JP6832639B2 - 繊維強化プロピレン系樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents

繊維強化プロピレン系樹脂組成物およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、繊維強化プロピレン系樹脂組成物およびその製造方法に関する。
繊維強化ポリプロピレン樹脂は、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されており、要求される性能に応じて種々の改質材や添加剤が配合されたプロピレン系樹脂組成物が使用されている。また、循環型社会を形成するための3R(Reduce、Reuse、Recycle)への取り組みとして、最近各産業分野で薄肉成形品による軽量化が試みられている。成形品を軽量化または薄肉化しても充分な剛性と低温耐衝撃性が得られるように繊維強化プロピレン系樹脂組成物の改良が進められている。
一般に、ポリプロピレン樹脂の改質材として、エチレン・α−オレフィン系共重合体からなる軟質オレフィン系樹脂が配合される。更なる性能向上のため、結晶性のポリエチレンセグメントと非晶性または低結晶性のエチレン・α−オレフィン系共重合体セグメントとが化学的に結合した、オレフィン系ブロックポリマーの改質材としての応用に期待が持たれている。
このようなオレフィン系ブロックポリマーに関する技術としては、特許文献1に開示のリビング重合触媒を用いて得られるポリエチレンセグメントとエチレン・α−オレフィン系共重合体セグメントとからなる直鎖状ブロックポリマーに関する技術や、特許文献2に開示の2種の触媒間の可逆的な連鎖移動反応を利用したマルチブロック構造のポリマーの製造に関する技術が挙げられる。
このような直鎖状のブロックポリマーとは別に、特許文献3〜8には、主鎖および側鎖からなり、その一方がソフトセグメント、他方がハードセグメントである異種組成セグメントからなるグラフト型共重合体を得る方法が提案されている。これらの開示は、総じて、末端にビニル基を有するポリエチレン等のハードセグメントを合成し、その合成に次いで、またはその合成と同時に、該ポリエチレン等のハードセグメントを、エチレンや炭素数3以上のα−オレフィンと共重合させることによって主鎖であるソフトセグメントに導入する技術に関する。
例えば、特許文献3や特許文献4には、特定のメタロセン触媒を用いて生成した末端ビニルポリエチレンをエチレンと共重合させてグラフト型オレフィンポリマーを得る方法が開示されている。本開示技術では、末端にビニル基を有するポリエチレンが得られるものの、末端ビニル生成効率が低く、そのため、側鎖として取り込まれなかったポリエチレンが多量に残る。このグラフトポリマーをポリプロピレン樹脂に配合した際には、多量に含まれる未反応ポリエチレンが低温耐衝撃性等の機械的物性を低下させるため、このグラフトポリマーの改質樹脂としての性能には改善の余地があり、このグラフトポリマーを使用しても所望の物性を発現するポリプロピレン樹脂組成物を得るに至っていない。
一方、特許文献5〜7では、特定の非メタロセン系錯体触媒を用いることによって高い生成率にて側鎖用の末端ビニルポリエチレンを合成する技術が開示されている。本発明者らは、特許文献5または7の実施例に開示された主鎖生成用の触媒を用いて追試を行ってみたところ、一定量の末端ビニルポリエチレンが主鎖中に共重合されるものの、末端ビニルポリエチレンの取り込みが不十分であることを確認している。このようにして得られるブロックポリマーでは側鎖導入量も限定されるため、このブロックポリマーをポリプロピレンの改質樹脂として活用しようとしてもその改質性能は不十分である。
特許文献8には、共担持触媒系により、高効率に側鎖を導入する手法が開示されているが、主鎖が結晶性の重合体に限定され、プロピレン系樹脂の改質用に適した非晶または低結晶領域の重合体を製造することは困難である。
特開2007−84806号公報 特開2012−237013号公報 特表平8−502303号公報 特開2001−527589号公報 特開2002−105132号公報 特開2007−39540号公報 特開2007−39541号公報 特開2009−144148号公報
前述したように、前記特許文献に開示された、異種ポリマーが化学的に連結したブロックポリマーやグラフトポリマーをポリプロピレン樹脂の改質材として適用しても、性能のバランスは未だ不十分である。すなわち、高剛性を維持しつつ、優れた低温耐衝撃性を備える繊維強化プロピレン系樹脂組成物の開発が望まれている。
本発明は、高剛性であり、かつ優れた低温耐衝撃性を有する繊維強化プロピレン系樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、以下の[1]〜[8]に関する。
[1]ASTM D1238Eに準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10minであるプロピレン系重合体(α)1〜99質量部、並びに、前記プロピレン系重合体(α)以外の下記要件(I)、(IV)および(V)を満たすオレフィン系樹脂(β)1〜99質量部(前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である)を含有する樹脂組成物100質量部と、
強化繊維1〜50質量部と、
を含有することを特徴とする繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
(I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12.0dl/gの範囲内である。
[2]前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(II)および(III)をさらに満たす[1]に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
(II)示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解温度を有する融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内である。
(III)クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eが60質量%以下である。
[3]JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率が600〜9000MPaの範囲内である[1]または[2]に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
[4]前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量が500〜15000の範囲内である[1]〜[3]のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
[5]前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり、前記側鎖が0.1〜20の平均頻度で存在する[1]〜[4]のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
[6]前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(VI)をさらに満たす[1]〜[5]のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
(VI)ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重での前記オレフィン系樹脂(β)のMFRをM g/10minとし、135℃のデカリン中で測定された前記オレフィン系樹脂(β)の極限粘度[η]をH g/dlとしたとき、下記式(Eq−1)で表される値Aが30〜280の範囲内である。
A=M/exp(−3.3H)・・・(Eq−1)。
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、
下記(A)〜(C)の成分を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合することにより、前記オレフィン系樹脂(β)を製造する工程を含むことを特徴とする繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法。
(A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
(B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
(C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C−3)前記架橋メタロセン化合物(A)または前記遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物、からなる群から選択される少なくとも1種の化合物
Figure 0006832639
(式(I)中、R、R、R、R、R、R、RおよびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
およびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
は炭素原子またはケイ素原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
Figure 0006832639
(式[B]中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
mは1〜4の整数を示す。
は、Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素数1〜8の炭化水素基を示す。
〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士が互いに連結して環を形成していてもよい。
〜Rは炭化水素基を示し、R〜Rの少なくとも一つは芳香族炭化水素基である。
mが2以上の整数の場合、式[B]の構造単位相互間において、R〜Rのうち二つの基が互いに連結していてもよい。
nは、Mの価数を満たす数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
nが2以上の整数である場合、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)。
[8]前記共重合する工程が、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法により共重合する工程である[7]に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法。
本発明によれば、高剛性であり、かつ優れた低温耐衝撃性を有する繊維強化プロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
[繊維強化プロピレン系樹脂組成物]
本発明者らは、前述した課題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン重合体を側鎖に持つグラフト型エチレン・α−オレフィン系共重合体を含有するオレフィン系樹脂を含む繊維強化プロピレン系樹脂組成物が、剛性の低下を最少量に保ちつつ、優れた低温耐衝撃性を備えることを見出した。
前記オレフィン系樹脂に含有されるグラフト型エチレン・α−オレフィン系共重合体は、ガラス転移温度(Tg)が低い主鎖と特定の分子構造の結晶性ポリエチレンを側鎖に有する。そのため、前記オレフィン系樹脂をポリプロピレンに添加した際、低Tgを有する主鎖により低温耐衝撃性が発現されると同時に、物理架橋点として作用する側鎖ポリエチレン成分により剛性や硬度が良好に発現される。その結果、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性を維持しつつ、低温耐衝撃性とのバランスが著しく向上すると推察される。
このように、本発明者らは、エチレン重合体を側鎖に持つグラフト型エチレン・α−オレフィン系共重合体を含有するオレフィン系樹脂を含む繊維強化プロピレン系樹脂組成物により、剛性および低温耐衝撃性を高度な水準でバランスよく実現することができたことから、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系重合体(α)1〜99質量部およびオレフィン系樹脂(β)1〜99質量部を含有する樹脂組成物100質量部と、強化繊維1〜50質量部と、を含む。なお、前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である。
前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とするとき、前記プロピレン系重合体(α)の含有量は1〜99質量部であり、30〜90質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましく、60〜80質量部がさらに好ましい。また、前記オレフィン系樹脂(β)の含有量は1〜99質量部であり、10〜70質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましく、20〜40質量部がさらに好ましい。前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との含有量が前記範囲内であることにより、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性を低下させることなく、剛性と低温耐衝撃性とのバランスが良好になるため、繊維強化プロピレン系樹脂組成物を各種成形品に好適に使用することができる。
前記強化繊維の含有量は、前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計量100質量部に対し、1〜50質量部であり、3〜45質量部が好ましく、5〜40質量部がより好ましく、15〜35質量部がさらに好ましい。前記強化繊維の含有量が1質量部未満である場合、例えば自動車モジュール部品等に必要な高剛性を達成できない。また、前記強化繊維の含有量が50質量部を超える場合、低温耐衝撃性が低下するとともに、成形体の比重が大きくなるため、例えば軽量化が求められる自動車用部品等へ適用できない場合がある。
以下、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物に含まれる、プロピレン系重合体(α)、オレフィン系樹脂(β)および強化繊維について説明する。
<プロピレン系重合体(α)>
プロピレン系重合体(α)としては、例えばプロピレンの単独重合体、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種との共重合体等を用いることができる。該共重合体は、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。前記炭素数4以上のα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。この中でも1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
プロピレン系重合体(α)のASTM D1238Eに準拠した得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)は、0.1〜500g/10分であり、0.2〜400g/10分が好ましく、0.3〜300g/10分がより好ましく、10.0〜200g/10分がさらに好ましい。プロピレン系重合体(α)のMFRが0.1g/10分未満である場合、繊維強化プロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系重合体(α)とオレフィン系樹脂(β)との分散性が低下し、機械的強度が低下する。また、プロピレン系重合体(α)のMFRが500g/10分を超える場合、プロピレン系重合体(α)自体の強度が低下し、得られる繊維強化プロピレン系樹脂組成物の機械的強度が低下する。
<オレフィン系樹脂(β)>
オレフィン系樹脂(β)は、前記プロピレン系重合体(α)以外のオレフィン系樹脂であり、下記要件(I)、(IV)および(V)を満たし、下記要件(I)〜(VI)を全て満たすことが好ましい。なお、オレフィン系樹脂(β)は一種で構成されていてもよく、二種以上のオレフィン系樹脂から構成されていてもよい。
(I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
(II)示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解温度を有する融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内である。
(III)クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eが60質量%以下である。
(IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
(V)135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12.0dl/gの範囲内である。
(VI)ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重での前記オレフィン系樹脂(β)のMFRをM g/10minとし、135℃のデカリン中で測定された前記オレフィン系樹脂(β)の極限粘度[η]をH g/dlとしたとき、下記式(Eq−1)で表される値Aが30〜280の範囲内である。
A=M/exp(−3.3H)・・・(Eq−1)
以下、前記要件(I)〜(VI)について具体的に説明する。
(要件(I))
オレフィン系樹脂(β)は、グラフト型オレフィン系重合体[R1](以下、オレフィン系重合体[R1]とも示す)を含む。オレフィン系重合体[R1]は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト共重合体である。なお、本発明において「グラフト共重合体」とは、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したT型ポリマー又は櫛形ポリマーである。ただし、側鎖には本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、エチレン以外の繰り返し単位を含むことができる。
オレフィン系重合体[R1]は主鎖構造が非晶性または低結晶性のエチレン系共重合体であるにも関わらず、結晶性側鎖構造を有しているため、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)は、例えばエチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体等の一般的なエチレン系エラストマーに比べ、べたつきが少なく、製品ペレットのハンドリング性が良好である。
オレフィン系重合体[R1]は、主鎖および側鎖に関して、下記要件(i)〜(v)を満たすことが好ましい。
(i)主鎖が、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなり、前記エチレン由来の繰り返し単位を60〜97mol%、前記α−オレフィン由来の繰り返し単位を3〜40mol%含む。
(ii)主鎖の重量平均分子量が20000〜400000である。
(iii)側鎖が、実質的にエチレン由来の繰り返し単位からなる。
(iv)側鎖の重量平均分子量が500〜15000である。
(v)主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり、側鎖が0.1〜20の平均頻度で存在する。
以下、前記要件(i)〜(v)について具体的に説明する。
〔要件(i)〕
オレフィン系重合体[R1]の主鎖はエチレン・α−オレフィン共重合体からなり、柔軟性や改質材としての低温特性などの特性を担う部位である。そのため、オレフィン系重合体[R1]の主鎖は、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体からなることが好ましい。
前記炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
前記炭素数3〜20のα−オレフィンは、炭素数3〜10のα−オレフィンであることが好ましく、炭素数3〜8のα−オレフィンであることがより好ましい。炭素数3〜10のα−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィンや、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができる。これらの中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
オレフィン系重合体[R1]の主鎖中における、全繰り返し単位に対するエチレン由来の繰り返し単位のモル比は、60〜97mol%が好ましく、60〜95mol%がより好ましく、65〜90mol%がさらに好ましく、65〜85mol%が特に好ましい。また、全繰り返し単位に対する前記α−オレフィン由来の繰り返し単位のモル比は、3〜40mol%が好ましく、5〜40mol%がより好ましく、10〜35mol%がさらに好ましく、15〜35mol%が特に好ましい。
主鎖中のエチレンおよび前記α−オレフィン由来の繰り返し単位のモル比が前記範囲内にあることで、オレフィン系樹脂(β)が柔軟性に富み、低温特性に優れた性質となるため、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性が向上する。一方、前記α−オレフィン由来の繰り返し単位のモル比が前記範囲を下回ると、オレフィン系樹脂(β)が柔軟性や低温特性に劣る樹脂となるため、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性がやや低下する傾向がある。また、前記α−オレフィン由来の繰り返し単位のモル比が前記範囲を上回ると、後述する側鎖を形成するマクロモノマーを共重合する上で不利に働くため、後述するグラフトポリマーによる効果が十分に発揮されず、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性と剛性とのバランスがやや低下する傾向がある。
前記主鎖中のエチレンおよび前記α−オレフィン由来の繰り返し単位のモル比は、主鎖を製造する工程で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度と前記α−オレフィンの濃度との割合を制御することにより調整できる。
なお、主鎖中の前記α−オレフィン由来の単位のモル比(mol%)、すなわち主鎖中の前記α−オレフィン組成割合は、以下の方法(1)または(2)により算出または定義することができる。
(1)オレフィン系樹脂(β)の製造過程において副生するエチレン・α−オレフィン共重合体からなる成分のα−オレフィン組成を、主鎖のα−オレフィン由来の単位と定義する。副生するエチレン・α−オレフィン共重合体は、オレフィン系樹脂(β)をオルトジクロロベンゼン中に装入したときの、20℃以下の温度での溶出成分に相当するため、該溶出成分中のα−オレフィン組成を、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を用いた公知の方法により求めることができる。
(2)オレフィン系樹脂(β)の製造条件に照らし合理的な条件で主鎖部位となる重合体を別途合成し、得られたエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン組成を分析することにより、間接的にオレフィン系重合体[R1]の主鎖のα−オレフィン組成と定義する。合理的な条件とは、重合系中のエチレンおよびα−オレフィンの濃度、エチレンと水素との分子存在比など、原理的にオレフィン系重合体[R1]の主鎖部位と同等の重合体が生成する条件である。特にオレフィン系樹脂(β)を製造する方法として、予め側鎖に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)を合成し、該マクロモノマーとエチレンとα−オレフィンとを共重合して製造する方法を採用する場合は、マクロモノマーを添加しないこと以外は同一の条件とした重合を別途実施し、得られたエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン組成を分析することにより、間接的にオレフィン系重合体[R1]の主鎖のα−オレフィン組成と定義する。
〔要件(ii)〕
オレフィン系重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量は20000〜400000であることが好ましく、30000〜300000であることがより好ましく、50000〜200000であることがさらに好ましい。
オレフィン系重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量が前記範囲内であることにより、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性と剛性とのバランスが良好となる。一方、前記重量平均分子量が20000未満である場合、低温耐衝撃性や靭性が低下する場合がある。また、前記重量平均分子量が400000を超える場合、プロピレン系重合体(α)への分散不良がおこり、所望の物性バランスが得られない場合がある。
オレフィン系重合体[R1]の主鎖の重量平均分子量は、後述する製造工程において、重合系中のエチレン濃度を制御することで調整できる。エチレン濃度の制御方法としては、エチレン分圧調整や重合温度の調整が挙げられる。主鎖の重量平均分子量の調整は重合系中に水素を供給することでも可能である。
なお、主鎖の重量平均分子量は、上述した要件(i)において記載したα−オレフィン由来の単位のモル比(mol%)を算出または定義する方法に従ってエチレン・α−オレフィン共重合体を得て、該重合体の重量平均分子量を常法にて測定することで求めることができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリエチレン換算の重量平均分子量から主鎖の重量平均分子量を求めることができる。
〔要件(iii)〕
オレフィン系重合体[R1]の側鎖はエチレン重合体からなるが、実質的にエチレン由来の繰り返し単位からなることが好ましく、結晶性のエチレン重合体鎖からなることが好ましい。オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、オレフィン系樹脂(β)において物理架橋点として作用し、繊維強化プロピレン系樹脂組成物において、表面硬度向上や高剛性化の役割を担う。
実質的にエチレン由来の繰り返し単位からなるエチレン重合体とは、エチレン由来の繰り返し単位のモル比が、該エチレン重合体に含まれる全繰り返し単位に対して、95.0〜100.0mol%であることが好ましく、98.0〜100.0mol%であることがより好ましく、99.5〜100.0mol%であることがさらに好ましい。すなわち、その役割と特徴を損なわない範囲で、エチレン以外のα−オレフィンを含んでいてもよい。
オレフィン系重合体[R1]の側鎖が結晶性のエチレン重合体鎖であることは、オレフィン系樹脂(β)の示差走査熱量分析(DSC)において、60〜130℃の範囲内に融解温度(Tm)を有する融解ピークが観測されることで確認できる。
〔要件(iv)〕
オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量は、500〜15000が好ましく、500〜10000がより好ましく、500〜5000がさらに好ましく、500〜3000が特に好ましい。
前記重量平均分子量が前記範囲内であることで、繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、高剛性かつ高い表面硬度を有しながら、高い低温耐衝撃性を発現することができる。一方、前記重量平均分子量が500未満である場合、側鎖成分の物理架橋点としての役割が低下し、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の表面硬度および剛性が低下する傾向がある。また、前記重量平均分子量が15000を超えると、主鎖に対する側鎖本数の低下により、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性や表面硬度、靱性などの機械的物性が低下する場合がある。また、エチレン・α−オレフィン共重合体部位の相対量が低下するため、低温耐衝撃性が低下する場合がある。
オレフィン系重合体[R1]は、例えばエチレン重合体鎖であるマクロモノマーとエチレンおよびα−オレフィンとを共重合することにより得ることができる。すなわち、マクロモノマーの重量平均分子量が、オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量に相当する。従って、側鎖の重量平均分子量は、オレフィン系樹脂(β)のGPC測定により低分子量側の溶出成分として分離されるエチレン系重合体部位(マクロモノマー)の分子量を解析するか、または予め合成されたエチレン系重合体部位(マクロモノマー)のGPC測定を行うことで算出できる。
側鎖の重量平均分子量の調整方法としては、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒として用いる遷移金属化合物の種類を変更する方法や、重合条件を調整する方法が挙げられる。
〔要件(v)〕
オレフィン系重合体[R1]の側鎖は、主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり0.1〜20の平均頻度で存在することが好ましく、0.1〜10の平均頻度で存在することがより好ましく、0.2〜5の平均頻度で存在することがさらに好ましい。
側鎖が前記範囲内の平均頻度で主鎖に導入されていることで、繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、表面硬度が高く、かつ剛性を保持しながら高い低温耐衝撃性を発現することができる。一方、前記平均頻度が0.1未満である場合、側鎖による物理架橋点の効果が少なくなるため、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性が低下する場合がある。また、前記平均頻度が20を超える場合、エチレン重合体部位からなる結晶成分の相対量が大きくなるため、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性が低下する場合がある。
前記側鎖の平均頻度は、例えば[a]後述する同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を用いる方法、または[b]ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による方法により算出することができる。
[a]オレフィン系重合体[R1]は、主鎖がエチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィン由来の繰り返し単位からなり、同位体炭素核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)による測定において、37.8〜38.1ppmの範囲内に前記α−オレフィンに由来するメチン炭素とは別に、側鎖と主鎖の接合部分のメチン炭素に帰属できるシグナルが観測されることが好ましい。該シグナルが観測される場合、次式にて側鎖の平均頻度を求めることが出来る。
[側鎖の平均頻度]=1000×[IPE−methine]/{[Iall−C]×(100−[R2’]−[M])/100}
[IPE−methine]:側鎖と主鎖の接合部分のメチン炭素の積分値
[Iall−C]:全炭素積分値
[R2’]:[R1]製造時に生成する重合体[R1]以外の重合体[R2]のオレフィン系樹脂(β)に占める質量比(質量%)
[M]:[R1]製造時に添加または生成するマクロモノマーのオレフィン系樹脂(β)に占める質量比(質量%)。
[b]前述の通り、オレフィン系樹脂(β)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した場合に得られる低分子量側のピークは、共重合反応時に共重合せずに残存したエチレン系重合体部位(マクロモノマー)に由来する。したがってその面積比からオレフィン系樹脂(β)中に含まれる残存したマクロモノマーの質量比を求めることが出来る。[R1]製造時に添加または生成するマクロモノマーの質量組成が明らかな場合、その質量組成と残存したマクロモノマーとの質量比の差から、側鎖の平均頻度を求めることができる。具体的には次式で求めることが出来る。
[側鎖の平均頻度]=([M]−[M’])/(100−[M’])×(1/[Mn−M])×14/{1−([M]−[M’])/(100−[M’])}×(1/1000)
[M]:[R1]製造時に添加または生成するマクロモノマーの[R1]製造時に得られる樹脂全量[R’]に占める質量比(質量%)
[M’]:GPCから求められる残存したマクロモノマーの[R1]製造時に得られる樹脂全量[R’]に占める質量比(質量%)
[Mn−M]:マクロモノマーの数平均分子量。
なお、前記方法[a]、[b]により求められる平均頻度は、副生するエチレン・α−オレフィン共重合体が存在する場合、該重合体を側鎖本数0本としてカウントしたときの値である。
側鎖の本数は重合系中のマクロモノマーのモル濃度を制御することで調整可能である。例えば、一定の重合条件下で、側鎖分子量を一定とした場合、マクロモノマーの仕込み質量または生成質量を多くすると、マクロモノマーのモル濃度が高くなり、生成するグラフトポリマーの側鎖本数が多くなる。また、マクロモノマーの仕込み質量または生成質量を一定とした場合、側鎖分子量を小さくすることで、マクロモノマーのモル濃度が高くなり、生成するグラフトポリマーの側鎖本数を多くすることができる。
また、後述する遷移金属化合物(A)の種類を選択することによっても、側鎖の本数を調整することができる。例えば、高温で高共重合性を示し、高分子量の重合体を生成する遷移金属化合物を含むオレフィン重合用触媒を選択することで、側鎖本数を多くすることが出来る。
オレフィン系重合体[R1]は、前記要件(i)〜(v)の要件を満たすことにより、繊維強化プロピレン系樹脂組成物が剛性、硬度、低温耐衝撃性の全ての要件を高度な水準で満たすことができるため好ましい。オレフィン系重合体[R1]は、さらに下記要件(vi)を満たすことがより好ましい。
〔要件(vi)〕
オレフィン系重合体[R1]の側鎖のメチル分岐数は、側鎖に含まれる炭素原子1000個あたり0.1未満である。側鎖のメチル分岐数が前記範囲内であることにより、側鎖のエチレン重合体部位の結晶性がより高まり、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の表面硬度や剛性が高くなる。
なお、前記メチル分岐数は、前記要件(iv)において記載した方法におけるGPCにおける低分子量側の溶出成分として分離された側鎖に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)、または予め合成された、側鎖に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)について、同位体炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を用いた公知の方法、例えば特開2006−233207号公報に開示されている方法によって測定することができる。本要件を満たす側鎖エチレン系重合体部位は、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒に用いる遷移金属化合物の種類を特定のものにすることにより得ることができる。
(要件(II))
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解温度(Tm)を有する融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内であることが好ましい。融解温度(Tm)は、80〜125℃がより好ましく、90〜120℃がさらに好ましい。また、融解熱量ΔHは4〜80J/gがより好ましく、5〜70J/gがさらに好ましく、8〜60J/gが特に好ましい。
TmおよびΔHは、DSCにより一度昇温工程を経て試料が融解した後、30℃までの冷却工程により結晶化させ、2度目の昇温工程(昇温速度10℃/分)で現れる吸熱ピークを解析したものである。
前記範囲内に観測される融解温度(Tm)および融解熱量ΔHは主にオレフィン系樹脂(β)を構成するオレフィン系重合体[R1]の側鎖エチレン重合体に由来している。融解温度(Tm)および融解熱量ΔHが前記範囲内であることにより、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性、耐熱性、靭性のバランスが良好となる。一方、融解温度(Tm)または融解熱量ΔHが前記範囲を下回る場合、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性、耐熱性、靭性が低下する場合がある。また、融解熱量ΔHが前記範囲を上回る場合、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性が低下する場合がある。
融解温度(Tm)を調整する方法としては、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒に用いる遷移金属化合物の種類を適切に選択する方法が挙げられる。
また、融解熱量ΔHを調整する方法としては、後述する製造工程においてビニル末端マクロモノマーの存在比を制御する方法が挙げられる。具体的にはビニル末端マクロモノマーフィードのフィード量を制御する、または後述する遷移金属化合物(A)および遷移金属化合物(B)のフィード比を制御する方法が挙げられる。
(要件(III))
オレフィン系樹脂(β)は、クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合E(以下、E値とも示す)が60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、45質量%以下であることがさらに好ましい。
通常、市販のエチレン・α−オレフィン共重合体、例えば、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/オクテン共重合体は、プロピレン、1−ブテンまたは1−オクテン等のα−オレフィンの組成が10〜50mol%程度となるよう調整されたポリマーであり、非晶性または低結晶性を示し、室温以下の温度でも特定の有機溶剤に対して良好に溶解する。例えば、市販のエチレン/ブテン共重合体樹脂であるタフマーA−5055S(商品名)は、20℃以下のオルトジクロロベンゼンに対して大半が可溶であり、E値は93質量%以上である。
一方、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を構成するオレフィン系重合体[R1]は、主鎖が上述のようなエチレン・α−オレフィン共重合体でありながら、側鎖が結晶性エチレン重合体であることができるため、室温以下のオルトジクロロベンゼンに対して難溶となる。そのため、該オレフィン系樹脂(β)はE値が小さい。オレフィン系樹脂(β)が小さいE値を有することは、オレフィン系重合体[R1]の主鎖構造と側鎖構造とが化学的に結合していることの間接的な証拠であり、さらにオレフィン系樹脂(β)にオレフィン系重合体[R1]が相当量含まれていることを示している。
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物において、オレフィン系樹脂(β)は、一般に改質剤として用いられている市販のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂と同様に、プロピレン系重合体(α)中に分散し、低温耐衝撃性の向上を付与する役割を担う。ここで市販のエチレン・α−オレフィン共重合体樹脂を用いた場合、添加量に応じ低温耐衝撃性が向上する反面、ポリプロピレン本来の剛性や機械強度が低下する。一方、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)を用いた場合、エチレン・α−オレフィン共重合体が形成するドメインの中でオレフィン系重合体[R1]の側鎖であるポリエチレン部位が物理架橋点を形成し、該ドメイン自身に高い剛性、硬度、機械強度が生まれ、結果として、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は表面硬度に優れ、剛性と低温耐衝撃性とのバランスが著しく向上すると推察される。
既に説明したように、オレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体に結晶性のエチレン重合体部位が化学的に結合している成分を相当量含むことができ、そのため前記要件(II)及び前記要件(III)を同時に満たすことが出来る。このような樹脂を得るには、エチレンとα−オレフィンおよび末端ビニルエチレン重合体とを共重合させる工程で用いる触媒を選択することで達成でき、例えば、後述する遷移金属化合物(A)を用いることができる。
(要件(IV))
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が、−80℃〜−30℃の範囲内であり、−80℃〜−40℃の範囲内が好ましく、−80℃〜−50℃の範囲内がより好ましく、−80℃〜−60℃の範囲内がさらに好ましい。
前記ガラス転移温度(Tg)は、オレフィン系重合体[R1]の主鎖のエチレン・α−オレフィン共重合体に由来する。前記ガラス転移温度(Tg)が−80℃〜−30℃の範囲内にあることにより、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の低温耐衝撃性が向上する。
前記ガラス転移温度(Tg)は、コモノマーであるα−オレフィンの種類や組成を制御することで、前記範囲内とすることができる。
(要件(V))
オレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12.0dl/gの範囲内であり、0.2〜10.0dl/gの範囲内が好ましく、0.5〜5.0dl/gの範囲内がより好ましく、0.7〜2.0dl/gの範囲内がさらに好ましい。前記極限粘度[η]が前記範囲内にあることで、繊維強化プロピレン系樹脂組成物は低温耐衝撃性に加え、良好な剛性や機械強度を示し、さらに良好な成形加工性も示すことができる。
(要件(VI))
ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重でのオレフィン系樹脂(β)のメルトフローレート(MFR)をM g/10minとし、135℃のデカリン中で測定されたオレフィン系樹脂(β)の極限粘度[η]をH g/dlとしたとき、下記式(Eq−1)で表される値A(以下、A値とも示す)が30〜280の範囲内であることが好ましく、60〜250の範囲内であることがより好ましく、70〜200の範囲内であることがさらに好ましい。
A=M/exp(−3.3H)・・・(Eq−1)
オレフィン系樹脂(β)がこのような範囲のA値を持つということは、マクロモノマー導入率が高いことを示している。本要件を満たすオレフィン系樹脂(β)は、プロピレン系樹脂の改質用に応用した場合であっても、残存するマクロモノマーや非グラフト型ポリマーが原因となる剛性等の物性低下を引き起こすことがないため好ましい。
(オレフィン系樹脂(β)のその他物性)
・弾性率
オレフィン系樹脂(β)の弾性率は、2〜120MPaの範囲内にあることが好ましく、3〜100MPaの範囲内にあることがより好ましく、5〜90MPaの範囲内にあることがさらに好ましい。前記弾性率が前記範囲内にあることで、繊維強化プロピレン系樹脂組成物の剛性と低温耐衝撃性とのバランスがより良好となる。オレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系重合体[R1]の主鎖構造がエチレン・α−オレフィン共重合体にて構成されるため、柔軟性に富む。すなわち、該オレフィン系樹脂(β)を含む繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、低温耐衝撃性を良好に発現する。なお、前記弾性率はASTM D638に準拠した引張弾性率であることができる。
・相分離構造
オレフィン系樹脂(β)は、透過型電子顕微鏡で観測される結晶性成分を示す相がマイクロメートルオーダーの非連続相であることが好ましい。なお、前述の相構造を有しているかどうかの判断は、例えば以下のようにして実施することができる。
まず、繊維強化プロピレン系樹脂組成物を、170℃に設定した油圧式熱プレス成形機を用いて、5分間余熱後、10MPaの加圧下、1分間で成形したのち、20℃で10MPaの加圧下で3分間冷却することにより、所定の厚みのシートである試験片を得る。前記試験片を0.5mm角の小片とし、ルテニウム酸(RuO)によって染色する。さらにダイヤモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで、得られた小片を約100nmの膜厚の超薄切片とする。この超薄切片にカーボンを蒸着させて透過型電子顕微鏡(加速電圧100kV)で観察する。この観察方法によると、オレフィン系重合体[R1]の側鎖エチレン重合体成分は、該成分が形成するラメラ構造の結晶間非晶部位が選択的にオスミウム酸に染色にされるため、より高いコントラストとして観察される。オレフィン系樹脂(β)は、このようにして観察されるオレフィン系重合体[R1]の側鎖エチレン重合体からなる結晶性成分を示す相がマイクロメートルオーダーの非連続相であることが好ましい。
前述の通りオレフィン系樹脂(β)は、非晶性または低結晶性の主鎖と結晶性側鎖が共有結合で繋がったオレフィン系重合体[R1]を主成分とするため、非晶成分と結晶成分との相溶効果が大きく、前記ミクロ相分離構造が形成されると考えられる。
オレフィン系樹脂(β)において観測される前記非連続相は側鎖エチレン重合体からなる物理架橋点であり、オレフィン系樹脂(β)を用いた本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物の中に形成されるエチレン・α−オレフィン共重合体ドメインにおいても該物理架橋点が形成されているものと考えられる。そのため、前述の通り本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は剛性と低温耐衝撃性とのバランスに優れると考えられる。
一方、エチレン・α−オレフィン共重合体とエチレン重合体とのポリマーブレンドを用いた場合、前記ミクロ相分離構造は形成されず、粗大な結晶相が観測される。そのため、該ポリマーブレンドを用いた繊維強化プロピレン系樹脂組成物においては、オレフィン共重合体ドメインにおいて物理架橋点は形成されず、良好な物性バランスを示す繊維強化プロピレン系樹脂組成物を得ることはできない。
前述の通り、オレフィン系樹脂(β)をゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した場合に得られる低分子量側のピークは、共重合反応時に共重合せずに残存したエチレン系重合体部位(マクロモノマー)に由来し、全ピーク面積に対するその低分子量側のピークの面積比からオレフィン系樹脂(β)中に含まれる残存したマクロモノマーの質量比を求めることが出来る。このようにして算出した残存したマクロモノマーの質量比は、0〜30質量%であることが好ましく、0〜25質量%であることがより好ましく、0〜20質量%であることがさらに好ましく、2〜15質量%であることが特に好ましい。残存したマクロモノマーの質量比が前記範囲内にあることは、主鎖に組込まれなかったエチレン重合体単独の成分が十分に少ないことを意味し、そのことによりオレフィン系樹脂(β)は効果的に改質性能を発現できる。一方、残存したマクロモノマーの質量比が30質量%を超えると、低温耐衝撃性に対する改質効果および剛性が低下する場合がある。
<強化繊維>
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、強化繊維を含む。強化繊維としては特に限定されないが、例えば、カーボン、ナイロン等の有機繊維、バサルト、ガラス繊維などの無機繊維が挙げられ、好ましくはガラス繊維である。ガラス繊維としては、Eガラス、Cガラス、Sガラス及び耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸してフィラメント状の繊維にしたものが挙げられる。ガラス繊維、特にガラス長繊維の原料としては、連続状ガラス繊維束が用いられ、これはガラスロービングとして市販されている。該ガラス繊維の平均繊維径は3〜300μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。該ガラス繊維束のフィラメント集束本数は400〜10,000本であることが好ましく、1,000〜6,000本であることがより好ましく、3,000〜5,000本であることがさらに好ましい。なお、ペレット中のガラス繊維の繊維長は、0.5〜20.0mmが好ましく、1.0〜12.0mmがより好ましい。
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、プロピレン系重合体(α)およびオレフィン系樹脂(β)以外の他の樹脂、ゴム、無機充填剤、有機充填剤などを含むことができる。また、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤、結晶核剤などの添加剤を含むことができる。前記他の樹脂、ゴム、前記無機充填剤、有機充填剤、添加剤等の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物の、JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率は、600〜9000MPaが好ましく、1000〜7000MPaがより好ましく、1000〜4000MPaがさらに好ましい。弾性率が9000MPaを超える場合は、成形性に劣る、あるいは成形体が脆くなる場合がある。
[繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法]
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法は、下記(A)〜(C)の成分を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合することにより、前記オレフィン系樹脂(β)を製造する工程を含む。オレフィン系樹脂(β)の製造は、エチレンを重合して前記マクロモノマーを製造する工程と、エチレンとα−オレフィンと該マクロモノマーを共重合する工程を含み、これら工程をこの順に順次実施しもよいし、同時に実施してもよい。以下、(A)〜(C)の各成分について説明した後、具体的な製造方法、製造条件等について説明する。なお、以下、(A)成分を架橋メタロセン化合物(A)、(B)成分を遷移金属化合物(B)、(C)成分を化合物(C)とも示す。
<架橋メタロセン化合物(A)>
本発明で用いられる架橋メタロセン化合物(A)は、下記式(I)で表され、後述する化合物(C)の存在下でオレフィン重合用触媒として機能する。
Figure 0006832639
(式(I)中、R、R、R、R、R、R、RおよびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
およびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
は炭素原子またはケイ素原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)。
架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンと、α−オレフィンと、さらに、後述する(B)成分および(C)成分からなるオレフィン重合用触媒によって合成されるビニル末端マクロモノマーとを共重合し、オレフィン系重合体[R1]の主鎖を成す部位を生成する役割を果たす。
すなわち、架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンとα−オレフィンとビニル末端マクロモノマーとを共重合することができ、特にα−オレフィンおよびビニル末端マクロモノマーに対し高い共重合性を示す特徴を有する。更に架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレン重合体鎖であるマクロモノマーが溶解するような比較的高温条件下においても十分に高いオレフィン重合活性を示し、実用上十分に高い分子量の重合体を生成する特徴を有する。
架橋メタロセン化合物(A)を含むオレフィン重合用触媒が、前記特徴を有していることにより、オレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系重合体[R1]を多く含有し、前記要件(I)、(IV)および(V)を満たすことが出来る。これにより本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は表面硬度が高く、低温耐衝撃性と剛性との物性バランスが優れたものになる。以下、本発明で用いられる架橋メタロセン化合物(A)の化学構造上の特徴について説明する。
架橋メタロセン化合物(A)は、構造上、次の特徴[m1]〜[m3]を備える。
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
[m3]メタロセン化合物を構成する遷移金属(M)が周期表第4族の原子、具体的には、チタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子である。
以下、架橋メタロセン化合物(A)が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式(I)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましく、隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
例えば、R、R、RおよびRは全て水素原子である、またはR、R、RおよびRのいずれか一つ以上が炭化水素基(以下「炭化水素基(f1)」として参照することがある。)であることができ、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基またはケイ素含有基(以下「ケイ素含有基(f2)」として参照することがある。)であり、より好ましくは炭素数1〜20のケイ素含有基である。その他、R、R、RおよびRとしては、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。
炭化水素基(f1)としては、好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基であり、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などの直鎖状または分岐状の炭化水素基、シクロアルキル基などの環状飽和炭化水素基、アリール基などの環状不飽和炭化水素基が挙げられる。炭化水素基(f1)は、前記例示の基のうち互いに隣接する炭素原子に結合した任意の二つの水素原子が同時に置換されて脂環または芳香環を形成している基も含む。
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。
ケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられる。具体的には、トリメチルシリル基などのアルキルシリル基、トリフェニルシリル基などアリールシリル基が挙げられる。
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
、R、RおよびRのうちの二つ以上が水素原子以外の置換基である場合は、前記置換基は互いに同一でも異なっていてもよく、R、R、RおよびRのうちの隣接する二つの基同士は互いに結合して脂環または芳香環を形成していてもよい。
(置換フルオレニル基)
式(I)中、R、R、RおよびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。RおよびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。RおよびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。RおよびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
重合活性の観点から、RおよびR11はいずれも水素原子でないことが好ましく、R、R、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことがより好ましく、RおよびR11が炭化水素基およびケイ素含有基からなる群から選択される同一の基であり、且つRとR10が炭化水素基およびケイ素含有基からなる群から選択される同一の基であることがさらに好ましい。また、RおよびRが互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることが好ましい。
〜R12における炭化水素基の例示および好ましい基としては、前記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義した炭化水素基(f1)が挙げられる。R〜R12におけるケイ素含有基の例示および好ましい基としては、前記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義したケイ素含有基(f2)が挙げられる。R〜R12におけるヘテロ原子含有基としては、前記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて例示した基が挙げられる。
およびR、ならびにR10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
(架橋部)
式(I)中、R13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示し、Yは炭素原子またはケイ素原子を示す。本発明に係る方法においては、架橋部の架橋原子Yに、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基であるR13およびR14を有する。製造上の容易性から、R13およびR14は互いに同一であることが好ましい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびこれらが有する芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基が挙げられる。置換基としては、前記置換シクロペンタジエニル基の箇所にて定義した炭化水素基(f1)およびケイ素含有基(f2)や、ハロゲン原子およびハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの炭素数6〜14、好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;シクロヘキシルフェニル基などのシクロアルキル基置換アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基;(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのハロゲン化アルキル基置換アリール基が挙げられる。置換基の位置は、メタ位および/またはパラ位が好ましい。これらの中でも、置換基がメタ位および/またはパラ位に位置する置換フェニル基がより好ましい。
(架橋メタロセン化合物(A)のその他の特徴)
式(I)中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、炭化水素基としては、例えば、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける前記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
炭素数4〜10の中性の共役または非共役ジエンの具体例としては、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−3−メチル−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジベンジル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−2,4−ヘキサジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,3−ペンタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ジトリル−1,3−ブタジエン、s−シス−またはs−トランス−η4−1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、メシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。
孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。
式(I)中、Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、ハフニウム原子がマクロモノマーを高効率で共重合し、また高分子量に制御出来る点で好ましい。
特に、高い生産性を確保するため高圧高温の条件下で重合が実施される工業プロセスにおいては、上記のような特性からMがハフニウム原子であることが好ましい。これは、高圧条件下においてはエチレンおよびα−オレフィンの存在比がマクロモノマーに対し高くなり、高温条件下では一般に分子量の低下が起こるため、上記のようにマクロモノマーを効率よく共重合し、重合体を高い分子量に制御できる性能を備えた触媒を用いることが重要となるためである。
このようなMがハフニウム原子であることによる特性は、(1)ジルコニウム原子やチタニウム原子と比べて、ハフニウム原子のルイス酸性度が小さく、反応性が低いこと、および(2)ジルコニウム原子やチタニウム原子と比べて、ハフニウム原子−炭素原子間の結合エネルギーが大きいことが、分子量決定因子の一つである生成ポリマー鎖と結合している重合活性種のβ−水素脱離反応を含めた連鎖移動反応を抑制していることに起因していると考えられる。
(好ましい架橋メタロセン化合物(A)の例示)
下記式[II]〜[VI]に架橋メタロセン化合物(A)を構成する置換フルオレニル基の具体例を示す。なお、後述する例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指す。オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指す。ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指す。1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指す。1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
Figure 0006832639
Figure 0006832639
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架橋メタロセン化合物(A)としては例えば、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
架橋メタロセン化合物(A)としては、前記例示の化合物の「ジルコニウム」を「ハフニウム」または「チタニウム」に変えた化合物、「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」、「メチルエチル」または「ジベンジル」などに変えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに変えた化合物を挙げることもできる。
以上の架橋メタロセン化合物(A)は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
以上のような架橋メタロセン化合物(A)は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
<遷移金属化合物(B)>
本発明で用いられる遷移金属化合物(B)は、下記式[B]で表される構造を有する化合物であり、後述する化合物(C)の存在下でオレフィン重合用触媒として機能する。
Figure 0006832639
(式[B]中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
mは1〜4の整数を示す。
は、Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素数1〜8の炭化水素基を示す。
〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士が互いに連結して環を形成していてもよい。
〜Rは炭化水素基を示し、R〜Rの少なくとも一つは芳香族炭化水素基である。
mが2以上の整数の場合、式[B]の構造単位相互間において、R〜Rのうち二つの基が互いに連結していてもよい。
nは、Mの価数を満たす数である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
nが2以上の整数である場合、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)。
遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレン重合体であるビニル末端マクロモノマーを生成し、オレフィン系重合体[R1]の側鎖を成す部位を生成する役割を果たす。
すなわち、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、主にエチレンを重合し、高選択率で片末端ビニル基となるエチレン重合体を生成する特徴を有する。さらに遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、比較的低分子量のエチレン重合体(重量平均分子量で200〜10000の範囲)を生成する特徴を有している。遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒が、前記特徴を有していることにより、オレフィン系重合体[R1]に側鎖が効率よく導入され、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は表面硬度が高く、低温耐衝撃性と剛性との物性バランスの優れたものになる。
さらに遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、エチレンがα−オレフィンやビニル末端マクロモノマーと共存する条件下においてもエチレンを高選択的に重合する特徴を有しており、該特徴によりオレフィン系重合体[R1]の側鎖はエチレン重合体としての機械的特性、熱的特性を良好に保持し、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は表面硬度が高く、低温耐衝撃性と剛性との物性バランスが優れたものになる。また前記特徴は後述する製造方法のうち重合方法[b]を採用するうえでも好ましい。
また、遷移金属化合物(B)を含むオレフィン重合用触媒は、重合体鎖内部にオレフィン構造、いわゆる内部オレフィン、を実質的に生成しない性能を有することが耐光性や耐着色性などの観点から好ましい。以下、本発明で用いられる遷移金属化合物(B)の化学構造上の特徴について説明する。
式[B]中、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
式[B]において、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、好ましくは周期表第4族の金属原子であり、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。
mは1〜4の整数を示し、好ましくは1〜2であり、特に好ましくは2である。
は、Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素数1〜8の炭化水素基を示し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの非環式炭化水素基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環式炭化水素基が挙げられる。好ましくは、直鎖炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基である。これらの中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。さらに好ましくは、メチル基、エチル基である。前記炭化水素基を選択することで、比較的低分子量、例えば重量平均分子量で200〜10000の範囲、のエチレン重合体を生成することが出来、前述の通り、物性バランスに優れる繊維強化プロピレン系樹脂組成物を得ることが容易になる。
〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。
mが2以上の場合には、式[B]の構造単位相互間においてR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素数3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
前記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、前記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、例えば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
さらに、前記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状および分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基に、ハロゲン原子、炭素数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基およびアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、前記例示したものと同様のものが挙げられる。ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に、炭素数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中でも、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。次に上記で説明したR〜Rの例について、より具体的に説明する。アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基などが挙げられる。エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。アミド基として具体的には、アセトアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などが挙げられる。イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N−メチル−p−トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
〜Rは、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。炭化水素基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素数3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。
これらのうち、炭素数が1〜20であるものが好ましい。ヘテロ環式化合物残基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられる。酸素含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
イオウ含有基としては、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p−トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p−クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p−トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
窒素含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ホウ素含有基として具体的には、BR(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ケイ素含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。スズ含有基として具体的には、前記R〜Rで例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
ハロゲン含有基として具体的には、PF、BFなどのフッ素含有基、ClO、SbCl6などの塩素含有基、IOなどのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルミニウム含有基として具体的には、AlR(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
〜Rは炭化水素基であって、そのうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基である。
前記炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状および分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素数2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素数3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
前記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、そのような炭化水素基としては、例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、前記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、例えば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
前記芳香族炭化水素基として、具体的には、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。前記芳香族炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、他の炭化水素基で置換されていてもよい。
〜Rの炭化水素基のうち少なくとも一つは芳香族炭化水素基であることによって、遷移金属化合物(B)を含む重合用触媒は、高温の重合条件下でも良好な活性を与えるため、本発明に係るオレフィン系樹脂(β)の製造に適しており、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は良好な性能を発揮する。
mが2以上である場合には、式[B]の構造単位相互間においてR〜Rで示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上である場合にはR同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士、R同士は互いに同一でも異なっていてもよい。
なお、nが2以上の整数の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
また、以上のような式[B]で表される遷移金属化合物(B)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
<化合物(C)>
本発明で用いられる化合物(C)は、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)と反応して、オレフィン重合用触媒として機能する。具体的には、化合物(C)は、(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C−3)架橋メタロセン化合物(A)または遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物、からなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。このような、(C−1)〜(C−3)の化合物については、本願出願人によって出願され、既にWO2015/147186号として公開されている公報に記載された化合物(C−1)〜(C−3)をそのまま制限なく使用できる。後述する実施例においては、トリイソブチルアルミニウムとトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを用いているが、本願発明はこれら化合物に何ら限定されるものではない。
以下、前記(A)〜(C)の成分を含むオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合し、オレフィン系樹脂(β)を製造する工程について説明する。
重合は溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合などの液相重合法、気相重合法のいずれにおいても実施できるが、後述する重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]は液相重合法により実施される。
液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などが挙げられ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
オレフィン系樹脂(β)の製造に当たり、上述したオレフィン重合用触媒を用いる場合、架橋メタロセン化合物(A)は、反応容積1リットル当たり、10−8〜1モル用いられることが好ましく、10−7〜0.5モル用いられることがより好ましい。遷移金属化合物(B)は、反応容積1リットル当たり、10−12〜10−2モル用いられることが好ましく、10−10〜10−3モル用いられることがより好ましい。また、遷移金属化合物(B)と架橋メタロセン化合物(A)とのモル比(B/A)は、0.00001〜100であることが好ましく、0.00005〜10であることがより好ましく、0.0001〜5であることがさらに好ましい。
有機金属化合物(C−1)を用いる場合、有機金属化合物(C−1)と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−1/M)は、0.01〜100000が好ましく、0.05〜50000がより好ましい。
有機アルミニウムオキシ化合物(C−2)を用いる場合、有機アルミニウムオキシ化合物(C−2)中のアルミニウム原子と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−2/M)は、10〜500000が好ましく、20〜100000がより好ましい。
イオン化イオン性化合物(C−3)を用いる場合、イオン化イオン性化合物(C−3)と、架橋メタロセン化合物(A)および遷移金属化合物(B)中の遷移金属原子(M)(架橋メタロセン化合物(A)においてはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子)とのモル比(C−3/M)は、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましい。
また、このようなオレフィン重合用触媒を用いたオレフィンの重合温度は、−50〜300℃が好ましく、0〜170℃がより好ましい。重合圧力は、常圧〜9.8MPa(100kg/cm)が好ましく、常圧〜4.9MPa(50kg/cm)がより好ましい。重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。
得られるオレフィン重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する(A)〜(C)の成分の選択、または組み合わせの選択により調節することもできる。
重合に用いられるオレフィンとしては、エチレンおよび前記炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられる。これらのオレフィンは、エチレンを必須のモノマーとして、そのほかのモノマーを1種以上組み合わせて用いることができる。
本発明において、オレフィン系樹脂(β)は、例えば次の重合方法[a]または重合方法[b]によって製造することができる。
・重合方法[a]
遷移金属化合物(B)と化合物(C)の存在下でエチレンを重合してビニル末端マクロモノマーを得る前工程[a−1]と、前工程[a−1]の反応生成物存在下、架橋メタロセン化合物(A)と化合物(C)の存在下で、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する後工程[a−2]と、を含む方法。
・重合方法[b]
架橋メタロセン化合物(A)、遷移金属化合物(B)、化合物(C)の存在下でエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する方法。
以下、重合方法[a]および重合方法[b]について、好ましい形態を説明する。
・重合方法[a]
前工程[a−1]
遷移金属化合物(B)および化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒により、主にエチレンを重合し、実質的にエチレン重合体であるビニル末端マクロモノマーを得る工程であり、重合方法は前述の範囲で特に制限は無い。液相重合の場合、得られる反応液をそのまま後工程に導入しても良いし、ビニル末端マクロモノマーを取り出した後、該ビニル末端マクロモノマーを塊のまま又は粉体で後工程に導入しても良いし、スラリーや再溶解して後工程に導入しても良い。
後工程[a−2]
架橋メタロセン化合物(A)および化合物(C)の存在下で、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンと前工程[a−1]で得たビニル末端マクロモノマーとを共重合する工程である。重合方法は前述の範囲で特に制限は無いが、非晶または低結晶性のエチレン・α−オレフィン共重合体部位を生成させる工程であることから、液相重合法が好ましく、特に各モノマー濃度を制御し所望の構造のオレフィン系樹脂(β)を得るうえでは、溶液重合が好ましい。
重合反応は、前工程[a−1]を回分式で行い後工程[a−2]も回分式で行っても良いし、前工程[a−1]を回分式で行い、取り出したビニル末端マクロモノマーを導入することで後工程[a−2]を連続式で行っても良い。さらに前工程[a−1]を連続式で行い、生成物をそのまま導入することで後工程[a−2]も連続式で行うこともできる。また、前工程[a−1]を連続式で行い、後工程[a−2]を回分式で行うこともできる。
・重合方法[b]
架橋メタロセン化合物(A)、遷移金属化合物(B)、化合物(C)の存在下で、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを単段で重合する方法であり、一つの重合器で行うことができる。遷移金属化合物(B)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒は、重合系中にエチレン以外のα−オレフィンが存在していても、エチレンを高選択的に重合する傾向がある。さらに、当該触媒は比較的分子量の小さな重合体を製造する傾向があり、得られる重合体はビニル末端を有する。したがって、遷移金属化合物(B)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒は実質エチレン重合体であるビニル末端マクロモノマーを生成することができる。
一方、架橋メタロセン化合物(A)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒は、分子量の大きな重合体を製造することができ、エチレン、α−オレフィン、さらに、遷移金属化合物(B)、化合物(C)からなるオレフィン重合用触媒を用いて得られたビニル末端マクロモノマーを共重合することができる。このようにして、一つの重合反応条件下で、オレフィン系樹脂(β)中にオレフィン系重合体[R1]を含ませることができる。
オレフィン系樹脂(β)の製造方法において、重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程は、80〜300℃の温度範囲において溶液重合法により実施されることが好ましい。
前記「溶液重合」とは、後述する不活性炭化水素を重合溶媒とし、重合体が溶解した状態で重合を行う方法の総称である。重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程で用いる重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、これらを1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、工業的観点からはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素が好ましく、さらにオレフィン系樹脂(β)との分離、精製の観点から、ヘキサンがより好ましい。
また、重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程の重合温度は、80℃〜300℃の範囲が好ましく、80℃〜200℃の範囲がより好ましく、90℃〜200℃の範囲がさらに好ましい。このような温度が好ましいのは、前記重合溶媒として工業的に好ましく用いられるヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素中で、ビニル末端マクロモノマーが良好に溶解する温度以上であるからである。重合温度はより高温であることがポリエチレン側鎖の導入効率を向上させる上で好ましい。さらに生産性向上の観点からもより高温であることが好ましい。
重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程の重合圧力は、常圧〜10MPaゲージ圧が好ましく、常圧〜5MPaゲージ圧がより好ましく、常圧〜3MPaゲージ圧がさらに好ましい。生産性向上の観点から、重合圧力は0.5〜3MPaゲージ圧であることが特に好ましい。
重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこれらのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]の重合工程の反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、0.5分間〜5時間が好ましく、5分間〜3時間がより好ましい。
重合方法[a]の後工程[a−2]および重合方法[b]における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)負荷及び生産性の観点から、ポリマー濃度は15〜35質量%であることがさらに好ましい。
得られるオレフィン系樹脂(β)の分子量は、重合系中の水素濃度や重合温度を変化させることによって調節することができる。さらに、使用する化合物(C)の量により調節することもできる。水素を添加する場合、その量は生成するオレフィン系樹脂(β)1kgあたり0.001〜5,000NLであることが好ましい。
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物の調製方法は、溶融法、溶液法等、特に限定されないが、実用的には溶融混練方法が好ましい。溶融混練方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練方法が適用できる。例えば、粉状または粒状の各成分を、必要であれば他の添加物等と共に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等により均一に混合した後、一軸または多軸混練押出機、混練ロール、バッチ混練機、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練することにより調製することができる。
各成分の溶融混練温度(例えば、押出機ならシリンダー温度)は、170〜250℃が好ましく、180〜230℃がより好ましい。各成分の混練順序および方法は、特に限定されるものではない。
[成形体]
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、剛性を保持したまま低温耐衝撃性の向上を図ることができ、剛性と低温耐衝撃性とのバランスに優れることから、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができる。該成形体は、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途の包材など公知の多様な用途に適用することができる。
本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物からなる成形体は、剛性と低温耐衝撃性とのバランスに優れ、かつ表面硬度が高く、耐薬品性にも優れることから、各種自動車部品に使用できる。例えば、バンパー、サイドモール、空力アンダーカバーなどの自動車外装部品、インストルメントパネル、内装トリムなどの自動車内装部品、フェンダー、ドアパネル、ステップなどの外板部品、エンジンカバー、ファン、ファンシェラウドなどのエンジン周囲部品などに使用することができる。
食品用途や医療用途などの容器としては、例えば、食器、レトルト容器、冷凍保存容器、レトルトパウチ、電子レンジ耐熱容器、冷凍食品容器、冷菓カップ、カップ、飲料ボトルなどの食品容器、レトルト容器、ボトル容器、輸血セット、医療用ボトル、医療用容器、医療用中空瓶、医療バッグ、輸液バッグ、血液保存バック、輸液ボトル薬品容器、洗剤容器、化粧品容器、香水容器、トナー容器などが挙げられる。
包材としては、例えば、食品包材、食肉包材、加工魚包材、野菜包材、果物包材、発酵食品包材、菓子包装材、酸素吸収剤包材、レトルト食品用包材、鮮度保持フィルム、医薬包材、細胞培養バック、細胞検査フィルム、球根包材、種子包材、野菜・キノコ栽培用フィルム、耐熱真空成形容器、惣菜容器、惣菜用蓋材、業務用ラップフィルム、家庭用ラップフィルム、ベーキングカートンなどが挙げられる。
フィルム・シート・テープとしては、例えば、偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、マスキングフィルム、コンデンサー用フィルム、反射フィルム、積層体(ガラス含む)、耐放射線フィルム、耐γ線フィルム、多孔フィルムなどの保護フィルムなどが挙げられる。
その他の用途としては、例えば、家電製品の筐体、ホース、チューブ、電線被覆材、高圧電線用碍子、化粧品・香水スプレー用チューブ、医療用チューブ、輸液チューブ、パイプ、ワイヤーハーネス、自動二輪・鉄道車両・航空機・船舶等の内装材、インストルメントパネル表皮、ドアトリム表皮、リアーパッケージトリム表皮、天井表皮、リアピラー表皮、シートバックガーニッシュ、コンソールボックス、アームレスト、エアバックケースリッド、シフトノブ、アシストグリップ、サイドステップマット、リクライニングカバー、トランク内シート、シートベルトバックル、インナー・アウターモール、ルーフモール、ベルトモールなどのモール材、ドアシール、ボディシールなどの自動車用シール材、グラスランチャンネル、泥よけ、キッキングプレート、ステップマット、ナンバープレートハウジング、自動車用ホース部材、エアダクトホース、エアダクトカバー、エアインテークパイプ、エアダムスカート、タイミングベルトカバーシール、ボンネットクッション、ドアクッションなどの自動車内外装材、制振タイヤ、静動タイヤ、カーレースタイヤ、ラジコンタイヤなどの特殊タイヤ、パッキン、自動車ダストカバー、ランプシール、自動車用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ、タイミングベルト、ワイヤーハーネス、グロメット、エンブレム、エアフィルタパッキン、家具・履物・衣料・袋物・建材等の表皮材、建築用シール材、防水シート、建材シート、建材ガスケット、建材用ウインドウフィルム、鉄芯保護部材、ガスケット、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等、床材、天井材、壁紙、健康用品(例:滑り止めマット・シート、転倒防止フィルム・マット・シート)、健康器具部材、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ、プロテクター)、スポーツ用防具、ラケット、マウスガード、ボール、ゴルフボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、インシュレーター、履物用衝撃吸収材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルムなどの衝撃吸収材、グリップ材、雑貨、玩具、靴底、靴底ソール、靴のミッドソール・インナーソール、ソール、サンダル、吸盤、歯ブラシ、床材、体操用マット、電動工具部材、農機具部材、放熱材、透明基板、防音材、クッション材、電線ケーブル、形状記憶材料、医療用ガスケット、医療用キャップ、薬栓、ガスケット、ベビーフード・酪農製品・医薬品・滅菌水等を瓶に充填後、煮沸処理、高圧蒸気滅菌等高温処理される用途のパッキング材、工業用シール材、工業用ミシンテーブル、ナンバープレートハウジング、ペットボトルキャップライナーなどのキャップライナー、文房具、オフィス用品、OAプリンタ脚、FAX脚、ミシン脚、モータ支持マット、オーディオ防振材などの精密機器・OA機器支持部材、OA用耐熱パッキン、アニマルケージ、ビーカー、メスシリンダー等の理化学実験機器、光学測定用セル、衣装ケース、クリアーケース、クリアーファイル、クリアーシート、デスクマット、繊維としての用途として、例えば、不織布、伸縮性不織布、繊維、防水布、通気性の織物や布、紙おむつ、生理用品、衛生用品、フィルター、バグフィルター、集塵用フィルター、エアクリーナー、中空糸フィルター、浄水フィルター、ガス分離膜などが挙げられる。
これらの中でも、本発明に係る繊維強化プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、剛性を保持したまま低温耐衝撃性の向上を図ることができ、剛性と低温耐衝撃性とのバランスに優れることから、特にバンパー、インストルメントパネルなどの自動車内外装材、外板材、食品容器、飲料容器に好適に利用することができる。
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
以下の実施例において、オレフィン系樹脂(β)、プロピレン系重合体(α)および繊維強化プロピレン系樹脂組成物の物性は、下記の方法によって測定した。
≪オレフィン系樹脂(β)の物性測定方法≫
オレフィン系樹脂(β)の物性測定方法を以下に示す。
(1)融解温度(Tm)および融解熱量ΔHの測定
融解温度(Tm)および融解熱量ΔHの測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。示差走査熱量計(商品名:RDC220、SII社製)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その温度を融解温度(Tm)として求めた。また、融解熱量ΔHは前記融解ピークの面積を算出して求めた。なお融解ピークが多峰性の場合は、全体の融解ピークの面積を算出して求めた。
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス転移温度(Tg)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。示差走査熱量計(商品名:RDC220、SII社製)を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/minで200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/minで−100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/minで200℃まで昇温した。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
(3)オルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eの測定
20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合E(質量%)は次の条件でCFC測定を行い求めた。
装置:クロス分別クロマトグラフ CFC2(Polymer ChAR)
検出器(内蔵):赤外分光光度計 IR(Polymer ChAR)
検出波長:3.42μm(2,920cm−1);固定
試料濃度:120mg/30mL
注入量:0.5mL
降温時間:1.0℃/min
溶出区分:4.0℃間隔(−20〜140℃)
GPCカラム:Shodex HT−806M×3本(商品名、昭和電工社製)
GPCカラム温度:140℃
GPCカラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社)
分子量較正法:汎用較正法(ポリスチレン換算)
移動相:o−ジクロロベンゼン(BHT添加)
流量:1.0mL/min。
(4)弾性率測定(引張試験)
弾性率は、オレフィン系樹脂(β)を200℃で5分間プレス成型して得られた試験片を、ASTM D638に準拠し測定した。
(5)13C−NMR測定
ポリマーのα−オレフィンの組成分析、マクロモノマーのメチル分岐数およびグラフト構造を確認することを目的にして、次の条件で13C−NMR測定を実施した。
装置:AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置(商品名、ブルカーバイオスピン社製)
測定核:13C(125MHz)
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:45°(5.00μ秒)
ポイント数:64k
測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:512回
測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d(4/1 v/v)
試料濃度:ca.60mg/0.6mL
測定温度:120℃
ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)
ケミカルシフト基準:ベンゼン−d(128.0ppm)。
(6)GPC分析
ポリマーの分子量分析および残存マクロモノマー量の見積もりを行うために、次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Alliance GPC 2000型(商品名、Waters社製)
カラム:TSKgel GMH6−HT 2本、TSKgel GMH6−HTL 2本(商品名、いずれも東ソー社製、内径7.5mm、長さ30cm)
カラム温度:140℃
移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)
検出器:示差屈折計
流量:1.0mL/min
試料濃度:0.15%(w/v)
注入量:0.5mL
サンプリング時間間隔:1秒
カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
(7)極限粘度([η]〔dl/g〕)の測定
極限粘度は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。具体的には、約20mgの樹脂をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、前記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記式参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)。
(8)メルトフローレート(MFR〔g/10min〕)
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度は190℃とした。
(9)オレフィン系重合体[R1]の組成比
オレフィン系重合体[R1]の組成比(質量%)は、GPC分析から算出される残存したマクロモノマー組成比率(質量%)と、20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eから概算される側鎖を持たないエチレン・αオレフィン共重合体の組成比率(質量%)を、全量100質量%から減じることによって概算した。
≪プロピレン系重合体(α)および繊維強化プロピレン系樹脂組成物の物性測定方法≫
プロピレン系重合体(α)および繊維強化プロピレン系樹脂組成物の物性測定方法を以下に示す。なお、極限粘度は、前記(8)に示される方法で測定した。
(10)メルトフローレート(MFR〔g/10min〕)
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度は230℃とした。
(11)23℃におけるn−デカン可溶(不溶)成分量
ガラス製の測定容器にプロピレン系重合体(α)約3g、デカン500ml、およびデカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃まで昇温してプロピレン系重合体(α)を溶解させた。150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得た。この操作の後、n−デカン可溶成分(Dsol)含有率およびn−デカン不溶成分(Dinsol)含有率を下記式によって決定した。なお、前記プロピレン系重合体(α)は10−4gの単位まで測定し、この質量を下式においてb(g)と表した。また、前記デカン可溶成分の一部の質量を10−4gの単位まで測定し、この質量を下式においてa(g)と表した。
23℃におけるn−デカン可溶成分(Dsol)含有率(質量%)=100×(500×a)/(100×b)
23℃におけるn−デカン不溶成分(Dinsol)含有率(質量%)=100−100×(500×a)/(100×b)。
(12)ペンタド分率mmmm測定
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率mmmm〔%〕は、プロピレン系重合体(α)においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C−NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C−NMRスペクトルは、EX−400(商品名、日本電子製)を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
(13)プロピレンおよびエチレンに由来する骨格の含量測定
Dsol中のエチレンに由来する骨格濃度を測定するために、サンプル20〜30mgを1,2,4−トリクロロベンゼン/重ベンゼン(質量比:2/1)溶液0.6mlに溶解後、炭素核磁気共鳴分析(13C−NMR)を行った。プロピレン、エチレンの定量はダイアッド連鎖分布より求めた。プロピレン−エチレン共重合体の場合、PP=Sαα、EP=Sαγ+Sαβ、EE=1/2(Sβδ+Sδδ)+1/4Sγδを用い、以下の計算式により求めた。
プロピレン(mol%)=(PP+1/2EP)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)]
エチレン(mol%)=(1/2EP+EE)×100/[(PP+1/2EP)+(1/2EP+EE)]。
(14)引張破断強度、引張破断ひずみ測定試験
引張破断強度〔MPa〕、引張破断ひずみ〔%〕は、JIS K7162に従って、下記の条件で測定した。
<測定条件>
試験片:JIS K7162−BA ダンベル
5mm(幅)×2mm(厚さ)×75mm(長さ)
引張速度:20mm/分
チャック間距離:58mm。
(15)曲げ強度、弾性率測定
曲げ強度、弾性率FM〔MPa〕は、JIS K7171に従って、下記の条件で測定した。
<測定条件>
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm。
(16)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃値〔kJ/m〕は、JIS K7111に従って、下記の条件で測定した。
<試験条件>
温度:23℃および−30℃
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である。
(17)ロックウェル硬度測定
ロックウェル硬度(Rスケール)は、JIS K7202に従って、下記の条件で測定した。
<測定条件>
試験片:30mm(幅)×30mm(長さ)×2mm(厚さ)
試験片を2枚重ねして測定した。
(18)熱変形温度(HDT)の測定
熱変形温度は、JIS K7191−1に準拠して測定した。すなわち、試験片の両端を加熱浴槽中で支え、下で中央の荷重棒によって試験片に所定の曲げ応力(0.45MPaの一定荷重)を加えつつ、加熱媒体の温度を2℃/分の速度で上昇させ、試験片のたわみが所定の量に達したときの加熱媒体の温度をもって、熱変形温度とした。
(19)高速面衝撃強度(HRIT)の測定
高速面衝撃強度は以下の条件にて全破壊エネルギーを測定した。
<試験条件>
温度:−30℃
試験片:30mm(幅)×30mm(長さ)×2.0mm(厚さ)(角板)
速度:3m/s
撃芯:1/2インチφ
受け台:1インチφ。
[製造例1]オレフィン系樹脂(β−1)の製造
触媒として使用する下記化合物(1)および下記化合物(3)は、公知の方法によって合成した。
Figure 0006832639
Figure 0006832639
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数=250rpm、内温110℃、重合圧力1.0MPa・G)に、脱水生成したヘキサンを23L/hr、前記化合物(1)を0.0130mmol/hr、前記化合物(3)を0.00136mmol/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.057mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを2.0mmol/hr、の速度で連続的に供給した。また、気相重合器内のガス組成が、1−ブテン/エチレンとして0.32(モル比)、水素/エチレンとして0.042(モル比)になるように1−ブテン、エチレン、水素を連続的に供給した。生成する重合液を重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量28Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られた重合液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、毎時、メタノールを80mL添加して重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、オレフィン系樹脂(β−1)を5.6kg/hrの生産速度で得た。得られたオレフィン系樹脂(β−1)の分析結果を表1に示す。
[製造例2]オレフィン系樹脂(β’−1)の製造
攪拌羽根を備えた内容積100Lのステンレス製重合器(攪拌回転数=250rpm、内温110℃、重合圧力1.0MPa・G)に、脱水生成したヘキサンを23L/hr、前記化合物(1)を0.00775mmol/hr、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.031mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムを2.31mmol/hr、の速度で連続的に供給した。また、気相重合器内のガス組成が、1−ブテン/エチレンとして0.23(モル比)、水素/エチレンとして0.04(モル比)になるように1−ブテン、エチレン、水素を連続的に供給した。生成する重合液を重合器側壁部に設けられた排出口を介して、重合器内溶液量28Lを維持するように液面制御弁の開度を調節しながら連続的に排出した。得られた重合液を加熱器に導いて180℃に昇温し、触媒失活剤として、毎時、メタノールを80mLで添加して重合を停止させ、減圧した脱揮工程に連続的に移送して乾燥することにより、オレフィン系樹脂(β’−1)を3.1kg/hrの生産速度で得た。得られたオレフィン系樹脂(β’−1)の分析結果を表1に示す。
Figure 0006832639
[製造例3]プロピレン系重合体(α−1)の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液を得た。この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下して装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌保持して反応させた。
その後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。これにより、固体状チタン触媒成分を得た。
ここで、この遊離チタン化合物の検出は次の方法で行った。予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに前記固体状チタン触媒成分の上澄み液10mlを注射器で採取して装入した。次に、窒素気流にて溶媒のヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを装入し、30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃リン酸水溶液1mlとチタンの発色試薬として3%過酸化水素水5mlを加え、さらにイオン交換水で体積を100mlにした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い、420nmの吸光度を観測した。この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
上記のように調製された固体状チタン触媒成分は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。
(2)前重合触媒の製造
前記固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに挿入した。内温を15〜20℃に保ち、プロピレンを600g挿入し、60分間攪拌しながら反応させ、前重合触媒を含む触媒スラリーを得た。
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器に、プロピレンを43kg/時間、水素を300NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.55g/時間、トリエチルアルミニウムを2.9ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを3.1ml/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.74MPa/Gであった。
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へは、プロピレンを45kg/時間、水素を気相部の水素濃度が8.7mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.49MPa/Gで重合を行った。
得られたスラリーを内容量2.4Lの移液管に移送し、該スラリーをガス化させ、気固分離を行った後、内容量480Lの気相重合器にポリプロピレンホモポリマーパウダーを送り、エチレン/プロピレンブロック共重合を行った。なお、該パウダーの一部を共重合前にサンプリングしてMFRとmmmmの測定を行った。気相重合器内のガス組成が、エチレン/(エチレン+プロピレン)として0.23(モル比)、水素/エチレンとして0.031(モル比)になるようにプロピレン、エチレン、水素を連続的に供給した。重合温度70℃、圧力1.0MPa/Gで重合を行った。
得られたプロピレン系ブロック共重合体を、80℃で真空乾燥した。得られたプロピレン系重合体(α−1)の物性を表2に示す。
Figure 0006832639
[実施例1]
製造例1で調製されたオレフィン系樹脂(β−1)20質量部、製造例3で調製されたプロピレン系重合体(α−1)60質量部、強化繊維としてのガラス繊維(商品名:T−480、日本電気硝子(株)製、ガラスチョップドストランド、径13μm)20質量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(商品名、チバガイギー(株)製)0.2質量部、変性プロピレン樹脂POLYBOND3200(商品名、ケミチューラ社製、MFR:250g/10分、MAH−PP100質量%中における無水マレイン酸由来の構成単位の含有量:1.0質量%)1.0質量部、硫黄系酸化防止剤DMTPヨシトミ(商品名、三菱化学株式会社製)0.3質量部をタンブラーにて均一に混合した。その後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状の繊維強化プロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて下記の条件で試験片を作製した。得られた繊維強化プロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:品番 NR−2−36、ナカタニ機械(株)製
シリンダー温度:280−280−280−250−250−250℃
スクリュー回転数:100rpm
フィーダー回転数:700rpm。
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:品番 EC40、東芝機械(株)製
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒
スクリュー回転:80rpm
保圧:60MPa
背圧:3MPa。
[比較例1]
実施例1において、オレフィン系樹脂(β−1)の代わりに、製造例2で調製されたオレフィン系樹脂(β’−1)を用いた以外は実施例1と同様にペレット状の繊維強化プロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて試験片を作製した。得られた繊維強化プロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
[比較例2]
比較例1において、オレフィン系樹脂(β’−1)の使用量を23質量部に変更した以外は比較例1と同様にペレット状の繊維強化プロピレン系樹脂組成物を調製し、射出成形機にて試験片を作製した。得られた繊維強化プロピレン系樹脂組成物の物性を表3に示す。
Figure 0006832639
表3から、本願発明に係る要件を満たすプロピレン系重合体(α)およびオレフィン系樹脂(β)と、強化繊維とを所定の配合比で含む実施例1の繊維強化プロピレン系樹脂組成物は、剛性と低温耐衝撃性とのバランスが良好であることが分かった。

Claims (7)

  1. ASTM D1238Eに準拠して得られた230℃、2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1〜500g/10minであるプロピレン系重合体(α)1〜99質量部、並びに、前記プロピレン系重合体(α)以外の下記要件(I)、(IV)(V)および(VI)を満たすオレフィン系樹脂(β)1〜99質量部(前記プロピレン系重合体(α)と前記オレフィン系樹脂(β)との合計は100質量部である)を含有する樹脂組成物100質量部と、
    強化繊維1〜50質量部と、
    を含有することを特徴とする繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
    (I)前記オレフィン系樹脂(β)が、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖、およびエチレン重合体からなる側鎖を有するグラフト型オレフィン系重合体[R1]を含む。
    (IV)示差走査熱量分析(DSC)により測定されたガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲内である。
    (V)135℃のデカリン中で測定された極限粘度[η]が0.1〜12.0dl/gの範囲内である。
    (VI)ASTM D1238Eに準拠して得られた190℃、2.16kg荷重での前記オレフィン系樹脂(β)のMFRをM g/10minとし、135℃のデカリン中で測定された前記オレフィン系樹脂(β)の極限粘度[η]をH g/dlとしたとき、下記式(Eq−1)で表される値Aが30〜280の範囲内である。
    A=M/exp(−3.3H)・・・(Eq−1)
  2. 前記オレフィン系樹脂(β)が、下記要件(II)および(III)をさらに満たす請求項1に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
    (II)示差走査熱量分析(DSC)による測定において60〜130℃の範囲内に融解温度を有する融解ピークを示し、該融解ピークにおける融解熱量ΔHが3〜100J/gの範囲内である。
    (III)クロス分別クロマトグラフ(CFC)により測定された20℃以下のオルトジクロロベンゼン可溶成分の割合Eが60質量%以下である。
  3. JIS K7171に準拠して測定した曲げ弾性率が600〜9000MPaの範囲内である請求項1または2に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
  4. 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の側鎖の重量平均分子量が500〜15000の範囲内である請求項1〜3のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
  5. 前記グラフト型オレフィン系重合体[R1]の主鎖に含まれる炭素原子1000個あたり、前記側鎖が0.1〜20の平均頻度で存在する請求項1〜4のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法であって、
    下記(A)〜(C)の成分を含むオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンからなる群から選択される少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合することにより、前記オレフィン系樹脂(β)を製造する工程を含むことを特徴とする繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法。
    (A)下記式(I)で表される架橋メタロセン化合物
    (B)下記式[B]で表される遷移金属化合物
    (C)(C−1)有機金属化合物、(C−2)有機アルミニウムオキシ化合物、および(C−3)前記架橋メタロセン化合物(A)または前記遷移金属化合物(B)と反応してイオン対を形成する化合物、からなる群から選択される少なくとも1種の化合物
    Figure 0006832639
    (式(I)中、R、R、R、R、R、R、RおよびR12はそれぞれ独立して、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
    およびR11は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
    およびR10は、水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基からなる群から選択される同一の原子または同一の基である。
    およびRは互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。ただし、R、R、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
    13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
    Mはチタン原子、ジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
    は炭素原子またはケイ素原子を示す。
    Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数である場合、複数のQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
    Figure 0006832639
    (式[B]中、Mは周期表第4または5族の遷移金属原子を示す。
    mは1〜4の整数を示す。
    は、Cn’2n’+1(n’は1〜8の整数である)で表される炭素数1〜8の炭化水素基を示す。
    〜Rはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R〜Rのうち隣接する二つの基同士が互いに連結して環を形成していてもよい。
    〜Rは炭化水素基を示し、R〜Rの少なくとも一つは芳香族炭化水素基である。
    mが2以上の整数の場合、式[B]の構造単位相互間において、R2〜R8のうち二つの基が互いに連結していてもよい。
    nは、Mの価数を満たす数である。
    Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。
    nが2以上の整数である場合、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
  7. 前記共重合する工程が、80〜300℃の温度範囲における溶液重合法により共重合する工程である請求項に記載の繊維強化プロピレン系樹脂組成物の製造方法。
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