以下、本発明の一態様の実施の形態について説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
なお、本明細書で説明する各図において、正極、負極、活物質層、セパレータ、外装体などの各構成要素の大きさや厚さ等は、個々に説明の明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしも各構成要素はその大きさに限定されず、また各構成要素間での相対的な大きさに限定されない。
また、本明細書等で説明する本発明の一態様の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指すものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
また、この発明を実施するための形態の記載の内容は、適宜組み合わせて用いることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様であるリチウム含有複合リン酸塩の作製方法について、図1を用いて説明する。
ステップS201aにおいて、リチウム化合物を秤量する。また、ステップS201bにおいて、リン化合物を秤量する。また、ステップS201cにおいて、鉄(II)化合物、マンガン(II)化合物、コバルト(II)化合物、及びニッケル(II)化合物(以下、M(II)化合物と示す。)の一以上を秤量する。
リチウム化合物の代表例としては、水酸化リチウム−水和物(LiOH・H2O)、塩化リチウム(LiCl)、炭酸リチウム(Li2CO3)、酢酸リチウム(LiCH3COO)、シュウ酸リチウム((COOLi)2)等がある。
リン化合物の代表例としては、オルトリン酸(H3PO4)等のリン酸、リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)、リン酸二水素アンモニウム(NH4H2PO4)等のリン酸水素アンモニウム等がある。
鉄(II)化合物の代表例としては、塩化鉄四水和物(FeCl2・4H2O)、硫酸鉄七水和物(FeSO4・7H2O)、酢酸鉄(Fe(CH3COO)2)等がある。
マンガン(II)化合物の代表例としては、塩化マンガン四水和物(MnCl2・4H2O)、硫酸マンガン−水和物(MnSO4・H2O)、酢酸マンガン四水和物(Mn(CH3COO)2・4H2O)等がある。
コバルト(II)化合物の代表例としては、塩化コバルト六水和物(CoCl2・6H2O)、硫酸コバルト七水和物(CoSO4・7H2O)、酢酸コバルト四水和物(Co(CH3COO)2・4H2O)等がある。
ニッケル(II)化合物の代表例としては、塩化ニッケル六水和物(NiCl2・6H2O)、硫酸ニッケル六水和物(NiSO4・6H2O)、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CH3COO)2・4H2O)等がある。
次に、ステップS203aにおいて、リチウム化合物を溶媒に溶解して、リチウムを含む溶液を形成する。同様に、ステップS203b、S203cにおいて、それぞれリン化合物、M(II)化合物を溶媒に溶解して、リンを含む溶液、M(II)を含む溶液を形成する。
リチウム化合物、リン化合物、M(II)化合物を溶解する溶媒としては、水がある。
次に、ステップS205において、大気雰囲気下で、ステップS203aで形成したリチウムを含む溶液と、ステップS203bで形成したリンを含む溶液を混合し、混合液Aを形成する。
なお、混合液Aの代わりに、Li3PO4,Li2HPO4,LiH2PO4等のリチウム塩を水等の溶媒に溶解して、リチウム及びリンを含む溶液を形成してもよい。
次に、ステップS207において、大気雰囲気下で、ステップS205で形成した混合液Aを撹拌しながら、M(II)を含む溶液を少量ずつ滴下して、混合液Bを形成する。
なお、ステップS205において、リチウムを含む溶液と、リンを含む溶液とのそれぞれの濃度によって、混合液Aに沈殿物が生じる場合がある。混合液Aを滴下する場合、沈殿物が存在すると、滴下装置のノズルが目詰まりし、滴下が妨げられる可能性がある。以上のことから、ステップS207において、混合液Aを撹拌しながら、M(II)を含む溶液を少量ずつ滴下することが好ましい。
次に、ステップS209において、混合液Bをオートクレーブ等の耐熱耐圧容器に入れたのち、100℃以上350℃以下、0.1MPa以上100MPa以下で、0.5時間以上24時間以下加熱した後冷却し、耐熱耐圧容器内の混合物を濾過し、得られた固体を水洗して、乾燥させる。
この結果、合成物Aとしてオリビン型リチウム含有複合リン酸塩(LiMPO4(Mは、Fe(II),Ni(II),Co(II),Mn(II)の一以上))を収率高く作製することができる。M(II)化合物の種類によって、リチウム含有複合リン酸塩として、LiFePO4、LiNiPO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCobPO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFecNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+iは1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が適宜得られる。また、本実施の形態により得られるリチウム含有複合リン酸塩は単結晶粒となる場合がある。
ここで、図1に示す作製方法により得られるリチウム含有複合リン酸塩の形状について説明する。
本発明の一態様により作製されたリチウム含有複合リン酸塩の模式図を図2に示す。図2(A−1)乃至図2(A−6)が鳥瞰図、図2(B−1)乃至図2(B−6)が断面図である。図2(B−1)は図2(A−1)の断面を示し、図2(B−2)は図2(A−2)の断面を示し、図2(B−3)は図2(A−3)の断面を示し、図2(B−4)は図2(A−4)の断面を示し、図2(B−5)は図2(A−5)の断面を示し、図2(B−6)は図2(A−6)の断面を示す。本発明の一態様により作製されたリチウム含有複合リン酸塩は、図2に示すように、板状の構造体200と、板状の構造体202の間に、角柱状の構造体204を有し、板状の構造体200と板状の構造体202の間に空隙を有する構造となる場合がある。なお、図2(A−2)または図2(B−2)に示すように、板状の構造体200と、板状の構造体202の間の、角柱状の構造体204は複数となる場合がある。図2では、識別の容易化のために便宜上、構造体200、構造体202と、構造体204に異なるハッチングを施しているが、構造体200、構造体202と、構造体204は同じ材質でも良く、構造体200と、構造体202と、構造体204とが一体となり一つのリチウム含有複合リン酸塩を構成していてもよい。本発明の一態様により作製されたリチウム含有複合リン酸塩が二次電池の電極活物質に用いられる場合、この空隙によりリチウム含有複合リン酸塩と電解液の接触面積が大きくなる。二次電池の電池反応は、電極におけるイオンの挿入・脱離により引き起こされることから、正極とリチウムイオンの反応面積が大きくなると、正極とリチウムイオンの反応速度が速くなる。したがって、二次電池の出力を高めることが可能になる。
また、リチウム含有複合リン酸塩が板状の構造体となっている場合、該酸化物の板状の構造体内全域へのリチウムの拡散が早く完了する。板状の構造体の形状は、広い面と短い辺とを有しているため、該広い面から取り込まれたリチウムが該短い辺の長さの分だけ移動すれば、該酸化物の全域へリチウムが到達することができるからである。したがって、正極とリチウムの反応速度が速くなり、二次電池の出力を高めることが可能になる。
また、リチウム含有複合リン酸塩の板状の構造体を構成する面のうち、例えば最も面積が大きい面の外形において、内角の少なくとも一つは100°以下となり、該リン酸塩を用いて作製した層中で該リン酸塩の粒子と粒子の間隔が大きくなる。粒子と粒子の間隔が大きくなると、そこに電解液が入り込みやすくなり電解液中のリチウムイオンもまた移動が容易となるため好ましい。
一方で、板状の構造体のすべての内角が100°以上である場合、板状の構造体が概略正多角形状または円状の形状となるため、該粒子同士が互いに近接して粒子間の隙間が小さくなる場合がある。そのような場合、電解液が該隙間に入り込みにくくなるため、電解液中のリチウムイオンの移動が阻害される場合があり、二次電池の出力が抑えられてしまう場合がある。二次電池の電池反応は、電極におけるイオンの挿入・脱離により引き起こされることから、リチウムイオンの移動性が向上すると、正極とリチウムの反応速度が速くなる。したがって、二次電池の出力を高めることが可能になる。
以上のような観点から、該リン酸塩の板状の構造体の内角のうち、少なくとも一つは100°以下、好ましくは95°以下、さらに好ましくは90°以下とすればよい。
以上に示す通り、本発明の一態様に係るリチウム含有複合リン酸塩をリチウムイオン蓄電池に用いた場合、該二次電池の出力を大きくすることができる。
なお、本実施の形態に示す構成などは、他の実施の形態、または実施例に示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
なお、本実施の形態において、本発明の一態様について述べた。または、他の実施の形態において、本発明の一態様について述べる。ただし、本発明の一態様は、これらに限定されない。つまり、本実施の形態および他の実施の形態では、様々な発明の態様が記載されているため、本発明の一態様は、特定の態様に限定されない。例えば、本実施の形態では、一例として、二次電池に適用した場合を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、様々な二次電池、例えば、鉛蓄電池、リチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル・水素電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄電池、ニッケル・亜鉛電池、酸化銀電池、固体電池、空気電池、などに適用することも可能である。または、様々な蓄電装置に適用することが可能であり、例えば、一次電池、コンデンサ、リチウムイオンキャパシタなどに適用することも可能である。または例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様は、二次電池に適用しなくてもよい。また、本発明の一態様として、リチウム含有複合リン酸塩を有する場合の例を示したが、本発明の一態様は、これに限定されない。場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、様々な材質のものを有していてもよい。または例えば、場合によっては、または、状況に応じて、本発明の一態様では、リチウム含有複合リン酸塩を有していなくてもよい。
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る二次電池、及びその製造方法について説明する。
≪二次電池の構成及び組立≫
図3(A)に、本発明の一態様である二次電池500を示す。図3(A)では、二次電池の一例として、薄型の二次電池の形態を示すが、本発明の一態様の二次電池はこれに限られない。
図3(A)に示すように、二次電池500は、正極503、負極506、セパレータ507、及び外装体509を有する。二次電池500は、正極リード510及び負極リード511を有してもよい。また接合部518は、外装体509の外周を熱圧着によって接合した部位である。
図4(A)、(B)に、図3(A)における一点鎖線A1−A2間の断面図の一例をそれぞれ示す。図4(A)、(B)には、正極503と負極506を1組用いて作製した二次電池500の断面構造をそれぞれ示す。
図4(A)、(B)に示すように、二次電池500は、正極503、負極506、セパレータ507、電解液508、及び外装体509を有する。セパレータ507は、正極503と負極506の間に位置する。外装体509内は、電解液508で満たされている。
正極503は、正極活物質層502と、正極集電体501とを含む。負極506は、負極活物質層505と、負極集電体504とを含む。活物質層は、集電体の片面又は両面に形成すればよい。セパレータ507は、正極集電体501と負極集電体504の間に位置する。
電池セルは、正極及び負極をそれぞれ1つ以上有していればよい。例えば、電池セルは、複数の正極及び複数の負極からなる積層構造とすることもできる。
図5(A)に、図3(A)における一点鎖線A1−A2間の断面図の別の例を示す。また、図5(B)に図3(A)における一点鎖線B1−B2間の断面図を示す。
図5(A)、(B)には、正極503と負極506を複数組用いて作製した二次電池500の断面構造を示す。二次電池500が有する電極層数に限定はない。電極層数が多い場合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
図5(A)、(B)では、正極集電体501の片面に正極活物質層502を有する正極503を2つと、正極集電体501の両面に正極活物質層502を有する正極503を2つと、負極集電体504の両面に負極活物質層505を有する負極506を3つ用いる例を示す。つまり、二次電池500は、6層の正極活物質層502と、6層の負極活物質層505を有する。なお、図5(A)、(B)では、セパレータ507が袋状の例を示すが、これに限定されず、セパレータ507は短冊状であっても、蛇腹状であってもよい。
また、図5において、正極集電体501の両面に正極活物質層502を有する一の正極を、正極集電体501の片面に正極活物質層502を有する2つの正極に置き換えることが好ましい。同様に、負極集電体504の両面に負極活物質層505を有する一の負極を、負極集電体504の片面に負極活物質層505を有する2つの負極に置き換えることが好ましい。図6に示す二次電池500は、正極集電体501の正極活物質層502が付着していない面同士、ならびに負極集電体504の負極活物質層505が付着していない面同士が向かい合わせとなって接している。このような構成とすることで、二次電池500を湾曲させた場合に、2つの正極集電体501の界面および2つの負極集電体504の界面が滑り面となり、二次電池500内部に生じる応力を緩和できる。
次に、図3(B)に、正極503の外観図を示す。正極503は、正極集電体501及び正極活物質層502を有する。
また、図3(C)に、負極506の外観図を示す。負極506は、負極集電体504及び負極活物質層505を有する。
ここで、正極503及び負極506は、積層される複数の正極同士又は複数の負極同士を電気的に接続するために、タブ領域を有することが好ましい。また、タブ領域には電極リードを電気的に接続することが好ましい。
図3(B)に示すように、正極503は、タブ領域281を有することが好ましい。タブ領域281の一部は、正極リード510と溶接されることが好ましい。タブ領域281は正極集電体501が露出する領域を有することが好ましく、正極集電体501が露出する領域に正極リード510を溶接することにより、接触抵抗をより低くすることができる。また、図3(B)ではタブ領域281の全域において正極集電体501が露出している例を示すが、タブ領域281は、その一部に正極活物質層502を有してもよい。
図3(C)に示すように、負極506は、タブ領域282を有することが好ましい。タブ領域282の一部は、負極リード511と溶接されることが好ましい。タブ領域282は負極集電体504が露出する領域を有することが好ましく、負極集電体504が露出する領域に負極リード511を溶接することにより、接触抵抗をより低くすることができる。また、図3(C)ではタブ領域282の全域において負極集電体504が露出している例を示すが、タブ領域282は、その一部に負極活物質層505を有してもよい。
なお、図3(A)では、正極503と負極506の端部が概略揃っている例を示すが、正極503は、負極506の端部よりも外側に位置する部分を有していてもよい。
二次電池500において、負極506の正極503と重ならない領域の面積は小さいほど好ましい。
図4(A)では、負極506の端部が、正極503の内側に位置する例を示す。このような構成とすることにより、負極506を全て正極503と重ねる、又は負極506の正極503と重ならない領域の面積を小さくすることができる。
または、二次電池500において、正極503と負極506の面積は概略同じであることが好ましい。例えば、セパレータ507を挟んで向かい合う正極503と負極506の面積は、概略同じであることが好ましい。例えば、セパレータ507を挟んで向かい合う正極活物質層502の面積と負極活物質層505の面積は概略同じであることが好ましい。
例えば、図5(A)、(B)に示すように、正極503のセパレータ507側の面の面積と負極506のセパレータ507側の面の面積は概略同じであることが好ましい。正極503の負極506側の面の面積と負極506の正極503側の面の面積を概略同じとすることにより、負極506の正極503と重ならない領域を小さくする(あるいは理想的にはなくす)ことができ、二次電池500の不可逆容量を減少させることができるため好ましい。または、図5(A)、(B)に示すように、正極活物質層502のセパレータ507側の面の面積と負極活物質層505のセパレータ507側の面の面積は概略同じであることが好ましい。
また、図5(A)、(B)に示すように、正極503の端部と負極506の端部は概略揃うことが好ましい。また、正極活物質層502と負極活物質層505の端部は概略揃うことが好ましい。
また、図4(B)では、正極503の端部が、負極506の内側に位置する例を示す。このような構成とすることにより、正極503を全て負極506と重ねる、又は正極503の負極506と重ならない領域の面積を小さくすることができる。負極506の端部が正極503の端部よりも内側に位置すると、負極506の端部に電流が集中してしまう場合がある。例えば、負極506の一部に電流が集中することで、負極506上にリチウムが析出してしまうことがある。正極503の負極506と重ならない領域の面積を小さくすることで、負極506の一部に電流が集中することを抑制できる。これにより、例えば、負極506上へのリチウムの析出が抑制でき、好ましい。
図3(A)に示すように、正極リード510は、正極503に電気的に接続することが好ましい。同様に、負極リード511は、負極506に電気的に接続することが好ましい。正極リード510及び負極リード511は外装体509の外側に露出し、外部との電気的接触を得る端子として機能する。
または、正極集電体501及び負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割を兼ねることもできる。その場合は、電極リードを用いずに、正極集電体501及び負極集電体504の一部を外装体509から外側に露出するように配置してもよい。
また、図3(A)では、正極リード510と負極リード511は、二次電池500の同じ辺に配置されているが、図7に示すように、正極リード510と負極リード511を二次電池500の異なる辺に配置してもよい。このように、本発明の一態様の二次電池は、電極リードを自由に配置することができるため、設計自由度が高い。よって、本発明の一態様の二次電池を用いた製品の設計自由度を高めることができる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた製品の生産性を高めることができる。
≪二次電池の作製方法例≫
次に、本発明の一態様である二次電池500の作製方法の一例を、図8乃至図10を用いて説明する。
まず、正極503、負極506、及びセパレータ507を積層する。具体的には、正極503の上にセパレータ507を配置する。その後、セパレータ507の上に負極506を配置する。正極と負極を2組以上用いる場合は、さらに負極506の上にセパレータ507を配置した後、正極503を配置する。このようにセパレータ507を正極503と負極506の間に挟みながら正極503と負極506を交互に積層する。
あるいは、セパレータ507を袋状にしてもよい。セパレータ507で電極を包むことで、該電極が製造工程中に損傷しにくくなり、好ましい。
まず、セパレータ507上に正極503を配置する。次いで、セパレータ507を図8(A)の破線で示した部分で折り、セパレータ507で正極503を挟む。なお、ここでは正極503をセパレータ507で挟む例について説明したが、負極506をセパレータ507で挟んでもよい。
ここで、正極503の外側のセパレータ507の外周部分を接合して、セパレータ507を袋状(又はエンベロープ状)とすることが好ましい。セパレータ507の外周部分の接合は、接着剤などを用いて行ってもよいし、超音波溶接や、加熱による融着により行ってもよい。
次に、セパレータ507の外周部分を加熱により接合する。図8(A)に接合部514を示す。このようにして、正極503をセパレータ507で覆うことができる。
次に、図8(B)に示すように、負極506と、セパレータに覆われた正極503と、を交互に重ねる。また、封止層115を有する正極リード510及び負極リード511を準備する。
次に、図9(A)に示すように、正極503のタブ領域281に、封止層115を有する正極リード510を接続する。図9(B)に接続部の拡大図を示す。接合部512に圧力を加えながら超音波を照射して、正極503のタブ領域281及び正極リード510を電気的に接続する(超音波溶接)。このとき、タブ領域281に湾曲部513を設けるとよい。
湾曲部513を設けることによって、二次電池500の作製後に外から力が加えられて生じる応力を緩和することができる。よって、二次電池500の信頼性を高めることができる。
同様の方法を用いて、負極506のタブ領域282と、負極リード511と、を電気的に接続することができる。
次に、外装体509上に、正極503、負極506、及びセパレータ507を配置する。
次に、外装体509を、図9(C)の外装体509の中央付近に破線で示した部分で折り曲げる。
図10に、外装体509の外周を熱圧着により接合した部位を、接合部118として示す。電解液508を入れるための導入口119以外の外装体509の外周部を、熱圧着により接合する。熱圧着の際、電極リードに設けられた封止層も溶けて電極リードと外装体509との間を固定することができる。また、外装体509と電極リードとの間の密着性を向上することができる。
そして、減圧雰囲気下、或いは不活性ガス雰囲気下で所望の量の電解液508を導入口119から外装体509の内側に入れる。そして、最後に、導入口119を熱圧着により接合する。このようにして、薄型の蓄電池である二次電池500を作製することができる。
二次電池500を作製した後には、エージングを行うことが好ましい。エージング条件の一例について以下に説明する。まず初めに0.001C以上0.2C以下のレートで充電を行う。温度は例えば室温以上50℃以下とすればよい。このときに、電解液の分解が生じ、ガスが発生した場合には、そのガスがセル内にたまると、電解液が電極表面と接することができない領域が発生してしまう。つまり、電極の実効的な反応面積が減少し、実効的な抵抗が高くなることに相当する。
過度に抵抗が高くなると、電極の抵抗に応じて充電電圧が上昇し、負極電位が下がることによって、黒鉛へのリチウムの挿入と同時に、黒鉛表面にリチウムが析出してしまう場合がある。このリチウムの析出は容量の低下を招く場合がある。例えば、リチウムが析出した後、表面に被膜等が成長してしまうと、表面に析出したリチウムが再溶出できなくなり、容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。また、析出したリチウムが物理的に崩落し、電極との導通を失った場合にも、やはり容量に寄与しないリチウムが生じてしまう。よって、負極電位が充電電圧上昇によりリチウム電位まで到達しないように、ガスを抜くことが好ましい。
ガス抜きを行う場合には、例えば薄型の蓄電池の外装体の一部を切断し、開封すればよい。ガスにより外装体が膨張している場合には、再度、外装体の形を整えることが好ましい。また、再封止の前に必要に応じて電解液を足してもよい。
また、ガス抜きを行った後に、室温よりも高い温度、好ましくは30℃以上60℃以下、より好ましくは35℃以上50℃以下において、例えば1時間以上100時間以下の間、充電状態で保持してもよい。初めに行う充電の際に、表面で分解した電解液は被膜を形成する。よって、例えばガス抜き後に室温よりも高い温度で保持することにより、形成された被膜が緻密化する場合も考えられる。
≪正極の構成≫
次に本発明の一態様に係る二次電池に用いられる各構成物とその材料について説明する。まず、正極について図4(A)を用いて説明する。正極は、正極活物質層502と、正極集電体501とを含む。
正極活物質層502に用いられる正極活物質材料としては、リチウムイオン等のキャリアイオンの挿入及び脱離が可能な材料を用いることができ、例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、又はスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有材料等が挙げられる。
例えば、実施例1に示すリン酸鉄リチウム(LiFePO4)は、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たしているため、好ましい。
正極活物質は負極活物質と共に、二次電池の電池反応の中心的役割を担いキャリアイオンの放出及び吸収を行う物質である。二次電池の寿命を高めるためには、電池反応の不可逆反応に係る容量が少ない材料であることが好ましく、充放電効率の高い材料であることが好ましい。
活物質は電解液と接するため、活物質と電解液とが反応し、反応により活物質が失われ劣化すると、二次電池の容量が低下するため、劣化の少ない二次電池を実現するためには、二次電池内のこのような反応が生じないことが望ましい。
電極の導電助剤として、アセチレンブラック(AB)、グラファイト(黒鉛)粒子、カーボンナノチューブ、還元された酸化グラフェン(RGO)、フラーレンなどを用いることができる。
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。正極活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する正極活物質層502を実現することができる。
また、バインダーとして、代表的なポリフッ化ビニリデン(PVDF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を用いることができる。
正極活物質層502の総量に対するバインダーの含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、2wt%以上8wt%以下がより好ましく、3wt%以上5wt%以下がさらに好ましい。また、正極活物質層502の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
塗布法を用いて正極活物質層502を形成する場合は、正極活物質とバインダーと導電助剤と分散媒を混合して電極スラリーを作製し、正極集電体501上に塗布して乾燥させればよい。
なお、正極集電体501にはステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。正極集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。
以上の工程で二次電池の正極を作製することができる。
≪負極の構成≫
次に負極について図4(A)を用いて説明する。負極は、負極活物質層505と、負極集電体504とを含む。負極を形成する工程を以下に説明する。
負極活物質層505に用いられる負極活物質として、炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等がある。黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛がある。また、黒鉛の形状としては鱗片状のものや球状のものなどがある。
負極活物質として、炭素系材料以外に、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが可能な材料も用いることができる。例えば、Ga、Si、Al、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Ag、Zn、Cd、In等のうち少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高く好ましい。このような元素を用いた合金系材料(化合物系材料)としては、例えば、Mg2Si、Mg2Ge、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、LaSn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等がある。
また、負極活物質として、SiO、SnO、SnO2、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4Ti5O12)、リチウム−黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることができる。
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつLi3−xMxN(MはCo、NiまたはCu)を用いることができる。例えば、Li2.6Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm3)を示し好ましい。
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムを含むため、正極活物質としてリチウムを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせることができる。なお、正極活物質にリチウムを含む材料を用いる場合でも、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムを脱離させることで、負極活物質としてリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウムと合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、Ge3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3等のフッ化物でも起こる。
負極活物質は、一例としては、粒径が50nm以上100μm以下のものを用いるとよい。
なお、正極活物質層502においても負極活物質層505においても、活物質材料は複数の材料を特定の割合で組み合わせて用いてもよい。活物質層に複数の材料を用いることで、より詳細に活物質層の性能を選択することができる。
電極の導電助剤として、アセチレンブラック(AB)、グラファイト(黒鉛)粒子、カーボンナノチューブ、還元された酸化グラフェン(RGO)、フラーレンなどを用いることができる。
導電助剤により、電極中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電助剤により、負極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。負極活物質層中に導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する負極活物質層505を実現することができる。
また、バインダーとして、代表的なポリフッ化ビニリデン(PVDF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロライド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ニトロセルロース等を用いることができる。
負極活物質層505の総量に対するバインダーの含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、2wt%以上8wt%以下がより好ましく、3wt%以上5wt%以下がさらに好ましい。また、負極活物質層505の総量に対する導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以下がより好ましい。
次いで、負極集電体504上に負極活物質層505を形成する。塗布法を用いて負極活物質層505を形成する場合は、負極活物質とバインダーと導電助剤と分散媒を混合してスラリーを作製し、負極集電体504に塗布して乾燥させる。また、乾燥後に必要があればプレス処理を行ってもよい。
なお、負極集電体504には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、チタン、タンタル等の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、ニッケル等がある。負極集電体504は、箔状、板状(シート状)、網状、円柱状、コイル状、パンチングメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極集電体504は、厚みが5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。また、電極集電体の表面の一部に、グラファイトなどを用いてアンダーコート層を設けてもよい。
以上の工程で二次電池の負極を作製することができる。
≪セパレータの構成≫
セパレータ507について説明する。セパレータ507の材料としては、紙、不織布、ガラス繊維、あるいは、ナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタンといった合成繊維等を用いればよい。ただし、後述の電解液に溶解しない材料を選ぶ必要がある。
より具体的には、セパレータ507の材料として、例えば、フッ素系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン系高分子及びこれらの誘導体、セルロース、紙、不織布、ガラス繊維から選ばれる一種を単独で、又は二種以上を組み合せて用いることができる。
≪電解液の構成≫
本発明の一態様に係る二次電池に用いることができる電解液508は、電解質(溶質)を含む非水溶液(溶媒)とすることが好ましい。
電解液508の溶媒としては、キャリアイオンが移動可能な材料を用いる。例えば、非プロトン性有機溶媒が好ましく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テトラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
また、電解液508の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエチレンオキシド系ゲル、ポリプロピレンオキシド系ゲル、フッ素系ポリマーのゲル等がある。
また、電解液の溶媒として、難燃性及び難蒸発性であるイオン液体(常温溶融塩ともいう)を一つまたは複数用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、二次電池の破裂や発火などを防ぐことができる。これにより、二次電池の安全性を高めることができる。
なお、上記の電解質では、キャリアイオンがリチウムイオンである場合について説明したが、リチウムイオン以外のキャリアイオンも用いることができる。リチウムイオン以外のキャリアイオンとしては、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンの場合、電解質として、上記リチウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ベリリウム、マグネシウム等)を用いてもよい。
また、二次電池に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。具体的には、電解液に対する不純物の質量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。また、電解液にビニレンカーボネートなどの添加剤を加えてもよい。
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、キャリアにリチウムイオンを用いる場合、例えばLiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiAlCl4、LiSCN、LiBr、LiI、Li2SO4、Li2B10Cl10、Li2B12Cl12、LiCF3SO3、LiC4F9SO3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C4F9SO2)(CF3SO2)、LiN(C2F5SO2)2等のリチウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
なお、電解液は、正極の集電体と反応し、正極集電体を腐食する場合がある。そのような腐食を防止するため、電解液に数wt%のLiPF6を添加してもよい。正極集電体表面に不導体膜を生じ、該不導体膜が電解液と正極集電体との反応を抑制できる場合がある。ただし、正極活物質層を溶解させないために、LiPF6の濃度は10wt%以下、好ましくは5wt%以下、より好ましくは3wt%以下とするとよい。
≪グラフェン化合物≫
なお、本発明の一態様において、蓄電装置を構成する各部材にグラフェン化合物を用いることができる。グラフェン化合物は後述の通り、修飾により構造及び特性を幅広く選択することができため、グラフェン化合物を適用しようとする部材に応じて、好ましい性質を発現させることができる。また、グラフェン化合物は機械的強度が高いため、グラフェン化合物は可撓性を有する蓄電装置を構成する各部材にも適用することができる。以下、グラフェン化合物について説明する。
グラフェンは、炭素原子が1原子層配列したものであり、炭素原子間にπ結合を有する。グラフェンが2層以上100層以下重なったものを、マルチグラフェンと呼ぶ場合がある。グラフェンおよびマルチグラフェンは、例えば、長手方向、あるいは面における長軸の長さが50nm以上100μm以下または800nm以上50μm以下である。
本明細書等において、グラフェンまたはマルチグラフェンを基本骨格として有する化合物を「グラフェン化合物(「グラフェンコンパウンド:Graphene Compound」ともいう)」と呼ぶ。グラフェン化合物には、グラフェンとマルチグラフェンを含む。
以下に、グラフェン化合物について詳細を説明する。
グラフェン化合物は例えば、グラフェンまたはマルチグラフェンが、炭素以外の原子、または炭素以外の原子を有する原子団に修飾された化合物である。また、グラフェンまたはマルチグラフェンが、アルキル基、アルキレン等の炭素を主とした原子団に修飾された化合物であってもよい。なお、グラフェンまたはマルチグラフェンを修飾する原子団を、置換基、官能基、または特性基等と呼ぶ場合がある。ここで、本明細書等において修飾とは、置換反応、付加反応またはその他の反応により、グラフェン、マルチグラフェン、グラフェン化合物、または酸化グラフェン(後述)に、炭素以外の原子、炭素以外の原子を有する原子団、または炭素を主とした原子団を導入することをいう。
なお、グラフェンの表面と裏面は、それぞれ異なる原子や原子団により修飾されていてもよい。また、マルチグラフェンにおいては、それぞれの層が異なる原子や原子団に修飾されていてもよい。
上述の原子または原子団により修飾されたグラフェンの一例として、酸素または酸素を含む官能基に修飾されたグラフェンまたはマルチグラフェンが挙げられる。ここで酸素を含む官能基として例えば、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等が挙げられる。酸素または酸素を有する官能基により修飾されたグラフェン化合物を、酸化グラフェンと呼ぶ場合がある。また、本明細書においては、酸化グラフェンは多層の酸化グラフェンをも含むものとする。
酸化グラフェンにおける修飾の一例として、酸化グラフェンのシリル化について説明する。まず、窒素雰囲気中において、容器内に酸化グラフェンを入れ、容器にn−ブチルアミン(C4H9NH2)を加え、60℃に保ち1時間撹拌する。次に、容器にトルエンを加え、シリル化剤として、アルキルトリクロロシランをさらに加えて、窒素雰囲気中において、60℃に保ち5時間撹拌する。次に、容器にさらにトルエンを加え、吸引濾過して固体粉末を得て、これをエタノール中に分散させる。さらにこれを吸引濾過して固体粉末を得て、アセトンに分散させる。さらに、これを吸引濾過して固体粉末を得て、液体成分を気化してシリル化された酸化グラフェンが得られる。
なお修飾は、シリル化に限定されず、シリル化も上述の方法に限定されない。また、1種類の原子または原子団を導入するだけでなく、複数の種類の修飾を施し、複数の種類の原子または原子団を導入してもよい。グラフェン化合物に特定の原子団を導入することで、グラフェン化合物の物性を変化させることができる。従って、グラフェン化合物の用途に応じて望ましい修飾を施すことにより、グラフェン化合物に所望の性質を意図的に発現させることができる。
次に、酸化グラフェンの作製方法の一例を説明する。酸化グラフェンは、上記グラフェンまたはマルチグラフェンを酸化して得ることができる。または、酸化グラフェンは、酸化グラファイトを分離して得ることができる。酸化グラファイトは、グラファイトを酸化して得ることができる。ここで、酸化グラフェンに、さらに上述の原子または原子団を修飾してもよい。
酸化グラフェンを還元して得られる化合物を、「RGO(Reduced Graphene Oxide)」と呼ぶ場合がある。なお、RGOには、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素または酸素を含む原子団が炭素に結合した状態で残存する場合がある。例えばRGOは、エポキシ基、カルボキシル基などのカルボニル基、または水酸基等の官能基を有する場合がある。
グラフェン化合物は、複数のグラフェン化合物が部分的に重なりながら1枚のシート状となっていてもよい。このようなグラフェン化合物を、グラフェン化合物シートと呼ぶ場合がある。グラフェン化合物シートは例えば、厚さが0.33nm以上10mm以下、より好ましくは0.34nmより大きく10μm以下の領域を有する。グラフェン化合物シートは、炭素以外の原子、炭素以外の原子を有する原子団、またはアルキル基等の炭素を主とした原子団等により修飾されていてもよい。また、グラフェン化合物シートが有する複数の層のそれぞれにおいて、異なる原子または原子団により修飾されていてもよい。
グラフェン化合物は、炭素で構成される六員環の他に、炭素で構成される五員環や、炭素で構成される七員環以上の多員環を有してもよい。ここで、七員環以上の多員環の近傍では、リチウムイオンが通過可能な領域が生じる場合がある。
また例えば、複数のグラフェン化合物が集まって、シート状の形状となっていてもよい。
グラフェン化合物は平面的な形状を有するため、面接触を可能とする。
グラフェン化合物は薄くても導電性が高い場合があり、また面接触によりグラフェン化合物同士、あるいはグラフェン化合物と活物質との間の接触面積を増加させることができる。よって、体積あたりの量が少なくても効率よく導電パスを形成することができる。
一方で、グラフェン化合物を絶縁体として用いることもできる。例えばグラフェン化合物シートをシート状の絶縁体として用いることができる。ここで例えば、酸化グラフェンは酸化されていないグラフェン化合物と比較して絶縁性が高い場合がある。また、原子団に修飾されたグラフェン化合物は、修飾する原子団の種類により、絶縁性を高めることができる場合がある。
ここで、本明細書等においてグラフェン化合物は、グラフェン前駆体を有してもよい。グラフェン前駆体とは、グラフェンを製造するために用いられる物質のことをいい、グラフェン前駆体には例えば、上述の酸化グラフェンや、酸化グラファイトなどを含んでもよい。
なお、アルカリ金属を有するグラフェンや、酸素等の炭素以外の元素を有するグラフェンを、グラフェン類似体と呼ぶ場合がある。本明細書等においてグラフェン化合物には、グラフェン類似体も含まれる。
また、本明細書等におけるグラフェン化合物は、層間に原子、原子団、およびそれらのイオンを有してもよい。なお、グラフェン化合物が層間に原子、原子団、およびそれらのイオンを有することにより、グラフェン化合物の物性、例えば電気伝導性やイオン伝導性が変化する場合がある。また、層間距離が大きくなる場合がある。
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェン化合物は、修飾の種類に応じて、導電性を極めて低くし絶縁体とすることができる場合がある。また、グラフェン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能とする。
≪外装体の構成≫
次に、外装体509について説明する。外装体509には、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。このような三層構造とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解液性を有する。外装体を内側に折り曲げて重ねて、または、2つの外装体それぞれの内面を向い合せて重ねて熱を加えることにより、内面の材料が融け2つの外装体を融着することができ、封止構造を作製することができる。
外装体が融着等され封止構造が形成されている箇所を封止部とすると、外装体を内側に折り曲げて重ねた場合は、折り目以外の個所に封止部が形成され、外装体の第1の領域と、該第1の領域と重なる第2の領域とが融着等された構造となる。また、2枚の外装体を重ねた場合は熱融着等の方法で外周すべてに封止部が形成される。
≪可撓性の二次電池≫
本実施の形態にて示された各部材の材料から、可撓性を有する材料を選択して用いると、可撓性を有する二次電池を作製することができる。近年、変形可能なデバイスの研究及び開発が盛んである。そのようなデバイスに用いる二次電池として、可撓性を有する二次電池の需要が生じている。
2枚のフィルムを外装体として電極・電解液など1805を挟む二次電池を湾曲させた場合には、二次電池の曲率中心1800に近い側のフィルム1801の曲率半径1802は、曲率中心1800から遠い側のフィルム1803の曲率半径1804よりも小さい(図11(A))。二次電池を湾曲させて断面を円弧状とすると曲率中心1800に近いフィルムの表面には圧縮応力がかかり、曲率中心1800から遠いフィルムの表面には引っ張り応力がかかる(図11(B))。
可撓性を有する二次電池を変形させたとき、外装体に大きな応力がかかるが、外装体の表面に凹部または凸部で形成される模様を形成すると、二次電池の変形により圧縮応力や引っ張り応力がかかったとしても、ひずみによる影響を抑えることができる。そのため、二次電池は、曲率中心に近い側の外装体の曲率半径が30mm好ましくは10mmとなる範囲で変形することができる。
面の曲率半径について、図12を用いて説明する。図12(A)において、曲面1700を切断した平面1701において、曲面1700に含まれる曲線1702の一部を円の弧に近似して、その円の半径を曲率半径1703とし、円の中心を曲率中心1704とする。図12(B)に曲面1700の上面図を示す。図12(C)に、平面1701で曲面1700を切断した断面図を示す。曲面を平面で切断するとき、曲面に対する平面の角度や切断する位置に応じて、断面に現れる曲線の曲率半径は異なるものとなるが、本明細書等では、最も小さい曲率半径を面の曲率半径とする。
なお、二次電池の断面形状は、単純な円弧状に限定されず、一部が円弧を有する形状にすることができ、例えば図11(C)に示す形状や、波状(図11(D))、S字形状などとすることもできる。二次電池の曲面が複数の曲率中心を有する形状となる場合は、複数の曲率中心それぞれにおける曲率半径の中で、最も曲率半径が小さい曲面において、2枚の外装体の曲率中心に近い方の外装体の曲率半径が、30mm好ましくは10mmとなる範囲で二次電池が変形することができる。
本実施の形態で示す二次電池の正極活物質層には、本発明の一態様に係る正極活物質層が用いられている。そのため、二次電池の出力を高めることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る二次電池の構造について、図13乃至図14を参照して説明する。
≪コイン型二次電池≫
図13(A)は、コイン型(単層偏平型)の二次電池の外観図であり、図13(B)は、その断面図である。
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。正極活物質層306は、正極活物質の他、正極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダー)、正極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。
正極活物質には、実施の形態1で示した材料を用いることができる。
また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。負極活物質層309は、負極活物質の他、負極活物質の密着性を高めるための結着剤(バインダー)、負極活物質層の導電性を高めるための導電助剤等を有してもよい。正極活物質層306と負極活物質層309との間には、セパレータ310と、電解質(図示せず)とを有する。
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐腐食性のある、ニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、またはこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等で被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、図13(B)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
ここで図13(C)を用いて二次電池の充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用いた二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向きになる。なお、リチウムを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソード(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書においては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極は「負極」または「−極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソード(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
図13(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、二次電池400が充電される。二次電池400の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。図13(C)では、二次電池400の外部の端子から、正極402の方へ流れ、二次電池400の中において、正極402から負極404の方へ流れ、負極から二次電池400の外部の端子の方へ流れる電流の向きを正の向きとしている。つまり、充電電流の流れる向きを電流の向きとしている。
≪円筒型二次電池≫
次に、円筒型の二次電池の一例について、図14を参照して説明する。円筒型の二次電池600は図14(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
図14(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
正極604及び負極606は、上述したコイン型の二次電池の正極及び負極と同様に製造すればよいが、円筒型の二次電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
本実施の形態で示す二次電池の正極活物質層には、本発明の一態様に係る正極活物質層が用いられている。そのため、二次電池の出力を高めることができる。
また、可撓性を有するラミネート型の二次電池を電子機器に実装する例を図15に示す。フレキシブルな形状を備える蓄電装置を適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
また、フレキシブルな形状を備える蓄電装置を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
図15(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、蓄電装置7407を有している。
図15(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機7400を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている蓄電装置7407も湾曲される。また、その時、曲げられた蓄電装置7407の状態を図15(C)に示す。蓄電装置7407はラミネート型の二次電池である。
図15(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び蓄電装置7104を備える。また、図15(E)に曲げられた蓄電装置7104の状態を示す。
≪蓄電装置の構造例≫
蓄電装置の構造例について、図16乃至図20を用いて説明する。
図16(A)及び図16(B)は、蓄電装置の外観図を示す図である。蓄電装置は、回路基板900と、二次電池913と、を有する。二次電池913には、ラベル910が貼られている。さらに、図16(B)に示すように、蓄電装置は、端子951と、端子952と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子951、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端子などとしてもよい。
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能することができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、アンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だけでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これにより、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
蓄電装置は、アンテナ914及びアンテナ915と、二次電池913との間に層916を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界への影響を防止することができる機能を有する。層916としては、例えば磁性体を用いることができる。
なお、蓄電装置の構造は、図16に限定されない。
例えば、図17(A−1)及び図17(A−2)に示すように、図16(A)及び図16(B)に示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けてもよい。図17(A−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図17(A−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図17(A−1)に示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914が設けられ、図17(A−2)に示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば二次電池913による電磁界への影響を防止することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性体を用いることができる。
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ915の両方のサイズを大きくすることができる。
又は、図17(B−1)及び図17(B−2)に示すように、図16(A)及び図16(B)に示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれに別のアンテナを設けてもよい。図17(B−1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図17(B−2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
図17(B−1)に示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んでアンテナ914及びアンテナ915が設けられ、図17(B−2)に示すように、二次電池913の一対の面の他方に層917を挟んでアンテナ918が設けられる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことができる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914及びアンテナ915に適用可能な形状のアンテナを適用することができる。アンテナ918を介した蓄電装置と他の機器との通信方式としては、NFCなど、蓄電装置と他の機器との間で用いることができる応答方式などを適用することができる。
又は、図18(A)に示すように、図16(A)及び図16(B)に示す二次電池913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子919を介して端子911に電気的に接続される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。なお、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレクトロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
又は、図18(B)に示すように、図16(A)及び図16(B)に示す二次電池913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911に電気的に接続される。なお、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置と同じ部分については、図16(A)及び図16(B)に示す蓄電装置の説明を適宜援用できる。
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよい。センサ921を設けることにより、例えば、蓄電装置が置かれている環境を示すデータ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
さらに、二次電池913の構造例について図19及び図20を用いて説明する。
図19(A)に示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸される。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより筐体930に接していない。なお、図19(A)では、便宜のため、筐体930を分離して図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子952が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
なお、図19(B)に示すように、図19(A)に示す筐体930を複数の材料によって形成してもよい。例えば、図19(B)に示す二次電池913は、筐体930aと筐体930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体950が設けられている。
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930aの内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930bとしては、例えば金属材料を用いることができる。
さらに、捲回体950の構造について図20に示す。捲回体950は、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに複数重ねてもよい。
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図16に示す端子911に接続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図16に示す端子911に接続される。
≪電気機器の一例:車両に搭載する例≫
次に、二次電池を車両に搭載する例について示す。二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。
図21において、本発明の一態様を用いた車両を例示する。図21(A)に示す自動車8100は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、繰り返し充放電することができる車両を実現することができる。また、自動車8100は蓄電装置を有する。蓄電装置は電気モーターを駆動するだけでなく、ヘッドライト8101やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給することができる。
また、蓄電装置は、自動車8100が有するスピードメーター、タコメーターなどの表示装置に電力を供給することができる。また、蓄電装置は、自動車8100が有するナビゲーションゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
図21(B)に示す自動車8200は、自動車8200が有する蓄電装置にプラグイン方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。図21(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8200に搭載された蓄電装置に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車8200に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時や走行時に蓄電装置の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
本発明の一態様によれば、蓄電装置のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させることができる。また、本発明の一態様によれば、蓄電装置の特性を向上することができ、よって、蓄電装置自体を小型軽量化することができる。蓄電装置自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることができる。また、車両に搭載した蓄電装置を車両以外の電力供給源として用いることもできる。この場合、電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
なお、本明細書等においては、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念を導き出すことは、当業者であれば容易に理解される。したがって、ある一つの実施の形態において述べる図または文章において、少なくとも一つの具体例が記載される場合、その具体例の上位概念も、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、その発明の一態様は、明確であると言える。
なお、本明細書等においては、少なくとも図に記載した内容(図の中の一部でもよい)は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。したがって、ある内容について、図に記載されていれば、文章を用いて述べていなくても、その内容は、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。同様に、図の一部を取り出した図についても、発明の一態様として開示されているものであり、発明の一態様を構成することが可能である。そして、その発明の一態様は明確であると言える。
(実施の形態4)
上記実施の形態で説明した材料を含む電池セルと組み合わせて用いることができる電池制御ユニット(Battery Management Unit:BMU)、及び該電池制御ユニットを構成する回路に適したトランジスタについて、図22乃至図28を参照して説明する。本実施の形態では、特に直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットについて説明する。
直列に接続された複数の電池セルに対して充放電を繰り返していくと、各電池セル間において、充放電特性のばらつきが生じて、各電池セルの容量(出力電圧)が異なってくる。直列に接続された複数の電池セルでは、全体の放電時の容量が、容量の小さい電池セルに依存する。各電池セルの容量にばらつきがあると放電時の全体の容量が小さくなる。また、容量が小さい電池セルを基準にして充電を行うと、充電不足となる虞がある。また、容量の大きい電池セルを基準にして充電を行うと、過充電となる虞がある。
そのため、直列に接続された電池セルを有する蓄電装置の電池制御ユニットは、充電不足や、過充電の原因となる、電池セル間の容量のばらつきを揃える機能を有する。電池セル間の容量のばらつきを揃える回路構成には、抵抗方式、キャパシタ方式、あるいはインダクタ方式等あるが、ここではオフ電流の小さいトランジスタを利用して容量のばらつきを揃えることのできる回路構成を一例として挙げて説明する。
オフ電流の小さいトランジスタとしては、チャネル形成領域に酸化物半導体を有するトランジスタ(OSトランジスタ)が好ましい。オフ電流の小さいOSトランジスタを蓄電装置の電池制御ユニットの回路構成に用いることで、電池から漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。
チャネル形成領域に用いる酸化物半導体は、In−M−Zn酸化物(Mは、Ga、Sn、Y、Zr、La、Ce、またはNd)を用いる。酸化物半導体膜を成膜するために用いるターゲットにおいて、金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x1:y1:z1とすると、x1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であって、z1/y1は、1/3以上6以下、さらには1以上6以下であることが好ましい。なお、z1/y1を1以上6以下とすることで、酸化物半導体膜としてCAAC−OS膜が形成されやすくなる。
ここで、CAAC−OS膜について説明する。
CAAC−OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって、CAAC−OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
試料面と略平行な方向から、CAAC−OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
一方、試料面と略垂直な方向から、CAAC−OS膜の平面の高分解能TEM像を観察すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
CAAC−OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
また、CAAC−OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによってキャリア発生源となることがある。
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
また、CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。
なお、OSトランジスタは、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(Siトランジスタ)に比べてバンドギャップが大きいため、高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。直列に電池セルを接続する場合、数100Vの電圧が生じることになるが、蓄電装置においてこのような電池セルに適用される電池制御ユニットの回路構成には、前述のOSトランジスタで構成することが適している。
図22には、蓄電装置のブロック図の一例を示す。図22に示す蓄電装置BT00は、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07と、直列に接続された複数の電池セルBT09を含む電池部BT08と、を有する。
また、図22の蓄電装置BT00において、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される部分を、電池制御ユニットと呼ぶことができる。
切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の動作を制御する。具体的には、切り替え制御回路BT03は、電池セルBT09毎に測定された電圧に基づいて、放電する電池セル(放電電池セル群)、及び充電する電池セル(充電電池セル群)を決定する。
さらに、切り替え制御回路BT03は、当該決定された放電電池セル群及び充電電池セル群に基づいて、制御信号S1及び制御信号S2を出力する。制御信号S1は、切り替え回路BT04へ出力される。この制御信号S1は、端子対BT01と放電電池セル群とを接続させるように切り替え回路BT04を制御する信号である。また、制御信号S2は、切り替え回路BT05へ出力される。この制御信号S2は、端子対BT02と充電電池セル群とを接続させるように切り替え回路BT05を制御する信号である。
また、切り替え制御回路BT03は、切り替え回路BT04、切り替え回路BT05、及び変圧回路BT07の構成を踏まえ、端子対BT01と放電電池セル群との間、または端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士が接続されるように、制御信号S1及び制御信号S2を生成する。
切り替え制御回路BT03の動作の詳細について述べる。
まず、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09毎の電圧を測定する。そして、切り替え制御回路BT03は、例えば、所定の閾値以上の電圧の電池セルBT09を高電圧の電池セル(高電圧セル)、所定の閾値未満の電圧の電池セルBT09を低電圧の電池セル(低電圧セル)と判断する。
なお、高電圧セル及び低電圧セルを判断する方法については、様々な方法を用いることができる。例えば、切り替え制御回路BT03は、複数の電池セルBT09の中で、最も電圧の高い、又は最も電圧の低い電池セルBT09の電圧を基準として、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断してもよい。この場合、切り替え制御回路BT03は、各電池セルBT09の電圧が基準となる電圧に対して所定の割合以上か否かを判定する等して、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判断することができる。そして、切り替え制御回路BT03は、この判断結果に基づいて、放電電池セル群と充電電池セル群とを決定する。
なお、複数の電池セルBT09の中には、高電圧セルと低電圧セルが様々な状態で混在し得る。例えば、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルと低電圧セルが混在する中で、高電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を放電電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルが最も多く連続して直列に接続された部分を充電電池セル群とする。また、切り替え制御回路BT03は、過充電又は過放電に近い電池セルBT09を、放電電池セル群又は充電電池セル群として優先的に選択するようにしてもよい。
ここで、本実施の形態における切り替え制御回路BT03の動作例を、図23を用いて説明する。図23は、切り替え制御回路BT03の動作例を説明するための図である。なお、説明の便宜上、図23では4個の電池セルBT09が直列に接続されている場合を例に説明する。
まず、図23(A)の例では、電池セルa乃至dの電圧を電圧Va乃至電圧Vdとすると、Va=Vb=Vc>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。
次に、図23(B)の例では、Vc>Va=Vb>>Vdの関係にある場合を示している。つまり、連続する2つの低電圧セルa、bと、1つの高電圧セルcと、1つの過放電間近の低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルcを放電電池セル群として決定する。また、切り替え制御回路BT03は、低電圧セルdが過放電間近であるため、連続する2つの低電圧セルa及びbではなく、低電圧セルdを充電電池セル群として優先的に決定する。
最後に、図23(C)の例では、Va>Vb=Vc=Vdの関係にある場合を示している。つまり、1つの高電圧セルaと、連続する3つの低電圧セルb乃至dとが直列に接続されている。この場合、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルaを放電電池セル群と決定する。また、切り替え制御回路BT03は、連続する3つの低電圧セルb乃至dを充電電池セル群として決定する。
切り替え制御回路BT03は、上記図23(A)乃至(C)の例のように決定された結果に基づいて、切り替え回路BT04の接続先である放電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S1と、切り替え回路BT05の接続先である充電電池セル群を示す情報が設定された制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05に対してそれぞれ出力する。
以上が、切り替え制御回路BT03の動作の詳細に関する説明である。
切り替え回路BT04は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S1に応じて、端子対BT01の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された放電電池セル群に設定する。
端子対BT01は、対を成す端子A1及びA2により構成される。切り替え回路BT04は、この端子A1及びA2のうち、いずれか一方を放電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を放電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子対BT01の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT04は、制御信号S1に設定された情報を用いて放電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路BT05は、切り替え制御回路BT03から出力される制御信号S2に応じて、端子対BT02の接続先を、切り替え制御回路BT03により決定された充電電池セル群に設定する。
端子対BT02は、対を成す端子B1及びB2により構成される。切り替え回路BT05は、この端子B1及びB2のうち、いずれか一方を充電電池セル群の中で最も上流(高電位側)に位置する電池セルBT09の正極端子と接続し、他方を充電電池セル群の中で最も下流(低電位側)に位置する電池セルBT09の負極端子と接続することにより、端子対BT02の接続先を設定する。なお、切り替え回路BT05は、制御信号S2に設定された情報を用いて充電電池セル群の位置を認識することができる。
切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図を図24及び図25に示す。
図24では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10と、バスBT11及びBT12とを有する。バスBT11は、端子A1と接続されている。また、バスBT12は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT11及びBT12と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタBT10のうち、最上流に位置するトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT10のうち、最下流に位置するトランジスタBT10のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT04は、複数のトランジスタBT10のゲートに与える制御信号S1に応じて、バスBT11に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つと、バスBT12に接続される複数のトランジスタBT10のうちの1つとをそれぞれ導通状態にすることにより、放電電池セル群と端子対BT01とを接続する。これにより、放電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか一方と接続される。また、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子は、端子対の端子A1又はA2のいずれか他方、すなわち正極端子と接続されていない方の端子に接続される。
トランジスタBT10には、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、放電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、放電電池セル群の出力電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT10が接続された電池セルBT09と端子対BT01とを絶縁状態とすることができる。
また、図24では、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14と、バスBT15と、バスBT16とを有する。バスBT15及びBT16は、複数のトランジスタBT13と、電流制御スイッチBT14との間に配置される。複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの一方は、それぞれ1つおきに交互に、バスBT15及びBT16と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。
なお、複数のトランジスタBT13のうち、最上流に位置するトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタBT13のうち、最下流に位置するトランジスタBT13のソース又はドレインの他方は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
トランジスタBT13には、トランジスタBT10と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタはオフ電流が小さいため、充電電池セル群に属しない電池セルから漏洩する電荷量を減らし、時間の経過による容量の低下を抑制することができる。またOSトランジスタは高電圧を印加した際の絶縁破壊が生じにくい。そのため、充電電池セル群を充電するための電圧が大きくても、非導通状態とするトランジスタBT13が接続された電池セルBT09と端子対BT02とを絶縁状態とすることができる。
電流制御スイッチBT14は、スイッチ対BT17とスイッチ対BT18とを有する。スイッチ対BT17の一端は、端子B1に接続されている。また、スイッチ対BT17の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている。スイッチ対BT18の一端は、端子B2に接続されている。また、スイッチ対BT18の他端は2つのスイッチで分岐しており、一方のスイッチはバスBT15に接続され、他方のスイッチはバスBT16に接続されている。
スイッチ対BT17及びスイッチ対BT18が有するスイッチは、トランジスタBT10及びトランジスタBT13と同様に、OSトランジスタを用いることが好ましい。
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じて、トランジスタBT13、及び電流制御スイッチBT14のオン/オフ状態の組み合わせを制御することにより、充電電池セル群と端子対BT02とを接続する。
切り替え回路BT05は、一例として、以下のようにして充電電池セル群と端子対BT02とを接続する。
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されているトランジスタBT13を導通状態にする。また、切り替え回路BT05は、複数のトランジスタBT13のゲートに与える制御信号S2に応じて、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子に接続されているトランジスタBT13を導通状態にする。
端子対BT02に印加される電圧の極性は、端子対BT01と接続される放電電池セル群、及び変圧回路BT07の構成によって変わり得る。また、充電電池セル群を充電する方向に電流を流すためには、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性の端子同士を接続する必要がある。そこで、電流制御スイッチBT14は、制御信号S2により、端子対BT02に印加される電圧の極性に応じてスイッチ対BT17及びスイッチ対BT18の接続先をそれぞれ切り替えるように制御される。
一例として、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加されている状態を挙げて説明する。この時、電池部BT08の最下流の電池セルBT09が充電電池セル群である場合、スイッチ対BT17は、制御信号S2により、当該電池セルBT09の正極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT17のバスBT16に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT17のバスBT15に接続されるスイッチがオフ状態となる。一方、スイッチ対BT18は、制御信号S2により、当該電池セルBT09の負極端子と接続されるように制御される。すなわち、スイッチ対BT18のバスBT15に接続されるスイッチがオン状態となり、スイッチ対BT18のバスBT16に接続されるスイッチがオフ状態となる。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
また、電流制御スイッチBT14は、切り替え回路BT05ではなく、切り替え回路BT04に含まれていてもよい。
図25は、図24とは異なる、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05の構成例を示す回路図である。
図25では、切り替え回路BT04は、複数のトランジスタ対BT21と、バスBT24及びバスBT25とを有する。バスBT24は、端子A1と接続されている。また、バスBT25は、端子A2と接続されている。複数のトランジスタ対BT21の一端は、それぞれトランジスタBT22とトランジスタBT23とにより分岐している。トランジスタBT22のソース又はドレインの一方は、バスBT24と接続されている。また、トランジスタBT23のソース又はドレインの一方は、バスBT25と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT21の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対BT21のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT21のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT21の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT04は、制御信号S1に応じてトランジスタBT22及びトランジスタBT23の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT21の接続先を、端子A1又は端子A2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタBT22が導通状態であれば、トランジスタBT23は非導通状態となり、その接続先は端子A1になる。一方、トランジスタBT23が導通状態であれば、トランジスタBT22は非導通状態となり、その接続先は端子A2になる。トランジスタBT22及びトランジスタBT23のどちらが導通状態になるかは、制御信号S1によって決定される。
端子対BT01と放電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT21が用いられる。詳細には、制御信号S1に基づいて、2つのトランジスタ対BT21の接続先がそれぞれ決定されることにより、放電電池セル群と端子対BT01とが接続される。2つのトランジスタ対BT21のそれぞれの接続先は、一方が端子A1となり、他方が端子A2となるように、制御信号S1によって制御される。
切り替え回路BT05は、複数のトランジスタ対BT31と、バスBT34及びバスBT35とを有する。バスBT34は、端子B1と接続されている。また、バスBT35は、端子B2と接続されている。複数のトランジスタ対BT31の一端は、それぞれトランジスタBT32とトランジスタBT33とにより分岐している。トランジスタBT32により分岐する一端は、バスBT34と接続されている。また、トランジスタBT33により分岐する一端は、バスBT35と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31の他端は、それぞれ隣接する2つの電池セルBT09の間に接続されている。なお、複数のトランジスタ対BT31のうち、最上流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、電池部BT08の最上流に位置する電池セルBT09の正極端子と接続されている。また、複数のトランジスタ対BT31のうち、最下流に位置するトランジスタ対BT31の他端は、電池部BT08の最下流に位置する電池セルBT09の負極端子と接続されている。
切り替え回路BT05は、制御信号S2に応じてトランジスタBT32及びトランジスタBT33の導通/非導通状態を切り換えることにより、当該トランジスタ対BT31の接続先を、端子B1又は端子B2のいずれか一方に切り替える。詳細には、トランジスタBT32が導通状態であれば、トランジスタBT33は非導通状態となり、その接続先は端子B1になる。逆に、トランジスタBT33が導通状態であれば、トランジスタBT32は非導通状態となり、その接続先は端子B2になる。トランジスタBT32及びトランジスタBT33のどちらが導通状態となるかは、制御信号S2によって決定される。
端子対BT02と充電電池セル群とを接続するには、2つのトランジスタ対BT31が用いられる。詳細には、制御信号S2に基づいて、2つのトランジスタ対BT31の接続先がそれぞれ決定されることにより、充電電池セル群と端子対BT02とが接続される。2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、一方が端子B1となり、他方が端子B2となるように、制御信号S2によって制御される。
また、2つのトランジスタ対BT31のそれぞれの接続先は、端子対BT02に印加される電圧の極性によって決定される。具体的には、端子B1が正極、端子B2が負極となるような電圧が端子対BT02に印加されている場合、上流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT32が導通状態となり、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT33が導通状態、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。また、端子B1が負極、端子B2が正極となるような電圧が端子対BT02に印加されている場合は、上流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT33が導通状態となり、トランジスタBT32が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。一方、下流側のトランジスタ対BT31は、トランジスタBT32が導通状態、トランジスタBT33が非導通状態となるように、制御信号S2によって制御される。このようにして、端子対BT02と充電電池セル群との間で、同じ極性をもつ端子同士が接続される。そして、端子対BT02から流れる電流の方向が、充電電池セル群を充電する方向となるように制御される。
変圧制御回路BT06は、変圧回路BT07の動作を制御する。変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、変圧回路BT07の動作を制御する変圧信号S3を生成し、変圧回路BT07へ出力する。
なお、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数よりも多い場合は、充電電池セル群に対して過剰に大きな充電電圧が印加されることを防止する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群を充電できる範囲で放電電圧(Vdis)を降圧させるように変圧回路BT07を制御する変圧信号S3を出力する。
また、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下である場合は、充電電池セル群を充電するために必要な充電電圧を確保する必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、充電電池セル群に過剰な充電電圧が印加されない範囲で放電電圧(Vdis)を昇圧させるように変圧回路BT07を制御する変圧信号S3を出力する。
なお、過剰な充電電圧とする電圧値は、電池部BT08で使用される電池セルBT09の製品仕様等に鑑みて決定することができる。また、変圧回路BT07により昇圧及び降圧された電圧は、充電電圧(Vcha)として端子対BT02に印加される。
ここで、本実施形態における変圧制御回路BT06の動作例を、図26(A)乃至(C)を用いて説明する。図26(A)乃至(C)は、図23(A)乃至(C)で説明した放電電池セル群及び充電電池セル群に対応させた、変圧制御回路BT06の動作例を説明するための概念図である。なお図26(A)乃至(C)は、電池制御ユニットBT41を図示している。電池制御ユニットBT41は、上述したように、端子対BT01と、端子対BT02と、切り替え制御回路BT03と、切り替え回路BT04と、切り替え回路BT05と、変圧制御回路BT06と、変圧回路BT07とにより構成される。
図26(A)に示される例では、図21(A)で説明したように、連続する3つの高電圧セルa乃至cと、1つの低電圧セルdとが直列に接続されている。この場合、図21(A)を用いて説明したように、切り替え制御回路BT03は、高電圧セルa乃至cを放電電池セル群として決定し、低電圧セルdを充電電池セル群として決定する。そして、変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に基づいて、放電電圧(Vdis)から充電電圧(Vcha)への変換比Nを算出する。
なお放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数よりも多い場合に、放電電圧を変圧せずに端子対BT02にそのまま印加すると、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09に、端子対BT02を介して過剰な電圧が印加される可能性がある。そのため、図26(A)に示されるような場合では、端子対BT02に印加される充電電圧(Vcha)を、放電電圧よりも降圧させる必要がある。さらに、充電電池セル群を充電するためには、充電電圧は、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の合計電圧より大きい必要がある。そのため、変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比よりも、変換比Nを大きく設定する。
変圧制御回路BT06は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数を基準とした時の、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数の比に対して、変換比Nを1乃至10%程度大きくするのが好ましい。この時、充電電圧は充電電池セル群の電圧よりも大きくなるが、実際には充電電圧は充電電池セル群の電圧と等しくなる。ただし、変圧制御回路BT06は変換比Nに従い充電電池セル群の電圧を充電電圧と等しくするために、充電電池セル群を充電する電流を流すこととなる。この電流は変圧制御回路BT06に設定された値となる。
図26(A)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が3個で、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の数が1個であるため、変圧制御回路BT06は、1/3より少し大きい値を変換比Nとして算出する。そして、変圧制御回路BT06は、放電電圧を当該変換比Nに応じて降圧し、充電電圧に変換する変圧信号S3を変圧回路BT07に出力する。そして、変圧回路BT07は、変圧信号S3に応じて変圧された充電電圧を、端子対BT02に印加する。そして、端子対BT02に印加される充電電圧によって、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09が充電される。
また、図26(B)や図26(C)に示される例でも、図26(A)と同様に、変換比Nが算出される。図26(B)や図26(C)に示される例では、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数が、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数以下であるため、変換比Nは1以上となる。よって、この場合は、変圧制御回路BT06は、放電電圧を昇圧して充電電圧に変換する変圧信号S3を出力する。
変圧回路BT07は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換する。そして、変圧回路BT07は、変換された充電電圧を端子対BT02に印加する。ここで、変圧回路BT07は、端子対BT01と端子対BT02との間を電気的に絶縁している。これにより、変圧回路BT07は、放電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧と、充電電池セル群の中で最も下流に位置する電池セルBT09の負極端子の絶対電圧との差異による短絡を防止する。さらに、変圧回路BT07は、上述したように、変圧信号S3に基づいて放電電池セル群の合計電圧である放電電圧を充電電圧に変換する。
また、変圧回路BT07は、例えば絶縁型DC(Direct Current)−DCコンバータ等を用いることができる。この場合、変圧制御回路BT06は、絶縁型DC−DCコンバータのオン/オフ比(デューティー比)を制御する信号を変圧信号S3として出力することにより、変圧回路BT07で変換される充電電圧を制御する。
なお、絶縁型DC−DCコンバータには、フライバック方式、フォワード方式、RCC(Ringing Choke Converter)方式、プッシュプル方式、ハーフブリッジ方式、及びフルブリッジ方式等が存在するが、目的とする出力電圧の大きさに応じて適切な方式が選択される。
絶縁型DC−DCコンバータを用いた変圧回路BT07の構成を図27に示す。絶縁型DC−DCコンバータBT51は、スイッチ部BT52とトランス部BT53とを有する。スイッチ部BT52は、絶縁型DC−DCコンバータの動作のオン/オフを切り替えるスイッチであり、例えば、MOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)やバイポーラ型トランジスタ等を用いて実現される。また、スイッチ部BT52は、変圧制御回路BT06から出力される、オン/オフ比を制御する変圧信号S3に基づいて、絶縁型DC−DCコンバータBT51のオン状態とオフ状態を周期的に切り替える。なお、スイッチ部BT52は、使用される絶縁型DC−DCコンバータの方式によって様々な構成を取り得る。トランス部BT53は、端子対BT01から印加される放電電圧を充電電圧に変換する。詳細には、トランス部BT53は、スイッチ部BT52のオン/オフ状態と連動して動作し、そのオン/オフ比に応じて放電電圧を充電電圧に変換する。この充電電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が長いほど大きくなる。一方、充電電圧は、スイッチ部BT52のスイッチング周期において、オン状態となる時間が短いほど小さくなる。なお、絶縁型DC−DCコンバータを用いる場合、トランス部BT53の内部で、端子対BT01と端子対BT02は互いに絶縁することができる。
本実施形態における蓄電装置BT00の処理の流れを、図28を用いて説明する。図28は、蓄電装置BT00の処理の流れを示すフローチャートである。
まず、蓄電装置BT00は、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧を取得する(ステップS001)。そして、蓄電装置BT00は、複数の電池セルBT09の電圧を揃える動作の開始条件を満たすか否かを判定する(ステップS002)。この開始条件は、例えば、複数の電池セルBT09毎に測定された電圧の最大値と最小値との差分が、所定の閾値以上か否か等とすることができる。この開始条件を満たさない場合は(ステップS002:NO)、各電池セルBT09の電圧のバランスが取れている状態であるため、蓄電装置BT00は、以降の処理を実行しない。一方、開始条件を満たす場合は(ステップS002:YES)、蓄電装置BT00は、各電池セルBT09の電圧を揃える処理を実行する。この処理において、蓄電装置BT00は、測定されたセル毎の電圧に基づいて、各電池セルBT09が高電圧セルか低電圧セルかを判定する(ステップS003)。そして、蓄電装置BT00は、判定結果に基づいて、放電電池セル群及び充電電池セル群を決定する(ステップS004)。さらに、蓄電装置BT00は、決定された放電電池セル群を端子対BT01の接続先に設定する制御信号S1、及び決定された充電電池セル群を端子対BT02の接続先に設定する制御信号S2を生成する(ステップS005)。蓄電装置BT00は、生成された制御信号S1及び制御信号S2を、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05へそれぞれ出力する。そして、切り替え回路BT04により、端子対BT01と放電電池セル群とが接続され、切り替え回路BT05により、端子対BT02と放電電池セル群とが接続される(ステップS006)。また、蓄電装置BT00は、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と、充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、変圧信号S3を生成する(ステップS007)。そして、蓄電装置BT00は、変圧信号S3に基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧を充電電圧に変換し、端子対BT02に印加する(ステップS008)。これにより、放電電池セル群の電荷が充電電池セル群へ移動される。
また、図28のフローチャートでは、複数のステップが順番に記載されているが、各ステップの実行順序は、その記載の順番に制限されない。
以上、本実施形態によれば、放電電池セル群から充電電池セル群へ電荷を移動させる際、キャパシタ方式のように、放電電池セル群からの電荷を一旦蓄積し、その後充電電池セル群へ放出させるような構成を必要としない。これにより、単位時間あたりの電荷移動効率を向上させることができる。また、切り替え回路BT04及び切り替え回路BT05により、放電電池セル群及び充電電池セル群のうち、変圧回路と接続する電池セルを、個別に切り替えられる。
さらに、変圧回路BT07により、放電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数と充電電池セル群に含まれる電池セルBT09の個数とに基づいて、端子対BT01に印加される放電電圧が充電電圧に変換され、端子対BT02に印加される。これにより、放電側及び充電側の電池セルBT09がどのように選択されても、問題なく電荷の移動を実現できる。
さらに、トランジスタBT10及びトランジスタBT13にOSトランジスタを用いることにより、充電電池セル群及び放電電池セル群に属しない電池セルBT09から漏洩する電荷量を減らすことができる。これにより、充電及び放電に寄与しない電池セルBT09の容量の低下を抑制することができる。また、OSトランジスタは、Siトランジスタに比べて熱に対する特性の変動が小さい。これにより、電池セルBT09の温度が上昇しても、制御信号S1、S2に応じた導通状態と非導通状態の切り替えといった、正常な動作をさせることができる。
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせて実施することが可能である。
(実施の形態5)
≪二次電池の他の構造例≫
図29に、本発明の一態様に係る二次電池2100を示す。図29(A)は二次電池2100の斜視図、図29(B)は二次電池2100の上面図である。図29(C)は、図29(B)の一点破線G1−G2における断面図である。
図29に示す二次電池2100は、外装体2107の3辺が封止されている。また、正極リード2121および負極リード2125、および正極2111、負極2115およびセパレータ2103を有する。なお、図29(C)では図を明瞭にするため、正極2111、負極2115、セパレータ2103、正極リード2121、負極リード2125、および封止層2120を抜粋して示す。また、一部の電極は2以上の集電体を有し、該集電体は互いの活物質が形成されていない面で接していてもよい。
ここで図30を用いて、図29に示す二次電池2100の作製方法の一部について説明する。
まずセパレータ2103上に、負極2115を配置する(図30(A))。このとき、負極2115が有する負極活物質層が、セパレータ2103と重畳するように配置する。
次に、セパレータ2103を折り曲げ、負極2115の上にセパレータ2103を重ねる。次に、セパレータ2103の上に、正極2111を重ねる(図30(B))。このとき、正極2111が有する正極活物質層が、セパレータ2103および負極活物質層と重畳するように配置する。なお、集電体の片面に活物質層が形成されている電極を用いる場合は、正極2111の正極活物質層と、負極2115の負極活物質層がセパレータ2103を介して対向するように配置する。
セパレータ2103にポリプロピレン等の熱溶着が可能な材料を用いている場合は、セパレータ2103同士が重畳している領域を熱溶着してから次の電極を重ねることで、作製工程中に電極がずれることを抑制できる。具体的には、負極2115または正極2111と重畳しておらず、セパレータ2103同士が重畳している領域、たとえば図30(B)の領域2103aで示す領域を熱溶着することが好ましい。
この工程を繰り返すことで、図30(C)に示すように、セパレータ2103を挟んで正極2111および負極2115を積み重ねることができる。
なお、あらかじめ繰り返し折り曲げたセパレータ2103に、複数の負極2115および複数の正極2111を交互に挟むように配置してもよい。
次に、図30(C)に示すように、セパレータ2103で複数の正極2111および複数の負極2115を覆う。
さらに、図30(D)に示すように、セパレータ2103同士が重畳している領域、例えば図30(D)に示す領域2103bを熱溶着することで、複数の正極2111と複数の負極2115を、セパレータ2103によって覆い、結束する。
なお、複数の正極2111、複数の負極2115およびセパレータ2103を、結束材を用いて結束してもよい。
このような工程で正極2111および負極2115を積み重ねるため、セパレータ2103は、1枚のセパレータ2103の中で、複数の正極2111と複数の負極2115に挟まれている領域と、複数の正極2111と複数の負極2115を覆うように配置されている領域とを有する。
換言すれば、図29の二次電池2100が有するセパレータ2103は、一部が折りたたまれた1枚のセパレータである。セパレータ2103の折りたたまれた領域に、複数の正極2111と、複数の負極2115が挟まれている。
図31に、図29と異なる二次電池2200を示す。図31(A)は二次電池2200の斜視図、図31(B)は二次電池2200の上面図である。図31(C1)は第1の電極組立体2130、図31(C2)は第2の電極組立体2131の断面図である。図31(D)は、図31(B)の一点破線H1−H2における断面図である。なお、図31(D)では図を明瞭にするため、第1の電極組立体2130、第2の電極組立体2131およびセパレータ2103を抜粋して示す。また、一部の電極は2以上の集電体を有し、該集電体は互いの活物質が形成されていない面で接していてもよい。
図31に示す二次電池2200は、正極2111aと負極2115aの配置、およびセパレータ2103の配置が図29の二次電池2100と異なる。
図31(D)に示すように、二次電池2200は、複数の第1の電極組立体2130および複数の第2の電極組立体2131を有する。
図31(C1)に示すように、第1の電極組立体2130では、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極2111a、セパレータ2103、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極2115a、セパレータ2103、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極2111aがこの順に積層されている。また図31(C2)に示すように、第2の電極組立体2131では、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極2115a、セパレータ2103、正極集電体の両面に正極活物質層を有する正極2111a、セパレータ2103、負極集電体の両面に負極活物質層を有する負極2115aがこの順に積層されている。
さらに図31(D)に示すように、複数の第1の電極組立体2130および複数の第2の電極組立体2131は、巻回したセパレータ2103によって覆われている。
ここで図32を用いて、図31に示す二次電池2200の作製方法の一部について説明する。
まずセパレータ2103上に、第1の電極組立体2130を配置する(図32(A))。
次に、セパレータ2103を折り曲げ、第1の電極組立体2130の上にセパレータ2103を重ねる。次に、第1の電極組立体2130の上下に、セパレータ2103を介して、2組の第2の電極組立体2131を重ねる(図32(B))。
次に、セパレータ2103を、2組の第2の電極組立体2131を覆うように巻回させる。さらに、2組の第2の電極組立体2131の上下に、セパレータ2103を介して、2組の第1の電極組立体2130を重ねる(図32(C))。
次に、セパレータ2103を、2組の第1の電極組立体2130を覆うように巻回させる(図32(D))。
このような工程で複数の第1の電極組立体2130および複数の第2の電極組立体2131を積み重ねるため、これらの電極組立体は、渦巻き状に巻回されたセパレータ2103の間に配置される。
なお、最も外側に配置される第1の電極組立体2130の正極2111aは、外側には正極活物質層を設けないことが好ましい。
また図31(C1)および(C2)では、電極組立体が電極3枚とセパレータ2枚を有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。電極を4枚以上、セパレータを3枚以上有する構成としてもよい。電極を増やすことで、二次電池2200の容量をより向上させることができる。また電極を2枚、セパレータを1枚有する構成としてもよい。電極が少ない場合、より湾曲に強い二次電池2200とすることができる。また図31(D)では、二次電池2200が第1の電極組立体2130を3組、第2の電極組立体2131を2組有する構成を示したが、本発明の一態様はこれに限らない。さらに多くの電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体を増やすことで、二次電池2200の容量をより向上させることができる。またより少ない電極組立体を有する構成としてもよい。電極組立体が少ない場合、より湾曲に強い二次電池2200とすることができる。
二次電池2200の、正極2111と負極2115の配置、およびセパレータ2103の配置の他は、図29についての記載を参酌することができる。
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
本実施例では、実施の形態1で示した方法で作製した、本発明の一態様に係るリチウム含有複合リン酸塩について説明する。
まず、Li:Fe:P=2:1:1のモル比となるように、LiOH・H2O、FeCl2・4H2O、及びNH4H2PO4をそれぞれ秤量した。具体的には、LiOH・H2Oを1.6784gと、FeCl2・4H2Oを3.9758gと、NH4H2PO4を2.3014gとをそれぞれ秤量した。
次に、窒素バブリングを30分行った純水30mlにLiOH・H2O、FeCl2・4H2O、NH4H2PO4をそれぞれ溶解させて、Liを含む溶液、Pを含む溶液、及びFeを含む溶液を形成した。
次に、大気雰囲気下で、撹拌させながらLiを含む溶液及びPを含む溶液を混合して、混合液Cを形成した。
次に、大気雰囲気下で、混合液Cを撹拌しながら、Feを含む溶液を少量ずつ滴下し、窒素バブリングを30分行った純水10mlを加えて、混合液Dを形成した。
次に、フッ素樹脂性内筒を有するオートクレーブ装置に混合液Dを入れ、150℃で19時間、加熱した。加熱中の内筒内の圧力は0.2MPaから0.4MPaの間であった。加熱した後、内筒を冷却し、内筒内の合成物を、ろ過し、水洗した。オートクレーブ装置にはオーエムラボテック社製ミニリアクターMS200−Cを用いた。
次に、真空雰囲気及び60℃で2時間乾燥させ、合成物Bを採取した。
次に、合成物Bを走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM像を図33に示す。リチウム含有複合リン酸塩が2つの板状の構造体を有し、2つの板状の構造体の間に角柱状の構造体を有し、2つの板状の構造体の間に空隙があることを確認できた。なお、SEM観察には日立ハイテクノロジーズ社製走査電子顕微鏡装置SU8030を用い、倍率を30,000倍として観察した。
次に、合成物BをFIB(Focused Ion Beam)で断面加工し、合成物Bの断面をSEMで観察した。SEM像を図34に示す。FIBでの断面加工とSEM観察を繰り返すことで、構造の3次元の情報を得られる。この様な観察手法はSlice and Viewと呼ばれる。図34(A)乃至図34(F)はSlice and Viewで得られた像であり、図34(A)乃至図34(F)の破線で示す粒子は、同じ粒子を示す。リチウム含有複合リン酸塩が2つの板状の構造体を有し、2つの板状の構造体の間に角柱状の構造体を有し、2つの板状の構造体の間に空隙があることを確認できた。なお、FIB加工にはFEI社製HELIOS NANOLAB650装置を、SEM観察にはFEI社製HELIOS NANOLAB650装置を使用した。
次に、合成物Bの電子線回折(XRD)測定を行った。XRDスペクトルを図35に示す。図35は、横軸に回折角度2θ[deg.]として、縦軸に回折X線強度(任意単位)をとる。図35の上は合成物B、下は無機結晶構造データベース(Inorganic Crystal Structure Database:ICSD)のLiFePO4(ICSD Code 92198)を示しており、ピーク位置がほぼ一致することから、合成物Bはオリビン型構造のリン酸鉄リチウムの結晶であることを確認できた。なお、XRD測定にはBruker AXS社製X線回折装置D8 ADVANCEを用い、X線源として波長0.15418nmのCuKα線を用いた。
次に、合成物Bの粒子径測定を行った。粒子径のヒストグラムを図36に示す。図36は、横軸に粒子径[μm]として、縦軸に体積基準の頻度[%]をとる。小粒子径側の分布は一次粒子、大粒子径側の分布は凝集体(二次粒子)と考えることができ、一次粒子の最頻値は0.68μmであった。なお、粒子径測定には島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD−2200を用い、粒子径範囲0.03μmから1000μmで、対数スケールで51分割した測定間隔で測定した。
以上のように、本実施例では、本発明の一態様に係るリチウム含有複合リン酸塩について合成し、粒子形状等を確認した。