JP6670015B2 - 微細藻類のエネルギー低消費型培養方法 - Google Patents

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Description

本発明は、微細藻類の培養法に関する。
バイオマス燃料は、CO2排出の抑制およびエネルギーの安全保障の観点で注目を集めている。現在では、微細藻類バイオマスからバイオディーゼルを生産する第3世代のバイオ燃料が脚光を浴びている。微細藻類の培養は、主に液体培養によって行われるが、液体培養法には2つの課題が存在する。先ず、液体培養法において高い増殖速度を達成するためには、大気のCO2濃度よりもはるかに高い濃度(例えば1 %)のCO2の通気が必要である。高濃度のCO2発生源である火力発電所および工場などの近傍では高濃度のCO2が入手できるが、そのような施設がない場所では高濃度のCO2を他の場所から調達する必要がある。高濃度のCO2の入手先としては、CO2分離回収・貯留(Carbon Capture and Storage:CCS)技術で生産されたものなどが考えられるが、それらは依然高価である。次に、液体培養法では培養液を攪拌する必要があり、攪拌に要する電力が、バイオ燃料のコストを押し上げている。
一方、固体表面で微細藻を塗布し培養を行う表面培養法が提案されている。この培養法では、細胞が直接大気に触れることができるので、高濃度のCO2排出源の無い場所でも微細藻を大量培養できる可能性がある。また、表面培養法では、太陽光を最大限利用できるように培養面の方角と角度を設定できるので、液体培養法よりも高い太陽光エネルギーの利用効率で培養が行える可能性がある。実際、以下に述べるように、表面培養法の研究が多く行われ、液体培養法よりも優れているとの研究結果が示されている。
比較的初期(2001年)の研究として、ほぼ垂直に張ったポリスチレン繊維上に培地を滴下させながら、高いCO2濃度(20% v/v)中で、シアノバクテリアの一種であるノストック(Nostoc)を培養し、その増殖を確認したものがある。培養面を水平ではなく、入射光と平行に近くしたことで、光をより広い培養面積に当てることができた。しかし、定量的な増殖データは示されなかった(非特許文献1)。
水平に置かれたポリエチレンネット上に、し尿廃水を循環させて流したところ、糸状の微細藻細胞がネット上に増殖した。この培養方法でのバイオマス生産性は、最大25 g m-2 day-1であった(非特許文献2)。
培養基材としてポリスチレンを用い、その表面にクロレラ属細胞を塗布した。この基材を、培地を含む容器の底に置き、この容器をシーソーのように振とうさせた。これにより、ポリスチレン基材上の細胞は、培地と空気に交互に接触しつつ増殖した。この方法での細胞バイオマス生産性のデータは示されていないが、2 g m-2 day-1程度と推測される(非特許文献3)。
水平に置かれたコンクリート表面にボツリオコッカス ブラウニー(Botryococcus braunii)を塗布し、そこに培地を滴下させながら培養した場合、バイオマス生産性は、0.71 g m-2 day-1と低かった(非特許文献4)。
綿ロープを巻きつけた直径5.6 cmの塩ビ・パイプを、培地を含む容器上に水平に設置し、このパイプの下部約40%が培地(栄養塩濃度を調整した生活廃水)に浸かるようにした。そして、このパイプを回転させることにより、パイプに巻かれたロープ上で増殖した藻細胞が培地に浸っている時には水分や栄養素が供給され、また、空気中にあるときには、空気中のCO2が吸収できたと考えられる。このrotating algal biofilm reactor (RABR)と命名された培養方式で、廃水中に生息する藻類を増殖させたところ、バイオマス生産量は、20 g m-2 day-1以上であった(非特許文献5)。
Liu等(非特許文献6)は、ガラス板の上にろ紙を貼りつけ、さらにその上に、セネデスムス オブリガス(Scenedesmus obliquus)細胞をのせた酢酸/硝酸セルロース膜(孔径0.45 μm)を貼りつけ、2% (v/v) CO2を含む空気中で培養した。培養液は上部から滴下させた。この方式での培養におけるバイオマス生産性は50 g m-2 day-1以上であった。この研究とほぼ同様な方法で、ボツリオコッカス ブラウニーを、強い光(500 μmol m-2 sec-1)を連続照射した条件下で培養したところ、バイオマス生産性は50 g m-2 day-1に達した(非特許文献7)。
天井が透明で密閉された箱の中に、フロック加工した布を垂直に垂らし、培地を布の上から滴下できる装置を作製した。0.5% (v/v) CO2を含む空気中で、この布の上でスピルリナ プラテンシス(Spirulina platensis)を培養した。60 g m-2day-1を越えるバイオマス生産性が得られた(非特許文献8)。
上記以外にも、表面培養に関する類似した論文が多数発表されている。それらについては、Gross等の総説(非特許文献9)にまとめられている。
表面培養法での最大の問題点は、固体表面で増殖する微細藻細胞への水分および栄養素の供給であろう。この問題を解決するためにさまざまな給水法が提案されているが、いずれもがエネルギー消費を伴い、バイオマス生産、ひいてはバイオ燃料生産のコストを押し上げる要因となっている。
特許文献1には、吸湿性の固体の表面上でボツリオコッカス属微細藻を培養することにより、炭化水素の蓄積速度が増加したという記載がある。吸湿性の固体が濡れる現象に毛細管現象が関与していると考えられる。しかしながら、当該特許文献では、培地に浮かした吸湿性の固体上で微細藻を増殖させると記載されており、毛細管現象を利用して、水分および栄養塩を供給するものではない。
米国特許出願公開第2009/0087889号
Bayless, D. J., Kremer, G. G., Prudich, M. E., Stuart, B. J., Vis-Chiasson, M. L., Cooksey, K., & Muhs, J. (2001). Enhanced practical photosynthetic CO2 mitigation. In Proceedings of the first national conference on carbon sequestration (pp. 1-14). Mulbry, W., Kondrad, S., Pizarro, C., & Kebede-Westhead, E. (2008). Treatment of dairy manure effluent using freshwater algae: algal productivity and recovery of manure nutrients using pilot-scale algal turf scrubbers. Bioresource technology, 99(17), 8137-8142. Johnson, M. B., & Wen, Z. (2010). Development of an attached microalgal growth system for biofuel production. Applied microbiology and biotechnology, 85(3), 525-534. Ozkan, A., Kinney, K., Katz, L., & Berberoglu, H. (2012). Reduction of water and energy requirement of algae cultivation using an algae biofilm photobioreactor. Bioresource technology, 114, 542-548. Christenson, Logan B., and Ronald C. Sims. "Rotating algal biofilm reactor and spool harvester for wastewater treatment with biofuels by‐products." Biotechnology and bioengineering 109.7 (2012): 1674-1684. Liu, T., Wang, J., Hu, Q., Cheng, P., Ji, B., Liu, J., ... & Wang, H. (2013). Attached cultivation technology of microalgae for efficient biomass feedstock production. Bioresource technology, 127, 216-222. Cheng, P., Ji, B., Gao, L., Zhang, W., Wang, J., & Liu, T. (2013). The growth, lipid and hydrocarbon production of Botryococcus braunii with attached cultivation. Bioresource technology, 138, 95-100. Zhang, L., Chen, L., Wang, J., Chen, Y., Gao, X., Zhang, Z., & Liu, T. (2015). Attached cultivation for improving the biomass productivity of Spirulina platensis. Bioresource technology, 181, 136-142. Gross, M., Jarboe, D., & Wen, Z. (2015). Biofilm-based algal cultivation systems. Applied microbiology and biotechnology, 99(14), 5781-5789.
微細藻を固体表面で培養する表面培養法は、伝統的な微細藻類の培養法である液体培養法に比べて、産業利用上の利点が複数存在する。第一に、表面培養法におけるバイオマスの回収は、液体培養におけるそれよりも有利である。微細藻をレースウェイ・ポンドで培養すると、藻体の密度は0.5 g/L程度であり(Rogers et al., Algal Research, 2014, 4: 76-88)、これを濃縮するのに手間とエネルギー(=コスト)が必要である。一方、固体表面に増殖した藻体をかきとれば、遠心機を用いて液体培養液を濃縮したものと同等の濃度のものが簡単に回収できる。第二に、固体表面に増殖した微細藻細胞が空気と直接接触することにより、水中にいる時よりもはるかに容易に、細胞外とのガス交換を行えるようになる(Mommer et al., Annals of botany, 2005, 96: 581-589)。その結果、昼でのCO2の吸収とO2の排出、および夜でのO2の吸収がよりスムーズとなり、バイオマス生産性が増加する可能性がある。第三に、表面培養の培養面を入射光に向けて立てることにより、光の利用効率を上げることができる。多くの微細藻類では、地表での光量子密度が300 μmol m-2 sec-1程度で光合成速度は飽和する。一方、日中の太陽光の地表での光量子密度は1,000 μmol m-2 sec-1を越え、微細藻が吸収した過剰の光量子は、蛍光や熱として消費される。また、地表での光量子密度が1,000 μmol m-2 sec-1を越えると、強光阻害によって光合成の能力の低下が起こる。培養面を平面ではなく垂直近くに立てることにより、地表面積あたりの培養面積を増加させることができる。この場合、光飽和点以上の光量子密度が地表に当たっている場合、光の利用効率を大きく上昇させることができる。また、培養面での光量子密度を減少させることによって、強光阻害を避けることができる。
上記の第二の利点を引き出すためには、表面培養の培養面は、水中ではなく、空気に接していなければならない。この場合、培養面上の細胞に水分と栄養素とを補給するために、何らかの方法で培地を常時補給しなければならない。この際、エネルギーを使って培地を補給した場合、バイオマス生産のコスト、ひいてはバイオ燃料生産のコストが増加する。また、バイオ燃料生産に投入するエネルギーが増加することから、エネルギー収支比(Energy Profit Ratio:EPR)が悪化する。
そこで、本発明は、微細藻類の表面培養において、エネルギー消費を伴わない水分および栄養素の供給法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、水に対して濡れ性の高い材質が密集して微小な空隙を作る構造を表面に持つ材料(以下、「担体」と呼ぶ)の表面を入射光に対して適当な角度をなすように、培地水面より上に配置し、その担体表面上で微細藻を増殖させる際に、水分および栄養素が毛細管現象によって担体基部より上部に供給されることで、担体表面に塗布した微細藻を増殖させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
(1)液体培地の水面より上方にある培養担体に対して、毛細管現象を利用して水分および栄養素を供給することにより、前記培養担体表面上において微細藻類の細胞を培養することを特徴とする、微細藻類の培養方法。
(2)液体培地の水面の高さの平均値よりも5 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって水分および栄養素を供給することを特徴とする、(1)記載の培養方法。
(3)液体培地の水面の高さの平均値よりも10 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって水分および栄養素を供給することを特徴とする、(1)記載の培養方法。
(4)液体培地の水面の高さの平均値よりも30 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって水分および栄養素を供給することを特徴とする、(1)記載の培養方法。
(5)培養担体の成分の70%以上がセルロースであることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれか1記載の培養方法。
(6)微細藻類が、トレボキシア藻綱(Trebouxiophyceae)に属するものであることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれか1記載の培養方法。
(7)トレボキシア藻綱に属する微細藻類が、シュードコッコミクサ(Pseudococcomyxa)属に属するものであることを特徴とする、(6)記載の培養方法。
本発明によれば、微細藻類に水分と栄養素とを供給する際、エネルギーを消費しない表面培養が可能となる。
本発明の最も単純な実施形態での微細藻類の培養法を示す模式図である。微細藻は、三角波板の表面で増殖する。この増殖に必要な水分と栄養素とは、培地に浸っている三角波板下部より、毛細管現象によって供給される。 実施例における受光面積当たりのバイオマス乾燥重量(g m-2)を示すグラフである。Obi株を培養開始後、0, 3, 7日目に、培養担体表面に増殖した藻細胞を絞り出し、その液を遠心し、細胞を回収した。この細胞を105℃で1日乾燥させ、乾燥重量を測定した。 実施例における受光面積当たりのバイオマス生産性(g m-2day-1)を示すグラフである。Obi株を培養開始後最初の3日間(Day 0〜3)、3日目から7日目の4日間(Day 3〜7)、0日目から7日目までの7日間(Day 0〜7)でのバイオマス生産性を、図2の結果から計算した。
本発明に係る微細藻類の培養方法(以下、「本方法」と呼ぶ)は、表面培養において、液体培地の水面より上方にある培養担体に対して、毛細管現象を利用して水分及び栄養素(例えば、アンモニア態の窒素分、リン酸、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、硫酸塩などの多量要素、鉄イオン、コバルトイオンなどの微量要素)を供給することにより、該培養担体表面上において微細藻類の細胞を培養する工程を含むものである。微細藻類を固体表面で培養する表面培養においては、水分及び栄養素を常時供給することが重要であるが、このための装置を作り供給を行うと、エネルギーとコストがかかる。そこで、本方法では、水に対して濡れ性の高い材質が密集して微小な空隙を作る構造を表面に持つ材料を培養担体として使用することにより、微細藻を塗布したこの担体を培地上に立ち上げるように配置して、水分及び栄養素が毛細管現象によって担体基部より上部に供給されることで、微細藻を増殖させることができる。
ここで、微細藻類とは、生殖細胞やシストなどの休眠細胞、ヘテロシストなどの窒素固定細胞を除いては細胞の顕著な機能分化を示さない単細胞性あるいは群体性の光合成生物を指し、緑藻、珪藻(diatom又はBacillariophyceae)、真正眼点藻綱(Eustigmatophyceae)、シアノバクテリア等に属する微細藻類を挙げることができる。
緑藻としては、例えばトレボキシア藻網に属する緑藻が挙げられる。トレボキシア藻網に属する緑藻としては、例えば、トレボキシア(Trebouxia)属、クロレラ(Chlorella)属、ボトリオコッカス属、コリシスチス(Choricystis)属、コッコミクサ(Coccomyxa)属、シュードコッコミクサ属に属する緑藻が挙げられる。トレボキシア藻綱に属する具体的な菌株としては、Pseudochoricystis ellipsoidea Obi株(以下、「Obi株」と呼ぶ)及びPseudococcomyxa sp. KJ株(以下、「KJ株」と呼ぶ)が挙げられる。Obi株は、2005年2月15日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(IPOD)(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に受託番号FERM P-20401として寄託され、2006年1月18日付でブタペスト条約の規定下で受託番号FERM BP-10484として国際寄託に移管されている。また、KJ株は、平成25年(2013年)6月4日付で独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(NITE-IPOD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に受託番号FERM P-22254として寄託され、さらに平成27年(2015年)6月2日付けで受託番号FERM BP-22254としてブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管されている。
トレボキシア藻網に属する緑藻以外の緑藻としては、例えばテトラセルミス(Tetraselmis)属、アンキストロデスムス(Ankistrodesmus)属、ドラニエラ(Dunalliella)属、ネオクロリス(Neochloris)属、クラミドモナス属、イカダモ(=セネデスムス:Scenedesmus)属等に属する緑藻が挙げられる。
更に珪藻としては、フィストゥリフェラ(Fistulifera)属、フェオダクチラム属、タラシオシラ(Thalassiosira)属、シクロテラ(Cyclotella)属、シリンドロティカ(Cylindrotheca)属、スケレトネマ(Skeletonema)属等に属する微細藻類を挙げることができる。さらに、真正眼点藻綱としては、ナンノクロロプシス属が挙げられる。また、シアノバクテリアとしては、シネココッカス(Synechococcus)属が挙げられる。
また、本方法で使用する培養担体は、水に対して濡れ性の高い材質が密集して微小な空隙を作る構造を表面に持つ材料であり、成分の70%以上がセルロースから成る培養担体が挙げられ、具体的には、例えばセルロースを基材とした吸水性布(例えば、ジェイワイパー(シーバイエス))、当該吸水性布表面にpolytetrafluoroethylene(PTFE)平膜(例えば、ポアフロンHPW-010-30, pore size = 0.1 μm, thickness = 30 μm, 住友電工)を重ねたもの、セルロース製ろ紙(例えば、ベンチコートプラス、ワットマン)、及び当該セルロース製ろ紙表面にPTFE平膜を重ねたものが挙げられる。
培養担体の表面には、微細藻類を、例えば植藻量が0.1〜20 g/m2(好ましくは1〜10 g/m2)となるように、一面に塗布する。
本方法では、微細藻を表面に塗布した培養担体を液体培地の水面より上方に立てて、微細藻類を培養する。液体培地が培養担体中を毛細管現象によって上昇し、当該担体表面で増殖する微細藻類細胞に水分及び栄養素を供給することにより、エネルギー低消費型の微細藻類の培養が実現される。本方法では、液体培地の水面の高さの平均値よりも5 mm以上、10 mm以上又は30 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって液体培地を供給する。
本方法の一例を示す模式図を図1に示す。支持体である三角波板1の表面に培養担体2を配置し、当該培養担体2の表面において微細藻は増殖する。この三角波板1の底面は、液体培地(培養液)3に接している。栄養素を含んだ液体培地3は、三角波板1の下部から培養担体2に沿って上方へと、毛細管現象で上昇する。すなわち、培養担体2は、毛細管現象を起こすような材質の表面を有している。培養担体2の培養面は垂直方向に立ち上がっているから、この培養面での光量子密度は地表での光量子密度よりも低く、その結果、特に春から秋の日中において太陽光エネルギーの利用効率が上昇し、かつ強光阻害が減少する。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
使用した微細藻類は、単細胞性緑藻であるObi株あるいはKJ株である。培地としては、MA5培地を2倍希釈したもの(1/2MA5)を使用した。Obi株およびMA5培地は、論文(Imamura et al., The Journal of general and applied microbiology, 2012, 58: 1-10.)に記載されている。Obi株ゲノム上の複数の遺伝子配列解析結果から、この株はPseudococcomyxa属に分類されるべきであることが明らかになっている。また、KJ株は、特開2015-015918号公報に記載されている。
表面培養に用いるシート状担体としては、(1)セルロースを基材とした吸水性の布であるジェイワイパー(J. Wiper, シーバイエス)、(2)ジェイワイパー表面に、polytetrafluoroethylene (PTFE)平膜(ポアフロンHPW-010-30, pore size = 0.1 μm, thickness = 30 μm, 住友電工)を重ねたもの、(3)セルロース製ろ紙(ベンチコートプラス(Benchkote+)、ワットマン)、(4)当該ろ紙表面に、PTFE平膜を重ねたもの、の4種類を使用した。これらの担体のサイズは、いずれも、幅15 cm、長さ20 cmであった。これらの担体の表面に、1/2MA5培地に懸濁したPseudococcomyxa細胞を、植藻量が3〜4 g/m2となるように、一面に塗布した。PTFE膜を重ねる場合は、PTFE膜状にのみ細胞を塗布した。
アクリル板で、図1のような三角波板を作り、Pseudococcomyxa細胞を塗布した培養担体を、湿った状態でアクリル板表面に貼りつけた。20 cmの長さを持つ担体の中央が三角波板の頂部稜線に来るように置き、稜線の両側にそれぞれ10 cm、植藻した担体が垂れるように貼りつけた。植藻後、この培養担体を貼りつけた三角波板を、1/2MA5培地を深さ約8 mmに張ったプラスチック製バットに置き、上方からLEDライトで照射し、25℃で培養した。この培養装置の培地水平面に照射される光量は、300〜340 μmol m-2s-1であった。波板の頂部稜線間の間隔は3.3 cmであったので、1枚のシート状担体当たりの受光面積は約25 cm2 (15×3.3÷2)であった。
Obi株の培養結果を図2に示す。いずれの担体を使用した場合でも、培養日数が経過するに従ってバイオマス乾燥重量が増加した。ジェーワイパーに直接藻を塗布した場合のバイオマス増加速度は、他の担体上でのバイオマス増加速度に比べて著しく遅かった。これは、ジェーワイパー表面で増殖した藻細胞がジェーワイパーの中にもぐりこみ、バイオマス回収率が低かったことが主な原因と考えられる。
図3に、図2より計算した、バイオマス生産性(1日あたり、単位受光面積あたりのバイオマス増加量)の結果を示す。ベンチコートプラスの例を除けば、バイオマス生産性は、最初の3日間で一番高く、それ以降では減少した。バイオマス生産性は、PTFE膜上で藻を増殖させた場合が一番高く、ベンチコートプラスあるいはジェイワイパーいずれにおいても、10 g m-2 day-1以上であった。ベンチコートプラスに直接微細藻を塗布した場合でも、7日間での平均バイオマス生産量は、6.5 g m-2 day-1と比較的高かった。
以上のように、高濃度のCO2を供給せず、また、水分および栄養素の供給に全くエネルギーを使用せずに培養をおこなった場合でも、実用的な増殖速度でバイオマスを得ることに成功した。
ジェイワイパーにPTFE膜を重ねた担体を用いて、KJ株の培養をおこなったところ、7日間の培養で、Obi株と同等のバイオマス生産性(6.9 ± 0.3 g m-2 day-1)が得られた。
1:三角波板
2:培養担体
3:液体培地
FERM BP-10484
FERM BP-22254

Claims (6)

  1. 液体培地の水面より上方にある培養担体に対して、毛細管現象を利用して水分および栄養素を供給することにより、前記培養担体表面上において微細藻類の細胞を培養することを特徴とする、微細藻類の培養方法であって、
    前記培養担体が三角波板の表面に配置されており、且つ、
    前記培養担体の成分の70%以上がセルロースである、
    前記方法
  2. 液体培地の水面の高さの平均値よりも5 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって水分および栄養素を供給することを特徴とする、請求項1記載の培養方法。
  3. 液体培地の水面の高さの平均値よりも10 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって水分および栄養素を供給することを特徴とする、請求項1記載の培養方法。
  4. 液体培地の水面の高さの平均値よりも30 mm以上高い培養担体表面に、毛細管現象によって水分および栄養素を供給することを特徴とする、請求項1記載の培養方法。
  5. 微細藻類が、トレボキシア藻綱(Trebouxiophyceae)に属するものであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の培養方法。
  6. トレボキシア藻綱に属する微細藻類が、シュードコッコミクサ(Pseudococcomyxa)属に属するものであることを特徴とする、請求項5記載の培養方法。
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