JP7139590B2 - 導体形成用組成物、並びに接合体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、導体形成用組成物、並びに接合体及びその製造方法に関する。
銅は高い導電性及び熱伝導性を有するため、導体配線材料、熱伝達材料、熱交換材料、放熱材料等として広く用いられている。
近年、フォトリソグラフィに代わる銅パターンの形成方法として、金属を含むインク、ペースト等をインクジェット印刷、スクリーン印刷等により基材上に金属を含む層を形成する工程と、加熱して導電性を発現させる導体化工程とを含む、いわゆるプリンテッドエレクトロニクスが知られている。
印刷により銅パターンを形成する印刷インク又は印刷ペーストとしては、銅ナノ粒子の分散液、金属錯体の溶液又は分散液等が検討されている。しかし、銅は、室温で酸化状態が安定であることから、必ず酸化状態の銅を含む。そのため、銅が導電性及び導熱性を発現するには、酸化状態の銅を還元し、さらに銅の連続体とすることが必要である。
これを解決する方法として、特許文献1には、低温で焼結でき、良好な導電性を発現する被覆銅粒子及びその製造方法が記載されている。特許文献1に記載の銅粒子は、シュウ酸銅等の銅前駆体とヒドラジン等の還元性化合物とを混合して複合化合物を得る工程と、前記複合化合物をアルキルアミンの存在下で加熱する工程とを有する方法によって製造されるものである。特許文献1の実施例では、作製した銅粒子を含むインクをアルゴン雰囲気中、60℃/分で300℃まで加熱して30分保持することで導体化を達成している。また、特許文献2には、導電性金属粉末、有機ビヒクル等を含む導電性ペースト組成物が記載されている。有機バインダー除去を目的に、通常、250℃~330℃、空気雰囲気、窒素雰囲気等で熱処理を施して有機ビヒクルを燃焼させた後、金属粉末が酸化されないように中性または還元雰囲気で850℃~1300℃で焼結することが記載されている。
特開2012-072418号公報 特開2012-226865号公報
ところで、電子部品の端子の接合材料に用いられる銅パターンの形成工程等においては、より低温で導体化できることが望まれている。例えば、特許文献1の実施例では、300℃まで加熱して導体性が発現しており、これよりも低い温度で導電化が可能な導体形成用組成物が求められている。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、低温(例えば、250℃以下)で導体化が可能であり、金属接合材料として用いることが可能な導体形成用組成物を提供することを主な目的とする。
本発明は、下記(1)~(3)に示す導体形成用組成物、下記(4)、(5)に示す接合体の製造方法、及び下記(6)に示す接合体を提供する。
(1)金属銅を含むコア粒子とコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物とを有する第1の粒子と、酸化銅を含む第2の粒子と、分散媒と、を含有する、導体形成用組成物。
(2)第2の粒子の含有量が、第1の粒子100質量部に対して0.5質量部~12質量部である、(1)に記載の導体形成用組成物。
(3)還元剤をさらに含有する、(1)又は(2)に記載の導体形成用組成物。
(4)第一の基材、(1)~(3)のいずれかに記載の導体形成用組成物からなる組成物層、及び第二の基材がこの順に積層されている接合前駆体を用意する工程と、接合前駆体を、不活性ガス、還元性ガス又はこれらの混合ガスのいずれかのガス雰囲気下、120℃~250℃で加熱する工程と、を備える、接合体の製造方法。
(5)ガス雰囲気が、水素ガス又はギ酸ガスを含む雰囲気である、(4)に記載の接合体の製造方法。
(6)第一の基材と、第二の基材と、第一の基材と第二の基材とを接合する導体層と、を備え、導体層が、(1)~(3)のいずれかに記載の導体形成用組成物に含有される第1の粒子及び第2の粒子が焼結してなる焼結体を含む、接合体。
本発明によれば、低温(例えば、250℃以下)で導体化が可能であり、金属接合材料として用いることが可能な導体形成用組成物、並びにこれを用いた接合体及びその製造方法が提供される。
導体形成用組成物を用いた接合体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。 製造例2で合成した第1の粒子の回折角範囲30~80°におけるX線回折(XRD)スペクトルである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「導体形成用組成物」とは、焼結させて導電性を有する物体、すなわち「導体」を形成させることが可能な組成物をいう。「導体化」とは、金属を含有する粒子を焼結させて導電性を有する物体に変化させることをいう。「導体」とは、導電性を有する物体をいう。
本明細書において「基材」とは、導体形成用組成物からなる組成物層を形成できる面を有する物体をいう。
本明細書において「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「層」とは、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
本明細書において第1の粒子及び第2の粒子が「焼結」した状態には、第1の粒子及び第2の粒子が完全に又は部分的に融け合って一体化(融着)している状態と、第1の粒子及び第2の粒子が融合せずに接触しているのみの状態のいずれもが含まれる。
<導体形成用組成物>
本実施形態の導体形成用組成物は、金属銅を含むコア粒子とコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物とを有する第1の粒子と、酸化銅を含む第2の粒子と、分散媒と、を含有する。このような導体形成用組成物を使用することによって、低温(例えば、250℃以下)で導体化が可能となり得る。
(第1の粒子)
第1の粒子は、金属銅を含むコア粒子とコア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物とを有する。第1の粒子としては、例えば、特開2016-037627の銅含有粒子を好適に用いることができる。
特開2016-037627の銅含有粒子は、銅を含むコア粒子と、コア粒子の表面の少なくとも一部に存在するアルキルアミンに由来する物質を含む有機物と、を有し、アルキルアミンは炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンを含む。有機物を構成するアルキルアミンの炭化水素基の鎖長が比較的短いため、比較的低い温度(例えば、150℃以下)でも熱分解し、コア粒子同士が融着し易い。
有機物は、炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンを含んでいてもよい。炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンは、例えば、1級アミン、2級アミン、アルキレンジアミン等であってよい。1級アミンとしては、エチルアミン、2-エトキシエチルアミン、プロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、ブチルアミン、4-メトキシブチルアミン、イソブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン等を挙げることができる。2級アミンとしては、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルペンチルアミン等を挙げることができる。アルキレンジアミンとしては、エチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N’-ジメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N-ジエチル-1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、1,6-ジアミノへキサン、N,N’-ジメチル-1,6-ジアミノへキサン、1,7-ジアミノヘプタン等を挙げることができる。
コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物は、炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミン以外の有機物を含んでいてもよい。有機物全体に対する炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物は、その割合がコア粒子及び有機物の合計に対して0.1質量%~20質量%であることが好ましい。有機物の割合が0.1質量%以上であると、充分な耐酸化性が得られる傾向にある。有機物の割合が20質量%以下であると、低温での導体化が達成され易くなる傾向にある。コア粒子及び有機物の合計に対する有機物の割合は0.3質量%~10質量%であることがより好ましく、0.5質量%~5質量%であることがさらに好ましい。
第1の粒子の大きさは、長軸の長さの平均値が10nm~500nmの範囲内であることが好ましい。導体化温度を低くする観点からは長軸の長さの平均値が20nm~500nmであることがより好ましく、30nm~500nmであることがさらに好ましい。第1の粒子の長軸は、第1の粒子に外接し、互いに平行である二平面の間の距離が最大となるように選ばれる二平面間の距離を意味する。第1の粒子の長軸は、電子顕微鏡による観察等の公知の方法により、測定することができる。長軸の長さの平均値は、無作為に選択される200個の第1の粒子について測定した長軸の長さの算術平均値を意味する。なお、電子顕微鏡像から無作為に第1の粒子を選択する際には、粒子径が3nm未満である第1の粒子は測定対象から除外する。
第1の粒子の形状は特に制限されない。例えば、球状、長粒状、扁平状、繊維状等を挙げることができ、第1の粒子の用途にあわせて選択できる。印刷用ペーストとして用いる観点からは、球状、長粒状であることが好ましい。
第1の粒子は、少なくとも金属銅を含み、必要に応じてその他の物質を含んでもよい。金属銅以外の物質としては、金、銀、白金、錫、ニッケル等の金属又はこれらの金属元素を含む化合物、還元性化合物又は有機物等を挙げることができる。導電性に優れる導体(層)を形成する観点からは、第1の粒子中の金属銅の含有率は50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
第1の粒子は、CuKα線を用いたX線回折(XRD)において、2θ=44±2°、2θ=51±2°、及び2θ=75±2°の回折ピークを示すことが好ましい。これらのピークは、金属銅由来の回折ピークに対応する。
X線回折は、例えば、粉末X線回折装置(株式会社リガク製、Geigerflex RAD-2X、CuKα:波長(λ)=1.5418Å)を用いて測定される。
第1の粒子は、表面の少なくとも一部が有機物で被覆されているために、空気中で保存している間も金属銅の酸化が抑制されており、酸化銅の含有率が小さいと推測される。また、第1の粒子中の酸化銅の含有率は、例えば、粉末X線回折装置によって測定することができ、第1の粒子中の酸化銅の含有率は5質量%以下であってよい。
第1の粒子の含有量は、製造する接合体の導電性の観点から、組成物全量を基準として、30質量%~98質量%であることが好ましく、35質量%~95質量%であることがより好ましく、40質量%~90質量%であることがさらに好ましい。
第1の粒子の製造方法は特に制限されない。製造方法としては、例えば、特開2016-037626の第1の粒子の製造方法が挙げられる。
特開2016-037626の第1の粒子の製造方法は、銅前駆体として、炭素数が9以下である脂肪酸と銅との金属塩を使用するものである。これにより、銅前駆体としてシュウ酸銅等を用いる特許文献1に記載の方法と比較して、より沸点の低いアルキルアミンを反応媒として使用することが可能になると考えられる。その結果、得られる第1の粒子の表面に存在する有機物がより熱分解し易いものとなり、導体化を低温で実施することがより容易になる。
(第2の粒子)
第2の粒子は、酸化銅を含む粒子であり、当該粒子の表面が有機物で被覆されていない粒子である。第2の粒子は、第1の粒子とは異なる粒子である。酸化銅は、酸化銅(I)、酸化銅(II)、及びその他の酸化数を有する酸化銅からなる群から選択される少なくとも1種であってもよい。これらのうち、金属銅への還元のし易さから、酸化銅は、酸化銅(I)であることが好ましい。
第2の粒子は、CuKα線を用いたX線回折において、金属銅由来の回折ピーク(例えば、上述の2θ=44±2°、2θ=51±2°、及び2θ=75±2°の回折ピーク)が観測されないこと(検出限界以下であること)が好ましい。
第2の粒子は、市販品を用いてもよく、公知の合成方法によって合成したものを用いてもよい。第2の粒子の合成方法としては、例えば、アセチルアセトナト銅錯体をポリオール溶媒中で加熱する方法が知られている(Angew.Chem.Int.Ed.2001,40,359-362)。この合成方法では、一次粒子径が100nm以下の酸化銅(I)粒子を得ることが可能である。
第2の粒子の平均粒径は、分散媒への分散性及び酸化物粒子とともに組成物層を形成したときの平滑性の観点から、200nm以下であることが好ましい。第2の粒子の平均粒径は、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。第2の粒子の平均粒径は、第2の粒子全体の体積に対する比率(体積分率)が50%のときの粒径(D50)である。第2の粒子の平均粒径(D50)は、レーザー散乱型粒径測定装置(例えば、マイクロトラック)を用いて、レーザー散乱法により水中に第2の粒子を懸濁させた懸濁液を測定することで得ることができる。
第2の粒子の含有量は、第1の粒子100質量部に対して0.5質量部~12質量部であることが好ましく、0.3質量部~10質量部であることがより好ましく、0.5質量部~5質量部であることがさらに好ましい。第2の粒子の含有量が12質量部以下であると、第2の粒子の分散媒への分散性がより良好となる傾向にある。第2の粒子の含有量が0.5質量部以上であると、接合体の密着性がより向上する傾向にある。
(分散媒)
分散媒は、特に制限されずに、導電インク、導電ペースト等の製造に一般に用いられる有機溶剤から用途に応じて適宜選択できる。分散媒は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。粘度調整の観点から、分散媒は、テルピネオール、イソボルニルシクロヘキサノール、ジヒドロテルピネオール、及びジヒドロテルピネオールアセテートからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
分散媒の含有量は、第1の粒子100質量部に対して1質量部~300質量部であることが好ましく、3質量部~200質量部であることがより好ましく、5質量部~150質量部であることがさらに好ましい。分散媒の質量比が300質量部以下であると、得られる導体(層)がより良好な導電性を示す傾向にある。また、1質量部以上であると、分散性がより良好なる傾向にある。
(還元剤)
導体形成用組成物は、還元剤をさらに含有していてもよい。ここで、還元剤は還元性を有する化合物であって、かつ分散媒として作用するものであってもよい。還元剤としては、例えば、フロログルシノール、レゾール等のフェノール化合物、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸化合物、ギ酸、ギ酸ステアリルアミン等のギ酸化合物、ジヒドロキシナフトエ酸、ジヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ-2-メチル安息香酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸化合物、クエン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸化合物、グルコース、ショ糖等の糖類、ジグリセリン、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール等のポリオール類、アスコルビン酸、シュウ酸、グリオキシル酸等の有機酸化合物、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール等のアルキルアルコール類、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン等のアルキルアミン類などが挙げられる。還元剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、還元剤は、分散媒との相溶性の観点から、ポリオール類であってもよい。
還元剤の含有量は、第1の粒子100質量部に対して1質量部~20質量部であってもよい。
(その他の成分)
導体形成用組成物は、第1の粒子、第2の粒子、分散媒、及び還元剤以外の成分をその他の成分として含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、シランカップリング剤等の架橋剤などが挙げられる。その他の成分の含有量は、例えば、第1の粒子100質量部に対して、0.1質量部~5.0質量部であってもよい。
導体形成用組成物の粘度は、特に制限されずに、用途に応じて選択できる。例えば、導体形成用組成物をスクリーン印刷法に適用する場合は、粘度が0.1Pa・s~30Pa・sであることが好ましく、1Pa・s~30Pa・sであることがより好ましい。導体形成用組成物をスピンコート法に適用する場合は、粘度が0.3mPa・s~1000mPa・sであることが好ましく、1mPa・s~800mPa・sであることがより好ましい。導体形成用組成物の粘度はE型粘度計(東機産業株式会社製、製品名:VISCOMETER-TV22、適用コーンプレート型ロータ:3°×R17.65)を用いて測定される25℃における粘度を意味する。
導体形成用組成物の製造方法は、特に限定されずに、当該技術分野で通常用いられる方法を用いることができる。例えば、第1の粒子、第2の粒子、並びに必要に応じて含まれる還元剤及びその他の成分を分散媒中に分散処理することで調製することができる。分散処理は、石川式撹拌機、自転公転式撹拌機、超薄膜高速回転式分散機、ロールミル、超音波分散機、ビーズミル等のメディア分散機、ホモミキサー、シルバーソン撹拌機等のキャビテーション撹拌装置、アルテマイザー等の対向衝突法などを用いることができる。また、これらの手法を適宜組み合わせて用いてもよい。
<接合体の製造方法>
本実施形態の接合体の製造方法は、第一の基材、上述の導体形成用組成物からなる組成物層、及び第二の基材がこの順に積層されている接合前駆体を用意する工程(接合前駆体準備工程)と、接合前駆体を、不活性ガス、還元性ガス又はこれらの混合ガスのいずれかのガス雰囲気下、120℃~250℃で加熱する工程(加熱工程)と、を備える。以下、接合体の製造方法の例を、図面を参照して説明する。
図1は、導体形成用組成物を用いた接合体の製造方法の一実施形態を説明するための模式断面図である。本実施形態の方法は、図1に示すように、第一の基材1、上述の導体形成用組成物からなる、第1の粒子4a及び第2の粒子4bを含む組成物層3、及び第二の基材2がこの順に積層されている接合前駆体10を用意する(図1の(a))。接合前駆体10は、例えば、第一の基材上に、上述の導体形成用組成物を用いて、第1の粒子4a及び第2の粒子4bを含む組成物層3を形成し、組成物層3上に第二の基材2を配置することによって、得ることができる。次に、特定のガス雰囲気内で、用意した接合前駆体10を特定の温度で加熱する(図1の(b))。このとき、例えば、方向Aから、荷重をかけながら(加圧しながら)加熱してもよい。これら工程を経ることによって、第一の基材1と、第二の基材2と、第一の基材1と第二の基材2とを接合する導体層5と、を備える接合体20が得られる(図1の(c))。導体層5は、導体形成用組成物に含有される第1の粒子4a及び第2の粒子4bが焼結してなる焼結体を含む。
第一の基材1は、基材中に金属を含む。金属として具体的には、金、銀、銅、白金、パラジウム、亜鉛、ニッケル、錫、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属、これらの金属を含む合金などが挙げられる。基材は金属銅基材であってもよい。また、基材は曲面を有していてもよい。
第一の基材1全体に対する第1の粒子4a及び第2の粒子4bの割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。第1の粒子及び第2の粒子の割合が50質量%以上であると、得られる導体(層)と、基材に含まれる金属との間で、金属結合を形成し易くなる傾向にある。
第一の基材1上に組成物層3を形成する方法は、組成物層3を基材上に任意の形状で形成することができるのであれば特に制限されない。このような方法としては、例えば、インクジェット法、スーパーインクジェット法、スクリーン印刷法、転写印刷法、オフセット印刷法、ジェットプリンティング法、ディスペンス法、ジェットディスペンス法、ニードルディスペンス法、カンマコート法、バーコート法、スリットコート法、ダイコート法、グラビアコート法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法、ソフトリソグラフ法、ディップペンリソグラフ法、粒子堆積法、スプレーコート法、スピンコート法、ディップコート法、電着塗装法等が挙げられる。
組成物層3の形状及び厚みは、特に制限されずに、目的に応じて適宜選択することができる。また、組成物層3の厚みは、例えば、0.2μm~2000μmであることが好ましい。導電性及び接合体の接続信頼性の観点からは、1μm~1000μmであることがより好ましい。
第二の基材2としては、第一の基材1で例示したものを用いることができる。第二の基材2は、第一の基材1と同一であってもよく、異なっていてもよい。
加熱工程では、接合前駆体を、特定の雰囲気下、特定の温度条件で加熱する。これによって、第一の基材1と、第二の基材2と、第一の基材1と第二の基材2とを接合する導体層5と、備える接合体20が得られる。
加熱工程におけるガス雰囲気は、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、ギ酸等の還元性ガス、又はこれらの不活性ガスと還元性ガスとの混合ガスのいずれかのガス雰囲気である。ガス雰囲気は、水素ガス又はギ酸ガスを含む還元性ガス雰囲気であってもよい。還元性ガス雰囲気で加熱を行うことによって、第1の粒子表面の有機物の脱離及び第2の粒子に含まれる酸化銅の金属銅への還元を容易にし、該粒子の銅を含むコア粒子同士の焼結(融着)を促進するとともに、基材に含まれる金属と該コア粒子に含まれる銅との焼結(融着)を促進する。
加熱工程における雰囲気中の気圧条件は、特に制限されずに、大気圧条件であっても減圧条件であってもよいが、減圧(負圧)条件とすることによって、低温での導体化がより促進される傾向にある。
加熱工程における温度条件は120℃~250℃の範囲であり、120℃~230℃の範囲であることが好ましい。温度が120℃以上であると、充分な導電性を有する導体(層)が得られる傾向にある。加熱工程における昇温条件は、一定の速度で昇温させても、不規則に変化させて昇温させてもよい。加熱工程における加熱時間は、特に制限されずに、加熱温度、加熱雰囲気、粒子の量等を考慮して選択することができる。また、加熱方法は、特に制限されずに、熱板、赤外ヒータ、パルスレーザ等を用いて加熱することができる。
接合体の製造方法では、必要に応じてその他の工程を備えていてもよい。その他の工程としては、加熱工程後に水又は有機溶剤に浸漬して残存成分を除去する工程、加熱工程後に光焼成で残存成分を除去する工程等を挙げることができる。
本発明の導体形成用組成物を用いて製造される導体(層)の体積抵抗率は、1000μΩ・cm以下であることが好ましく、500μΩ・cm以下であることがより好ましく、300μΩ・cm以下であることがさらに好ましく、200μΩ・cm以下であることが特に好ましい。導体(層)の形状は、特に制限されずに、薄膜状、バンプ状、パターン状等であってもよい。
<接合体>
本実施形態の接合体は、第一の基材と、第二の基材と、第一の基材と第二の基材とを接合する導体層と、備える。導体層は、上述の導体形成用組成物に含有される第1の粒子及び第2の粒子が焼結した構造を含む。接合体は、太陽電池、ディスプレイ、タッチパネル、トランジスタ、半導体パッケージ、積層セラミックコンデンサ等の電子部品に使用される接続端子、放熱膜等の部材などとして利用することができる。本実施形態の接合体は、例えば、従来はんだ接合によって製造された接合体に代えて、使用することができる。
接合体の接合強度の測定方法は、製造した接合体の形状によって適宜選択される。例えば、接合体を接合面に対して垂直方向に引き剥がすプル強度テスト、接合面に対して水平方法に引き剥がすシェア強度テスト、屈曲性のある薄膜を引き剥がすピール強度テスト等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[製造例1]ノナン酸銅の合成
水酸化銅(関東化学株式会社、特級)91.5g(0.94mol)に1-プロパノール(関東化学株式会社、特級)150mLを加えて撹拌し、これにノナン酸(関東化学株式会社、90%以上)370.9g(2.34mol)を加えた。得られた混合物を、セパラブルフラスコ中で90℃、30分間加熱撹拌した。得られた溶液を加熱したままろ過して未溶解物を除去した。その後放冷し、生成したノナン酸銅を吸引ろ過し、洗浄液が透明になるまでヘキサンで洗浄した。得られた粉体を50℃の防爆オーブンで3時間乾燥してノナン酸銅(II)を得た。収量は340g(収率96質量%)であった。
[製造例2]第1の粒子の合成
上記で得られたノナン酸銅(II)15.01g(0.040mol)及び酢酸銅(II)無水物(関東化学株式会社、特級)7.21g(0.040mol)をセパラブルフラスコに入れ、1-プロパノール22mL及びヘキシルアミン(東京化成工業株式会社)32.1g(0.32mol)を添加し、オイルバス中、80℃で加熱撹拌して溶解させた。氷浴に移し、内温が5℃になるまで冷却した後、ヒドラジン一水和物(関東化学株式会社、特級)7.72mL(0.16mol)を加えて、さらに氷浴中で撹拌した。なお、銅:ヘキシルアミンのモル比は1:4である。次いで、オイルバス中で10分間、90℃で加熱撹拌した。その際、発泡を伴う還元反応が進み、セパラブルフラスコの内壁が銅光沢を呈し、溶液が暗赤色に変化した。遠心分離を9000rpm(回転/分)で1分間実施して固体物を得た。固形物をさらにヘキサン15mLで洗浄する工程を3回繰り返し、酸残渣を除去して、銅光沢を有する第1の粒子を含む銅ケークを得た。
粉末X線回折装置(株式会社リガク製、Geigerflex RAD-2X、X線源:CuKα線、回折角範囲30~80°)を用いて、製造例2で合成した第1の粒子を分析した。図2に、第1の粒子の回折角範囲30~80°におけるX線回折(XRD)スペクトルを示す。X線回折において、2θ=43.7°、50.9°、及び74.6°にピークを有することを確認した。このX線回折(XRD)スペクトルから、第1の粒子は、金属銅を含み、酸化銅をほとんど含まないことが確認された。
[実施例1~6、比較例1]
第1の粒子として上記で合成した銅ケーク、第2の粒子として酸化銅(I)粒子(タキロンシーアイ株式会社、製品名Nano Tek(登録商標)、平均粒径:48nm)、分散媒としてテルピネオール(和光純薬工業株式会社)及びイソボルニルシクロヘキサノール(テルソルブMTPH、日本テルペン化学株式会社)、並びに還元剤としてエチレングリコール(和光純薬工業株式会社)を表1に示す配合質量部で混合して導体形成用組成物を作製した。得られた導体形成用組成物を目視にて確認したところ、いずれも組成物全体は均質なペースト状であり、第1の粒子及び第2の粒子の分散性は良好であった。
実施例1~6及び比較例1の導体形成用組成物を用いて、接合体を作製した。より詳細には、導体形成用組成物を予め、アセトンで超音波洗浄して有機物を除去した金属銅基材(第一の基材)上に、2×2mm、厚み0.1mmのステンシル版を用いてステンシル印刷して組成物層を形成した。その後、2×2mm、厚み0.25mmの銅基材(第二の基材)を、第一の基材上の組成物層を覆うように配置した。その後、加熱処理を行い、実施例1~6及び比較例1の接合体を得た。加熱処理には雰囲気制御加熱圧着装置(RF-100B、アユミ工業株式会社)を使用した。加熱処理は、窒素ガス雰囲気下の負圧(8.5×10Pa)で、昇温速度30℃/分で250℃まで加熱し、続いて窒素とギ酸との混合ガスを導入して9.0×10Paに調整し、250℃で60分間保持することによって行った。
(接合強度測定)
得られた接合体をダイシェア強度(MPa)により評価した。DS-100ロードセルを装着した万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、ノードソン・アドバンスト・テクノロジー株式会社)を用い、測定スピード100μm/sec、測定高さ12μmで銅基材(第二の基材)を水平方向に押し、接合体のダイシェア強度(MPa)を測定した。表1に結果を示す。
Figure 0007139590000001
第2の粒子を含有する導体形成用組成物を用いて作製した実施例1~4の接合体のダイシェア強度は、第2の粒子を含有しない導体形成用組成物を用いて作製した比較例1の接合体のダイシェア強度と比較して3倍~14倍優れていた。また、還元剤をさらに含有する導体形成用組成物を用いて作製した実施例5、6の接合体のダイシェア強度は、比較例1の接合体のダイシェア強度と比較して17倍~18倍優れていた。
以上より、本発明の導体形成用組成物が、250℃以下で導体化が可能であり、金属接合材料として用いることが可能であることが確認された。
1…第一の基材、2…第二の基材、3…組成物層、4a…第1の粒子、4b…第2の粒子、5…導体層、10…接合前駆体、20…接合体。

Claims (5)

  1. 金属銅を含むコア粒子と前記コア粒子の表面の少なくとも一部を被覆する有機物とを有する第1の粒子と、
    酸化銅を含む第2の粒子と、
    分散媒と、
    を含有し、
    前記有機物が、炭化水素基の炭素数が7以下であるアルキルアミンを含み、
    前記第2の粒子の含有量が、前記第1の粒子100質量部に対して0.5質量部~5質量部である、導体形成用組成物。
  2. 還元剤をさらに含有する、請求項1に記載の導体形成用組成物。
  3. 第一の基材、請求項1又は2に記載の導体形成用組成物からなる組成物層、及び第二の基材がこの順に積層されている接合前駆体を用意する工程と、
    前記接合前駆体を、不活性ガス、還元性ガス又はこれらの混合ガスのいずれかのガス雰囲気下、120℃~250℃で加熱する工程と、
    を備える、接合体の製造方法。
  4. 前記ガス雰囲気が、水素ガス又はギ酸ガスを含む雰囲気である、請求項に記載の接合体の製造方法。
  5. 第一の基材と、第二の基材と、前記第一の基材と前記第二の基材とを接合する導体層と、を備え、
    前記導体層が、請求項1又は2に記載の導体形成用組成物に含有される第1の粒子及び第2の粒子が焼結してなる焼結体を含む、接合体。
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