JP7543026B2 - 歯科用硬化性組成物 - Google Patents

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Description

本発明は歯科用硬化性組成物に関する。より詳細には、本発明は、特に光造形によって造形したときに、低臭気であるため不快でなく、低粘度かつ硬化性に優れるため造形しやすく、さらには硬化物の応力保持性、靭性、耐水性、色調及び色調安定性に優れた立体造形物を得ることができる歯科用硬化性組成物に関する。本発明の歯科用硬化性組成物は、特に歯科用マウスピース、義歯床材料に好適である。
液状の光硬化性樹脂に必要量の制御された光エネルギーを供給して、薄層状に硬化させ、その上にさらに液状光硬化性樹脂を供給した後、制御下に光照射して薄層状に積層硬化させるという工程を繰り返すことによって立体造形物を製造する方法、いわゆる光学的立体造形法に関する多数の提案がなされている。
立体造形物を光学的に製造する際の代表的な方法としては、容器に入れた液状光硬化性樹脂組成物の液面に、所望のパターンが得られるようにコンピューターで制御された紫外線レーザーを選択的に照射して所定の厚さで硬化させて硬化層を形成し、次にその硬化層の上に1層分の液状光硬化性樹脂組成物を供給して、同様に紫外線レーザーを照射して前記と同じように硬化させて連続した硬化層を形成させるという積層操作を繰り返して最終的な形状の立体造形物を製造する液槽光造形という方法が一般に採用されている。この方法による場合は、造形物の形状がかなり複雑であっても、簡単にかつ比較的短時間で精度良く目的とする立体造形物を製造することができるために近年大きな注目を集めている。
そして、光造形法によって得られる立体造形物が単なるコンセプトモデルから、テストモデル、試作品等へと用途が展開されるようになっており、それに伴ってその立体造形物は造形精度に優れていることが益々要求されるようになっている。しかも、そのような特性と併せて目的に合わせた特性も優れていることが求められている。とりわけ、歯科材料分野においては、歯科用マウスピース、義歯床は、患者個人ごとに形状が異なり、かつ形状が複雑であることから、光造形法の応用が期待されている。
歯科用マウスピースは、歯科矯正用アライナーと呼ばれる歯並びを矯正するために歯列に装着するもの、歯科用スプリントと呼ばれる顎位を矯正するために装着するもの、睡眠時無呼吸症候群の治療のために夜間就寝中に歯列に装着するもの、歯ぎしりによる歯の摩耗を抑制するために歯列に装着するもの、コンタクトスポーツにおいて、競技中に歯牙や顎骨に大きな外力が加わることにより発生する外傷を低減し、顎口腔系及び脳を保護するために口腔内に装着するものである。近年、歯科矯正においては審美性の良さや外したいときに外せるため急速に利用が拡大している装置である。また、睡眠時無呼吸症候群も医療において注目されている症例であり、その治療用具として急速に利用が進んでいる。
義歯床材料は、歯の喪失により義歯を装着する際の、歯肉部分に使用される材料のことである。近年、高齢者人口の増加に伴い義歯の需要が急激に増加している。
これら、歯科用マウスピース及び義歯床材料には、見た目を損なわないような色調、応力保持性、靭性及び耐水性が共通して要求されている。中でも、特に歯科矯正用アライナー及び通称ノンクラスプデンチャーと言われるメタルクラスプを含まない部分義歯床において、これらの特性はより強く要求されている。より具体的には、歯科矯正用アライナーは、ブラケットとワイヤーによる矯正の見た目の悪さを回避できることが大きなメリットである。同様に、ノンクラスプデンチャーを使用する意義はメタルクラスプの見た目の悪さを回避することであり、見た目を損なわないような色調は、これらの材料を使用する主目的に係ることであり、極めて重要である。また、応力保持性が損なわれると歯科矯正治療における力学的負荷(以下、「矯正力」ということがある)又は衝撃吸収性を喪失し、装着具としての機能を果たさないものになり、靭性が損なわれると装着感が悪いものとなったり、破壊しやすくなると頻繁に作り直すことが必要となってしまうといった問題がある。さらに、耐水性が損なわれると力学的特性が低下し、やはり矯正力又は衝撃吸収性を喪失したり、破壊しやすくなり実用に耐えないものとなる問題がある。
また、通常、歯科用マウスピース及び義歯床材料、睡眠時無呼吸症候群用治療具を作製する際には、口腔内の印象を取得することが必要となるが、その不快感から患者負担となることや、技工操作に熟練を要するといった課題が従来から指摘されていた。近年では、デジタル技術の発達から、印象取得については、光学的な口腔内スキャンを応用する試みがなされ、成形においては光学的立体造形を応用する試みがなされている。造形においては光硬化性樹脂組成物を使用するが、一般に柔軟性及び耐水性を発現する樹脂組成物ほど、低極性のモノマーを使用する傾向となるため硬化性が低くなり、硬化物の応力保持性に劣る傾向にあり、特に光学的立体造形においては、光照射時間が極端に短くかつ一層一層の造形毎に酸素に暴露されるため、特に硬化が不十分となりやすく、これまで応力保持性と、靭性及び耐水性とを両立することが困難であった。一方、応力保持性と強度を発現する樹脂組成物ほど、高極性のモノマーを使用する傾向となるため耐水性が低くなりやすい上、極性基があるため変色しやすい傾向となり色調が損なわれやすい。さらに、樹脂組成物を造形可能な粘度とする必要があるが、粘度を低下させるために分子量が低いモノマーを使用した場合には硬化性が低下しやすく、かつ蒸気圧が上昇し臭気が発しやすくなる。一方、応力保持性を発現するモノマーは高分子量、高粘度のものが多く造形性が低下するといった問題があった。そのため、立体造形用樹脂組成物として、低粘度かつ低臭気であることに加え、硬化物が良好な色調を有し、かつ優れた応力保持性、靭性、及び耐水性等の特性を備えるものを取得することは困難であった。
このような背景の中、低粘度であり、かつ硬化物の力学的特性及び耐湿潤性に優れる歯科用硬化性組成物が得られる技術として、例えば、特許文献1には、N-アクリロイルピペリジンとウレタンアクリレートオリゴマーを含有する硬化性組成物が開示されている。
特開2005-82691号公報
特許文献1に記載の歯科用硬化性組成物は、変色しやすいアミン構造を有する化合物が含まれているが、色調については何ら記載されておらず、また、応力保持性についても何ら記載されていない。
そこで、本発明は、特に光造形によって造形したときに、低臭気であるため不快でなく、低粘度かつ硬化性に優れるため造形しやすく、さらには応力保持性、靭性、耐水性、色調及び色調安定性に優れた立体造形物を得ることができる歯科用硬化性組成物を提供することを目的とする。本発明の歯科用硬化性組成物は、特に歯科用マウスピース、義歯床材料に好適に用いることができる。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]脂環式アミノ基(a)を含有する(メタ)アクリルアミド(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール化合物(C)を含有し、
前記脂環式アミノ基(a)は、ヘテロ原子として環構造内に1個の窒素原子のみを有し、かつ、前記脂環式アミノ基(a)が有する窒素原子に(メタ)アクリロイル基が直接結合しており、
前記ヒンダードフェノール化合物(C)の含有量が、前記光重合開始剤(B)の含有量100質量部に対して0.1~200質量部である、歯科用硬化性組成物;
[2]前記ヒンダードフェノール化合物(C)が、下記一般式[I]で表される化合物及び/又は下記一般式[III]で表される化合物を含有する、[1]に記載の歯科用硬化性組成物;
Figure 0007543026000001
(式中、R1~R3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基又は水酸基を表し、R1~R3の前記基(水酸基を除く)は、-O-、-S-、-NH-、-N(R4)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R4は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
Figure 0007543026000002
(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を表し、Z1は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表し、Z2は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はアリール基を表し、nは2~6の整数を表し、R10、R11及びZ1の前記基は、-O-、-S-、-NH-、-N(R12)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R12は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
[3]前記ヒンダードフェノール化合物(C)が、一般式[III]で表される化合物を含有する、[1]又は[2]に記載の歯科用硬化性組成物;
[4]厚さが2.0mm±0.2mmである硬化物の24時間後の応力保持率が、50%以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物;
[5](メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)を含有する、[1]~[4]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物;
[6]前記(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)が、常圧換算沸点が250℃以上である、[5]に記載の歯科用硬化性組成物;
[7]前記(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)が、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1を含有する、[5]又は[6]に記載の歯科用硬化性組成物;
[8]前記ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1が、1分子内に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びポリエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造、並びにウレタン結合を含有する(メタ)アクリレートである、[7]に記載の歯科用硬化性組成物;
[9]前記(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)が、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2を含有する、[5]~[7]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物;
[10]ウレタン結合を有しない単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1を実質的に含有しない、[1]~[9]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物;
[11]前記光重合開始剤(B)が、(ビス)アシルホスフィンオキシド類である、[1]~[10]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物;
[12][1]~[11]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、歯科用マウスピース。
[13][1]~[11]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、義歯床材料;
[14][1]~[11]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、睡眠障害治療材料;
[15][1]~[11]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物からなる、光造形用材料;
[16][1]~[11]のいずれかに記載の歯科用硬化性組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
本発明の歯科用硬化性組成物は、特に光造形によって造形したときに、低臭気であるため不快でなく、低粘度かつ硬化性に優れるため造形しやすく、さらには応力保持性、靭性、耐水性、色調及び色調安定性に優れる立体造形物が得られるため、各種歯科材料(特に歯科用マウスピース、義歯床材料)又は各種睡眠障害治療材料(特に睡眠時無呼吸症候群用治療具)等の口腔内環境で、継続的に応力が付加される用途に好適に用いることができる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、環構造内に1個の窒素原子以外のヘテロ原子を含有しない脂環式アミノ基(a)の窒素原子に、(メタ)アクリロイル基が直接結合している(メタ)アクリルアミド(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール化合物(C)を含有する。なお、本明細書において、数値範囲(各成分の含有量、各成分から算出される値及び各物性等)の上限値及び下限値は適宜組み合わせ可能である。
[脂環式アミノ基(a)を含有する(メタ)アクリルアミド(A)]
本発明の歯科用硬化性組成物は、脂環式アミノ基(a)を含有する(メタ)アクリルアミド(A)(以下、単に「(メタ)アクリルアミド(A)」と称することがある)を含有し、前記脂環式アミノ基(a)は、ヘテロ原子として環構造内に1個の窒素原子のみを有し、かつ、前記脂環式アミノ基(a)が有する窒素原子に(メタ)アクリロイル基が直接結合しているものであることにより、光照射後の立体造形物の融点(Tm)又はガラス転移温度(Tg)が向上することから、内部凝集力の向上がさらに図られるため、応力保持性及び靭性の良好な立体造形物を形成することが可能となる。
本発明の(メタ)アクリルアミド(A)が有する前記脂環式アミノ基(a)は、ヘテロ原子として環構造内に1個の窒素原子のみを有し、かつ脂環式アミノ基(a)が有する窒素原子に(メタ)アクリロイル基が直接結合していることが必要である。環構造内の1個の窒素原子以外に、ヘテロ原子を含まないことによって、歯科用硬化性組成物の硬化物の耐水性が優れる。また、(メタ)アクリロイル基がアルキレン鎖等を介さず、脂環式アミノ基に直接結合していることによって、分子構造上、剛直性が増大することに加え、配座が固定された窒素原子の誘電効果によって、得られる歯科用硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度が上昇することから、硬化物の応力保持性及び靭性が良好なものとなる。さらに、一般的に重合性単量体は、水酸基や酸性基等の活性水素を有するような例を除いて、分子量が250程度以下になると臭気が強くなる傾向があるものの、(メタ)アクリルアミド(A)は環構造に起因して分子の極性が強められていると推測されるため、比較的低分子量である場合でも臭気が小さく、歯科用硬化性組成物の粘度を低く抑えるために低分子量を選択することが可能で、かつ硬化性が高いため造形性にも優れる。なお、本発明における「環構造内に1個の窒素原子」とは環構造を形成している炭化水素鎖に1つ窒素原子自身が組み込まれていることを意味し、環状骨格に直接結合している置換基としての原子とは区別されることを意味する。脂環式アミノ基(a)の環構造を形成している炭化水素鎖の炭素数は、3以上であればよく、4~8であってもよく、4~5が好ましい。
(メタ)アクリルアミド化合物(A)の分子量は、特に限定されないが、臭気及び粘度の観点から、100~210が好ましく、110~180がより好ましく、120~160がさらに好ましい。
本発明における脂環式アミノ基(a)は、得られる硬化物の耐水性の観点から、水酸基、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、ニトロ基などの活性水素を含有する置換基及び強い極性基を含有しないことが好ましい。
本発明における脂環式アミノ基(a)としては、例えば、アジリジル基、アゼチジル基、ピロリジル基、ピペリジル基等が挙げられ、ピロリジル基、ピペリジル基が好ましい。脂環式アミノ基(a)は、置換基を有していてもよい。置換基としては、上記したように活性水素を含有する置換基及び強い極性基を含有しないことが好ましいため、炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)が挙げられる。アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。アルキル基は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。脂環式アミノ基(a)が置換基を有する場合、脂環式アミノ基(a)としては、例えば、4-メチルピペリジル基、4-エチルピペリジル基、4-t-ブチルピペリジル基、2,5-ジメチルピペリジル基、3,5-ジメチルピペリジル基、4,4-ジメチルピペリジル基、2-フルオロピペリジル基、2-クロロピペリジル基等が挙げられる。
本発明における(メタ)アクリルアミド(A)は、得られる硬化物の靭性に優れる観点から、単官能(メタ)アクリルアミドであることが好ましい。本明細書において、「単官能」とは、前記重合性基を1つ有することを意味する。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル」との表記は、メタクリロイルとアクリロイルの両者を包含する意味で用いられ、これと類似する「(メタ)アクリル」等の表記についても同様である。
本発明の(メタ)アクリルアミド(A)としては、例えばN-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイルアゾカン、N-(メタ)アクリロイルアゾナン、N-(メタ)アクリロイルアゼカン、N-(メタ)アクリロイルアゾニン、N-(メタ)アクリロイルモルファン、N-(メタ)アクリロイルインドリン、N-(メタ)アクリロイルイソインドリン、N-(メタ)アクリロイル-4-メチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-エチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-t-ブチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-2,5-ジメチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-3,5-ジメチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-4,4-ジメチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-2-フルオロピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-2-クロロピペリジン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、歯科用硬化性組成物が低粘度で、硬化物の靭性に優れる観点から、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン、N-(メタ)アクリロイルアゼパン、N-(メタ)アクリロイル-4-メチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-エチルピペリジン、N-(メタ)アクリロイル-4-t-ブチルピペリジンが好ましく、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジンがより好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物における(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は、(メタ)アクリルアミド(A)、後述する(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)、及びその他の重合性単量体(以下、総称して「重合性化合物」と称することがある)の総量100質量部において、1.0~90質量部が好ましく、造形性、硬化物の靭性及び耐水性により優れる点から、5.0~80質量部がより好ましく、10~70質量部がさらに好ましい。ある好適な実施形態では、特に硬化物の靭性に優れる点から、(メタ)アクリルアミド(A)の含有量は、重合性化合物の総量100質量部において、30~70質量部である、歯科用硬化性組成物が挙げられる。
[光重合開始剤(B)]
本発明に用いられる光重合開始剤(B)としては、一般工業界で使用されている重合開始剤から選択して使用でき、中でも歯科用途に用いられる重合開始剤が好ましく用いられる。
光重合開始剤(B)としては、(ビス)アシルホスフィンオキシド類、チオキサントン類又はチオキサントン類の第4級アンモニウム塩、ケタール類、α-ジケトン類、クマリン類、アントラキノン類、ベンゾインアルキルエーテル化合物、α-アミノケトン系化合物、ゲルマニウム化合物等が挙げられる。光重合開始剤(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの光重合開始剤(B)の中でも、(ビス)アシルホスフィンオキシド類を用いることが好ましい。これにより、紫外領域及び可視光域での光硬化性に優れ、レーザー、ハロゲンランプ、発光ダイオード(LED)、及びキセノンランプのいずれの光源を用いても十分な光硬化性を示し、硬化物が変色しない歯科用硬化性組成物が得られる。
(ビス)アシルホスフィンオキシド類のうち、アシルホスフィンオキシド類としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジ(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネート、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドナトリウム塩、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドカリウム塩、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドのアンモニウム塩が挙げられる。ビスアシルホスフィンオキシド類としては、例えば、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が挙げられる。さらに、特開2000-159621号公報に記載されている化合物を挙げることができる。
これらの(ビス)アシルホスフィンオキシド類の中でも、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、及び2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィンオキシドナトリウム塩が特に好ましい。
α-ジケトン類としては、例えば、ジアセチル、ベンジル、カンファーキノン、2,3-ペンタジオン、2,3-オクタジオン、9,10-フェナントレンキノン、4,4’-オキシベンジル、アセナフテンキノンが挙げられる。ゲルマニウム化合物としては、例えば、ベンゾイルトリメチルゲルマニウム(IV)等のモノアシルゲルマニウム化合物;ジベンゾイルジエチルゲルマニウムもしくはビス(4-メトキシベンゾイル)-ジエチルゲルマニウム等のジアシルゲルマニウム化合物が挙げられる。
本発明の歯科用硬化性組成物における光重合開始剤(B)の含有量は、得られる歯科用硬化性組成物の硬化性、色調及び色調安定性の観点から、(メタ)アクリルアミド(A)、後述するα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)、及びその他の重合性単量体の総量100質量部に対し、光重合開始剤(B)が0.1~10質量部であることが好ましい。光重合開始剤(B)の含有量が0.1質量部未満の場合、重合が十分に進行せず、成形品又は硬化物が得られないおそれがある。光重合開始剤(B)の含有量は、前記総量100質量部に対し、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。一方、光重合開始剤(B)の含有量が10質量部を超える場合、光重合開始剤自体の光の透過性が低下し、重合が十分に進行せず、成形品又は硬化物が得られないおそれがある。また、硬化物の変色が顕著になる恐れがある。光重合開始剤(B)の含有量は、前記総量100質量部に対し、7.5質量部以下がより好ましく、5.0質量部以下がさらに好ましい。
ヒンダードフェノール化合物(C)
本発明の歯科用硬化性組成物は、ヒンダードフェノール化合物(C)を含有する。ヒンダードフェノール化合物(C)は、本発明の歯科用硬化性組成物において、歯科用硬化性組成物の硬化物の着色及び保管後の変色を抑制するために用いられる。また、光重合開始剤(B)に対し、ヒンダードフェノール化合物(C)を特定の比率で配合することによって、(メタ)アクリルアミド(A)と組み合わせた際に、硬化物の応力保持性、耐水性、及び靭性にも優れる。
一般的にフェノール化合物は重合禁止剤又は酸化防止剤として配合され、樹脂組成物の保存安定性を確保するために用いられ、それ自体は酸化されて黄変又は褐色化しやすい。一方、本発明では、光造形装置の発する非常に強い紫外線レーザー等の活性エネルギー光線照射によって起こる着色及び保管後の変色を抑制するために、ヒンダードフェノール化合物(C)が用いられ、一般的な使用目的と異なる上、色調に関する挙動は全く異なる。また、フェノール化合物の中でも、硬化阻害が小さいことと硬化物の着色及び変色の抑制効果に優れる点から、ヒンダードフェノール化合物であることが必要である。さらに、光重合開始剤(B)に対し、ヒンダードフェノール化合物(C)が特定の比率で配合された場合にのみ、本発明の歯科用硬化性組成物は、成形品又は硬化物が得られ、硬化物は着色及び保管後の変色が抑制される。さらに、本発明の(メタ)アクリルアミド化合物(A)、特定量の光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール化合物(C)の組合せにおいて、その硬化物が変形に対して破壊しにくくなり、靭性がより一層向上することを見出した。これは、(メタ)アクリルアミド化合物の高い強度発現効果とヒンダードフェノール化合物(C)による重合挙動の変化により、強度と柔軟性がバランスよく働いたことが推測される。
ヒンダードフェノール化合物(C)としては、下記一般式[I]で表される化合物、下記一般式[II]で表される化合物、下記一般式[III]で表される化合物等が挙げられ、下記一般式[I]で表される化合物、及び下記一般式[III]で表される化合物が好ましい。
Figure 0007543026000003
(式中、R1~R3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基又は水酸基を表し、R1~R3の前記基(水酸基を除く)は、-O-、-S-、-NH-、-N(R4)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R4は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
Figure 0007543026000004
(式中、R5~R8は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基又は水酸基を表し、Xは置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表し、Yはビニルオキシ基、又は(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、R5~R8及びXの前記基(水酸基を除く)は、-O-、-S-、-NH-、-N(R9)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R9は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
Figure 0007543026000005
(式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素数6~12のアリール基を表し、Z1は置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキレン基を表し、Z2は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はアリール基を表し、nは2~6の整数を表し、R10、R11及びZ1の前記基は、-O-、-S-、-NH-、-N(R12)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R12は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
1~R3及びR5~R8の炭素数1~20のアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、2-メチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、1-エチルブチル基、2-エチルブチル基、1,1-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、n-オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、1-メチルノニル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。R1~R3及びR5~R8のアルキル基は無置換であってもよい。R1~R3及びR5~R8のアルキル基の炭素数としては、1~10が好ましく、着色及び変色の抑制効果に優れる点から、1~6がより好ましい。R1~R3及びR5~R8の炭素数1~20のアルコキシ基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよい。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基等が挙げられる。R1~R3及びR5~R8のアルコキシ基は無置換であってもよい。R1~R7のアルコキシ基の炭素数としては、1~10が好ましく、着色及び変色の抑制効果に優れる点から、1~6がより好ましい。R1~R3及びR5~R8の炭素数6~12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基の炭素数としては、6~10が好ましい。R1~R3及びR5~R8のアルキル基、アルコキシ基、及びアリール基が有する置換基としては、直鎖状又は分岐鎖状の炭素数1~10のアルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、カルボキシ基等が挙げられる。R4及びR9のアルキル基としては、R1~R3及びR5~R8として上記したもののうちアルキル基の炭素数1~6のものが挙げられる。Xの炭素数1~20のアルキレン基としては、直鎖状又は分岐鎖状であってもよく、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、1-メチルブチレン基、n-ペンチレン基、1,1-ジメチルプロピレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基等が挙げられる。Xのアルキレン基の炭素数としては、1~10が好ましく、着色及び変色の抑制効果に優れる点から、1~6がより好ましく、1~4がさらに好ましい。Yとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。また、ある好適な実施形態では、ヒンダードフェノール化合物(C)が一般式[I]で表される化合物を含み、R1~R3の基が、-O-、-S-、-NH-、-N(R4)-、-O(CO)-、及び-CO-の結合基を含まない、歯科用硬化性組成物が挙げられる。
10及びR11のアルキル基、アルコキシ基及びアリール基としては、R1~R3及びR5~R8と同様のものが挙げられる。R10及びR11としては、アルキル基が好ましく、着色及び変色の抑制効果に優れる点から、分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数3~6の分岐鎖状のアルキル基がさらに好ましい。R12のアルキル基としては、R4及びR9と同様のものが挙げられる。Z1のアルキレン基は、Xと同様のものが挙げられる。Z2は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、又はアリール基を表し、炭素原子、硫黄原子、又はアリール基が好ましい。Z2のアリール基としては、R1~R3及びR5~R8と同様のものが挙げられ、フェニル基が好ましく、置換フェニル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基で置換された置換フェニル基がさらに好ましい。nは2~6の整数を表し、2~4の整数が好ましい。nはZ2の結合手の数に合わせて適宜選択される。他の好適な実施形態では、ヒンダードフェノール化合物(C)が一般式[III]で表される化合物を含み、Z1のアルキレン基が-O-、-S-、-NH-、-N(R12)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含む、歯科用硬化性組成物が挙げられ、このうち、Z1のアルキレン基が-O-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含むヒンダードフェノール化合物が好ましく、Z1が炭素数1~6のアルキレン基であり、該アルキレン基が-O-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含むヒンダードフェノール化合物がより好ましい。
ヒンダードフェノール化合物(C)としては、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,6-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、4-t-ブチルピロカテコール、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド))、オクチル=3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパノアート(IRGANOX 1135)、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-t-ブチル-α,α’,α”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールが挙げられる。これらの中でも、硬化阻害効果が小さく、変色の抑制効果が強いことから、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンが好ましく用いられる。
本発明の歯科用硬化性組成物におけるヒンダードフェノール化合物(C)の含有量は、光重合開始剤(B)の含有量100質量部に対して、2.0~200質量部であることが好ましく、2.5~100質量部がより好ましく、5.0~50質量部がさらに好ましく、8.0~40質量部が特に好ましく、10~30質量部が最も好ましい。ヒンダードフェノール化合物(C)の含有量を2.0~200質量部とすることによって、硬化性、硬化物の応力保持性、靭性、耐水性、色調及び色調安定性が良好に保持される。ヒンダードフェノール化合物(C)の含有量が、光重合開始剤(B)の含有量100質量部に対して2.0質量部以上の場合、歯科用硬化性組成物の成形物の黄変を抑制しやすくなり、色調及び色調安定性に優れる傾向となる。一方、光重合開始剤(B)の含有量100質量部に対して200質量部以下である場合、歯科用硬化性組成物を成形した時に重合度が十分に大きくなるため、成形物の機械的強度が向上する傾向となる。特に、液槽光造形法を用いた場合は、硬化不良による脱落、造形途切れなどの発生を抑制でき、造形性に優れる。
[(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)]
本発明の歯科用硬化性組成物は、(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)(以下、単に「α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)」と称することがある)を含有することが好ましい。α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)は、本発明の歯科用硬化性組成物において、歯科用硬化性組成物の硬化物の曲げ弾性率を調製するために用いられる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は、α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)を含むことで、硬化物の靭性及び耐水性により優れる。
本明細書において、α,β-不飽和二重結合基は、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチレン基等の重合性基を意味する。本発明におけるα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)は、歯科用硬化性組成物の臭気を抑えることができる点から、常圧換算沸点が250℃以上であることが好ましい。常圧沸点250℃以上であることにより蒸気圧が上昇することを抑制し、臭気の発生を抑えることができ、不快な臭気を感じにくくすることができる。α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)の常圧沸点は、275℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましい。なお、本発明における常圧沸点は、常圧蒸留による測定値であり、常圧沸点が観測できない化合物については、減圧蒸留での測定値である減圧沸点から、沸点換算表(Science of Petroleum, Vol.II. p.1281(1938))により換算された常圧沸点を用いる。α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)としては、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2が挙げられ、これらは常圧換算沸点が250℃以上であるものが好ましい。α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)は、得られる硬化物の靭性に優れる観点から、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1を含有することが好ましい。
ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1は、ウレタン結合を含む(メタ)アクリル化合物であれば、特に限定されない。ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1としては、例えば、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンビス(2-カルバモイルオキシエチル)ジメタクリレート(通称「UDMA」)、N,N’-(2,2,4-トリメチルヘキサメチレン)ビス[2-(アミノカルボキシ)プロパン-1,3-ジオール]テトラ(メタ)アクリレート等のポリマー骨格を持たないウレタン化(メタ)アクリル化合物が挙げられる。また、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1としては、ポリマー骨格を有するウレタン化(メタ)アクリル化合物も挙げられる。ポリマー骨格を有するウレタン化(メタ)アクリル化合物は、後述するポリマー骨格を含有するポリオールと、イソシアネート基(-NCO)を有する化合物と、水酸基(-OH)を有する(メタ)アクリル化合物とを付加反応させることによって、容易に合成することができる。また、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1は、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物に、ラクトン又はアルキレンオキシドに開環付加反応させた後、得られた片末端に水酸基を有する化合物を、イソシアネート基を有する化合物に付加反応させることにより、容易に合成することができる。ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1は、1分子内に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造(ポリマー骨格)、並びにウレタン結合を含有する(メタ)アクリレートであることが好ましく、分子内に、分岐構造を有する炭素数4~18の脂肪族ジオールに由来する構造を有するポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ共役ジエン、及び水添ポリ共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール部分、並びにウレタン結合を有する(メタ)アクリレートであることがより好ましい。前記構造において、例えば、ポリエステルとしては、フタル酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸)等の芳香族ジカルボン酸又はマレイン酸等の不飽和脂肪族ジカルボン酸と炭素数2~18の脂肪族ジオールとの共重合体、アジピン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸と炭素数2~18の脂肪族ジオールとの共重合体、β-プロピオラクトンの重合体、γ-ブチロラクトンの重合体、δ-バレロラクトン重合体、ε-カプロラクトン重合体及びこれらの共重合体などが挙げられ、芳香族ジカルボン酸又は不飽和脂肪族ジカルボン酸と炭素数2~12の脂肪族ジオールとの共重合体、飽和脂肪族ジカルボン酸と炭素数2~12の脂肪族ジオールとの共重合体が好ましい。ポリエステルに関して、前記炭素数2~18の脂肪族ジオールは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造としては、炭素数1~10のアルキル基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、炭素数1~3のアルキル基がさらに好ましい。ポリカーボネートとしては、炭素数2~18の脂肪族ジオールから誘導されるポリカーボネート、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート、及び炭素数2~18の脂肪族ジオールとビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートなどが挙げられ、炭素数2~12の脂肪族ジオールから誘導されるポリカーボネート、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネート、及び炭素数2~12の脂肪族ジオールとビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートが好ましい。ポリカーボネートに関して、前記炭素数2~18の脂肪族ジオールは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造としては、ポリエステルの脂肪族ジオールと同様のものが挙げられる。ポリウレタンとしては、炭素数2~18の脂肪族ジオールと炭素数1~18のジイソシアネートの共重合体などが挙げられ、炭素数2~12の脂肪族ジオールと炭素数1~12のジイソシアネートの共重合体が好ましい。ポリウレタンに関して、前記炭素数2~18の脂肪族ジオールは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造としては、ポリカーボネートの脂肪族ジオールと同様のものが挙げられる。ポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(1-メチルブチレングリコール)などが挙げられる。これらの中でも、靭性に優れる点で、ポリエステルの構造が好ましい。さらに、ポリエステルの構造が、耐水性と靭性に優れる点からは、分岐構造を有する炭素数4~18の脂肪族ジオールに由来する構造を有するポリオール部分とフタル酸エステル(例えば、イソフタル酸エステル、テレフタル酸エステル)又はセバシン酸エステルを含有することが好ましく、耐水性と造形性に優れる点からは、分岐構造を有する炭素数4~12の脂肪族ジオールに由来する構造を有するポリオール部分とセバシン酸エステルを含有することがより好ましく、分岐構造を有する炭素数5~12の脂肪族ジオールに由来する構造を有するポリオール部分とイソフタル酸エステル又はセバシン酸エステルを含有することがさらに好ましい。ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1の製造には、前記したポリマー骨格を有するポリオールを用いることができる。
イソシアネート基を有する化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHMDI)、トリシクロデカンジイソシアネート(TCDDI)、及びアダマンタンジイソシアネート(ADI)等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリル化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、2,2-ビス[4-〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕フェニル]プロパン、1,2-ビス〔3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ〕エタン、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールのトリ又はテトラ(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物;N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
前記分岐構造を有する炭素数4~18の脂肪族ジオールとしては、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,7-ジメチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、2,8-ジメチル-1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,10-デカンジオール、2,9-ジメチル-1,10-デカンジオール、2-メチル-1,11-ウンデカンジオール、2,10-ジメチル-1,11-ウンデカンジオール、2-メチル-1,12-ドデカンジオール、2,11-ジメチル-1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,13-トリデカンジオール、2,12-ジメチル-1,13-トリデカンジオール、2-メチル-1,14-テトラデカンジオール、2,13-ジメチル-1,14-テトラデカンジオール、2-メチル-1,15-ペンタデカンジオール、2,14-ジメチル-1,15-ペンタデカンジオール、2-メチル-1,16-ヘキサデカンジオール、2,15-ジメチル-1,16-ヘキサデカンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、歯科用硬化性組成物が硬化性に優れ、低粘度である観点から、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,7-ジメチル-1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,9-ノナンジオール、2,8-ジメチル-1,9-ノナンジオールなどのメチル基を側鎖として有する炭素数5~12の脂肪族ジオールをポリオール成分として使用することが好ましく、2-メチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,7-ジメチル-1,8-オクタンジオールがより好ましく、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオールがさらに好ましい。
イソシアネート基を有する化合物と水酸基を有する(メタ)アクリル化合物との付加反応は、公知の方法に従って行うことができ、特に限定はない。
得られるウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1としては、前記の、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリ共役ジエンからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリオールと、イソシアネート基を有する化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリル化合物との任意の組み合わせの反応物が挙げられる。
ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1の重量平均分子量(Mw)は、粘度及び強度の観点から、300~10000が好ましく、500~5000がより好ましく、750~4000がさらに好ましく、1000~3000が特に好ましい。なお、本発明における重量平均分子量(Mw)とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で求めたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
本発明の歯科用硬化性組成物におけるウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1の含有量は、(メタ)アクリルアミド(A)、α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)、及びその他の重合性単量体の総量100質量部において、10~90質量部が好ましく、硬化性、硬化物の靭性により優れる点から、20~80質量部がより好ましく、30~70質量部がさらに好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物において、α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)は、得られる硬化物の靭性の調整を目的として、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2を含有することができる。ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2としては、ウレタン結合を有しない単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1、多官能性のウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-2が挙げられる。これらの中でも、得られる硬化物が靭性に優れる観点から、ウレタン結合を有しない単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1(以下、単に「単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1」と称することがある)が好ましく用いられる。
前単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1としては、例えばo-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、プロポキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ブトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ブトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ブトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、o-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、p-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、2-(o-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(m-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、2-(p-フェノキシフェニル)エチル(メタ)アクリレート、3-(o-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(m-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(p-フェノキシフェニル)プロピル(メタ)アクリレート、4-(o-フェノキシフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(m-フェノキシフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、4-(p-フェノキシフェニル)ブチル(メタ)アクリレート、5-(o-フェノキシフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、5-(m-フェノキシフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、5-(p-フェノキシフェニル)ペンチル(メタ)アクリレート、6-(o-フェノキシフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(m-フェノキシフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(p-フェノキシフェニル)ヘキシル(メタ)アクリレート等の芳香環を少なくとも1個有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物;ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、パルミトレイル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エリスリトールモノ(メタ)アクリレート等の脂肪族系である単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、歯科用硬化性組成物の硬化性及び硬化物の靭性が優れる点から、芳香環を少なくとも1個有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物が好ましく、疎水性が高く、より耐水性が高い点から、o-フェノキシベンジルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、p-フェノキシベンジルアクリレート、2-(o-フェノキシフェニル)エチルアクリレート、2-(m-フェノキシフェニル)エチルアクリレート、2-(p-フェノキシフェニル)エチルアクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-m-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化-p-フェニルフェノール(メタ)アクリレート等の芳香環を2個有する単官能の(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましく、o-フェノキシベンジルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、p-フェノキシベンジルアクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートがさらに好ましく、o-フェノキシベンジルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、エトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートが特に好ましく、m-フェノキシベンジルアクリレート及びエトキシ化-o-フェニルフェノール(メタ)アクリレートが最も好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物におけるウレタン結合を有しない単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1の含有量は、重合性化合物の総量100質量部において、硬化性、硬化物の靭性及び耐水性により優れる点から、1~50質量部が好ましく、5~40質量部がより好ましく、10~30質量部がさらに好ましい。
多官能性のウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-2(以下、単に「多官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-2」と称することがある)としては、芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物、三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物等が挙げられる。
芳香族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、2,2-ビス((メタ)アクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2-ビス〔4-(3-アクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(3-メタクリロイルオキシ)-2-ヒドロキシプロポキシフェニル〕プロパン(通称「Bis-GMA」)、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジエトキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2-(4-(メタ)アクリロイルオキシジプロポキシフェニル)-2-(4-(メタ)アクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン、1,4-ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ピロメリテート等が挙げられる。
脂肪族化合物系の二官能性(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ビス(3-メタクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
三官能性以上の(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、1,7-ジアクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラ(メタ)アクリロイルオキシメチル-4-オキサヘプタン等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2が多官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-2と、単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1とを含む場合、(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2の総量100質量部において、前記単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1の含有量は、10~100質量部が好ましく、30~100質量部がより好ましく、50~100質量部がさらに好ましい。
本発明の歯科用硬化性組成物におけるα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)の含有量は、重合性化合物の総量100質量部において、1~50質量部が好ましく、硬化性、硬化物の靭性及び耐水性により優れる点から、2.5~40質量部がより好ましく、5.0~30質量部がさらに好ましい。
他の好適な実施形態(X-1)としては、単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1を実質的に含有しない、歯科用硬化性組成物が挙げられる。「実質的に単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1を含有しない」とは、単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1の含有量が、重合性単量体の総量100質量部において1.0質量部未満であり、好ましくは0.5質量部未満であり、より好ましくは0.1質量部未満であり、さらに好ましくは0.01質量部未満であることを意味する。また、他の好適な実施形態(X-2)としては、常圧沸点280℃以上であり、炭素環基を有し、含窒素複素環基とウレタン結合を有しない単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1a(以下、単に「(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1a」と称することがある)を実質的に含有しない、歯科用硬化性組成物が挙げられる。「実質的に(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1aを含有しない」とは、実施形態(X-1)と同様に、単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1aの含有量が、重合性単量体の総量100質量部において1.0質量部未満であり、好ましくは0.5質量部未満であり、より好ましくは0.1質量部未満であり、さらに好ましくは0.01質量部未満であることを意味する。なお、本発明における常圧沸点は、常圧蒸留による測定値であり、常圧沸点が観測できない化合物については、減圧蒸留での測定値である減圧沸点から、沸点換算表(Science of Petroleum, Vol.II. p.1281(1938))により換算された常圧沸点を用いる。炭素環基としては、単環芳香族基(フェニル基)、芳香族縮合二環基(ナフチル基等)、炭素縮合三環基(アントリル基等)の多環芳香族基;脂肪族環基(シクロペンチル基、デカヒドロナフタレニル基等)が挙げられる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、上記の(メタ)アクリルアミド(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール化合物(C)を含有し、ヒンダードフェノール化合物(C)の含有量が、前記光重合開始剤(B)100質量部に対して0.1~200質量部である以外、特に限定はなく、公知の方法に準じて製造できる。
本発明の歯科用硬化性組成物において、(メタ)アクリルアミド(A)、α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)以外の重合性単量体が含まれていてもよいが、実質的に(メタ)アクリルアミド(A)のみから構成されていてもよく、(メタ)アクリルアミド(A)及びα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)のみから構成されていてもよい。重合性単量体が、実質的に脂環式(メタ)アクリルアミド(A)、α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)のみから構成されるとは、(メタ)アクリルアミド(A)、及びα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)以外の他の重合性単量体の含有量が、歯科用硬化性組成物に含まれる重合性単量体の総量100質量部において10.0質量部未満であり、好ましくは5.0質量部未満であり、より好ましくは1.0質量部未満であり、さらに好ましくは0.1質量部未満であり、特に好ましくは0.01質量部未満であることを意味する。
本発明の歯科用硬化性組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、光硬化性の向上を目的として、重合促進剤を含むことができる。重合促進剤としては、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸メチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸ブチル等のアミン化合物が挙げられる。これらの中でも、歯科用硬化性組成物に優れた硬化性を付与する観点から、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチル、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸n-ブトキシエチル、及び4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾフェノンからなる群より選択される少なくとも1つが好ましく用いられる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、主にポストキュアの硬化性の向上を目的として、化学重合開始剤を含有することができる。有機過酸化物及びアゾ系化合物が好ましく用いられる。化学重合開始剤として使用される有機過酸化物及びアゾ系化合物は特に限定されず、公知のものを使用することができる。代表的な有機過酸化物としては、ケトンペルオキシド、ハイドロペルオキシド、ジアシルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、ペルオキシケタール、ペルオキシエステル、及びペルオキシジカーボネート等が挙げられる。化学重合開始剤は、1種を単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
ケトンペルオキシドとしては、例えば、メチルエチルケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、メチルシクロヘキサノンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシドなどが挙げられる。
ヒドロペルオキシドとしては、例えば、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシドなどが挙げられる。
ジアシルペルオキシドとしては、例えば、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシドなどが挙げられる。
ジアルキルペルオキシドとしては、例えば、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンなどが挙げられる。
ペルオキシケタールとしては、例えば、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)オクタン、4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレリン酸n-ブチルエステルなどが挙げられる。
ペルオキシエステルとしては、例えば、α-クミルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、2,2,4-トリメチルペンチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルペルオキシイソフタレート、ジ-t-ブチルペルオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシマレエートなどが挙げられる。
ペルオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ-3-メトキシペルオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルペルオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)ペルオキシジカーボネート、ジアリルペルオキシジカーボネートなどが挙げられる。
本発明の歯科用硬化性組成物には、ペースト性状を調整するために、又は、歯科用硬化性組成物の硬化物の表面性状又は強度を改質するために、フィラーがさらに含有されていてもよい。フィラーとして、例えば、有機フィラー、無機フィラー、有機-無機複合フィラー等が挙げられる。フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機フィラーの材料としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、メタクリル酸メチル-メタクリル酸エチル共重合体、架橋型ポリメタクリル酸メチル、架橋型ポリメタクリル酸エチル、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリオキシメチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合体が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用できる。得られる歯科用硬化性組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機フィラーの平均粒子径は、0.001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、0.001~1.0μmがさらに好ましい。
無機フィラーの材料としては、例えば、石英、シリカ、アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-チタニア-酸化バリウム、シリカ-ジルコニア、シリカ-アルミナ、ランタンガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ガラスセラミック、アルミノシリケートガラス、バリウムボロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムボロアルミノシリケートガラス、フルオロアルミノシリケートガラス、カルシウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムフルオロアルミノシリケートガラス、バリウムフルオロアルミノシリケートガラス、ストロンチウムカルシウムフルオロアルミノシリケートガラスが挙げられる。これらもまた、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。無機フィラーの形状は特に限定されず、不定形フィラー又は球状フィラー等を適宜選択して使用できる。得られる歯科用硬化性組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記無機フィラーの平均粒子径は0.001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、0.001~1.0μmがさらに好ましい。
前記無機フィラーは、歯科用硬化性組成物の流動性を調整するため、必要に応じて、シランカップリング剤などの公知の表面処理剤で予め表面処理してから用いてもよい。前記表面処理剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、11-メタクリロイルオキシウンデシルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられる。
本発明で用いられる有機-無機複合フィラーとは、上述の無機フィラーにモノマー成分を予め添加し、ペースト状にした後に重合させ、粉砕することにより得られるものである。前記有機-無機複合フィラーとしては、例えば、TMPTフィラー(トリメチロールプロパントリメタクリレートとシリカフィラーを混和、重合させた後に粉砕したもの)などを用いることができる。前記有機-無機複合フィラーの形状は特に限定されず、フィラーの粒子径を適宜選択して使用することができる。得られる歯科用硬化性組成物のハンドリング性及び機械的強度などの観点から、前記有機-無機複合フィラーの平均粒子径は、0.001~50μmが好ましく、0.001~10μmがより好ましく、0.001~1.0μmがさらに好ましい。
なお、本明細書において、フィラーの平均粒子径とは平均一次粒子径であり、レーザー回折散乱法や粒子の電子顕微鏡観察により求めることができる。具体的には、0.1μm以上の粒子の粒子径測定にはレーザー回折散乱法が、0.1μm未満の超微粒子の粒子径測定には電子顕微鏡観察が簡便である。0.1μmはレーザー回折散乱法により測定した値である。
レーザー回折散乱法は、具体的に例えば、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD-2300:株式会社島津製作所製)により、0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒に用いて体積基準で測定することができる。
電子顕微鏡観察は、具体的に例えば、粒子の電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4000型)写真を撮り、その写真の単位視野内に観察される粒子(200個以上)の粒子径を、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(Mac-View(株式会社マウンテック製))を用いて測定することにより求めることができる。このとき、粒子径は、粒子の最長の長さと最短の長さの算術平均値として求められ、粒子の数とその粒子径より、平均一次粒子径が算出される。
本発明の歯科用硬化性組成物には、本発明の趣旨を損なわない範囲内で、柔軟性、流動性等の改質を目的として重合体を添加することができる。例えば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、液状ポリイソプレンゴム及びその水素添加物、ポリブタジエンゴム、液状ポリブタジエンゴム及びその水素添加物、スチレン-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、又はスチレン系エラストマーを添加することができる。添加可能な他の重合体の具体例としては、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、ポリ(α-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(α-メチルスチレン)ブロック共重合体、ポリ(p-メチルスチレン)-ポリブタジエン-ポリ(p-メチルスチレン)ブロック共重合体、又はこれらの水素添加物等が挙げられる。これらの重合体は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、必要に応じて、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、及び、パラフィン、落花生油、ロジン等の植物油系軟化剤が挙げられる。これらの軟化剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。軟化剤の含有量は、本発明の趣旨を損なわない限り特に制限はないが、通常、(メタ)アクリルアミド(A)、及びα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)の総量100質量部に対して200質量部以下であり、好ましくは100質量部以下である。
また、本発明の歯科用硬化性組成物には、硬化物の劣化の抑制、又は光硬化性の調整を目的として、公知の安定剤を配合することができる。かかる安定剤としては、例えば、紫外線吸収剤、重合禁止剤、酸化防止剤等が挙げられる(ただし、前記安定剤において、ヒンダードフェノール化合物(C)を除く)。安定剤は、1種を単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。ある実施形態では、ヒンダードフェノール化合物(C)以外の紫外線吸収剤、重合禁止剤及び酸化防止剤を含まない歯科用硬化性組成物が挙げられる。
また、本発明の歯科用硬化性組成物には、色調あるいはペースト性状の調整を目的として、公知の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、例えば、顔料、染料、有機溶媒、増粘剤等が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物は、光造形(特に吊り上げ式液槽光造形)によって造形したときに、低臭気であるため不快でなく、低粘度かつ硬化性に優れるため造形しやすく、さらには色調及び色調安定性、応力保持性、靭性、及び耐水性に優れた造形物を得ることができる。また、インクジェット方式の光造形にも応用することができる。従って、本発明の歯科用硬化性組成物及びその硬化物は、このような利点が生かされる用途(例えば、口腔内用途)に適用でき、特に、歯科用マウスピース(歯科矯正用アライナー、オーラルアプライアンス(OA)、ナイトガード、歯科用スプリント)及び義歯床材料等の歯科材料や医療材料に最適である。医療材料としては、特に、睡眠時無呼吸症候群用治療具に最適である。さらに、本発明の歯科用硬化性組成物は、歯科用マウスピース及び義歯床材料等の歯科治療用途以外に、スポーツ用の外力に対する保護具として、マウスガードとしても好適に使用できる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は、優れた色調及び色調安定性、靭性、耐水性、造形性等の効果がより得られやすいことから、液槽光造形用硬化性組成物として用いるのが好ましい。本発明の歯科用硬化性組成物を用いる硬化物の形状は、各用途に応じて変更することができる。また、本発明の歯科用硬化性組成物は、必要に応じて、歯科用マウスピース及び義歯床材料等の用途毎に、各成分((メタ)アクリルアミド(A)、光重合開始剤(B)、ヒンダードフェノール化合物(C)、α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)、及び各種その他の成分(重合促進剤、フィラー、重合体、軟化剤、安定剤、添加剤等))の種類及び含有量を調整することができる。
本発明の歯科用硬化性組成物は、その特性、特に光で硬化した際に、体積収縮率が小さくて造形精度に優れ、しかも硬化物の靭性及び耐水性に優れる成形品あるいは立体造形物、さらにはその他の硬化物が得られるという特性を活かして種々の用途に使用することができ、例えば、光学的立体造形法による立体造形物の製造、流延成形法や注型等による膜状物あるいは型物等の各種成形品の製造、被覆用、真空成形用金型等に用いることができる。
そのうちでも、本発明の歯科用硬化性組成物は、上記した光学的立体造形法で用いるのに適しており、その場合には、光硬化時の体積収縮率を小さく保ちながら、造形精度に優れ、且つ靭性及び耐水性に優れる立体造形物を円滑に製造することができる。
本発明の他の実施形態としては、前記したいずれかの歯科用硬化性組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法が挙げられる。
本発明の歯科用硬化性組成物を用いて光学的立体造形(特に吊り上げ式液槽光造形)を行うに当たっては、従来公知の光学的立体造形法及び装置(例えば、DWS社製 DIGITALWAX(登録商標) 020D等の光造形機)のいずれもが使用できる。光学的立体造形法及び装置は特に限定されるものではないが、歯科用硬化性組成物の粘度の観点から、本発明の歯科用硬化性組成物は、特に吊り上げ式光学的立体造形装置(吊り上げ式液槽光造形装置)に好適である。そのうちでも、本発明では、歯科用硬化性組成物を硬化させるための光エネルギーとして、活性エネルギー光線を用いるのが好ましい。「活性エネルギー光線」は、紫外線、可視光線、電子線、X線、放射線、高周波などのような重合性組成物を硬化させ得るエネルギー線を意味する。例えば、活性エネルギー光線は、300~420nmの波長を有する紫外線であってもよい。活性エネルギー光線の光源としては、Arレーザー、He-Cdレーザーなどのレーザー;LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、水銀灯、蛍光灯、有機ELなどの照明などが挙げられ、レーザー及びLEDが特に好ましい。活性エネルギー光線の照射方式としては、ガルバノレーザー方式、フラットベッドレーザー方式などのレーザー方式(SLA方式)、プロジェクター方式(DLP方式)、液晶ディスプレイ方式(LCD方式)などが挙げられる。
上記したように、本発明の歯科用硬化性組成物を用いて光学的立体造形を行うに当たっては、従来公知の方法及び従来公知の光造形システム装置のいずれもが採用でき特に制限されないが、本発明で好ましく用いられる光学的立体造形法の代表例としては、歯科用硬化性組成物に所望のパターンを有する硬化層が得られるように活性エネルギー光線を選択的に照射して硬化層を形成する工程と、さらに未硬化液状の歯科用硬化性組成物を供給し、同様に活性エネルギー光線を照射して前記の硬化層と連続した硬化層を新たに形成して積層する工程とを繰り返すことによって最終的に目的とする立体造形物を得る方法を挙げることができる。また、それによって得られる立体造形物はそのまま用いても、また場合によってはさらに光照射によるポストキュアあるいは熱によるポストキュア等を行って、その力学的特性あるいは形状安定性等を一層高いものとしてから使用するようにしてもよい。
本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物の曲げ弾性率としては、0.4~3.0GPaの範囲が好ましく、0.6~2.5GPaの範囲がより好ましく、0.8~2.0GPaの範囲がさらに好ましい。硬化物の曲げ弾性率が2.0GPa以下である場合、しなやかな性状となり、マウスピース状にした場合に歯への追従性が良いため装着感に優れ、また、夜間の睡眠時ブラキシズムなどによって脱落しにくいという効果が得られる。また、本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物の曲げ強さとしては、30MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。硬化物の曲げ弾性率及び曲げ強さの測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
本発明の歯科用硬化性組成物の硬化物の応力保持性としては、硬化物の初期の応力に対する24時間後の応力の保持率が、50%以上であることが好ましく、歯科用マウスピース及び義歯床材料等の口腔内用途における衝撃吸収性に優れ、特に歯科矯正用アライナーに用いた場合に優れた矯正力が得られる点から、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。硬化物の応力保持率の測定方法は、後記する実施例に記載のとおりである。
光学的立体造形法によって得られる立体造形物の構造、形状、サイズ等は特に制限されず、各々の用途に応じて決めることができる。本発明の光学的立体造形法の代表的な応用分野としては、設計の途中で外観デザインを検証するためのモデル;部品の機能性をチェックするためのモデル;鋳型を制作するための樹脂型;金型を制作するためのベースモデル;試作金型用の直接型等の作製等が挙げられる。より具体的には、精密部品、電気・電子部品、家具、建築構造物、自動車用部品、各種容器類、鋳物、金型、母型等のためのモデルあるいは加工用モデル等の製作が挙げられる。
本発明の歯科用硬化性組成物は低臭気で、硬化物の靭性及び耐水性、色調及び色調安定性に優れるため、光学的立体造形によって得られる歯科材料用途以外に、歯科用コンポジットレジン、歯科用セメント、歯科用接着材等の一般的な光硬化性の歯科材料用途にも用いることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではなく、多くの変更が本発明の技術的思想の範囲内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
実施例又は比較例に係る歯科用硬化性組成物に用いた各成分を略号とともに以下に説明する。
[(メタ)アクリルアミド(A)]
PRAA:N-アクリロイルピロリジン(Merch KGaA社製、分子量125)
PPAA:N-アクリロイルピペリジン(Merch KGaA社製、分子量139)
[光重合開始剤(B)]
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド
BAPO:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド
[ヒンダードフェノール化合物(C)]
BHT:3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン
PETBHPP:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
[α,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)]
[ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1]
後述の合成例1及び2により製造したウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-1及び(D)-1-2を用いた。
[単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1]
POBA:m-フェノキシベンジルメタクリレート(共栄社化学株式会社製、常圧換算沸点300℃以上)
[多官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-2]
TCDDMA:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(共栄社化学株式会社製、常圧換算沸点300℃以上)
<合成例1>[ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-1の製造]
(1)撹拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積5Lの四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート250g、及びジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ0.15gを添加して、撹拌下に70℃に加熱した。
(2)一方、ポリエステルポリオール(株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標) P-2030」;イソフタル酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールからなるポリオール、重量平均分子量Mw2000)2500gを側管付きの滴下漏斗に添加し、この滴下漏斗の液を、上記(1)のフラスコ中に滴下した。なお、上記(1)のフラスコ中の溶液を撹拌しつつ、フラスコの内温を65~75℃に保持しながら4時間かけて等速で滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間撹拌して反応させた。
(3)次いで、別の滴下漏斗に添加した2-ヒドロキシエチルアクリレート150gとヒドロキノンモノメチルエーテル0.4gとを均一に溶解させた液をフラスコの内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速で滴下した後、フラスコ内の溶液の温度を70~80℃に保持しながら4時間反応させることにより、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-1を得た。GPC分析によるウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-1の重量平均分子量Mwは2700、常圧換算沸点は300℃以上であった。
<合成例2>[ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-2の製造]
(1)撹拌機、温度調節器、温度計及び凝縮器を備えた内容積5Lの四つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート250g、及びジラウリル酸ジ-n-ブチルスズ0.15gを添加して、撹拌下に70℃に加熱した。
(2)一方、ポリエステルポリオール(株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標) P-2050」;セバシン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールからなるポリオール、重量平均分子量Mw2000)2500gを側管付きの滴下漏斗に添加し、この滴下漏斗の液を、上記(1)のフラスコ中に滴下した。なお、上記(1)のフラスコ中の溶液を撹拌しつつ、フラスコの内温を65~75℃に保持しながら4時間かけて等速で滴下した。さらに、滴下終了後、同温度で2時間撹拌して反応させた。
(3)次いで、別の滴下漏斗に添加した2-ヒドロキシエチルアクリレート150gとヒドロキノンモノメチルエーテル0.4gとを均一に溶解させた液をフラスコの内温を55~65℃に保持しながら2時間かけて等速で滴下した後、フラスコ内の溶液の温度を70~80℃に保持しながら4時間反応させることにより、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-2を得た。GPC分析によるウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1-2の重量平均分子量Mwは2600、常圧換算沸点は300℃以上であった。
[実施例1~7及び比較例1~8]
表1及び表2に示す分量で各成分を常温(20℃±15℃、JIS(日本工業規格) Z 8703:1983)下で混合して、実施例1~7及び比較例1~8に係る歯科用硬化性組成物としてのペーストを調製した。
<臭気>
各実施例及び各比較例に係る歯科用硬化性組成物について、10人のパネラーで臭気を評価した(n=1)。10人のパネラーのうち、不快な臭気を感じた人が2人未満であったものを「○」、不快な臭気を感じた人が2人以上5人未満であったものを「△」、不快な臭気を感じた人が5人以上であったものを「×」とした。「○」を臭気について合格とした。
<造形性>
各実施例及び各比較例に係る歯科用硬化性組成物について、光造形機(DWS社製 DIGITALWAX(登録商標) 020D)を用いて、厚さ3.3mm×幅10.0mm×長さ64mmの試験片の造形を行った(n=5)。寸法通りの直方体が造形可能であった場合を造形可能「○」とし、1回でも立体造形物が得られなかった場合を造形不可「×」とした。なお、造形された試験片を用いて後述の評価を行った。
<応力保持性>
各実施例及び各比較例に係る歯科用硬化性組成物の硬化物について、光造形機(DWS社製 DIGITALWAX(登録商標) 020D)を用いて、長さ60mm、幅20mm、厚さ1.0mmのシート状の硬化物を作製した。硬化で得られた造形物を、エタノールで洗浄し、未重合の重合性単量体を除去した後、光照射機(EnvisionTEC社製 Otoflash(登録商標)G171)を用いてさらに重合し、JIS K 6251:2010(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-引張特性の求め方)に記載されるダンベル状8号形(平行部分の厚さ:2.0mm、平行部分の最大厚さ:2.5mm)の打抜き刃形で打ち抜き、引張試験片を作製した(n=5)。得られた試験片を用いて、応力保持性を評価した。具体的には、万能試験機(株式会社島津製作所製、EZ Test EZ-SX 500N)を用いて、治具間距離10mmでクロスヘッドスピード20mm/minで0.5mm引張った後、そのまま24時間保持し、応力(所定伸び引張応力)の減衰挙動を観察し、以下の式で算出した。平均値を表1、2に示す。初期の応力は0.5mm引張った直後の測定値を意味する。この試験で、初期の応力に対する24時間後の応力が、50%以上であることが好ましく、55%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。
応力保持率(%)=24時間後の応力/初期の応力×100
<靭性(曲げ弾性率、曲げ強さ、破断点変位)>
各実施例及び各比較例に係る歯科用硬化性組成物の硬化物につい、光造形機(DWS社製 DIGITALWAX(登録商標) 020D)を用いて、JIS T 6501:2012(義歯床用アクリル系レジン)に記載されている長さ64.0mm、幅10.0mm、厚さ3.3mmの試験片を作製した。得られた造形物を、エタノールで洗浄し、未重合の重合性単量体を除去した後、光照射機(EnvisionTEC社製 Otoflash(登録商標)G171)を用いてさらに重合し硬化物を得た。得られた硬化物を空気中で1日保管後、曲げ強さ試験を行って評価し、これを初期値とした。すなわち、万能試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG-I 100kN)を用いて、クロスヘッドスピード5mm/minで曲げ強さ試験を実施した(n=5)。測定結果の平均値を表1、2に示す。試験片の曲げ弾性率としては、0.4~3.0GPaの範囲が好ましく、0.6~2.5GPaの範囲がより好ましく、0.8~2.0GPaの範囲がさらに好ましい。曲げ強さ(3点曲げ強さ)としては、30MPa以上が好ましく、40MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。破断点変位としては、破断しないことが好ましい。最後まで破断しない、又は変位20mm以上で破断した場合を柔軟性が良好「○」とし、変位10mm超20mm未満で破断した場合を柔軟性が中程度「△」とし、変位10mm以下で破断した場合を柔軟性が悪い「×」とした。靭性としては、破断点変位の評価が「△」又は「○」であり、曲げ弾性率が0.4~3.0GPaの範囲であり、かつ曲げ強さが30MPa以上であるものを合格とした。
<耐水性>
靭性の測定で作製した硬化物と同様にして作製した、各実施例及び各比較例に係る歯科用硬化性組成物の硬化物について、37℃水中浸漬168時間後、上記曲げ強さ試験と同様に、曲げ強さを測定した(n=5)。上記靭性における曲げ強さの測定結果を初期の曲げ強さとし、初期の曲げ強さに対する、37℃水中浸漬168時間後の曲げ強さの変化率(低下率)を以下の式で算出した。算出した値の平均値を表1、2に示す。低下率が10%以下であれば耐水性に優れ、7%以下であればより耐水性に優れる。37℃水中浸漬168時間後の曲げ強さを表1、2では、「浸漬後の曲げ強さ」として示す。
曲げ強さの変化率(低下率)(%)=〔{初期の曲げ強さ(MPa)-37℃水中浸漬168時間後の曲げ強さ(MPa)}/初期の曲げ強さ(MPa)〕×100
<色調及び色調安定性>
各実施例及び比較例の歯科用硬化性組成物について、上記と同様の光造形機を用いて、直径15.0mm×厚さ1.0mmのディスク状の造形物を作製した。得られた造形物を、エタノールで洗浄し、未重合の重合性単量体を除去した後、光照射機(EnvisionTEC社製 Otoflash(登録商標)G171)を用いて追い込み重合し、硬化物を得た。得られた硬化物をシリコンカーバイド紙1000番で研磨し、続いて歯科用ラッピングフィルム(3M社製)で研磨した後、分光測色計(コニカミノルタ株式会社製、SPECTROPHOTOMETER CM-3610A、JIS Z 8722:2009、条件cに準拠、D65光源)を用いて、黄色度b*値、及び黄変度Δb*値を測定し、平均値を得た(n=5)。前記平均値を表1、2に示す。また、黄変度Δb*値は以下の式で定義される。
Δb*=b* (7d)-b* (0d)
(式中、b* (7d)は造形及び二次重合後7日後に測定されるJIS Z 8781-4:2013のL*a*b*表色系における黄色度b*値の平均値を表し、b* (0d)は造形及び二次重合直後に測定されるL*a*b*表色系における黄色度b*値の平均値を表す。)
該黄色度b*値が10.0以下である場合、歯科用補綴物を作製した場合に目視で無色と認識されやすい。また、該黄変度Δb*値が5.0以下である場合、歯科用補綴物を作製した場合に目視で黄変がないと認識されやすい。
Figure 0007543026000006
Figure 0007543026000007
表1及び表2に示す通り、実施例1~7における歯科用硬化性組成物は、低臭気で、造形性に優れ、その硬化物は応力保持性、靭性、耐水性、色調及び色調安定性に優れていた。特に、アクリルアミド(A)及びヒンダードフェノール化合物(C)をしない比較例1の歯科用硬化性組成物は寸法通りの造形物が得られなかった。硬化物の応力保持性、靭性及び耐水性は、(メタ)アクリルアミド(A)に該当しないアクリルアミドを含有する比較例2及び3の歯科用硬化性組成物より優れていた。硬化物の色調及び色調安定性は、ヒンダードフェノール化合物(C)を適正な含有量と配合比で含有しない比較例4~8の歯科用硬化性組成物より優れていた。また、ヒンダードフェノール化合物(C)の含有量が多すぎる比較例6では、硬化物の応力保持性、靭性、及び耐水性も劣っていた。
本発明の歯科用硬化性組成物は、光造形によって造形したときに、低粘度で造形しやすく、かつ応力保持性、靭性、耐水性、色調及び色調安定性に優れるため、各種歯科材料(特に歯科用マウスピース、義歯床材料)又は各種睡眠障害治療材料(特に睡眠時無呼吸症候群用治療具)等の口腔内環境で、継続的に応力が付加される用途に好適に用いることができる。また、低臭気で、靭性及び耐水性、色調及び色調安定性に優れるため、歯科用コンポジットレジン、歯科用セメント、歯科用接着材等の光硬化性の歯科材料用途にも用いることができる。

Claims (14)

  1. 脂環式アミノ基(a)を含有する(メタ)アクリルアミド(A)、光重合開始剤(B)、及びヒンダードフェノール化合物(C)を含有し、
    前記脂環式アミノ基(a)は、ヘテロ原子として環構造内に1個の窒素原子のみを有し、かつ、前記脂環式アミノ基(a)が有する窒素原子に(メタ)アクリロイル基が直接結合しており、
    前記脂環式アミノ基(a)の環構造を形成している炭化水素鎖の炭素数が、4~5であり、
    前記光重合開始剤(B)が、(ビス)アシルホスフィンオキシド類を含み、
    前記ヒンダードフェノール化合物(C)が、下記一般式[I]で表される化合物及び/又は下記一般式[III]で表される化合物を含有し、
    前記ヒンダードフェノール化合物(C)の含有量が、前記光重合開始剤(B)の含有量100質量部に対して0.1~200質量部である、歯科用硬化性組成物。
    Figure 0007543026000008
    (式中、R1~R3は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基又は水酸基を表し、R1~R3の前記基(水酸基を除く)は、-O-、-S-、-NH-、-N(R4)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R4は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
    Figure 0007543026000009
    (式中、R10及びR11は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数1~のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~のアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基を表し、Z1は置換基を有していてもよい炭素数1~のアルキレン基を表し、Z2は炭素原子、硫黄原子、又はアリール基を表し、nは2~の整数を表し、R10、R11及びZ1の前記基は、-O-、-S-、-NH-、-N(R12)-、-O(CO)-、及び-CO-からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合基を含んでいてもよい。R12は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
  2. 前記ヒンダードフェノール化合物(C)が、一般式[III]で表される化合物を含有する、請求項に記載の歯科用硬化性組成物。
  3. 厚さが2.0mm±0.2mmである硬化物の24時間後の応力保持率が、50%以上である、請求項1又は2に記載の歯科用硬化性組成物。
  4. (メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
  5. 前記(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)が、常圧換算沸点が250℃以上である、請求項に記載の歯科用硬化性組成物。
  6. 前記(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)が、ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1を含有する、請求項又はに記載の歯科用硬化性組成物。
  7. 前記ウレタン化(メタ)アクリル化合物(D)-1が、1分子内に、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、及びポリエーテルからなる群より選ばれる少なくとも1種の構造、並びにウレタン結合を含有する(メタ)アクリレートである、請求項に記載の歯科用硬化性組成物。
  8. 前記(メタ)アクリルアミド(A)以外のα,β-不飽和二重結合基含有化合物(D)が、ウレタン結合を有しない(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2を含有する、請求項のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
  9. ウレタン結合を有しない単官能性の(メタ)アクリル酸エステル化合物(D)-2-1を実質的に含有しない、請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物。
  10. 請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、歯科用マウスピース。
  11. 請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、義歯床材料。
  12. 請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物の硬化物からなる、睡眠障害治療材料。
  13. 請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物からなる、光造形用材料。
  14. 請求項1~のいずれか1項に記載の歯科用硬化性組成物を用いて、光学的立体造形法によって立体造形物を製造する方法。
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