JP7123674B2 - 異材接合構造体の製造方法及び異材接合構造体 - Google Patents

異材接合構造体の製造方法及び異材接合構造体 Download PDF

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Description

本発明は、異材接合構造体の製造方法及び異材接合構造体に関する。
近年、CO排出量の削減を目的とした車体軽量化や衝突安全性強化を実現するため、自動車のボディ骨格等に高張力鋼板(High Tensile Strength Steel:HTSS)が適用されている。
また、更なる車体軽量化を目的として、軽量なアルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材とを接合した異種金属接合材についても需要が高くなっている。異種金属を接合する方法として、一般的には、釘またはネジ等で接合する方法があるが、釘またはネジは比較的高価であるため、接合材の製造コストが高くなると共に、釘またはネジの重量分だけ、得られる接合材が重くなるという問題がある。
一方、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材とを一般的な方法で直接溶接すると、接合界面に脆弱な金属間化合物が形成され、良好な強度を得ることができない。そこで、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材との接合において、高い強度を得ることができる溶接技術が求められている。
溶接による異種金属を接合する方法として、特許文献1には、鋼からなる第1基材の表面に、コールドスプレー法によりアルミニウム又はアルミニウム合金皮膜を形成し、この皮膜とアルミニウム又はアルミニウム合金からなる第2基材とを対向させて溶接する接合方法が開示されている。
特開2013-188780号公報
ところで、アルミニウム又はアルミニウム合金材が閉断面の押出材である場合には、高張力鋼材側からの片側施工による溶接が必要となるが、上記特許文献1に記載された接合方法は、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、MIG(Metal Inert Gas)溶接、及びプラズマ溶接のような、熱影響の大きいアーク溶接を用いるものである。このため、アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面に、コールドスプレーにより鋼と溶接可能な金属皮膜を形成し、この皮膜と高張力鋼とを溶接する場合には、アーク溶接時に発生する多量の熱により、アルミニウム又はアルミニウム合金材までもが溶融し、接合強度が低下するおそれがある。
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材との異材接合において、鋼材側からの片側施工による溶接が可能であり、かつ、良好な接合継手を得ることができる異材接合構造体の製造方法及び異材接合構造体を提供することを目的とする。
本発明に係る異材接合構造体の製造方法は、下記(1)の構成からなる。
(1) アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属粉末を低温溶射することにより低温溶射皮膜を形成する工程と、
前記低温溶射皮膜と鋼材とが対向するように、前記アルミニウム又はアルミニウム合金材と前記鋼材とを重ね合わせる工程と、
前記低温溶射皮膜と前記鋼材とを、該鋼材側からのレーザ溶接により接合する工程と、
を有することを特徴とする異材接合構造体の製造方法。
また、本発明に係る異材接合構造体の製造方法の好ましい実施形態は、下記(2)~(5)の構成からなる。
(2) 前記レーザ溶接は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみを溶融させる、上記(1)に記載の異材接合構造体の製造方法。
(3) 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、上記(1)または(2)に記載の異材接合構造体の製造方法。
(4) 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の異材接合構造体の製造方法。
(5) 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の異材接合構造体の製造方法。
また、本発明に係る異材接合構造体は、下記(6)の構成からなる。
(6) アルミニウム又はアルミニウム合金材と、
前記アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に形成された低温溶射皮膜と、
前記低温溶射皮膜の上に重ね合わせられた鋼材と、
前記低温溶射皮膜と前記鋼材との溶接により形成された溶接金属と、を有し、
前記低温溶射皮膜は、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする異材接合構造体。
また、本発明に係る異材接合構造体の好ましい実施形態は、下記(7)~(10)の構成からなる。
(7) 前記溶接金属は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみが溶融することにより形成される、上記(6)に記載の異材接合構造体。
(8) 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、上記(6)または(7)に記載の異材接合構造体。
(9) 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、上記(6)~(8)のいずれか1つに記載の異材接合構造体。
(10) 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、上記(6)~(9)のいずれか1つに記載の異材接合構造体。
本発明によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材との異材接合において、鋼材側からの片側施工による溶接が可能であり、かつ、良好な接合継手を得ることができる異材接合構造体の製造方法及び異材接合構造体を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る異材接合構造体を模式的に示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
本発明者らは、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材との異材接合において、鋼材側からの片側施工による溶接であっても、良好な接合継手を得ることができる接合方法を得るために鋭意検討を重ねた。その結果、アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に、鋼材と溶接可能な金属粉末を低温溶射して低温溶射皮膜を形成するとともに、低温溶射付膜と鋼材とを、鋼材側からのレーザ溶接により接合することにより、良好な接合継手を得ることができることを見出した。
具体的には、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に、低温溶射法(コールドスプレー法)により、高速で、所定の金属粉末を噴射させて金属皮膜(低温溶射皮膜)を形成すると、アルミニウム又はアルミニウム合金板と金属皮膜とは高強度の機械的な結合が得られるため、その後の鋼材とのレーザ溶接により得られた異材接合構造体についても良好な接合継手が得られることが分かった。
よって、低温溶射に用いる金属粉末の成分と、鋼材の種類を適切に選択することが、良好な接合継手を得る上で重要であると考えられる。
以上より、本実施形態に係る異材接合構造体の製造方法は、アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属粉末を低温溶射することにより低温溶射皮膜を形成する工程と、低温溶射皮膜と鋼材とが対向するように、アルミニウム又はアルミニウム合金材と鋼材とを重ね合わせる工程と、低温溶射皮膜と鋼材とを、鋼材側からのレーザ溶接により接合する工程と、を有する。
図1は、本発明の実施形態に係る異材接合構造体を模式的に示す断面図である。図1に示すように、本実施形態に係る異材接合構造体10は、アルミニウム又はアルミニウム合金材2の表面の少なくとも一部に、低温溶射皮膜1が形成されている。また、低温溶射皮膜1と鋼材3とが対向するように、アルミニウム又はアルミニウム合金材2と鋼材3とが重ね合わされている。更に、鋼材3側から照射されるレーザビームLにより、低温溶射皮膜1と鋼材3とがレーザ溶接され、低温溶射皮膜1と鋼材3との溶融により溶接金属(溶接ビード)4が形成されている。
低温溶射皮膜1は、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含むものである。なお、図示しないが、低温溶射により高速で金属粉末が吹きつけられた、アルミニウム又はアルミニウム合金材2の表面は、多量の金属粉末により微細な凹凸が形成されているため、低温溶射皮膜1と鋼材3とは、アンカー効果によって機械的に強固に接合されている。
続いて、図1に基づいて、本実施形態に係る異材接合構造体の製造方法を具体的に説明する。
まず、アルミニウム又はアルミニウム合金材2の表面の少なくとも一部に、コールドスプレー法により低温溶射皮膜1を形成する。コールドスプレー法とは、ガスと金属粉末とを音速以上の高速で対象物に吹きつけることにより低温溶射皮膜1を形成する方法である。この方法は、使用するガス種、圧力、温度、金属粉末の粒子径等を適宜選択して実施することができる。
なお、溶射皮膜を形成する方法としては、上記コールドスプレー法以外に、プラズマ溶射やアーク溶射などその他の溶射方法が考えられるが、これらはガス温度が高く、比較的融点の低いアルミニウム又はアルミニウム合金材2を溶解させるおそれがあるため、好ましくない。
その後、得られた低温溶射皮膜1の上に鋼材3を配置し、鋼材3におけるアルミニウム又はアルミニウム合金材2に面する側と反対側からレーザ溶接することにより、低温溶射皮膜1と鋼材3とを溶融させて溶接金属4を形成し、異材接合構造体10を製造することができる。
ここで、レーザ溶接は、アーク溶接などの他の溶接法に比べ、入熱が低く、熱影響が小さい溶接法である。アーク溶接の場合を用いた場合には、溶接時に発生する熱がアルミニウム又はアルミニウム合金材2まで到達しやすいため、アルミニウム又はアルミニウム合金材2までもが溶融し、接合強度が低下するおそれがある。しかし、レーザ溶接を用いた場合には、アルミニウム又はアルミニウム合金材2への熱影響を最小限に抑え、アルミニウム又はアルミニウム合金材2の溶融を抑制することができるため、接合強度の低下を防止し、良好な接合継手を得ることができる。
なお、アルミニウム又はアルミニウム合金材2への熱影響をより最小限に抑えるためには、低温溶射皮膜1及び鋼材3のみを溶融させるよう、適切な溶接条件を選択することが好ましい。レーザ溶接条件としては、熱源、出力、溶接速度、溶接部の直径、及び低温溶射皮膜1と鋼材3との間隔等を適宜選択することができる。
続いて、本実施形態に係る製造方法において、低温溶射皮膜1、その材料となる金属粉末、アルミニウム又はアルミニウム合金材2及び鋼材3について、以下に詳細に説明する。
<金属粉末の金属種:純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種>
低温溶射皮膜1と鋼材3とをレーザ溶接により接合するためには、低温溶射皮膜1の材料として、鋼材3と所望の接合強度で溶接することができると共に、溶接金属4の特性が良好となる金属材料を選択することが重要である。金属粉末として、例えば、CrやNiなど焼入れ元素が多量に添加されたステンレス鋼(SUS)を使用すると、鋼材3が高張力鋼板やホットスタンプ材である場合に、母材希釈を受けた溶接金属4の全てもしくは一部がマルテンサイト変態し、硬度が高くなりすぎて、接合強度(継手強度)が低下したり、割れが発生したりするおそれがある。よって、コールドスプレーに用いる金属粉末としては、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含む粉末を使用する。
なお、本明細書において、純鉄とは、工業用として容易に入手が可能であり、純度が99.9質量%以上のものを表す。また、炭素鋼とは、鉄と炭素を主成分とし,ケイ素,マンガンおよび不純物リン,硫黄,銅を微量に含む鉄鋼材料を表す。なお、ニッケル合金としては、通称インコネル合金、インコロイ合金、ハステロイ合金と呼ばれるNiを主成分として、Mo、Fe、Co、Cr、Mnなどを適当量添加した合金を用いることができる。
<金属粉末の粒子径及び形状>
低温溶射皮膜1の材料となる金属粉末の粒子径については特に限定されないが、コールドスプレーのガス圧を1MPa以下の低圧条件とした場合には、例えば20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
一方、ガス圧を1MPa~5MPaの高圧条件とした場合には、例えば50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
金属粉末の粒子形状についても特に限定されないが、流動性の観点から球状であることが好ましい。
<作動ガスの種類>
コールドスプレーにおいて使用するガスについては特に限定されないが、一般的には、空気、窒素、ヘリウムまたはそれらの混合ガスを用いて行われる。一方、低温溶射皮膜が酸化すると、レーザ溶接性に悪影響を及ぼすおそれがあるため、ガス種として窒素やヘリウムを用いるのが好ましい。
<作動ガスの温度>
上述の通り、コールドスプレーにおいて使用するガスの温度が高い場合には、低温溶射皮膜1の基材となるアルミニウム又はアルミニウム合金材2を溶解させるおそれがある。よって、作動ガスの温度は、コールドスプレーに用いられる金属粉末の融点よりも低い温度とすることが好ましい。
<低温溶射皮膜の膜厚>
コールドスプレーにより形成する低温溶射皮膜1の膜厚が0.3mm未満であると、低温溶射皮膜1及び鋼材3のみを溶融させるような溶接条件を適宜選択したとしても、レーザビームLのバラつきの影響により、低温溶射皮膜1及び鋼材3のみを溶融させることが困難となる場合があるため、ロバスト性が低くなる。
そこで、低温溶射皮膜1の膜厚を0.3mm以上とすることにより、レーザビームLのバラつきに柔軟に対応することができるため、厳しい条件設定が不要となる。よって、低温溶射皮膜の膜厚は0.3mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましい。
一方、低温溶射皮膜の膜厚が3mmを超えると、成膜時間が長くなり、製造コストアップとなるおそれがある。従って、低温溶射皮膜の膜厚は3mm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましい。
<アルミニウム又はアルミニウム合金材>
アルミニウム又はアルミニウム合金材2についても特に限定されないが、自動車等に用いる部材に適用する場合には、強度の観点から、2000系、5000系、6000系及び7000系等のアルミニウム合金材を用いることが好ましい。なお、本実施形態においては、鋼材3側からの片側施工による溶接が可能なレーザ溶接を用いることから、自動車等の分野で多用される閉断面の押出材であっても問題なく使用することができる。
<鋼材>
鋼材3としては、一般的に鉄鋼と呼ばれる金属からなる部材であれば特に限定されない。ただし、近年、自動車のボディ骨格等に用いられる鋼板としては、車体軽量化や衝突安全性強化を目的として高張力鋼材(ハイテン材)等が多用されている。鋼-アルミの異材接合法として普及している機械的接合法では、引張強度が590MPa以上の鋼板に適用することが困難である。よって、引張強度が590MPa以上の高張力鋼板において本発明は特に有効である。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例>
まず、板厚が3mmであるアルミニウム合金板の表面に、コールドスプレーを用いて金属皮膜(低温溶射皮膜)を形成した。
その後、得られた金属皮膜を介して、アルミニウム合金板と重なるように、板厚が1.4mmである鋼板を配置し、鋼板における、金属皮膜に接する面と反対側の面からレーザ照射することにより金属皮膜と鋼板とをレーザ溶接し、異材接合構造体を製造した。なお、レーザの照射はガルバノスキャナにより制御し、図1に示すように、円形状に溶接した。
供試材、コールドスプレーの条件、及び溶接条件を以下に示す。
[供試材]
アルミニウム合金板:7N01
鋼板:ホットスタンプ材(22MnB鋼、引張強度1500MPa級)
[コールドスプレーの条件]
ガス種:窒素
ガス圧:4MPa
ガスの温度:750~1100℃
金属粉末の粒子径:10~50μm
[レーザ溶接条件]
熱源:ファイバーレーザ
出力:2.5~3.5kW
速度:4m/min
ビーム集光直径:φ0.6mm
レーザ走査軌跡:円状
溶接部直径(円の直径):φ6mm狙い
シールドガス:なし
ギャップ(板隙):0~0.3mm
<比較例>
板厚が3mmであるアルミニウム合金板の表面に、コールドスプレーを用いた金属皮膜(低温溶射皮膜)を形成せずに、アルミニウム合金板と板厚が1.4mmである鋼板を重ね合わせた。続いて、鋼板における、アルミニウム合金板に接する面と反対側の面からレーザ照射することによりアルミニウム合金板と鋼板とをレーザ溶接し、異材接合構造体を製造した。なお、実施例と同様、レーザの照射はガルバノスキャナにより制御し、円形状に溶接した。また、レーザ溶接条件についても実施例と同様とした。
その後、得られた異材接合構造体について、継手に対して断面マクロ観察をおこない、溶け込み及び溶接欠陥の状況を調べた。
溶け込み及び溶接欠陥の評価基準としては、鋼材と金属皮膜との間のみで溶接金属が形成され、アルミニウム合金板が溶融しなかったものを○(評価:良)とした。溶接金属がアルミニウム合金板まで到達し、アルミニウム合金板が溶融したもののうち、鋼材とアルミが接合されていたものを△(評価:可)、接合されていなかったものを×(評価:不可)とした。
コールドスプレーで用いた金属粉末の材料、形成した金属皮膜の膜厚、レーザ溶接条件(出力、ギャップ)及び評価結果(溶け込み及び溶接欠陥の状況)を下記表1に示す。
Figure 0007123674000001
上記表1に示すように、実施例である試験No.1~5は、アルミニウム又はアルミニウム合金板の表面に金属皮膜を形成し、金属皮膜と鋼材とをレーザ溶接することにより異材接合構造体を製造したものであり、金属皮膜となる金属粉末の材料が本発明の範囲内であるため、良好な接合継手が得られた。
特に、試験No.1~4は金属皮膜の膜厚が本発明の好ましい範囲内であるため、アルミニウム又はアルミニウム合金板まで溶融部分が到達することなく、金属皮膜と鋼板のみをレーザ溶接することができ、より優れた性質の溶接部を得ることができた。
また、溶け込み及び溶接欠陥の評価が○であった試験No.3は、強度試験をおこなった結果、引張せん断強度が8.7kN、十字引張強度が5kNであり、良好な継手強度が得られることが確認できた。なお、強度試験は、JIS Z3136およびJIS Z3137に従い、引張せん断強度および十字引張強度を測定した。引張試験の試験速度は、ともに10mm/minとした。
一方、比較例である試験No.6は溶接後鋼材とアルミの接合が認められず、使用に適さないものとなった。
以上詳述したように、本発明によれば、鋼材側からの片側施工による溶接が可能であり、かつ、良好な接合継手を得ることができる異材接合構造体を提供することができる。
1 低温溶射皮膜
2 アルミニウム又はアルミニウム合金材
3 鋼材
4 溶接金属(溶接ビード)
10 異材接合構造体
L レーザビーム

Claims (10)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に、純鉄、炭素鋼、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属粉末を低温溶射することにより低温溶射皮膜を形成する工程と、
    前記低温溶射皮膜と鋼材とが対向するように、前記アルミニウム又はアルミニウム合金材と前記鋼材とを重ね合わせる工程と、
    前記低温溶射皮膜と前記鋼材とを、該鋼材側からのレーザ溶接により接合する工程と、
    を有することを特徴とする異材接合構造体の製造方法。
  2. 前記レーザ溶接は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみを溶融させる、請求項1に記載の異材接合構造体の製造方法。
  3. 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、請求項1または2に記載の異材接合構造体の製造方法。
  4. 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の異材接合構造体の製造方法。
  5. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、請求項1~4のいずれか1項に記載の異材接合構造体の製造方法。
  6. アルミニウム又はアルミニウム合金材と、
    前記アルミニウム又はアルミニウム合金材の表面の少なくとも一部に形成された低温溶射皮膜と、
    前記低温溶射皮膜の上に重ね合わせられた鋼材と、
    前記低温溶射皮膜と前記鋼材との溶接により形成された溶接金属と、を有し、
    前記低温溶射皮膜は、ニッケル、ニッケル合金、コバルト及びコバルト合金から選択された少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする異材接合構造体。
  7. 前記溶接金属は、前記低温溶射皮膜と前記鋼材のみが溶融することにより形成される、請求項6に記載の異材接合構造体。
  8. 前記低温溶射皮膜の膜厚が0.3mm以上である、請求項6または7に記載の異材接合構造体。
  9. 前記鋼材の引張強度が590MPa以上である、請求項6~8のいずれか1項に記載の異材接合構造体。
  10. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は,閉断面の押出材である、請求項6~9のいずれか1項に記載の異材接合構造体。
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