JP6995511B2 - 冷蔵庫及び冷蔵庫の温度制御方法 - Google Patents

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Description

本発明は冷蔵庫及び冷蔵庫の温度制御方法に関し、凍結解凍処理により菌の低減効果を得て、被冷却物を高品質に保存するものである。
食品の殺菌方法は、古くから加熱殺菌が一般的に行われてきたが、加熱することにより、食品の風味、食感が変化してしまうため、生の肉、又は生の魚などの生鮮食品の保存時に行う方法としては好ましくない。これらの食品の殺菌方法としては、非加熱であることが求められる。
このような方法のひとつとして、加圧することにより0℃以下の不凍状態に食品を保持し、ついで、さらに加圧することにより食品中の水を不凍領域から氷結晶へ相変化させる操作を1または2回以上繰り返す方法が提案されている(特許文献1)。
特開平04-158773号公報(例えば、請求項1、表1)
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、数千kg/cmの高い圧力をかける必要があるため、加圧装置が大きくなり、また加圧処理をするために耐圧構造をとらなければならないなど、冷蔵庫に適用することは現実的ではない。
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、簡単な構成で食品の表層部を凍結、解凍させることにより食品の表面に付着した菌を低減し、食品の保存性を向上させることを目的とする。
本発明の一態様に係る冷蔵庫は、被冷却物が保存される貯蔵室と、前記貯蔵室内を冷却する冷凍サイクルを有する冷却部と、前記冷却部を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記冷却部に、前記被冷却物の表層部のみを凍結させる第1の処理と、前記第1の処理により凍結された前記被冷却物の前記表層部のみを解凍させる第2の処理と、を含む凍結解凍処理を2回以上繰り返し実行させ、前記制御部は、前記第1の処理において、前記被冷却物の前記表層部以外の部分である中心部を凍結させないように設定温度及び設定時間を制御することを特徴とする。
本発明の他の態様に係る冷蔵庫の温度制御方法は、被冷却物が保存される貯蔵室と、前記貯蔵室内を冷却する冷凍サイクルを有する冷却部と、を備えた冷蔵庫によって実行される温度制御方法であって、前記冷却部に、前記被冷却物の表層部のみを凍結させる第1の処理と、前記第1の処理により凍結された前記被冷却物の前記表層部のみを解凍させる第2の処理と、を含む凍結解凍処理を2回以上繰り返し実行させるステップを有し、前記第1の処理において、前記被冷却物の前記表層部以外の部分である中心部を凍結させないように設定温度及び設定時間を制御することを特徴とする。
本発明によれば、簡単な構成で食品の表層部を凍結、解凍させることにより食品の表面に付着した菌を低減し、食品の保存性を向上させることができる。
実施の形態1に係る冷蔵庫の概略的な構成を示す正面図である。 実施の形態1に係る冷蔵庫の概略的な構成を示す縦断面図である。 実施の形態1に係る冷蔵庫の切替室部分の概略的な構成を示す断面図である。 実施の形態1に係る冷蔵庫の制御系の概略的な構成を示すブロック図である。 実施の形態1に係る冷蔵庫の温度制御を実施した切替室の設定温度、庫内温度、食品中心温度および食品表面温度の経時変化を示す図である。 実施の形態1における温度制御を実施した切替室内の食品の状態を示す模式図である。 実施の形態1における食品に付着した大腸菌数の経時変化を示す図である。 実施の形態1に係る冷蔵庫の処理の一例を示すフローチャートである。 実施の形態2に係る冷蔵庫の切替室部分の概略的な構成を示す断面図である。 実施の形態2に係る冷蔵庫の制御系の概略的な構成を示すブロック図である。 実施の形態3に係る冷蔵庫の切替室部分の概略的な構成を示す断面図である。 実施の形態3に係る冷蔵庫の制御系の概略的な構成を示すブロック図である。 実施の形態3における温度制御を実施した切替室の設定温度、庫内温度、食品中心温度および食品表面温度の経時変化を示す図である。 実施の形態3に係る冷蔵庫の処理の一例を示すフローチャートである。 実施の形態4に係る冷蔵庫の切替室部分の概略的な構成を示す断面図である。 実施の形態4に係る冷蔵庫の制御系の概略的な構成を示すブロック図である。 実施の形態4における温度制御を実施した切替室の設定温度、庫内温度、食品中心温度および食品表面温度の経時変化を示す図である。 実施の形態4に係る冷蔵庫の処理の一例を示すフローチャートである。 実施の形態5に係る冷蔵庫の切替室部分の概略的な構成を示す断面図である。 実施の形態5に係る冷蔵庫の概略的な構成を示す冷媒回路図である。
《1》実施の形態1
《1-1》構成
以下、本発明の実施の形態1に係る冷蔵庫1について説明する。図1は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の概略的な構成を示す正面図である。図2は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の概略的な構成を示す縦断面図である。なお、図1及び図2を含む以下の図面では、各構成部材の寸法の関係、形状等が実際のものとは異なる場合がある。また、明細書中における各構成部材同士の位置関係(例えば、上下関係等)は、原則として、冷蔵庫を使用可能な状態に設置したときのものである。冷蔵庫1は、実施の形態2、3、4、及び5において、冷蔵庫1a、1b、1c及び1dとそれぞれ表記される。
図1に示されるように、実施の形態1に係る冷蔵庫1は、複数の貯蔵室として、最上段に配置された冷蔵室100と、冷蔵室100の下方に配置された切替室200と、切替室200の側方に隣接して切替室200と並列に配置された製氷室300と、切替室200及び製氷室300の下方に配置された冷凍室400と、冷凍室400の下方に配置された最下段の野菜室500と、を備えている。切替室200は、冷凍温度帯(例えば-18℃程度)、冷蔵温度帯(例えば3℃程度)、チルド温度帯(例えば0℃程度)、ソフト冷凍温度帯(例えば-7℃程度)等の各種温度帯に、保冷温度帯を切り替えることができるようになっている。
図1に示されるように、冷蔵室100の前面に形成された開口部には、当該開口部を開閉する回転式の扉7が設けられている。本例の扉7は両開き式(観音開き式)であり、右扉7a及び左扉7bにより構成されている。冷蔵庫1の前面となる扉7(例えば、左扉7b)の外側表面には、操作パネル6が設けられている。操作パネル6は、各貯蔵室の保冷温度等の設定を調節するための操作スイッチ(図4にて後述する操作部6a)と、各貯蔵室の温度及び庫内の在庫情報などを表示する液晶表示部(図4にて後述する表示部6b)と、を備えている。また、操作パネル6は、操作部と表示部を兼ねるタッチパネルを備えていてもよい。
冷蔵室100以外の各貯蔵室(切替室200、製氷室300、冷凍室400、野菜室500)は、それぞれ引出し式の扉によって開閉されるようになっている。これらの引出し式の扉は、扉に固定して設けられたフレームを各貯蔵室の左右の内壁面に水平に形成されたレールに対してスライドさせることにより、冷蔵庫1の奥行方向(前後方向)に開閉できるようになっている。
図2に示されるように、冷蔵庫1は、前面(正面)が開口されて内部に貯蔵空間が形成された断熱箱体90を有している。断熱箱体90は、鋼鉄製の外箱と、樹脂製の内箱と、外箱と内箱との間の空間に充填された断熱材と、を有している。断熱箱体90の内部に形成された貯蔵空間は、1つ又は複数の仕切り部材により、食品を保存する複数の貯蔵室に区画されている。
図2に示されるように、野菜室500には、食品等を内部に収納できる収納ケース501が引出し自在に格納されている。収納ケース501は、扉7のフレームによって支持されており、扉7の開閉に連動して前後方向にスライドするようになっている。同様に、切替室200及び冷凍室400には、食品等を内部に収納できる収納ケース201、401がそれぞれ引出し自在に格納されている。各貯蔵室に設けられる収納ケースの数はそれぞれ1つであってもよいが、冷蔵庫1全体の容量を考慮して整理性などが向上する場合には2つ以上であっても構わない。
図2に示されるように、冷蔵庫1の背面側には、各貯蔵室を冷却するための冷却機構として、圧縮機2と、冷却器3と、送風ファン4と、風路5と、制御装置8とが備えられる。制御装置8は、例えばマイクロコンピュータを備えており、後述するCPU(Central Processing Unit)8a及びメモリ8bを備えている。制御装置8は、メモリ8bに記憶されたプログラムをCPU8aが実行することにより、予め設定された処理を実行し、冷蔵庫1を制御する。
圧縮機2と、冷却器3とにより作り出された冷気は、送風ファン4によって送風され、風路5を通って、冷凍室400、切替室200、製氷室300、冷蔵室100へと送風され各部屋を冷却する。野菜室500は冷蔵室100の戻り冷気を冷蔵室用帰還風路より循環させ冷却され、そして、野菜室用帰還風路より冷却器3に戻される(帰還風路は図示せず)。各部屋の温度は、各部屋に設置されたサーミスタ11(図3に示される)により検知され、予め設定された温度になるように、風路5に設置された切替室ダンパ12(図3に示される)の開度又は圧縮機2の出力および送風ファン4の送風量を調整することで制御される。
図3は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の切替室200部分の概略的な構成を示す断面図である。図3に示されるように、切替室200内には、扉7の開閉状態を検知する扉開閉検知スイッチ10と、切替室200の温度を検知するサーミスタ11とが備えられる。また、切替室200の背面側の風路5には切替室ダンパ12が備えられる。切替室200の温度は、風路5に設置された切替室ダンパ12の開度を調整することにより制御される。
図4は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の制御系の概略的な構成を示すブロック図である。図4では、図1から図3に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付している。図4に示されるように、冷蔵庫1は、圧縮機2と、送風ファン4と、操作パネル6と、制御部としての制御装置8と、扉開閉検知スイッチ10と、サーミスタ11と、切替室ダンパ12と、時間計測部30とを備える。操作パネル6は、操作部6aと表示部6bとを備える。制御装置8は、CPU8aと、メモリ8bとを備える。
図4に示されるように、制御装置8は、サーミスタ11から切替室200の温度を取得する。また、制御装置8は、時間計測部30により計測された時間を取得する。制御装置8は、切替室200内が設定された温度に維持されるように、メモリ8bに予め記憶された動作プログラムに従って、圧縮機2、送風ファン4、切替室ダンパ12等の運転状態を制御する。
図4に示されるように、制御装置8には、操作パネル6の操作部6aから操作信号が入力されるとともに、操作パネル6の表示部6bに表示信号を出力する。また、制御装置8には、扉開閉検知スイッチ10からの検知信号等も入力される。
図5は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の温度制御を実施した場合の切替室200の設定温度及び庫内温度と切替室200内に保存された食品の中心温度及び表面温度の経時変化を示す図である。図5に示されるように、切替室200の温度制御は、凍結工程(第1の処理)と、解凍工程(第2の処理)からなる凍結解凍工程(凍結解凍処理)と、維持工程(第3の処理)の3つの工程で構成されている。
図5において、冷蔵庫1の切替室200内に保存された食品の中心温度は細い実線で示されており、冷蔵庫1の切替室200内に保存された食品の表面温度(表層部の温度)は太い実線で示されており、冷蔵庫1の切替室200の庫内温度は細い破線で示されており、冷蔵庫1の切替室200の設定温度θsは太い破線で示されている。
凍結解凍工程において、制御装置8は、凍結工程の終了とともに解凍工程が開始され、解凍工程の終了とともに凍結工程が開始されるように冷却機構(例えば、圧縮機2、送風ファン4、切替室ダンパ12等)を制御する。切替室200の設定温度θsは、凍結工程と解凍工程とでそれぞれ別に設けられている。切替室200の設定温度θsは、凍結工程(冷却工程)では、食品の凍結点θfよりも低い低温設定温度θLに設定され、解凍工程(昇温工程)では、食品の凍結点θfよりも高い昇温設定温度θHに設定される。
低温設定温度θLは、例えば、-20℃であり、昇温設定温度θHは、例えば、5℃である。低温設定温度θLは、-25℃~-5℃の範囲内であることが望ましく、昇温設定温度θHは、0℃~10℃の範囲内であることが望ましい。
凍結工程では、切替室200の設定温度θsを低温設定温度θLに設定し、第1所定時間(凍結工程時間ΔTL)が経過したら(時刻TL)、凍結工程を終了し、解凍工程を開始する。解凍工程では、切替室200の設定温度θsを昇温設定温度θHに切り換え、第2所定時間(解凍工程時間ΔTH)、昇温設定温度θHに維持する。
解凍工程時間ΔTHが経過したら(時刻TH)、解凍工程を終了する。凍結工程を開始してから解凍工程を終了するまでを1周期とし、この一連の温度制御を、予め設定されたn回繰り返すまでを凍結解凍工程とする。nは、1以上の整数であり、2以上であることが望ましい。凍結解凍工程を終了したら(時刻TR)、維持工程を開始する。維持工程では、食品の凍結点θfよりも高い維持設定温度(第1の温度)θRに設定し、切替室200の温度を維持設定温度θRに維持する。
以上の制御を行うことにより、図5に示されるように、冷蔵庫1に保存された食品の表面温度は、凍結工程によって食品の凍結点θfよりも低い温度まで下がり、解凍工程によって昇温設定温度θHまで上がることを繰り返す。一方、冷蔵庫1に保存された食品の中心温度は、凍結工程によって食品の凍結点θfに近い温度まで下がり、また、解凍工程によって昇温設定温度θHまで上がることを繰り返す。したがって、食品の中心部は凍結までは至らないため食品の品質は維持される一方、食品の表層部は凍結解凍を繰り返すことにより、表層部に付着した菌が死滅する。
図6は、実施の形態1における切替室200内に保存された食品の状態の時間経過による変化を示す模式図である。図6において、食品の非凍結状態は濃いハッチングで示されており、食品の凍結状態は薄いハッチングで示されている。また、図6における時刻0から時刻TRは、図5における時刻0から時刻TRと一致する。
図6に示されるように、時刻0において、切替室200内に保存された食品は非凍結状態であり、凍結工程で冷却されて温度が降下する。このとき、食品は表面から冷却されるので、表面温度が中心温度よりも早く下がり、凍結点θf以下に到達する。食品表面は凍結点θf以下でも凍らない状態である過冷却状態に一時的になるが、過冷却状態はエネルギー的に不安定な状態であるため、すぐに過冷却状態は解消され、食品の表層部には氷結晶が生成され凍結を開始する。このため、時刻TLでは、食品の表層部が凍結状態で、中心部は非凍結状態である。
そこで、予め定められたタイミングで解凍工程に移行し、凍結点θfより高い温度に昇温することにより、食品の中心部まで凍結が進行する前に、表層部に生成された氷結晶を解凍(融解)して、非凍結状態に復帰させる。このため、時刻THでは、食品の表層部、内部とも非凍結状態である。図5に示される凍結解凍工程の一連の温度制御を繰り返すことにより、再度、食品の表層部が凍結状態となり、中心部が非凍結状態となる(時刻TL1)。凍結解凍工程が終了したら、時刻TRからは維持工程に移行し、切替室200の設定温度θsは食品の凍結点θfより高い維持設定温度θRに維持される。
図7は、実施の形態1における食品に付着した大腸菌数の経時変化を示す図である。図7は、大腸菌について、凍結状態で保存する冷凍保存と、非凍結状態で保存する冷蔵保存と、凍結解凍の相変化を繰り返し生じさせた凍結、解凍繰り返しの条件で20時間保存したときの菌数の変化を比較するためのものである。図7において、冷凍保存は四角で示されており、冷蔵保存は三角で示されており、凍結解凍の繰り返しはひし形で示されている。また、図7において、縦軸には食品に付着した菌数(log(cfu))が示されており、横軸には時間(h)が示されている。
図7に示されるように、冷凍保存と冷蔵保存では、ほとんど菌数が変化しないのに対し、凍結解凍の繰り返しでは、時間の経過とともに菌数が減少していることがわかる。これは、氷結晶生成による物理的な変化、細胞液の濃縮による脱水などが起きて細菌の細胞膜などが損傷するため、細菌が死滅し、増殖が抑制されることによると考えられる。したがって、図5に示される温度制御により、食品の表層部に繰り返し相変化状態を生じさせることで、表層部での菌の増殖を抑制することができる。
食品の腐敗などの要因となる菌は、多くの場合、食品の加工過程で付着するものであるため、そのほとんどが食品の表面に存在する。そのため、食品の表層部を凍結解凍処理することで、菌の増殖抑制効果を得ることができ、食品の腐敗などの劣化を抑制することができる。また、食品の表層部のみを凍結解凍処理し、食品の中心部(内部)は相変化を生じさせないことにより、氷結晶による食品の細胞へのダメージを最小限にすることができ、食品の成分、食感、風味などの品質を維持することができる。
ここで、実施の形態1に係る冷蔵庫1が行う温度制御は、肉、魚など細胞壁をもたない食品の保存に特に有効である。これは、このような食品は細胞膜が柔軟であるため、表層部の凍結、解凍による食品品質への影響が特に小さいためである。このように、食品品質の維持と菌増殖抑制とを両立させることができ、食品の品質保持期間を延長することができる。
菌の低減に必要な回数分だけ相変化を繰り返し、それ以降は維持工程を行うことにより、食品の細胞へのダメージを最小限にすることができる。食品に付着している菌は、市場で販売されている食品であれば、10~10(cfu:colony forming unit)であることが知られている。したがって、この菌数を低減する回数を予め実験等により求めておき、冷蔵庫1において設定することができる。
《1-2》動作
以下、実施の形態1に係る冷蔵庫1が行う温度制御方法について説明を行う。図8は、実施の形態1に係る冷蔵庫1の処理の一例を示すフローチャートである。冷蔵庫1に電源が投入されたとき、または、操作パネル6により、選択されたとき、本実施の形態1に係る温度制御をスタートする。まず、カウンターi=0とする(S101)。続いて、時間t=0とし(S102)、設定温度θsを低温設定温度θL(例えば-20℃)として、凍結工程(第1のステップ)を開始する(S103)。続いて、凍結工程の時間t(経過時間)を計測する(S104)。
予め設定された時間ΔTL(例えば30分)が経過したら(S104においてyes)、凍結工程を終了し、解凍工程(第2のステップ)を開始する。解凍工程では、時間tを0とする(S105)とともに、設定温度θsを昇温設定温度θH(例えば5℃)に設定する(S106)。
予め設定された解凍工程時間ΔTH(例えば40分)が経過したら(S107においてyes)、カウンターiに1加算し(S108)、解凍工程を終了して、n回(例えばn=10)となるまで、再び凍結工程を実施し、一連の温度制御を繰り返す(S109においてyes)。カウンターiが加算され、回数がn回に達したら(S109においてno)、凍結解凍工程を終了し、設定温度θsを維持設定温度θR(例えば0℃)としてそれを維持する(S110)。
解凍工程では、切替室ダンパ12を閉鎖し冷気の流入を停止して、切替室200の庫内温度を上昇させる。また、解凍工程では、圧縮機2の停止時に送風ファン4を運転させて、切替室ダンパ12を開いて空気を循環させることにより、切替室200の庫内温度を上昇させてもよい。
上記説明では、維持工程での維持設定温度θRを食品の凍結点θfよりも高い温度に設定したが、食品の凍結点θfよりも低い温度(第2の温度)に設定してもよい。この場合には、1ヶ月間以上など、より長期間に渡り食品の保存をすることができる。
《1-3》効果
実施の形態1に係る冷蔵庫1によれば、食品の表層部(表面)を凍結する凍結工程と、凍結した表層部を解凍させる解凍工程とを含む凍結解凍工程を繰り返して実施し、その後食品の温度を一定に保つ維持工程を実施する。これにより、食品の表層部に付着した菌を低減し、食品の保存性を向上させることができる。また、食品の中心部は凍らせないため、食品を長持ちさせることができ、食品を取り出してすぐに包丁で切断したり、調理したりできるので、利便性が向上する。
《1-4》変形例
上記説明では、凍結工程を食品の表層部のみを凍結し中心部は凍結させない処理としたが、凍結工程を食品の中心部まで凍結させる処理として、その後、表層部及び中心部を解凍させることも可能である。この場合には、食品の中心部についても凍結解凍工程を経ることにより、食品の表層部に存在する菌のみならず、食品の中心部に存在する菌をも滅菌することが考えられる。
《2》実施の形態2
以下、本発明の実施の形態2に係る冷蔵庫1aについて説明する。図9は、実施の形態2に係る冷蔵庫1aの切替室200aの概略的な構成を示す断面図である。図10は、実施の形態2に係る冷蔵庫1aの制御系の概略的な構成を示すブロック図である。図9及び図10において、実施の形態1と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図9及び図10に示されるように、実施の形態2に係る冷蔵庫1aは、切替室200aの下方に切替室200aを加熱して昇温させる加熱機構(加熱部)として、ヒータ13が埋設されている点において、実施の形態1に係る冷蔵庫1と異なる。ヒータ13を切替室200aの下方に設置することにより、切替室200aを効率的に昇温することが可能である。制御装置8は、サーミスタ11から切替室200a内の温度を取得し、切替室200aの温度が予め設定された温度以下である場合、ヒータ13を加熱状態に設定する。
また、制御装置8は、切替室200aの温度が予め設定された温度以上になった場合、ヒータ13を加熱状態から解除する。制御装置8は、サーミスタ11から切替室200aの温度を取得し、切替室200内が設定された温度に維持されるよう、予めメモリ8bに記憶されたプログラムに従って、圧縮機2、送風ファン4、切替室ダンパ12、ヒータ13等の運転状態を制御する。
なお、上記の説明では、制御装置8が、解凍工程において、切替室ダンパ12等の制御に加え、ヒータ13を制御するものとして説明したが、制御方法は特にこれに限定されない。例えば、制御装置8は、解凍工程において、切替室ダンパ12等を制御せず、ヒータ13を制御することで切替室200aを昇温させてもよい。
実施の形態2に係る冷蔵庫1aによれば、ヒータ13を切替室200aの下方に設置することにより、切替室200aを効率的に昇温することが可能である。したがって、冷蔵庫1aは、実施の形態1に係る冷蔵庫と比較して、解凍工程を高速に行うことができ、食品の表層部の凍結解凍工程を効率的に行うことができる。
《3》実施の形態3
以下、本発明の実施の形態3に係る冷蔵庫1bについて説明する。図11は、実施の形態3に係る冷蔵庫1bの切替室200bの概略的な構成を示す断面図である。図12は、実施の形態3に係る冷蔵庫1bの制御系の概略的な構成を示すブロック図である。図11及び図12において、実施の形態1及び実施の形態2と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図11に示されるように、実施の形態3に係る冷蔵庫1bは、切替室200bの床面に、食品を載置可能な冷却板14を設け、冷却板14の下方に、ヒータ13と、風路5からの冷気を流入できる床面風路15が設けられている点において実施の形態1,2に係る冷蔵庫1,1aと異なる。床面風路15への冷気流入は、床面風路ダンパ16の開度を調整することで行われる。床面風路15に流入した冷気は、冷却板14を冷却し、帰還風路(図示せず)より冷却器3に戻される。図12に示されるように、制御装置8はヒータ13及び床面風路ダンパ16の制御を行う。
図13は、実施の形態3に係る冷蔵庫1bの切替室200bの冷却板14の温度、切替室200内に保存された食品の中心温度及び表面温度の経時変化と、床面風路ダンパ16の開閉と、ヒータ13のON・OFFの状態とを示したものである。図13に示されるように、切替室200bの冷却板14の温度制御は、凍結工程(第1の処理)と、解凍工程(第2の処理)からなる凍結解凍工程と、維持工程(第3の処理)との3つで構成されている。
凍結工程では、床面風路ダンパ16を開いて床面風路15に冷気を流入し、冷却板14の温度を速やかに降下させる。凍結工程時間ΔTLが経過したら(時刻TL)、凍結工程を終了し、解凍工程を開始する。解凍工程では、床面風路ダンパ16を閉じて床面風路15を閉鎖し、ヒータ13をONにし、冷却板14の温度を速やかに上昇させる。解凍工程時間ΔTHが経過したら(時刻TH)、解凍工程を終了する。
凍結工程を開始してから解凍工程を終了するまでを1周期とし、この一連の温度制御を、予め設定されたn回繰り返すまでを凍結解凍工程とする。凍結解凍工程の1周期の時間は、例えば、30分から90分の間で設定する。凍結解凍工程を終了したら(時刻TR)、維持工程を開始する。維持工程では、床面風路ダンパ16を閉じ、ヒータ13をOFFにする。維持工程では、切替室200bの温度を維持設定温度θRに維持するように、切替室ダンパ12を調整する。
切替室200bの温度制御は、凍結工程、解凍工程、維持工程を通して、同じ維持設定温度θRを維持するように行ってもよい。また、凍結工程、解凍工程、維持工程で、それぞれ別の設定温度を設けてもよい。
図14は、実施の形態3に係る冷蔵庫1bの処理の一例を示すフローチャートである。冷蔵庫1bに電源が投入されたとき、または、操作パネル6により、選択されたとき、本実施の形態1に係る温度制御をスタートする。カウンターi=0とする(S301)。時間t=0(S302)とし、床面風路ダンパ16を開き(S303)、ヒータ13をOFFにして(S304)、凍結工程を開始する。時間tが、予め設定された時間ΔTL(例えば20分)経過したら(S305においてyes)、凍結工程を終了し、解凍工程を開始する。
解凍工程では、時間tを0とする(S306)とともに、床面風路ダンパ16を閉鎖し(S307)、ヒータ13をONにする(S308)。設定された解凍工程時間ΔTH(例えば30分)が経過したら(S309においてyes)、カウンターiに1加算し(S310)、解凍工程を終了して、n回(例えばn=10)となるまで、再び凍結工程を実施し、一連の温度制御を繰り返す(S311においてyes)。n回に繰り返し回数が達したら(S311においてno)、凍結解凍工程を終了し、床面風路ダンパ16を閉鎖し(S312)、ヒータ13をOFFにして(S313)、維持工程に移行する。
実施の形態3に係る冷蔵庫1bによれば、切替室200bの床面に、食品を載置可能な冷却板14を設けることにより、食品を効率的に凍結させることができる。また、冷却板14の下方に、ヒータ13と床面風路15を設けることにより、切替室200b内を効率的に冷却又は昇温することができる。
《4》実施の形態4
以下、本発明の実施の形態4に係る冷蔵庫1cについて説明する。図15は、実施の形態4に係る冷蔵庫1cの切替室200cの概略的な構成を示す断面図である。図16は、実施の形態4に係る冷蔵庫1cの制御系の概略的な構成を示すブロック図である。実施の形態1から3と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図15に示されるように、実施の形態4に係る冷蔵庫1cは、切替室200cの床面に食品を載置可能な冷却板14が設けられ、冷却板14の下方にペルチェ素子17が設けられている点において実施の形態1から3に係る冷蔵庫1,1a,1bと異なる。また、実施の形態4に係る冷蔵庫1cには、ペルチェ素子17に流す電流方向を放熱側と吸熱側とを切り替え可能な駆動装置(図示なし)が設けられている。図16に示されるように、制御装置8はペルチェ素子17に接続されており、凍結工程と解凍工程とで、電流方向を切り替えるように駆動装置を制御する。
図17は、実施の形態4に係る冷蔵庫1cの切替室200cの冷却板14の温度、切替室200内に保存された食品の中心温度及び表面温度の経時変化と、ペルチェ素子17の状態を示す図である。
図17に示されるように、凍結工程では、ペルチェ素子17を吸熱側に通電させて、冷却板14を冷却する。凍結工程時間ΔTLが経過したら(時刻TL)、凍結工程を終了し、解凍工程を開始する。解凍工程では、ペルチェ素子17を放熱側に通電させて、冷却板14を加熱する。解凍工程時間ΔTHが経過したら(時刻TH)、解凍工程を終了する。維持工程では、ペルチェ素子17へは通電せずOFFにし、切替室200cの温度を維持設定温度θRに維持するように、切替室ダンパ12を調整し、冷却板14の温度も切替室200c内の温度に従う。
切替室200の温度制御は、凍結工程、解凍工程、維持工程を通して、同じ維持設定温度θRを維持するように行ってもよい。また、凍結工程、解凍工程、維持工程で、それぞれ別の設定温度を設けてもよい。
図18は、実施の形態4に係る冷蔵庫1cの処理の一例を示すフローチャートである。冷蔵庫1に電源が投入されたとき、または、操作パネル6により、選択されたとき、実施の形態4における温度制御をスタートする。まず、カウンターi=0とする(S401)。続いて、時間t=0(S402)とし、ペルチェ素子17を吸熱側に通電して(S403)、凍結工程を開始する。時間tが、予め設定された時間ΔTL(例えば20分)経過したら(S404においてyes)、凍結工程を終了し、解凍工程を開始する。
解凍工程では、時間tを0とする(S405)とともに、ペルチェ素子17を放熱側に通電する(S406)。設定された解凍工程時間ΔTH(例えば30分)が経過したら(S407においてyes)、カウンターiに1加算し(S408)、解凍工程を終了して、n回(例えばn=10)となるまで、再び凍結工程を実施し、一連の温度制御を繰り返す(S409においてyes)。繰り返しの回数がn回に達したら(S409においてno)、凍結解凍工程を終了し、ペルチェ素子17への通電をOFFにして(S410)、維持工程に移行する。
実施の形態4に係る冷蔵庫1cによれば、切替室200cの床面に冷却板14及びペルチェ素子17を設け、ペルチェ素子17の放熱側と吸熱側とに電流を通電することにより、冷却板14を冷却または加熱する。これにより、切替室200c内の食品を効率的に凍結又は解凍させることができる。
《5》実施の形態5
以下、本発明の実施の形態5に係る冷蔵庫1dについて説明する。図19は、実施の形態5に係る冷蔵庫1dの切替室200dの概略的な構成を示す断面図である。図20は、実施の形態5に係る冷蔵庫1dの冷媒回路の概略的な構成を示す図である。実施の形態1から4と同じ部分にはこれと同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図19に示されるように、実施の形態5に係る冷蔵庫1dは、切替室200dの床面に食品を載置可能な冷却板14が設けられ、冷却板14の下方に切替室制御配管18が設けられている点において実施の形態1から4に係る冷蔵庫1,1a,1b,1cと異なる。切替室制御配管18は、冷蔵庫1dを制御するメイン回路24から、分岐して設けられており、三方弁19、25、26を切り替えることにより、切替室制御配管18により、冷却板14を冷却したり、加熱したりする。
図20に示されるように、冷凍サイクルは、圧縮機2、三方弁19、凝縮器20、ドライヤ21、毛細管22、冷却器3、ヘッダ23、吸入管27の順で構成されており、毛細管22と吸入管27とが熱交換するメイン回路24で構成されている。三方弁19によって分岐されたバイパス回路28と、三方弁25、26で分岐されバイパス回路28とにつながる切替室制御配管18が設けられている。
凍結工程では、圧縮機2、三方弁19、凝縮器20、ドライヤ21、毛細管22、冷却器3の順のメイン回路24を用いて、冷却器3を出た後、ヘッダ23、三方弁25、切替室制御配管18、三方弁26、吸入管27の順になるよう、三方弁19、25、26を制御する。このとき、切替室制御配管18には、低温のガスが流れるので、冷却板14を十分に冷却することができる。
解凍工程では、圧縮機2、三方弁19、切替室制御配管18、三方弁26の順になるよう、三方弁19、25、26を制御する。このとき、切替室制御配管18には、高温のガスが流れるので、冷却板14を十分に加熱することができる。凍結工程と解凍工程とを所定回数繰り返した後、維持工程を開始する。維持工程では、切替室制御配管18を切り離すように、三方弁19、25、26を制御する。凍結工程での冷却手段、解凍工程での加熱手段は、1つの手段に限らず、複数組み合わせたり、複数の手段を切り替えて用いてもよい。
実施の形態5に係る冷蔵庫1dによれば、切替室200dの床面に食品を載置可能な冷却板14を設け、冷却板14の下方に切替室制御配管18を設けた。これにより、切替室200d内の食品を効率的に凍結又は解凍させることができる。
1,1a,1b,1c,1d 冷蔵庫、 2 圧縮機、 3 冷却器、 4 送風ファン、 5 風路、 6 操作パネル、 7 扉、 7a 右扉、 7b 左扉、 8 制御装置、 8a プロセッサ、 8b メモリ、 10 扉開閉検知スイッチ、 11 サーミスタ、 12 切替室ダンパ、 13 ヒータ、 14 冷却板、 15 床面風路、 16 床面風路ダンパ、 17 ペルチェ素子、 18 切替室制御配管、 19 三方弁、 20 凝縮器、 21 ドライヤ、 22 毛細管、 23 ヘッダ、 24 メイン回路、 25,26 三方弁、 27 吸入管、 28 バイパス回路、 30 時間計測部、 90 断熱箱体、 100 冷蔵室、 200,200a,200b,200c,200d 切替室、 300 製氷室、 400 冷凍室、 500 野菜室、 201,401,501 収納ケース。

Claims (10)

  1. 被冷却物が保存される貯蔵室と、
    前記貯蔵室内を冷却する冷凍サイクルを有する冷却部と、
    前記冷却部を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記冷却部に、
    前記被冷却物の表層部のみを凍結させる第1の処理と、前記第1の処理により凍結された前記被冷却物の前記表層部のみを解凍させる第2の処理と、を含む凍結解凍処理を2回以上繰り返し実行させ、
    前記制御部は、前記第1の処理において、前記被冷却物の前記表層部以外の部分である中心部を凍結させないように設定温度及び設定時間を制御する
    ことを特徴とする冷蔵庫。
  2. 前記制御部は、前記冷却部に、
    前記凍結解凍処理の完了後、前記貯蔵室内の温度を前記被冷却物の凍結点よりも高い第1の温度に維持する第3の処理を実行させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
  3. 前記制御部は、前記冷却部に、
    前記凍結解凍処理の完了後、前記貯蔵室内の温度を前記被冷却物の凍結点よりも低い第2の温度に維持する第4の処理を実行させる
    ことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
  4. 前記貯蔵室内を加熱する加熱部を更に備え、
    前記制御部は、
    前記第2の処理において、前記貯蔵室内の温度が前記被冷却物の凍結点よりも高い温度となるように前記加熱部を制御する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
  5. 前記加熱部は、ヒータを備える
    ことを特徴とする請求項4に記載の冷蔵庫。
  6. 前記冷却部は、
    ペルチェ素子を備える
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
  7. 前記冷却部は、前記被冷却物を載置して冷却する冷却板を備える
    ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
  8. 前記第1の処理の設定温度は、-25℃から-5℃の範囲内であり、
    前記第2の処理の設定温度は、0℃から10℃の範囲内である
    ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
  9. 時間計測部を更に備え、
    前記制御部は、前記時間計測部により計測された時間に基づいて、前記凍結解凍処理の一周期の時間を、30分から90分の範囲内で制御する
    ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
  10. 被冷却物が保存される貯蔵室と、前記貯蔵室内を冷却する冷凍サイクルを有する冷却部と、を備えた冷蔵庫によって実行される温度制御方法であって、
    前記冷却部に、前記被冷却物の表層部のみを凍結させる第1の処理と、前記第1の処理により凍結された前記被冷却物の前記表層部のみを解凍させる第2の処理と、を含む凍結解凍処理を2回以上繰り返し実行させるステップを有し、
    前記第1の処理において、前記被冷却物の前記表層部以外の部分である中心部を凍結させないように設定温度及び設定時間を制御する
    ことを特徴とする冷蔵庫の温度制御方法。
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