JP7123674B2 - 異材接合構造体の製造方法及び異材接合構造体 - Google Patents
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(1) アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属粉末を低温溶射することにより低温溶射皮膜を形成する工程と、
前記低温溶射皮膜と鋼材とが対向するように、前記アルミニウム又はアルミニウム合金材と前記鋼材とを重ね合わせる工程と、
前記低温溶射皮膜と前記鋼材とを、該鋼材側からのレーザ溶接により接合する工程と、
を有することを特徴とする異材接合構造体の製造方法。
(2) 前記レーザ溶接は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみを溶融させる、上記(1)に記載の異材接合構造体の製造方法。
(3) 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、上記(1)または(2)に記載の異材接合構造体の製造方法。
(4) 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の異材接合構造体の製造方法。
(5) 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の異材接合構造体の製造方法。
(6) アルミニウム又はアルミニウム合金材と、
前記アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に形成された低温溶射皮膜と、
前記低温溶射皮膜の上に重ね合わせられた鋼材と、
前記低温溶射皮膜と前記鋼材との溶接により形成された溶接金属と、を有し、
前記低温溶射皮膜は、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする異材接合構造体。
(7) 前記溶接金属は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみが溶融することにより形成される、上記(6)に記載の異材接合構造体。
(8) 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、上記(6)または(7)に記載の異材接合構造体。
(9) 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、上記(6)~(8)のいずれか1つに記載の異材接合構造体。
(10) 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、上記(6)~(9)のいずれか1つに記載の異材接合構造体。
まず、アルミニウム又はアルミニウム合金材2の表面の少なくとも一部に、コールドスプレー法により低温溶射皮膜1を形成する。コールドスプレー法とは、ガスと金属粉末とを音速以上の高速で対象物に吹きつけることにより低温溶射皮膜1を形成する方法である。この方法は、使用するガス種、圧力、温度、金属粉末の粒子径等を適宜選択して実施することができる。
なお、溶射皮膜を形成する方法としては、上記コールドスプレー法以外に、プラズマ溶射やアーク溶射などその他の溶射方法が考えられるが、これらはガス温度が高く、比較的融点の低いアルミニウム又はアルミニウム合金材2を溶解させるおそれがあるため、好ましくない。
低温溶射皮膜1と鋼材3とをレーザ溶接により接合するためには、低温溶射皮膜1の材料として、鋼材3と所望の接合強度で溶接することができると共に、溶接金属4の特性が良好となる金属材料を選択することが重要である。金属粉末として、例えば、CrやNiなど焼入れ元素が多量に添加されたステンレス鋼(SUS)を使用すると、鋼材3が高張力鋼板やホットスタンプ材である場合に、母材希釈を受けた溶接金属4の全てもしくは一部がマルテンサイト変態し、硬度が高くなりすぎて、接合強度(継手強度)が低下したり、割れが発生したりするおそれがある。よって、コールドスプレーに用いる金属粉末としては、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含む粉末を使用する。
低温溶射皮膜1の材料となる金属粉末の粒子径については特に限定されないが、コールドスプレーのガス圧を1MPa以下の低圧条件とした場合には、例えば20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
一方、ガス圧を1MPa~5MPaの高圧条件とした場合には、例えば50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
金属粉末の粒子形状についても特に限定されないが、流動性の観点から球状であることが好ましい。
コールドスプレーにおいて使用するガスについては特に限定されないが、一般的には、空気、窒素、ヘリウムまたはそれらの混合ガスを用いて行われる。一方、低温溶射皮膜が酸化すると、レーザ溶接性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、ガス種として窒素やヘリウムを用いるのが好ましい。
上述の通り、コールドスプレーにおいて使用するガスの温度が高い場合には、低温溶射皮膜1の基材となるアルミニウム又はアルミニウム合金材2を溶解させるおそれがある。よって、作動ガスの温度は、コールドスプレーに用いられる金属粉末の融点よりも低い温度とすることが好ましい。
コールドスプレーにより形成する低温溶射皮膜1の膜厚が0.3mm未満であると、低温溶射皮膜1及び鋼材3のみを溶融させるような溶接条件を適宜選択したとしても、レーザビームLのバラつきの影響により、低温溶射皮膜1及び鋼材3のみを溶融させることが困難となる場合があるため、ロバスト性が低くなる。
そこで、低温溶射皮膜1の膜厚を0.3mm以上とすることにより、レーザビームLのバラつきに柔軟に対応することができるため、厳しい条件設定が不要となる。よって、低温溶射皮膜の膜厚は0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。
一方、低温溶射皮膜の膜厚が3mmを超えると、成膜時間が長くなり、製造コストアップとなるおそれがある。従って、低温溶射皮膜の膜厚は3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
アルミニウム又はアルミニウム合金材2についても特に限定されないが、自動車等に用いる部材に適用する場合には、強度の観点から、2000系、5000系、6000系及び7000系等のアルミニウム合金材を用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、鋼材3側からの片側施工による溶接が可能なレーザ溶接を用いることから、自動車等の分野で多用される閉断面の押出材であっても問題なく使用することができる。
鋼材3としては、一般的に鉄鋼と呼ばれる金属からなる部材であれば特に限定されない。ただし、近年、自動車のボディ骨格等に用いられる鋼板としては、車体軽量化や衝突安全性強化を目的として高張力鋼材(ハイテン材)等が多用されている。鋼-アルミの異材接合法として普及している機械的接合法では、引張強度が590MPa以上の鋼板に適用することが困難である。よって、引張強度が590MPa以上の高張力鋼板において本発明は特に有効である。
まず、板厚が3mmであるアルミニウム合金板の表面に、コールドスプレーを用いて金属皮膜(低温溶射皮膜)を形成した。
その後、得られた金属皮膜を介して、アルミニウム合金板と重なるように、板厚が1.4mmである鋼板を配置し、鋼板における、金属皮膜に接する面と反対側の面からレーザ照射することにより金属皮膜と鋼板とをレーザ溶接し、異材接合構造体を製造した。なお、レーザの照射はガルバノスキャナにより制御し、図1に示すように、円形状に溶接した。
[供試材]
アルミニウム合金板:7N01
鋼板:ホットスタンプ材(22MnB鋼、引張強度1500MPa級)
[コールドスプレーの条件]
ガス種:窒素
ガス圧:4MPa
ガスの温度:750~1100℃
金属粉末の粒子径:10~50μm
[レーザ溶接条件]
熱源:ファイバーレーザ
出力:2.5~3.5kW
速度:4m/min
ビーム集光直径:φ0.6mm
レーザ走査軌跡:円状
溶接部直径(円の直径):φ6mm狙い
シールドガス:なし
ギャップ(板隙):0~0.3mm
板厚が3mmであるアルミニウム合金板の表面に、コールドスプレーを用いた金属皮膜(低温溶射皮膜)を形成せずに、アルミニウム合金板と板厚が1.4mmである鋼板を重ね合わせた。続いて、鋼板における、アルミニウム合金板に接する面と反対側の面からレーザ照射することによりアルミニウム合金板と鋼板とをレーザ溶接し、異材接合構造体を製造した。なお、実施例と同様、レーザの照射はガルバノスキャナにより制御し、円形状に溶接した。また、レーザ溶接条件についても実施例と同様とした。
溶け込み及び溶接欠陥の評価基準としては、鋼材と金属皮膜との間のみで溶接金属が形成され、アルミニウム合金板が溶融しなかったものを○(評価:良)とした。溶接金属がアルミニウム合金板まで到達し、アルミニウム合金板が溶融したもののうち、鋼材とアルミが接合されていたものを△(評価:可)、接合されていなかったものを×(評価:不可)とした。
特に、試験No.1~4は金属皮膜の膜厚が本発明の好ましい範囲内であるため、アルミニウム又はアルミニウム合金板まで溶融部分が到達することなく、金属皮膜と鋼板のみをレーザ溶接することができ、より優れた性質の溶接部を得ることができた。
また、溶け込み及び溶接欠陥の評価が○であった試験No.3は、強度試験をおこなった結果、引張せん断強度が8.7kN、十字引張強度が5kNであり、良好な継手強度が得られることが確認できた。なお、強度試験は、JIS Z3136およびJIS Z3137に従い、引張せん断強度および十字引張強度を測定した。引張試験の試験速度は、ともに10mm/minとした。
2 アルミニウム又はアルミニウム合金材
3 鋼材
4 溶接金属(溶接ビード)
10 異材接合構造体
L レーザビーム
Claims (10)
- アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属粉末を低温溶射することにより低温溶射皮膜を形成する工程と、
前記低温溶射皮膜と鋼材とが対向するように、前記アルミニウム又はアルミニウム合金材と前記鋼材とを重ね合わせる工程と、
前記低温溶射皮膜と前記鋼材とを、該鋼材側からのレーザ溶接により接合する工程と、
を有することを特徴とする異材接合構造体の製造方法。 - 前記レーザ溶接は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみを溶融させる、請求項1に記載の異材接合構造体の製造方法。
- 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、請求項1または2に記載の異材接合構造体の製造方法。
- 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の異材接合構造体の製造方法。
- 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、請求項1~4のいずれか1項に記載の異材接合構造体の製造方法。
- アルミニウム又はアルミニウム合金材と、
前記アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に形成された低温溶射皮膜と、
前記低温溶射皮膜の上に重ね合わせられた鋼材と、
前記低温溶射皮膜と前記鋼材との溶接により形成された溶接金属と、を有し、
前記低温溶射皮膜は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする異材接合構造体。 - 前記溶接金属は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみが溶融することにより形成される、請求項6に記載の異材接合構造体。
- 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、請求項6または7に記載の異材接合構造体。
- 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の異材接合構造体。
- 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、請求項6~9のいずれか1項に記載の異材接合構造体。
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