JP6751185B2 - GST−π遺伝子を調節するためのRNA干渉剤 - Google Patents

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Description

本発明は、核酸を基礎とする分子からなる生物医薬品及び治療剤の分野に関する。より詳細には、本発明は、ヒトGST-πの発現を調節するためのRNA干渉(RNAi)を利用する化合物及び組成物並びにその使用に関する。
この出願は、100,000バイトのサイズであるND5123385WO_SL.txtと名付けられた2015年12月20日に作成されたASCIIファイルとして電子的に提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
様々なヒト癌組織が、突然変異KRAS遺伝子の出現と相関することが見出されている。場合によっては、組織はまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼPi(GST-π)発現レベルの上昇を示す(Miyanishiら、Gastroenterology, 2001, Vol. 121:865-874, 要約)。例えば、様々な消化器系悪性腫瘍を有する患者において、血清GST-πレベルの上昇が観察された(Niitsuら、Cancer、1989、Vol.63、No.2、pp.317-323、要約)。
GST-πは、疎水性化合物と還元型グルタチオンを有する求電子性化合物との結合を触媒することで解毒の役割を果たす酵素のGSTファミリーのメンバーである。GST-π発現は、インビトロでsiRNAにより減少させることができる(Niitsuら、US 2014/0315975 A1)。しかし、不十分な活性、オフターゲット効果、血清安定性の欠如及びインビボの効力又は効果の欠如といった、既存のsiRNA剤には多くの欠点がある。
癌に関連する遺伝子の発現を調節するための組成物及び方法が緊急に必要とされている。特に、GST-π発現の阻害に基づく治療剤には、オフターゲット効果を減少させることができる非常に強力で安定なsiRNA配列及び構造が必要とされている。
悪性腫瘍などの疾患の治療に使用される、GST-π発現を調節するためのsiRNA配列、化合物及び構造が必要とされている。
本発明は、RNA干渉を用いてヒトGST-πの発現を調節するための化合物、組成物及び方法に関する。
いくつかの実施形態では、本発明は、GST-πのRNA干渉遺伝子サイレンシングのための分子を提供する。
さらなる実施形態において、本発明の構造、分子及び組成物は、悪性腫瘍を含む、GST-πに関連する疾患を予防又は治療するための方法、又はGST-πに関連する状態又は障害の症状を改善するための方法において使用することができる。
本発明の実施形態は以下を包含する:
センス鎖及びアンチセンス鎖を含むGST-πの発現を阻害するための核酸分子であって、前記鎖が二重鎖領域を形成する核酸分子。当該核酸分子は、GST-πの発現を阻害するためのsiRNA分子であってよく、修飾又は化学的修飾された1つ以上のヌクレオチドを含むことができる。
いくつかの実施形態において、GST-πの発現を阻害するための核酸siRNA分子は、2'-デオキシヌクレオチド、2'-O-アルキル置換ヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチド、又はそれらの任意の組み合わせを含んでいてもよい。特定の実施形態では、2'-デオキシヌクレオチドは、siRNA分子のシード領域に存在していてもよい。特定の態様では、GST-πの発現を阻害するsiRNA分子は、アンチセンス鎖の複数の位置にデオキシヌクレオチドを有することができる。
本発明の核酸分子は、300pM未満のIC50を有し、GST-πmRNA発現を有利に阻害することができる。特定の実施形態では、核酸分子は、分子の単回投与時に、インビボでGST-πmRNAの発現レベルを少なくとも25%にまで阻害することができる。いくつかの実施形態では、核酸分子は、パッセンジャー鎖オフターゲット活性を低下させるか、又は少なくとも50倍、又は少なくとも100倍減少させることができる。
本発明の実施形態は、siRNA分子及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を更に提供する。いくつかの実施形態では、担体は、脂質分子又はリポソームとすることができる。本発明は、核酸分子を含むベクター又は細胞を含む。
また、本発明は、siRNAを含有する組成物を必要な被験体に投与する工程による、GST-π発現に関連する疾患を治療する方法を企図している。ここで、疾患は、悪性腫瘍、癌、突然変異KRASを発現する細胞に起因する癌、肉腫又は癌腫を含む。
図1は、GST-πを標的とする本発明のsiRNAがインビボにおいて同所性肺癌腫瘍を著しく減少させたことを示している。GST-πsiRNAを、A549同所性肺癌腫瘍を提示する無胸腺ヌードマウスに2mg/kgの用量でリポソーム製剤として投与した。最終原発腫瘍重量は、処置群及びビヒクル対照群の剖検時に測定した。GST-πsiRNAは、この6週間の研究において肺癌腫瘍の阻害に対して有意な効力を示した。図1に示すように、43日後、GST-πsiRNAは著しく有利な腫瘍阻害を示し、最終原発腫瘍平均重量は対照と比較して2.8倍有意に減少した。 図2は、GST-πsiRNAについてインビボにおける腫瘍阻害効力を示している。A549細胞を用いた癌異種移植モデルを、0.75mg/kgで比較的低用量のsiRNAで使用した。GST-πsiRNAは、数日以内に有利な腫瘍阻害を示した。36日後、GST-πsiRNAは著しく有利な腫瘍阻害を示し、最終腫瘍平均体積は対照と比較して約2倍有意に減少した。 図3は、図2のエンドポイントにおけるGST-πsiRNAのインビボでの腫瘍阻害効力を示している。GST-πsiRNAは、平均腫瘍重量が2倍以上減少するといった有利な腫瘍阻害を示した。 図4は、本発明のGST-πsiRNAがインビトロにおいてアポトーシスにより癌細胞死を大幅に増加させたことを示している。GST-πsiRNAは、細胞生存率の低下に関連するアポトーシスのバイオマーカーであるPUMAのアップレギュレーションを引き起こした。図4に示すように、PUMAの発現は、GST-πsiRNAのトランスフェクションの2〜6日後に大きく増加した。 図5は、本発明のGST-πsiRNAがA549異種移植片腫瘍に対するインビボにおけるノックダウン効果を呈することを示している。GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが、胸腺欠損ヌード(nu/nu)雌マウス(Charles River)において、GST-πを標的とするsiRNAを用いることで観察された。図5に示すように、4mg/kgの用量では、注入後24時間でGST-πmRNAにおいて約40%の有意な減少が検出された。 図6は、本発明のGST-πsiRNAがin vivoで膵臓癌異種移植片腫瘍を阻害したことを示している。GST-πsiRNAは、6〜8週齢の胸腺欠損ヌード雌マウスの膵臓癌異種移植片腫瘍にリポソーム製剤で投与した場合、インビボで遺伝子サイレンシング効力をもたらした。図6に示すように、用量応答は、GST-πを標的とするsiRNAの0.375mg/kg〜3mg/kgの範囲の用量で得られた。GST-πsiRNAは投与後数日以内に有利な腫瘍阻害を示し、腫瘍体積はエンドポイントで約2倍減少した。 図7は、本発明のGST-πsiRNAにおける血清安定性が増加したことを示している。図7に示すように、GST-πsiRNAのセンス鎖(図7、上部)及びアンチセンス鎖(図7、下部)の血清中の半減期(t1/2)は約100分であった。 図8は、血漿中において、本発明のGST-πsiRNAが製剤として安定性が向上したことを示している。図8は、50%ヒト血清中のGST-πsiRNAのリポソーム製剤のPBS中でのインキュベーション及び様々な時点での残存するsiRNAの検出を示している。図8に示すように、GST-πsiRNAの製剤の血漿中半減期(t1/2)は100時間より有意に長かった。 図9は、GST-πsiRNAのガイド鎖のインビトロノックダウンを示す。図9に示すように、GST-πsiRNAのガイド鎖ノックダウンは、効果を示さないスクランブル配列を有する対照と比較して、ほぼ指数関数的であった。 図10は、図9のGST-πsiRNAにおけるパッセンジャー鎖についてのインビトロノックダウンを示している。図10に示すように、GST-πsiRNAについてパッセンジャー鎖のオフターゲットノックダウンは緩やかに低減しており、本質的に効果が無いことを示している。 図11は、いくつかの高活性GST-πsiRNAのガイド鎖についてインビトロノックダウンを示している。図11に示すように、GST-πsiRNAのガイド鎖ノックダウン活性はほぼ指数関数的であった。 図12は、図11のGST-πsiRNAのパッセンジャー鎖についてインビトロノックダウンを示している。図12に示すように、GST-πsiRNAのパッセンジャー鎖のオフターゲットノックダウン活性は、約500pM未満に有意に低下した。 図13は、高活性GST-πsiRNAのガイド鎖についてのインビトロノックダウンを示している。図13に示すように、GST-πsiRNAのガイド鎖ノックダウン活性はほぼ指数関数的であった。 図14は、図13のGST-πsiRNAのパッセンジャー鎖についてのインビトロノックダウンを示している。図14に示すように、GST-πsiRNAのパッセンジャー鎖のオフターゲットノックダウン活性は有意に減少した。
本発明は、GST-πの発現を調節するための核酸に基づく治療剤のための化合物、組成物及び方法に関する。
いくつかの実施形態において、本発明は、RNA干渉において活性な分子、並びにGST-πの発現をサイレンシングすることができる構造及び組成物を提供する。
本開示の構造及び組成物は、悪性腫瘍などの様々な疾患の予防又は治療に使用することができる。
さらなる実施形態では、本発明は、本発明の1つ以上の治療用RNAi分子の送達及び摂取のための組成物、並びにその使用方法を提供する。本発明のRNAベースの組成物は、癌とった悪性腫瘍を予防又は治療するための方法において使用することができる。
本発明の治療用組成物は、RNA干渉において活性である核酸分子を含む。治療用核酸分子は、遺伝子サイレンシングのためにGSTP1(GST-π)を標的とすることができる。
様々な実施形態において、本発明は、低分子干渉RNA(siRNA)として活性であり、GST-π遺伝子発現を調節又はサイレンシングできる一連の分子を提供する。
本発明のsiRNAは、悪性腫瘍を予防又は治療するために使用することができる。
本発明の実施形態はさらに、悪性腫瘍の予防又は治療を必要とする被験体に対して、本発明のsiRNAを送達するためのビヒクル、製剤又は脂質ナノ粒子製剤を提供する。本発明はさらに、siRNAを治療剤として哺乳動物に投与する方法を企図している。
本発明の治療分子及び組成物は、必要とする被験体に化合物又は組成物を投与することによって、GST-π関連疾患の予防又は治療を目的とするRNA干渉に使用することができる。
本発明の方法は、悪性腫瘍を予防又は治療するための本発明の化合物を利用することができる。
いくつかの態様において、悪性腫瘍は、種々の疾患、例えば、GST-πを高発現する癌、突然変異KRASを発現する細胞に起因する癌、肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫及び癌腫等に存在することができる。
特定の態様では、本発明の方法は、悪性腫瘍及び任意の器官における癌に対する予防又は治療に本発明の化合物を利用する。これには、例えば、脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌、腎臓癌、尿道癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、皮膚癌、白血病、悪性リンパ腫、上皮性悪性腫瘍及び非上皮性悪性腫瘍が含まれる。
特定の実施形態において、本発明の治療分子の組み合わせは、GST-π遺伝子発現をサイレンシング又は阻害するために使用することができる。
本発明は一連のRNAi分子を提供するが、各分子がポリヌクレオチドセンス鎖及びポリヌクレオチドアンチセンス鎖を有しており、分子の各鎖は15〜30ヌクレオチドの長さであり、アンチセンス鎖の15〜30ヌクレオチドの連続領域は、GST-πをコードするmRNAの配列に相補的であり、センス鎖の少なくとも一部はアンチセンス鎖の少なくとも一部に相補的であり、分子は15〜30ヌクレオチド長の二重鎖領域を有している。
本発明のRNAi分子は、アンチセンス鎖の15〜30ヌクレオチドの連続領域を有することができ、これはGST-πをコードするmRNAの配列に相補的であり、分子の二重鎖領域に位置している。
いくつかの実施形態では、RNAi分子は、GST-πをコードするmRNAの配列に相補的な、アンチセンス鎖の15〜30ヌクレオチドの連続領域を有することができる。
本発明の実施形態は、悪性腫瘍の1つ以上の症状を予防、治療又は改善する方法、又は悪性腫瘍の進行するリスクを低下させる方法、又はそれを必要とする哺乳動物の悪性腫瘍の発症を遅延させる方法をさらに提供することができる。
GST-π及び RNAi分子
例示的な標的ヒトグルタチオンS-トランスフェラーゼ(ヒトGST-π)mRNAの核酸配列は、GenBankアクセッション番号NM_000852.3(hGSTP1)に開示されており、986ヌクレオチドの長さである。
当業者は、報告された配列が経時的に変化することがあり、それに応じて本明細書中の核酸分子に必要な変化を組み込むことができることを理解するであろう。
本発明の実施形態は、小核酸分子を用いたGST-π発現の遺伝子サイレンシングのための組成物及び方法を提供することができる。核酸分子としては、RNA干渉(RNAi分子)、短鎖干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)及び短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子において活性な分子、並びにDNA指向性RNA(ddRNA)、Piwi相互作用RNA(piRNA)及び反復関連siRNA(rasiRNA)が挙げられる。そのような分子は、GST-π遺伝子発現に対するRNA干渉を媒介することができる。
本明細書に開示される組成物及び方法はまた、被験体における様々な種類の悪性腫瘍の治療において使用することができる。
本発明の核酸分子及び方法は、GST-πをコードする遺伝子の発現をダウンレギュレートするために使用される。
本発明の組成物及び方法は、1以上の核酸分子を含むことができ、単独で或いは組み合わせて、GST-πタンパク質及び/又はGST-πタンパク質をコードする遺伝子、例えば、悪性腫瘍等の疾患、並びにGST-πに関連する状態又は疾病の維持及び/又は発症に関与するタンパク質及び/又はGST-πをコードする遺伝子の発現を調節又は制御することができる。
本発明の組成物及び方法は、GST-πの例示的な配列を参照して記載される。当業者は、本発明の様々な態様及び実施形態が、関連するGST-π遺伝子、配列、又はホモログ遺伝子及び転写変異体といった変異体、並びにGST-π遺伝子に関連する一塩基多型(SNP)を含む多型を対象とすることを理解するであろう。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物及び方法は、GST-pi遺伝子、例えばヒトGST-piの発現をダウンレギュレートする二本鎖短干渉核酸(siRNA)分子を提供することができる。
本発明のRNAi分子は、GST-πを標的とすることができ、及び、例えば相補的配列を用いて、又は非標準塩基対、例えばミスマッチ及び/又はウォブル塩基対を組み込むことによって更なる標的配列を提供できる任意の相同配列を標的とすることができる。
ミスマッチが同定される場合、非標準的な塩基対、例えば、ミスマッチ及び/又はウォブル塩基を用いて、2つ以上の遺伝子配列を標的とする核酸分子を生成することができる。
例えば、UU及びCC塩基対などの非標準塩基対を使用して、配列相同性を有する異なるGST-π標的のための配列を標的にできる核酸分子を生成できる。したがって、RNAi分子は、相同遺伝子間で保存されているヌクレオチド配列を標的とすることができ、単一のRNAi分子を用いて2つ以上の遺伝子の発現を阻害することができる。
いくつかの態様では、本発明の組成物及び方法は、GST-πmRNAに対して活性であるRNAi分子を含み、RNAi分子はGST-π配列をコードする任意のmRNAに相補的な配列を含む。
いくつかの実施形態では、本開示のRNAi分子は、GST-πRNAに対して活性を有することができ、RNAi分子は、変異体GST-πをコードする配列を有するRNA、例えば、悪性腫瘍に関連することが当該分野で公知の突然変異GST-pi遺伝子のRNAに相補的な配列を含んでいる。
さらなる実施形態では、本発明のRNAi分子は、GST-π遺伝子発現のサイレンシングを媒介することができるヌクレオチド配列を含むことができる。
GST-πの発現を阻害するための核酸分子は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有することができ、ここで鎖は二重鎖領域を形成する。当該核酸分子は、当技術分野で知られているような修飾を含む、二重鎖領域内に修飾又は化学的修飾された1つ又は複数のヌクレオチドを有することができる。siRNAのオーバーハング内の任意のヌクレオチドもまた、修飾又は化学的修飾されていてもよい。
いくつかの実施形態では、修飾又は化学的修飾ヌクレオチドとしては、2'-デオキシヌクレオチドが好ましい。さらなる実施形態では、修飾又は化学的修飾ヌクレオチドには、2'-O-アルキル置換ヌクレオチド、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ロックドヌクレオチド又はそれらの任意の組み合わせが含まれる。
特定の実施形態では、複数の位置にデオキシヌクレオチドを含むアンチセンス鎖を有する構造が好ましい。当該複数の位置は以下の1つである。アンチセンス鎖の5’末端からの位置4、6及び8のそれぞれ;アンチセンス鎖の5’末端からの位置3、5及び7のそれぞれ;アンチセンス鎖の5’末端からの位置1、3、5及び7のそれぞれ;アンチセンス鎖の5’末端からの位置3〜8のそれぞれ;及びアンチセンス鎖の5’末端から5〜8位のそれぞれ。これらの構造のいずれも、二重鎖領域内に1つ以上の2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチドと組み合わせることができる。
本発明の核酸分子は、約300pM未満、又は約200pM未満、又は約100pM未満、又は約50pM未満の有利なIC50でGST-πmRNAの発現を阻害することができる。
さらに、核酸分子は、単回投与で、インビボにおいてGST-πmRNAの発現レベルを少なくとも25%にまで阻害することができる。
本発明においては、本明細書に記載の1つ以上のsiRNAを薬学的に許容される担体と組み合わせて含むことができる医薬組成物が企図されている。当技術分野で公知の任意の適切な担体、脂質分子、ナノ粒子又はリポソーム(いずれもsiRNA分子を封入(カプセル化)できる)を使用することができる。
本発明は、GST-π発現に関連する疾患を治療するための方法を開示し、この方法は、必要とする被験体に1つ以上のsiRNAを含む組成物を投与することを含んでいる。治療される疾患は、とりわけ、悪性腫瘍、癌、突然変異KRASを発現する細胞に起因する癌、肉腫及び癌腫を含むことができる。
GST-πmRNAを標的とする本発明のRNAi分子の例を表1に示す。
Figure 0006751185
Figure 0006751185
表1の要点:大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを指す。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを意味する。
GST-πmRNAを標的とする本発明のRNAi分子の例を表2に示す。
Figure 0006751185
表2の要点:大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを意味する。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジン(dT=T=t)を意味する。下線は、2'-OMe置換体を意味する、例えばU。小文字のfは、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味し、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uである。Nは、A、C、G、U、U、a、c、g、u、t、又は修飾ヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチドである。文字“s”はホスホロチオエート結合を意味する。
GST-πmRNAを標的とする本発明のRNAi分子の例を表3に示す。
Figure 0006751185
表3の要点:大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを意味する。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジン(dT=T=t)を意味する。下線は、2'-OMe置換体を意味する、例えばU。小文字のfは、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味し、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uである。Nは、A、C、G、U、U、a、c、g、u、t、又は修飾ヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチドである。
GST-πmRNAを標的とする本発明のRNAi分子の例を表4に示す。
Figure 0006751185
表4の要点:大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを意味する。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジン(dT=T=t)を意味する。下線は、2'-OMe置換体を意味する、例えばU。小文字のfは、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味し、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uである。Nは、A、C、G、U、U、a、c、g、u、t、又は修飾ヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチドである。
GST-πmRNAを標的とする本発明のRNAi分子の例を表5に示す。
Figure 0006751185
表5の要点:大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを意味する。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジン(dT=T=t)を意味する。下線は、2'-OMe置換体を意味する、例えばU。小文字のfは、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味し、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uである。Nは、A、C、G、U、U、a、c、g、u、t、又は修飾ヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチドである。
GST-πmRNAを標的とする本発明のRNAi分子の例を表6に示す。
Figure 0006751185
表6の要点:大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを意味する。小文字a、u、g、c、tはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジン(dT=T=t)を意味する。下線は、2'-OMe置換体を意味する、例えばU。小文字のfは、2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味し、例えばfUは2'-デオキシ-2'-フルオロ-Uである。Nは、A、C、G、U、U、a、c、g、u、t、又は修飾ヌクレオチド、逆方向(inverted)ヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチドである。
いくつかの実施形態では、本発明は、ある範囲の核酸分子を提供する。ここで、a)当該分子がポリヌクレオチドセンス鎖及びポリヌクレオチドアンチセンス鎖を有し、b)当該分子の各鎖は15〜30ヌクレオチドの長さであり、c)アンチセンス鎖の15〜30ヌクレオチドの連続領域は、GST-πをコードするmRNAの配列に相補的であり、d)センス鎖の少なくとも一部はアンチセンス鎖の少なくとも一部に相補的であり、分子は15〜30ヌクレオチドの長さの二重鎖領域を有する。
いくつかの実施形態では、核酸分子は、分子の二重鎖領域に位置するGST-πをコードするmRNAの配列に相補的な、アンチセンス鎖の15〜30ヌクレオチドの連続領域を有することができる。
さらなる実施形態では、核酸分子は、GST-πをコードするmRNAの配列に相補的な、アンチセンス鎖の15〜30ヌクレオチドの連続領域を有することができる。
特定の実施形態では、核酸分子の各鎖は、18〜22ヌクレオチドの長さとすることができる。核酸分子の二重鎖領域は、19ヌクレオチド長とすることができる。
別の形態では、核酸分子は、一本鎖として連結されたポリヌクレオチドセンス鎖及びポリヌクレオチドアンチセンス鎖を有し、一端でループによって連結された二重鎖領域を形成することができる。
本開示の核酸分子のいくつかの実施形態は、平滑末端を有することができる。特定の実施形態では、核酸分子は、1つ以上の3’オーバーハングを有することができる。
本発明は、遺伝子サイレンシングに対して活性なRNAi分子である一連の核酸分子を提供する。本発明の核酸分子は、DNAサイレンシングに活性なdsRNA、siRNA、マイクロRNA又はshRNA、並びにDNA指向性RNA(ddRNA)、Piwi相互作用性RNA(piRNA)又は関連するリピート siRNA(rasiRNA)とすることができる。核酸分子は、GST-πの発現阻害に対して活性とすることができる。
本発明の実施形態はさらに、100pM未満のGST-πのノックダウンのIC50を有する核酸分子を提供する。
本発明のさらなる実施形態は、50pM未満のGST-πのノックダウンのIC50を有する核酸分子を提供する。
本発明はさらに、薬学的に許容される担体と共に、本発明の核酸分子の1つ以上を含む組成物を企図する。特定の実施形態では、担体は、脂質分子又はリポソームとすることができる。
本発明の化合物及び組成物は、化合物又は組成物を必要とする被験体に投与することによって、GST-π関連疾患を予防又は治療するための方法において有用である。
本発明の方法は、悪性腫瘍を予防又は治療するため本発明の化合物を利用することができる。悪性腫瘍は、様々な疾患に存在することができる。この疾患としては、例えば、GST-π発現に関連する癌、突然変異KRASを発現する細胞に起因する癌、肉腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、脂肪肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、血管肉腫、カポジ肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、癌腫、脳腫瘍、頭頸部癌、乳癌、肺癌、食道癌、胃癌、十二指腸癌、虫垂癌、大腸癌、直腸癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、胆管癌、肛門癌、腎臓癌、尿道癌、膀胱癌、前立腺癌、精巣癌、子宮癌、卵巣癌、皮膚癌、白血病、悪性リンパ腫、上皮性悪性腫瘍及び非上皮性悪性腫瘍が挙げられる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNA
本発明の実施形態は、修飾又は化学的修飾されたsiRNA分子を包含し、遺伝子サイレンシングの活性及び効力の増加などの治療用途のための強化された特性を提供することができる。本発明は、遺伝子調節及び遺伝子サイレンシングのためのsiRNA分子の活性及び効力を失うことなく、血清安定性に優れ、さらにオフターゲット効果が低減した修飾又は化学的修飾されたsiRNA分子を提供する。いくつかの態様では、本発明は、siRNAの安定性及び有効性を増強する様々な組み合わせの修飾又は化学修飾を有するsiRNAを提供する。
いくつかの実施形態において、本発明のsiRNA分子は、少なくとも10倍、又は少なくとも20倍、又は少なくとも30倍、又は少なくとも50倍、又は少なくとも100倍にまで減少したパッセンジャー鎖オフターゲット活性を有することができる。
本明細書で使用されるように、修飾及び化学的修飾との用語は、1つ以上のヌクレオチド類似体、改変ヌクレオチド、非標準的ヌクレオチド、天然非存在ヌクレオチド及びそれらの組み合わせを有するsiRNAを包含する、siRNAの天然に存在するヌクレオチドの構造又は核酸構造に対してなされる変化を意味する。
いくつかの実施形態では、siRNA中の修飾構造又は化学的修飾構造の数は、siRNA分子のすべての構造成分及び/又はすべてのヌクレオチドを含むことができる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例としては、ヌクレオチドの糖基の修飾、ヌクレオチドの核酸塩基の修飾、核酸骨格又は結合の修飾、siRNA鎖の末端における(1又は複数の)ヌクレオチドの構造の修飾及びそれらの組み合わせを含む。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、糖の2’炭素における置換基修飾を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、5’末端、3’末端、又は鎖の両端に修飾を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、鎖間の相補性ミスマッチを生じる修飾を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、5’-プロピルアミン末端、5’-リン酸化末端、3’-ピューロマイシン末端又は3’-ビオチン末端基を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、2’-フルオロ置換リボヌクレオチド、2’-OMe置換リボヌクレオチド、2’-デオキシリボヌクレオチド、2’-アミノ置換リボヌクレオチド、2’-チオ置換リボヌクレオチドを有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上の5-ハロウリジン、5-ハロシチジン、5-メチルシチジン、リボチミジン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン、4-チオウリジン又は5-アミノアリルウリジンを有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上のホスホロチオエート基を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上の2’-フルオロ置換リボヌクレオチド、2’-フルオロウリジン、2’-フルオロシチジン、2’-デオキシリボヌクレオチド、2’-デオキシアデノシン又は2’-デオキシグアノシンを有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上のホスホロチオエート結合を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上のアルキレンジオール結合、オキシ-アルキルチオ結合又はオキシカルボニルオキシ結合を有するsiRNAが挙げられる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上のデオキシ塩基性基、イノシン、N3-メチル -ウリジン、N6,N6-ジメチル-アデノシン、プソイドウリジン、プリンリボヌクレオシド及びリバビリンを有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上の3’又は5’の反転末端基を有するsiRNAが含まれる。
修飾及び化学的修飾されたsiRNAの例には、1つ以上の5-(2-アミノ)プロピルウリジン、5-ブロモウリジン、アデノシン、8-ブロモグアノシン、7-デアザ-アデノシン又はN6-メチルアデノシンを有するsiRNAが含まれる。
GST-πを調節し、悪性腫瘍を治療するための方法
本発明の実施形態は、GST-π及び/又はGST-πタンパク質の発現をダウンレギュレート又は阻害するために使用することができるRNAi分子を提供することができる。
いくつかの実施形態において、本発明のRNAi分子は、悪性腫瘍など疾患又は状態に関連し得るGST-πハプロタイプ多型から生じるGST-π及び/又はGST-πタンパク質の発現をダウンレギュレート又は阻害するために使用することができる。
GST-πタンパク質又はmRNAレベルのモニタリングを使用して、遺伝子サイレンシングを特徴づけることができ、本発明の化合物及び組成物の有効性を決定することができる。
本開示のRNAi分子は、1つ以上の遺伝子の発現を調節するために、単独で又は他のsiRNAと組み合わせて使用することができる。
本開示のRNAi分子は、GST-πに関連する疾患(悪性腫瘍を含む)の予防又は治療、又は症状もしくは症状の改善のために、単独で又は組み合わせて、又は他の既知の薬物と組み合わせて使用することができる。
本発明のRNAi分子は、配列特異的様式でGST-πの発現を調節又は阻害するために使用することができる。
本開示のRNAi分子は、一連の連続したヌクレオチドがGST-πmRNAに少なくとも部分的に相補的であるガイド鎖を含むことができる。
特定の態様において、悪性腫瘍は、本発明のRNAi分子を用いたRNA干渉によって治療することができる。
悪性腫瘍の治療は、適切な細胞ベースのモデル、ならびにエクスビボ又はインビボの動物モデルにおいて特徴づけることができる。
悪性腫瘍の治療は、罹患組織の細胞におけるGST-πmRNAのレベル又はGST-πタンパク質のレベルを決定することによって特徴づけられる。
悪性腫瘍の治療は、罹患した器官又は組織の非侵襲的な医学的走査によって特徴づけられる。
本発明の実施形態は、それを必要とする被験体におけるGST-π関連疾患又は状態の症状を予防、治療、又は改善するための方法を含むことができる。
いくつかの実施形態では、被験体における悪性腫瘍の症状を予防、治療又は改善するための方法は、本発明のRNAi分子を被験体に投与することでGST-π遺伝子の発現を当該被験体又は生物において調節することを含む。
いくつかの実施形態では、本発明は、細胞又は生物を本発明のRNAi分子と接触させることによって、細胞又は生物におけるGST-π遺伝子の発現をダウンレギュレートする方法を企図する。
本発明の実施形態は、上述した例示に従って修飾又は化学的修飾された表1〜6のsiRNA分子を包含する。
RNA干渉
RNA干渉(RNAi)は、短い干渉RNA(siRNA)によって媒介される動物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシングを意味する。例えば、Zamoreら、Cell、2000、Vol. 101、25〜33頁; Fireら、Nature、1998、Vol. 391、806811頁; Sharp、Genes&Development、1999、Vol. 13、pp. 139-141参照。
細胞内のRNAi応答は、二本鎖RNA(dsRNA)によって誘発することができるが、メカニズムはまだ完全には理解されていない。細胞内の特定のdsRNAは、ダイサー酵素、リボヌクレアーゼIII酵素の作用を受けることができる。例えば、Zamoreら、Cell、2000、Vol. 101、25〜33頁; Hammondら、Nature、2000、Vol. 404、pp.293-296参照。ダイサーは、dsRNAをsiRNAであるdsRNAのより短い断片に加工することができる。
一般に、siRNAは、約21〜約23ヌクレオチドの長さとすることができ、約19ヌクレオチド長の塩基対二重鎖領域を含むことができる。
RNAiは、RNA誘発サイレンシング複合体(RISC)として知られているエンドヌクレアーゼ複合体に関与する。siRNAは、RISC複合体に入るアンチセンス又はガイド鎖であって、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な配列を有する一本鎖RNA標的の切断を媒介するアンチセンス又はガイド鎖を有する。siRNAの他方の鎖はパッセンジャー鎖である。標的RNAの切断は、siRNA二本鎖のアンチセンス鎖に相補的な領域の中央で起こる(例えば、Elbashirら、Genes&Development、2001、Vol. 15、188〜200頁参照)。
本明細書で使用する「センス鎖」という用語は、siRNA分子の対応するアンチセンス鎖の少なくとも一部に部分的又は完全に相補的なsiRNA分子のヌクレオチド配列を指す。siRNA分子のセンス鎖は、標的核酸配列と相同性を有する核酸配列を含むことができる。
本明細書で使用される「アンチセンス鎖」という用語は、標的核酸配列の少なくとも一部に部分的又は完全に相補的なsiRNA分子のヌクレオチド配列を指す。siRNA分子のアンチセンス鎖は、siRNA分子の対応するセンス鎖の少なくとも一部に相補的な核酸配列を含むことができる。
RNAi分子は、配列特異的様式でRNA干渉を媒介することによって遺伝子発現をダウンレギュレート又はノックダウンすることができる。例えば、Zamoreら、Cell、2000、Vol. 101、25〜33頁; Elbashirら、Nature、2001、Vol. 411、494〜498頁; Kreutzerら、WO2000/044895; Zernicka-Goetzら、WO2001/36646; Fireら、WO1999/032619; Plaetinckら、WO2000/01846; Melloら、WO2001/029058参照。
本明細書中で使用される場合、遺伝子発現に関して「阻害する」、「ダウンレギュレートする」又は「縮小する」という用語は、遺伝子の発現又は1つ以上のタンパク質をコードするmRNA分子のレベル、若しくは1つ又は複数のコードされたタンパク質の活性が、本発明のRNAi分子又はsiRNAの非存在下で観察される活性よりも低下することを意味している。例えば、発現のレベル、mRNAのレベル又はコードされたタンパク質活性のレベルが、本発明のRNAi分子又はsiRNAの非存在下で観察される活性よりも、少なくとも1%、又は少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも50%、又は少なくとも90%、又はそれ以上で低下すれば良い。
RNAi分子はまた、ウイルス遺伝子発現をノックダウンするために使用することができ、よってウイルス複製に影響を及ぼす。
RNAi分子は、別個のポリヌクレオチド鎖:センス鎖又はパッセンジャー鎖と、アンチセンス鎖又はガイド鎖とから作製することができる。ガイド鎖とパッセンジャー鎖とは、少なくとも部分的に相補的である。ガイド鎖及びパッセンジャー鎖は、約15〜約49塩基対を有する二重鎖領域を形成することができる。
いくつかの実施形態では、siRNAの二重鎖領域は、17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48,又は49個の塩基対を含むことができる。
特定の実施形態において、RNAi分子は、RISC複合体において活性であり、RISCに対して活性な二重鎖領域の長さを有することができる。
さらなる実施形態において、RNAi分子は、RISC複合体において活性であるRNAi分子に変換されるダイサー基質として活性とすることができる。
いくつかの態様では、RNAi分子は、長い分子の対向する末端に相補的なガイドとパッセンジャー配列部分とを有することができ、その結果、分子は相補配列部分において二重鎖領域を形成することができ、各鎖はヌクレオチド又は非ヌクレオチドリンカーのいずれかによって当該二重鎖領域の一端で結合する。例えば、ヘアピン配列ステム及びループ配列である。各鎖とリンカー相互作用は、共有結合又は非共有相互作用とすることができる。
本開示のRNAi分子は、核酸のセンス領域を核酸のアンチセンス領域に結合するヌクレオチド、非ヌクレオチド又はヌクレオチド/非ヌクレオチド混合リンカーを含んでいてもよい。ヌクレオチドリンカーは、長さが2ヌクレオチド以上、例えば約3, 4, 5, 6, 7, 8, 9又は10ヌクレオチドのリンカーとすることができる。ヌクレオチドリンカーは、核酸アプタマーとしても良い。本明細書で使用する「アプタマー」又は「核酸アプタマー」は、標的分子に特異的に結合する核酸分子を意味し、ここで核酸分子はその天然の状況において標的分子によって認識される配列を含む配列を有する。あるいは、アプタマーは、標的分子に結合する核酸分子であってもよく、ここで標的分子は核酸に天然に結合しなくてよい。例えば、アプタマーは、タンパク質のリガンド結合ドメインに結合し、それにより天然に存在するリガンドとタンパク質との相互作用を防止するために使用することができる。例えば、Goldら、Annu Rev Biochem、1995、Vol. 64、763-797頁; Brodyら、J.Biotechnol., 2000、Vol. 74、5〜13頁; Hermannら、Science、2000、Vol. 287、pp. 820-825参照。
非ヌクレオチドリンカーの例は、無塩基ヌクレオチド、ポリエーテル、ポリアミン、ポリアミド、ペプチド、炭水化物、脂質、ポリ炭化水素又は他の高分子化合物、例えば2〜100個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールなどの高分子化合物を挙げることができる。いくつかの例は、Seelaら、Nucleic Acids Research、1987、Vol. 15、3113〜3129頁; Cloadら、J. Am. Chem. Soc., 1991、Vol. 113、6324-6326頁; Jaeschkeら、Tetrahedron Lett.,1993、Vol. 34、301頁; Arnoldら、WO1989/002439; Usmanら、WO1995/006731; Dudyczら、WO1995/011910; 及びFerentzら、J. Am. Chem. Soc., 1991、Vol. 113、pp. 4000-4002に記載されている。
RNAi分子は、二重鎖領域から1つ以上のオーバーハングを有することができる。オーバーハングは、塩基対形成されていない一本鎖領域であり、長さが1〜8ヌクレオチド又はそれ以上としても良い。オーバーハングは、鎖の3'末端が1〜8ヌクレオチドの一本鎖領域を有する3'末端オーバーハングとしても良い。オーバーハングは、鎖の5'末端が1〜8ヌクレオチドの一本鎖領域を有する5'末端オーバーハングとしても良い。
RNAi分子のオーバーハングは、同じ長さを有していても良いし、異なる長さとしても良い。
RNAi分子は、二重鎖領域がオーバーハングなしで終わり、鎖が二重鎖領域の末端まで塩基対合する、一つ以上の平滑末端を有するものとすることができる。
本開示のRNAi分子は、1つ以上の平滑末端を有することができ、又は1つ以上のオーバーハングを有することができ、若しくは平滑末端とオーバーハングとの組み合わせを有することができる。
RNAi分子の鎖の5'末端は、平滑末端にあってもよく又はオーバーハングにあってもよい。RNAi分子の鎖の3'末端は、平滑末端にあってもよく又はオーバーハングにあってもよい。
RNAi分子の鎖の5'末端は平滑末端にあり、3'末端はオーバーハングにあってもよい。RNAi分子鎖の3'末端は平滑末端にあり、5'末端はオーバーハングにあってもよい。
いくつかの実施形態では、RNAi分子の両端は平滑末端である。
さらなる実施形態において、RNAi分子の両端はオーバーハングを有する。
5'-及び3'-末端のオーバーハングは、異なる長さであってもよい。
特定の実施形態では、RNAi分子は、アンチセンス鎖の5'末端及びセンス鎖の3'末端がオーバーハングヌクレオチドを有さない平滑末端を有するものでもよい。
さらなる実施形態では、RNAi分子は、アンチセンス鎖の3'末端及びセンス鎖の5'末端がオーバーハングヌクレオチドを有さない平滑末端を有するものでもよい。
RNAi分子は、二重鎖領域における塩基対合においてミスマッチを有していてもよい。
RNAi分子のオーバーハングにおける任意のヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドとすることができる。
1つ以上のデオキシリボヌクレオチドは5'末端に存在してもよい、ここでRNAi分子の他方の鎖の3'末端がオーバーハングを有さなくてもよく、デオキシリボヌクレオチドオーバーハングを有さなくてもよい。
1つ以上のデオキシリボヌクレオチドは3'末端に存在してもよい、ここでRNAi分子の他の鎖の5'末端がオーバーハングを有さなくてもよく、デオキシリボヌクレオチドオーバーハングを有さなくてもよい。
いくつかの実施形態において、RNAi分子のオーバーハングヌクレオチドの1つ以上又は全てを2'-デオキシリボヌクレオチドとしてもよい。
ダイサー基質RNAi分子
いくつかの態様において、RNAi分子は、RISC活性RNAi分子を生成するようにプロセシングされるダイサー基質として適した長さにすることができる。例えば、Rossiら、US2005/0244858参照。
ダイサー基質である二本鎖RNA(dsRNA)は、活性RNAi分子を生成するためにダイサーによって処理されるのに十分な長さとすることができ、さらに以下の特性の1つ以上を含んでいてもよい:(i)ダイサー基質dsRNAは、例えば、アンチセンス鎖上に3'オーバーハングを有するような非対称とすることができ、(ii)ダイサー基質dsRNAは、ダイサー結合の配向を指示し、dsRNAを処理して活性なRNAi分子とするためにセンス鎖上に改変された3'末端を有していてもよい。
特定の実施形態では、ダイサー基質dsRNA中の最も長い鎖を24〜30ヌクレオチドの長さとすることができる。
ダイサー基質dsRNAは、対称又は非対称とすることができる。
いくつかの実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、22〜28ヌクレオチドのセンス鎖及び24〜30ヌクレオチドのアンチセンス鎖を有することができる。
特定の実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、アンチセンス鎖の3’末端にオーバーハングを有していてもよい。
さらなる実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、長さが25ヌクレオチドのセンス鎖及び2塩基の3’-オーバーハングを含む長さが27ヌクレオチドのアンチセンス鎖を有することができる。オーバーハングは、1、2又は3ヌクレオチドの長さとすることができる。センス鎖はまた5’リン酸を有していてもよい。
非対称ダイサー基質dsRNAは、2つのリボヌクレオチドの代わりにセンス鎖の3’末端に2つのデオキシリボヌクレオチドを有することができる。
ダイサー基質dsRNAのセンス鎖は、約22〜約30、又は約22〜約28、又は約24〜約30、又は約25〜約30、又は約26〜約30、又は約26及び29、又は約27〜約28ヌクレオチドの長さとすることができる。
ダイサー基質dsRNAのセンス鎖は、22、23、24、25、26、27、28、29又は30ヌクレオチドの長さとすることができる。
特定の実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、長さが少なくとも約25ヌクレオチドであり、長さが約30ヌクレオチドを超えないセンス及びアンチセンス鎖を有していてもよい。
特定の実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、26〜29ヌクレオチドの長さのセンス及びアンチセンス鎖を有していてもよい。
特定の実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、長さが27ヌクレオチドであるセンス鎖及びアンチセンス鎖を有していてもよい。
ダイサー基質dsRNAのセンス及びアンチセンス鎖は、平滑末端であって同じ長さとすることができ、又はオーバーハングを有するように異なる長さであってもよく、又は平滑末端と突出とを有していてもよい。
ダイサー基質dsRNAは、長さが19、20、21、22、23、24、25、26又は27ヌクレオチドの二重鎖領域を有していてもよい。
ダイサー基質dsRNAのアンチセンス鎖は、真核細胞の細胞質内などの生物学的条件下でセンス鎖の配列の少なくとも一部にアニールする任意の配列を有することができる。
センス鎖及びアンチセンス鎖を有するダイサー基質は、リンカー基又はリンカーオリゴヌクレオチドのような第3の構造によって連結することができる。リンカーは、例えばdsRNAの2つの鎖を連結し、アニーリングの際にヘアピンを形成することができる。
ダイサー基質のセンス及びアンチセンス鎖は一般に相補的であるが、塩基対形成においてミスマッチを有していてもよい。
いくつかの実施形態では、ダイサー基質dsRNAは、センス鎖が22〜28ヌクレオチドを有し、アンチセンス鎖が24〜30ヌクレオチドを有するように非対称であってもよい。
ダイサー基質dsRNAの鎖の1つ、特にアンチセンス鎖の領域は、少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有してもよく、これらのヌクレオチドは、アンチセンス鎖の3’末端に隣接している21塩基領域内であり、標的遺伝子から産生されたRNAのヌクレオチド配列と十分に相補的となる。
ダイサー基質dsRNAのアンチセンス鎖は、22〜28ヌクレオチドの長さとなるように、5’末端に1〜9個のリボヌクレオチドを有することができる。アンチセンス鎖の長さが21ヌクレオチドである場合、1〜7個のリボヌクレオチド、又は2〜5個のリボヌクレオチド、又は4個のリボヌクレオチドを3’末端に付加することができる。付加されるリボヌクレオチドは、任意の配列とすることができる。
ダイサー基質dsRNAのセンス鎖は、24〜30ヌクレオチドを有していてもよい。センス鎖は、アンチセンス鎖と実質的に相補的であってもよく、生物学的条件下でアンチセンス鎖にアニールする。
RNAi分子の使用方法
本発明の核酸分子及びRNAi分子は、分子の直接的な適用によって、又は担体若しくは希釈剤と組み合わせた分子を用いて、細胞又は組織に送達することができる。
本発明の核酸分子及びRNAi分子は、担体又は希釈剤若しくは、ウイルス配列、ウイルス物質又は脂質若しくはリポソーム製剤などの細胞への侵入を補助又は促進するように機能する他の送達ビヒクルを用いた分子の直接的な適用によって、細胞、組織、器官又は被験体に送達又は投与することができる。
本発明の核酸分子及びRNAi分子は、カチオン性脂質と複合体を形成するか、リポソーム内にパッケージするか、或いは標的細胞又は組織に送達することができる。核酸又は核酸複合体は、直接皮膚適用、経皮適用又は注射によって生体外又は生体内の関連する組織に局所投与することができる。
送達系は、例えば、水性及び非水性ゲル、クリーム、エマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソーム、軟膏、水性及び非水性溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素ベース及び粉末を含んでいても良く、そして可溶化剤及び浸透増強剤等の添加物を含んでいても良い。
本開示の組成物及び方法は、核酸分子の発現を可能にするように、少なくとも1つの本発明のRNAi分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含むことができる。
本発明の核酸分子及びRNAi分子は、DNA又はRNAベクターに挿入された転写単位から発現させることができる。組換えベクターは、DNAプラスミド又はウイルスベクターとすることができる。核酸分子の一過性発現を提供するウイルスベクターを使用することができる。
例えば、ベクターは、二重鎖のRNAi分子の両方の鎖をコードする配列、又は自己相補的であってRNAi分子を形成する単一の核酸分子を含んでいても良い。発現ベクターは、2つ以上の核酸分子をコードする核酸配列を含んでいても良い。
核酸分子は、真核生物のプロモーターから細胞内で発現することができる。当業者は、任意の核酸が、適切なDNA/RNAベクターから真核細胞において発現できることを理解している。
いくつかの態様では、発現コンストラクトを細胞に導入するためにウイルスコンストラクトを使用することができ、これは当該発現コンストラクトによりコードされるdsRNA構築物の転写のためであり、当該dsRNAはRNA干渉において活性である。
脂質製剤は、静脈内、筋肉内又は腹腔内注射によって、若しくは経口的に又は吸入によって、若しくは当該分野で公知の他の方法によって動物に投与することができる。
オリゴヌクレオチドを投与するための薬学的に許容される製剤は公知であり、使用することができる。
インビトロノックダウンのための例示的プロトコル
トランスフェクションの1日前に、10%FBSを含む100μlのDMEM(HyCloneカタログ番号SH30243.01)を96ウェルプレートに2×103細胞/ウェルで播種し、5%CO2の空気中で加湿雰囲気を含む37℃インキュベーターで培養した。トランスフェクションの前に、培地を、2%FBSを含む90μlのOpti-MEM I還元血清培地(Life Technologiesカタログ番号31985-070)に変更した。その後、0.2μlのLipofectamine RNAiMax(Life Technologiesカタログ番号13778-100)を4.8μlのOpti-MEM Iと室温で5分間混合した。次に、1μlのsiRNAを4μlのOpti-MEM Iと混合し、LF2000溶液と混合し、ボルテックスなしで穏やかに混合した。室温で5分後、混合物を室温でさらに10分間インキュベートし、RNA-RNAiMax複合体を形成させた。さらに、10μlのRNA-RNAiMax複合体をウェルに添加し、プレートを手で静かに振盪した。細胞を5%CO2の空気中で加湿雰囲気を含む37℃のインキュベーター中で2時間インキュベートした。培地を、2%FBSを含む新鮮なOpti-MEM I還元血清培地に交換した。トランスフェクションの24時間後、細胞を氷冷PBSで1回洗浄した。細胞を室温で5〜30分間、50μlのCell-to-Ct溶解緩衝液(Life Technologiesカタログ番号4391851C)で溶解した。5μlの停止溶液を加え、室温で2分間インキュベートした。mRNAレベルはTAQMANを用いたRT-qPCRにより直ちに測定した。サンプルは-80℃で凍結し、後にアッセイすることができた。
血清安定性のための例示的プロトコル
0.2mg/mlのsiRNAを37℃で10%ヒト血清とともにインキュベートした。特定の時点(0、5、15及び30分)で、200μlの試料を等分し、抽出溶媒(クロロホルム:フェノール:イソアミルアルコール=24:25:1)200μlで抽出した。サンプルをボルテックスし、室温で10分間、13,000rpmで遠心分離し、次いで、上層溶液を移し、0.45μmのフィルターで濾過した。濾液を300μlのHPLC注入バイアルに移した。LCMSの場合、移動相はMPA:H2O中100mM HFIP+7mM TEA、MPB:50%メタノール+50%アセトニトリルとした。カラム:Waters Acquity OST 2.1×50mm、1.7μmを使用した。
実施例1:GST-πを標的とする本発明のsiRNAは、インビトロで遺伝子サイレンシングに活性であることが見出された。遺伝子ノックダウンのためのGST-πsiRNAの用量依存的活性は、約250ピコモル(pM)未満のIC50、及び1pM程度の低いIC50を示すことが判明した。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、siRNAノックダウン効率を決定した。表7に示すように、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが、表1のsiRNAで観察された。
Figure 0006751185
表7に示すように、表3のGST-πsiRNAの活性は、17〜235pMの範囲であり、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に適している。
実施例2:siRNAのアンチセンス鎖のシード領域に位置するデオキシヌクレオチドを有する本発明のGST-πsiRNAの構造は、インビトロにおける遺伝子ノックダウン活性を予想外に且つ有利に増加させることが示された。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造BU2’(配列番号131及び157)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表8に示すように、構造BU2’に基づくGST-πsiRNAを用いて、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが観察された。
Figure 0006751185
表8に示すように、アンチセンス鎖のシード領域に3つのデオキシヌクレオチドを有する構造BU2’に基づくGST-πsiRNAの活性は、二重鎖領域のデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して、驚くべきことに予想外に6倍まで増加した。
これらのデータは、アンチセンス鎖のシード領域の位置3、5及び7、又は位置4、6及び8に3つのデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、二重鎖領域のデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して驚くほど高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
アンチセンス鎖のシード領域に3つのデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAについて表8に示される活性は、5〜8pMの範囲であり、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適していた。
実施例3:siRNAのアンチセンス鎖のシード領域に位置するデオキシヌクレオチドを有する本発明のGST-πsiRNAの構造は、インビトロで遺伝子ノックダウン活性を予想外に且つ有利に増加させることが示された。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造A9’(配列番号183及び195)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表9に示すように、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが、構造A9’に基づくGST-πsiRNAで観察された。
Figure 0006751185
表9に示すように、アンチセンス鎖のシード領域に3〜6個のデオキシヌクレオチドを有する構造A9’に基づくGST-πsiRNAの活性は、驚くべきことに、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して24倍まで増加した。
これらのデータは、アンチセンス鎖のシード領域における位置4、6及び8、又は位置1、3、5及び7、又は位置3〜8、又は位置5〜8位、又は位置3、5及び7に3〜6個のデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して予想外に高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
アンチセンス鎖のシード領域に3〜6個のデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAについて表9に示す活性は、1〜15pMの範囲であり、これは、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適していた。
実施例4:siRNAのアンチセンス鎖のシード領域に位置するデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAの構造は、インビトロにおける遺伝子ノックダウン活性を予想外に且つ有利に増加させることが示された。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造B13’(配列番号207及び222)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表10に示すように、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが、構造B13’に基づくGST-πsiRNAで観察された。
Figure 0006751185
表10に示すように、アンチセンス鎖のシード領域に3つのデオキシヌクレオチドを有する構造B13’に基づくGST-πsiRNAの活性は、二重鎖領域のデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して予想外に増加した。
これらのデータは、アンチセンス鎖のシード領域の位置4、6及び8に3つのデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを含まないGST-πsiRNAと比較して予想外に高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
アンチセンス鎖のシード領域に3つのデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAについて表10に示す活性は、11pMのピコモルの範囲であり、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適していた。
実施例5:siRNAのアンチセンス鎖のシード領域に位置するデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAの構造は、インビトロで遺伝子ノックダウン活性を予想外に且つ有利に増加させた。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造B4’(配列番号261及び273)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表11に示すように、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが構造B4’に基づくGST-πsiRNAで観察された。
Figure 0006751185
表11に示すように、アンチセンス鎖のシード領域に6個のデオキシヌクレオチドを有する構造B4’に基づくGST-πsiRNAの活性は、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して予想外に2倍以上増加した。
これらのデータは、アンチセンス鎖のシード領域内の位置3〜8に位置する6個のデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して驚くほど高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
アンチセンス鎖のシード領域に6個のデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAの表11に示す活性は、113pMのピコモルの範囲であり、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適していた。
実施例6:siRNAのアンチセンス鎖のシード領域に位置するデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAの構造は、インビトロで遺伝子ノックダウン活性を予想外に且つ有利に増加させた。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造B2’(配列番号237及び249)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表12に示すように、構造B2’に基づくGST-πsiRNAを用いて、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが観察された。
Figure 0006751185
表12に示すように、アンチセンス鎖のシード領域内に3〜4個のデオキシヌクレオチドを有する構造B2’に基づくGST-πsiRNAの活性は、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して驚くべきことに4倍まで増加した。
これらのデータは、アンチセンス鎖のシード領域の位置5〜8、又は位置1、3、5及び7、又は位置3、5及び7に位置する3〜4個のデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、二重鎖領域にデオキシヌクレオチドを含まないGST-πsiRNAと比較して予想外に高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
アンチセンス鎖のシード領域に3〜4個のデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAについて表12に示す活性は、30〜100pMの範囲であり、これは、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適している。
実施例7:1つ以上の2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチドを含むGST-πsiRNAの構造は、インビトロで予想外に増加した遺伝子ノックダウン活性を示した。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造BU2’(配列番号131及び157)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表13に示すように、構造BU2’に基づくGST-πsiRNAを用いて、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが観察された。
Figure 0006751185
表13に示すように、1つ以上の2'-Fデオキシヌクレオチドを有する構造BU2’に基づくGST-πsiRNAの活性は、2'-Fデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して、驚くべきことに10倍まで増加した。
これらのデータは、1つ以上の2'-Fデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、2'-Fデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して予想外に高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
1つ以上2'-Fデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAについて表13に示す活性は、3〜13pMの範囲であり、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適していた。
実施例8:1つ以上の2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチドを含むGST-πsiRNAの構造は、インビトロで意外にも増加した遺伝子ノックダウン活性を示した。
インビトロトランスフェクションをA549細胞株で行い、構造B13’(配列番号207及び222)に基づくGST-πsiRNAのノックダウン効率を決定した。表14に示すように、GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンが構造B13'に基づくGST-πsiRNAで観察された。
Figure 0006751185
表14に示すように、非オーバーハング位置に3つの2'-Fデオキシヌクレオチドを有する構造B13’に基づくGST-πsiRNAの活性は、驚くべきことに、2'-Fデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して約3倍増加した。
これらのデータは、1つ以上の2'-Fデオキシヌクレオチドを有する構造を有するGST-πsiRNAが、2'-Fデオキシヌクレオチドを有しないGST-πsiRNAと比較して予想外に高い遺伝子ノックダウン活性を有することを示している。
1つ以上の2'-Fデオキシヌクレオチドを有するGST-πsiRNAについて表14に示される活性は、6pMのピコモルの範囲であり、インビボで使用される薬物剤を含む多くの用途に非常に適していた。
実施例9:同所性A549肺癌マウスモデル。本発明のGST-πsiRNAは、インビボで同所性肺癌腫瘍の顕著な減少を示すことができる。この実施例において、GST-πsiRNAは、無胸腺ヌードマウスの同所性肺癌腫瘍にリポソーム製剤で投与された場合、in vivoで遺伝子ノックダウン効力をもたらした。
一般に、同所性腫瘍モデルは、薬効及び効力、ならびに改善された予測能力に関して直接の臨床的関連性を示すことができる。同所性腫瘍モデルにおいて、腫瘍細胞は、細胞が由来する同種の器官に直接移植される。
ヒト肺癌A549に対するsiRNA製剤の抗腫瘍有効性を、処置群及びビヒクル対照群の剖検時に測定した最終原発腫瘍重量を比較することによって評価した。
図1は、構造BU2(配列番号61及び126)に基づくGST-πsiRNAのインビボでの同所性肺癌腫瘍阻害を示している。同所性A549肺癌マウスモデルを、GST-πを標的とするsiRNAの2mg/kgで比較的低用量で使用した。
GST-πsiRNAは、この6週間の研究において有意で予想外に有利な肺腫瘍阻害効力を示した。図1に示すように、43日後、GST-πsiRNAは著しく有利な腫瘍阻害効力を示し、最終腫瘍平均重量は対照と比較して2.8倍有意に減少した。
この研究のために、5〜6週齢の雄NCr nu/nuマウスを使用した。実験期間中、実験動物をHEPA濾過環境に維持した。使用前にsiRNA製剤を4℃で保存し、マウスに注射する10分前に室温に温めた。
外科的同所移植(SOI)の日に、このA549ヒト肺癌同所性モデルについて、ストック腫瘍を、A549腫瘍異種移植片を有する動物の皮下部位から採取し、RPMI-1640培地に入れた。壊死組織を除去し、生存組織を1.5〜2mm3に切断した。動物をイソフルラン吸入で麻酔し、手術領域をヨウ素及びアルコールで滅菌した。約1.5cmの横断切開を、マウスの左胸壁に、一対の外科用ハサミを用いて行った。3番目と4番目の肋間に肋間切開を行い、左肺を露出させた。1つのA549腫瘍断片を8-0の外科的縫合糸(ナイロン)で肺の表面に移植した。胸壁は6-0の外科用縫合糸(シルク)で閉じられた。肺は、胸腔内の残りの空気を引き出すために、25G×1/2針の3ccシリンジを使用して胸腔内穿刺により再膨張させた。胸壁は6-0の外科用絹縫合糸で閉じられた。上記操作の全ての手順は、HEPA濾過層流フードの下で7倍の倍率顕微鏡を用いて行った。
腫瘍移植の3日後、モデル担癌マウスを、群当たり10匹のマウスの群に無作為に分けた。目的の群については、腫瘍移植の3日後に10匹のマウスの治療を開始した。
目的の群について、処方物は、(イオン化可能な脂質:コレステロール:DOPE:DOPC:DPPE-PEG-2K:DSPE-PEG-2K)のリポソーム組成物とした。リポソームはGST-πsiRNAをカプセル化した。
試験エンドポイントについては、処置開始後42日で実験マウスを屠殺した。原発腫瘍を切除し、その後の分析のために電子天秤で秤量した。
化合物の毒性の評価について、処置群及び対照群におけるマウスの平均体重は、実験期間全体にわたって正常範囲内に維持された。毒性の他の症状はマウスにおいて観察されなかった。
実施例10:本発明のGST-πsiRNAは、インビボで癌異種移植片腫瘍の顕著な減少を示した。GST-πsiRNAは、リポソーム製剤で癌異種移植片腫瘍に投与された場合、インビボで遺伝子ノックダウン効力をもたらした。
図2は、GST-πsiRNA(配列番号156及び182)の腫瘍阻害効力を示す。癌異種移植モデルを、GST-πを標的とするsiRNAの0.75mg/kgで比較的低用量で使用した。
GST-πsiRNAは、投与後数日以内に有意で予想外に有利な腫瘍阻害効力を示した。36日後、GST-πsiRNAは著しく有利な腫瘍阻害効力を示し、腫瘍体積は対照と比較して2倍減少した。
図3に示すように、GST-πsiRNAは、最終日に有意で予想外に有利な腫瘍阻害効力を示した。特に、腫瘍重量は2倍以上減少した。
組成物(イオン化可能な脂質:コレステロール:DOPE:DOPC:DPPE-PEG-2K)(25:30:20:20:5)を有するリポソーム製剤としてGST-πsiRNAを2回の注射(1日目及び15日目)で投与した。
癌異種移植モデルのため、A549細胞株をATCCから得た。10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充した培養培地中で細胞を維持した。接種の48時間前に細胞を分割して、回収時に対数増殖期になるようにした。細胞をトリプシン-EDTAで軽くトリプシン処理し、組織培養から回収した。生存細胞の数を計数し、トリパンブルーの存在下で血球計算盤で測定した(生存細胞のみを数える)。細胞を、血清を含まない培地中で5×107/mlの濃度に再懸濁した。次いで、細胞懸濁液を、氷解凍したBDマトリゲルと1:1の比率でよく混合して注射に使用した。
マウスは、チャールズ・リバー・ラボラトリーの胸腺ヌードマウス(nu/nu)雌マウス、免疫不全、6〜8週齢、1群当たり7〜8匹のマウスとした。
腫瘍モデル調製のために、マウス1匹につき1接種量の25G針及びシリンジを用いて、2.5×106個のA549細胞の接種物0.1mlを右脇腹に皮下接種した。マウスは接種のために麻酔をかけられなかった。
腫瘍体積の測定及び無作為化のために、腫瘍サイズを最も近い0.1mmまで測定した。腫瘍体積は、式:腫瘍体積=長さ×幅2/2を用いて計算した。確立された腫瘍が約120〜175mm3に達すると、平均腫瘍体積は約150mm3であり、処置群の平均腫瘍体積がビヒクル対照群の平均腫瘍体積の10%以内になるように、マウスを様々なビヒクル対照及び処置群に割り当てた。理想的には、腫瘍体積のCV%を25%未満とした。同じ日に、試験品及び対照ビヒクルを投薬レジメンに従って投与した。腫瘍体積を第1週に3回、研究終了の日を含む残りの週に2回モニターした。
投薬投与のために、投与日に、試験品を-80℃の冷凍庫から取り出し、氷上で解凍した。注射器にアプライする前に、処方剤を含むボトルを手で数回戻した。全ての試験品には、0.75mg/kgでIV、q2wX2、10ml/kgで投与した。
体重については、マウスを最も近い0.1gまで秤量した。体重をモニターし、初回投与の7日以内に毎日記録した。研究の終了日を含む残りの数週間、体重を数週間監視し、週に2回記録した。
最初の投薬の28日後に腫瘍を採取するために、腫瘍体積を測定し、重量測定のために腫瘍を切開し、PDバイオマーカー研究のために保存した。腫瘍重量を記録した。
実施例11:本発明のGST-πsiRNAは、in vitroで癌細胞のアポトーシスにより癌細胞死の増加を示した。GST-πsiRNAはGST-πノックダウンをもたらし、アポトーシスのバイオマーカーであるPUMAのアップレギュレーションをもたらし、細胞生存率の低下を伴った。
シード領域におけるデオキシヌクレオチド、2'-F置換デオキシヌクレオチド及び2'-OMe置換リボヌクレオチドの組合せを含むGST-πsiRNA配列番号156及び182は、予期せず癌細胞のアポトーシスを増加させた。
GST-πsiRNA配列番号156及び182に対するPUMAの発現レベルを図4に示した。図4に示すように、PUMAの発現は、GST-πsiRNAのトランスフェクションの2〜4日後に大きく増加した。
これらのデータは、シード領域におけるデオキシヌクレオチド、2'-F置換デオキシヌクレオチド及び2'-OMe置換リボヌクレオチドの組み合わせを含むGST-πsiRNAの構造が、予想外に癌細胞のアポトーシスを増加させることを示している。
PUMAバイオマーカーに関するプロトコルは以下の通りとした。トランスフェクションの1日前に、10%FBSを含む100μlのDMEM(HyCloneカタログ番号SH30243.01)を96ウェルプレートに2×103細胞/ウェルで播種し、5%CO2の空気中で加湿雰囲気を含む37℃インキュベーターで培養した。翌日、トランスフェクションの前に、培地を、2%FBSを含む90μlのOpti-MEM I還元血清培地(Life Technologiesカタログ番号31985-070)と交換した。次いで、0.2μlのLipofectamine RNAiMAX(Life Technologiesカタログ番号13778-100)を4.8μlのOpti-MEM Iと室温で5分間混合した。1μlのsiRNA(ストック濃度1μM)を4μlのOpti-MEM Iと混合し、RNAiMAX溶液と混合し、次いで穏やかに混合した。混合物を室温で10分間インキュベートし、RNA-RNAiMAX複合体を形成させた。10μlのRNA-RNAiMAX複合体をウェル当たりに添加し、siRNAの最終濃度を10nMとした。細胞を2時間インキュベートし、培地を2%FBSを含む新鮮なOpti-MEM I還元血清培地に交換した。トランスフェクションの1、2、3、4及び6日後、細胞を氷冷PBSで1回洗浄し、次いで50μlのCell-to-Ct溶解緩衝液(Life Technologiesカタログ番号4391851C)を用いて室温で約5〜30分溶解した。5μlの停止溶液を添加し、室温で2分間インキュベートした。PUMA(BBC3、Cat#Hs00248075、Life Technologies)のmRNAレベルをTAQMANを用いてqPCRにより測定した。
実施例12:本発明のGST-πsiRNAは、インビボで癌異種移植片腫瘍の顕著な減少を示すことができた。GST-πsiRNAは、リポソーム製剤で癌異種移植腫瘍に投与された場合、インビボで遺伝子ノックダウン効力を提供することができる。
図5は、GST-πsiRNA(配列番号61及び126)の腫瘍阻害効力を示している。GST-πmRNAの用量依存的ノックダウンは、GST-πを標的とするsiRNAでインビボで観察された。癌異種移植片モデルを、GST-πを標的とするsiRNAの0.75mg/kgで比較的低用量と共に使用した。
GST-πsiRNAは、投与後数日以内に有意で予想外に有利な腫瘍阻害効力を示した。図5に示すように、GST-πsiRNAで処理すると、脂質製剤に注射してから4日後にGST-πmRNA発現が有意に減少した。4mg/kgの高用量では、注入後24時間で約40%の有意な減少が検出された。
GST-πsiRNAを、組成物(イオン化可能な脂質:コレステロール:DOPE:DOPC:DPPE-PEG-2K)(25:30:20:20:5)を有する10mL/kgのリポソーム製剤として単回注射で投与した。
癌異種移植片モデルのため、A549細胞株をATCCから得た。細胞を、10%ウシ胎仔血清及び100U/mlペニシリン及び100μg/mlストレプトマイシンを補充したRPMI-1640中で維持した。接種の48時間前に細胞を分割して、回収時に対数増殖期になるようにした。細胞をトリプシン-EDTAで軽くトリプシン処理し、組織培養から回収した。生存細胞の数を計数し、トリパンブルーの存在下で血球計算盤で測定した(生存細胞のみを数える)。血清を含まないRPMI培地中で細胞を4×107/mlの濃度に再懸濁した。次いで、細胞懸濁液を、氷解凍したBDマトリゲルと1:1の比率でよく混合して注射に使用した。
マウスは、チャールズ・リバー・ラボラトリー胸腺ヌード(nu/nu)雌マウス、免疫不全、6〜8週齢、1群当たり3匹のマウスであった。
腫瘍モデル調製のために、マウス1匹につき1接種量の25G針及び注射器を用いて、2×106のA549細胞の接種材料0.1mlを右脇腹に皮下接種した。マウスは接種のために麻酔をかけられなかった。
腫瘍体積の測定及び無作為化のために、腫瘍サイズを最も近い0.1mmまで測定した。腫瘍体積は、式:腫瘍体積=長さ×幅2/2を用いて計算した。腫瘍容積を週2回モニターした。確立された腫瘍が約350〜600mm3に達すると、マウスを様々な時点で群に割り当てた。同じ日に、試験品を投与レジメンに従って投与した。
投薬投与のために、確立された腫瘍が約350〜600mm3に達した日に、試験品を4℃の冷蔵庫から取り出した。シリンジにアプライする前に、処方剤を含むボトルを手で数回戻して均一な溶液を作製した。
体重については、マウスを最も近い0.1gまで秤量した。研究の終了日を含む残りの数週間、体重を数週間監視し、週2回記録した。
腫瘍の収集のために、動物を過量のCO2で犠牲にし、投与後0、24、48、72及び96(任意)及び168時間で腫瘍を解剖した。腫瘍を最初に湿潤し、KD、分布及びバイオマーカー分析のために3つの部分に分けた。試料を液体窒素中で急速冷凍し、処理する準備が整うまで-80℃で保存した。
実施例13:本発明のGST-πsiRNAは、インビボで膵臓癌異種移植片腫瘍を阻害した。GST-πsiRNAは、リポソーム製剤で膵臓癌異種移植片腫瘍に投与された場合、インビボで遺伝子ノックダウン効力をもたらした。
この異種移植モデルでは、各マウスに、2.5×106のPANC-1細胞接種物0.1mlを右脇腹に皮下接種した。胸腺欠損ヌード雌マウス(6〜8週齢、Charles River)を用いた。腫瘍の大きさは、最も近い0.1mmまで測定した。確立された腫瘍が約150〜250mm3(平均腫瘍体積約200mm3)に達すると、マウスを、処置群の平均腫瘍体積がビヒクル対照群における平均腫瘍体積の10%以内になるように、様々なビヒクル対照及び処置群に割り当てた。同じ日に、試験品及び対照ビヒクルを投薬レジメンに従って投与した。腫瘍容積を第1週に3回、研究終了日を含めて残りの週では2回モニターした。
図6は、GST-πsiRNA(配列番号63及び128)の腫瘍阻害効力を示している。図6に示すように、用量応答は、GST-πを標的とするsiRNAの0.375mg/kg〜3mg/kgの範囲の用量で得られた。GST-πsiRNAは、投与後数日以内に有意で、且つ予想外に有利な腫瘍阻害効力を示した。したがって、GST-πsiRNAは、エンドポイントで有意で、且つ予想外に有利な腫瘍阻害効力を示した。
GST-πsiRNAを、組成物(イオン化可能な脂質:コレステロール:DOPE:DOPC:DPPE-PEG-2K)(25:30:20:20:5)を有するリポソーム製剤で投与した。
実施例14:本発明のGST-πsiRNAは、増加した血清安定性を示した。
図7は、ヒト血清中でのインキュベーション及びHPLS/LCMSによる様々な時点での残りのsiRNAの検出を示している。図7に示すように、GST-πsiRNA(配列番号61及び126)のセンス鎖(図7、上段)及びアンチセンス鎖(図7、下段)の両方の血清中の半減期(t1/2)は約100分であった。
実施例15:本発明のGST-πsiRNAは、血漿中での製剤中の安定性の向上を示した。
図8は、血漿中での製剤のインキュベーション及び様々な時点での残りのsiRNAの検出を示している。図8に示すように、GST-πsiRNA製剤(配列番号61及び126)の血漿中半減期(t1/2)は100時間よりも有意に長かった。
GST-πsiRNAを、組成物(イオン化脂質:コレステロール:DOPE:DOPC:DPPE-PEG-2K)(25:30:20:20:5)を有するリポソーム製剤で調製した。リポソームナノ粒子のz平均サイズは40.0nmであり、siRNAは91%カプセル化されていた。
製剤をPBS中の50%ヒト血清中で40分、1.5時間、3時間、24時間及び96時間インキュベートした。GST-πsiRNAの量は、ELISAベースのアッセイによって決定した。
実施例16:本発明のGST-πsiRNAは、パッセンジャー鎖によるオフターゲット効果の低下を示した。
GST-πsiRNA(配列番号156及び182)について、図9は、効果を示さなかったスクランブル配列を有する対照と比較して、ガイド鎖についてのインビトロノックダウンがほぼ指数関数的であったことを示している。このsiRNAのIC50を5pMで測定した。図10は、同じGST-πsiRNAのパッセンジャー鎖のインビトロノックダウンを示している。図10に示すように、GST-πsiRNAについてパッセンジャー鎖のオフターゲットノックダウンは100倍以上大きく減少した。
GST-πsiRNA(配列番号187及び199)、(配列番号189及び201)及び(配列番号190及び202)に関して、図11は、ガイド鎖のインビトロノックダウンはおよそ指数関数的であったことを示している。これらのsiRNAのIC50を、それぞれ6、7及び5pMで測定した。図12に示すように、これらのGST-πsiRNAのパッセンジャー鎖のインビトロノックダウンは、少なくとも10倍まで有意に減少した。これらのGST-πsiRNAはすべて、二重鎖領域のシード領域にデオキシヌクレオチドを有し、当該二重鎖領域には他の修飾はなかった。
GST-πsiRNA(配列番号217及び232)について、図13は、この高活性なGST-πsiRNAのガイド鎖についてのインビトロノックダウンがほぼ指数関数的であったことを示している。このsiRNAのIC50を11pMで測定した。図14に示すように、このGST-πsiRNAのパッセンジャー鎖に対するインビトロノックダウンは、100倍を超えて有意に減少した。このGST-πsiRNAは、二重鎖領域のシード領域にデオキシヌクレオチドを有し、当該二重鎖領域には他の修飾はなかった。
オフターゲット効果は、Renillaルシフェラーゼ遺伝子をコードする発現レポータープラスミドpsiCHECK-2を用いて決定した(二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム、Promega、カタログ番号:E1960)。siRNA濃度は典型的には50pMであった。プロトコル:1日目、HeLa細胞を5〜7.5×103/100μl/ウェルで播種した。2日目、約80%の細胞コンフルエンスでの同時トランスフェクション。3日目に、細胞を採取してルシフェラーゼ活性測定を行った。ルシフェラーゼ活性を、プロメガ社のルシフェラーゼアッセイシステム(E4550)を用いて、製造業者のプロトコルに従って測定した。
psiCHECK-2ベクターは、Renillaルシフェラーゼのレポーター遺伝子に融合した標的遺伝子の発現の変化をモニタリングすることができる。siRNA構築物を多重クローニング領域にクローニングし、ベクターをHeLa細胞にsiRNAとともに同時トランスフェクションした。特定のsiRNAが標的mRNAに結合し、RNAiプロセスを開始する場合、融合Renillaルシフェラーゼ:構築mRNAは切断され、続いて分解され、Renillaルシフェラーゼシグナルを減少させる。
例えば、BU2’構造を有するsiRNAのためのプラスミド挿入物は以下の通りとした:
PsiCHECK-2 (F)プラスミド挿入物:
配列番号285
ctcgag gggcaacTGAAGCCTTTTGAGACCCTGcTgTcccag gcggccgc
PsiCHECK-2 (R)プラスミド挿入物:
配列番号286
ctcgag cTgggacagCAGGGTCTCAAAAGGCTTCagTTgccc gcggccgc
実施例17:本発明のGST-πsiRNAは、シード依存性の意図しないオフターゲット遺伝子サイレンシングである、miRNA様オフターゲット効果が有利に減少したことを示した。
GST-πsiRNA(配列番号156及び182)、(配列番号187及び199)、(配列番号189及び201)、(配列番号190及び202)及び(配列番号217及び232)に関して、miRNAを模倣するオフターゲット活性は、本質的に無視できることが判明した。これらのGST-πsiRNAのシード依存性の意図しないオフターゲット遺伝子サイレンシングは、ガイド鎖の標的活性よりも少なくとも10倍〜100倍小さかった。
miRNA関連オフターゲット効果を試験するために、アンチセンス鎖の5’末端の1〜8位の位置である、シード含有領域全体に相補的ではあるが残りの非シード領域(位置9〜21)相補的ではない、1〜4回反復のシード適合標的配列を、ルシフェラーゼmRNAの3'UTRに対応する領域に導入して、シード依存性の意図しないオフターゲット効果の効率を決定した。プラスミド挿入物を用いて、シード領域における完全なマッチング及び非シード領域におけるミスマッチ(バルジ)を有するmiRNAを模倣した。
例えば、BU2’構造を有するsiRNAについてのプラスミド挿入物は以下の通りとした:
PsiCHECK-2 (Fmi1)プラスミド挿入物:
配列番号287
ctcgag gggcaacTCTACGCAAAACAGACCCTGcTgTcccag gcggccgc
PsiCHECK-2 (Fmi2)プラスミド挿入物:
配列番号288
ctcgag gggcaacTCTACGCAAAACAGACCCTGcT CTACGCAAAACAGACCCTGcT gTcccag gcggccgc
PsiCHECK-2 (Fmi3)プラスミド挿入物:
配列番号289
ctcgag gggcaacTCTACGCAAAACAGACCCTGcT CTACGCAAAACAGACCCTGcT CTACGCAAAACAGACCCTGcT gTcccag gcggccgc
PsiCHECK-2 (Fmi4)プラスミド挿入物:
配列番号290
ctcgag gggcaacTCTACGCAAAACAGACCCTGcT CTACGCAAAACAGACCCTGcT CTACGCAAAACAGACCCTGcT CTACGCAAAACAGACCCTGcT gTcccag gcggccgc
本明細書に記載された実施形態は限定的ではなく、当業者は、本明細書に記載の修飾の特定の組み合わせを、改善されたRNAi活性を有する核酸分子を同定するための過度の実験なしに試験することができることを容易に理解することができる。
本明細書中で具体的に言及される全ての刊行物、特許及び文献は、あらゆる目的のためにその全体が参考として援用される。
本発明は、記載された特定の方法論、プロトコル、材料、及び試薬に限定されず、これらは変化し得ることが理解される。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではないことも理解されたい。説明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書に開示された説明に様々な置換及び変更を加えることができ、これらの実施形態はこの説明及び添付の特許請求の範囲内にあることは、当業者にとって極めて明らかである。
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上他に明確に指示されていない限り、複数の言及を含むことに留意されたい。同様に、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」及び「少なくとも1つの」は、本明細書では交換可能に使用することができる。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「含む(including)」及び「有する」は、互換的に使用することができ、広範かつ制限なしに読まれるべきである。
本明細書中の値の範囲の記載は、本明細書中に別段の指示がない限り、範囲内の各別個の値を個々に参照する簡略方法として役立つことを意図しており、それぞれの個別値は個々に記載されているかのように組み入れられる。ここで、マーカッシュグループについては、当業者は、この説明が個々のメンバーならびにマーカッシュグループのメンバーのサブグループを含むことを認識するであろう。
それ以上の詳述なしに、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるものであり、決して本開示の残りの部分を限定するものではない。
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わせることができる。本明細書で開示された各特徴は、同じ、等価の目的、又は同様の目的を果たす代替の特徴と置き換えることができる。

Claims (10)

  1. センス鎖及びアンチセンス鎖を含むGST-πの発現を阻害する核酸分子であって、
    前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖で形成される二重鎖領域を有し、
    前記二重鎖領域における前記アンチセンス鎖はUAGGGUCUCAAAAGGCUUC(5’〜3’)のヌクレオチド配列又は修飾を有する当該ヌクレオチド鎖を含み、前記二重鎖領域における前記センス鎖はGAAGCCUUUUGAGACCCUA(5’〜3’)のヌクレオチド配列又は修飾を有する当該ヌクレオチド鎖を含み、
    前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖で形成される二重鎖領域は、30塩基以下のヌクレオチド長である核酸分子。
  2. 前記二重鎖領域を形成する前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖の少なくとも一方は、5’末端及び/又は3’末端に長さが1〜8ヌクレオチド長の一本鎖領域からなるオーバーハングを有する、請求項1記載の核酸分子
  3. 前記修飾が、2’-デオキシヌクレオチド、2’-O-アルキル置換ヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロ置換ヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ロックドヌクレオチド又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1記載の核酸分子。
  4. 前記アンチセンス鎖が複数の位置にデオキシヌクレオチドを有し、前記複数の位置が前記UAGGGUCUCAAAAGGCUUC(5’〜3’)における以下のうちの1つである、請求項1記載の核酸分子。
    5’末端からの位置4、6及び8のそれぞれ;
    5’末端からの位置3、5及び7のそれぞれ;
    5’末端からの位置1、3、5及び7のそれぞれ;
    5’末端からの位置3〜8のそれぞれ;又は
    5’末端からの位置5〜8のそれぞれ
  5. 上記アンチセンス鎖及び上記センス鎖は、下記表のIDで示される組み合わせであることを特徴とする請求項1記載の核酸分子。
    Figure 0006751185
    ここで、表中の大文字のA、G、C及びUはそれぞれリボA、リボG、リボC及びリボUを意味し、小文字a、u、g、c及びtはそれぞれ2'-デオキシ-A、2'-デオキシ-U、2'-デオキシ-G、2'-デオキシ-C及びデオキシチミジンを意味し、下線は2'-OMe置換体を意味し、小文字のfは2'-デオキシ-2'-フルオロ置換を意味する。
  6. 前記二重鎖領域内に1つ以上の2'-デオキシ-2'-フルオロ置換ヌクレオチドを有する、請求項1記載の核酸分子。
  7. 請求項1〜いずれか1項記載の核酸分子及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
  8. 前記担体が脂質分子又はリポソームを含む、請求項記載の医薬組成物。
  9. 悪性腫瘍、癌、突然変異KRASを発現する細胞に起因する癌、肉腫及び癌腫から選ばれる少なくとも一種に対する治療のための請求項記載の医薬組成物。
  10. 請求項1〜いずれか1項記載の核酸分子を含むベクター又は細胞。
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