JP7385325B2 - ロコモティブシンドローム改善用組成物 - Google Patents

ロコモティブシンドローム改善用組成物 Download PDF

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Description

本発明は、天然植物素材を有効成分として含有する、ロコモティブシンドローム改善用組成物に関する。
クスノキ科植物のクロモジは北海道の南部から九州まで広く分布している落葉低木であり、その枝葉は烏樟(うしょう)と呼ばれ、古くから消化器系を助ける生薬や民間薬の原料として用いられてきた。また、良い香りがあるのが特徴で、和菓子に添える高級爪楊枝や、水蒸気蒸留して採取した精油がアロマなどに利用されている。
従来、このクロモジには、種々の機能性が報告されている。例えば、特許文献1には、クスノキ科クロモジ樹皮の抽出物からなるメラニン産生抑制剤が記載されている。また、特許文献2には、クロモジ等の植物の抽出物を有効成分とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤が記載されている。また、特許文献3には、クロモジ等のクスノキ科の植物の一部位の粉砕物またはその脂溶性溶媒抽出エキスを含有するアルコール障害予防剤が記載されている。また、特許文献4には、クロモジ属(Lindera Thunb.)に属する植物の抽出物を有効成分とするプロテアーゼ阻害剤が記載されている。また、特許文献5には、クロモジ等のクスノキ科植物の水蒸気蒸留水を含有することを特徴とする化粧料組成物が記載されている。また、特許文献6には、クロモジ等の植物の抽出物を有効成分とする抗インフルエンザウイルス剤が記載されている。また、特許文献7には、クロモジ等の植物又はそのエキスを含有することを特徴とする血圧降下剤が記載されている。また、特許文献8には、クロモジ等の植物エキスを有効成分として含有するメイラード反応阻害剤が記載されている。また、特許文献9には、クロモジ等の植物の処理物を含有することを特徴とするIgE産生抑制組成物及び抗アレルギー組成物が記載されている。また、特許文献10には、クロモジ等の植物の抽出物を有効成分として含有することを特徴とするセラミダーゼ活性阻害剤が記載されている。
特開平07-277941号公報 特開平11-001429号公報 特開2000-344675号公報 特開2001-122728号公報 特開2001-226218号公報 特開2004-059463号公報 特開2007-051129号公報 特開2010-077123号公報 特開2010-180141号公報 特開2017-124984号公報
本発明の目的は、食品等の利用形態に適合可能な天然植物素材を用いて、優れた機能性を有する組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、クスノキ科植物のクロモジから抽出したクロモジエキスには、骨密度の低下を抑える作用や、筋肉量の低下を抑える作用や、関節のプロテオグリカン量の低下を抑える作用を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、第1には、クロモジエキスを有効成分として含有することを特徴とするロコモティブシンドローム改善用組成物を提供するものである。
上記ロコモティブシンドローム改善用組成物においては、該組成物は、骨の維持又は強化用に用いられるものであることが好ましい。
また、上記ロコモティブシンドローム改善用組成物においては、該組成物は、筋肉維持用に用いられるものであることが好ましい。
また、上記ロコモティブシンドローム改善用組成物においては、該組成物は、関節保護用に用いられるものであることが好ましい。
また、上記ロコモティブシンドローム改善用組成物においては、前記クロモジエキスは、クロモジの熱水抽出物を含むものであることが好ましい。
本発明によれば、クスノキ科植物のクロモジから抽出したクロモジエキスには、骨密度の低下を抑える作用や、筋肉量の低下を抑える作用や、関節のプロテオグリカン量の低下を抑える作用があることが明らかとなった。これにより、そのクロモジエキスを有効成分にして、例えば、ロコモティブシンドローム改善用組成物等、優れた機能性を有する組成物を提供することができる。また、その組成物は、食品等の利用形態にも適している。
試験例1において生活習慣病モデルマウスへのクロモジエキスの投与が骨密度に与える影響を検証した結果を示す図表であり、(a)はクロモジエキス投与群に関する結果を示す図表であり、(b)は参考薬剤による陽性対照の結果を示す図表である。 試験例2において生活習慣病モデルマウスへのクロモジエキスの投与が筋肉量に与える影響を検証した結果を示す図表である。 試験例3において正常ラットの関節部位に発現したプロテオグリカン量を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例3において糖尿病病態モデルラットの関節部位に発現したプロテオグリカン量を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例3において糖尿病病態モデルラットへのクロモジエキスの投与が関節部位のプロテオグリカン量に与える影響を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例4において正常マウスの関節部位に発現したプロテオグリカン量を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例4において生活習慣病モデルマウスの関節部位に発現したプロテオグリカン量を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例4において生活習慣病モデルマウスへのクロモジエキスの投与が関節部位のプロテオグリカン量に与える影響を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例4において生活習慣病モデルマウスへの血糖降下剤であるメトホルミン塩酸塩の投与が関節部位のプロテオグリカン量に与える影響を検証した結果の一例を示す図表であり、(a)はサフラニンO染色標本の顕微観察の可視像であり、(b)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分を白抜きにした像であり、(c)は可視像をデジタル処理して赤色染色部分のうち赤色がより濃く染まった部分を赤色にした像である。 試験例4において膝関節部分におけるサフラニンO染色による染色面積について正常群の平均値を100としたときの相対値で比較した結果を示す表である。
本発明は、クスノキ科植物のクロモジから抽出したクロモジエキスには、骨密度の低下を抑える作用や、筋肉量の低下を抑える作用や、関節のプロテオグリカン量の低下を抑える作用があることを見出し、これに基づき、ロコモティブシンドローム改善用組成物等を提供するものである。また、ロコモティブシンドローム改善用組成物は、骨の維持又は強化用に用いられたり、筋肉維持用に用いられたり、関節保護用に用いられたりする。すなわち、ヒトや動物の生体に作用する機能性を備えた組成物を提供するものであり、以下では、説明の便宜のために「機能性組成物」あるいは単に「組成物」という場合がある。
本発明に用いられるクロモジエキスの基原としては、クロモジ属(Lindera)に属する植物であればよく、例えば、クロモジ(Lindera umbellata Thunb.)、オオバクロモジ(Lindera umbellata var. membranacea (Maxim.) Momiyama)、ヒメクロモジ(Lindera umbellata var.lancea Momiyama)、ケクロモジ(Lindera sericea(Sieb.et Zucc.)Blume)、ウスゲクロモジ(Lindera sericea var.glabrata Blume)、シロモジ(Lindera triloba(Sieb.et Zucc.)Blume)、アメリカクロモジ(Lindera benzoin(L.)Blume)、ヤマコウバシ(Lindera glauca Blume)、ダンコウバイ(Lindera obtusiloba Blume)、テンダイウヤク(Lindera strychnifolia(Sieb.et Zucc.)F.Vill.)などが挙げられる。これらの中でも、特に、クロモジ(Lindera umbellata Thunb.)が好ましい。
上記植物の部位としては、特に制限はなく、例えば、幹枝、幹、枝葉、葉、樹皮、根、根茎、根皮、茎、花、種子、果皮、果肉、果実、地上部、地下部、全木などが挙げられる。これらの中でも、特に、幹枝が好ましい。
本発明においては、上記植物を基原として抽出物を調製して、それを有効成分として用いる。より具体的には、クロモジの抽出物たるクロモジエキスを、上記した機能性の関与成分として用いるものである。その抽出に用いられる抽出溶媒としては、適宜適当なものを用いればよいが、典型的には水、有機溶媒、又は含水の有機溶媒が挙げられる。特には、水であることがより好ましい。有機溶媒としては、特には、例えば、メタノール、エタノール等の低級脂肪族アルコール、酢酸エチル、アセトン、クロロホルム、n-ヘキサンなどの水に相溶性のある有機溶媒が挙げられる。これら有機溶媒は二種以上を混合して用いることもできる。また、含水の有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒の含有量は、0体積%超~100体積%未満の範囲であり得るが、50体積%以下であることが好ましく、5~50体積%であることがより好ましく、10~45体積%が更により好ましく、20~40体積%が特に好ましい。また、その抽出にエタノール又は含水エタノールを用いる場合には、エタノール含量50体積%以下の含水エタノールが好ましく、エタノール含量5~50体積%の含水エタノールがより好ましく、エタノール含量10~45体積%の含水エタノールが更により好ましく、エタノール含量20~40体積%の含水エタノールが特に好ましい。
抽出の具体的手法としては、一般的な抽出手段を採用することができ、例えば、クロモジの幹枝の乾燥物を適当に裁断した後、その全質量に対して1~50倍、好ましくは5~20倍量の抽出溶媒を加え、1~24時間程度、室温~使用溶媒の沸点の範囲で浸漬・加熱抽出を行うことができる。必要に応じて、加圧下に抽出を行ってもよい。抽出後には、必要に応じて濾過を行ったり、得られた抽出液を減圧濃縮したり、凍結乾燥したりして、溶媒を除去したりしてもよく、適宜目的とする抽出物を調製することができる。乾燥手段としては、減圧乾燥や噴霧乾燥であってもよい。なお、例えば、抽出溶媒が水である場合には、抽出温度は5~100℃であることが好ましく、30~100℃であることがより好ましく、50~100℃であることが更により好ましい。また、抽出溶媒がエタノール又は含水エタノールである場合には、抽出温度は5~70℃であることが好ましく、30~70℃であることがより好ましく、50~70℃であることが更により好ましい。
上記のようにして得られたクロモジエキスは、後述の実施例で示されるように、骨密度の低下を抑える効果や、筋肉量の低下を抑える効果や、関節のプロテオグリカン量の低下を抑える効果に優れている。よって、これを生体に作用させることにより、ロコモティブシンドロームを改善するのに、効果的に用いられ得る。また、本発明による機能性組成物は、骨の維持又は強化用に用いられたり、筋肉維持用に用いられたり、関節保護用に用いられたりするのにも、効果的に用いられ得る。なお、「改善」とは、本発明による組成物を適用しない場合に比べて、適用したほうが諸般の症状や身体的状態を適用者にとってより良い状態にさせることを意味するともに、日頃からそのようなより良い状態を崩さずに維持するための予防的適用をも含む意味である。
ここで、一般にロコモティブシンドロームとは、骨、筋肉、関節などの運動器のいずれか又は複数機能が低下したために移動機能が低下した状態をいう。この筋肉、骨、関節はお互いを支えあっているため、一部の機能の改善を試みても大きな移動機能の改善にはつながりにくい。例えば運動不足により骨格筋が低下すると筋肉による骨への刺激が不足し、骨が弱くなるため、骨だけを改善しようとしても筋肉が衰えていればなかなか骨はよくならず、移動機能の大きな改善は期待できない。このように複数部位の機能が低下している場合は、どれか一つを改善するより、それら複数部位を一緒に改善した方がより効果的といえる。本発明によれば、骨、筋肉、関節など複数部位のいずれに対しても、その機能の改善効果が期待でき、よって、移動機能が低下した状態を効果的に改善することができる。
本発明による組成物は、例えば、経口的に投与されるものであってもよい。経口投与のための形態としては、特に制限はなく、上記に説明したクロモジエキスと、経口摂取用として許容される基材や担体、溶媒等を用いて、固体状物、液状物、乳化状物、ペースト状物、ゼリー状物等の形態とすることができる。また、錠剤、顆粒剤、散剤、液剤、カプセル剤等の形態とすることができる。また、上記に説明したクロモジエキスを適当な担体、好ましくは脂肪酸トリグリセライドと混合し、液状のままソフトカプセル等に充填し、調製することもできる。
一方、本発明による組成物は、例えば皮膚外用等、非経口的に投与されるものであってよい。そのための形態としては、特に制限はなく、溶液、乳液の形態や、分散剤、懸濁剤、安定剤などを添加した形態、パップ剤、ローション剤、軟膏剤、チンキ剤、クリーム剤等の形態で用いることができる。
製剤化においては、経口剤や非経口剤となす場合に限られず、必要に応じて、通常使用されている賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、界面活性剤、溶解補助剤、還元剤、緩衝剤、吸着剤、流動化剤、帯電防止剤、抗酸化剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、遮光剤、着香剤、香料、芳香剤、コーティング剤、可塑剤等の製剤添加物の1種または2種以上を適宜選択して添加してもよい。
そのような製剤添加物としては、具体的には、例えば、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、マルトデキストリン、エチルセルロース、乳糖、ソルビトール、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸、オレイン酸、流動パラフィン、第二リン酸カルシウム、セバチン酸ジブチル、マクロゴール、プロピレングリコール、コーンスターチ、デンプン、アルファー化デンプン、ゼラチン、ポピドン、クロスポピドン、グリセリン、ポリソルベート80、クエン酸、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、炭酸ナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等を挙げることができる。
本発明によるロコモティブシンドローム改善用組成物においては、上記に説明したクロモジエキスを有効成分とし、更に、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸、食物繊維等の他の成分を添加してもよい。
本発明によるロコモティブシンドローム改善用組成物においては、有効成分たる上記クロモジエキスを全体中に乾燥分換算で0.001~99質量%含有していることが好ましく、0.01~70質量%含有していることがより好ましく、0.05~50質量%含有していることが更により好ましい。
本発明によるロコモティブシンドローム改善用組成物をヒトに経口投与する場合、その投与量としては、年齢や体重によっても異なるが、例えば、成人1日当たり、上記に説明したクロモジエキスの乾燥分換算で1.0mg~50g程度であることが好ましく、5.0mg~20g程度であることがより好ましく、10mg~10g程度であることが更により好ましい。
本発明によるロコモティブシンドローム改善用組成物の使用形態としては、特に制限はない。例えば、機能性食品、サプリメント、医薬品、化粧品などの形態であってよい。なお、これらの形態は、ヒト用だけに限られず、動物用であってもよい。より具体的には、機能性表示食品、特定保健用食品、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、医薬品、医薬部外品、化粧品、動物用健康食品、動物用機能性食品、動物用栄養補助食品、動物用サプリメント、動物用医薬品、動物用医薬部外品、動物用化粧品など各種の製品形態で、あるいはそれら製品と組み合わせて使用されることが可能である。
本発明によるロコモティブシンドローム改善用組成物の使用形態としては、食品組成物の形態であってもよい。すなわち、上記に説明したクロモジエキスを飲食物に所定量配合することにより、所定の機能性を発揮させるための食品組成物と成すことができる。具体的には、例えば、固形状、粉末状、顆粒状のものとしては、ビスケット、クッキー、ケーキ、スナック、煎餅などの各種の菓子類、パン、粉末飲料(粉末コーヒー、粉末ココアなど)、飴、キャラメル等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、液状、乳化状、ペースト状、ゼリー状のものとしては、ドリンク、ゼリー、ムースなどの各種製品や薬用酒等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。更には、これら飲食物に配合するために用いられる食品添加用の組成物の形態であってもよい。
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。
[調製例1]
クロモジ(Lindera umbellata Thunb.)の幹枝の乾燥物を裁断した後、その全質量に対して10倍量の水を加え加熱し、沸騰後1時間浸漬・加熱抽出を行った。抽出後は濾過により不溶物を除き、得られた抽出液を減圧濃縮し、凍結乾燥にて抽出溶媒を除去して、乾燥粉末状のクロモジエキスを得た。
<試験例1>
調製例1で得られたクロモジエキス末(熱水抽出物)を用いて、骨密度に与える影響を検証した。
評価には生活習慣病モデルマウスであるC57BLKS/J Iar-+Lwprdb /+Lwprdb (db/dbマウス)を使用した。そして、正常マウスであるC57BLKS/J Iar-m+/+Lwprdb (db/+マウス)と比較したとき、生活習慣病モデルマウスのほうが骨密度の低下がみられるが、これをクロモジエキスが抑制できるかどうか評価した。
具体的には、使用動物(生活習慣病モデルマウスと正常マウス、雄、7週齢)は、1週間予備飼育後、オールフレッシュエアー、温度24±2℃、湿度:50±10%、照明時間:1日12時間(7~19時)に設定されたバリア施設内の飼育室で飼育した。餌は放射線滅菌した固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業株式会社)を使用し、飲料水は塩素消毒した井水を給水瓶を用いて自由摂取させた。投与は正常群および対照群は蒸留水を、クロモジエキス投与群は300mg/kg/dayを、経口ゾンデを用いて12週間毎日経口投与した。また、参考薬剤として血糖降下剤であるメトホルミン塩酸塩を、350mg/kg/dayの投与量で、同様に経口ゾンデを用いて12週間毎日経口投与した。投与期間終了後、イソフルラン吸入麻酔下で心臓より全採血を行い、そののち右側後肢の脛骨を採取後、骨密度の測定まで冷凍保存した。骨密度の測定はマイクロフォーカスX線CTスキャナー断層画像撮影(「Scan Xmate-L090」、コムスキャンテクノ社)を使用し、電圧75kV、電流100μA、拡大率9.667倍、解像度10.334μm/pixel、スライス厚10.334μmの条件で脛骨近位端の海綿骨を撮影し、解析ソフト(「TRI/3D-BON」、ラトックシステムエンジニアリング社)により解析を行い、以下の式により骨密度を算出した。
骨密度(%)=海綿骨体積/骨組織体積×100 …(1)
各試験群についてそれぞれ3例の結果を、骨密度の平均値と標準偏差にして、図1に示す。なお、クロモジエキス投与群と参考薬剤による陽性対照の試験は、正常群及び対照群に対する試験を、それぞれ別日に行った。
その結果、図1(a)に示されるように、クロモジエキスの投与により、生活習慣病モデルマウスの骨密度の低下が抑えられ、正常マウスの骨密度のレベルまで骨密度が維持されること明らかとなった。一方、図1(b)に示されるように、参考薬剤として用いた血糖降下剤の投与では、骨密度の低下が抑えられることはなかった。
<試験例2>
調製例1で得られたクロモジエキス末(熱水抽出物)を用いて、筋肉量に与える影響を検証した。
評価には生活習慣病モデルマウスであるC57BLKS/J Iar-+Lwprdb /+Lwprdb (db/dbマウス)を使用した。そして、正常マウスであるC57BLKS/J Iar-m+/+Lwprdb (db/+マウス)と比較したとき、生活習慣病モデルマウスのほうが筋肉量の低下がみられるが、これをクロモジエキスが抑制できるかどうか評価した。
具体的には、使用動物、予備飼育、飼育環境、給餌や給水、クロモジエキスの投与方法は、すべて試験例1と同様とした。ただし、クロモジエキス投与群としては、100mg/kg/dayと300mg/kg/dayの2種類の投与量の投与群を設けた。また、参考薬剤として血糖降下剤であるメトホルミン塩酸塩を、350mg/kg/dayの投与量で、同様に経口ゾンデを用いて12週間毎日経口投与した。投与期間終了後、イソフルラン吸入麻酔下で心臓より全採血を行い、そののち腓腹筋を採取し、重量を測定した。
各試験群についてそれぞれ9~10例の結果を、腓腹筋重量の平均値と標準偏差にして、図2に示す。
その結果、図2に示されるように、クロモジエキスの投与により、特に、300mg/kg/dayの投与量の投与群において、生活習慣病モデルマウスの筋肉量が増加した。一方、参考薬剤として用いた血糖降下剤の投与では、筋肉量が増加することはなかった。
<試験例3>
調製例1で得られたクロモジエキス末(熱水抽出物)を用いて、関節部位のプロテオグリカン量に与える影響を検証した。
評価では、使用動物(Slc:SDラット、雄、6週齢)にストレプトゾトシン(STZ: streptozotocin)を60mg/kg/dayの投与量で腹腔内注射して、投与3日後に血糖値を測定して、血糖値300mg/dL以上を示した動物を糖尿病病態モデルとして使用した。そして、ストレプトゾトシン非投与の正常ラットと比較したとき、糖尿病病態モデルラットのほうが関節部位のプロテオグリカン量の低下がみられるが、これをクロモジエキスが抑制できるかどうか評価した。
具体的には、使用動物(Slc:SDラット、雄、6週齢)は、1週間予備飼育後、オールフレッシュエアー、温度24±2℃、湿度:50±10%、照明時間:1日12時間(7~19時)に設定されたバリア施設内の飼育室で飼育した。餌は放射線滅菌した固形飼料(ラボMRストック、日本農産工業株式会社)を使用し、飲料水は塩素消毒した井水を給水瓶を用いて自由摂取させた。投与は正常群および対照群は蒸留水を、クロモジエキス投与群は300mg/kg/dayを経口ゾンデを用いて8週間毎日経口投与した。投与期間終了後、イソフルラン吸入麻酔下で腹大動脈より全採血を行い、そののち左側後肢の脛骨、大腿骨は膝関節を分離せずに10%中性緩衝ホルマリン液中に保存した。検体をEDTAにて脱灰した後、パラフィンブロックを作製し、ミクロトーム(LEICA SM200R)にて厚さ3μmに薄切、サフラニンO染色標本を作製した。
サフラニンO染色により赤く染色したプロテオグリカンを顕微観察(「デジタルマイクロスコープVH-S30」、KEYENCE)した。また、得られた画像は画像解析ソフト(ImageJ)により解析し、膝関節部分で赤い染色が視認できる部分を抽出して、その面積と、そのうちの染色がより濃く染まった部分(ImageJソフトで所定の色濃度範囲を選択)の面積を測定した。
図3Aには、ストレプトゾトシン非投与の正常ラットにおける結果の一例を示す。また、図3Bには、ストレプトゾトシン投与の糖尿病病態モデルラットにおける結果の一例を示す。また、図3Cには、糖尿病病態モデルラットにおいてクロモジエキスを投与したときの結果の一例を示す。
図3Aと図3Bとの比較にみられるように、糖尿病病態モデルラットでは、正常ラットと比べて、関節部位に発現したプロテオグリカンが濃く染まる部分の面積が減少した。これは、糖尿病病態モデルラットでは、関節部位のプロテオグリカン量が正常ラットに比べて減少していることを示す。これに対して、図3Cにみられるように、糖尿病病態モデルラットにおいてクロモジエキスを投与すると、プロテオグリカンが濃く染まる部分の面積が回復した。よって、糖尿病病態モデルラットにおける関節部位のプロテオグリカン量の低下を、クロモジエキスの投与により抑制できることが明らかとなった。
<試験例4>
調製例1で得られたクロモジエキス末(熱水抽出物)を用いて、関節部位のプロテオグリカン量に与える影響を検証した。
評価には試験例2と同様の生活習慣病モデルマウスを使用した。そして、正常マウスと比較したとき、生活習慣病モデルマウスのほうが関節部位のプロテオグリカン量の低下がみられるが、これをクロモジエキスが抑制できるかどうか評価した。
具体的には、使用動物、予備飼育、飼育環境、給餌や給水、クロモジエキスの投与方法は、すべて試験例1と同様とした。ただし、クロモジエキス投与群としては300mg/kg/dayの投与群を設け、また、参考薬剤として血糖降下剤であるメトホルミン塩酸塩を、350mg/kg/dayの投与量で経口ゾンデを用いて12週間毎日経口投与し、これを陽性対照として加えた以外は、試験例3と同様にして測定を行った。
図4Aには、正常マウスにおける結果の一例を示す。また、図4Bには、生活習慣病モデルマウスにおける結果の一例を示す。また、図4Cには、生活習慣病モデルマウスにおいてクロモジエキスを投与したときの結果の一例を示す。また、図4Dには、生活習慣病モデルマウスにおいて血糖降下剤であるメトホルミン塩酸塩を投与したときの結果の一例を示す。更に、図5には、膝関節部分におけるサフラニンO染色を各群6例の試験動物で行って、試験例3と同様にして染色がより濃く染まった部分の面積を求めて、正常群の平均値を100としたときの相対値で比較した結果を示す。
結果は、試験例3の結果と同様であった。すなわち、図4Aと図4Bとの比較、及び図5にみられるように、生活習慣病モデルマウスでは、正常マウスと比べて、関節部位に発現したプロテオグリカンが濃く染まる部分の面積が減少した。これは、生活習慣病モデルマウスでは、関節部位のプロテオグリカン量が正常マウスに比べて減少していることを示す。これに対して、図4C、及び図5にみられるように、生活習慣病モデルマウスにおいてクロモジエキスを投与すると、プロテオグリカンが濃く染まる部分の面積が回復した。よって、糖尿病病態モデルラットの結果と同様に生活習慣病モデルマウスにおいても関節部位のプロテオグリカン量の低下を、クロモジエキスの投与により抑制できることが明らかとなった。一方、図4D、及び図5にみられるように、参考薬剤として用いた血糖降下剤の投与では、サフラニンO染色によるプロテオグリカン染色の面積の回復は限定的であった。
(処方例1)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有する飴を調製した。
(1)飴:
(組成) (重量部)
粉末ソルビトール 89.70
香料 0.25
調製例1のクロモジエキス末 10.00
ソルビトールシード 0.05
全量 100.00
(処方例2)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有するガムを調製した。
(2)ガム:
(組成) (重量部)
ガムベース 20.00
炭酸カルシウム 2.00
ステビオサイド 0.10
調製例1のクロモジエキス末 10.00
乳糖 66.90
香料 1.00
全量 100.00
(処方例3)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有するキャラメルを調製した。
(3)キャラメル:
(組成) (重量部)
グラニュー糖 32.00
水飴 20.00
粉乳 30.00
硬化油 4.00
食塩 0.60
香料 0.03
水 3.37
調製例1のクロモジエキス末 10.00
全量 100.00
(処方例4)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有する炭酸飲料を調製した。
(4)炭酸飲料:
(組成) (重量部)
グラニュー糖 8.00
濃縮レモン果汁 1.00
L-アスコルビン酸 0.10
クエン酸 0.09
クエン酸ナトリウム 0.05
着色料 0.05
炭酸水 80.71
調製例1のクロモジエキス末 10.00
全量 100.00
(処方例5)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有するジュースを調製した。
(5)ジュース:
(組成) (重量部)
冷凍濃縮オレンジ果汁 5.00
果糖ブドウ糖液糖 1.00
クエン酸 0.10
L-アスコルビン酸 0.09
調製例1のクロモジエキス末 10.00
香料 0.20
色素 0.10
水 83.51
全量 100.00
(処方例6)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有する乳酸菌飲料を調製した。
(6)乳酸菌飲料:
(組成) (重量部)
乳固形21%発酵乳 14.76
果糖ブドウ糖液糖 13.31
ペクチン 0.50
クエン酸 0.08
香料 0.15
水 61.20
調製例1のクロモジエキス末 10.00
全量 100.00
(処方例7)
以下に示す組成でクロモジエキスを含有するアルコール飲料を調製した。
(7)アルコール飲料:
(組成) (重量部)
50%エタノール 32.00
砂糖 8.60
果汁 2.40
調製例1のクロモジエキス末 10.00
水 47.00
全量 100.00

Claims (2)

  1. クロモジ属(Lindera)に属する植物を基原としたクロモジエキスを有効成分として含有し、プロテオグリカンの低下を抑制することによる関節保護用に用いられるものであることを特徴とするロコモティブシンドローム改善用組成物。
  2. 前記クロモジエキスは、前記植物を基原としたクロモジの熱水抽出物を含むものである、請求項1記載のロコモティブシンドローム改善用組成物。
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