JP6951164B2 - カーボンナノチューブ成形体の製造方法およびカーボンナノチューブ成形体製造装置 - Google Patents

カーボンナノチューブ成形体の製造方法およびカーボンナノチューブ成形体製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、カーボンナノチューブ成形体を製造する技術に関する。
近年、複数のカーボンナノチューブを様々な形状に成形し、電極またはセンサ等の様々な製品に利用することが提案されている。例えば、特許文献1では、基板上に立設したカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイから、シート状のカーボンナノチューブウェブを引き出す技術が提案されている。また、カーボンナノチューブアレイから線状のカーボンナノチューブワイヤを引き出す技術も提案されている(特許文献2ないし特許文献8)。
特許文献3では、円筒状の基体の外側面にカーボンナノファイバ集合体を形成し、基体から剥離されたカーボンナノファイバ集合体の先端部からカーボンナノファイバを引き出して撚り合わせる技術が開示されている。特許文献3の製造装置では、円筒状の基体を回転させつつ上記製造工程を継続的に行うことにより、長い導電線を形成可能である。当該製造装置では、円筒状の基体から剥離されたカーボンナノファイバ集合体が、基体の径方向に平行な移動方向へと移動し、移動中のカーボンナノファイバ集合体の先端部から、カーボンナノファイバが当該移動方向に平行に引き出される。
国際公開第2016/208342号 特開2016−160538号公報 特許第6059089号公報 特許第5350635号公報 国際公開第2015/001668号 特開2011−153392号公報 特開2014−169521号公報 特開2006−335624号公報
ところで、基板上に立設したカーボンナノチューブアレイにピンホールが存在している場合、あるいは、基板上のカーボンナノチューブアレイに異物が含まれている場合、カーボンナノチューブアレイからカーボンナノチューブシートを引き出すと、当該カーボンナノチューブシートに部分欠損が生じるおそれがある。また、当該カーボンナノチューブシートからカーボンナノチューブワイヤを形成すると、カーボンナノチューブワイヤのうち、上記部分欠損に対応する部位の強度が低くなるおそれがある。
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、カーボンナノチューブシートにおける部分欠損を抑制することを目的としている。
請求項1に記載の発明は、カーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、a)基板上に立設したカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイを準備する工程と、b)前記カーボンナノチューブアレイと前記基板との接合部に剥離部材を当接させた状態で、前記剥離部材を前記基板に対して相対的に移動することにより、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板上から剥離させ、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記基板上から剥離した部位である剥離アレイ部を、前記剥離部材に対して所定の剥離部移動方向に相対的に移動させる工程と、c)前記剥離アレイ部を、前記剥離部移動方向に対して傾斜する引出方向へと引き出すことにより、前記剥離アレイ部の前記引出方向に延びるカーボンナノチューブシートを形成する工程とを備え、前記カーボンナノチューブアレイの嵩密度Dmg/cm と、前記カーボンナノチューブアレイの厚さLμmとの関係が、D≧300×L −0.5 である
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記引出方向と前記剥離部移動方向との成す角度の絶対値が45度以下である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記引出方向が、前記剥離部移動方向から前記剥離アレイ部の下面側に向かって傾斜する。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記剥離アレイ部または前記カーボンナノチューブシートを加熱する工程をさらに備える。
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、d)前記c)工程よりも後に、前記カーボンナノチューブシートを幅方向において集めることにより、線状のカーボンナノチューブワイヤを形成する工程をさらに備える。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記d)工程において、前記カーボンナノチューブシートが撚られることにより前記カーボンナノチューブワイヤが形成される。
請求項7に記載の発明は、請求項5または6に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記d)工程よりも後に、前記カーボンナノチューブワイヤを長手方向に伸張する工程をさらに備える。
請求項8に記載の発明は、請求項5ないし7のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、前記カーボンナノチューブワイヤを加熱する工程をさらに備える。
請求項に記載の発明は、カーボンナノチューブ成形体製造装置であって、カーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイが立設した基板を保持する基板保持部と、前記カーボンナノチューブアレイと前記基板との接合部に当接する剥離部材と、前記剥離部材を前記基板に対して相対的に移動することにより、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板上から剥離させ、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記基板上から剥離した部位である剥離アレイ部を、前記剥離部材に対して所定の剥離部移動方向に相対的に移動させる移動機構と、前記剥離アレイ部を、前記剥離部移動方向に対して傾斜する引出方向へと導くガイド部と、前記剥離アレイ部を前記引出方向へと引き出すことにより、前記剥離アレイ部の前記引出方向に延びるカーボンナノチューブシートを形成する引出機構とを備え、前記ガイド部が、幅方向に延びるとともに前記剥離アレイ部に接するガイド面を備え、前記ガイド面が、前記幅方向の中央部において前記幅方向の両端部よりも凹む凹面である
請求項10に記載の発明は、カーボンナノチューブ成形体製造装置であって、カーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイが立設した基板を保持する基板保持部と、前記カーボンナノチューブアレイと前記基板との接合部に当接する剥離部材と、前記剥離部材を前記基板に対して相対的に移動することにより、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板上から剥離させ、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記基板上から剥離した部位である剥離アレイ部を、前記剥離部材に対して所定の剥離部移動方向に相対的に移動させる移動機構と、前記剥離アレイ部を、前記剥離部移動方向に対して傾斜する引出方向へと導くガイド部と、前記剥離アレイ部を前記引出方向へと引き出すことにより、前記剥離アレイ部の前記引出方向に延びるカーボンナノチューブシートを形成する引出機構と、前記剥離部材と前記ガイド部との間に配置され、前記剥離アレイ部の幅方向の幅よりも小さい幅の溝部を有する中間密集部とを備え、前記剥離アレイ部が前記中間密集部の前記溝部を通過することにより、前記剥離アレイ部のカーボンナノチューブが幅方向に集められる。
請求項11に記載の発明は、請求項9または10に記載のカーボンナノチューブ成形体製造装置であって、前記剥離アレイ部または前記カーボンナノチューブシートを加熱する加熱部をさらに備える。
請求項12に記載の発明は、請求項9ないし11のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体製造装置であって、前記カーボンナノチューブシートを幅方向において集めることにより、線状のカーボンナノチューブワイヤを形成するワイヤ形成部をさらに備える。
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のカーボンナノチューブ成形体製造装置であって、前記カーボンナノチューブワイヤを加熱する加熱部をさらに備える。
本発明では、カーボンナノチューブシートにおける部分欠損を抑制することができる。
第1の実施の形態に係る成形体製造装置の側面図である。 成形体製造装置の平面図である。 カーボンナノチューブアレイの嵩密度と厚さとの関係を示す図である。 ガイド部を示す図である。 カーボンナノチューブ成形体の製造の流れを示す図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す側面図である。 カーボンナノチューブ成形体の製造の流れの一部を示す図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す側面図である。 カーボンナノチューブ成形体の製造の流れの一部を示す図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す側面図である。 カーボンナノチューブ成形体の製造の流れの一部を示す図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す側面図である。 カーボンナノチューブ成形体の製造の流れの一部を示す図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す平面図である。 中間密集部を示す斜視図である。 中間密集部を示す斜視図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す側面図である。 他の好ましい成形体製造装置を示す平面図である。 第2の実施の形態に係る成形体製造装置の側面図である。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るカーボンナノチューブ成形体製造装置1(以下、単に「成形体製造装置1」と呼ぶ。)を示す側面図である。図2は、成形体製造装置1を示す平面図である。図1および図2に示す例では、成形体製造装置1は、複数のカーボンナノチューブ(CNT)により形成されるシート状(いわゆる、ウェブ状)のカーボンナノチューブシート、および、線状(いわゆる、糸状)のカーボンナノチューブワイヤを、カーボンナノチューブ成形体として製造する。以下の説明では、図1中における上側および下側を、単に「上側」および「下側」と呼ぶ。図1中の上下方向は、必ずしも実際の鉛直方向と一致しなくてもよい。
成形体製造装置1は、基板保持部21と、剥離部材22と、移動機構23と、ガイド部24と、ワイヤ形成部25と、引出機構26とを備える。移動機構23は、基板巻き取りロール231と、回転機構232とを備える。引出機構26は、成形体巻き取りロール261と、回転機構262とを備える。回転機構232,262はそれぞれ、例えば電動モータである。
基板保持部21は、多数のカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイ91が立設した基板92を保持する。基板92は、例えば、可撓性を有する長尺の薄板状部材である。基板92は、例えば、シリコン基板、または、表面に二酸化ケイ素膜が設けられたステンレス鋼製の基板である。カーボンナノチューブアレイ91は、例えば、化学気相成長法(すなわち、CVD法)により、基板92の表面921に対して略垂直に配向する多数のカーボンナノチューブを基板92上に成長させることにより形成される。カーボンナノチューブアレイ91の形成は、他の様々な方法により行われてもよい。
カーボンナノチューブアレイ91の厚さ(すなわち、カーボンナノチューブアレイ91に含まれるカーボンナノチューブの上下方向における長さ)は、例えば、50μm〜1000μmである。本実施の形態では、カーボンナノチューブアレイ91の厚さは、50μm〜500μmである。カーボンナノチューブアレイ91の厚さは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)(日本電子株式会社製)または非接触膜厚計(株式会社キーエンス製)により測定される。
カーボンナノチューブアレイ91では、例えば、1cm当たりに10本〜1011本のカーボンナノチューブが存在する。隣接するカーボンナノチューブ間の距離は、例えば、100nm〜200nmである。各カーボンナノチューブの外径は、例えば、10nm〜30nmである。各カーボンナノチューブは、例えば、5層〜10層の多層カーボンナノチューブである。各カーボンナノチューブは、4層以下または11層以上の多層カーボンナノチューブであってもよく、単層カーボンナノチューブであってもよい。
カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度は、例えば、10mg/cm〜60mg/cmである。好ましくは、カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度は、20mg/cm〜50mg/cmである。カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度は、単位面積当たりのカーボンナノチューブアレイ91の質量(すなわち、目付量)を、カーボンナノチューブアレイ91の厚さで除算することにより求められる。
図3は、カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度と、カーボンナノチューブアレイ91の厚さとの関係を示す図である。図3中の丸印は、後述するステップS14において、カーボンナノチューブワイヤが好適に形成可能であったカーボンナノチューブアレイ91の条件である。カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度をD(mg/cm)とし、カーボンナノチューブアレイ91の厚さをL(μm)とすると、D≧300×L−0.5であることが好ましい。図3中の曲線は、D=300×L−0.5を示す。
図1に示す例では、基板保持部21は、紙面に垂直な方向に延びる回転軸J1を中心とする略円柱状または略円筒状である。回転軸J1は、成形体製造装置1の図示省略のフレーム等に固定されている。基板保持部21は、基板92の裏面922に下方から当接することにより、基板92を保持する。基板92の裏面922は、例えば、基板保持部21の上端部から右端部に亘って、基板保持部21の外側面に当接している。基板92の先端部は、基板保持部21の下方に配置された略円柱状または略円筒状の基板巻き取りロール231に巻回されている。
基板巻き取りロール231は、回転機構232により、図1において紙面に垂直な方向に延びる回転軸J2を中心として図1中の時計回りに回転される。回転軸J2は、上述のフレーム等に固定されている。また、基板保持部21は、基板巻き取りロール231の回転に伴って(例えば、同期して)、図1中の時計回りに回転する。これにより、基板92が基板巻き取りロール231に巻き取られ、基板保持部21の上端部近傍において、基板92が図1中の左側から右側に向かう方向に移動する。なお、成形体製造装置1では、基板巻き取りロール231が省略され、回転機構232により回転される基板保持部21により基板92が巻き取られてもよい。
以下の説明では、基板保持部21の上端部近傍における基板92の移動方向を「基板移動方向」と呼び、図1において符号A1を付す矢印にて示す。基板移動方向A1は、上下方向に略垂直である。また、以下の説明では、上下方向および基板移動方向A1の双方に垂直な方向(すなわち、図2中の上下方向)を「幅方向」と呼ぶ。当該幅方向は、カーボンナノチューブアレイ91の幅方向でもあり、後述する剥離アレイ部93の幅方向でもある。
剥離部材22は、基板保持部21の上端部近傍に配置される。剥離部材22は、上述のフレーム等に固定されている。剥離部材22の側面視における形状は、例えば、略くさび状または略平板状である。図1に示す例では、剥離部材22は、左側の端部の厚さが、右側の端部の厚さよりも小さい略くさび状の部材である。剥離部材22の上面は、例えば、図1中の右側に向かうに従って上方へと向かう傾斜面である。
剥離部材22の左側の端部(すなわち、エッジ部)は、基板保持部21の上端の上方において、カーボンナノチューブアレイ91と基板92との接合部(すなわち、基板92上に立設しているカーボンナノチューブアレイ91の下端部)に当接する。剥離部材22の幅方向の幅は、カーボンナノチューブアレイ91の幅方向の幅よりも大きい。剥離部材22は、カーボンナノチューブアレイ91の全幅に亘って、カーボンナノチューブアレイ91と基板92との接合部に当接する。なお、剥離部材22は、カーボンナノチューブアレイ91の幅方向の一部においてのみ、カーボンナノチューブアレイ91と基板92との接合部に当接してもよい。
基板保持部21の上端部近傍では、移動機構23により基板92が基板移動方向A1に移動することにより、カーボンナノチューブアレイ91のうち剥離部材22のエッジ部に当接した部位が、基板92の表面921から剥離される。カーボンナノチューブアレイ91のうち、基板92上から剥離した部位を、「剥離アレイ部93」と呼ぶ。図2では、カーボンナノチューブアレイ91および剥離アレイ部93に平行斜線を付す。なお、カーボンナノチューブアレイ91の剥離の際には、必ずしも基板92が移動する必要はなく、後述するように、固定されている基板92の表面921に沿って剥離部材22が移動してもよい。換言すれば、剥離部材22が基板92に対して相対的に移動することにより、カーボンナノチューブアレイ91が基板92から剥離される。
基板92から剥離された剥離アレイ部93は、移動機構23による基板92の移動に伴って、剥離部材22の上面に沿って図1中の右側(すなわち、基板保持部21の上端部から離れる方向)へと移動し、剥離部材22に隣接して配置されるガイド部24へと至る。ガイド部24は、図1中における基板保持部21の右斜め上に位置している。ガイド部24は、剥離アレイ部93の下側に配置され、剥離アレイ部93の下面に接触する。
以下の説明では、剥離部材22上からガイド部24へと至る剥離アレイ部93の移動方向を、「剥離部移動方向A2」と呼ぶ。剥離部移動方向A2は、側面視において、基板移動方向A1から上側(すなわち、剥離アレイ部93の上面側)に向かって傾斜している。剥離部移動方向A2と基板移動方向A1との成す角度は、例えば、5度〜10度である。剥離部移動方向A2は、上下方向に対しても傾斜している。また、剥離部移動方向A2は、幅方向に対して垂直である。基板92から剥離された直後の剥離アレイ部93の移動方向を「剥離方向」と呼ぶと、図1に示す例では、剥離方向は剥離部移動方向A2と同じである。
図4は、ガイド部24を図1中の右側から見た図である。図4では、ガイド部24上の剥離アレイ部93も併せて図示する。ガイド部24は、幅方向に延びる回転軸J3を中心とする略円柱状または略円筒状の部材である。ガイド部24は、回転軸J3を中心として図1中の時計回りに回転する。回転軸J3は、上述のフレーム等に固定されている。ガイド部24の外側面は、剥離アレイ部93の下面に接して剥離アレイ部93をガイドするガイド面241である。
図4に示す例では、ガイド部24は略鼓状の部材である。換言すれば、ガイド部24の直径は、幅方向の両端部から中央部に向かうに従って漸次減少する。ガイド面241は、幅方向に延びる曲面である。具体的には、ガイド面241は、幅方向の中央部において幅方向の両端部よりも凹む凹面である。
ガイド部24の上端部に到達した剥離アレイ部93は、引出機構26により所定の引出方向A3へと引き出される。これにより、剥離アレイ部93の引出方向A3に延びるカーボンナノチューブシート94が形成される。カーボンナノチューブシート94は、剥離アレイ部93の幅方向に広がっている。図2に示す例では、カーボンナノチューブシート94は、略矩形状の部位の引出方向A3前側に略三角形状の部位が連続した形状である。カーボンナノチューブシート94の形状は様々に変更されてよく、例えば、ガイド部24から引出方向A3に離れるに従って幅方向の幅が漸次減少する略三角形状であってもよい。カーボンナノチューブシート94は、幅方向の幅に比べて引出方向A3の長さが非常に小さい扁平な略三角形状であってもよい。
カーボンナノチューブシート94は、複数のカーボンナノチューブにより形成されたシート状のカーボンナノチューブ成形体である。詳細には、カーボンナノチューブシート94は、剥離アレイ部93から引出方向A3に引き出された複数のカーボンナノチューブ単糸が、幅方向に配列されるとともに互いに連結されてシート状成形体(網目状成形体とも捉えられる。)となったものである。カーボンナノチューブ単糸とは、ファンデンワールス力等により、複数のカーボンナノチューブが長手方向に連続して接続された線状のカーボンナノチューブ成形体である。
引出方向A3は、側面視において、剥離部移動方向A2から下側(すなわち、剥離アレイ部93の下面側)に向かって傾斜している。換言すれば、引出方向A3は、剥離アレイ部93の上面を含む仮想面(すなわち、剥離部移動方向A2および幅方向に平行な仮想面)から下側に向かって傾斜している。成形体製造装置1では、ガイド部24は、剥離アレイ部93の移動方向を制限して、剥離アレイ部93を剥離部移動方向A2に対して傾斜する引出方向A3へと導く構造である。引出方向A3と剥離部移動方向A2との成す角度αの絶対値は、例えば、0度よりも大きく、かつ、45度以下である。角度αはの絶対値は、好ましくは30度以下であり、より好ましくは20度以下である。図1に示す例では、引出方向A3は、幅方向に対して垂直である。また、図1に示す例では、引出方向A3は、基板移動方向A1に略平行である。
剥離アレイ部93から引き出されたカーボンナノチューブシート94は、ワイヤ形成部25を通過する。ワイヤ形成部25では、カーボンナノチューブシート94が幅方向において集められることにより、カーボンナノチューブワイヤ95が形成される。カーボンナノチューブワイヤ95は、複数のカーボンナノチューブにより形成された線状のカーボンナノチューブ成形体である。ワイヤ形成部25では、カーボンナノチューブシート94が幅方向の中央部に向かって集められ、多数のカーボンナノチューブが幅方向において密着する。
図1に示す例では、ワイヤ形成部25は、幅方向に集められたカーボンナノチューブシート94の複数のカーボンナノチューブ単糸を撚ることによりカーボンナノチューブワイヤ95を形成する撚り機である。すなわち、ワイヤ形成部25通過前の略線状に集められたカーボンナノチューブ成形体が、ワイヤ形成部25によって撚られることにより、カーボンナノチューブ撚糸であるカーボンナノチューブワイヤ95が形成される。換言すれば、カーボンナノチューブシート94は、カーボンナノチューブワイヤ95の前駆体である。
ワイヤ形成部25を通過後のカーボンナノチューブワイヤ95は、引出機構26において、回転機構262により回転される成形体巻き取りロール261に巻き取られる。成形体巻き取りロール261は、ワイヤ形成部25の右側に配置される略円柱状または略円筒状の部材である。成形体巻き取りロール261は、幅方向に延びる回転軸J4を中心として図1中の時計回りに回転される。回転軸J4は、上述のフレーム等に固定されている。
図5は、成形体製造装置1によるカーボンナノチューブ成形体の製造の流れを示す図である。成形体製造装置1では、まず、基板92上に立設したカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイ91が準備される(ステップS11)。続いて、カーボンナノチューブアレイ91と基板92との接合部に剥離部材22を当接させた状態で、剥離部材22を基板92に対して相対的に移動することにより、カーボンナノチューブアレイ91を基板92上から剥離させる。そして、カーボンナノチューブアレイ91のうち基板92上から剥離した部位である剥離アレイ部93を、剥離部材22に対して所定の剥離部移動方向A2に相対的に移動させる(ステップS12)。その後、剥離アレイ部93を、剥離部移動方向A2に対して傾斜する引出方向A3へと引き出すことにより、剥離アレイ部93の引出方向A3に延びるカーボンナノチューブシート94が形成される(ステップS13)。
上述のステップS11〜S13が行われることにより、基板92上のカーボンナノチューブアレイ91にピンホールが存在している場合、あるいは、基板92上のカーボンナノチューブアレイ91に異物が含まれている場合等であっても、カーボンナノチューブシート94における部分欠損を抑制することができる。詳細には、剥離アレイ部93に含まれるカーボンナノチューブは、基板92により移動が制限されていないため、剥離アレイ部93に上述のピンホールまたは異物等に起因する空隙が存在する場合、空隙の周囲のカーボンナノチューブが当該空隙を埋めるように移動する。さらに、空隙の剥離部移動方向A2の後側に位置するカーボンナノチューブが、引き出される力に抗して基板92上に残ることが防止される。これにより、剥離アレイ部93から引き出されるカーボンナノチューブシート94において、当該空隙に起因する部分欠損が発生することが抑制される。また、成形体製造装置1では、引出方向A3が剥離部移動方向A2に対して傾斜することにより、成形体製造装置1が剥離部移動方向A2に大型化することを抑制しつつ、カーボンナノチューブシート94を好適に製造することができる。
上記ステップS11〜S13を行うために、図1に例示する成形体製造装置1は、上述の基板保持部21と、剥離部材22と、移動機構23と、ガイド部24と、引出機構26とを備える。基板保持部21は、カーボンナノチューブアレイ91が立設した基板92を保持する。剥離部材22は、カーボンナノチューブアレイ91と基板92との接合部に当接する。移動機構23は、剥離部材22を基板92に対して相対的に移動することにより、カーボンナノチューブアレイ91を基板92上から剥離させ、剥離アレイ部93を剥離部材22に対して剥離部移動方向A2に相対的に移動する。ガイド部24は、剥離アレイ部93を、剥離部移動方向A2に対して傾斜する引出方向A3へと導く。引出機構26は、剥離アレイ部93を引出方向A3へと引き出すことにより、剥離アレイ部93の引出方向A3に延びるカーボンナノチューブシート94を形成する。
ステップS13が終了すると、カーボンナノチューブシート94が幅方向において集められることにより、線状のカーボンナノチューブワイヤ95が形成される(ステップS14)。図1に例示する成形体製造装置1では、ステップS14は、ワイヤ形成部25により行われる。上述のように、成形体製造装置1では、カーボンナノチューブシート94の部分欠損が抑制されるため、カーボンナノチューブワイヤ95の長手方向における密度の均一性を向上することができる。その結果、製造途上におけるカーボンナノチューブワイヤ95の破損および切断を防止することができる。
ステップS14では、カーボンナノチューブシート94が撚られることにより、カーボンナノチューブワイヤ95が形成される。これにより、高密度なカーボンナノチューブワイヤ95を製造することができる。その結果、カーボンナノチューブワイヤ95の引張強度を向上することができる。
上述のように、引出方向A3と剥離部移動方向A2との成す角度の絶対値は45度以下である。これにより、剥離アレイ部93から引出方向A3に引き出されるカーボンナノチューブ単糸の引張強度(すなわち、カーボンナノチューブ単糸におけるカーボンナノチューブ同士の接続強度)が、過剰に小さくなることを防止することができる。その結果、製造途上におけるカーボンナノチューブシート94の破損および切断、および、カーボンナノチューブワイヤ95の破損および切断を、さらに好適に防止することができる。
また、引出方向A3は、剥離部移動方向A2から剥離アレイ部93の下面側に向かって傾斜する。このため、剥離部材22の上面に沿って剥離部移動方向A2に移動する剥離アレイ部93が、剥離部材22により支持されている側へと引き出される。これにより、剥離アレイ部93を支持する部材を剥離部材22とは別に設けることなく、カーボンナノチューブシート94を引出方向A3へと容易に引き出すことができる。また、成形体製造装置1が上下方向に大型化することを抑制することができる。
上述のように、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95の製造では、カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度D(mg/cm)と、カーボンナノチューブアレイ91の厚さL(μm)との関係が、D≧300×L−0.5であることが好ましい。これにより、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95の製造途上における破損および切断を防止しつつ、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95を好適に製造することができる。
成形体製造装置1では、上述のように、ガイド部24が、幅方向に延びるとともに剥離アレイ部93に接するガイド面241を備える。ガイド面241は、幅方向の中央部において、幅方向の両端部よりも凹む凹面である。このため、ガイド部24上に位置するカーボンナノチューブを幅方向の中央部に集めることができる。これにより、ワイヤ形成部25によりカーボンナノチューブを幅方向において集めることを容易とすることができる。その結果、ワイヤ形成部25におけるカーボンナノチューブワイヤ95の形成を容易とすることができる。
図6は、他の好ましい成形体製造装置1aを示す側面図である。成形体製造装置1aは、図1に示す成形体製造装置1の各構成に加えて、チャンバ31と、加熱部32とをさらに備える。図6では、チャンバ31を断面にて図示している。チャンバ31の内部には、例えば、基板保持部21、剥離部材22、移動機構23、ガイド部24、ワイヤ形成部25および引出機構26が収容される。チャンバ31の内部空間は密閉空間である。チャンバ31の内部空間は、好ましくは不活性ガス雰囲気である。当該不活性ガスとしては、例えば窒素(N)が使用される。
図6に示す例では、加熱部32は、剥離部材22とガイド部24との間に配置され、剥離アレイ部93を加熱する。換言すれば、図7に示すように、ステップS12におけるカーボンナノチューブアレイ91の基板92からの剥離(すなわち、剥離アレイ部93の形成)と、ステップS13におけるカーボンナノチューブシート94の形成との間に、剥離アレイ部93を加熱する工程(ステップS121)が行われる。これにより、剥離アレイ部93のカーボンナノチューブを高結晶化することができる。その結果、ステップS13で形成されるカーボンナノチューブシート94の電気抵抗を低減することができる。また、ステップS14で形成されるカーボンナノチューブワイヤ95の電気抵抗を低減することもできる。例えば、加熱部32による加熱により、カーボンナノチューブワイヤ95の電気抵抗は、約半分になる。
加熱部32は、例えば、誘導加熱によって剥離アレイ部93を加熱する。加熱部32は、例えば、黒鉛製またはガラス製の矩形管と、高周波誘導加熱電極とを備える。加熱部32として、レーザ照射により剥離アレイ部93を加熱するものが利用されてもよい。
成形体製造装置1aでは、図8に示すように、加熱部32が、ガイド部24とワイヤ形成部25との間に配置され、カーボンナノチューブシート94を加熱してもよい。換言すれば、図9に示すように、ステップS13におけるカーボンナノチューブシート94の形成と、ステップS14におけるカーボンナノチューブワイヤ95の形成との間に、カーボンナノチューブシート94を加熱する工程(ステップS131)が行われてもよい。これにより、カーボンナノチューブシート94の高密度化、および、カーボンナノチューブシート94のカーボンナノチューブを高結晶化することができる。その結果、カーボンナノチューブシート94の電気抵抗を低減することができる。また、カーボンナノチューブワイヤ95の電気抵抗を低減することもできる。
成形体製造装置1aでは、図10に示すように、加熱部32が、ワイヤ形成部25と引出機構26との間に配置され、カーボンナノチューブワイヤ95を加熱してもよい。換言すれば、図11に示すように、ステップS14におけるカーボンナノチューブワイヤ95の形成の後に、カーボンナノチューブワイヤ95を加熱する工程(ステップS141)が行われてもよい。これにより、カーボンナノチューブワイヤ95のカーボンナノチューブを高結晶化することができる。その結果、カーボンナノチューブワイヤ95の電気抵抗を低減することができる。なお、成形体製造装置1aでは、剥離アレイ部93、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95のうち、2つ以上の部位が加熱部32により加熱されてもよい。
成形体製造装置1aでは、チャンバ31内を不活性ガス雰囲気とすることにより、剥離アレイ部93、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95が、加熱部32による加熱によって酸素により燃焼することを防止することができる。なお、成形体製造装置1aでは、剥離アレイ部93、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95のうち、加熱部32により加熱される部位のみが、不活性ガス雰囲気とされたチャンバ31内に収容されてもよい。
図12は、他の好ましい成形体製造装置1bを示す側面図である。成形体製造装置1bは、図1に示す成形体製造装置1の各構成に加えて、伸張機構27をさらに備える。伸張機構27は、ワイヤ巻き取りロール271と、回転機構272とを備える。
ワイヤ巻き取りロール271は、引出機構26の成形体巻き取りロール261の下側に配置される略円柱状または略円筒状の部材である。ワイヤ巻き取りロール271は、例えば、幅方向に延びる回転軸J5を中心として、回転機構272により図12中の時計回りに回転される。回転軸J5は、上述のフレーム等に固定されている。回転機構272は、例えば電動モータである。
成形体巻き取りロール261に巻回されたカーボンナノチューブワイヤ95は、成形体巻き取りロール261から下方へと延びてワイヤ巻き取りロール271に巻回される。回転機構272によりワイヤ巻き取りロール271が回転されることにより、成形体巻き取りロール261に巻回されているカーボンナノチューブワイヤ95が、ワイヤ巻き取りロール271に巻き取られる。回転機構272によるワイヤ巻き取りロール271の回転速度は、回転機構262による成形体巻き取りロール261の回転速度とは独立して制御される。
成形体製造装置1bでは、ワイヤ巻き取りロール271によるカーボンナノチューブワイヤ95の巻き取り速度が、成形体巻き取りロール261からのカーボンナノチューブワイヤ95の送出速度(すなわち、成形体巻き取りロール261によるカーボンナノチューブワイヤ95の巻き取り速度)よりも大きい。このため、成形体巻き取りロール261とワイヤ巻き取りロール271との間で、カーボンナノチューブワイヤ95が長手方向に伸張される。伸張機構27では、好ましくは、成形体巻き取りロール261とワイヤ巻き取りロール271との間におけるカーボンナノチューブワイヤ95の伸張時の荷重が一定に維持される。
成形体製造装置1bでは、図13に示すように、ステップS14におけるカーボンナノチューブワイヤ95の形成よりも後に、カーボンナノチューブワイヤ95を長手方向に伸張する工程(ステップS142)が行われる。これにより、カーボンナノチューブワイヤ95を高密度化して、カーボンナノチューブワイヤ95の引張強度を増大することができる。また、カーボンナノチューブワイヤ95の伸張時の荷重が一定に維持されることにより、カーボンナノチューブワイヤ95の密度の長手方向における均一性を向上することができる。
図14は、他の好ましい成形体製造装置1cを示す平面図である。成形体製造装置1cは、図1に示す成形体製造装置1の各構成に加えて、中間密集部51をさらに備える。中間密集部51は、剥離部材22とガイド部24との間に配置される。中間密集部51は、剥離アレイ部93の幅方向の幅よりも小さい幅の溝部52を有する。成形体製造装置1cでは、剥離アレイ部93が中間密集部51の溝部52を通過することにより、剥離アレイ部93のカーボンナノチューブが幅方向に集められる。これにより、比較的幅が小さく高密度なカーボンナノチューブシート94を容易に製造することができる。その結果、幅方向においてカーボンナノチューブシート94を容易に集めることができるため、カーボンナノチューブワイヤ95の製造を容易とすることができる。
また、剥離アレイ部93の幅方向の中央部から引き出されるカーボンナノチューブ単糸と、剥離アレイ部93の幅方向の端部から引き出されるカーボンナノチューブ単糸とにおいて、カーボンナノチューブの絡み合いの程度の差を小さくすることもできる。換言すれば、剥離アレイ部93から引き出されるカーボンナノチューブ単糸の密度を、幅方向において均等化することができる。その結果、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95の引張強度を向上することができる。
図14に示す例では、中間密集部51は、略直方体状の部材である。中間密集部51の上部には、剥離部移動方向A2に延びる溝部52が設けられている。溝部52の幅方向の幅は、剥離部移動方向A2の前方に向かうに従って(すなわち、ガイド部24に近づくに従って)漸次減少する。溝部52の剥離部移動方向A2の後端の幅は、例えば、剥離アレイ部93の幅方向の幅と略同じである。
なお、中間密集部51および溝部52の形状は様々に変更されてよい。例えば、図15に示す中間密集部51aは、略直方体状の部材上に、幅方向に並ぶ2本の円柱部材が立設されたものである。この場合、上下方向に延びる当該2本の円柱部材の間の空間が溝部52aである。当該2本の円柱部材の幅方向の間隔を変更することにより、溝部52aの幅を容易に変更することができる。各円柱部材は、上下方向に延びる中心軸を中心として回転可能であってもよい。これにより、2本の円柱部材の間の溝部52aを通過する剥離アレイ部93と、各円柱部材との摩擦を低減することができる。
また、図16に例示する中間密集部51bは、幅方向に延びる回転軸を中心とする略円筒状の部材である。溝部52bは、当該円筒状部材の外側面において、全周に亘って径方向内方へと凹む凹部である。中間密集部51bは、上記回転軸を中心として回転する。これにより、溝部52bを通過する剥離アレイ部93と、中間密集部51bとの摩擦を低減することができる。中間密集部51bの溝部52bは、上記円筒状部材の外側面において、幅方向に延びる螺旋状に設けられてもよい。換言すれば、中間密集部51bはネジ構造を有していてもよい。
図17は、他の好ましい成形体製造装置1dを示す側面図である。成形体製造装置1dでは、剥離アレイ部93からカーボンナノチューブシート94が引き出される方向である引出方向A3が、側面視において、剥離部移動方向A2から上側(すなわち、剥離アレイ部93の上面側)に向かって傾斜している。換言すれば、引出方向A3は、剥離アレイ部93の下面を含む仮想面(すなわち、剥離部移動方向A2および幅方向に平行な仮想面)から上側に向かって傾斜している。また、引出方向A3は、幅方向に対して垂直である。
成形体製造装置1dでは、ガイド部24が剥離アレイ部93の上側に配置され、剥離アレイ部93の上面に接触する。ガイド部24は、剥離アレイ部93の移動方向を制限して、剥離アレイ部93を剥離部移動方向A2に対して傾斜する引出方向A3へと導く構造である。引出方向A3と剥離部移動方向A2との成す角度βの絶対値は、例えば、0度よりも大きく、かつ、45度以下である。角度βはの絶対値は、好ましくは30度以下であり、より好ましくは20度以下である。ガイド部24の下方には、剥離アレイ部93の下側に配置されて剥離アレイ部93を支持する支持ローラ242が設けられる。
成形体製造装置1dでは、剥離部材22のエッジ部とガイド部24との間において剥離アレイ部93の上面に接触する押さえ板53をさらに備える。押さえ板53は、剥離アレイ部93の幅方向の全幅に亘って設けられる。また、押さえ板53は、基板保持部21の上端の上方の位置からからガイド部24近傍まで延びる。押さえ板53は、剥離部材22により基板92から剥離された剥離アレイ部93が、引出方向A3に引っ張られることにより剥離部材22から上方に離間する(すなわち、剥離部材22から浮く)ことを防止することができる。これにより、剥離アレイ部93からカーボンナノチューブシート94を好適に引き出すことができる。
図18は、他の好ましい成形体製造装置1eを示す平面図である。成形体製造装置1eでは、1枚の基板92上において、複数のカーボンナノチューブアレイ91が幅方向に配列される。複数のカーボンナノチューブアレイ91は、例えば、基板92上に形成された1つの大きなカーボンナノチューブアレイに対して、レーザ光を幅方向に垂直な方向に走査することにより、当該カーボンナノチューブアレイを幅方向に分割することにより形成される。図18に示す例では、3つのカーボンナノチューブアレイ91が基板92上に配置される。
成形体製造装置1eでは、上述の成形体製造装置1と同様の構造により、各カーボンナノチューブアレイ91からカーボンナノチューブシート94が引き出され、カーボンナノチューブワイヤ95が形成される。そして、3つのカーボンナノチューブアレイ91から引き出された3本のカーボンナノチューブワイヤ95が、撚り機である共通ワイヤ形成部25eにより撚り合わされることにより、1本の大径のカーボンナノチューブワイヤ95eが形成される。カーボンナノチューブワイヤ95eは、引出機構26の成形体巻き取りロール261に巻き取られる。なお、大径のカーボンナノチューブワイヤ95eは、例えば、3枚の基板92上に個別に設けられた3つのカーボンナノチューブアレイ91から3本のカーボンナノチューブワイヤ95が引き出され、当該3本のカーボンナノチューブワイヤ95が撚り合わされることにより形成されてもよい。
図19は、本発明の第2の実施の形態にかかる成形体製造装置1fの側面図である。成形体製造装置1fでは、基板92を移動する移動機構23(図1参照)に代えて、剥離部材22を移動する移動機構23fが設けられる。成形体製造装置1fでは、剥離部材22が、基台10上に保持されて移動しない基板92の表面921に沿って、図中の右側から左側へと移動する。このように、剥離部材22が基板92に対して相対的に移動することにより、カーボンナノチューブアレイ91が基板92から剥離され、剥離アレイ部93が剥離部移動方向A2へと移動する。
図19に示す例では、移動機構23fは、剥離部材22の上方に固定されたガイドレール233、図示省略のボールネジおよびモータを含むリニアガイド機構である。移動機構23fの構造は様々に変更されてよい。また、図19に示す例では、剥離部材22は、支持部材234を介してガイド部24、ワイヤ形成部25および引出機構26と連結されており、ガイド部24、ワイヤ形成部25および引出機構26と共に移動機構23fにより移動する。これにより、剥離部材22、ガイド部24、ワイヤ形成部25および引出機構26の相対位置が固定されるため、引出機構26による引き出し速度等の制御を簡素化することができる。その結果、カーボンナノチューブ成形体(すなわち、カーボンナノチューブシート94およびカーボンナノチューブワイヤ95)の形成を好適に行うことができる。
上述のカーボンナノチューブ成形体の製造方法、および、成形体製造装置1,1a〜1fでは、様々な変更が可能である。
例えば、図1に示す成形体製造装置1では、剥離部材22のエッジ部に超音波振動が付与されてもよい。これにより、カーボンナノチューブアレイ91の基板92からの剥離を容易とすることができる。また、ガイド部24は必ずしも回転しなくてもよい。ガイド部24は、剥離部材22と一繋がりの部材であってもよい。成形体製造装置1a〜1fにおいても同様である。
成形体製造装置1では、ワイヤ形成部25と引出機構26とが個別に設けられる例を示しているが、ワイヤ形成部25と引出機構26とが1つの機構に含まれていてもよい。当該1つの機構は、例えば、カーボンナノチューブシート94を線状に撚り合わせつつ巻き取る機構である。成形体製造装置1a〜1fにおいても同様である。
上述のカーボンナノチューブ成形体の製造では、引出方向A3と剥離部移動方向A2との成す角度の絶対値は、45度よりも大きくてもよい。また、引出方向A3は、必ずしも幅方向に垂直である必要はなく、側面視において剥離部移動方向A2に対して傾斜しているのであれば、幅方向の一方側に傾斜していてもよい。さらには、カーボンナノチューブアレイ91の嵩密度D(mg/cm)と厚さL(μm)との関係は、D<300×L−0.5であってもよい。
成形体製造装置1により形成されるカーボンナノチューブワイヤ95は、必ずしもカーボンナノチューブ撚糸である必要はなく、撚られていないカーボンナノチューブ無撚糸であってもよい。この場合、ワイヤ形成部25は、例えば、カーボンナノチューブシート94に含まれる複数のカーボンナノチューブ単糸に圧縮空気を吹き付けて結束させる加工(いわゆる、タスラン加工)を施す機構であってもよい。あるいは、ワイヤ形成部25は、複数のカーボンナノチューブ単糸を通過させてカーボンナノチューブワイヤ95を形成する細孔が設けられたダイスであってもよい。成形体製造装置1a〜1fについても同様である。
成形体製造装置1では、ワイヤ形成部25が省略され、剥離アレイ部93と略同じ幅の矩形状のカーボンナノチューブシート94が、カーボンナノチューブ成形体として製造されてもよい。成形体製造装置1a〜1fについても同様である。
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
1,1a〜1f カーボンナノチューブ成形体製造装置
4 伸張機構
21 基板保持部
22 剥離部材
23,23f 移動機構
24 ガイド部
25 ワイヤ形成部
25e 共通ワイヤ形成部
26 引出機構
32 加熱部
51,51a,51b 中間密集部
52,52a,52b 溝部
91 カーボンナノチューブアレイ
92 基板
93 剥離アレイ部
94 カーボンナノチューブシート
95,95e カーボンナノチューブワイヤ
241 ガイド面
A1 基板移動方向
A2 剥離部移動方向
A3 引出方向
S11〜S14,S121,S131,S141,S142 ステップ

Claims (13)

  1. カーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    a)基板上に立設したカーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイを準備する工程と、
    b)前記カーボンナノチューブアレイと前記基板との接合部に剥離部材を当接させた状態で、前記剥離部材を前記基板に対して相対的に移動することにより、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板上から剥離させ、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記基板上から剥離した部位である剥離アレイ部を、前記剥離部材に対して所定の剥離部移動方向に相対的に移動させる工程と、
    c)前記剥離アレイ部を、前記剥離部移動方向に対して傾斜する引出方向へと引き出すことにより、前記剥離アレイ部の前記引出方向に延びるカーボンナノチューブシートを形成する工程と、
    を備え
    前記カーボンナノチューブアレイの嵩密度Dmg/cm と、前記カーボンナノチューブアレイの厚さLμmとの関係が、D≧300×L −0.5 であることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  2. 請求項1に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    前記引出方向と前記剥離部移動方向との成す角度の絶対値が45度以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    前記引出方向が、前記剥離部移動方向から前記剥離アレイ部の下面側に向かって傾斜することを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  4. 請求項1ないし3のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    前記剥離アレイ部または前記カーボンナノチューブシートを加熱する工程をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  5. 請求項1ないし4のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    d)前記c)工程よりも後に、前記カーボンナノチューブシートを幅方向において集めることにより、線状のカーボンナノチューブワイヤを形成する工程をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  6. 請求項5に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    前記d)工程において、前記カーボンナノチューブシートが撚られることにより前記カーボンナノチューブワイヤが形成されることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    前記d)工程よりも後に、前記カーボンナノチューブワイヤを長手方向に伸張する工程をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  8. 請求項5ないし7のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体の製造方法であって、
    前記カーボンナノチューブワイヤを加熱する工程をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体の製造方法。
  9. カーボンナノチューブ成形体製造装置であって、
    カーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイが立設した基板を保持する基板保持部と、
    前記カーボンナノチューブアレイと前記基板との接合部に当接する剥離部材と、
    前記剥離部材を前記基板に対して相対的に移動することにより、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板上から剥離させ、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記基板上から剥離した部位である剥離アレイ部を、前記剥離部材に対して所定の剥離部移動方向に相対的に移動させる移動機構と、
    前記剥離アレイ部を、前記剥離部移動方向に対して傾斜する引出方向へと導くガイド部と、
    前記剥離アレイ部を前記引出方向へと引き出すことにより、前記剥離アレイ部の前記引出方向に延びるカーボンナノチューブシートを形成する引出機構と、
    を備え
    前記ガイド部が、幅方向に延びるとともに前記剥離アレイ部に接するガイド面を備え、
    前記ガイド面が、前記幅方向の中央部において前記幅方向の両端部よりも凹む凹面であることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体製造装置。
  10. カーボンナノチューブ成形体製造装置であって、
    カーボンナノチューブの集合であるカーボンナノチューブアレイが立設した基板を保持する基板保持部と、
    前記カーボンナノチューブアレイと前記基板との接合部に当接する剥離部材と、
    前記剥離部材を前記基板に対して相対的に移動することにより、前記カーボンナノチューブアレイを前記基板上から剥離させ、前記カーボンナノチューブアレイのうち前記基板上から剥離した部位である剥離アレイ部を、前記剥離部材に対して所定の剥離部移動方向に相対的に移動させる移動機構と、
    前記剥離アレイ部を、前記剥離部移動方向に対して傾斜する引出方向へと導くガイド部と、
    前記剥離アレイ部を前記引出方向へと引き出すことにより、前記剥離アレイ部の前記引出方向に延びるカーボンナノチューブシートを形成する引出機構と、
    前記剥離部材と前記ガイド部との間に配置され、前記剥離アレイ部の幅方向の幅よりも小さい幅の溝部を有する中間密集部と、
    を備え、
    前記剥離アレイ部が前記中間密集部の前記溝部を通過することにより、前記剥離アレイ部のカーボンナノチューブが幅方向に集められることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体製造装置。
  11. 請求項9または10に記載のカーボンナノチューブ成形体製造装置であって、
    前記剥離アレイ部または前記カーボンナノチューブシートを加熱する加熱部をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体製造装置。
  12. 請求項9ないし11のいずれか1つに記載のカーボンナノチューブ成形体製造装置であって、
    前記カーボンナノチューブシートを幅方向において集めることにより、線状のカーボンナノチューブワイヤを形成するワイヤ形成部をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体製造装置。
  13. 請求項12に記載のカーボンナノチューブ成形体製造装置であって、
    前記カーボンナノチューブワイヤを加熱する加熱部をさらに備えることを特徴とするカーボンナノチューブ成形体製造装置。
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