JP7045025B2 - 医療用固定材および医療用固定具 - Google Patents
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Description
しかし、その粘着剤層が全面に形成されているため、皮膚が蒸れて、かゆみやかぶれ等の炎症を起こしてしまう。また、罫線や折り目が形成されているが、これらの幅が広いため鼻の微妙な曲線とマッチせず粘着力によって皮膚を持ち上げ、本来の鼻の形状と異なって矯正してしまう可能性がある。
これは、鼻の患部の表面を清拭し十分乾燥した後に紙テープを患部に貼り付け、その上から鼻背にそってスポンジパッドを貼り付けた後、これらの上に面ファスナー部が外側を向くように貼り付け、その上にアルミニウム板を鼻部の形に折り曲げて鼻に装着する固定具である。
これはポリエステルなどのプラスチック製の熱可塑性のギプスで包帯のように使用したい分だけ患部に巻いて使用でき、繊維状となっているので通気性もある材料として、外科的治療に使用されている。
以上の問題は、鼻部を骨折した場合に限られず、手指や足趾など鼻部以外の骨折した患部の保護と固定をする際に等しく妥当する。
きる。その結果、患部の回復を従来よりも促進することもできる。また例えば、湯水中に一定時間浸した場合には、熱可塑性樹脂単体からなる医療用固定材と比較して、熱伝導の効果がより高いため、医療用固定材の変形がより短時間におこなえる。
この範囲内であれば、医療用固定材を湯水中に一定時間浸すだけで、容易に軟化して所望の形状に変形することができるとともに、湯水から上げて常温に戻すと、その所望の形状が維持されたままで強度が高い状態に容易に復帰する。
厚み等の寸法がこれらの範囲内であれば、高い強度と熱伝導性が得られるとともに、所定径の微細孔の形成により通気性も確保できる。
図1から図4に示す、実施形態にかかる医療用固定具10は、人体の骨折した患部Nを覆って固定するために用いられ、患部の放熱性および患部への適合性に優れるものであり、実施形態の医療用固定材11から公知の方法により成形されている。
患部Nの部位は特に限定されないが、上述のような特性から、図4のように、鼻部の治療に用いるのに特に適している。
実施形態の医療用固定具10の寸法も特に限定されないが、平板状の場合、厚みが1.5mm以上2.5mm以下、幅が50mm以上110mm以下、長さ50mm以上110mm以下であることが好ましい。幅は90mm以下がさらに好ましく80mm以下がより好ましい。また、長さは90mm以下がより好ましい。
厚みが上記範囲内であれば、患部を保護および固定するのに十分な強度が得られる。厚みが上記範囲を下回る場合、強度が弱すぎる傾向にあり、上回る場合、温水下での変形に時間を要してしまう。
また幅と長さが上記範囲内であれば、患部が鼻部の場合に、これを覆う大きさとして必要十分な大きさとなる。
これにより、通気性が確保されるので、皮膚が蒸れることによるかゆみやかぶれ等を抑制することができる。なお、複数の微細孔12は、隣り合う微細孔12の間隔が5mm以上の間隔で、医療用固定具10のほぼ全面に万遍なく配置されていることがより好ましい。この場合、通気性がより高くなり、皮膚の蒸れが効果的に抑制できる。
これにより、罫線13に沿って切り取ると、それぞれ鼻部に装着可能な2つの等脚台形状の片が切り出されることになる。この等脚台形状の片の1つを鼻部に装着すればよい。また、2つの等脚台形の上底部分は切り取らずにこれら2つの等脚台形を一体とした状態でも使用できる。この場合は、図2で示す一方の等脚台形状の台形下底部分を上方に向けることで、一方の等脚台形は額に添わせ、他方の等脚台形は鼻部に添わせて変形して装着することができる。この場合、額部分も冷却可能となるとともに、額部分でも切出された片が固定されることになるので装着性がより安定になる。
罫線13が無い場合、鼻の形状に合わせて医療用固定具10をカットすると、切断面にバリが出て、鼻に装着した場合に違和感が出る恐れがあるが、罫線13を入れることで、切断面にバリが発生しにくくなり、違和感なく装着できる。
また、さらに放熱性を高めるために、医療用固定具10の患部と接しない側の表面に、シート状の冷却ジェルを貼り付けてもよい。
実施形態の医療用固定材11の製造方法は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂と熱伝導粉末単体あるいは熱伝導粉末を含むマスターバッチとを所定量配合して加熱混合することにより得ることができる。
術後の患部の腫れに対し、装着材料の通気性以外に熱伝導性が高くなければ、熱がこもってしまい回復が遅れるが、医療用固定材11の20℃における熱伝導率が0.170W/m・K以上であれば、実施形態の医療用固定具10において、患部たる鼻部の熱を効率的に放熱することができる。また熱伝導率をこのように設定すれば、湯水中に医療用固定具10を一定時間浸した場合には、熱可塑性樹脂のみからなる場合よりも熱が伝わりやすいため、患部の形状に合わせた変形がより短時間に可能であり、簡便性に優れる。
医療用固定材11の20℃における熱伝導率は、0.200W/m・K以上であることが好ましく、さらには0.250W/m・K以上であることがより好ましい。熱伝導率の上限は、高い分には特段の問題は生じないが、生産コストや変形時の取扱い性を考慮すると、1.000W/m・K程度であると思われる。
熱伝導粉末は、医療用固定材11に含有する熱可塑性樹脂よりも高い熱伝導率を有する熱伝導粉末であればよく、その種類は特に限定されない。例えば、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、鉄、ステンレスなどの金属粉末、炭化ケイ素、窒化アルミ、アルミナ、炭素などの無機粉末などが挙げられる。また、樹脂粉末のように熱伝導性の低い粉末の表面に、めっき等の化学的処理を施すことで金属被膜や無機化合物被膜が表面に形成した熱伝導性の高い粉末も使用することができる。
この種の熱伝導粉末の中でも、安価で入手が容易でかつ軽量で高い放熱性を有するアルミニウム粉末(アルミニウムの合金を含む)がよい。この場合、医療用固定材11の重量やコストの増加を抑えることができる。
このような表面処理がなされている場合、皮膚と直接接触する部分への汗などの水分付着による金属粉末の腐食やそれによる熱可塑性樹脂の変質を抑制することができる。また、患者が金属アレルギーを有している場合には、そのような表面処理がなされていれば皮膚と金属粉末との直接的な接触を防ぐことができ、金属アレルギーの発症を抑制することが可能となる。なお、金属アレルギー対策としては、金属粉末以外の無機粉末からなる熱伝導性粉末を使用することで対処できる。
また、熱伝導粉末の形状も特に限定されず、球状、粒状、板状、フレーク状のものが例示できる。
なお熱可塑性樹脂の熱伝導率は、特に限定されないが、通常は0.1~0.5W/m・Kである。
なかでも、ポリカプロラクトンが、融解温度範囲が58~60℃であり、50~80℃程度の温水で簡単に熱変形しかつ固化後の形状記憶性が良好であるため、特に好ましい。
ポリカプロラクトンを用いる場合、Perstorp社製の熱可塑性ポリカプロラクト
ンである、グレード名CapaTM6100、同6200、同6250、同6400、同6430、同6500、同6500C、同6506、同6800が好適に使用できる。これらのポリカプロラクトンは、約60℃以上のお湯に漬けるだけで(最適温度と時間は90℃約3秒)容易に変形させることができるため、2次元に折り曲げた後、3次元に形作る(特に鼻の鼻根から鼻尖上部にかけてのラインにぴったりと沿わす)ことが容易であり、鼻の微妙な曲線部に沿わせることができる。したがって、粘着剤を用いることなく医療用固定具10を患部に固定することが可能であり、低刺激である。なお、前述の熱伝導粉末を含むマスターバッチを用いる場合、医療用固定材にマスターバッチ中のキャリア樹脂が含まれることになるが、キャリア樹脂自身も熱可塑性樹脂である場合や医療用固定材を構成するキャリア樹脂を含めた樹脂成分全体として前述した熱可塑性樹脂と同様の特性を示す場合は、本発明の医療用固定材を構成する熱可塑性樹脂とみなすことができる。
なお、本発明の効果を阻害しない限り、他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
マスターバッチに含有するアルミニウム粉末の平均粒径は10μmであり、キャリア樹脂は低密度ポリエチレンとポリエチレンワックスの混合物であり、マスターバッチ中のアルミニウム粉末の含有量は、70重量%であった。
また、実施例および比較例の医療用固定材に用いる熱可塑性樹脂として、Perstorp社製の熱可塑性ポリカプロラクトン「CapaTM6500」(数平均分子量50000g/mol、メルトフローインデックス(MFI)が160℃で7dg/min、融解温度範囲58~60℃)を準備した。
これらポリカプロラクトンとメタックスネオを重量比で60:40の割合に配合(すなわち、アルミニウム粉末と熱可塑性樹脂との重量比(アルミニウム粉末/熱可塑性樹脂)は28/72)し、加熱溶融して均一に混合したうえで、射出温度180℃で図1および2に示すような形状に射出成型を行い、実施例の医療用固定具を作製した。
同様に、ポリカプロラクトンを加熱溶融して射出温度180℃で図1および2に示すような形状に射出成型を行い、比較例の医療用固定具を作製した。
なお、これらの医療用固定具の寸法は同一であり、厚みが2mm、幅が100mm、縦(長さ)100mmであり、微細孔の直径が2mm、隣り合う微細孔同士の間隔が幅7~10mm(中心部分から左右の幅方向に向かって順番に、10mm、9mm、9mm、8.5mm、7.5mm、7mm)、縦9mmであった。ただし、図2に示すように、罫線と重なる部分には微細孔は形成されておらず、隣り合う微細孔同士の間隔が10mm超となるものも含んでいる。
さらに参考例として、イワツキ株式会社製の「レナサーム」を準備し、実施例および比較例と同じ幅および長さに切り出して、医療用固定具を作製した。
以上の実施例、比較例および参考例について、以下の条件で熱伝導性試験をおこなった。
・試験内容
サーモラボIIB型精密迅速熱物性測定装置(装置型番KES-F7、カトーテック株式会社製、以下、「熱伝導測定装置」と称す。)を用いて、測定環境として温度20℃、相対湿度65±10%にて、熱伝導性試験(定常熱伝導測定)を行った。
まず、熱伝導測定装置の冷却ベースの温度を20℃、B.T.Box(熱源台)の温度を
30℃に設定した。
次いで、熱伝導性試験の対象である、実施例の医療用固定具を5cm×5cmの大きさの試験片に切出し、切出した試験片を冷却ベースに載せ、試験片の上から熱源台を重ねた。
次いで、熱源台の消費熱量が一定になった後、熱源台の熱流量を測定し、この時の冷却ベースおよび熱源台の温度ならびに熱源台の平均熱流量から下記に示す式により熱伝導率を算出した。
熱伝導率(W/mk)=(〔熱源台の熱流量(W)〕×〔試験片の厚み(cm)〕)÷(〔熱源台の面積(cm2)〕×〔熱源台の温度(℃)-冷却ベースの温度(℃)〕)
このようにして同一試験片にて3回熱伝導率を測定した後、平均値を算出した。同様にして、比較例と参考例の各試験片の熱伝導率を測定した。結果を表1に示す。表中各数値は、熱伝導率(W/mk)を表す。
同表から、実施例が比較例に比べて約200%、参考例に比べて約390%熱を伝えやすいことが理解できる。
実施例、比較例および参考例の医療用固定具を90℃の温水中に3秒間保持後、すぐに医療用固定具の両端を手で保持して中心部分を折り曲げ起点にして180度に折り曲げる試験を行った。
折り曲げ試験後の医療用固定具の折り曲げた部分に割れが発生しなかったものを合格(○)とし、割れが発生したものを不合格(×)とした。結果を表2に示す。
同表から、実施例の医療用固定具が、比較例および参考例の医療用固定具と比較して、遜色のない折り曲げ性能を有していることが理解できる。
11 医療用固定材
12 微細孔
13 罫線
N 患部
Claims (8)
- 熱可塑性樹脂と当該熱可塑性樹脂単体の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する熱伝導粉末とを少なくとも含有し、20℃における熱伝導率が0.170W/m・K以上である、医療用固定材から形成された、鼻部の外科的治療に用いられる医療用固定具であって、
平板状であり、鼻部に装着可能な少なくとも一つの台形状の片が切り取り可能なようにその表面に罫線が形成されており、
前記罫線は、一対の合同な等脚台形をその台形の上底同士で対向させた形状に形成されており、
それぞれ鼻部に装着可能な、等脚台形の二つの片として切り取ることも、
額部から鼻部にかけて装着可能な、一対の等脚台形が一体となった一つの片として切り取ることも可能な、医療用固定具。 - 前記熱伝導粉末がアルミニウム粉末である、請求項1に記載の医療用固定具。
- 前記熱可塑性樹脂の融解温度範囲が40℃以上90℃以下の間である、請求項1または2に記載の医療用固定具。
- 90℃の温水中に3秒間保持した後、180度折り曲げたときに折り曲げ部に割れが発生しない、請求項1から3のいずれかに記載の医療用固定具。
- 前記熱可塑性樹脂に対する前記熱伝導粉末の含有重量比が、5/95以上70/30以下である、請求項1から4のいずれかに記載の医療用固定具。
- 厚みが1.5mm以上2.5mm以下、幅が50mm以上110mm以下、長さ50mm以上110mm以下であり、
厚み方向に貫通する直径が0.5mm以上2.5mm以下の複数の微細孔が形成されている請求項1から5のいずれかに記載の医療用固定具。 - 前記複数の微細孔は、隣り合う微細孔の間隔が5mm以上の間隔で配置されている、請求項6に記載の医療用固定具。
- 表面に、種々の大きさの鼻部に対応した複数の前記罫線が形成されている、請求項1から7のいずれかに記載の医療用固定具。
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