JP6628922B1 - 包装された調理済魚介製品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】長期間にわたる常温保存が可能で、魚介本来の形状を有しつつ、やわらかな食感を有し、咀嚼、嚥下機能が低下した方でも安心して食べることができる、包装された調理済魚介製品の提供。【解決手段】調理済の非成形魚介製品を真空包装体中に収納してなる製品であって、前記魚介製品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×104N/m2以上であり、かつレトルト臭を有さず、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる無菌性条件を満たす、調理済魚介製品。【選択図】図1

Description

本発明は、包装された調理済魚介製品およびその製造方法に関する。詳しく述べると本発明は、長期間にわたる常温保存が可能で、魚介全体ないしは魚介の切り身といった魚介の一部位の本来の形状を有しつつ、やわらかな食感を有する包装された調理済魚介製品およびその製造方法に関するものである。
近年、先進国家、特に日本においては高齢化が進み、高齢人口は年々増加している。このような状況の中、高齢者の食に対するさまざまな問題が生じている。例えば、在宅介護を受ける高齢者の半数以上は低栄養傾向にあるといった調査結果も出ており、低栄養により、病気にかかりやすくなったり回復が遅延するとの指摘や活動性や認知機能が低下するなど様々な影響を及ぼしているとの指摘もある。また介護状態等にある高齢者にとっては食は大きな楽しみの一つである。このため、例えば、咀嚼、嚥下機能が低下した方でも安全に食することができ、かつ食品素材そのままのおいしさ、色、形状、栄養素を保持した介護食品のニーズは非常に高く、種々の方向から研究が行われている。
例えば、畜肉の軟化方法としてはテンダライズ法や高圧レトルト処理といった物理的処理を行う方法が知られているが、テンダライズ処理は、畜肉に対してはある程度は有効ではあるものの介護食品に必要とされるようなやわらかさをもたらすものではなく、またより軟質な魚介肉に対して、テンダライズ処理を行うと魚介本来の形状を留めない程に脆化させてしまう虞れがある。またレトルト処理のような高温高圧処理を行うと、食品の味覚を大きく損ねてしまう虞れがあった。
また畜肉や魚介肉の軟化方法として、酵素を用いる方法も知られている(例えば、特許文献1〜3)。しかしながら、酵素を用いた場合、魚介肉、畜肉等の結合組織を非特異的に分解することから、処理されたものの味覚、食感が本来のものと大きく異なるものとなる虞れがあり、また表面の過度の軟化や酵素の素材へのインジェクションによる身割れ(素材の崩壊)を生じる場合もあった。
さらにテンダライズと酵素を併用する方法(特許文献4)や、減圧処理と酵素を併用する方法(特許文献5)、さらにはテンダライズと減圧処理と酵素を併用する方法((特許文献6)なども提案されており、特に特許文献6においては、日本介護食品協議会が定めるユニバーサルデザインフードの区分2(物性規格は硬さ上限値が5×10N/m)を満たすやわらかさの軟化魚肉または畜肉製品を提供することが可能なことが示されている。また特許文献7には、常温流通またはチルド流通用の容器詰め食品に関する発明が記載されており、容器内において増粘安定剤の存在下に食材を分解酵素と反応させることにより元の形状を保持したまま軟化させて、食材の硬さが、1.0×10N/m以上5.0×10N/m以下とし、その後レトルト殺菌処理して常温流通品とすることが開示されている。さらに引用文献8、9にも魚食品を真空包装した後にレトルト殺菌処理した食品が、また引用文献10には食材を分解酵素とともに真空包装し、酵素失活のためにその後加熱処理することが開示されている。
特開平7−31421号公報 特開2007−31966号公報 特開2008−125437号公報 特開2004−275083号公報 特開2009−89668号公報 特開2011−92216号公報 特開2017−127222号公報 特開平6−189718号公報 特開2011−147441号公報 特開2008−011794号公報
しかしながら、特許文献4ないし6に記載される方法にあっても、テンダライズ、減圧処理、酵素を用いること自体それぞれが有する問題が何ら解消されるわけではなく、やわらかな食感を有する食品が提供できるものの、味覚の劣化や、食品形状の保形性や色の劣化等が避けられないものであった。また、特許文献6に記載される方法では、ユニバーサルデザインフードの区分2(5×10N4/m以下)である畜肉または魚肉が得られるという開示はあるものの、その保管方法としては、軟化処理して得られた畜肉または魚肉をそのまま急速冷凍する方法しか挙げられておらず、その保管性や供使に際しての不便さが残るものであった。また、特許文献7に記載される方法にあっては、軟化するために酵素を用いるものであり、上述したように処理されたものの味覚、食感が本来のものと大きく異なるものとなる。また特許文献7〜9においては、軟化後の食品の滅菌処理に、例えば120℃で30分間といった一般的なレトルトパウチの殺菌条件を用いるものであるが、本発明に係るような魚介材料を用いた製品に対する滅菌処理をこのような高温条件下で行った場合、魚介材料の本来の旨み等がなくなり、また一部魚介肉の変質が生じて、所定のやわらかさが得られなかったり、逆に形状を留めないように脆化してしまうものであることが、本発明者の検討、研究の上で明らかとなった。さらにこのような殺菌のために高温での熱履歴を受けることで過加熱な食品となるため、レトルト加熱食品特有の不快な調理臭、いわゆるレトルト臭がするものとなり、食品の風味を低下させてしまうものであった。さらに、特許文献10に記載される方法においては、酵素処理によって上記したものと同様に味覚の劣化や、食品形状の保形性や色の劣化等が避けられないものとなる、なお、酵素失活のためにその後低温で短時間の加熱処理を行っているのみなので、上記したようなレトルト臭の問題は生じない一方で、長期間の常温保存を可能とするといった無菌性は何等保証されないものである。
従って本発明は、上述した従来技術における問題点を解消し、長期間にわたる常温保存が可能で、魚介全体ないしは魚介の切り身といった魚介の一部位の本来の形状を有しつつ、やわらかな食感を有し、また味覚においても優れたものとなる、包装された調理済魚介製品およびその製造方法を提供することを課題とする。本発明はさらに、咀嚼、嚥下機能が低下した方でも、安心して食べることができ、かつ、味覚のみでなく、形、色としても、通常の料理品と何ら遜色なく、介護食として用いられた際に、食事を享楽することができる、包装された調理済魚介製品およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来技術におけるようなタンブリング処理や、酵素処理ないしは軟化剤等を使用しなくとも、魚介肉を調理する際の処理工程を最適化し、併せて、真空包装後の殺菌処理条件を最適化することで、常温にて長期間保管可能であり、魚介本来の食品としての形状を有しつつ、やわらかな食感を有し、また味覚においても優れたものとなる包装された調理済魚介製品を得ることができることを見出し本発明に至ったものである。
すなわち、上記課題を解決する本発明は、調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなる製品であって、 前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×104N/m2以上であり、前記魚介食品はレトルト臭を有さず、かつ
前記魚介食品は、前記真空包装体中にて解凍後、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
無菌性条件を満たすものである製品である。
上記課題を解決する本発明は、また、調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなる製品であって、
原料となる魚介食品を真空包装体中に収納した後、105℃未満の温度にて加熱殺菌処理することにより得られる、
前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×104N/m2以上であり、かつ
前記魚介食品は、前記真空包装体中にて解凍後、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
無菌性条件を満たすものである製品である。
本発明に係る包装された調理済魚介製品の一実施形態においては、前記魚介食品の表面における塩分濃度と前記魚介食品の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度とが、いずれも0.5質量%以上であってかつ双方の差が20%未満である包装された調理済魚介製品が示される。
上記課題を解決する本発明は、また、調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなる製品であって、
前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×104N/m2以上であり、かつ
前記魚介食品は、前記真空包装体中にて解凍後、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
無菌性条件を満たし、
さらに、前記魚介食品は、製造後、常温(25±2℃)またはそれ以上の温度での保管期間が180日以内のものであり、かつ、前記魚介食品の表面における塩分濃度と前記魚介食品の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度とが、いずれも0.5質量%以上であってかつ双方の差が20%未満である製品である。
本発明に係る包装された調理済魚介製品の一実施形態においては、常温保管用である包装された調理済魚介製品が示される。
本発明に係る包装された調理済魚介製品の好ましい一実施形態においては、前記真空包装体中にて解凍後、常温(25±2℃)にて240日間保管後において、上記無菌性条件を満たすものである包装された調理済魚介製品が示される。
本発明においては、また魚介食品の形態が、焼き、煮る、油調および蒸すからなる群から選択されてなるいずれかの形態のものである包装された調理済魚介製品が示される。
上記課題を解決する本発明はまた、原料となる魚介材料を予め下処理した後に、包装体内に収納して真空包装した後、真空包装した魚介材料を90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間加熱殺菌処理することを特徴とする、包装された調理済魚介製品の製造方法である。
本発明によれば、一般食の料理品と変わらない見た目を有するやわらかな魚介食品を提供することができ、さらに所定の食品硬さ規格に適合する介護食としても提供することが可能であり、高齢化社会におけるに食の障壁を解消することができる。その結果、例えば、咀嚼困難者や嚥下困難者にとって高い食欲増進効果が高く、社会的貢献度においても高い効果を有する。しかも、従来の軟化食材とは異なり、長期間の常温保管が可能であり、開封すればすぐに食せる構成となっており、特別な加工機械や調理設備等を必要としないため、病院・介護施設のみならず、レストラン、家庭でも簡単に介護食を提供することができる。
本発明の包装された調理済魚介製品の製造方法の一実施態様における工程を示す図である。 本発明の包装された調理済魚介製品の製造方法の別の一実施態様における工程を示す図である。 本発明の包装された調理済魚介製品の製造方法のまた別の一実施態様における工程を示す図である。 本発明の包装された調理済魚介製品の製造方法のさらに別の一実施態様における工程を示す図である。 本発明の包装された調理済魚介製品の製造方法のさらにまた別の一実施態様における工程を示す図である。 本発明の包装された調理済魚介製品の製造方法のさらにまた別の一実施態様における工程を示す図である。
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
≪包装された調理済魚介製品≫
本発明に係る包装された調理済魚介製品は、調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなる製品であって、
前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×10N/m2以上である、より好ましくは、5×105N/m2以下でかつ5×10N/m2以上であることを特徴の一つとしている。
このように、本発明においては、真空包装体内に収納されてなる調理済魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×10N/m2以上であるため、魚介全体ないしは魚介の切り身といった魚介の一部位の本来の形状を有する、すなわち、非成形品でありながらも、やわらかな食感を有し得るものである。
また、硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×10N/m2以上であるため、日本介護食品協議会(https://www.udf.jp/outline/udf.html)が定めるユニバーサルデザインフードの硬さ区分1(容易にかめる:硬さ5×105N/m2以下)の規格に適合した製品として提供することが可能であり、さらに製造条件を若干調整することによって硬さ区分2(歯ぐきでつぶせる:硬さ5×10N/m2以下)の規格に適合した製品としても提供することができるものである。
なお、本明細書において調理済魚介食品の「硬さ」とは、日本介護食品協議会が定めた「ユニバーサルデザインフード自主規格」に規定される試験方法に準じて測定された値であり、具体的には、クリープメーター(山電社、RE2−33005S)を用い、試料を直径40mmの容器に高さ15mmまで充填し、直径20mmまたは3mmのプランジャーで圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで試料を圧縮したときの圧縮力(N/m2)測定したものである。測定は20±2℃で行う。なお、プランジャーの高さおよび材質は特段の定めはない。また、実際の測定においては、上記試験方法における指針に従い、直径20mmのプランジャーを使用した測定で、硬さ区分2(5×10N/m2以下)を超える値となったものに関しては、直径3mmのプランジャーを使用して再測定し、この直径3mmのプランジャーを用いて得られた際の測定値で評価している。
また、本発明に係る包装された調理済魚介製品は、魚介食品が真空包装体中に収納されて、後述するような製造方法を経て十分な殺菌がなされていることも特徴の一つとしている、具体的には、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
無菌性条件を満たすことができることを特徴とするものであって、
さらに好ましくは、120日間保管後、より好ましくは240日間保管後、あるいはそれ以上の期間の保管後においても、上記の無菌性条件を満たすことができるものである。
さらに、本発明に係る包装された調理済魚介製品は、内部に収納された前記魚介食品が上記したような所定のやわらかい「硬さ」を有し、かつ当該包装された調理済魚介製品が十分な無菌性を示しつつも、この魚介食品がレトルト臭を有しないことを特徴の一つとしている。
一般に、「レトルト臭」の原因物質としては、未だ、明確に特定されているわけではないが、包装体中に収納された食品が、殺菌のためにレトルト処理、代表的には120℃で、30分程度という、高温での熱履歴を受けることを原因として生じる不快臭ないしは異臭であることは確かなものである。特に限定されるものではないが、「レトルト臭」に含まれるとされる、代表的なものとしては、包装体中を構成する合成樹脂等の素材がレトルト処理という過酷な条件下に曝されることで、これらの素材が耐熱性、低溶出性等に優れたものとされていたとしても、どうしても一部分解を生じたり、低分量成分が溶出移行して食品側に臭いが移ることで発生する樹脂臭、金属臭などや、レトルト処理によって、魚介食品が過加熱な状態に曝されることで、例えば、魚介食品に含まれるアミノ酸の分解によるアミン類、アルデヒド類、さらに含硫アミノ酸が分解して生じる硫化水素等の含硫化合物等の発生による臭気などがあると言われている。前者に関しては、使用する包装体の種類を適宜選択する等によってもある程度低減可能であるが、後者に関しては、レトルト処理という高温での熱履歴を受ける以上は避けることは困難である。
本発明に係る包装された調理済魚介製品は内部に収納された魚介食品は、このような種々のレトルト臭のうち魚介食品が過加熱な状態に曝されることで生じる臭気を、少なくとも有しておらず、特には、魚介食品が過加熱な状態に曝されることで生じる臭気および包装体中を構成する合成樹脂等の素材がレトルト処理に曝されることで生じる樹脂臭、金属臭の双方ともに有しない。
なお、本発明に係る包装された調理済魚介製品において、内部に収納された魚介食品がレトルト臭を有しないのは、所期の無菌状態とする上で、後述するように、従来知られるレトルト処理に比較して十分に低い温度域加熱殺菌処理することに起因するものである。
さらに本発明係る包装された調理済魚介製品は、別の観点からすると、内部に収納された前記魚介食品が上記したような所定のやわらかい「硬さ」を有し、かつ当該包装された調理済魚介製品が十分な無菌性を示しつつも、原料となる魚介食品を真空包装体中に収納した後、105℃未満の温度、好ましく90℃以上105℃未満の温度にて加熱殺菌処理することにより得られたものであることを特徴とするものである。
本発明係る包装された調理済魚介製品が、105℃未満の温度にて加熱殺菌処理することにより得られたものであることは、例えば、120℃以上の温度で加熱殺菌処理、すなわち、レトルト殺菌処理されたものと比較して、無菌性の観点からは容易に区別のつかないものではあり、また、その化学な組成、構造や他の試験可能なパラメータ等で十分に差別化して表現することは困難なものであるものの、少なくとも人間の味覚(および嗅覚)をもってすれば、本発明に係る包装された調理済魚介製品と、レトルト殺菌処理されたもののような他の包装された調理済魚介製品とは、容易にかつ明確に区別し得るものである。そしてこれを食したものの少なくとも半数以上、一般的にはほぼ全ての者が、105℃未満の温度にて加熱殺菌処理することにより得られたことを特徴とする本発明係る包装された調理済魚介製品の方が、レトルト殺菌処理された製品に比べて、食味、食感、風味、味覚等に優れるものであると評価するものである。
また、本発明において、上述したように魚介本来の形状性を脆化させることなく所定のやわらかさを発揮できるようにするためには、魚介食品の表面部および内部において均一に所定の塩分濃度となるように調整することとが望ましく、具体的には、例えば、前記魚介食品の表面における塩分濃度と前記魚介食品の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度とが、いずれも0.5質量%以上の範囲内にあってかつ双方の差が20%未満であることが望ましい。
より好ましくは、前記調理済魚介の表面における塩分濃度と調理済み魚介の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度とが、いずれも0.8〜2.5質量%の範囲内にあってかつ双方の差が15%未満、さらには、いずれも1.0〜2.0質量%の範囲内にあってかつ双方の差が10%未満であることが望ましい。
ここで、本明細書において調理済み魚介の「表面における塩分濃度」とは、調理済み魚介製品の外表面(表裏両面)上の位置でかつ幅方向の中央位置で測定された塩分濃度の平均値である。例えば、調理済み魚介製品がその両面ないし一方の表面に皮を有している態様であった場合、その表面とは当該皮の表面であり、その両面ないし一方の表面が皮を有さず身である場合には、その表面とは当該身の外表面である。しかしながら、その表面はあくまで魚体自体の表面であって、例えば、魚介製品が衣や餡かけの餡をその外表面に纏ったような製品であった場合には、これらの魚体以外のものを取り除いた上での表面である。
一方、調理済み魚介の「肉厚の中心近傍部位における塩分濃度」とは、調理済み魚介製品の幅方向のほぼ中央でカットし、そのカット面での厚み方向で中央の位置で測定された塩分濃度の平均値である。
なお、本発明に係る魚介製品が非成形品であり、形状が一定のものはないという特色上から、上記したような測定上で位置に関し、「幅方向の中央」「厚み方向での中央」といったところ位置の正確性は、厳密に中央であるということは現実的なものではなく、かつその測定値はある程度の位置がずれてもさほど変動するものでもなく現実的なものでもないため、ある程度の許容誤差、具体的には、例えば、約10%程度の誤差範囲内のものであれば、当該位置における値として認められるものである。
また、ここで双方の塩分濃度の差(%)とは、{(表面における塩分濃度値)−(中心部近傍塩分濃度値)}/(表面における塩分濃度値)×100で求められる値の絶対値である。
さらに本明細書において述べる塩分濃度とは、電気伝導度方式により測定された食塩(NaCl)濃度である。なお、本発明に係る製品中においては、NaCl以外の電解質、例えば、カリウムやマグネシウムが含まれている量は、可能性があっても、ごくわずかであるので実質的に影響はほとんどないが、それらによる導電率値もNacl濃度として換算されたものとなる。
なお、本発明に係るような包装された調理済魚介製品やあるいは従来のレトルト食品におけるように真空包装体内に収納されてなる魚介製品においては、上記したような表面における塩分濃度と調理済み魚介の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度との差は、常温(25±2℃)またはそれ以上の温度にて比較的長時間、例えば180日間保管後においても、経時的に塩分が拡散浸透して全体として塩分が均等となるいった現象は生じにくく、例えば、製造直後において両者に差がある状態であると、その状態は上記したような180日間といった期間では、ほとんど変動がない。上記常温又はそれ以上の温度での保管期間は、150日間以下、または120日間以下であってよい。保管期間の下限は、特に限定されず、例えば1日以上であってよい。
以下、本発明に係る包装された調理済魚介製品の各構成について、より具体的に説明する。
<魚介肉素材>
本発明に係る包装された調理済魚介製品において、処理対象となる原料としての魚介ないし魚介肉としては、一般的に加熱調理して食される魚介であれば特に限定されず、種々のものを用いることができる。また、被加工原料の形状も、特に制限されず、魚介の種類および調理方法等に応じて、魚体全体そのまま(ラウンド)、適宜加工処理された魚体全体(セミドレス、ドレス、パンドレス等)、魚体から得た切り身やブロック(フィレー、チャンク等)、さらに、必要に応じて、皮、卵巣、白子等の部分を有していてもよい。
また、原料としては、生原料(鮮魚)であっても、冷凍品ないしはその解凍品であってもよいが、比較的大量生産する上で一定の品質を保つ上では、冷凍品、特に品温−18℃以下に保持された冷凍品を用いることが望ましい。
用いることのできる魚介の種類の一例を挙げると、例えば、サバ、アジ、イワシ、サンマ、ニシン、カツオ、マグロ、ブリ、カジキ、マダラ、スケソウダラ、シロイトダラ、ホキ、メルルーサ、サケ、マス、トラウト、カレイ、コガネガレイ、カラスガレイ、カワハギ、ウマズラハギ、ヒラメ、アカウオ、キンメダイ、アラカブ、メバル、シルバー、メロ、クロメヌケ、ホッケ、クロムツ、タイ、イトヨリダイ、アマダイ、タチウオ、サワラ、イサキ、アナゴ、ウナギ、シシャモ、ワカサギ、イワナ、シイラ、サゴシ、青ヒラス、キャットフィッシュ、ティラピア、ナイルパーチ、キングクリップ、フグ、アンコウ、グチ、エソ、ママカリ、サメなどの魚類、各種のエビ、カニなどの甲殻類、各種のイカ、タコなどの頭足類、アサリ、ハマグリ、ホタテ、赤貝、サザエ、アワビなどの貝類等が挙げられるが、もちろん、これらに何ら限定されるものではない。
<調理方法>
また、本発明に係る包装された調理済魚介製品において、魚介食品の調理形態としても、加熱調理するものであれば、各種の調理形態やレシピを用いることができる。基本的な調理法として、例えば、焼く、煮る、油調(揚げる)、蒸す、といったいずれの調理の形態としてもよい。具体的には、例えば、塩焼き、照り焼き、煮付け、味噌煮、生姜煮、ケチャップ煮、和風蒸し、西京漬け、粕漬け、糀漬け、素揚げ等が例示できるが、もちろん、これらに何ら限定されるものではない。また、調理に際しては、各種調味料、香辛料はもちろんのこと、調理のレシピに応じて、各種野菜、特に薬味野菜、その他、チーズや食用ペースト、餡等の副材を製品中に併せて含有することが可能である。
なお、上記に挙げた調理形態は、一般的な調理法ないしそのレシピであって、本発明に係る包装された調理済魚介製品は、厳密にそのような調理法ないしそのレシピによって調理される必要はなく、後述するような、本発明の製造方法に係る工程に沿って製造された結果、最終製品として、このような調理法ないしそのレシピによって調理された料理品の味、形態に近いないしはこれらを模したものとなっていれば良い。なお、もちろん、後述する本発明の製造方法に係る工程に沿った上で、可能な限り上記のような調理法に準じて調理されることは好ましい態様の一つである。
<調味料>
本発明に係る調理済魚介製品においては、食塩以外のその他の調味料が添加され得る。調味料は、加熱調理中に魚介肉の内部に浸透することにより魚介肉のもつ本来的な旨みを引き出して味を良くするとともに、魚介肉を軟化させる役割を有するものである。例えば煮付け用の調味料は、果糖ぶどう糖液糖、醤油、水飴、酒、澱粉、香辛料、食塩、魚介エキス、水およびその他の微量添加成分を含むことができる。また、照焼き用の調味料としては、例えば、醤油、砂糖、米発酵調味料、澱粉、魚介エキス、食塩、水およびその他の微量添加成分を含み得る。また塩焼き用の調味料は、食塩の他、必要に応じて、上記照焼き用の調味料と同様な成分を配合比を代えて含み得ることができる。
なお、本発明において、上記に規定した、調理済魚介食品の表面における塩分濃度と調理済魚介食品の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度は、調理済魚介食品の最終形態における塩分濃度であるので、単純に調理に際して使用した食塩の量のみならず、調理に際して用いたこのような調味料に含まれていた全塩分の影響を受けるものである。
<真空包装>
本発明に係る包装された調理済魚介製品においては、調理済魚介食品の外部が真空包装体により包装されている。ここで、本明細書において「真空包装」とは、食品包装の分野において、一般的に用いられるような内部減圧度をもって包装することを意味し、絶対真空の状態に限られるものではない。具体的には、例えば、包装体内部が、大気圧よりも減圧された状態、特に限定されるものではないが、例えば、内部圧力が2×10Pa以下、より好ましくは10Pa以下に減圧された状態とすることができる。
真空包装に用いられる包装体としても、通常の魚介肉加工食品を真空包装するのに使用される包装体であれば、特に限定されるものではないが、例えば、23℃(相対湿度0%)における酸素透過度が、500cm/(m・24hr・atm)以下のものであることが好ましく、50cm/(m・24hr・atm)以下、さらには10cm/(m・24hr・atm)以下のものであることがさらに好ましい。酸素透過度は、JIS K 7126A,B法(23℃,0%RH)に準拠して測定される。
このような低酸素透過性の包装材料としては、通常の魚介肉加工食品に使用される、酸素バリア層を有する単層若しくは複層構造のシート状またはフィルム状の包装材料を適宜に成型したものが挙げられる。酸素バリア層としては、従来から知られている材料である例えば、アルミニウム箔等の金属箔、シリカ蒸着フィルム、アルミナ蒸着フィルム等の無機物蒸着膜、延伸ナイロン(ONY)フィルム、無延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ナイロン(KON)フィルム、ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、エチレン酢酸ビニルコポリマー鹸化物フィルムなどを含む層が好ましく使用される。
包装材料の内層にはシーラント層として、シール性に優れたフィルムを配することができる。該フィルムとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等のフィルムを使用できる。
包装体の具体的な形状としては、例えば、平パウチ、スタンディングパウチ、ノズル付きパウチ、ピロー袋、ガゼット袋等の形状が挙げられ、構成する包装材料である積層体フィルムの材料構成を任意に選択することにより、易開封性、易引裂性、収縮性、電子レンジ適性、紫外線遮断性、意匠性等を付与して用いることができる。真空包装とするには、例えば、フィルムから三方シール袋を作成し、魚介肉材料等の内容物を入れた後、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部をシールして密閉する等の方法が挙げられる。
なお、特に限定されるわけではないが、包装材料としては、例えば、外面側から、蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム層、延伸ナイロン(ONY)フィルム層および無延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム層を少なくとも有する三層以上の積層フィルム、具体的には、例えば蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルム(数字は膜厚(μm)に相当)より構成されたものを用いることが、ガス非透過性に優れ、安定した保存・搬送性、煮沸加熱や電子レンジ等による電子線加熱に対応でき、内部の調理済魚介食品に対する食品に対する包装体を構成するプラスチックからの臭気移行が少ないといった観点から好ましい。
さらに、本発明に係る包装された調理済魚介製品においては、内部に収められる魚介食品が非成形のものであって見た目にも美しいものであるため、包装材料としては、外部より内部が可視できるような透明ないしは半透明のものであることが、より好ましい。
本発明に係る包装された調理済魚介製品においては、魚介食品がこのような包装体に入れられて真空包装されており、後述するような製造方法を経て十分な殺菌がなされている。従って、包装された調理済魚介製品は冷蔵、冷凍保存はもちろんのこと、常温保存でも長期間安定した品質を保つことができる。
このため、本発明に係る包装された調理済魚介製品は、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
無菌性条件を満たすことができることを特徴とするものであって、
さらに好ましくは、120日間保管後、より好ましくは240日間保管後、あるいはそれ以上の期間の保管後においても、上記の無菌性条件を満たすことができるものである。
なお、本発明に係る包装された調理済魚介製品は、後述するように、その製造工程において製造された直後に、出荷まで冷凍保管される場合があるが、ここで規定される常温(25±2℃)にて90日間保管後、120日間保管後、240日間保管後等といった日数は、このような出荷まで冷凍保管の期間は含むものではなく、冷凍保管されていた製品に関しては、真空包装体中で解凍後、常温(25±2℃)にて保管した時点からの日数である。
<包装された調理済魚介製品の製造方法>
次にこのような本発明に係る包装された調理済魚介製品の製造方法について、具体的な態様に基づき詳細に説明する。なお、図1〜6は、本発明に係る包装された調理済魚介製品の製造方法の各実施態様における工程を示す図である。
本発明に係る上記したような特徴を有する包装された調理済魚介製品の製造するにおいては、調理しようとする魚介の種類、あるいは調理法によって、真空包装するまでの下処理ないし下調理としては、それらに応じた各種の態様を取り得る。そして、原料となる魚介材料を予め下処理して、包装体内に収納して真空包装した後、真空包装した魚介材料を加熱殺菌する場合には、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間加熱殺菌処理することが望ましい。
一般に、レトルトパウチの殺菌条件としては、120℃で30分間という条件下にて行うことが代表的なものであるが、本発明に係るような製品をこのような高温条件下で行った場合、魚介材料の本来の旨み等がなくなり、また一部魚介肉の変質が生じて、所定のやわらかさが得られなかったり、逆に形状を留めないように脆化してしまうものであった。特に、本発明におけるように調理済魚介食品の形で製品を提供する場合、その魚介食品中にはある程度の塩分(調味料による塩分も含む)が含まれているが、このような塩分が含まれている状態で、120℃以上といった高温で、長時間の加熱処理は魚介肉の特性を損なう虞れが高いものである。
これに対し、90℃以上105℃未満の温度で、加熱殺菌処理を行えば、このような魚介材料本来の旨み等の特性を損なうことが少ないものである。さらに、このような比較的に低温にて加熱殺菌を行う上では、殺菌性を保障するために上記したように50分以上、より好ましくは80分以上といった比較的長時間の処理が必要となるものであるが、この加熱殺菌のための熱処理は、内部に収納されている魚介食品の調理のための加熱を兼ねており、このように比較的低温の適度な温度により50〜150分間加熱されることによって、魚介食品が、脆化や旨みの消失等を起こすことなく、やわらかさを増すことができ、前記したような所期の硬さを有する製品とすることができるものである。
なお、加熱殺菌処理条件としては、より好ましくは、90℃以上100℃以下の温度にて、80〜120分間、さらに具体的には、例えば、代表的に、100℃で約90分間といった条件を挙げることができる。
また、加熱殺菌処理は、前記したように90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間加熱殺菌処理を単回行えば十分であるが、より好ましくは、その殺菌性を保障するために、このような条件範囲のうちの比較的短い時間、例えば50分間での処理を2回ないしそれ以上の回数行う、特に2回行うことが好ましい。なお、このように複数回加熱殺菌処理を行う場合、各加熱殺菌処理の間は、特に限定されるものではないが、製品は一旦、常温、例えば、23℃±5℃程度の温度まで冷却されることが望ましい。
図1〜6に示す工程例に示すように、本発明に係る包装された調理済魚介製品を製造する上では、前記した加熱殺菌処理までの下処理ないしは下調理としては、魚介の種類、あるいは調理法に応じて、各種の態様を取り得るが、これらに共通する点は、少なくとも真空包装して上記したような加熱殺菌処理を行うまでに、原料となる魚介材料に対し、塩分(調味料中の塩分であってよい)を含有する溶液中に接触させることと、このような塩分を含有する溶液中と接触させた後においては、加熱を行う場合であっても、例えば120℃以上といった高温で長時間といった処理は行わないこと、また加熱を行った場合には加熱処理後に魚介材料を比較的早い冷却速度で20℃以下に冷却するといった点である。このような処理工程を通して、所期のやわらかさを有する一方で魚介本来の食品としての形状を保持した製品を得ることができるものである。以下各具体的な例を通じて、本発明に係る包装された調理済魚介製品を製造する方法の詳細につき説明する。
図1に示す製造工程は、煮付けないし煮物の形態として包装された調理済魚介製品の製造方法の一例における工程である。
この実施形態では、下処理として、原料となる冷凍された魚介材料を、自然解凍した後、流水にて洗浄してドリップを除去し、水切りを行うものであり、さらに包装体内に下処理した魚介材料と共に調味タレ液を入れて真空包装することを基本とする。次に、この工程図に沿ういくつかの調理法例について説明する。
さばの味噌煮
この図1に示す工程図に沿って、さばの味噌煮の形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明すると、まず外部より、材料である冷凍品であるさばの骨無し切り身を、原料受入れ10工程で受け入れ、品名、規格、賞味期限、産地等に問題がないか点検を行う。なお、原料としては、冷凍品でなく、鮮魚の骨無し切り身を用いることももちろん可能であるが、原料供給路ないし工場設備等における季節変動や温度変化といった因子の影響を受けることなく、均一でかつ安定した製品品質を保つ上では、冷凍品を用いる方がその管理が容易である。原料自体に起因する製品不良の発生を防止する上から、搬入される原料が品温−18℃以下で、また包装の箱破れ等が無いかを検査する。
ついで検品20工程において、原料品個々の品質、形状、色、臭い等に問題がないかを目視等により検査する。次いで原料開封30工程で個々の原料を開封し、解凍32工程において底部に水切り穴が開口されている専用の容器内に原料を入れて自然解凍を行う。なお、解凍温度としては、特に限定されるものではないが、15℃以下の温度で行うことが望ましい。温度が20℃以上となると解凍された原料が腐敗しやすくなる虞れがあるためである。自然解凍時間としては、原料品の切り身が十分に解凍できる時間であれば良いが、通常12〜24時間程、代表的には1晩程度の時間によって自然解凍できる。
解凍した切り身は、次いで流水洗い34工程で、水道水によって全体をきれいに洗われる。これにより解凍した切り身からドリップが出ないようにする。なお、冷凍品を解凍した際等に生じるドリップには、魚の旨み成分も含まれているものではあるが、この例におけるようなさば等においてはドリップが特に多く、また煮物料理として加熱調理した際にはあくとなって製品表面に付着し見た目および味を損なう傾向があるために、これを除去することが好ましい。なお、切り身を洗う場合には、切り身の身割れを生じないように注意して処理を行う。
流水洗い34工程の後、水切り工程36において、前記したと同様の底部に水切り穴が開口されている専用の容器を用いて、切り身の水切りを十分に行う。例えば、水を自然落下させて30分以上の時間をかけて行い、さらに切り身からのドリップが出ないようにする。
次いで袋詰め工程80において、それぞれの切り身を包装体に入れる。包装体としては、例えばフィルムから作成された三方シール袋である。袋詰め工程80に前後して、タレ入れ工程90において、包装体に予め所定調合により調製しておいた味噌ダレを所定量加える。切り身および味噌ダレを包装体に入れた後、真空包装100工程において、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉する。
真空包装を行った後、重量検査100工程で、規格の製品質量となっているかを検査すると共に、真空漏れの有無を確認し、さらに金属検査120工程で、製造機器等から製品中に混入する、例えば、Fe,SUS等の金属の有無を確認する。
真空包装製品の内容物の安全性の確認が取れたら、殺菌130工程において、真空包装した内容物である、さばの切り身と味噌ダレを、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間という条件範囲内である、100℃で50分という条件にて加熱殺菌処理する。さらに同じ100℃で50分という条件で再度加熱殺菌処理する。加熱殺菌処理を行う装置としては、特に限定されるわけではないが例えばレトルト釜が用いられる。
この態様においては、内容物であるさばの切り身と味噌ダレは、この殺菌130工程における加熱が、最初の加熱処理であって、殺菌処理と同時に加熱調理も行われることとなる。
殺菌130工程による加熱処理が終了したら、真空包装され加熱調理済となった製品を、冷却140工程において、直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度とする。このように急速に冷却を行うことで、加熱調理された魚介材料(さばの切り身)の必要以上の脆化を抑制し、所定の形状性およびやわらかさ(硬さ)を有するさばの味噌煮製品を得る。
このようにして製造された、真空包装されたさばの味噌煮製品は、その後、箱詰め150され、必要に応じて出荷まで冷凍保管200され、出荷300される。なお、製造後、直ちに出荷することも、もちろん可能であり、この場合においては、本発明に係る製品は、常温保管用であるため、冷凍することなく常温にてそのまま出荷され得る。なお、この出荷前の冷凍保管が任意であり、常温にてそのまま出荷され得る点に関しては、以下に示すいずれの実施形態においても当然共通するもの事項である。
さばの煮付け
また、図1に示す工程図に沿って、さばの煮付けの形態として包装された調理済魚介製品も、上記のさばの味噌煮を製造する場合とほぼ同様の手順によって製造可能である。
すなわち、タレ入れ90工程において、上述した味噌タレに変えて生姜醤油タレを用いる以外は、基本的に、上記と同じ手順を行うものである。
図2に示す製造工程は、煮物の形態として包装された調理済魚介製品の製造方法の一例における工程である。この製造工程は、魚介肉材料として特に骨付き魚を用いそのままの形態で所定のやわらかさまでやわらかくする場合に好適に用いられる。
この実施形態では、下処理として、下原料となる魚介材料を、120℃で20分以上30分以下という温度と時間で加熱加圧処理し、加熱加圧処理後、魚介材料を20℃以下の温度に30分以内に冷却することを行うものであり、さらに包装体内に下処理した魚介材料と共に調味タレ液を入れて真空包装することを基本とする。次に、この工程図に沿う調理法例について説明する。
いわしの生姜煮
この図2に示す工程図に沿って、いわしの生姜煮の形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。ここで図2において図1に示す各工程と同一符番を付した工程は、これらの工程図において共通するものであるため、以下の説明において、その説明を簡略化する場合もあることを理解していただきたい。まず外部より、材料である冷凍品であるいわしドレスを、原料受入れ10工程で受け入れ、検品20工程、原料開封30工程を経たのち、並べ40工程において、原料を凍ったまま、例えばステンレストレー等の上に配置する。そして加熱・加圧50工程において、凍結したままのいわしドレスを、120℃、0.12MPaで20分の加熱加圧処理を、例えばレトルト釜において行う。これにより、いわしドレスはその骨部までが柔らかい状態となり、ドリップも除去される。加熱加圧処理が終わったら取り出し60工程60において、レトルト釜より加熱加圧処理したいわしドレスを取り出し、ただちに凍結70工程で、いわしドレスを凍結庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷し、さらに凍結させる。このように急速に冷却を行うことで、加熱加圧処理したいわしドレスの保形性を高めまた環境下で付着する菌体の増殖を抑制する。
次いで袋詰め工程80において、凍結されたいわしドレスを、例えば、任意ではあるが2匹ずつ、包装体に入れる。袋詰め工程80に前後して、タレ入れ工程90において、包装体に予め所定調合により調製しておいた生姜醤油タレを所定量加える。いわしドレスおよび生姜醤油ダレを包装体に入れた後、真空包装100工程において、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉する。
真空包装を行った後、重量検査100工程、金属検査120工程を経た後、殺菌130工程において、真空包装した内容物である、いわしドレスおよび生姜醤油ダレを、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間という条件範囲内である、100℃で50分という条件にて加熱殺菌処理する。さらに同じ100℃で50分という条件で再度加熱殺菌処理する。
この態様においては、この殺菌130工程における加熱によって、内容物である素の状態で加熱加圧されたいわしドレスに生姜醤油ダレが効率よく均一に浸透し、さらにやわらかな魚介肉質のものとなる。
殺菌130工程による加熱処理が終了したら、その後は前述したものと同様に、冷却140工程において、直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度とする。その後、箱詰め150され、必要に応じて出荷まで冷凍保管200され、出荷300される。
次に図3に示す製造工程は、煮物の形態として包装された調理済魚介製品の製造方法の一例における工程である。この製造工程は、受け入れた魚介肉材料をさらに切り身加工する工程を有する以外は、基本的には図2に示す製造工程のものと基本的に同じである。次に、この工程図に沿う調理法例について説明する。
にしんの土佐煮
この図3に示す工程図に沿って、にしんの土佐煮の形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。ここで図3において図1、図2に示す各工程と同一符番を付した工程は、これらの工程図において共通するものであるため、以下の説明において、その説明を簡略化する場合もあることを理解していただきたい。まず外部より、材料である冷凍品であるにしんの3枚卸しフィレーを、原料受入れ10工程で受け入れ、検品20工程、原料開封30工程を経たのち、切り身加工38工程においてフィレーを凍ったまま半分にカットし、さらに並べ40工程において、カットしたフィレーを凍ったまま、例えばステンレストレー等の上に配置する。その後、加熱・加圧50工程において、凍結したままのにしんの切り身を、120℃、0.12MPaで20分の加熱加圧処理し、加熱加圧処理が終わったら取り出し60工程において、加熱加圧処理したにしんの切り身を取り出し、ただちに凍結70工程で、にしん切り身を凍結庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷し、さらに凍結させる。
次いで袋詰め工程80において、凍結されたにしん切り身を、例えば、任意ではあるが2切れずつ、包装体に入れる。袋詰め工程80に前後して、タレ入れ工程90において、包装体に予め所定調合により調製しておいた生姜醤油タレを所定量加える。にしん切り身および生姜醤油ダレを包装体に入れた後、真空包装100工程において、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉する。
真空包装を行った後、重量検査100工程、金属検査120工程を経た後、殺菌130工程において、真空包装した内容物である、にしん切り身および生姜醤油ダレを、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間という条件範囲内である、100℃で50分という条件にて加熱殺菌処理する。さらに同じ100℃で50分という条件で再度加熱殺菌処理する。
この態様においては、この殺菌130工程における加熱によって、内容物である素の状態で加熱加圧されたにしん切り身に生姜醤油ダレが効率よく均一に浸透し、さらにやわらかな魚介肉質のものとなる。
殺菌130工程による加熱処理が終了したら、その後は前述したものと同様に、冷却140工程において、直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度とする。その後、箱詰め150され、必要に応じて出荷まで冷凍保管200され、出荷300される。
図4に示す製造工程は、塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品の製造方法の一例における工程である。
この実施形態では、下処理として、原料となる魚介材料を、食塩濃度3〜6容積%の処理液中に約15時間〜約22時間浸漬し、その後、処理液中より取り出した魚介材料を、中心温度75℃以上90℃未満の温度で焼き加熱し、焼き加熱後、魚介材料を20℃以下の温度に30分以内に冷却することを基本とする。次に、この工程図に沿ういくつかの調理法例について説明する。
さけの塩焼き
この図4に示す工程図に沿って、さけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。ここで図4において図1〜3に示す各工程と同一符番を付した工程は、これらの工程図において共通するものであるため、以下の説明において、その説明を簡略化する場合もあることを理解していただきたい。まず外部より、材料である冷凍品であるさけの骨無切り身を、原料受入れ10工程で受け入れ、検品20工程にかける。一方、これと並行して、漬込み液調製22工程において、このような切り身の漬込み液として、食塩濃度3〜6容積%、代表的には食塩濃度5容積%の漬込み液を、水に食塩を加えて調製する。原料開封30工程を経たのち、凍結したままのさけの骨無切り身を、上述したように別途調製しておいた漬込み液に投入42し、味付けおよび軟化44工程で、常温(23℃±5℃)にて15〜22時間程、代表的には1晩程度の時間漬込み、切り身を漬込み液内で解凍するとともに、味付けおよび軟化させる。塩焼きの形態に関しては、煮物の形態の場合とは異なり、包装容器体に調味液を入れて加熱殺菌の際の加熱により調味液の塩分が魚介肉に浸透し軟化するということがもたらせないため、このように予め所定の塩分濃度の漬込み液に浸漬し、魚介肉に塩分を付与しておくことが望ましい。次いで、鉄板並べ46工程で、漬込み液より取り出した切り身を鉄板上に配置し、焼き加熱52工程で、切り身を、その中心温度75℃以上90℃未満、より好ましくはその中心温度75℃以上85℃未満の温度でオーブンにて焼き加熱し、表面に焼き色を付ける。焼き加熱後、取り出し60工程でオーブンより取り出した切り身を異物混入防止のための専用容器に入れ、ただちに冷却70工程で、さけ切り身を冷蔵庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷しする。このように急速に冷却を行うことで、さけの切り身に環境下で付着する菌体の増殖を抑制する。なお、さけの切り身は焼き身であるのでこの段階では、上記したような煮物用に加圧下で加熱したものと比べて、比較的形状性は良好であるので、保形性のために、冷凍まで行う必要はなく冷蔵まででも十分である。
次いで袋詰め工程80において、冷蔵されたさけの切り身を、それぞれ包装体に入れた後、真空包装100工程において、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉する。
真空包装を行った後、重量検査100工程、金属検査120工程を経た後、殺菌130工程において、真空包装した内容物である、さけの切り身を、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間という条件範囲内である、100℃で50分という条件にて加熱殺菌処理する。さらに同じ100℃で50分という条件で再度加熱殺菌処理する。
この態様においては、この殺菌130工程における加熱によって、内容物である塩焼き状のさけの切り身は、さらにやわらかな魚介肉質のものとなる。
殺菌130工程による加熱処理が終了したら、その後は前述したものと同様に、冷却140工程において、直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度とする。その後、箱詰め150され、必要に応じて出荷まで冷凍保管200され、出荷300される。
さばの塩焼き
また、図4に示す工程図に沿って、さばの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。さばの塩焼きの場合であっても、上記したさけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合と、原料がさけの骨無し切り身の冷凍品から、さばの骨無し切り身の冷凍品に変わるのみで、それ以外は基本的に同一の工程を経て、さばの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造することができる。
しまほっけの塩焼き
また、図4に示す工程図に沿って、しまほっけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。しまほっけの塩焼きの場合についても同様に、上記したさけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合と、原料がさけの骨無し切り身の冷凍品から、しまほっけの骨無し切り身の冷凍品に変わるのみで、それ以外は基本的に同一の工程を経て、しまほっけのの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造することができる。
次に図5に示す製造工程は、照焼きの形態として包装された調理済魚介製品の製造方法の一例における工程である。
この実施形態では、下処理として、原料となる魚介材料を、食塩濃度3〜6容積%の処理液中に約15時間〜約22時間浸漬し、その後、処理液中より取り出した魚介材料を、中心温度75℃以上90℃未満の温度で焼き加熱し、焼き加熱後、魚介材料を20℃以下の温度に30分以内に冷却することを行うものであり、さらに包装体内に下処理した魚介材料と共に調味タレ液を入れて真空包装するものである。
ぶりの照焼き
この図5に示す工程図に沿って、ぶりの照焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。ここで図5において図1〜4に示す各工程と同一符番を付した工程は、これらの工程図において共通するものであるため、以下の説明において、その説明を簡略化する場合もあることを理解していただきたい。まず外部より、材料である冷凍品であるぶりの3枚卸しフィレーを、原料受入れ10工程で受け入れ、検品20工程にかける。次いで、切り身加工38工程において所定質量の骨無し切り身へとカットする。次いで、このような切り身の漬込み液として予め調製しておいた、食塩濃度2〜6容積%、代表的には食塩濃度5容積%の漬込み液に、凍結したままのぶりの骨無切り身を投入42し、味付けおよび軟化44工程で、常温(23℃±5℃)にて15〜22時間程、代表的には1晩程度の時間漬込み、切り身を漬込み液内で解凍するとともに、味付けおよび軟化させる。照焼きの形態に関しては、包装容器体に魚介原料とともに調味液を入れるが、その量は煮物の形態のものと比較して少量であり、加熱殺菌の際の加熱により調味液の塩分が魚介肉全体に浸透し軟化するということが十分にはもたらせないため、上記したような塩焼きの形態の場合と同様に、予め所定の塩分濃度の漬込み液に浸漬し、魚介肉に塩分を付与しておくことが望ましい。次いで、網焼き並べ48工程で、漬込み液より取り出した切り身を網上に配置し、焼き加熱52工程で、切り身を、その中心温度75℃以上90℃未満、より好ましくはその中心温度75℃以上85℃未満の温度でガスロースターにて焼き加熱し、表面に焼き色を付ける。焼き加熱後、ただちに冷却70工程で、ぶり切り身を冷蔵庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷しする。このように急速に冷却を行うことで、さけの切り身に環境下で付着する菌体の増殖を抑制する。なお、ぶりの切り身は焼き身であるのでこの段階では、上記したような煮物用に加圧下で加熱したものと比べて、比較的形状性は良好であるので、保形性のために、冷凍まで行う必要はなく冷蔵まででも十分である。
次いで焼き網外し74工程で、身割れおよび異物混入に注意しながら、ぶりの切り身を焼き網より引き離し、袋詰め工程80において、冷蔵されたぶりの切り身を、それぞれ包装体に入れる。袋詰め工程80に前後して、タレ入れ工程90において、包装体に予め所定調合により調製しておいた照焼き上タレを所定量加える。ぶりの切り身および照焼き上タレを包装体に入れた後、真空包装100工程において、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉する。
真空包装を行った後、重量検査100工程、金属検査120工程を経た後、殺菌130工程において、真空包装した内容物である、ぶりの切り身を、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間という条件範囲内である、100℃で50分という条件にて加熱殺菌処理する。さらに同じ100℃で50分という条件で再度加熱殺菌処理する。
この態様においては、この殺菌130工程における加熱によって、内容物である照焼き状であるぶりの切り身は、さらにやわらかな魚介肉質のものとなる。
殺菌130工程による加熱処理が終了したら、その後は前述したものと同様に、冷却140工程において、直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度とする。その後、箱詰め150され、必要に応じて出荷まで冷凍保管200され、出荷300される。
図6に示す製造工程は、あんかけ等の油調の形態として包装された調理済魚介製品の製造方法の一例における工程である。
この実施形態では、下処理として、下原料となる魚介材料を、中心温度75℃以上90℃未満の温度で油調し、油調処理後、魚介材料を20℃以下の温度に30分以内に冷却し、さらに包装体内に下処理した魚介材料と共に調味タレ液を入れて真空包装することを基本とする。次に、この工程図に沿う調理法例について説明する。
かれいのあんかけ
この図6に示す工程図に沿って、かれいのあんかけの形態として包装された調理済魚介製品を製造する場合について説明する。ここで図6において図1〜5に示す各工程と同一符番を付した工程は、これらの工程図において共通するものであるため、以下の説明において、その説明を簡略化する場合もあることを理解していただきたい。まず外部より、材料である冷凍品であるかれいの骨無し切り身を、原料受入れ10工程で受け入れ、検品20工程にかける。一方、これと並行して、漬込み液調製22工程において、このような切り身の漬込み液として、食塩濃度3〜6容積%、代表的には食塩濃度5容積%の漬込み液を、水に食塩を加えて調製する。原料開封30工程を経たのち、凍結したままのかれいの骨無切り身を、上述したように別途調製しておいた漬込み液に投入42し、味付けおよび軟化44工程で、常温(23℃±5℃)にて15〜22時間程、代表的には1晩程度の時間漬込み、切り身を漬込み液内で解凍するとともに、味付けおよび軟化させる。所定時間経過後、漬込み液より取り出し十分に水切りした後、打ち粉、バッター付け48工程において、切り身に小麦粉、指定配合のバッター液を付着量が過多ならないように分量に注意しながら付け、バッター液を付け終わった切り身をフライヤーに投入54し、油調56工程で、切り身を、その中心温度75℃以上90℃未満、より好ましくはその中心温度75℃以上85℃未満の温度でフライヤーにて揚げ加熱する。揚げ加熱後、取り出し60工程でフライヤーより取り出した切り身を異物混入防止のための専用容器に入れ、ただちに冷却72工程で、かれいの切り身を冷蔵庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷しする。このように急速に冷却を行うことで、かれいの切り身に環境下で付着する菌体の増殖を抑制する。なお、かれいの切り身は揚げ身であるのでこの段階では、上記したような煮物用に加圧下で加熱したものと比べて、比較的形状性は良好であるので、保形性のために、冷凍まで行う必要はなく冷蔵まででも十分である。
次いで袋詰め工程80において、冷却された揚げかれいの切り身を包装体に入れる。袋詰め工程80に前後して、タレ入れ工程90において、包装体に予め所定調合により調製しておいたあんかけタレを所定量加える。かれいの切り身およびあんかけダレを包装体に入れた後、真空包装100工程において、真空包装機を用いて、減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉する。
真空包装を行った後、重量検査100工程、金属検査120工程を経た後、殺菌130工程において、真空包装した内容物である、かれいの切り身およびあんかけダレを、90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間という条件範囲内である、98℃で100分という条件にて加熱殺菌処理する。
この態様においては、この殺菌130工程における加熱によって、内容物である揚げかれいの切り身にあんかけダレが効率よく均一に浸透し、さらにやわらかな魚介肉質のものとなる。
殺菌130工程による加熱処理が終了したら、その後は前述したものと同様に、冷却140工程において、直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度とする。その後、箱詰め150され、必要に応じて出荷まで冷凍保管200され、出荷300される。
なお、以上は、本発明を具体的実施形態に基づき説明したが、本発明はこれらの例示した実施形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲において規定する本発明の範囲内において、種々の変更ないし改変を行い得るものである。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明する。
なお、以下の実施例において、評価した各特性値の評価方法は以下によるものであった。
食品の硬さ評価
魚介食品の硬さ評価は、日本介護食品協議会が定めた「ユニバーサルデザインフード自主規格」に規定される試験方法に準じて測定された。クリープメーター(山電社、RE2−33005S)を用い、試料を直径40mmの容器に高さ15mmまで充填し、直径20mmまたは3mmのプランジャーで圧縮速度10mm/sec、クリアランス5mmで試料を圧縮したときの圧縮力(N/m2)を20±2℃の温度条件下で行った。また、実際の測定においては、上記試験方法における指針に従い、直径20mmのプランジャーを使用した測定で、硬さ区分2(5×10N/m2以下)を超える値となったものに関しては、直径3mmのプランジャーを使用して再測定し、この直径3mmのプランジャーを用いて得られた際の測定値で評価している。
食品の塩分濃度
調理済魚介の塩分濃度は、ポケット塩分計PAL−SALT(株式会社アタゴ製、電気伝導度式)を用いて行った。なお、調理済魚介の表面部の塩分濃度は、包装容器体より取り出した製品のそのままの表面領域において、また調理済魚介の中心近傍部位の塩分濃度は、包装容器体より取り出した製品を幅方向のほぼ中央でカットし、そのカット面での厚み方向での中央部付近の領域にて測定することによって行った。測定は、表面および中心近傍部位に関し、それぞれ5回測定し、その平均値とした。
細菌検査
包装容器体に収納した状態にて解凍後、常温(25±2℃)にて90日間保管後、また解凍後、常温(25±2℃)にて120日間保管後、および解凍後、常温(25±2℃)にて240日間保管後において、包装容器体より取り出した魚介食品を取り出し、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠し、標準寒天培地を用いて一般生菌数、XM−G寒天培地を用いて大腸菌群数、XM−G寒天培地を用いて大腸菌数、卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて黄色ブドウ球菌数を調べた。なおこの微生物試験は信頼性を高める上で、外部委託(株式会社食品微生物センター、神奈川県小田原市)して実施した。
レトルト臭および食味
包装容器体に収納した状態にて解凍後、常温(25±2℃)にて120日間保管後、包装容器体より取り出した魚介食品を、男女10名のパネラーに協力してもらって、官能試験に供した。なお、ご協力いただいたパネラーの年代構成は、30代 3名、40代 4名、50代 3名であり、男女比は6:4であった。
なお、魚介食品は、包装容器体より取り出したそのままのもの(常温状態)のものと、包装容器体に収納したまま直前に電子レンジで温めたもの(加温状態)のものとした。これらの魚介食品をパネラーに食してもらい、その際のレトルト臭の有無、および食味(魚としての旨味)について評価してもらった。なお、評価基準は以下の通りであり、それぞれのパネラーによる採点結果を平均し、小数点以下を四捨五入して得られた値を評価結果とした。なお、協力いただいたパネラーには、各製品がどのような工程を経て得られたものであるか等については、一切予め教えることなく、またそれぞれのパネラーに提供する各魚介食品の順番についても、予測できないように無作為なものとした。
(評価項目:レトルト臭)
5:調理品本来の臭いしかせず、レトルト臭は全く感じられない。
4:なんとなく臭いに違和感がある気がする。
3:レトルト臭をやや感じる。
2:レトルト臭をはっきり感じる。
1:レトルト臭がきつい。
(評価項目2:食味)
5:魚本来の味がして非常に美味しい。
4:魚本来の味がして美味しい。
3:普通。
2:魚の味はあまりしないが食べられる。
1:魚の味はしないし、まずい。
さらに、実施例1と比較例1、実施例3と比較例2、実施例5と比較例3との間で、レトルト臭および食味に関して、2点比較法による識別及び嗜好を調べた。
実施例1
前記したように図1に示す工程図に沿って、さばの味噌煮の形態として包装された調理済魚介製品を製造した。材料である冷凍品のさばの骨無し切り身(70g)を、25℃以下の温度で一晩自然解凍し、解凍した切り身を、水道水の流水で15分間洗浄し、洗浄後水を1時間自然落下させて水切りを行った後、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に、予め所定調合により調製しておいた味噌ダレ(35g)と共に切り身を入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品を蒸気釜にて、100℃で50分という条件にて2回加熱殺菌処理した。加熱殺菌処理後直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度に冷却した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
比較例1
材料である冷凍品のさばの骨無し切り身(70g)を、25℃以下の温度で一晩自然解凍し、解凍した切り身を、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に、予め所定調合により調製しておいた味噌ダレ(35g)と共に切り身を入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品を蒸気釜にて、120℃で30分間、加熱殺菌処理した。自然冷却にて室温まで冷却し、その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、得られた製品に関して、硬さ評価および官能試験を行った。得られた結果を表1、表3に示す。
実施例2
前記したように図1に示す工程図に沿って、さばの煮付けの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。材料である冷凍品のさばの骨無し切り身(70g)を、25℃以下の温度で一晩自然解凍し、解凍した切り身を、水道水の流水で15分間洗浄し、洗浄後水を1時間自然落下させて水切りを行った後、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に、予め所定調合により調製しておいた生姜醤油タレ(35g)と共に切り身を入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、100℃で50分という条件にて2回加熱殺菌処理した。加熱殺菌処理後直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度に冷却した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
実施例3
前記したように図2に示す工程図に沿って、いわしの生姜煮の形態として包装された調理済魚介製品を製造した。材料である冷凍品のいわしドレス(2尾80g)を、凍ったまま、ステンレストレー等の上に配置し、レトルト釜にて120℃、0.12MPaで20分の加熱加圧処理をした。レトルト釜より加熱加圧処理したいわしドレスを取り出し、ただちにいわしドレスを凍結庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷し、さらに−18℃以下の温度で凍結させた。次いで凍結されたいわしドレスを2匹ずつ、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に、予め所定調合により調製しておいた生姜醤油タレ(35g)と共に入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、100℃で50分という条件にて2回加熱殺菌処理した。加熱殺菌処理後直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度に冷却した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
比較例2
材料である冷凍品のいわしドレス(2尾80g)を、自然解凍し、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に、予め所定調合により調製しておいた生姜醤油タレ(35g)と共に入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、120℃で30分という条件にて加熱殺菌処理した。自然冷却にて室温まで冷却し、その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、得られた製品に関して、硬さ評価および官能試験を行った。得られた結果を表1、表3に示す。
実施例4
図3に示す工程図に沿って、にしんの土佐煮の形態として包装された調理済魚介製品を製造した。材料である冷凍品のにしんの3枚卸しフィレー(80g)を、凍ったまま半分にカット)し、これを凍ったままステンレストレー等の上に配置し、レトルト釜にて120℃、0.12MPaで20分の加熱加圧処理をした。レトルト釜より加熱加圧処理したにしんの切り身を取り出し、ただちににしんの切り身を凍結庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷し、さらに−18℃以下の温度で凍結させた。次いで凍結されたにしんの切り身を2片ずつ、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に、予め所定調合により調製しておいた生姜醤油タレ(35g)と共に入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、100℃で50分という条件にて2回加熱殺菌処理した。加熱殺菌処理後直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度に冷却した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
実施例5
図4に示す工程図に沿って、さけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。材料である冷凍品であるさけの骨無切り身(70g)を、水に食塩を濃度5容積%となるように添加して調製した漬込み液(70g)に投入し、常温(23℃±5℃)にて1晩漬込んだ。漬込み液より取り出した切り身を鉄板上に配置し、切り身の中心温度が約75℃となる条件下に7分間オーブンにて焼き加熱し、表面に焼き色を付けた。焼き加熱後、オーブンより取り出した切り身を冷蔵庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷しする。次いで、冷蔵されたさけの切り身を、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、100℃で50分という条件にて2回加熱殺菌処理した。加熱殺菌処理後直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度に冷却した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
比較例3
材料である冷凍品であるさけの骨無切り身(70g)を自然解凍し、切り身に適量塩を振って、切り身の中心温度が約120℃となる条件下に5分間オーブンにて分間焼き加熱した。得られた塩焼きのさけの骨無し切り身を、フィルムから作成された三方シール袋蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、120℃で30分という条件にて殺菌処理した。自然冷却にて室温まで冷却し、その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、得られた製品に関して、硬さ評価および官能試験を行った。得られた結果を表1、表3に示す。
参考例1
漬込み時間を1時間とする以外は実施例5と同様にして、さけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。得られた製品に関して、硬さ評価および官能試験を行った。得られた結果を表1、表3に示す。
参考例2
水に食塩を濃度20容積%となるように添加して調製した漬込み液(70g)に投入し漬込み時間を1時間とする以外は実施例5と同様にして、さけの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。得られた製品に関して、硬さ評価を行った。得られた結果を表1、表3に示す。
実施例6
実施例5において、原料としてのさけの骨無し切り身の冷凍品を、さばの骨無し切り身の冷凍品(70g)に代える以外は同様にして、さばの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
実施例7
実施例5において、原料としてのさけの骨無し切り身の冷凍品を、しまほっけの骨無し切り身の冷凍品(70g)に代える以外は同様にして、さばの塩焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
実施例8
図5に示す工程図に沿って、ぶりの照焼きの形態として包装された調理済魚介製品を製造した。材料である冷凍品であるぶりの3枚卸しフィレーを、所定質量(55g)の骨無し切り身へとカットした。この切り身を水に食塩を濃度5容積%となるように添加して調製した漬込み液(55g)に投入し、常温(23℃±5℃)にて1晩漬込んだ。漬込み液より取り出した切り身を網上に配置し、切り身の中心温度が約75℃となる条件下に5分間ガスロースターにて焼き加熱し、表面に焼き色を付けた。焼き加熱後、切り身を冷蔵庫に入れ、30分以内に20℃以下の温度へと急冷した。次いで、冷蔵されたぶりの切り身を、予め所定調合により調製しておいた照焼き上タレ(10g)と共に切り身を入れ、フィルムから作成された三方シール袋(蒸着PET12/ONY15/CPP60の積層フィルムよりなる特注品、リプラス株式会社製)に入れ、真空包装機を用いて減圧した後、開放部を高周波誘導加熱等によりヒートシールして密閉した。そして真空包装後、製品をレトルト釜にて、100℃で50分という条件にて2回加熱殺菌処理した。加熱殺菌処理後直ちに冷蔵庫を用いて冷却し、1時間以内で20℃以下の温度に冷却した。その後−18℃以下で冷凍保管したのち、解凍し、そこからは常温(25±2℃)にて90日間、120日間および240日間それぞれ保管した後、評価試験に供した。得られた結果を表1〜表3に示す。
参考例3
真空包装内での調理済魚介の塩分濃度の経時的変化を調べるために、実施例2と同じくさばの煮付け(生姜煮)の形態として製造した製品の、表面部の塩分濃度と、調理済魚介の中心近傍部位の塩分濃度とを、上述したと同様の方法にて、製造直後と常温(25±2℃)にて150日間保管した後において同一のロットのもので測定した。その結果、製造直後において、表面0・9%、内部1.0%だった塩分濃度は、150日間経過後のものにおいても、表面0・9%、内部1.0%の塩分濃度で実質的に変わりなく、この期間程度では真空包装内で塩分の拡散が生じ、全体として均一な塩分濃度となることはないことが判明した。
なお、表3に示す結果は、いずれも5%の危険率で統計的な有意差が認められた。
また、実施例1と比較例1、実施例3と比較例2、実施例5と比較例3との間で、レトルト臭および食味に関して、2点比較法による識別及び嗜好を調べた結果は、いずれも0.1%の危険率で有意差があり、本発明に係る実施例のものが比較例のものに比べて良好なものであると評価された。
10:原料受入れ
20:検品
22:漬込み液調製
30:原料開封
32:解凍
34:流水洗い
36:水切り
38:切り身加工
40:並べ
42:漬込み液に投入
44:味付けおよび軟化
46:鉄板並べ
48:焼き網並べ
50:加熱・加圧
52:焼き加熱
56:油調
60:取り出し
70:凍結
72:冷却
74:焼き網外し
80:袋詰め
90:タレ入れ
100:真空包装
110:重量検査
120:金属検査
130:殺菌
140:冷却
150:箱詰め
200:冷凍保管
300:出荷

Claims (8)

  1. 調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなる製品であって、
    前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×10N/m2以上であり、前記魚介食品はレトルト臭を有さず、かつ、加熱殺菌処理されたものであり、
    前記非成形魚介食品は、前記真空包装体中で、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
    標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
    XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
    XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
    卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
    無菌性条件を満たすものである包装された調理済魚介製品。
  2. 調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなる製品であって、
    原料となる魚介食品を真空包装体中に収納した後、105℃未満の温度にて加熱殺菌処理することにより得られる、
    前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×10N/m2以上であり、かつ
    前記非成形魚介食品は、前記真空包装体中で、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
    標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
    XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
    XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
    卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
    無菌性条件を満たすものである包装された調理済魚介製品。
  3. 常温保管用である請求項1または2に記載の包装された調理済魚介製品。
  4. 前記魚介食品の表面における塩分濃度と前記魚介食品の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度とが、いずれも0.5質量%以上にあってかつ双方の差が20%未満である請求項1〜3のいずれか1つに記載の包装された調理済魚介製品。
  5. 調理済の非成形魚介食品を真空包装体中に収納してなり、前記非成形魚介食品を軟化させる酵素処理がされていない製品であって、
    前記魚介食品の硬さが、6×105N/m2以下でかつ2×10N/m2以上であり、かつ
    前記非成形魚介食品は、前記真空包装体中で、常温(25±2℃)にて90日間保管後において、食品衛生検査指針微生物編(改定第2版 2018年)に記載の方法に準拠して検査した際、
    標準寒天培地を用いて検査した一般生菌数が300CFU/g未満、
    XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌群が陰性、
    XM−G寒天培地を用いて検査した大腸菌が陰性、かつ
    卵黄加マンニット食塩寒天培地を用いて検査した黄色ブドウ球菌が陰性となる
    無菌性条件を満たすものであり、
    さらに、前記魚介食品は、製造後、常温(25±2℃)またはそれ以上の温度での保管期間が180日以内のものであり、かつ、前記魚介食品の表面における塩分濃度と前記魚介食品の肉厚の中心近傍部位における塩分濃度とが、いずれも0.5質量%以上であってかつ双方の差が20%未満である包装された調理済魚介製品。
  6. 解凍後、常温(25±2℃)にて240日間保管後において、請求項1または2に記載の無菌性条件を満たすものである請求項1〜5のいずれかに記載の包装された調理済魚介製品。
  7. 前記魚介製品の形態が、焼き、煮る、油調および蒸すからなる群から選択されてなるいずれかの形態のものである、請求項1〜6のいずれかに記載の包装された調理済魚介製品。
  8. 原料となる魚介材料を予め下処理した後に、包装体内に収納して真空包装した後、真空包装した魚介材料を90℃以上105℃未満の温度にて、50〜150分間加熱殺菌処理することを特徴とする、包装された調理済魚介製品の製造方法。
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