JP7389576B2 - 表面保護フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、例えば被着体に貼り付けて使用する表面保護フィルムに関する。
表面保護フィルムは、光学基材や建材材料等の樹脂製品、金属製品、ガラス製品、半導体ウエハなどの被着体に貼り付けて使用され、これらを輸送、保管、加工する際に、傷付き、破損、異物の混入を防ぐ等の役割や、所定の工程における支持体の役割を果たしている。これらの表面保護フィルムは、一般には粘着性を有しない離型性の高い背面層と、前記被着体と粘着させるための粘着層とを含む。背面層としては、通常、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンや、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体から形成された層が使用されている。
このような表面保護フィルムに必要な特性は、被着体に対する適切な粘着力を発現すること、被着体から表面保護フィルムの浮きや剥がれがないこと、被着体に変形や欠けといった欠陥が生じないこと、表面保護フィルムを剥がして除去する場合には、被着体に粘着成分が残留しないことである。特に、表面保護フィルムを被着体に貼り付けて得られた構造物(以下、これを「積層体」ということがある。)が高温条件下におかれる場合には、被着体や、表面保護フィルムに収縮や軟化が生じやすい。例えば近年、スマートフォンやタブレット端末等に代表される携帯情報電子機器が普及しており、偏光板等の光学フィルムや透明導電膜(ITO;スズドーブ酸化インジウム)が採用されている。当該部材を硬化型接着剤等で貼り合わせる熱処理工程、あるいは、透明電導膜の結晶化を促進するためのアニール処理等が行われることがある。したがって、表面保護フィルムとしては、一般的な粘着フィルムよりも、さらなる高度な性能が求められる。
特許文献1には、実質的にシンジオタクチック構造を有するポリプロピレンを基材層に含む、耐熱性に優れ、フィルムの引き伸ばし時にも白化を抑制し、特に保管・輸送時の温度変化においてもフィルムの浮きや剥がれを生じない、密着性を有した表面保護フィルムが開示されている。
特許文献2には、基材層にプロピレン系共重合体を用いることで保管等の際に温度変化が生じてもフィルムの浮や剥がれを抑制できる表面保護フィルムが開示されている。
特許文献3には、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位及び炭素数2又は3のα-オレフィンに由来する構成単位を含む共重合体である熱可塑性樹脂(A)と、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、及び4-メチル-1-ペンテン系重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種の重合体である、前記熱可塑性樹脂(A)以外の熱可塑性樹脂(B)を含む応力緩和層よりなる表面保護フィルムが開示されている。
特開2015-034215号公報 特開2014-208734号公報 特許第5965070号公報
近年、ブラウン管ディスプレイから、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイへの移行や、多機能携帯電話、スマートフォンやタブレット端末等に代表される携帯情報電子機器の普及が進んでいる。これらに用いる部材において、高機能化、高性能化に伴い、凹凸の大きい表面形状を有する、または、表面が凹凸になるように表面処理された部材が増えており、これらの部材と、表面保護フィルムの粘着層との接触面積が必然的に小さくなることから、表面保護フィルムが部分的に変形した状態になりやすくなっている。このような状態で輸送、保管、加工等をする際に、高温下で曝されると、変形した部分は元の状態に回復しようとするため、表面保護フィルムと被着体との界面で浮き上がりが生じ、あるいは表面保護フィルムが剥がれ易くなるという問題がある。
近年、偏光板等の光学フィルムや透明導電膜の採用が著しい。当該部材を硬化型接着剤等で貼り合わせる熱処理工程、あるいは、透明電導膜の結晶化を促進するためのアニール処理等が行われることがある。したがって、表面保護フィルムには、高温下においても被着体との界面で浮き上がりや剥がれが抑制される性能が求められている。
しかしながら、特許文献1では、60℃に於ける収縮率のみ述べられており、より高温下での収縮率や被着体からの反りについては述べられていない。
特許文献2に記載の表面保護フィルムは、50℃における被着体からの反りは抑制されるが、より高温条件下では被着体と表面保護フィルムとの界面で浮き上がりや剥離が生ずることがわかった。
さらに、特許文献3に記載の表面保護フィルムは、23℃での剥離強度が述べられているのみであり、より高温下においては積層体の反りや表面保護フィルムの剥離が起こることがある。
本発明は、以上のことに鑑みてなされたものであり、被着体に対し高温下でも、被着体からの浮きや剥離が起こりにくい表面保護フィルムであり、かつ積層体の反りを抑制できる表面保護フィルムを提供することを課題とする。
本発明者らは前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、特定の表面保護フィルムによれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は、以下の通りである。
本発明は、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有率が90モル%以上100モル%以下であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の含有率が10モル%以下である(前記4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位および前記α-オレフィンから導かれる構成単位の含有率の合計を100モル%とする)共重合体である熱可塑性樹脂(X)と、
4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有率が70モル%以上90モル%未満であり、炭素原子数2~12のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の含有率が10モル%を超え30モル%以下である(前記4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位および前記α-オレフィンから導かれる構成単位の含有率の合計を100モル%とする)の共重合体である熱可塑性樹脂(Y)とを含み、
前記熱可塑性樹脂(X)の含有量が20質量%以上80質量%以下、前記熱可塑性樹脂(Y)の含有量が20質量%以上80質量%以下であり(熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)の合計量を100質量%とする。)、
JIS K7133に準拠して測定した寸法変化率において、150℃で、30分加熱した後の縦方向および横方向の寸法変化率の絶対値が0.20%未満(ただし、前記寸法変化率において、プラスの数値は膨張したときの変化の比率を、マイナスの数値は収縮したときの変化の比率を示す。)の表面保護フィルムである。
前記表面保護フィルムは、前記熱可塑性樹脂(Y)が下記の要件(i)~(iv)を満たすことが好ましい。
(i)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.1~5.0dl/gである、
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5である、
(iii)DSCで測定した融点(Tm)が200℃未満であるか、またはDSCで融点が観測されない、
(iv)密度が830~860kg/m3である。
前記表面保護フィルムの好適な態様として、前記熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)を含む基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着層とを有する表面保護フィルムを挙げることができる。
本発明に係る表面保護フィルムは、被着体に対して適度な粘着力を発現し、高温下においても、被着体からの浮きや剥離が起こりにくい。被着体から剥離させる際には、容易に剥がすことができ、かつ、被着体へ粘着剤成分が残りにくい。また、本発明に係る表面保護フィルムを用いることで、高温下でも反りが起こり難い積層体を得ることができる。このため、本発明に係る表面保護フィルムは、光学基材、建材、自動車部品、半導体ウエハ等に使用される表面保護フィルムとして好適に用いることができ、産業上の利用価値は極めて高い。
また、本発明に係る表面保護フィルムは、凹凸の大きい表面形状を有する被着体を用いた場合であっても、前記の効果を十分に発揮する。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、本明細書において、「(共)重合体」なる語句は、単独重合体および共重合体を包含する意味で用いられる。
本発明の表面保護フィルム(以下「本フィルム」ということがある。)は、以下に述べる熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)を含有する。
<熱可塑性樹脂(X)>
熱可塑性樹脂(X)としては、後述する熱可塑性樹脂(Y)以外の4-メチル‐1‐ペンテンを主成分とする4-メチル‐1‐ペンテン(共)重合体を使用することができる。4-メチル‐1‐ペンテン(共)重合体は、従来公知のオレフィン重合用触媒、例えば、バナジウム系触媒、チタン系触媒、マグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3-193796号広報あるいは特開平02-41303号広報に記載のメタロセン触媒などを用いて、4-メチル-1-ペンテンと、必要に応じて炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)やその他の化合物を重合することにより得ることができる。
具体的には、4-メチル-1-ペンテンの単独重合体、および4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有率が90モル%以上 、好ましくは92モル%以上99モル%以下 、炭素数2~20、 好ましくは6~20のα-オレフィンから導かれる構成単位の含有率が10モル%以下 、好ましくは1モル%以上8モル%以下である4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィンランダム共重合体が挙げられる。構成単位の含有率(モル%)の値は、13C-NMRにより測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィンランダム共重合体の場合、4-メチル-1-ペンテンと共重合するα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数2~20 、好ましくは6~20のα-オレフィンが挙げられる。これらは、1種単独で、あるいは2種以上組み合せて用いることができる。4-メチル-1-ペンテン(共)重合体のメルトマスフローレイト(MFR;JIS K7210-1、温度260℃ 、荷重5.0kg)は、0.1~200g/10分であることが好ましく、1~100g/10分の範囲内にあることがより好ましい。
また、熱可塑性樹脂(X)として使用される4-メチル-1-ペンテン(共)重合体としては、市販品を使用することもでき、例えば三井化学株式会社製TPX(登録商標)が挙げられる。
<熱可塑性樹脂(Y)>
熱可塑性樹脂(Y)としては、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位を70モル%以上90モル%未満含有するオレフィン系共重合体が好ましく、周波数1.6Hzでの動的粘弾性測定におけるtanδ値(損失正接)のピーク温度が5℃以上で観測されるオレフィン系共重合体がより好ましい。
熱可塑性樹脂(Y)としては、4-メチル-1-ペンテンと、少なくとも1種の炭素数2~12のα-オレフィンとのオレフィン共重合体がさらに好ましく、4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位(I)、および炭素数2~12のオレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位(II)の合計を100モル%とした場合、構成単位(I)の含有率が70モル%以上90モル%未満、より好ましくは70~88モル%であり、かつ、構成単位(II)の含有率が10モル%を超え30モル%以下、より好ましくは12~30モル%である共重合体であることが特に好ましい。
構成単位の含有率(モル%)の値は、13C-NMRにより測定され、具体的な測定方法については実施例に記載の通りである。
前記炭素数2~12のオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン、1-ドデセンなどが挙げられ、このなかでも特にプロピレンが好ましい。
熱可塑性樹脂(Y)は、下記の要件(i)~(iv)を満たすことが好ましい。
要件(i)
前記熱可塑性樹脂(Y)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度〔η〕は、0.1~5.0dl/gの範囲にある。前記極限粘度〔η〕は、好ましくは0.5~4.0dl/g、より好ましくは1.0~4.0dl/gである。後述するように重合中に水素を併用すると分子量を制御でき、低分子量体から高分子量体まで自在に得ることができるので、極限粘度〔η〕を調整することができる。
前記極限粘度〔η〕が0.1dl/gよりも小さい、または5.0dl/gよりも大きいと、フィルムの成形性が損なわれることがある。
要件(ii)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~3.5の範囲にある。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。前記分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~3.0、さらに好ましくは1.5~2.8である。前記分子量分布(Mw/Mn)が3.5よりも大きいと、組成分布に由来する低分子量、低立体規則性ポリマーの影響が現れて、成形性が悪くなる。
また、熱可塑性樹脂(Y)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算で、好ましくは500~10,000,000、より好ましくは1,000~5,000,000、さらに好ましくは1,000~2,500,000である。
要件(iii)
前記熱可塑性樹脂(Y)のDSC(示差走査熱量測定)で測定した融点(Tm)は、200℃未満であるか、またはDSCで融点が観測されない。融点を有する場合、その上限は好ましくは180℃、より好ましくは160℃、さらに好ましくは140℃である。なお、下限は特に限定されないが、通常130℃である。
上記融点の値は、重合体の立体規則性ならびに共に重合するα-オレフィン量に依存して変化する。後述するオレフィン重合用触媒を用いて所望の組成に制御して、融点を調整することが可能である。
前記熱可塑性樹脂(X)と前記熱可塑性樹脂(Y)を組み合わせた場合、熱可塑性樹脂(X)の耐熱性が高く、また相容性が良いことから機械物性を損ねることなく、寸法安定性が良好な表面保護フィルムを得ることができる。
要件(iv)
前記熱可塑性樹脂(Y)の密度は、830~860kg/m3、好ましくは830~850kg/m3である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。密度は、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体のコモノマー組成比によって適宜変えることができる。密度が上記範囲内にある前記熱可塑性樹脂(Y)は、表面保護フィルムの透明性や寸法安定性を高める上で有利である。
<表面保護フィルム>
本発明に係る表面保護フィルムは、JIS K7133に準拠して測定した寸法変化率において、150℃で、30分加熱した後の縦方向(Machine Direction;以下、「MD方向」ということがある)および横方向(Transverse Direction;以下、「TD方向」ということがある)の寸法変化率の絶対値が0.20%未満である。前記寸法変化率の測定方法は、実施例において詳説する。
前記寸法変化率の測定において、表面保護フィルムである試験片が膨張したときには寸法変化率はプラスの数値をとり、収縮したときには寸法変化率はマイナスの数値をとり、膨張も収縮もしなかったときには寸法変化率は0となる。寸法変化率の絶対値が0.20%未満であるということは、寸法変化率が0であるか、寸法変化率の数値が0を上回り、+0.20%に至らない範囲内であるか、または寸法変化率の数値が0を下回り、-0.20%に至らない範囲内であることを意味する。なお、寸法変化率がプラスの数値であるときには、あえて「+」は表記しない場合がある。
本発明の表面保護フィルムは、上記の性質を有することにより、被着体に対し高温下でも、被着体からの浮きや剥離が起こりにくく、積層体の反りを抑制することができる。
一般的に、キャストフィルム等の押出成形法で作製される樹脂フィルムは、MD方向に溶融樹脂が配向した状態で固化する。そこで、得られたフィルムをガラス転移温度(Tg)以上に加熱すれば、MD方向に収縮することが知られている。
4-メチル-1-ペンテン系樹脂(前記熱可塑性樹脂(X)に相当する)により作製した樹脂フィルムも、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱すれば、同様にMD方向に収縮するので、高温下での寸法安定性に課題があった。
一方で、前記熱可塑性樹脂(Y)からなるフィルムは、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱すると、一般的な樹脂フィルムとは挙動が異なり、膨張することがわかった。この性質は、前記熱可塑性樹脂(Y)の高い応力吸収性に起因していると考えられる。したがって、前記熱可塑性樹脂(Y)は、MD方向に溶融樹脂が配向しても、分子鎖の変形によって起こりうる熱エネルギーを吸収する作用が働き、配向した状態で熱的に安定化する。
つまり、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱しても、配向を緩和することなく収縮が生じない。このことは、分子配向していない状態で、ガラス転移温度(Tg)以上に加熱することと同じような現象と考えられ、分子鎖の運動が活発になり、フィルムが膨張する傾向にある。
すなわち、前記熱可塑性樹脂(X)と前記熱可塑性樹脂(Y)を配合してなる樹脂フィルムは、収縮と膨張が相殺される効果を発現し、結果として高温下においても、極めて寸法変化の小さいフィルムとなる。以上のような理由から、本フィルムは、JIS K7133に準拠して測定した寸法変化率において、150℃で、30分加熱した後の縦方向および横方向の寸法変化率の絶対値が0.20%未満であるという性質を有すると考えられる。
本フィルムにおいて、前記熱可塑性樹脂(X)および前記熱可塑性樹脂(Y)の合計100質量%に対する熱可塑性樹脂(X)の含有量は、前記効果がより発揮される等の点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、特に好ましくは40~60質量%である。
本フィルムにおいて、前記熱可塑性樹脂(X)および前記熱可塑性樹脂(Y)の合計100質量%に対する前記前記熱可塑性樹脂(Y)の含有量は、前記効果がより発揮される点から、好ましくは80質量%以下、より好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは30~70質量%、特に好ましくは40~60質量%である。
本フィルムの厚みとしては、例えば、4~500μm、好ましくは10~400μm、さらに好ましくは20~300μmである。
本フィルムの用途としては特に制限されないが、本発明の効果がより発揮される等の点から、光学、建材、自動車部品、半導体ウエハ等に使用される表面保護フィルム等が挙げられる。また、本フィルムは、被着体を加工等する際の支持体としても用いることができる。
本フィルムの好適な態様として、前記熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)を含む基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着層とを有する表面保護フィルムを挙げることができる。さらに、前記基材層の、粘着層が設けられた面とは反対側の面に背面層が設けられていてもよい。
<粘着層>
前記粘着層を設ける方法としては、例えば、溶剤塗工法が挙げられる。溶剤塗工を行うにあたり、基材層を製膜した後に、粘着層を設けようとする基材層であるフィルムの一方の片面に、予め従来公知のコロナ放電処理、プラズマ処理、プライマー処理、アンカーコーティング処理の易接着処理が施されてもよい。
なかでも、比較的高い接着力が短い処理時間で得られ、フィルム成形やラミネーションなどの工程との組み合わせることが容易であるコロナ放電処理が好ましい。コロナ放電処理は、フィルム表面のぬれ張力(mN/m)を改質せしめて、粘着剤の塗工性を向上させることができる。一般的に、放電量(W・min/m2)とフィルム表面のぬれ張力は比例関係にあり、放電量を増加させるとフィルム表面のぬれ張力が高くなる傾向がある。
フィルム表面のぬれ張力は、JIS K6768に準拠して測定することができる。本フィルムの粘着層を設ける溶剤塗工法に必要なフィルム表面のぬれ張力は特に制限されないが、30~50mN/mが好ましく、より好ましくは32~48mN/m、さらに好ましくは34~48mN/mである。
前記溶剤塗工法によると、例えばコロナ放電照射によりぬれ張力が改質されたフィルム表面に、粘着剤を溶剤塗工し、乾燥することで本フィルムの粘着層を得ることができる。
前記溶剤塗工法は、粘着剤を含む溶液の粘度を調整して塗工を行うことが可能なため、粘着層の厚みを制御し易い利点がある。前記溶剤塗工としては、従来公知の塗工方法、例えば、ロールコーター法、グラビアロール法、バーコーター法、ダイコーター法、ナイフコート法、コンマコーター法などが挙げられる。溶剤塗工の乾燥条件には特に制限がないが、一般的には、60~200℃の温度範囲において、10秒~10分間乾燥することが好ましい。より好ましくは、80℃~170℃において、15秒~5分間乾燥する。
溶剤塗工法に用いる粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、オレフィン系粘着剤、スチレン系粘着剤などが挙げられる。なかでも、粘着力の制御が容易であり、かつ耐熱性の観点からアクリル系粘着剤が好ましい。
アクリル系粘着剤に含まれるアクリル系重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル系共重合体を構成するコモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、(メタ)アクリルニトリル、メチロール(メタ)アクリルアミド、無水マレイン酸等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
さらに、溶剤塗工法に用いる粘着剤に、必要に応じて架橋剤等を加えてもよい。架橋剤としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、N,N‘-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N‘-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物が挙げられる。
前記架橋剤の含有量は、フィルム表面との密着力や耐熱性の観点から、アクリル系重合体100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましい。
前記溶剤塗工法による粘着層の厚みは特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、1~20μm、好ましくは2~12μmである。
前記粘着層を設ける方法として、共押出製法も挙げられる。共押出製法は、基材層となる樹脂と粘着剤を溶融状態にして多層化して得られる。溶剤の使用が不要であり、基材層と粘着剤とを同時に製膜できる利点がある。
共押出製法に適する粘着剤としては、公知の粘着力を有する単独重合体、または共重合体を用いることができる。共押出製法に用いられる粘着剤は、例えばスチレン系重合体、および、(メタ)アクリル系重合体から選ばれる1種類以上の重合体を含むことが好ましい。
共押出製法に用いられる粘着剤としては、例えば(メタ)アクリロイル基を有する重合体であれば特に制限されないが、例えば、エチレン性二重結合を有するモノマーと、反応性官能基を有する共重合性モノマーとを共重合して得られた共重合体と、前記反応性官能基と反応し得る基を有する重合性炭素-炭素二重結合を含むモノマーと、を反応させた重合体が挙げられる。
さらに、前記共押出製法に用いられる粘着材として具体的には、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体(SIS)、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SBS)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体(SEBS)、これらの水素化物、スチレン・イソブチレン・スチレントリブロック共重合体(SIBS)、スチレン・イソブチレンジブロック共重合体(SIB)等が挙げられる。好ましくは、SIBS、SIB、およびこれらの混合化合物である。
前記エチレン性二重結合を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル酢酸ビニル等のビニルエステル;アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;スチレンが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記反応性官能基を有する共重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記反応性官能基と反応し得る基を有する重合性炭素-炭素二重結合を含むモノマーとしては、特に限定されない。例えば、前記反応性官能基と、該反応性官能基と反応し得る基との組み合わせの例としては、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジル基、水酸基とイソシアネート基が挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、前記共押出製法に用いる粘着材は、粘着力の調整を目的として、本発明の特性を損なわない範囲で、ポリエチレンおよびポリプロピレンに代表される公知のポリオレフィン、従来公知の添加剤として、例えば、ポリエステルエラストマー等の樹脂改質剤、石油樹脂、水添系石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、ロジン誘導体、テルペン系樹脂等の粘着付与剤、ポリオレフィン系ワックス、シリコーン系ワックス、シリカやタルクに代表されるアンチブロッキング剤等公知の離型付与剤、帯電防止剤、導電剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤を含有してもよい。
前記共押出製法による粘着層の厚みは特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、1~100μm、好ましくは4~80μmである。
<背面層>
本フィルムにおいては、離型性、剛性、寸法安定性、ハンドリング性等の扱い易さなどを考慮し、基材層の、粘着層が設けられた面とは反対側の面に、背面層を設けてもよい。
前記背面層としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル重合体等の公知の樹脂を含む層が挙げられる。これらの中でも、取り扱い性に優れる、ポリオレフィンからなる層が好ましい。
該ポリオレフィンとしては、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレンと少なくとも1種の炭素数3以外のα-オレフィンとからなる共重合体、高圧法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、4-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられるが、これらの中でも、フィッシュアイ(架橋ゲル)が生じにくい、プロピレン単独重合体、プロピレンと少なくとも1種の炭素数3以外のα-オレフィンとからなる共重合体等のプロピレン系重合体がより好ましく、離形性等の点から、プロピレンと少なくとも1種の炭素数3以外のα-オレフィンとからなるブロック共重合体がさらに好ましい。
前記背面層は、1種の樹脂を含んでもよく、2種以上の樹脂を含んでもよく、また必要に応じて、本発明の特性を損なわない範囲で、従来公知の添加剤、例えば、ポリオレフィン系ワックス、液状シリコン樹脂、テトラフロロエチレン樹脂、メタクリル樹脂粉末、微粉末架橋樹脂、微粉末シリカ、微粉末酸化アルミニウム、タルクに代表されるアンチブロッキング剤等の公知の離型付与剤、帯電防止剤、染料、塩酸吸収剤、導電剤、耐候剤、結晶核剤、酸化防止剤、滑剤を含有してもよい。
酸化防止剤としては、公知の酸化防止剤が使用可能である。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、硫黄系酸化防止剤、ラクトーン系酸化防止剤、有機ホスファイト化合物、有機ホスフォナイト化合物、あるいはこれらを数種組み合わせたものが使用できる。
滑剤としては、例えば、ラウリル酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの飽和または不飽和脂肪酸のナトリウム、カルシウム、マグネシウム塩などが挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。滑剤の配合量は、重合体組成物100質量部に対して、0.1~3質量部、好ましくは0.1~2質量部程度であることが望ましい。
前記背面層を設ける場合、背面層の厚みは特に制限されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、1~100μm、好ましくは2~80μmである。
<表面保護フィルムの製造方法>
本フィルムを製造する方法は特に制限されないが、各層を形成する重合体等を用い、共押出成形や押出ラミネートなどの公知の成形方法により製造することができる。また、予め、キャストフィルム成形、あるいはインフレーションフィルム成形等にて得られた層上に、押出コーティングする方法や各層となるフィルムをドライラミネーションなどにより積層する方法も挙げることができる。
<積層体>
本発明では、表面保護フィルムと被着体とを貼り付けて得られた構造物を積層体という。
前記被着体としては特に制限されないが、JIS K7127に準拠(ただし、幅15mm、長さ100mm、厚み50μmである試験片タイプ2を使用)して、23℃、試験速度200mm/分により測定される引張弾性率が1500MPa以上、好ましくは1800~4500MPaであるものを好適に用いることができる。
引張弾性率が前記範囲にある被着体は、室温下で硬く、収縮しにくい特徴がある。
前記被着体の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリ(メタ)アクリレート、シリコンウエハ、ガラスなどが挙げられる。
以下に本発明を実施例によって詳細な説明をするが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)の物性は、以下のように測定した。
<構成単位の含有率>
ポリマー中の4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有率(以下、4-メチル-1-ペンテン含量ともいう)、およびα-オレフィンから導かれる構成単位の含量率(以下、α-オレフィン含量ともいう)の測定は、以下の装置および条件により13C-NMRで測定した結果を基にして行った。ただし、本測定結果のα-オレフィン含量には、4-メチル-1-ペンテン含量は含まれない。
日本電子社製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6ml、測定温度120℃において、観測核は13C(125MHz)、シーケンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は1万回以上とし、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。得られた13C-NMRスペクトルにより、4-メチル-1-ペンテン含量、α-オレフィン含量を測定した。
<極限粘度〔η〕>
極限粘度〔η〕は、デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。重合パウダー、ペレットまたは樹脂塊を約20mg採取し、デカリン15mlに溶解して、135℃に加熱したオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同じように比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)をゼロに外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として算出した(下式参照)。
[η]=lim(ηsp/C)、ただしC=0
<重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn値)>
各分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した。液体クロマトグラフとしてWaters製ALC/GPC150-Cplus型(示唆屈折計検出器一体型)を用い、分離カラムとして東ソー株式会社製GMH6-HTを2本、およびGMH6-HTLを2本直列接続して用い、移動相媒体としてo-ジクロロベンゼン、および酸化防止剤として0.025質量%のBHT(武田薬品工業社製)を用い、移動相媒体を1.0ml/分で移動させ、試料濃度は15mg/10mlとし、試料注入量は500マイクロリットルとし、検出器は示差屈折計を用いた。標準ポリスチレンとしては、重量平均分子量(Mw)が1,000以上、4000,000以下において、東ソー社製の標準ポリスチレンを用いた。
得られたクロマトグラムを、公知の方法によって、標準ポリスチレンサンプルを用いて検量線を作成して解析することで、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn値)を算出した。1サンプル当たりの測定時間は60分であった。
<メルトマスフローレイト(MFR)>
メルトマスフローレイトは、JIS K7210-1に準拠して、前記熱可塑性樹脂(X)については、温度260℃、荷重5.0kgで測定し、前記熱可塑性樹脂(Y)については、温度230℃、荷重2.16kgで測定した。
<融点>
JIS K7121に準拠し、セイコーインスルメンツ社製示差走査熱量計DSC220Cを用い、昇温速度10℃/分で測定される融解ピーク頂点の最も高い温度を融点(Tm)とした。融解ピーク頂点が現れなかった場合は、融点が観測されないと評価した。
<密度>
密度は、JIS K7112に準拠して、密度勾配管を用いて測定した。
<tanδ(損失正接)の測定>
各重合体から、厚さ2mmのプレスシートを作製して試験片とした。
Anton Paar社製レオメータMCR301を用いて、周波数1.6Hz、歪み設定0.1%、昇温速度2℃/分の条件にて、-20~100℃における動的粘弾性の温度分散を測定し、ガラス転移温度に起因する損失正接(tanδ)が最大値となる温度(本発明において、「tanδピーク温度」ともいう。)、その際の損失正接(tanδ)の値(本発明において、「tanδピーク値」ともいう。)を測定した。
熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)を以下の方法により調製した。
<熱可塑性樹脂(X)>
国際公開2006/054613号パンフレットの方法に準じ、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、水素の割合を調整し、表1に示す各物性を有する熱可塑性樹脂(X)を得た。各物性の測定結果を表1に示す。
<熱可塑性樹脂(Y-1)>
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテンを450ml挿入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml挿入して攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.40MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度を調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた熱可塑性樹脂(Y-1)は36.9gで、樹脂中の4-メチル-1-ペンテン含量は74mol%、プロピレン含量は26mol%であった。DSC測定を行ったところ、融点(Tm)は観測されなかった。各物性の測定結果を表1に示す。
<熱可塑性樹脂(Y-2)>
充分に窒素置換した容量1.5リットルの攪拌翼付SUS製オートクレーブに、23℃でノルマルヘキサン300ml(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、4-メチル-1-ペンテンを450ml装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml挿入して攪拌機を回した。
次に、オートクレーブを内温60℃まで加熱し、全圧が0.19MPa(ゲージ圧)となるようにプロピレンで加圧した。続いて、予め調製しておいたメチルアルミノキサンをAl換算で1mmol、ジフェニルメチレン(1-エチル-3-t-ブチル-シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを0.01mmolを含むトルエン溶液0.34mlを窒素でオートクレーブに圧入し、重合を開始した。重合反応中、オートクレーブ内温が60℃になるように温度を調整した。重合開始60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し重合を停止し、オートクレーブを大気圧まで脱圧した。反応溶液にアセトンを攪拌しながら注いだ。
得られた溶媒を含むパウダー状の重合体を100℃、減圧下で12時間乾燥した。得られた熱可塑性樹脂(Y-2)は44.0gで、樹脂中の4-メチル-1-ペンテン含量は84mol%、プロピレン含量は16mol%であった。DSC測定を行ったところ、融点(Tm)は131℃であった。各物性の測定結果を表1に示す。
[実施例1]
熱可塑性樹脂(X)80質量%と、熱可塑性樹脂(Y-1)20質量%の割合でそれぞれペレットを混合配合し、スクリュー直径φ25mm、L/D=26(スクリュー長さ:L、スクリュー直径:D)の単軸押出機に、Tダイ幅350mmとエアーチャンバーをそれぞれ装備したキャストフィルム成形機を用いて、シリンダー温度270~280℃、スクリュー回転数30~35rpm、冷却ロール温度30℃、引取速度1.5~2.0m/分の条件範囲で調整し、厚み40μmの単層フィルムを得た。
次いで、単層フィルムの一方の片面にコロナ放電照射を行い、フィルム表面のぬれ張力が40mN/mになるように放電量を調整し、紙管を用いて巻き取った。
さらに、巻き取った単層フィルムを繰り出し、前記のぬれ張力が調整されたフィルム面に対し、ロールコーターを用いてアクリル系粘着剤(綜研化学社製SKダイン(登録商標)、銘柄名1939U)の塗工した後、温度100℃で1分間の乾燥処理を経て、前記単層フィルムからなる基材層の表面に膜厚8μmの粘着層を設けて形成された表面保護フィルムを作製した。この表面保護フィルムを用いて、後述の評価を行った。その結果を表2に示す。
[実施例2~10]
使用する樹脂の種類、および配合量を表2に記載した通り変更した以外は、実施例1と同様にして、表面保護フィルムを作製した。前記で作製した表面保護フィルムを用いて、後述の評価を行った。その結果を表2に示す。
[比較例1~5]
使用する樹脂の種類、および配合量を表3に記載した通り変更した以外は、実施例1と同様にして、表面保護フィルムを作製した。前記で作製した表面保護フィルムを用いて、後述の評価を行った。その結果を表3に示す。
<寸法変化率>
表面保護フィルムから、120mm×120mmの寸法に裁断し、その内側に100mm×100mmの標線を設けた試験片を作製し、オーブン中で150℃、30分間保持した。その後、オーブンから表面保護フィルムを取り出して、室温まで自然放冷し、JIS K7133に準拠して、MD方向およびTD方向の寸法変化率を測定した。
<積層体の反り評価>
被着体として、厚み50μmの光学基材用ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製コスモシャイン(登録商標)、銘柄名A4100)を100mm×100mmの寸法に裁断し、該被着体に積層するように、100mm×100mmに裁断した表面保護フィルムを、MD方向およびTD方向がそれぞれ一致するように貼り合わせた後、2本連結したニップロールを通過させて試験片を圧着し、積層体を作製した。
積層体を温度23℃、湿度80%RHの条件で24時間静置した後、150℃に設定したオーブン中で30分間、無荷重の状態で静置した。
積層体をオーブンから取り出して室温まで自然放冷した後、鉄製の定盤に表面保護フィルムが上側となるように積層体を置いた。
積層体の四隅の定盤からの高さ(定盤からの浮き上がり)をステンレス定規で測定し、これらの測定値から四隅の平均高さ(以下「反り量」ともいう。)を算出し、下記の基準で積層体の反りを評価した。また、積層体が1周以上に丸まってしまい、定盤からの高さが測定困難な場合はCと判定した。
A判定:反り量が10mm未満であった。
B判定:反り量が10mm以上、30mm未満であった。
C判定:反り量が30mm以上、または積層体が1周以上丸くカールして測定が困難であった。
高温下における表面保護フィルムと被着体を貼り合わせた積層体の反り量(定盤から四隅の高さ平均)は、30mm未満が好ましく、より好ましくは10mm未満、さらに好ましくは5mm以下である。
Figure 0007389576000001
Figure 0007389576000002
Figure 0007389576000003
表2からわかるように、実施例で得られた表面保護フィルムは、高温下においても寸法変化が極めて少なく、反りを抑制できるものであった。

Claims (3)

  1. 4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有率が90モル%以上100モル%以下であり、炭素原子数2~20のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の含有率が10モル%以下である(前記4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位および前記α-オレフィンから導かれる構成単位の含有率の合計を100モル%とする)共重合体である熱可塑性樹脂(X)と、
    4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位の含有率が70モル%以上90モル%未満であり、炭素原子数2~12のα-オレフィン(4-メチル-1-ペンテンを除く)から導かれる構成単位の含有率が10モル%を超え30モル%以下である(前記4-メチル-1-ペンテンから導かれる構成単位および前記α-オレフィンから導かれる構成単位の含有率の合計を100モル%とする)共重合体である熱可塑性樹脂(Y)とを含み、
    前記熱可塑性樹脂(X)の含有量が40質量%以上60質量%以下、前記熱可塑性樹脂(Y)の含有量が40質量%以上60質量%以下であり(熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)の合計量を100質量%とする。)、
    JIS K7133に準拠して測定した寸法変化率において、150℃で、30分加熱した後の縦方向および横方向の寸法変化率の絶対値が0.18以下(ただし、前記寸法変化率において、プラスの数値は膨張したときの変化率を、マイナスの数値は収縮したときの変化率を示す。)である表面保護フィルム。
  2. 前記熱可塑性樹脂(Y)が下記の要件(i)~(iv)を満たす請求項1に記載の表面保護フィルム。
    (i)135℃デカリン中で測定した極限粘度〔η〕が0.1~5.0dl/gである、
    (ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と、数平均分子量(Mn)との比である分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.5である、
    (iii)DSCで測定した融点(Tm)が200℃未満であるか、またはDSCで融点が観測されない、
    (iv)密度が830~860kg/mである。
  3. 前記熱可塑性樹脂(X)および熱可塑性樹脂(Y)を含む基材層と、該基材層の少なくとも一方の面に設けられた粘着層とを有する請求項1~2のいずれかに記載の表面保護フィルム。
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