JP6947859B2 - 吸収性物品用積層不織布 - Google Patents

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Description

本発明は、吸収性物品用積層不織布に関する。
従来、使い捨ておむつ、生理用ナプキンなどの吸収性物品においては、不織布などが構成部材として用いられている。例えば、特許文献1には、吸収性物品に用いるための不織布として、単一ポリマーの螺旋捲縮加工繊維からなる不織布が記載されている。また特許文献1には、前記螺旋捲縮加工繊維により形成されたスパンボンド層に、メルトブロー層及び第2のスパンボンド層をこの順で積層し、スパンボンド−メルトブロー−スパンボンド繊維で構成される3層構造の不織布を製造することが記載されている。
特表2005−517093号公報
吸収性物品の防漏材として、樹脂フィルムに代えて、柔軟性や肌触り等の観点から、単層又は多層の不織布が使用されることある。ところで、メルトブロー不織布は、厚みをつぶして高充填化することで、耐水圧が向上するため、厚みをつぶして耐水圧を高めたメルトブロー不織布を、吸収性物品の防漏材として使用することが考えられる。しかしながら、従来の一般的なメルトブロー不織布は、高充填化しても、水圧が加わったときに、メルトブロー不織布を構成する繊維がより分けられ、繊維密度が低い箇所が生じることによって、耐水圧を十分に高めることが困難である。本明細書において、高充填化とは、繊維の空間占有率を高めることをいう。
特許文献1のように、メルトブロー層とスパンボンド層とを積層することにより、メルトブロー不織布単独の場合に比して耐水圧を高めることができる。図7に、従来の積層不織布7の模式斜視図を示す。積層不織布7は、スパンボンド層70、メルトブロー層80及びスパンボンド層70がこの順で積層されている、いわゆるSMS不織布である。メルトブロー層80は、該メルトブロー層80を構成するメルトブロー繊維81の密度が小さい箇所を有している場合があり、そのような箇所は、液体が通り易い穴80Aとなってしまう。メルトブロー層80に、スパンボンド層70を積層することにより、スパンボンド層70を構成するスパンボンド繊維71が、メルトブロー層80に存在する前記穴80Aをふさぐことができるようになるため、メルトブロー層80にスパンボンド層70を積層することにより、耐水圧を向上させることができると考えられる。しかし、吸収性物品の防漏材として用いるには、更なる耐水圧の向上が望まれる。
本発明の課題は、耐水圧が向上した積層不織布を提供することにある。
本発明は、メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層不織布である。
本発明の積層不織布は、好ましくは、前記メルトブロー層を構成する繊維は、繊維径が1μm未満である。
本発明の積層不織布は、好ましくは、前記メルトブロー層の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminが2超である。
本発明の積層不織布は、好ましくは充填率が7.7%超である。
好ましい実施形態においては、前記積層不織布は、吸収性物品用積層不織布である。
また本発明は、スパンボンド法によりスパンボンド層を形成する工程と、メルトブロー法によりメルトブロー層を形成する工程とを含み、該メルトブロー層と該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層体を製造する工程と、
前記積層体にエンボス加工を施すエンボス工程とを有する積層不織布の製造方法である。
本発明の積層不織布の製造方法は、好ましくは、前記積層体にカレンダー加工を施すカレンダー工程を有する。
好ましい実施形態においては、前記積層不織布は、吸収性物品用積層不織布である。
本発明の他の特徴は、特許請求の範囲の記載及び以下の説明から明らかとなるであろう。
本発明の積層不織布によれば、耐水圧が向上した積層不織布を提供することができる。
本発明の積層不織布の製造方法によれば、耐水圧が向上した積層不織布を製造することができる。
図1は、本発明の積層不織布の一実施形態を模式的に示す断面図である。 図2は、図1に示す積層不織布の模式平面図である。 図3は、図2に示す積層不織布の斜視図である。 図4は、図1に示すIII部分の拡大図である。 図5(a)は、図1に示す積層不織布を備える吸収性物品の斜視図であり、図5(b)は、図5(a)のVb−Vb線模式断面図である。 図6は、本発明の積層不織布の製造方法の一実施態様を示す概念図である。 図7は、従来の積層不織布の一部分を拡大して示す模式斜視図である。
以下、本発明をその好ましい実施態様に基づき説明する。
本発明の積層不織布は、メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有するものであり、前者は典型的にはスパンボンド−メルトブロー(SM)不織布、後者は典型的にはスパンボンド−メルトブロー−スパンボンド(SMS)不織布である。
本発明の積層不織布は、好ましくは、メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層体にカレンダー加工を施すことによって得られたものである。そして、繊維径の小さいメルトブロー層が高充填化されること、及び以下の条件(1)又は(2)の少なくとも1つを満たすものとなっている。これによって、不織布でありながら耐水圧が大きく向上しており、吸収性物品の防漏材としての使用に適した高水準の耐水性を示す。
条件(1)メルトブロー層の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminが2超である。
条件(2)積層不織布の、繊維の空間占有率である充填率(単に充填率ともいう。)が7.7%超である。
本発明の積層不織布は、前記条件(1)又は(2)の少なくとも1つを満たすものであり、好ましくは前記条件(1)及び(2)を満たす。
以下、前記条件(1)を満たす積層不織布を積層不織布1A、前記条件(2)を満たす積層不織布を積層不織布1Bともいう。
積層不織布1A及び1Bに共通する好ましい構成について、上記の条件(1)及び(2)を満たす図1〜図3に示す積層不織布1を例にして説明する。
図1〜図3に示す積層不織布1は、メルトブロー層20と、該メルトブロー層20の両面に積層されたスパンボンド層10とを有する。メルトブロー層20は、メルトブロー法により形成された層であり、メルトブロー法により紡糸された繊維21により構成されている。スパンボンド層10は、スパンボンド法により形成された層であり、スパンボンド法において紡糸された繊維11により構成されている。以下、メルトブロー層20を構成する、メルトブロー法により紡糸された繊維21をメルトブロー繊維ともいい、スパンボンド層10を構成する、スパンボンド法において紡糸された繊維11をスパンボンド繊維ともいう。一般的には、スパンボンド繊維の繊維径は、メルトブロー繊維の繊維径よりも大きい。
図1及び2中、符号Xは、積層不織布1の平面方向に沿う任意の方向であり、図2中、符号Yは、平面方向においてX方向と直交する方向である。図1中、符号Zは、積層不織布1の厚み方向である。図1及び図2に示すように、スパンボンド層10は、積層不織布1の平面方向の全域に亘ってスパンボンド繊維11が隙間なく存在している必要はなく、間欠に存在していてもよい。
一般に、メルトブロー層を構成する繊維は繊維径が細いため、メルトブロー層は、繊維密度が高く、耐水圧性能を発現するが、強度が弱い。この欠点を補うため、メルトブロー層には、構成する繊維の繊維径が太いスパンボンド層が積層されることが多い。なお、メルトブロー層よりもスパンボンド層を構成する繊維の繊維径は太いため、スパンボンド層は繊維密度が低く、スパンボンド層単体では耐水圧性能に寄与しない。一方、メルトブロー層にスパンボンド層が積層されることにより、メルトブロー層の繊維密度の小さい領域が覆われ、目止めされることにより、耐水圧は向上する。しかしながら、本発明によれば耐水圧向上効果が更に高められる。
積層不織布1は、メルトブロー層20を構成する繊維は、繊維径が1μm未満である。また積層不織布1は、メルトブロー層20と、メルトブロー層20に積層されたスパンボンド層10とを有する積層体2に、例えば、カレンダー加工を施すことによって得られたものである(図6参照)。
メルトブロー不織布としては、繊維径が1μm未満のものも知られている。しかし、吸収性物品に使用されるメルトブロー不織布は、通常、構成繊維の繊維径が1μm超のものである。これに対して、積層不織布1及び積層体2におけるメルトブロー層は、構成繊維の繊維径が1μm未満である。メルトブロー層を構成する繊維の繊維径を1μm未満とすることで、該メルトブロー層の全域で繊維密度が高まる。それにより、該メルトブロー層内に、繊維密度が小さい領域が発生することを抑制できる。そして、メルトブロー層とスパンボンド層とを有する積層体2にカレンダー加工を施すことによって、耐水圧の向上効果が確実に得られる。
耐水圧の向上効果が確実に得られるようにする観点から、積層不織布1及びカレンダー加工前の積層体2のいずれにおいても、メルトブロー層20を構成する繊維21の繊維径は、1μm未満であり、好ましくは0.95μm以下、より好ましくは0.9μm以下であり、更に好ましくは0.85μm以下である。
下限には特に制限はないが、メルトブロー法により安定的に紡糸する観点からは、0.1μm以上とするのが現実的である。
メルトブロー層20を構成する繊維21の繊維径は、好ましくは0.1μm以上1μm未満であり、より好ましくは0.1μm以上0.95μm以下であり、更に好ましくは0.1μm以上0.9μm以下であり、殊更好ましくは0.1μm以上0.85μm以下である。
図6は、積層不織布1の製造方法の一例を示す図である。カレンダー加工を施す対象の積層体2は、図6に示すものに制限されない。例えば、それぞれロール状の原反から繰り出したスパンボンド不織布と、同様にロール状の原反から繰り出したメルトブロー不織布とを積層したものや、ロール状の原反から繰り出したスパンボンド不織布の上にメルトブロー繊維を吹き付けたもの、メルトブロー層の片面のみにスパンボンド層を有するもの等であってもよい。図6に示す製造方法の詳細については後述する。
メルトブロー層を構成する繊維の繊維径は、以下の方法により測定される。
<メルトブロー層を構成する繊維の繊維径の測定方法>
測定対象の積層不織布からランダムに小片サンプル10個を、剃刀を用いて切り出す。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、メルトブロー層のエンボス部を含まない部分に焦点を合わせて観察する。視野にメルトブロー繊維が20〜30本映るように観察倍率を設定し、写真を撮影する。その観察倍率は例えば4500倍以上である。視野内すべての繊維についてそれぞれ1回ずつカウントするように繊維径を測定する。繊維の横断面が、真円である場合、直径を繊維径とし、楕円である場合、長軸の長さを繊維径とし、真円又は楕円の何れでもない場合は、繊維の横断面における横断長が最も長い線の長さを繊維径とする。このようにして測定した、小片サンプル10個それぞれについて20本以上の合計200本以上の繊維の繊維径を測定する。それらの平均値を算出する。平均値は、マイクロメートルスケールにて小数点以下第二位を四捨五入して求め、その値を、メルトブロー層を構成する繊維の繊維径とする。
なお、剃刀を用いて積層不織布から小片サンプルを切り出す際には、積層不織布を液体窒素に浸した後、該積層不織布を液体窒素から取り出してから30秒以内に小片サンプルを切り出す。剃刀は、刃の厚みが0.23mmのものを用いる。積層不織布の切断は、該積層不織布の平面方向に垂直な方向に剃刀を立てて行う。
SEMを用いる<メルトブロー層を構成する繊維の繊維径の測定方法>、<メルトブロー層の最小厚みtmin及び最大厚みtmaxの測定方法>、<スパンボンド繊維の短軸、長軸長さの測定方法>、<判定方法>、<最大の繊維幅及び最小の繊維幅の測定方法>、<スパンボンド層を構成する繊維の繊維径の測定方法>については、液体窒素を必ず用いる。
これら以外の<積層不織布の充填率の測定方法>、<樹脂の密度の測定方法>、<メルトブロー層の充填率の測定方法>、<目付の測定方法>については、必要に応じて液体窒素を用いる。
測定対象の積層不織布が吸収性物品等の製品に組み込まれている場合は、該製品にコールドスプレーを吹き付けて接着剤を固化させ、丁寧に測定対象の積層不織布を剥がして取り出す。積層不織布中の繊維径の測定箇所は、エンボス部を避け、繊維がその形状を保っている部分で行う。なお、この取り出し手段や測定箇所は、本明細書の他の測定にも適用される。また、本明細書の測定で用いられるSEMは、全て、日本電子株式会社製、JCM−6000PLUSである。
一般に、圧縮変形などをさせない場合、通常の熱可塑性繊維の、その繊維の長手方向における繊維径は一定である。本発明においても、圧縮変形されている部分を除き、メルトブロー繊維の繊維径及びスパンボンド繊維の繊維径は、それぞれ、その長手方向において一定である。
一般に、通常の円形(真円)ノズルを用いて紡糸した熱可塑性繊維の断面は、圧縮変形などをさせない場合は、その長手方向にわたって真円状で一定である。本発明においても、圧縮変形されている部分を除き、メルトブロー繊維及びスパンボンド繊維の断面形状は、略真円状であり、それぞれ、繊維の長手方向において一定である。
積層不織布1を、積層体2をカレンダー加工などにより圧縮して製造する場合は、積層不織布1が厚み方向Zにつぶされることになる。それにより、積層不織布1全体としても、メルトブロー層20としても、繊維間距離が減少して高充填化されている。また、メルトブロー層20とスパンボンド層10とが積層された状態で圧縮されることによって、スパンボンド繊維11が微視的に視て多く存在する部分では、スパンボンド繊維11がメルトブロー層20にめり込んだ状態となっている(図1参照)。
積層不織布1A及び1Bは、例えば、このような作用によって、上記条件(1)及び(2)を満たすものとなっている。それによって、スパンボンド層及びメルトブロー層を有していてもカレンダー加工を施していない従来のSMS不織布に比して、大幅に優れた耐水性を示す。以下、積層不織布1A及び1Bについて更に説明する。耐水性は、耐水圧を指標として評価することができ、耐水圧が高い方が耐水性に優れる。
〔積層不織布1A〕
積層不織布1Aは、図1に示すように、メルトブロー層20に、スパンボンド層10を構成するスパンボンド繊維11がめり込んだ状態となっている。それにより、積層不織布1Aは、積層不織布1Aの平面方向で比較した際に、メルトブロー層20の厚みが相対的に大きい部分と小さい部分とを有している。特に、メルトブロー層20上に、スパンボンド繊維11が相対的に密に存在している部分は、スパンボンド繊維11が相対的に疎に存在している部分に比して、メルトブロー層20の厚みが小さくなっている。
積層不織布1Aにおいては、スパンボンド繊維11が部分的にメルトブロー層20にめり込んでいることにより、積層不織布1Aに、スパンボンド繊維11によってメルトブロー層20におけるメルトブロー繊維21の移動が抑制された繊維拘束部4が形成されている。繊維拘束部4において、メルトブロー繊維21の移動が抑制されると、例えば、水圧がメルトブロー層に加わっても、メルトブロー繊維21がより分けられにくくなる。そして、メルトブロー層20に、耐水圧を減少させるような繊維密度の低い部分が生じることが防止される。
積層不織布1Aは、前記条件(1)を具備するため、スパンボンド繊維11がメルトブロー層20にめり込む程度が大きく、繊維拘束部4における、メルトブロー繊維21の移動抑制力が高い。しかも、スパンボンド層10を構成するスパンボンド繊維11の押し付けによって形成された繊維拘束部4は、積層不織布1Aの平面方向に分散した状態に形成されている。
積層不織布1Aによれば、このように、移動の拘束力の強い繊維拘束部4が、平面方向に分散した状態に形成されていることによって、耐水圧が一層確実に向上した積層不織布が得られる。
メルトブロー層20の最小厚みtmin及び最大厚みtmaxは以下の方法により測定される。
<メルトブロー層の最小厚みtmin及び最大厚みtmaxの測定方法>
積層不織布を、その平面方向に離間した複数の箇所において、剃刀により切断する。その際、エンボス部を含まない切断面を得るようにする。各切断箇所における切断面をSEMにて100〜300倍程度の倍率で観察する。各切断面の平面方向中央を中心とした幅400μmの範囲におけるメルトブロー層について、厚みが最小の部分と最大である部分の厚みをそれぞれ測定する。このようにして測定した各切断面におけるメルトブロー層における最小の部分の厚みと最大の部分の厚みをそれぞれ平均して、平均値を算出する。これらの平均値をそれぞれ最小厚みtmin及び最大厚みtmaxとする。観察する切断面は、5か所以上とし、測定範囲の幅が合計2mm以上(400μm×5以上)となるように測定を行う。
メルトブロー層20の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminは、メルトブロー繊維21の移動を抑制して一層耐水性を高める観点から、好ましくは2超であり、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは3以上である。
不織布としての優れた柔軟性等を維持する観点から、好ましくは14以下であり、より好ましくは13.5以下、更に好ましくは10以下である。
それらの両立の観点から、好ましくは2超14以下であり、より好ましくは2.5以上13.5以下、更に好ましくは3以上10以下である。
メルトブロー層20の最小厚みtminは、不織布としての優れた柔軟性等を維持する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。
メルトブロー繊維21の移動を抑制して一層耐水性を高める観点から、好ましくは45μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
それらの両立の観点から、好ましくは5μm以上45μm以下であり、より好ましくは10μm以上20μm以下である。
メルトブロー層20の最大厚みtmaxは、不織布としての優れた柔軟性等を維持する観点から、好ましくは65μm以上であり、より好ましくは95μm以上である。
一層耐水性を高める観点から、好ましくは130μm以下であり、より好ましくは100μm以下である。
それらの両立の観点から、好ましくは65μm以上130μm以下であり、より好ましくは95μm以上100μm以下である。
〔積層不織布1B〕
積層不織布1Bは、メルトブロー層20と、メルトブロー層20に積層されたスパンボンド層10とを有する積層体2に、例えば、カレンダー加工を施すことによって得られたものである。これによって、積層不織布全体としての充填率が高くなっており、前記条件(2)を満たすものとなっている。
積層不織布1Bは、前記条件(2)を満たすことによって、スパンボンド層10を構成するスパンボンド繊維11が、メルトブロー層20に密着する。またメルトブロー層20に、図7に示す穴80Aのような繊維密度が低い部分が存在しても、該部分を効果的に覆うことができ、その部分からの液の透過を阻止する性能に優れる。
積層不織布1Bによれば、前述した構成繊維の繊維径の小さいメルトブロー層20の高充填化による耐水圧向上効果に加えて、スパンボンド繊維11が密着することによる耐水圧の向上効果が得られる。そのため、積層不織布1Bによれば、高い耐水圧が得られる。
積層不織布の充填率は以下の方法により測定される。
<積層不織布の充填率の測定方法>
測定対象の積層不織布から、10cm×10cmの試験片を、剃刀を用いて切り出す。10cm×10cmの試験片を切り出すことができない場合は、できるだけ大きな面積の試験片を切り出す。レーザー厚み計を使用し、50Paの荷重時の厚みを測定する。一枚の試験片から3箇所測定し、平均値を積層不織布の厚みとする。次に、試験片の質量を測り、面積で除した値を積層不織布の目付とする。積層不織布の充填率は、{積層不織布の目付/(積層不織布の厚み×樹脂の密度)}×100によって算出する。
なお、本明細書において用いられるレーザー厚み計は、オムロン株式会社製ZSLD80である。
上記「樹脂の密度」は、下記の方法により測定することができる。
<樹脂の密度の測定方法>
取り出した積層不織布をラボプレス(株式会社東洋精機製作所製、型式P2−30)にて180℃、二段プレス(低圧:5kg/cm3、高圧:150kg/cm3)にて1分間プレスした後に、冷却プレスを1分間することによってフィルムを作製する。その後、空気の混入していないところより10×10cmのサンプルを剃刀を用いて切り出し、質量を測定した後に体積で割ることによって算出した値を樹脂の密度とする。作製したフィルムの体積は、該フィルムの厚みに面積を乗じて算出することができる。フィルムの厚みは、レーザー厚み計により測定することができる。
積層不織布1Bの充填率は、耐水圧を向上させる観点から、好ましくは7.7%超であり、より好ましくは10%以上、更に好ましくは14%以上である。
積層不織布1Bの肌触りの良くする観点から、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下であり、更に好ましくは25%以下である。
それらの両立の観点から好ましくは7.7%超35%以下、より好ましくは10%以上30%以下、更に好ましくは14%以上25%以下である。
積層不織布1A及び1Bの好ましい構成について、図1〜図3に示す積層不織布1を参酌しつつ更に説明する。
積層不織布1は、スパンボンド繊維11の横断面形状が、扁平な形状を有していることが好ましい。具体的には、スパンボンド繊維11は、図4に示すように、該スパンボンド繊維11の長手方向に直交する方向の断面が、長軸と短軸を有する扁平な形状となっている。積層不織布1は、スパンボンド層の繊維アスペクト比が1.2超であることが好ましい。すなわち、ここでいう「扁平」とは、繊維アスペクト比が1.2超であることを意味する。積層不織布1は、スパンボンド層10を構成する一部のスパンボンド繊維11が、繊維アスペクト比が1.2超であれば良いが、全てのスパンボンド繊維11が、繊維アスペクト比が1.2超であることが好ましい。これは、例えば、カレンダー加工を経ることにより、スパンボンド繊維11を押しつぶすことで製造することができる。
スパンボンド繊維11の横断面における長軸の長さLとは、顕微鏡観察によって抽出された該スパンボンド繊維11の横断面の外周上の任意の2点のうち相互間の距離が最長となる2点間を結ぶ線分を長軸として該長軸の長さLをいう(図4参照)。一方、短軸とは、前記のようにして決定した長軸に平行な長辺を有し且つ前記の外周に外接する長方形を描いたときの短辺の長さSをいう(図4参照)。
積層不織布1は、繊維アスペクト比が1.2超であり、スパンボンド繊維11が扁平な形状を有していることにより、該スパンボンド繊維11が、メルトブロー層20の表面をより広い面積で覆うことができる。そのため、メルトブロー層20に、図7に示す穴80Aのような繊維密度が低い部分が存在しても、スパンボンド繊維11が、該部分を効果的に覆うことができ、その部分からの液の透過を阻止する性能に優れる。
積層不織布1は、繊維アスペクト比が1.2超であることにより、前述した構成繊維の繊維径の小さいメルトブロー層20の高充填化による耐水圧向上効果に加えて、偏平なスパンボンド繊維11による上記の効果が奏される。そのため、繊維アスペクト比が1.2超である積層不織布1によれば、高い耐水圧が得られる。
スパンボンド繊維11の繊維アスペクト比は、メルトブロー層の表面をより広い面積で覆う観点から、好ましくは1.2超、より好ましくは1.6以上である。
また不織布としての優れた柔軟性等を維持する観点から、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.2以下である。
それらの両立の観点から、好ましくは1.2超2.5以下、より好ましくは1.6以上2.2以下である。
<スパンボンド繊維の短軸、長軸長さの測定方法>
積層不織布の平面方向に離間した任意の5箇所から、厚み方向に沿う切断面を有する測定片を、剃刀により切り出す。その際、エンボス部を含まない切断面を得るようにする。各測定片それぞれの切断面のエンボスを含まない部分をSEMにて300倍の倍率で観察する。5つの測定片の切断面それぞれから10本以上のスパンボンド繊維11をランダムに選択し、5つの測定片の合計50本以上のスパンボンド繊維に対して前記短軸の長さと前記長軸の長さを測定し、それぞれの平均値を前記短軸の長さSと前記長軸の長さLとする。
スパンボンド繊維11は、メルトブロー層を被覆する面積が大きくなり、耐水圧が向上する観点から、横断面の長軸Lが、積層不織布1の平面方向に沿う方向に配向していることが好ましい。横断面の長軸Lが、積層不織布1の平面方向に沿う方向に配向しているか否かは、以下の方法により判定する。
<判定方法>
積層不織布1の平面方向に離間した任意の5箇所から、厚み方向に沿う切断面を有する測定片を剃刀により切り出す。その際、エンボス部を含まない切断面を得るようにする。各測定片それぞれのエンボス部を含まない切断面をSEMにて300倍の倍率で観察する。5つの測定片の切断面それぞれから10本以上のスパンボンド繊維11をランダムに選択する。それらのスパンボンド繊維11について長軸及び短軸のいずれが積層不織布の平面と平行な方向に近いかを判定する。5つの測定片それぞれについて10本以上の合計50本以上のスパンボンド繊維のうち、長軸の方が短軸より積層不織布の平面と平行な方向に近いスパンボンド繊維の割合を算出する。その割合が75%以上の場合を、横断面の長軸Lが積層不織布1の平面方向に沿う方向に配向していると判定する。積層不織布の平面と平行な方向に近いスパンボンド繊維の割合は、好ましくは75%超、より好ましくは80%以上、更に好ましくは85%以上であり、100%以下である。
積層不織布1のスパンボンド繊維11は、積層不織布1を、カレンダー加工を施して形成したことにより、1本のスパンボンド繊維11の中に強く加圧された部分と弱く加圧された部分とを有する。スパンボンド繊維11における強く加圧された部分は、扁平度が大きくより扁平な横断面形状を有する。スパンボンド繊維11における弱く加圧された部分は、扁平度が小さくより真円に近い横断面形状を有する。すなわち、スパンボンド繊維11は、スパンボンド繊維11の長手方向において繊維幅が異なる部分を有していることが好ましい。ここで、繊維幅とは、繊維の横断面における横断長が最も長い線の長さを意味する。スパンボンド繊維11における、最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比(最大繊維径/最小繊維径)は、好ましくは1.1超、より好ましくは1.4超である。
また局所的な加圧を避け、その部分を柔らかく保ち、不織布の肌触りを良好に保つため、好ましくは2.5以下、より好ましくは2以下である。
また十分な加圧を施すため、好ましくは1.1超2.5以下であり、より好ましくは1.4超2以下である。
カレンダー加工を施す前、即ち、紡糸されたときから繊維の横断面形状が扁平な形状である場合、該繊維の長手方向において繊維幅が大きく変化することはなく、最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比が、上述の範囲内とはならない。
スパンボンド繊維11の最大の繊維幅及び最小の繊維幅は以下のようにして測定する。<最大の繊維幅及び最小の繊維幅の測定方法>
積層不織布の平面方向に離間した任意の5箇所から、厚み方向に沿う切断面を有する測定片を、剃刀により切り出す。その際、エンボス部を含まない切断面を得るようにする。各測定片それぞれの切断面のエンボスを含まない部分をSEMにて300倍の倍率で観察する。5つの測定片の切断面それぞれから10本以上のスパンボンド繊維11をランダムに選択し、5つの測定片の合計50本以上のスパンボンド繊維に対して前記繊維の横断面における横断長が最も長い線の長さを測定し、上位5本の平均値を最大の繊維幅、下位5本の平均値を最小の繊維幅とする。最大の繊維幅を最小の繊維幅で除した値の小数点以下第二位を四捨五入し、最大の繊維幅に対する最小の繊維幅の比とする。
積層不織布1のメルトブロー層20は、耐水圧を向上させる観点から、目が詰まっており、繊維間の空隙が小さいことが好ましい。具体的には、単位空間当たりの充填率や、単位面積当たりの質量である目付が高いことが好ましい。
メルトブロー層20の充填率は、耐水圧を向上させる観点から、好ましくは4.1%超、より好ましくは5%以上、更に好ましくは6%以上である。
不織布としての優れた柔軟性等を維持する観点から、好ましくは11%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは9%以下である。
それらの両立の観点から、好ましくは4.1%超11%以下、より好ましくは5%以上10%以下、更に好ましくは6%以上9%以下である。
<メルトブロー層の充填率の測定方法>
積層不織布から10cm×10cmの試験片を、剃刀を用いて切り出す。10cm×10cmの試験片を切り出すことができない場合はできるだけ大きな面積の試験片を切り出す。試験片から手やピンセットなどでスパンボンド層を丁寧に引き剥がしてメルトブロー層を取り出す。レーザー厚み計を使用し、50Paの荷重時の厚みを測定し、平均値をメルトブロー層の厚みとする。次に、メルトブロー層の重量を測り、積層不織布のシート面積で除した値をメルトブロー層の目付とする。メルトブロー層の充填率は、{メルトブロー層の目付/(メルトブロー層の厚み×樹脂の密度)}×100によって算出する。
上記「樹脂の密度」は、上述の<樹脂の密度の測定方法>と同じ手段を用いて測定する。
メルトブロー層20の目付は、好ましくは5g/m以上、より好ましくは7.5g/m以上である。
また好ましくは15g/m以下、より好ましくは12.5g/m以下である。
また好ましくは5g/m以上15g/m以下、より好ましくは7.5g/m以上12.5g/m以下である。
目付は以下の方法により測定される。
<目付の測定方法>
積層不織布の目付測定の場合、測定対象の積層不織布から、10cm×10cmの試験片を、剃刀を用いて切り出す。10cm×10cmの試験片を切り出すことができない場合は、できるだけ大きな面積の試験片を切り出す。次に、試験片の質量を測り、面積で除した値を積層不織布の目付とする。
メルトブロー層又はスパンボンド層の目付測定の場合、積層不織布から、10cm×10cmの試験片を、剃刀を用いて切り出す。10cm×10cmの試験片を切り出すことができない場合は、できるだけ大きな面積の試験片を切り出す。試験片から手やピンセットなどでメルトブロー層又はスパンボンド層を丁寧に取り出す。そして、試験片の質量を測定し、積層不織布のシート面積で除した値をメルトブロー層又はスパンボンド層の目付とする。
積層不織布1A及び1Bの耐水性の向上の観点から、スパンボンド繊維11の繊維径は、好ましくは35μm以下、より好ましくは30μm以下である。
またスパンボンド法により安定的に紡糸する観点から、16μm以上とするのが現実的である。
それらの両立の観点から、好ましくは16μm以上35μm以下、より好ましくは16μm以上30μm以下である。スパンボンド繊維11の繊維径は、スパンボンド繊維11の横断面が長軸及び短軸を有する場合は、該長軸の長さを意味する。
積層不織布1A及び1Bの耐水性の向上の観点から、スパンボンド繊維11の繊維径は、カレンダー加工などによる圧縮前においては、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下である。
またスパンボンド法により安定的に紡糸する観点から、10μm以上とするのが現実的である。
それらの両立の観点から、好ましくは10μm以上30μm以下、より好ましくは10μm以上27μm以下である。
<スパンボンド層を構成する繊維の繊維径の測定方法>
測定対象の積層不織布から小片サンプル3個を、剃刀を用いて切り出す。SEMを用いて、スパンボンド層のエンボス部を含まない部分に焦点を合わせる。視野に5〜10本の繊維が映るように観察倍率を例えば300〜500倍に拡大した写真を撮影し、視野内すべての繊維について、繊維1本毎に繊維径の最大値と最小値を測定する。少なくとも15本以上の最大値と最小値を含めた繊維径の平均値を算出し、マイクロメートルスケールにて小数点以下第一位を四捨五入し算出することで求められるものをスパンボンド層を構成する繊維の繊維径とする。
積層不織布1の耐水圧は、吸収性物品の防漏材として使用した際にも該防漏材を介して液の漏れ出しを生じないようにする観点から、好ましくは1600mmAq.以上、より好ましくは1800mmAq.以上である。
特に制限されるものではないが、5000mmAq.以下とするのが現実的である。
それらの両立の観点から、好ましくは1600mmAq.以上5000mmAq.以下、より好ましくは1800mmAq.以上5000mmAq.以下である。
耐水圧は、以下の方法により測定することができる。
<耐水圧の測定方法>
測定対象の積層不織布を用いて、JIS L1092−1998の耐水度試験(静水圧法)A法(低水圧法)に準拠して測定する。耐水度試験の際、試験片の上にナイロンメッシュシート(ポアサイズ:133μm、厚み:121μm、倉敷紡績株式会社製、DO−ML−20)を重ねて測定を行う。なお、試験片の大きさが規定に満たない場合は、採取できる面積の試験片に水が当たるよう測定面積を縮小した装置を組み、同様の方法で耐水圧を測定することができる。測定は3枚の積層不織布について行い、その平均値を積層不織布の耐水圧とする。
本発明の積層不織布は、吸収性物品用積層不織布として好適に用いられる。吸収性物品とは、主として尿、経血等の身体から排泄される体液を吸収保持するために用いられるものである。吸収性物品には、例えば使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、パンティライナー等が包含されるが、これらに限定されるものではなく、人体から排出される液の吸収に用いられる物品を広く包含する。
吸収性物品は、典型的には、表面材と、裏面材と、該表面材及び該裏面材の間に介在配置された液保持性の吸収体とを具備している。
表面材は、典型的には液透過性である。
裏面剤は、典型的には液難透過性又は撥水性であるが、液透過性であってもよい。
本発明の積層不織布は、斯かる吸収性物品の防漏材に特に適している。吸収性物品の防漏材としては、裏面材の他、立体ギャザー形成用のシート材等が挙げられる。
図5に、本発明の積層不織布を有する吸収性物品の一例である吸収性物品3を示す。図5(b)には、積層不織布1の厚みを誇張して示している。吸収性物品3は、肌対向面と、該肌対向面とは逆側の非肌対向面を有する。吸収性物品3は、液透過性の表面材32と表面材32の非肌対向面側に配された液保持性の吸収体34とを備えている。吸収体34における非肌対向面側に、積層不織布1が配されている。積層不織布1は、吸収体34が吸収した液体の、吸収性物品の非肌対向面からの漏れを防止する裏面材として用いられている。
本明細書において、「肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材(例えば吸収体34)における、吸収性物品の着用時に着用者の肌側に向けられる面、すなわち相対的に着用者の肌に近い側であり、「非肌対向面」は、吸収性物品又はその構成部材における、吸収性物品の着用時に肌側とは反対側、すなわち相対的に着用者の肌から遠い側に向けられる面である。なお、ここでいう「着用時」は、通常の適正な着用位置、すなわち当該吸収性物品の正しい着用位置が維持された状態を意味する。
吸収性物品3は、吸収体34よりも非肌対向面側に、耐水圧の高い積層不織布1を有していることにより、吸収体34に吸収された液の外部への漏れが効果的に防止される。加えて、積層不織布1が不織布であることにより、吸収性物品3の外面の手触りや見た目も向上している。積層不織布1は、スパンボンド層10を非肌対向面に向けることが好ましい。積層不織布1がSM不織布である場合は、メルトブロー層20を肌対向面側に配し、スパンボンド層10を非肌対向面側に配することが好ましい。積層不織布1がSMS不織布である場合は、いずれのスパンボンド層10を非肌対向面に向けてもよい。すなわち、メルトブロー層20の両面にスパンボンド層10を有する場合を含めて、構成繊維の繊維径が1μm未満で、強度がスパンボンド繊維に比して一般に低いメルトブロー層を、スパンボンド層10よりも吸収体34側に配することが、積層不織布1の摩擦による破損等を防止する観点から好ましい。
図5に示す吸収性物品3は、いわゆる展開型のおむつである。その長手方向の中央部に股下部Aを有し、該股下部Aの前後に延在する両部位のうちの一方の部位が背側部Bであり、他方の部位が腹側部Cである。背側部Bの両側縁部にファスニングテープ35を有する。腹側部Cの非肌対向面(着用時に着用者の肌側とは反対側に向く面)に、ファスニングテープ35を止着するランディングゾーン36が設けられている。ファスニングテープ35は、背側部Bの幅方向の両側部に存するサイドフラップ部31に固定されている。吸収性物品3は、長手方向の両側部に、立体ギャザー37を有している。サイドフラップ部31は、立体ギャザー37形成用のシート38と積層不織布1との積層体からなる。立体ギャザー37形成用のシート38は、吸収性物品3の長手方向に延びる糸状又は帯状の弾性部材62を有している。また、吸収性物品3の幅方向の外側縁部側に、複数本の糸状の弾性部材63が、長手方向に沿って、積層不織布1と立体ギャザー37形成用のシート38との間に固定されている。
吸収性物品は、パンツ型のおむつであってもよい。パンツ型のおむつは、典型的には、その長手方向の中央部に股下部を有し、該股下部の前後に延在する両部位のうちの一方の部位である背側部と、他方の部位である腹側部とを有する。背側部の両側部と腹側部の両側部とが互いに接合されて、一対のサイドシール部が形成されている。そして、着用者の胴が通されるウエスト開口部、及び着用者の下肢が通される一対のレッグ開口部が形成されている。
次に、本発明の積層不織布の製造方法について、その好ましい一実施態様に基づき図面を参照しながら説明する。図6には、本発明の積層不織布の製造方法の一実施態様として、上述した積層不織布1を製造する方法の一例の概略が示されている。本実施態様の積層不織布1の製造方法は、メルトブロー層20の片面又は両面にスパンボンド層10が積層された積層体2を製造する工程と、積層体2にエンボス加工を施すエンボス工程と、積層体2にカレンダー加工を施すカレンダー工程とを有している(図6参照)。本発明の積層不織布の製造方法において、エンボス工程及びカレンダー工程はどちらを先に行ってもよく、エンボス工程の後にカレンダー工程を行ってもよいし、カレンダー工程の後にエンボス工程を行ってもよい。本実施態様においては、エンボス工程の後にカレンダー工程を行っている。
積層体2を製造する工程は、スパンボンド法によりスパンボンド層10を形成する工程と、メルトブロー法によりメルトブロー層20を形成する工程とを含んでいる。
本実施態様の製造方法では、まず、搬送コンベア(不図示)の上方に配置された第1紡糸ヘッド51の紡糸口金から、スパンボンド繊維11を紡出し、搬送コンベア上にウェブ状に堆積させてスパンボンド層10を形成する。次いで、形成されたスパンボンド層10を、搬送コンベア(不図示)にて符号MDで示す一方向(MD方向。Machine Direction、搬送方向を意味する。)に搬送する。その搬送途中で、搬送コンベア(不図示)の上方に配置された第2紡糸ヘッド52の紡糸口金からメルトブロー繊維21を紡出し、スパンボンド層10上に直接堆積させる。これにより、スパンボンド層10上にメルトブロー層20を形成し、スパンボンド−メルトブロー積層体2Aを形成する。次いで、引き続きスパンボンド−メルトブロー積層体2Aを搬送コンベア(不図示)にてMD方向に搬送する。その搬送途中で、搬送コンベア(不図示)の上方に配置された第3紡糸ヘッド53の紡糸口金からスパンボンド繊維11を紡出し、メルトブロー層20上に直接堆積させる。これにより、メルトブロー層20上にスパンボンド層10を形成し、スパンボンド−メルトブロー−スパンボンド積層体2(以下、積層体2ともいう)を形成する。
次に、エンボス工程を行う。具体的には、積層体2をMD方向に搬送して、互いに対向するエンボスロール54及びアンビルロール55間に供給し、積層体2にエンボス加工を施す。エンボス工程は、積層体2に含まれる繊維、即ち、スパンボンド繊維11及びメルトブロー繊維21の融点以上の温度に加熱した状態で行うことが好ましい。積層体2を加熱した状態でエンボス工程を行うことにより、積層体2の各層の間を結合しているエンボス部が該積層体2に形成され、積層体2の各層が一体化し、積層体2を不織布とすることができる。
次に、カレンダー工程を行う。具体的には、エンボス加工を施した積層体2をMD方向に搬送して、一対のアンビルロール56,57間に供給し、積層体2にカレンダー加工を施す。
カレンダー加工に用いるアンビルロール56,57は、典型的には、表面が平滑なものである。
カレンダー工程は、積層体2に含まれる繊維、即ち、スパンボンド繊維11及びメルトブロー繊維21の融点未満の温度で行うことが好ましい。
積層体2は、カレンダー加工が施されることにより、積層体2の厚み方向につぶされ、スパンボンド層10がメルトブロー層20にめり込んだ状態となり、積層不織布1が製造される。
エンボス工程及びカレンダー工程は順不同で行うことができるが、積層不織布1の積層構造を安定化させる観点から、エンボス工程を先に行うことが好ましい。
本実施態様の製造方法によれば、耐水圧が大幅に向上した積層不織布1を容易に製造することができる。
通常、メルトブロー法又はスパンボンド法では樹脂を溶融し紡糸しているため、形成された直後のメルトブロー層20又はスパンボンド層10は、室温よりも高い温度である場合がある。本実施態様では、積層体2の粗熱をとった後に該積層体2にカレンダー加工を施してもよいし、積層体2の粗熱をとる前に該積層体2にカレンダー加工を施してもよい。本実施形態では、紡糸ラインとは連続していないオフラインでカレンダー加工を行っているため、粗熱をとった後にカレンダー加工を施している。粗熱をとる手段としては、例えば、積層体2を該積層体2の温度よりも低い温度条件下に放置することや、積層体2に空気流を吹きかけること、紡糸ラインとは連続していないオフラインでの加工等が挙げられる。また、粗熱をとる前にカレンダー加工を施した場合、柔らかく潰れやすい状態の積層体2にカレンダー加工を施すことができるため、積層不織布1の充填率をより高くすることができ、耐水圧を更に向上させることができる。
カレンダー工程における線圧は、スパンボンド層10をメルトブロー層20にめり込ませる観点から、好ましくは2N/mm以上、より好ましくは4N/mm以上、更に好ましくは10N/mm以上である。
スパンボンド繊維11がメルトブロー層20を貫通しメルトブロー層20に穴が開いてしまうことを防ぐ観点から、好ましくは40N/mm以下、より好ましくは30N/mm以下、更に好ましくは25N/mm以下である。
それらの両立の観点から、好ましくは2N/mm以上40N/mm以下、より好ましくは4N/mm以上30N/mm以下、更に好ましくは10N/mm以上25N/mm以下である。
なお、本発明の積層不織布の製造方法は、積層体2を製造する工程、エンボス工程及びカレンダー工程のほかに、一対の平滑ロールを用いたニップ工程を有していてもよい。ニップ工程は、カレンダー工程と異なり、積層体又は積層不織布を圧縮することを目的としていない。そのため、一般的には、ニップ工程の線圧は1.5N/mm程度であり、カレンダー工程の線圧よりも小さい。
線圧は以下の方法により測定される。
<線圧の測定方法>
カレンダー工程又はニップ工程で用いる一対のロール間に圧力測定フィルム(富士フィルム株式会社製、プレスケール)を導紙する。圧力測定フィルムの色を標準色見本と比べて、線圧を読み取る。圧力測定フィルムの色が標準色見本の上限となっている場合は、測定可能圧力範囲が高い圧力測定フィルムを選択し、再度測定を行う。
スパンボンド層10及びメルトブロー層20を製造するための原料樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ乳酸、ポリウレタン、SIS、SEPS等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
スパンボンド層10を製造するための原料樹脂と、メルトブロー層20を製造するための原料樹脂とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
スパンボンド繊維11及びメルトブロー繊維21の横断面形状としては、円形、三角形、四角形、五角形以上の多角形、星形等が挙げられ、これらの中でも、円形が好ましい。ここで、円形とは、真円形のみならず楕円形を含む。スパンボンド繊維11の横断面形状とメルトブロー繊維21の横断面形状とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
上述した実施態様の製造方法においては、図6に示すように、スパンボンド層10及びメルトブロー層20がこの順で積層された積層体2Aを製造した後、積層体2Aにおけるメルトブロー層20上にスパンボンド繊維11を直接堆積させてスパンボンド層10を形成して、エンボス加工を施す対象の積層体2を製造している。そのため、製造される積層不織布1は、エンボス部として、メルトブロー層20と、該メルトブロー層20の両面に積層されたスパンボンド層10との間を結合するエンボス部を有する一方、メルトブロー層20又はスパンボンド層10のみを加圧圧縮して形成された層内エンボス部を有していない。すなわち、積層不織布1は、メルトブロー層20と、該メルトブロー層20の片面又は両面に積層されたスパンボンド層10との間を結合しているエンボス部のみを備えている。
層内エンボス部について説明すると、通常、スパンボンド不織布は、スパンボンド繊維を紡糸し、スパンボンド層を形成した後に、該スパンボンド層にエンボス加工、通常、ヒートエンボス加工を施すことにより製造される。したがって、通常、スパンボンド層は、該スパンボンド層内の繊維どうしを結合している層内エンボス部を有している。
本発明の積層不織布は、そのような層内エンボス部を有さずに、メルトブロー層20と該メルトブロー層20の片側又は両側に位置するスパンボンド層10との間を結合しているエンボス部のみを有していることが、不織布としての優れた柔軟性等を維持する観点から好ましい。
メルトブロー層20とスパンボンド層10との間を結合しているエンボス部のみを有する積層不織布の製造方法は、上述した実施態様に制限されず、例えば、以下の方法であっても良い。まず、メルトブロー層20を形成した後、該メルトブロー層20上に、スパンボンド繊維11を直接堆積させてスパンボンド層10を形成し、メルトブロー層20及びスパンボンド層10がこの順で積層体2Aを製造する。次に、製造された積層体2Aをひっくり返す。その後、積層体2Aにおけるメルトブロー層20上にスパンボンド層10を形成し、以降の工程を上述した実施態様と同様に行い、積層不織布1を製造する。
以上のように、積層体を製造する前記工程は、前記メルトブロー層及び前記スパンボンド層のうち何れか一方の層を形成した後、該一方の層上に、他方の層を形成させる繊維を直接堆積させて、該他方の層を形成する工程を備えることが生産性の観点から好ましい。
以上、本発明の積層不織布を、その好ましい一実施形態に基づいて説明してきたが、本発明の積層不織布は、上述した実施形態に限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態の積層不織布1は、メルトブロー層20の両面にスパンボンド層10が積層されているが、メルトブロー層20の片面にのみスパンボンド層10が積層されていてもよい。
また、上述した実施態様の製造方法では、スパンボンド層10、メルトブロー層20及びスパンボンド層10をこの順で形成し、3層構造の積層体2を形成しているが、最後のスパンボンド層10を形成せずに、スパンボンド−メルトブロー積層体2Aに対し、エンボス工程及びカレンダー工程を行ってもよい。この場合、メルトブロー層20の片面にスパンボンド層10が積層されている積層不織布が製造される。スパンボンド−メルトブロー積層体2Aは、スパンボンド層10を形成した後、該スパンボンド層10上に、メルトブロー繊維21を直接堆積させてメルトブロー層20を形成して製造してもよいし、メルトブロー層20を形成した後、該メルトブロー層20上に、スパンボンド繊維11を直接堆積させてスパンボンド層10を形成して製造してもよい。
また、上述した実施態様では、同一の製造ラインで、スパンボンド層10及びメルトブロー層20を形成しているが、これに代えて、スパンボンド層10及びメルトブロー層20を別の製造ラインで形成してもよい。具体的には、別の製造ラインで予め作成しておいたスパンボンド層10の上に、メルトブロー繊維21をウェブ状に堆積させてメルトブロー層20を形成してもよい。また、スパンボンド層10及びメルトブロー層20をそれぞれ、別の製造ラインで予め作成しておき、該スパンボンド層10及びメルトブロー層20を積層して積層体2を形成してもよい。またメルトブロー層20の片面のみにスパンボンド層10が積層された積層体2にカレンダー加工を施し、次いで、その積層体の反対側面にスパンボンド層10を積層して3層構造の積層不織布を製造してもよい。
本発明の吸収性物品の製造方法の好ましい実施態様は、表面材32、吸収体34、積層不織布1を厚み方向でこの順になるように積層する工程を有する。その積層不織布1は、本発明の積層不織布の製造方法により製造する。またその積層不織布1は、吸収体34側に向けられる面側とは反対側の面に、スパンボンド層10が位置するように配する。この積層工程においては、表面材32、吸収体34及び積層不織布1が、肌対向面側から非肌対向面側に向かってこの順に積層された吸収性物品が最終的に製造されればよく、表面材32、吸収体34及び積層不織布1を積層する順番に特に制限はない。例えば、表面材32と吸収体34を積層した後に積層不織布1を積層してもよく、吸収体34と積層不織布1を積層した後に表面材32を積層してもよく、表面材32、吸収体34及び積層不織布13を同時に積層してもよい。
本発明は更に以下の付記を開示する。
<1>
メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層不織布であって、
前記メルトブロー層を構成する繊維は、繊維径が1μm未満であり、
以下の(1)及び(2)の少なくとも1つを満たす積層不織布。
(1)前記メルトブロー層の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminが2超である。
(2)前記積層不織布の充填率が7.7%超である。
<2>
メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層不織布であって、
前記メルトブロー層を構成する繊維は、繊維径が1μm未満であり、
前記メルトブロー層の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminが2超である、積層不織布。
<3>
メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層不織布であって、
前記メルトブロー層を構成する繊維は、繊維径が1μm未満であり、
前記積層不織布の充填率が7.7%超である、積層不織布。
<4>
スパンボンド層を構成する繊維の繊維径は、メルトブロー層を構成する繊維の繊維径よりも大きい、前記<1>〜前記<3>の何れか1に記載の積層不織布。
<5>
前記スパンボンド層を構成する繊維は、該繊維の横断面における繊維アスペクト比が1.2超である、前記<1>〜前記<4>の何れか1に記載の積層不織布。
<6>
前記メルトブロー層を構成する繊維の繊維径は、0.1μm以上1μm未満である、前記<1>〜前記<5>の何れか1に記載の積層不織布。
<7>
前記メルトブロー層を構成する繊維の繊維径は、0.1μm以上0.85μm以下である、前記<1>〜前記<6>の何れか1に記載の積層不織布。
<8>
前記メルトブロー層の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminは、2超14以下である、前記<1>〜前記<7>の何れか1に記載の積層不織布。
<9>
前記メルトブロー層の最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminは、3以上10以下、前記<1>〜前記<8>の何れか1に記載の積層不織布。
<10>
前記積層不織布の充填率は、7.7%超35%以下であり、好ましくは10%以上、より好ましくは14%以上である、前記<1>〜前記<9>の何れか1に記載の積層不織布。
<11>
前記スパンボンド層を構成する繊維は、該繊維の横断面における繊維アスペクト比が1.2超2.5以下である、前記<1>〜前記<10>の何れか1に記載の積層不織布。
<12>
前記スパンボンド層を構成する繊維は、最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比(最大繊維径/最小繊維径)が、1.1超2.5以下である、前記<1>〜前記<11>の何れか1に記載の積層不織布。
<13>
前記積層不織布の充填率が35%以下、好ましくは30%以下であり、より好ましくは25%以下である、前記<1>〜前記<12>の何れか1に記載の積層不織布。
<14>
前記積層不織布の充填率は、14%以上25%以下である、前記<1>〜前記<13>の何れか1に記載の積層不織布。
<15>
前記スパンボンド層を構成する繊維のうち、該繊維の横断面における長軸の方が短軸より前記積層不織布の平面と平行な方向に近い繊維の割合が、75%以上100%以下、好ましくは75%超100%以下、より好ましくは80%以上100%以下、更に好ましくは85%以上100%以下である、前記<1>〜前記<14>の何れか1に記載の積層不織布。
<16>
前記メルトブロー層の充填率が4.1%超11%以下である、前記<1>〜前記<15>の何れか1に記載の積層不織布。
<17>
前記メルトブロー層の充填率は、6%以上9%以下である、前記<1>〜前記<16>の何れか1に記載の積層不織布。
<18>
前記スパンボンド層を構成する繊維の繊維径は、16μm以上35μm以下である、前記<1>〜前記<17>の何れか1に記載の積層不織布。
<19>
前記積層不織布の耐水圧は、1600mmAq.以上5000mmAq.以下である、前記<1>〜前記<18>の何れか1に記載の積層不織布。
<20>
前記積層不織布は、前記メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層された前記スパンボンド層との間を結合しているエンボス部のみを備える、前記<1>〜前記<19>の何れか1に記載の積層不織布。
<21>
前記スパンボンド層を構成する繊維の横断面形状及び前記メルトブロー層を構成する繊維の横断面形状の何れか一方又は両方が、円形である、前記<1>〜前記<20>の何れか1に記載の積層不織布。
<22>
前記積層不織布が吸収性物品用積層不織布である、前記<1>〜前記<21>の何れか1に記載の積層不織布。
<23>
肌対向面側と非肌対向面側を有し、
表面材と、該表面材の非肌対向面側に配された吸収体とを備え、
前記吸収体における非肌対向面側に、前記<1>〜前記<22>の何れか1に記載の積層不織布が配されており、
前記積層不織布は、前記スパンボンド層を非肌対向面側に向けて配されている、吸収性物品。
<24>
スパンボンド法によりスパンボンド層を形成する工程と、メルトブロー法によりメルトブロー層を形成する工程とを含み、該メルトブロー層と該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層体を製造する工程と、
前記積層体にエンボス加工を施すエンボス工程と、
前記積層体にカレンダー加工を施すカレンダー工程とを有する、積層不織布の製造方法。
<25>
前記エンボス工程の後に前記カレンダー工程を有する、前記<24>に記載の積層不織布の製造方法。
<26>
前記カレンダー工程において、線圧2N/mm以上40N/mm以下でカレンダー加工を行う、前記<24>又は前記<25>に記載の積層不織布の製造方法。
<27>
前記カレンダー工程における線圧は、10N/mm以上25N/mm以下である、前記<24>〜前記<26>の何れか1に記載の積層不織布の製造方法。
<28>
前記積層体を製造する前記工程は、前記メルトブロー層及び前記スパンボンド層のうち何れか一方の層を形成した後、該一方の層上に、他方の層を形成させる繊維を直接堆積させて、該他方の層を形成する工程を備える、前記<24>〜前記<27>の何れか1に記載の積層不織布の製造方法。
<29>
前記カレンダー加工に用いるアンビルロールは、表面が平滑なものである、前記<24>〜前記<28>の何れか1に記載の積層不織布の製造方法。
<30>
前記カレンダー工程は、前記積層体に含まれる繊維、即ち、スパンボンド繊維及びメルトブロー繊維の融点未満の温度で行う、前記<24>〜前記<29>の何れか1に記載の積層不織布の製造方法。
<31>
前記積層不織布が吸収性物品用積層不織布である、前記<24>〜前記<30>の何れか1に記載の積層不織布の製造方法。
<32>
表面材、吸収体、積層不織布を厚み方向でこの順になるように積層する工程を有し、
前記積層不織布は、請求項24〜31の何れか1項に記載の積層不織布の製造方法により製造し、且つ該積層不織布は、前記吸収体側に向けられる面側とは反対側の面にスパンボンド層が位置するように積層する、吸収性物品の製造方法。
以下、実施例を基に本発明を更に詳述するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
スパンボンド層(S)を形成した後、該スパンボンド層(S)上にメルトブロー繊維を直接堆積させて、メルトブロー層(M)を形成した。そして形成されたメルトブロー層(M)上に、スパンボンド繊維を直接堆積させて、スパンボンド層(S)を形成した。このようにして、スパンボンド層(S)、メルトブロー層(M)及びスパンボンド層(S)がこの順で積層された積層体を製造した。次いで、この積層体にエンボス加工を施した後に、カレンダー加工を施し、実施例1の積層不織布を得た。実施例1の積層不織布は、層内エンボス部を有しておらず、メルトブロー層と、該メルトブロー層の両面に積層されたスパンボンド層との間を結合しているエンボス部のみを有している。2層のスパンボンド層は、いずれも、ポリプロピレン樹脂からなる繊維から構成され、メルトブロー層は、ポリプロピレン樹脂からなる繊維から構成されている。スパンボンド層にカレンダー加工を施したときの線圧及び実施例1の各部の寸法は、表1に示す通りである。
Figure 0006947859
(実施例2〜5)
カレンダー加工を施したときの線圧を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層不織布を製造した。実施例2〜6の積層不織布は、層内エンボス部を有しておらず、メルトブロー層と、該メルトブロー層の両面に積層されたスパンボンド層との間を結合しているエンボス部のみを有している。
(実施例6)
スパンボンド層を構成する不織布の目付及びカレンダー加工を施したときの線圧を、表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層不織布を製造した。実施例6の積層不織布は、層内エンボス部を有しておらず、メルトブロー層と、該メルトブロー層の両面に積層されたスパンボンド層との間を結合しているエンボス部のみを有している。
(実施例7)
カレンダー加工を施したときの線圧、及びメルトブロー繊維の繊維径を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層不織布を製造した。実施例7の積層不織布は、層内エンボス部を有しておらず、メルトブロー層と、該メルトブロー層の両面に積層されたスパンボンド層との間を結合しているエンボス部のみを有している。
(比較例1)
メルトブロー不織布にカレンダー加工を施し、比較例1のメルトブロー不織布を製造した。比較例1のメルトブロー不織布の各部の寸法は表1に示す通りである。
(比較例2)
カレンダー加工を施さない以外は、比較例1と同様にして、比較例2のメルトブロー不織布を製造した。比較例2のメルトブロー不織布の各部の寸法は、表1に示す通りである。
(比較例3)
カレンダー加工を施さない以外は、実施例1と同様にして、比較例3の積層不織布を製造した。
(比較例4,6及び8)
カレンダー加工を施したときの線圧、及びメルトブロー繊維の繊維径を表1に示すように変更した以外は、比較例1と同様にして比較例4,6及び8のメルトブロー不織布を製造した。
(比較例5)
カレンダー加工を施したときの線圧、及びメルトブロー繊維の繊維径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例5の積層不織布を製造した。
(比較例7)
メルトブロー繊維の繊維径を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例7の積層不織布を製造した。
(比較例9)
カレンダー加工を施したときの線圧を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして比較例9の積層不織布を製造した。
実施例1〜7並びに比較例1〜9で得られた不織布について、上述の方法により耐水圧を測定し、また以下の方法により肌触りを評価した。耐水圧の測定結果及び肌触りの評価結果は、表1に示す通りである。
<肌触りの評価方法>
KES圧縮試験機(カトーテック株式会社製KES FB−3)を用い、積層不織布について、端子のスピードを0.1mm/sに設定した以外は通常モードで5kPaまでの圧縮を行い、圧縮剛性であるLCを測定した。LCは値が1に近いほど硬いことを示すため、値が小さいほど肌触りが良いことを示す。
表1に示すように、実施例1〜7の積層不織布は、耐水圧が1600mmAq.以上であり、カレンダー加工を施していない比較例3の積層不織布や、比較例1,2,4,6,8の単層のメルトブロー不織布に比して、耐水圧が大幅に向上している。
カレンダー加工を施していない比較例3の積層不織布は、前記比tmax/tminは1.3、線圧の低い条件でカレンダー加工を行った比較例9の積層不織布は前記比tmax/tminは2.0であるのに対して、実施例1〜6の積層不織布の比tmax/tminは2超であり、これが本発明の積層不織布の耐水圧の向上に寄与するものと考えられる。
また、カレンダー加工を施していない比較例3の積層不織布の充填率は、6.7であるのに対して実施例1〜6の積層不織布の充填率は10以上であり、これが本発明の積層不織布の耐水圧の向上に寄与するものと考えられる。
比較例5と比較例6との対比及び比較例7と比較例8との対比並びに実施例7と比較例4との対比から、メルトブロー繊維の繊維径が1μm未満の場合は、スパンボンド層とメルトブロー層とを積層してカレンダー加工を施すことによる耐水圧の向上効果が認められることが判る。また、比較例7、比較例5、実施例7及び実施例1は、この順に、メルトブロー層の繊維の繊維径が1.1μm、1.0μm、0.9μm及び0.8μmであるところ、繊維径が1未満になると耐水圧が急激に向上する。
これらの結果から、本発明の積層不織布が、高い耐水圧を発現するには、メルトブロー繊維の繊維径が1μm未満であること及び前記条件(1)及び(2)の少なくとも一つを満たすことが重要であることが判る。
また実施例1〜4の積層不織布の充填率及び肌触りの評価結果を見ると、充填率が上がるにつれて耐水圧が向上する傾向が認められる。水圧と肌触りとを両立させる観点からは、カレンダー加工を施していない比較例3の積層不織布と同等の良好な肌触りが得られるように、積層不織布の充填率を35%以下に抑制することが好ましい。
またカレンダー加工を施していない比較例3の積層不織布は、スパンボンド繊維における最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比が1.1であるのに対し、カレンダー加工を施した実施例1〜7及び比較例9の積層不織布は、スパンボンド繊維における最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比(最大繊維径/最小繊維径)が1.4以上2.2以下である。これは、実施例1〜7及び比較例9の積層不織布には、カレンダー加工を行ったことにより、スパンボンド繊維が大きく扁平化する領域が存在することを示す。また実施例1〜7の積層不織布は、線圧の低い条件でカレンダー加工を行った比較例9の積層不織布に比して、スパンボンド繊維における最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比が大きくなっている。実施例1〜7の積層不織布においては、十分な線圧でカレンダー加工を行い、スパンボンド繊維が大きく扁平する領域が存在するようになったことにより、メルトブロー層の表面をより広い面積で覆うことができるようになったことも、耐水圧の向上に寄与したと考えられる。
表1に示すように、実施例1〜7においては、メルトブロー繊維の横断面形状が一部楕円形状となっており、スパンボンド繊維の横断面形状も楕円形状となっている。一部楕円形状(表1中「一部楕円」と表記)とは、横断面形状が真円又はほぼ真円形状の部分と楕円形状の部分とを有することを意味する。一方、比較例3においては、メルトブロー繊維の横断面形状が真円形状となっており、スパンボンド繊維の横断面形状がほぼ真円形状となっている。これはカレンダー加工により各層の繊維が楕円形状に変形したことを示す。これにより、スパンボンド繊維がメルトブロー層の表面をより広い面積で覆うことができるようになったことも、耐水圧の向上に寄与したと考えられる。
(実施例8〜11)
カレンダー加工を施したときの線圧、及びカレンダー加工を施す前のスパンボンド繊維の繊維径を、表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層不織布を製造した。実施例8〜11の積層不織布は、層内エンボス部を有しておらず、メルトブロー層と、該メルトブロー層の両面に積層されたスパンボンド層との間を結合しているエンボス部のみを有している。
(比較例9)
カレンダー加工の線圧を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例9の積層不織布を製造した。
Figure 0006947859
実施例8〜11及び比較例9について、上述の方法により耐水圧を測定した。また、実施例及び比較例について、上述の方法により肌触りを評価した。耐水圧の測定結果及び肌触りの評価結果は、表2に示す通りである。
実施例8と実施例9の結果を対比すると、実施例9の方が実施例8よりカレンダー加工時の線圧が高くなっているにも拘わらず、実施例8の方が実施例9よりも耐水圧が向上している。この原因を検討すると、実施例8の方が実施例9よりもスパンボンドの繊維が細いため、スパンボンド層の繊維密度が高く、繊維間距離が狭いため、メルトブロー繊維を拘束する間隔が短くなり、メルトブロー繊維がより固定されためと考えられる。耐水圧の向上の観点から、スパンボンド繊維の繊維径は35μm以下であることが好ましい。
1 積層不織布
10 スパンボンド層
11 スパンボンド層を構成する繊維
20 メルトブロー層
21メルトブロー層を構成する繊維
2 積層体
3 吸収性物品

Claims (8)

  1. メルトブロー層と、該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層不織布であって、
    前記メルトブロー層を構成する繊維は、繊維径が0.9μm以下であり、
    前記メルトブロー層の上に、前記スパンボンド層の繊維が相対的に密に存在している部分と前記スパンボンド層の繊維が相対的に疎に存在している部分とを有し、
    前記スパンボンド層の繊維が相対的に密に存在している部分では、該スパンボンド層の繊維が前記メルトブロー層にめり込んだ状態となっており、
    前記スパンボンド層の繊維が相対的に密に存在している部分は、前記スパンボンド層の繊維が相対的に疎に存在している部分に比して、前記メルトブロー層の厚みが小さくなっており、
    前記メルトブロー層は、エンボス部を除く領域における最小厚みtminに対する最大厚みtmaxの比であるtmax/tminが2超であり、
    前記積層不織布の耐水圧が1600mmAq.以上である、吸収性物品用積層不織布。
  2. 前記スパンボンド層の繊維の繊維径が35μm以下であり、
    前記スパンボンド層を構成する繊維における、最小の繊維幅に対する最大の繊維幅の比(最大繊維径/最小繊維径)が1.4超であり、
    前記積層不織布の充填率が7.7%超である、請求項1に記載の吸収性物品用積層不織布。
  3. 前記スパンボンド層を構成する全て又は一部の繊維は、該繊維の横断面における繊維アスペクト比が1.2超である、請求項1又は2に記載の吸収性物品用積層不織布。
  4. 前記積層不織布の充填率が35%以下である、請求項1〜3の何れか1項に記載の吸収性物品用積層不織布。
  5. 前記スパンボンド層を構成する繊維のうち、該繊維の横断面における長軸の方が短軸より前記積層不織布の平面と平行な方向に近い繊維の割合が、75%以上100%以下である、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸収性物品用積層不織布。
  6. 前記メルトブロー層の充填率が4.1%超である、請求項1〜5の何れか1項に記載の吸収性物品用積層不織布。
  7. 肌対向面側と非肌対向面側を有し、
    表面材と、該表面材の非肌対向面側に配された吸収体とを備え、
    前記吸収体における非肌対向面側に、請求項1〜の何れか1項に記載の吸収性物品用積層不織布が配されており、
    前記積層不織布は、前記スパンボンド層を非肌対向面側に向けて配されている、吸収性物品。
  8. スパンボンド法により構成繊維の繊維径が35μm以下のスパンボンド層を形成する工程と、メルトブロー法により構成繊維の繊維径が繊維径0.9μm以下のメルトブロー層を形成する工程とを含み、該メルトブロー層と該メルトブロー層の片面又は両面に積層されたスパンボンド層とを有する積層体を製造する工程と、
    前記積層体に、エンボスロールと表面が平滑なアンビルロール間に通して加圧するエンボス加工を施すエンボス工程と、
    前記積層体に、表面が平滑な一対のロール間に通して加圧するカレンダー加工を施すカレンダー工程とを有し、
    前記カレンダー工程においては、線圧2N/mm以上でカレンダー加工を行い、
    耐水圧が1600mmAq.以上の積層不織布を製造する、
    吸収性物品用積層不織布の製造方法。
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