JP7262419B2 - 非水系電解質二次電池用正極活物質、および非水系電解質二次電池 - Google Patents
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Description
以下、図を参照して、本発明の実施形態の一例を説明する。図1は、本実施形態に係る非水系電解質二次電池用正極活物質(以下、「正極活物質」ともいう。)の製造方法を示すフローチャートである。なお、以下の説明は、製造方法の一例であって、本発明の製造方法を限定するものではない。
本実施形態に係る正極活物質は、一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦z≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物粉末からなる正極活物質であって、水酸化リチウム含有量が0.5質量%以下であり、かつ、X線光電子分光法により測定される前記粉末表面のLiとLi以外の金属(Ni、Co及びM)との組成比(Li/(Ni+Co+M))が0.80以上1.5以下である。以下、正極活物質の実施形態の一例について説明する。
非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦z≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物からなる。
本実施形態の正極活物質は、水酸化リチウム含有量が0.5質量%以下、好ましくは0.2質量%以下である。正極活物質中の水酸化リチウム含有量が、0.5質量%を超えると、正極活物質をペーストに混練する際にゲル化を引き起こす原因の一つになる。さらに正極活物質が高温環境下で充電される場合、水酸化リチウムが酸化分解しガス発生を引き起こす原因の一つになる。また、正極活物質中の水酸化リチウム含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上である。
本実施形態の正極活物質は、X線光電子分光法により測定される前記粉末表面のLiとLi以外の金属(Ni、Co及びM)との組成比(Li/(Ni+Co+M))が0.80以上1.5以下であり、好ましくは0.80以上1.45以下、より好ましくは0.93以上1.45以下、さらに好ましくは0.95以上1.45以下、特に好ましくは1.00以上1.45以下である。粉末表面のLi/(Ni+Co+M)が0.80未満である場合、粒子表面でリチウムイオン欠損が生じるため、二次電池の正極に用いた場合、リチウムイオンの伝導パスが阻害されて放電容量が低下したり、反応抵抗が増加したりする要因の一つとなる。反応抵抗が低減されることで、電池内で損失される電圧が減少し、実際に負荷側に印加される電圧が相対的に高くなるため、高出力が得られる。一方、粉末表面のLi/(Ni+Co+M)が1.5を超えると、粉末表面に過剰な水酸化リチウムなどのリチウム化合物が存在し、正極合材ペーストのゲル化を引き起こす要因の一つとなる。さらに、過剰なリチウム化合物がその表面に存在する正極活物質を高温環境下で充電した場合、リチウム化合物が分解しガス発生を引き起こし、電池特性が低下することがある。また、充放電に寄与しないリチウム化合物が存在する場合、電池を構成する際、正極活物質の不可逆容量に相当する分の負極材料を余計に使用することになる。その結果、電池全体としての重量当たり及び体積当たりの容量が小さくなることもある上、不可逆容量として負極に蓄積された余分なリチウムは安全性の面からも問題となることもある。
本実施形態の正極活物質は、粉末を水に分散させた5質量%の懸濁溶液における粉体pHが、11.5以下である。pHが11.5を超えると、正極活物質をペーストに混練する際に正極合材ペーストがゲル化することがある。粉体pHの下限は、特に限定されないが、例えば、好ましくは10.5以上、より好ましくは11.0以上である。
本実施形態の正極活物質の平均粒径は、特に限定されないが、例えば、3μm以上25μm以下であることにより、正極活物質の容積あたりの電池容量を大きくすることができ、安全性が高く、サイクル特性が良好な二次電池を得ることができる。なお、平均粒径は、レーザ回折式粒度分布計により測定される値である。
本実施形態の正極活物質の比表面積は、特に限定されないが、例えば、1.0m2/g以上7.0m2/g以下である場合、電解液との接触できる粒子表面が十分となる。比表面積が1.0m2/g未満になると、電解液と接触できる粒子表面が少なくなり、十分な充放電容量が得られないことがある。一方、比表面積が7.0m2/gを超えると、電解液と接触する粒子表面が多くなり過ぎて安全性が低下することがある。なお、比表面積は、窒素ガス吸着法によるBET法を用いて比表面積測定装置により測定される値である。
本実施形態に係る非水系電解質二次電池は、上記正極活物質を正極に含む。本実施形態の非水系電解質二次電池は、一般の非水系電解質二次電池と同様に、正極、負極、セパレータ、および非水電解液から構成することができる。以下、非水系電解質二次電池の実施形態について、各構成要素、および電池の形状と構成について詳しく説明する。
正極を形成する正極合材及びそれを構成する各材料について説明する。本発明の粉末状の正極活物質と、導電材、結着剤とを混合し、さらに必要に応じて活性炭、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材中のそれぞれの材料の混合比も、リチウム二次電池の性能を決定する重要な要素となる。
負極には、金属リチウム、リチウム合金など、又は、リチウムイオンを吸蔵・脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
正極と負極との間にはセパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し電解質を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な穴を多数有する膜を用いることができる。
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
本実施形態に係るリチウム二次電池の形状は、円筒型、積層型など、種々の形状とすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、セパレータを介して正極及び負極を積層させ、電極体とし、この電極体に上記非水電解液を含浸させる。正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、並びに負極集電体と外部に通ずる負極端子との間に集電用リードなどを用いて接続する。以上の構成のものを電池ケースに密閉して電池を完成させることができる。
母材として用いたリチウムニッケル複合酸化物の粉末を硝酸で溶解した後、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPS-8100)により、各成分の組成比を測定した。また、得られた正極活物質を上記と同様の方法で測定した。
得られた正極活物質をX線光電子分光装置(アルバック・ファイ株式会社製、Versa ProbeII)を用いて測定した。この際、X線源として、単色化したAl-Kα線(1486.7eV)を使用し、傾斜角(tilt angle)を45°、パスエナジーを187.85eV、真空度を10-7Paとした。
得られた正極活物質粉末10gに超純水を100ml添加して5分間攪拌し、ろ過した後、ろ液を1mol/リットルの塩酸で滴定し第二中和点まで測定した。塩酸で中和されたアルカリ分の量を、水酸化リチウム(LiOH)および洗浄に用いたリチウム塩に由来するリチウム量(Li)の合計量とした。そして、下記式に示すように、中和滴定で中和されたアルカリ分の量から、洗浄に用いたリチウム塩由来のLi量を引いた量を、水酸化リチウム(LiOH)由来のLi量とした。なお、洗浄に用いたリチウム塩に由来するリチウム(Li)量は、下記の方法でそれぞれ求めたリチウム塩含有量から算出した。
これらのリチウム塩含有量は、炭素硫黄分析装置(LECO社製CS-600)で全炭素元素(C)含有量を測定し、この測定された全炭素元素の量をそれぞれのリチウム塩に換算することにより求めた。
(硫酸リチウム)
硫酸リチウム含有量は、ICP発光分析により硫黄元素(S)含有量を測定し、この測定された硫黄元素(S)含有量を硫酸リチウムに換算することにより求めた。
(硝酸リチウム)
硝酸リチウム含有量は、正極活物質粉末を超純水中で撹拌して硝酸リチウムを溶出させた後、ろ過し、ろ液をイオンクロマトグラフィー法により硝酸根含有量を測定し、この測定された硝酸根含有量を硝酸根リチウムに換算することにより求めた。
得られた正極活物質粉末5.0gを100mlの蒸留水に分散させた5質量%の懸濁液を作製し、25℃室温で30分間攪拌した懸濁液のpH値を測定した。
得られた正極活物質20gに対して、PVDF(呉羽化学工業製、型番KFポリマー#1100)2.2gと、NMP(関東化学製)9.6mlと容器に入れ、ニーダ(日本精機製作所、製品名ノンバブリングニーダ、型番NBK-1)で2000rpmの回転速度で10分間十分に混合しペーストを作製した。得られたペーストをガラス瓶に移し、密栓した後、温度25℃、露点-40℃のドライボックス中に保管し、24時間放置後のペーストの流動性を観察した。24時間放置後、ペーストの流動性に変化のないものを◎、ペーストの流動性はあるが、流動性が変化したものを○、ゲル化したものを×と評価した。
(1)評価用コイン電池の作製
得られた正極活物質70質量%に、アセチレンブラック20質量%及びPTFE10質量%を混合し、ここから150mgを取り出してペレットを作製し、正極とした。負極としてリチウム金属を用い、電解液として、1MのLiClO4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を用い、露点が-80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、図1に示すような2032型のコイン型電池を作製した。2032型の評価用コイン型電池BAは、負極にリチウム金属負極1と、電解液を含浸させたセパレータ2と、正極3と、ガスケット4と、負極缶5と、正極缶6と、集電体7とを備える。
作製したコイン型電池BAを24時間程度放置し、開路電圧OCV(open circuit voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm2としてカットオフ電圧4.3Vまで充電して充電容量とし、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を放電容量として評価した。
作製したコイン型電池BAを充電電位4.1Vで充電して、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用して交流インピーダンス法により測定した。図2上段は、得られたナイキストプロットを示す。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表しているため、このナイキストプロットに基づき図2下段に示す等価回路を用いてフィッティング計算を行い、正極抵抗の値を算出した。正極抵抗は実施例1を100とした相対値を評価値とした。
ニッケルを主成分とする酸化物粉末と水酸化リチウムを混合して焼成する公知技術で得られた、Li1.03Ni0.88Co0.09Al0.03O2で表されるリチウムニッケル複合酸化物の焼成粉末を得た。この粉末を母材として用いた。この粉末の平均粒径は12.0μmであり、比表面積は1.2m2/gであった。なお、平均粒径はレーザ回折式粒度分布計(日機装株式会社製、マイクロトラック)用い、比表面積は比表面積測定装置(ユアサアイオニクス株式会社製、カンタソーブQS-10)を用いて、窒素ガス吸着によるBET法を用いて評価した。
実施例2では、炭酸リチウム水溶液の濃度をリチウム量が0.3g/Lとなるように調製した以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例3)
実施例3では、炭酸リチウム水溶液の濃度をリチウム量が0.7g/Lとなるように調製した以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例4)
実施例4では、炭酸リチウム水溶液の濃度をリチウム量が1.0g/Lとなるように調製した以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例5)
実施例5では、炭酸リチウム水溶液の濃度をリチウム量が2.5g/Lとなるように調製した以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例6)
実施例6では、炭酸リチウム水溶液の濃度をリチウム量が3.0g/Lとなるように調製した以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
実施例7では、スラリーの濃度を100g/Lとなるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例8)
実施例8では、スラリーの濃度を375g/Lとなるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例9)
実施例9では、スラリーの濃度を1500g/Lとなるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例10)
実施例10では、スラリーの濃度を3000g/Lとなるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
実施例11では、炭酸リチウム水溶液をクエン酸リチウム水溶液となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例12)
実施例12では、炭酸リチウム水溶液を酢酸リチウム水溶液となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例13)
実施例13では、炭酸リチウム水溶液を硝酸リチウム水溶液となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(実施例14)
実施例14では、炭酸リチウム水溶液を硫酸リチウム水溶液となるようにした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
比較例1では、炭酸リチウム水溶液で洗浄する工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例2)
比較例2では、炭酸リチウム水溶液の代わりに純水を用いた以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例3)
比較例3では、炭酸リチウム水溶液の代わりに純水を用い、スラリー濃度を375g/Lとした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例4)
比較例4では、炭酸リチウム水溶液の代わりに純水を用い、スラリー濃度を3000g/Lとした以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
(比較例5)
比較例5では、炭酸リチウム水溶液の代わりに水酸化リチウム水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして正極活物質を得るとともに評価した。
実施例および、比較例で得られた正極活物質の製造条件及び評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1~14により得られた正極活物質は、水酸化リチウム含有量が0.5質量%以下かつ、得られた正極活物質の粉末表面のLi/(Ni+Co+M)が0.80以上1.5以下である。また、得られた正極活物質は、ペースト混練時のゲル化が抑制されるとともに、放電容量が高く、正極抵抗が低いものであり、正極活物質として有用であることが分かる。
1・・・リチウム金属負極
2・・・セパレータ(電解液含浸)
3・・・正極(評価用電極)
4・・・ガスケット
5・・・負極缶
6・・・正極缶
7・・・集電体
Claims (3)
- 一般式LizNi1-x-yCoxMyO2(ただし、0≦x≦0.35、0≦y≦0.10、0.95≦z≦1.10、Mは、Mn、V、Mg、Mo、Nb、TiおよびAlから選ばれる少なくとも1種の元素)で表されるリチウムニッケル複合酸化物粉末からなる非水系電解質二次電池用正極活物質であって、水酸化リチウム含有量が0.5質量%以下であり、かつ、X線光電子分光法により測定される前記粉末表面のLiとLi以外の金属(Ni、Co及びM)との組成比(Li/(Ni+Co+M))が0.80以上1.5以下であることを特徴とする非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 前記粉末を水に分散させた5質量%の懸濁溶液における粉体pHが11.5以下である請求項1に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
- 請求項1または2に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質を正極に含むことを特徴とする非水系電解質二次電池。
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