JP7127464B2 - 水処理システム - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1は、逆浸透膜を用いた造水方法であって、バイオフィルムの発生によるバイオファウリングの抑制のため、次亜塩素酸ナトリウムを水処理システム中の逆浸透膜に流入させる造水方法を開示している。
また、同一の薬剤を継続的に薬注することにより、バイオフィルムが由来する微生物として耐性菌が発生し、薬注開始からの時間経過に伴って、バイオファウリングを抑制する効果が落ちてしまうことがある。
以下、本発明の第1実施形態である水処理システム1について、図1~図3を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の水処理システム1の全体構成図である。
図1に示すように、水処理システム1は、第1薬剤添加装置5と、第2薬剤添加装置6と、第3薬剤添加装置7と、水質センサ8と、加圧ポンプ10と、インバータ11と、第
1圧力センサ13と、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)14と、第2圧力センサ15と、流量センサFMと、第3圧力センサ17と、定流量弁18と、比例制御排水弁19と、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
本実施形態において、第1薬剤添加装置5は、逆浸透膜モジュール14におけるバイオフィルムの析出を抑制するために、第1薬剤として酸化剤を添加することにより、給水W11中の遊離塩素濃度を調整する。逆浸透膜モジュール14において、逆浸透膜の表面にバイオフィルムが付着することを効果的に抑制可能なことから、第1薬剤の例として、次亜塩素酸ソーダ等の塩素系酸化剤が挙げられる。なお、第1薬剤が次亜塩素酸ソーダの場合、次亜塩素酸ソーダの添加量は、給水W11中の有効塩素濃度が、0.01~5mgCl2/L程度となることが好ましい。
以下では説明の簡略化のため、第1薬剤が次亜塩素酸ソーダである例について説明するが、本発明はこれには限られない。他の塩素系酸化剤として、例えば、液化塩素、さらし粉、塩素化イソシアヌル酸等を用いてもよい。
本実施形態において、第2薬剤添加装置6は、逆浸透膜モジュール14に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第2薬剤として安定化剤を添加する。安定化剤の添加により、例えば給水W11に含まれる次亜塩素酸は、安定化次亜塩素酸になる。逆浸透膜モジュール14において、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制可能なことから、第2薬剤の例としては、スルファミン酸等の安定化剤が挙げられる。なお、第2薬剤がスルファミン酸の場合、スルファミン酸の添加量は、給水W11中の次亜塩素酸に由来する有効塩素:スルファミン酸のモル比が、1:1~20程度となることが好ましく、1:1.5~10程度とするとなおよい。有効塩素1に対して、スルファミン酸が1を切ると、両者の反応効率が100%だと仮定しても、遊離塩素が生じるためである。
以下では説明の簡略化のため、第2薬剤がスルファミン酸である例について説明するが、本発明はこれには限られない。
本実施形態において、第3薬剤添加装置7は、逆浸透膜モジュール14に備わる逆浸透膜に与えるダメージをより小さくするために、臭素化合物を添加する。臭素化合物の添加により、間接的に次亜臭素酸が生成され、次亜臭素酸とスルファミン酸が反応することにより、最終的に臭化スルファミン酸化合物が生成される。第3薬剤の例としては、臭化ナトリウム等の臭素化合物が挙げられる。なお、臭素化合物の添加量は、給水W11中の次亜塩素酸に由来する有効塩素:臭素化合物のモル比が1:1~10程度となることが好ましく、1:1~2程度とするとなおよい。
以下では説明の簡略化のため、第3薬剤が臭化ナトリウムである例について説明するが、本発明はこれには限られない。
本実施形態において、水質センサ8は、給水W11の水質として、TOC(Total Organic Carbon:全有機炭素量)、COD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)、BOD(Biochemical Oxygen Demand:生物化学的酸素要求量)、AOC(Assimilable Organic Carbon:同化可能有機炭素量)等の有機物量や、細菌数、ATP数等の微生物量のいずれか一つ以上を測定する。制御部30は、水質センサ8からこれらの測定値を受信し、受信した測定値を用いてバイオフィルムリスクを予測し、予測したバイオフィルムリスクに基づいて、水処理システム1の運転開始時における給水W11への第1薬剤及び第2薬剤の薬注量を設定する。
とりわけ本実施形態においては、第1薬剤添加装置5によって給水W11へ次亜塩素酸ソーダを添加することで、給水W11中の遊離塩素濃度を調整すると共に、第2薬剤添加装置6によって給水W11へ安定化剤を添加する「第1の薬剤濃度調整工程」と、同様に、第1薬剤添加装置5によって給水W11へ次亜塩素酸ソーダを添加することで、給水W11中の遊離塩素濃度を調整すると共に、第2薬剤添加装置6によって給水W11へ安定化剤を添加し、第3薬剤添加装置7によって給水W11へ臭化化合物を添加する「第2の薬剤濃度調整工程」とを、所定の時間間隔で切り替えながら実行する。
これにより、バイオフィルムリスクに応じた薬注の初期条件を設定することが可能となる。
以下、本発明の第1実施形態に係る水処理システム1の動作について、図面を参照しながら説明する。図3は、本発明の水処理システム1の動作を示すフローチャートである。
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
第1実施形態に係る水処理システム1は、給水W12を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュール14と、給水W12を逆浸透膜モジュール14に供給する給水ラインL1と、逆浸透膜モジュール14で分離された透過水W20を送出する透過水ラインL2と、逆浸透膜モジュール14で分離された濃縮水W30を送出する濃縮水ラインL3と、濃縮水W30の一部又は全部を濃縮排水W50として、系外に排出する濃縮排水ラインL5と、給水W11に安定化剤、及び臭素化合物を薬注する薬注手段6及び7と、給水W11中の遊離塩素濃度を調整する遊離塩素濃度調整手段5と、薬注手段6及び7及び遊離塩素濃度調整手段5が実行する給水中の薬剤濃度調整工程を、給水W11中の遊離塩素濃度を調整すると共に、給水W11に安定化剤を薬注する第1の薬剤濃度調整工程と、給水W11中の遊離塩素濃度を調整すると共に、給水W11に安定化剤、及び臭素化合物を薬注する第2の薬剤濃度調整工程との間で切り替える薬剤濃度調整部31と、を備える。
以下、本発明の第2実施形態である水処理システム1Aについて、図4及び図5を参照しながら説明する。なお、以下では主として、第2実施形態に係る水処理システム1Aを、第1実施形態に係る水処理システム1と比較した場合の相違点について説明する。
水処理システム1Aは、水処理システム1に比較して、制御部30の代わりに制御部30Aを備える点で異なる。
図4は、制御部30Aの機能ブロックである。制御部30Aは、制御部30と異なり、計時部32を備えず、その代わりに差圧測定部33と透過流束値算出部34とを備える。更に、制御部30Aは、薬剤濃度調整部31の代わりに薬剤濃度調整部31Aを備える。
膜間差圧[MPa]=逆浸透膜モジュール14の一次側入口ポートの圧力-逆浸透膜モジュール14の二次側ポートの圧力 (1)
本実施形態においては、「逆浸透膜モジュール14の一次側入口ポートの圧力」は、第1センサ13で測定された第1検出圧力値[MPa]により取得し、「逆浸透膜モジュール14の二次側ポートの圧力」は、第3圧力センサ17で測定された第3検出圧力値[MPa]により取得する。
ここで透過流束とは、逆浸透膜モジュール14の膜の詰まり状態を示す指標であり、単位時間当たり、単位膜面積を通過する水の量を単位膜差圧当たりとして標準温度条件下に換算したものである。これを数式にて表現すると、例えば特開2008-55336号公報に記載のように、下記の式(2)にて表現できる。
透過流束[L/m2・h・MPa]=処理水瞬間流量/[{入口運転圧力-(装置差圧÷2)-出口背圧-浸透圧}×温度補正係数×膜面積] (2)
以下、本発明の第2実施形態に係る水処理システム1Aの動作について、図面を参照しながら説明する。図5は、本発明の水処理システム1の動作を示すフローチャートである。
なお、以下では、上記の第1領域を膜間差圧がP1未満の領域とし、上記の第2領域を膜間差圧がP1以上P2未満の領域とし、上記の第3領域を膜間差圧がP2以上P3未満の領域とし、上記の第4領域を膜間差圧がP3以上の領域とする。これらP1、P2、P3は、0.03~0.1MPaの間で任意に設定される数値とすると好適である。
同様に、上記の第5領域を透過流束値がF3以下の領域とし、上記の第6領域を透過流束値がF3を超えF2以下の領域とし、上記の第7領域を透過流束値がF2を超えF1以下の領域とし、上記の第8領域を透過流束値がF1を超える領域とする。これらF1、F2、F3は、透過流束の初期比として70~100%の間で任意に設定される数値とすると好適である。
上述した本実施形態に係る水処理システム1Aによれば、例えば、以下のような効果が奏される。
水処理システム1Aは、逆浸透膜モジュール14において濃縮水W30が流れる経路の入出差圧である膜間差圧を測定する膜間差圧測定手段33、又は逆浸透膜モジュール14における透過流束値を算出する透過流束値算出手段34を更に備え、膜間差圧測定手段33により測定された膜間差圧の値が第1の閾値を超えた場合、又は透過流束値算出手段34により算出された透過流束値が第2の閾値以下の場合に、薬注手段6及び7及び遊離塩素濃度調整手段5は第1の薬剤濃度調整工程を実行し、膜間差圧の値が第1の閾値以下の場合、又は透過流束値が第2の閾値を超えた場合に、薬注手段6及び7及び遊離塩素濃度調整手段5は第2の薬剤濃度調整工程を実行するよう、薬剤濃度調整部31Aは薬注手段6及び7及び遊離塩素濃度調整手段5によって実行される薬剤濃度調整工程を切り替える。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、第1薬剤添加装置5は、第1薬剤として酸化剤を添加することにより、給水W11中の遊離塩素濃度を調整するとしたが、これには限定されない。第1薬剤添加装置5は、第1薬剤として還元剤を添加してもよく、この場合、給水W11に前段のろ過処理工程等により元々含まれている遊離塩素濃度を低下させる。この還元剤としては、例えばSBS(NaHSO3:重亜硫酸ソーダ)を用いてもよい。
また、水処理システム1及び1Aが、そもそも第1薬剤添加装置5を備えず、遊離塩素濃度を調整しない構成としてもよい。
また、水質センサ8が、給水W11に含まれる還元剤の濃度を測定する場合、制御部が水質センサ8から受信した還元性物質濃度の測定値を用いて、給水W11中の遊離塩素濃度を調整するため、水処理システム1の運転開始時における給水W11への第1薬剤及び第2薬剤の薬注量を設定するとしたが、これには限定されない。例えば、除鉄・除マンガン装置としてのろ過装置を用いることにより、前処理として給水W11から還元性物質を除去してもよい。
また、上記の実施形態においては、第1薬剤添加装置5が次亜塩素酸ソーダ等の酸化剤を給水ラインL1に添加し、第2薬剤添加装置6が安定化剤を給水ラインL1に添加するとしたが、これには限定されない。例えば、酸化剤及び安定化剤に加えて、イソチアゾリン及び/又はDBNPA等の殺菌剤を薬注してもよい。その上で、薬剤濃度調整部31又は31Aは、薬注手段が実行する給水ラインL1への薬剤濃度調整工程を、給水W11にイソチアゾリン及び/又はDBNPAを薬注する第1の薬剤濃度調整工程と、給水W11に安定化剤及び/又は臭素化合物を薬注する第2の薬剤濃度調整工程との間で切り替えてもよい。
また、水処理システム1及び1Aは、上記の実施形態とは異なる構成を有してもよい。例えば、上記では循環水ラインL4を備えるとしたが、これには限定されず、循環水ラインL4を有さない構成としてもよい。また、とりわけ第1実施形態においては、例えば、第1圧力センサ13、第2圧力センサ15、第3圧力センサ17、流量センサFMを必須の構成要素としなくてもよい。
また、水処理システム1及び1Aは、更に、耐塩素膜を使用すると、膜劣化の影響をより受け難くなるのでより好適である。上述の薬注調整手法と併用することで、より劣化影響を低減することができる。耐塩素膜としては、例えばポリアミド系の材料を用いて製造されるものがある。
また、水処理システム1及び1Aにおいて、膜洗浄工程にも前記薬剤を添加した給水を用いて行うのが好ましい。膜洗浄工程としては、フラッシング等が有るが、濃縮水ラインに給水ラインを接続して通水しても良い。
5 第1薬剤添加装置(遊離塩素濃度調整手段)
6 第2薬剤添加装置(薬注手段)
7 第3薬剤添加装置(薬注手段)
8 水質センサ(水質測定手段)
10 加圧ポンプ
13 第1圧力センサ、15 第2圧力センサ、17 第3圧力センサ、
14 逆浸透膜モジュール
30 30A 制御部
31 31A 薬剤濃度調整部
32 計時部
33 差圧測定部
34 透過流束値算出部
L1 給水ライン、L2 透過水ライン、L3 濃縮水ライン、
L4 循環水ライン、L5 濃縮排水ライン、
L11 第1給水ライン、L12 第2給水ライン
Claims (8)
- 給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、
前記濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、
給水に添加することで、塩素系酸化剤から安定化次亜塩素酸を生成させ、前記逆浸透膜モジュールに備わる逆浸透膜の劣化を効果的に抑制可能とする安定化剤、及び給水に添加することで、塩素系酸化剤から次亜臭素酸を生成する臭素化合物を薬注する薬注手段と、
前記薬注手段が実行する給水中の薬剤濃度調整工程を、予め設定される条件に基づいて給水に安定化剤を薬注する第1の薬剤濃度調整工程と、給水に安定化剤、及び臭素化合物を薬注する第2の薬剤濃度調整工程との間で切り替える薬剤濃度調整部と、を備え、
前記薬剤濃度調整部により前記給水に安定化剤を添加するか、又は安定化剤、及び臭素化合物を添加するか、を第1の薬剤濃度調整工程と、第2の薬剤濃度調整工程との間で切り替え、塩素系酸化剤から生成させる薬剤の特徴を変更させることで、耐性菌の発生を予防するとともに、逆浸透膜の劣化を抑えながら、バイオフィルムの生成を効果的に抑制することを可能にする、水処理システム。 - 給水中の遊離塩素濃度を調整する遊離塩素濃度調整手段を更に備え、
前記薬剤濃度調整部は、給水中の遊離塩素濃度を調整すると共に、給水に安定化剤を薬注する第1の薬剤濃度調整工程と、給水中の遊離塩素濃度を調整すると共に、給水に安定化剤、及び臭素化合物を薬注する第2の薬剤濃度調整工程との間で切り替える、請求項1に記載の水処理システム。 - 前記薬剤濃度調整部は、予め設定される当該水処理システムの運転時間に基づいて前記薬注手段及び前記遊離塩素濃度調整手段によって実行される薬剤濃度調整工程を切り替える、請求項2に記載の水処理システム。
- 前記逆浸透膜モジュールにおいて濃縮水が流れる経路の入出差圧である膜間差圧を測定する膜間差圧測定手段、又は前記逆浸透膜モジュールにおける透過流束値を算出する透過流束値算出手段を更に備え、
前記膜間差圧測定手段により測定された膜間差圧の値が第1の閾値を超えた場合、又は前記透過流束値算出手段により算出された前記透過流束値が第2の閾値以下の場合に、前記薬剤濃度調整部は、前記第1の薬剤濃度調整工程に切り替え、前記膜間差圧の値が前記第1の閾値以下の場合、又は前記透過流束値が前記第2の閾値を超えた場合に、前記薬剤濃度調整部は、前記第2の薬剤濃度調整工程に切り替える、請求項2に記載の水処理システム。 - 前記膜間差圧測定手段により測定された膜間差圧の値が前記第1の閾値よりも高い第3の閾値を超えた場合、又は前記透過流束値算出手段により算出された前記透過流束値が前記第2の閾値よりも低い第4の閾値以下の場合に、前記薬剤濃度調整部は、前記安定化剤の薬注量を減少させる、請求項4に記載の水処理システム。
- 前記膜間差圧測定手段により測定された膜間差圧の値が前記第3の閾値よりも高い第5の閾値を超えた場合、又は前記透過流束値算出手段により算出された前記透過流束値が前記第4の閾値よりも低い第6の閾値以下の場合に、前記薬剤濃度調整部は、前記遊離塩素濃度を増加させる、請求項5に記載の水処理システム。
- 前記遊離塩素濃度調整手段は、給水に還元剤を薬注する第2薬注手段であることを特徴とする、請求項2~6のいずれか1項に記載の水処理システム。
- 給水の水質を測定する水質測定手段を更に備え、
前記薬剤濃度調整部は、前記水質測定手段により測定された水質に基づいて、運転開始時における遊離塩素濃度の調整量及び、安定化剤、臭素化合物の薬注量を設定する、請求項1~7のいずれか1項に記載の水処理システム。
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