部分42の外側に配置されている。筒壁部分42は外側スリーブ26には接触せず、筒壁部分42と外側スリーブ26との間には間隙50が設けられている。
外部からの異物が転がり軸受2に侵入しようとしても、多くの異物が、外側シール部材30の筒壁部分42、内側シール部材20の外側スリーブ26、または内側シール部材20のフランジ24によって跳ね返される。筒壁部分42と外側スリーブ26との間の間隙50、および筒壁部分42とフランジ24との間の間隙49を通過した異物がダストリップ45に到達するが、これらの間隙49,50を小さく設定することによって、ダストリップ45に到達する異物の量を削減することができる。筒壁部分42は、これに埋設された複数の軸線方向突出部分34で補強されているので、異物から受ける力が強くても、力に耐えることができる。
上記の通り、剛性部31の軸線方向突出部分34と円環部分33には、貫通孔36が形成されている。しかし、密封装置1は、使用時においては密封性を有しなければならない。弾性部40は、剛性部31の貫通孔36を閉塞するように、剛性部31の円環部分33と軸線方向突出部分34を被覆する。具体的には、円環部分41は、軸受内部側Bから貫通孔36を閉塞し、筒壁部分42は軸線方向突出部分34の内周面、外周面および端面を覆うことにより、大気側Aから貫通孔36を閉塞する。
貫通孔36を閉塞する円環部分41の大気側Aの面には、少なくとも1つの案内凹部52が形成されている。案内凹部52は、少なくとも1つの連結部(フック部)34bの径方向外側に位置する。案内凹部52には、外側シール部材30を外輪8から引っ張り出すために連結部34bに引っ掛けられる治具の先端を嵌め入れることが可能である。
この実施形態では、複数の連結部34bが複数の軸線方向突出部分34にそれぞれ形成され、これらの連結部34bの径方向外側に案内凹部52がそれぞれ配置されている。
貫通孔36を閉塞する円環部分41と筒壁部分42の軸受内部側B側の面には、貫通しない少なくとも1つの穴54が形成されている。剛性部31の少なくとも1つの貫通孔36の内部に、弾性部40の少なくとも1つの穴54が配置されている。この実施形態では、剛性部31の複数の貫通孔36の内部に、弾性部40の複数の穴54がそれぞれ配置されている。
穴54の側壁54aは、軸線方向突出部分34の側部34aの貫通孔36側の面を覆う。穴54の底壁54bは、軸線方向突出部分34の連結部34bの貫通孔36側の面を覆う。このようにして、貫通孔36が弾性部40で閉塞されており、貫通孔36の内部に、弾性部40の一方の面に形成された穴54と、弾性部40の他方の面に形成された案内凹部52が配置されている。弾性部40の穴54と案内凹部52は弾性部40を貫通していない(例えば、案内凹部52と穴54の間には、非常に薄い壁56が設けられている)。したがって、密封装置1は使用時においては密封性を有し、大気側Aと軸受内部側Bを遮断する。
転がり軸受2の補修に伴って、密封装置1を交換する必要性がある。図6から図8を参照して、密封装置1の取り外し作業を説明する。
まず、少なくとも1つの治具60を準備する。治具60は、長尺なハンドル部60aと、ハンドル部60aに対して屈曲した先端部60bとを有する。作業者はハンドル部60aを握る。
そして、図6に示すように、治具60の先端部60bを、密封装置1の外側シール部材30の案内凹部52に嵌め入れる。この時、先端部60bをハンドル部60aに対して、密封装置1の径方向内側に向ける。次に、矢印で示すように、先端部60bを案内凹部52に対して摺動させ、治具60を密封装置1の径方向内側に移動させる。
そして、図7に示すように、治具60の先端部60bで、案内凹部52と穴54の間の壁56を突き破ることによって、治具60の先端部60bを、外側シール部材30の剛性部31の貫通孔36のうち軸線方向突出部分34の側部34aと連結部(フック部)34bで囲まれた部分に挿入することができる。つまり、治具60の先端部60bを、外側シール部材30の連結部34bに簡単かつ円滑に引っ掛けることができる。
この状態で、治具60により、外側シール部材30に対して径方向内側に向かう力Fを与えて、軸線方向に大気側Aに向かう力Sを与える。これによって、外側シール部材30を径方向に圧縮し、大気側Aに移動させることによって、外輪8の孔8Aの内面から外側シール部材30の剛性部31の円筒部分32を部分的に離す。特に、孔8Aの凹部8Bから円筒部分32の端部32aを取り外す。
次に、図8に示すように、外側シール部材30の連結部34bに先端部60bが引っ掛けられた治具60を大気側Aに引くことにより、外側シール部材30を軸線方向に移動させて、外側シール部材30を転がり軸受2の外輪8の孔8Aから抜き出すことができる。一旦、外輪8の孔8Aの内面から外側シール部材30の剛性部31の円筒部分32を部分的に離せば、外側シール部材30の弾性変形を利用して、外側シール部材30を転がり軸受2の外輪8の孔8Aから抜き出すのは容易である。
外側シール部材30を抜き出すことと同時に、治具60の先端部60bを内側シール部材20の外側スリーブ26に引っ掛けて、内側シール部材20を大気側Aに引くことにより、内側シール部材20を軸線方向に移動させて、内側シール部材20を内輪6から取り外すことができる。但し、外側シール部材30と内側シール部材20を同時に取り外すことは必須ではなく、内側シール部材20を内輪6から引き抜いた後に、外側シール部材30を外輪8から引き抜いてもよい。
外側シール部材30の取り外し作業は、1つの治具60だけを使用して行なってもよい。但し、複数の治具60の先端部60bを複数の連結部(フック部)34bに引っ掛けて、外側シール部材30を外輪8から取り外してもよい。
この実施形態に係る外側シール部材30においては、治具60の先端部60bを引っ掛け可能な連結部(フック部)34bの径方向外側に、治具60の先端部60bを嵌め入れることが可能な案内凹部52が設けられている。したがって、治具60の先端部60bを案内凹部52に嵌め入れて、さらに径方向内側に移動させることによって、治具60の先端部60bを剛性部31の連結部34bに簡単かつ円滑に引っ掛けることができる。すなわち、案内凹部52は、治具60を連結部34bに対して容易に位置決めすることを可能とし、治具60を連結部34bに円滑に引っ掛けることができるように案内する。このため作業効率が向上する。また、案内凹部52と穴54の間の壁56を治具60の先端部60bで突き破ることによって、治具60の先端部60bを剛性部31の連結部34bに簡単かつ円滑に引っ掛けることができる。
図9は、本発明の他の実施形態に係る密封装置61の断面図である。図9において、既に説明した構成要素を示すため、同一の符号が使用され、それらの構成要素については詳細には説明しない。
密封装置61の外側シール部材30では、剛性部31の少なくとも1つの軸線方向突出部分34に、貫通孔66が形成されている。上記の貫通孔36と異なり、貫通孔66は円環部分33には延びていない。貫通孔66が設けられていることにより、軸線方向突出部分34は、貫通孔66の両側の側部34aと、側部34aを連結する連結部(フック部)34bに区分することができる。連結部34bには、外側シール部材30を外輪8から引っ張り出すために治具60の先端部60bが引っ掛けられる。
軸線方向突出部分34に形成された貫通孔66は、弾性部40の筒壁部分42で塞がれている。筒壁部分42の貫通孔66に対応する位置には、凹部67が形成されている。凹部67は、治具60の先端部60bを貫通孔66に挿入するのを容易にする。
剛性部31の円環部分33の大気側Aの面は、弾性部40の円環部分68で被覆されている。円環部分68には、少なくとも1つの案内凹部69が形成されている。案内凹部69は、少なくとも1つの連結部(フック部)34bの径方向外側に位置する。案内凹部69には、外側シール部材30を外輪8から引っ張り出すために連結部34bに引っ掛けられる治具60の先端部60bを嵌め入れることが可能である。
密封装置61を転がり軸受2から取り外す場合には、図9に示すように、治具60の先端部60bを、密封装置61の外側シール部材30の案内凹部69に嵌め入れる。この時、先端部60bをハンドル部60aに対して、密封装置61の径方向内側に向ける。次に、矢印で示すように、先端部60bを案内凹部69に対して摺動させ、治具60を密封装置61の径方向内側に移動させる。
そして、治具60の先端部60bで、筒壁部分42の凹部67の奥の壁を圧縮することによって、治具60の先端部60bを、外側シール部材30の剛性部31の貫通孔66に挿入することができる。つまり、治具60の先端部60bを、外側シール部材30の連結部34bに簡単かつ円滑に引っ掛けることができる。
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
例えば、密封装置のリップの形状および数は、上記のものに限定されない。
上記の実施形態では、内側部材である内輪6が回転部材であり、外側部材である外輪8が静止部材である。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されず、互いに相対回転する複数の部材の密封に適用されうる。例えば、内側部材が静止し、外側部材が回転してもよいし、これらの部材のすべてが回転してもよい。
本発明の態様は、下記の番号付けされた条項にも記載される。
条項1. 転がり軸受の相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
前記内側部材に固定される環状の内側シール部材と、
前記外側部材の孔の内面に固定される環状の外側シール部材とを備え、
前記外側シール部材は、
剛性材料から形成された剛性部と、
前記剛性部に固定された弾性材料から形成された弾性部とを備え、
前記弾性部は、前記内側シール部材に向けて延びる少なくとも1つのリップを有し、
前記剛性部は、
前記外側部材の孔の内面に嵌め込まれる円筒部分と、
前記円筒部分の大気側の端部から径方向内側に向けて延びる円環部分と、
前記円環部分から大気側に向けて軸線方向に突出する複数の軸線方向突出部分と、
前記軸線方向突出部分の少なくとも1つに形成され、前記外側シール部材を前記外側部材から引っ張り出す治具の先端を引っ掛け可能な少なくとも1つのフック部を有し、
前記外側シール部材は、さらに
前記フック部の径方向外側に位置し、前記治具の前記先端を嵌め入れることが可能な少なくとも1つの案内凹部を有する
ことを特徴とする密封装置。
条項2. 前記剛性部は、前記軸線方向突出部分の少なくとも1つと前記円環部分を貫通する少なくも1つの貫通孔を有し、前記貫通孔によって前記軸線方向突出部分に前記フック部が設けられ、
前記弾性部は、前記剛性部の前記貫通孔を閉塞するように、前記剛性部の前記円環部分と前記軸線方向突出部分を被覆し、
前記弾性部は、前記剛性部の前記貫通孔を閉塞する前記弾性部の部分の軸受内部側の面に形成された、貫通しない少なくとも1つの穴を有しており、
前記剛性部の前記貫通孔の内部に、前記弾性部の前記穴が配置され、
前記案内凹部は、前記剛性部の前記貫通孔を閉塞する前記弾性部の部分の大気側の面に形成されている
ことを特徴とする条項1に記載の密封装置。
この条項によれば、剛性部の軸線方向突出部分の少なくとも1つから円環部分まで形成された貫通孔によってフック部が設けられている。貫通孔は弾性部で閉塞されており、貫通孔の内部に、弾性部の一方の面に形成された穴と、弾性部の他方の面に形成された案内凹部が配置されている。弾性部の穴と案内凹部は弾性部を貫通していないので、密封装置は使用時においては密封性を有する。密封装置を転がり軸受から引っ張り出す時には、案内凹部と穴の間の壁を治具の先端で突き破ることによって、治具の先端を剛性部のフック部に簡単かつ円滑に引っ掛けることができる。
条項3. 前記内側シール部材は、前記内側部材に固定されるスリーブと、前記スリーブの大気側の端部から径方向外側に広がるフランジとを有しており、
前記外側シール部材の前記少なくとも1つのリップは、前記スリーブに摺動可能に接触するシールリップを有し、
前記外側シール部材の前記弾性部は、前記内側シール部材の前記フランジに向けて延びる円筒状の筒壁部分を備え、前記外側シール部材の前記剛性部の前記軸線方向突出部分は前記フランジに向けて延び前記筒壁部分に埋設されており、前記筒壁部分と前記フランジとの間には間隙が設けられている
ことを特徴とする条項1または2に記載の密封装置。
この場合には、外部からの異物が密封装置に侵入しようとしても、多くの異物が、外側シール部材の筒壁部分、または内側シール部材のフランジによって跳ね返される。筒壁部分とフランジとの間の間隙を通過した異物がダストリップに到達するが、この間隙を小さく設定することによって、ダストリップに到達する異物の量を削減することができる。筒壁部分は、これに埋設された複数の軸線方向突出部分で補強されているので、異物から受ける力が強くても、力に耐えることができる。
1,61 密封装置
2 転がり軸受
6 内輪(内側部材)
8 外輪(外側部材)
8A 孔
20 内側シール部材
22 スリーブ
24 フランジ
26 外側スリーブ
30 外側シール部材
31 剛性部
32 円筒部分
33 円環部分
34 軸線方向突出部分
34b 連結部(フック部)
35 内側延長部分
36,66 貫通孔
40 弾性部
44 シールリップ
45 ダストリップ
52,69 案内凹部
54 穴
60 治具
60a ハンドル部
60b 先端部

Claims (2)

  1. 転がり軸受の相対的に回転する内側部材と外側部材との間に配置され、前記内側部材と前記外側部材との間の間隙を封止する密封装置であって、
    前記内側部材に固定される環状の内側シール部材と、
    前記外側部材の孔の内面に固定される環状の外側シール部材とを備え、
    前記外側シール部材は、
    剛性材料から形成された剛性部と、
    前記剛性部に固定された弾性材料から形成された弾性部とを備え
    前記剛性部は、
    前記外側部材の孔の内面に嵌め込まれる円筒部分と、
    前記円筒部分の大気側の端部から径方向内側に向けて延びる円環部分と、
    前記円環部分から大気側に向けて軸線方向に突出する複数の軸線方向突出部分と、
    前記軸線方向突出部分の少なくとも1つに形成され、前記外側シール部材を前記外側部材から引っ張り出す治具の先端を引っ掛け可能な少なくとも1つのフック部を有し、
    前記弾性部は、前記剛性部の前記円環部分を被覆する円環部分と、前記内側シール部材に向けて延びる少なくとも1つのリップを有し、
    前記外側シール部材は、さらに
    前記フック部の径方向外側に位置し、前記治具の前記先端を嵌め入れることが可能な少なくとも1つの案内凹部を有し、前記案内凹部は、前記弾性部の前記円環部分の大気側の面に形成されている
    ことを特徴とする密封装置。
  2. 前記剛性部は、前記軸線方向突出部分の少なくとも1つと前記剛性部の前記円環部分を貫通する少なくも1つの貫通孔を有し、前記貫通孔によって前記軸線方向突出部分に前記フック部が設けられ、
    前記弾性部は、前記剛性部の前記貫通孔を閉塞するように、前記剛性部の前記円環部分と前記軸線方向突出部分を被覆し、
    前記弾性部は、前記剛性部の前記貫通孔を閉塞する前記弾性部の部分の軸受内部側の面に形成された、貫通しない少なくとも1つの穴を有しており、
    前記剛性部の前記貫通孔の内部に、前記弾性部の前記穴が配置され、
    前記案内凹部は、前記剛性部の前記貫通孔を閉塞する前記弾性部の前記円環部分の大気側の面に形成されている
    ことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
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