JP6611651B2 - 不織布、および吸収性物品用不織布 - Google Patents

不織布、および吸収性物品用不織布 Download PDF

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Description

本開示は、不織布、および吸収性物品用不織布に関する。
人または動物の経血、おりもの、尿、便、およびその他の排出物または排泄物(以下、これらをまとめて「排泄物」と呼ぶ)を吸収するための吸収性物品は、肌と当接する面に、表面シートまたはトップシートと呼ばれるシートを一般的に有している。表面シートは、吸収性物品において排泄物の入口となるものであるため、表面シートに対しては、排泄物を外部に漏らすことなく、排泄物に含まれる液体を速やかに吸収体に移行させる性質、すなわち優れた液透過性が求められる。
特許文献1は、表面シートの液透過性に特に着目し、表面シート自体が液体を透過する機能を有する構造を有し、表面シートでの液体の拡散を抑制できる吸収性物品を提案している。具体的には、特許文献1は、裏面シートと、液透過性の表面シートとの間に、中間層が設けられている吸収性物品において、表面シートの少なくとも一部が、親水性繊維と撥水性繊維とが混合された液透過性の不織布で形成されている吸収性物品を提案している。
特開2004−73759号公報
吸収性物品を構成する表面シートに対しては、排泄物を外部に漏らすことなく、迅速に液体を吸収する、いわゆる液透過性をより向上させることが望まれている。本実施形態は、液透過性がより優れていて、排泄物の外部への漏れを防ぐ能力に優れた表面シートを構成し得る不織布を提供すること、および当該不織布を吸収性物品の構成部材、すなわち吸収性物品用不織布として提供することを目的とする。
本実施形態は、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している合成繊維(以下、「表面親水合成繊維」)、および繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着しているセルロース系繊維(以下、「表面疎水セルロース系繊維」)を含み、
表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下である、
不織布を提供する。
本実施形態の不織布は液透過性に優れるため、様々な用途に使用できる。この特徴は、本実施形態の不織布を用いて吸収性物品を構成した場合に特に活かされる。例えば、本実施形態の不織布を吸収性物品の表面シートとして用いる場合には、排泄物、特に水分をはじめとする液体が多く含まれ、流動性の高い軟便が排泄された際に、軟便に含まれる液体を速やかに吸収体へ移行させることができ、排泄物が吸収性物品から漏れ出るのを有効に抑制する。
(本実施形態に至った経緯)
吸収性物品が紙おむつである場合、排泄された尿を迅速に吸収体へ移行させること、および排泄された便に含まれている水分等の液体を迅速に吸収体へ移行させることが求められる。便には、食物の残渣、腸壁細胞、および細菌の死骸などの固形分と、液体の両方を含み、さらには、消化、吸収できなかった油脂など疎水性の成分が含まれている。疎水性の成分は、液体として存在することもあり、あるいは固形分として存在することもある。便は、液体の割合が多いほど軟らかくなって、より高い流動性を示す。そのため、吸収性物品は、軟便が排泄されたときには速やかに液体を吸収体に移行させて、その流動性を減少させるものであることが好ましい。軟便に含まれる液体分を迅速に吸収体に移行させて、流動性を速やかに減少させないと、軟便が、表面シート上を流れて吸収性物品と装着者の皮膚との隙間から漏れ出やすくなるからである。軟便の漏れの問題は、一回の排泄量が多く、取り替えるまでの時間が比較的長い、すなわち同じ吸収性物品を装着している時間が比較的長い、大人が着用する紙おむつにおいて、特に深刻である。
上記のとおり、便は、固形分および疎水性の成分を含むところ、本発明者らは、便に含まれる液体の吸収体への移行は、この固形分および疎水性の成分の影響を受けることを見出した。具体的には、親水性繊維のみから成る不織布を表面シートとすると、表面シートは、その高い親水性に起因して、軟便を即座に吸収体へ移行させようとする。そのため、軟便に含まれる液体は、軟便が表面シートに最初に接触した部分、あるいは軟便が表面シート上を最初に流れ出した方向の延長線上といった、比較的狭い面積で、表面シートを透過して吸収体に移行させられる傾向にある。軟便が表面シート上のごく一部で吸収されると、水分が吸収された後の軟便、すなわち水分以外の固形分や疎水性の成分が狭い面積に集中して堆積するようになる。そのような固形分等は、液体の移動、液体の表面シートへの吸収、および表面シートから吸収体への液体の移行を阻害する。その結果、表面シートにて、一旦、軟便の水分の吸収が生じた部分に、再度、軟便が供給されると、その部分では表面シートを介した吸収体への液体の移行が遅れ、軟便が流れて、外部へ漏れやすくなることがわかった。そこで、本発明者らは、特許文献1のように、親水性繊維と疎水性繊維とを組み合わせて使用することを検討した。
しかしながら、親水性繊維と疎水性繊維とを組み合わせるだけでは、軟便の漏れを有効に抑制できなかった。そこで、本発明者らがさらに検討したところ、親水性繊維処理剤が付着している合成繊維と、疎水性繊維処理剤が付着しているセルロース系繊維とを組み合わせて用いることにより、液透過性に優れ、特に軟便の漏れを効果的に防止できる表面シートとして有用な不織布が得られることを見出した。
(本発明の実施形態)
本実施形態の不織布は、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している合成繊維(表面親水合成繊維)、および繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着しているセルロース系繊維(表面疎水セルロース系繊維)を含み、
表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下である
不織布である。
この構成により、不織布の液透過性、特に軟便に含まれる液体を速やかに吸収体へ移行できる理由は定かではないが、本実施形態では、本来疎水性である合成繊維を親水化処理して用いている点、および本来親水性であるセルロース系繊維を疎水化処理している点、ならびに疎水化処理したセルロース系繊維の割合を特定のものとしている点によって、良好な液透過性が確保されているものと推察される。特に、本実施形態では、不織布が表面疎水セルロース系繊維を一定量含むことで不織布の親水性が適度に低下する。これにより不織布が水分(液体)を吸収する速さおよび水分を吸収する量に悪影響が出ない範囲で不織布表面を液体が流れ、表面での液体拡散性が大きくなる。それにより、液体は不織布表面および不織布の内部をある程度拡散しながら、言い換えるならば一方向に流れるのではなく、水分が吸収されつつ、あらゆる方向に流れながら吸収体側に移行させられる。その結果、表面シート(不織布)の広い面積が液体の吸収に利用されるようになり、より多くの液体が速やかに不織布を透過できるものと推察される。
[表面親水合成繊維]
本実施形態の不織布を構成する表面親水合成繊維は、熱可塑性樹脂からなる合成繊維の繊維表面に親水性繊維処理剤を付着させてなるものである。熱可塑性樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン−1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン-1−エチレン共重合体を含む)、およびエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66のようなポリアミド系樹脂等;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレンおよび環状ポリオレフィンなどのエンジニアリング・プラスチック、ならびにそれらのエラストマー系から任意に選択される。
合成繊維は、上記から選択される一または複数の熱可塑性樹脂から成る単一繊維であってよく、あるいは二以上の成分からなる複合繊維であってよい。複合繊維において、各成分は、一つの熱可塑性樹脂からなっていてよく、あるいは二以上の熱可塑性樹脂が混合されたものであってよい。複合繊維は、例えば、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、分割型複合繊維、またはサイドバイサイド型複合繊維であってよい。芯鞘型複合繊維は、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致しない偏心芯鞘型複合繊維であってよい。
得られる不織布の嵩高性を重視する場合、合成繊維として偏心芯鞘型複合繊維またはサイドバイサイド型複合繊維を使用することが好ましく、偏心芯鞘型複合繊維を使用することがより好ましい。サイドバイサイド型複合繊維および偏心芯鞘型複合繊維は、三次元的な捲縮を発現する性質を有する、顕在捲縮性繊維または潜在捲縮性繊維として提供されることが多く、これを用いた不織布は嵩高なものになりやすい。顕在捲縮性繊維とは、繊維段階で三次元的な捲縮を発現している繊維であり、潜在捲縮性繊維とは、一旦繊維を得た後、熱処理等を施すことにより三次元的な捲縮を発現する繊維である。
一方、得られる不織布に対し、使用時の強度を重視する場合、本実施形態の不織布に使用する合成繊維は、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が実質的に一致している断面が同心芯鞘型である複合繊維を含むことが好ましい。
また、単一繊維であるか複合繊維であるかにかかわらず、合成繊維は異形の繊維断面を有していてよい。芯鞘型複合繊維および海島型複合繊維の場合、その繊維断面において、芯成分および島成分は異形断面を有していてよい。
本実施形態においては、合成繊維として、二以上の合成繊維を組み合わせて用いてもよい。
合成繊維が、複合繊維である場合には、融点のより低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。その場合には、低融点の熱可塑性樹脂は不織布を生産する工程で熱が加わったときに溶融または軟化して、接着成分となり、繊維同士の接合または他の部材への接合に寄与する。このように合成繊維の一成分を加熱により接着成分として機能させることができる繊維は、熱接着性繊維とも呼ばれる。複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の組み合わせは、例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、およびプロピレン共重合体/ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせ、ならびにポリエチレン/ポリプロピレン、およびプロピレン共重合体/ポリプロピレン等の二種類のポリオレフィン系の熱可塑性樹脂の組み合わせである。なお、単一繊維または複合繊維の構成成分として例示した熱可塑性樹脂は、具体的に示された熱可塑性樹脂を50質量%以上含む限りにおいて他の成分を含んでよい。例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせにおいて、「ポリエチレン」はポリエチレンを50質量%以上含んでいれば、他の熱可塑性樹脂および添加剤等を含んでいてよい。このことは以下の例示においてもあてはまる。
芯鞘型複合繊維は、例えば、芯/鞘がポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレンの組み合わせで構成されてよい。鞘がポリエチレン、具体的には、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、または直鎖状低密度ポリエチレンである芯鞘型複合繊維は、前記鞘を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で熱処理することで鞘が溶融して、別の繊維に接着する性質を有する。そのため、これを含む繊維ウェブで不織布を製造する場合には、繊維同士を接着させることにより、容易に不織布の機械的強度を高めることができ好ましい。芯がポリエチレンテレフタレートである芯鞘型複合繊維は原料の入手、繊維の製造が容易であり、また、そのような繊維は適度なコシを有し、不織布を嵩高なものとする。
合成繊維の表面に付着させる親水性繊維処理剤は、前記合成繊維の表面に付着しており、繊維表面の親水度を、親水性繊維処理剤を付着させる前と比べて高くする繊維処理剤である。親水性繊維処理剤としては、合成繊維の技術分野において公知のものと同様のものを用いることができる。そのような親水性繊維処理剤としては、各種の界面活性剤を含む繊維処理剤が挙げられる。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、両性イオン性及びノニオン性の界面活性剤等を用いることができる。
アニオン性の界面活性剤としては、アルキルホスフェートナトリウム塩、アルキルエーテルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルホスフェートナトリウム塩、ジアルキルスルホサクシネートナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホネートナトリウム塩、アルキルスルホネートナトリウム塩、アルキルサルフェートナトリウム塩等を挙げることができる。前記アニオン性の界面活性剤において、いずれのアルキルも炭素数が6〜22であることが好ましい。また、これらのアニオン性の界面活性剤において、ナトリウム塩に代えてカリウム塩等の他のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩)を用いることもできる。
カチオン性の界面活性剤としては、アルキル(又はアルケニル)トリメチルアンモニウムハライド、ジアルキル(又はアルケニル)ジメチルアンモニウムハライド、アルキル(又はアルケニル)ピリジニウムハライド等を挙げることができる。前記カチオン系の界面活性剤は炭素数が6〜18のアルキル基またはアルケニル基を有するものが好ましい。上記ハライド化合物におけるハロゲンとしては、塩素、臭素等が挙げられる。
両性イオン性の界面活性剤としては、アルキルジメチルベタインなどのベタイン型両性イオン性界面活性剤や、アミノ酸型両性界面活性剤、アミノスルホン酸型両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン性の界面活性剤の例としては、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル、前記多価アルコール脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物ポリオキシアルキレン変性シリコーン、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
これらの界面活性剤から1種あるいは複数を選択し、これを親水性繊維処理剤として、前記合成繊維の表面に付着させることにより、本実施形態で用いる表面親水合成繊維を得ることができる。
親水性繊維処理剤の付着量は、繊維質量(繊維処理剤を除く繊維の質量)の0.03質量%以上1.5質量%以下であってよい。また、親水性繊維処理剤は繊維表面全体に付着している、すなわち、繊維表面において繊維処理剤が付着していない部分が存在しないことが好ましい。親水性繊維処理剤は、繊維が親水性を持続的に発揮することを可能にするもの、すなわち、繊維に耐久親水性を付与するものであってよい。表面親水合成繊維が耐久親水性であると、本実施形態の不織布を、複数回にわたって液体に曝す用途、あるいは長期間親水性を発揮することが望まれる用途に使用する際、液透過性が維持されるため好ましい。例えば、本実施形態の不織布を吸収性物品の表面シートに用いた場合、1つの吸収性物品が複数回の排泄に付される、あるいは1回の排泄で大量の排泄物に曝される場合でも、吸収性物品の使用中全期間にわたって、不織布は所定の機能を発揮しやすい。
親水性繊維処理剤が表面に付着した合成繊維は、繊維の沈降速度が10秒以下のものである。繊維の沈降速度は以下の方法で測定される。
沈降速度を測定する繊維を17g採取する。採取した繊維を(パラレルカード機を用いて)開繊し、カードウェブとする。カードウェブを5g秤量し、銅線(太さ0.55mm)製の籠(直径5cm、高さ8cmの円筒形 籠本体の質量3g)に充填する。
次に、恒温水槽を用意し、恒温水槽内に水道水を入れ、25℃になるよう設定する。水温が25℃になったら、恒温水槽の撹拌を止めて沈降速度の測定を開始する。上記の手順で繊維を充填した籠を水面上1cmの位置から静かに落下させ、水面に籠が落ちると同時にストップウォッチをスタートさせる。徐々に繊維が含水し、籠が完全に水面下に沈むと同時にストップウォッチを停止させる。籠が水面に落下したときから籠が水面下に沈むまでの時間を沈降速度とし、2回測定した平均値をその繊維の沈降速度とする。
親水性繊維処理剤は、合成繊維の製造中に付着させる。例えば、熱可塑性樹脂を溶融紡糸して得たフィラメントを延伸処理に付した後で、このフィラメントに、親水性繊維処理剤を水または他の溶媒で希釈した溶液を付着させ、それからフィラメントを乾燥させる方法で、親水性繊維処理剤を合成繊維の表面に付着させてよい。繊維表面に処理液を付着させる方法は、例えば、公知のスプレー法、含浸法、またはロールタッチ法により付着させることができる。
表面親水合成繊維の繊度は特に限定されず、例えば、0.8dtex以上12dtex以下、好ましくは1.1dtex以上10dtex以下、より好ましくは1.8dtex以上8.0dtex以下であってよい。繊度が小さいほど、不織布の触感が良好なものとなる傾向にあるが、繊度が極端に小さい、例えば0.8dtex未満であると、不織布の内部空間が少なくなり液通過性が低下して排泄物の漏れが発生しやすくなるだけでなく、不織布の生産性が低下するおそれがある。一方、繊度が大きいほど、不織布の比容積が大きくなって液透過性が向上する傾向にあるが、繊度が極端に大きい、例えば12dtexを超える繊度の繊維は、それを含む不織布の触感を硬くする、または、不織布表面を粗い、ザラザラとした触感のものとする傾向にある。
表面親水合成繊維の繊度は、不織布の使用条件を考慮して最適な繊度に調整することができる。不織布が肌に直接触れる用途、または不織布の触感や風合いが重視される用途の場合、表面親水合成繊維の繊度は0.8dtex以上6dtex以下であってもよいし、1.1dtex以上5dtex以下であってもよいし、1.5dtex以上4.5dtex以下であってもよい。繊度がこれらの範囲内にある表面親水合成繊維を用いるのに適した用途は、例えば、各種吸収性物品の表面シートまたはサイドギャザー;創傷面保護パッド(医療用ガーゼ)、手術用ドレープシート(サージカルドレープシートとも称される)、ガウンおよびキャップ等の医療用の使い捨て衣類等;各種パップ剤用シート、母乳パッドおよび腋下部の汗吸収シート等の肌当接面用シート、使い捨て温熱器具の表面材、対人用ワイピングシート、ならびに液体化粧料含浸皮膚被覆シート等である。
なお、不織布がこれらの用途に用いられる場合でも、不織布に含まれる表面親水合成繊維がすべて、前記の範囲内にある繊度を有する必要はない。具体的には、表面親水合成繊維全体の質量を100質量%としたときに、25質量%以下の割合で前記範囲を外れる繊度の表面親水合成繊維を含んでもよい。前記繊度範囲を外れる繊維は、例えば、6dtexよりも大きい繊度、特に6.2dtex以上10dtex以下の繊度、より特には6.5dtex以上8dtex以下の繊度を有してよい。
このような不織布の一例として、表面疎水セルロース繊維を15質量%、繊度が2.2dtexの表面親水合成繊維を65質量%、繊度が7.8dtexの表面親水合成繊維を20質量%含有する不織布を一例として挙げることができる。前記範囲の上限を超える繊度の表面親水繊維を25質量%以下含むことで、不織布全体が嵩高で繊維間空隙の多い構造となり、表面の触感を損なうことなく、吸液速度が向上する可能性がある。
一方、不織布が直接肌に触れない用途、不織布が肌に触れる機会が少ない用途、あるいは不織布の触感や風合いが重視されない用途の場合、表面親水合成繊維の繊度は1.5dtex以上12dtex以下であってもよいし、1.8dtex以上10dtex以下であってもよいし、2dtex以上8dtex以下であってもよい。
これらの用途に用いる不織布は、例えば、吸収性物品における表面シートと吸収体の間に配置されるシート、および吸収体包装シート;食肉または魚肉を梱包した食品トレー内に載置するドリップ吸着シート;家庭用の食用油吸着シート、および業務用または産業用オイルフィルターなどの油脂吸着材;対物ワイピングシート、および加湿器などに使用される液吸い上げ材などである。前記の用途のうち、表面シートと吸収体との間に配置されるシート(以下、便宜的に「中間シート」とも称する)は、例えば、表面シートから吸収体へ液体を速やかに移行させる、あるいは吸収性物品にクッション性を与えるためのものであり、「セカンドシート」とも呼ばれることがある。吸収体包装シートは、吸収体を包み、吸収体に液体が吸収される直前で液拡散を助ける、および/または吸収体の形状が崩れるのを防ぐシートである。吸収体包装シートは、「吸収コア包装シート」、「コアラップシート」とも称される。
表面親水合成繊維の繊維長は特に限定されず、不織布の製造方法および/または不織布の用途等に応じて適宜選択される。例えば、カードウェブに熱処理を施して不織布を製造する場合には、表面親水合成繊維は、繊維長20mm以上80mm以下のステープル繊維であってよい。ステープル繊維の繊維長は、より好ましくは28mm以上75mm以下であり、さらにより好ましくは30mm以上65mm以下である。繊維長が20mm未満であると、繊維の嵩が減少することがある。繊維長が80mmを超えると、カード機を使用して繊維ウェブを作製することが困難となることがある。また、繊維長が80mmを超えると、不織布を構成する繊維の本数が少なくなるため、不織布の地合が安定しないことがあり、あるいは必要な不織布強力を得られないことがある。不織布をエアレイウェブから製造する場合には、表面親水合成繊維の繊維長は好ましくは5mm以上30mm以下であり、より好ましくは10mm以上25mm以下である。
[表面疎水セルロース系繊維]
本実施形態の不織布を構成する表面疎水セルロース系繊維は、植物由来の天然繊維、または木材パルプ等を原料とする再生繊維もしくは半合成繊維の繊維表面に、疎水性繊維処理剤を付着させてなるものである。セルロース系繊維としては、
−綿(コットン)、リネン、ラミー、ジュート、およびヘンプ等の植物に由来する天然繊維
−ビスコース法で得られる、レーヨンおよびポリノジック;銅アンモニア法で得られる、キュプラ;ならびに溶剤紡糸法で得られるセルロース系繊維(レンツィングリヨセル(登録商標)およびテンセル(登録商標)等);ならびに溶融紡糸法で得られるセルロース繊維等の再生繊維
−アセテート繊維等の半合成繊維
が挙げられる。本実施形態では、セルロース系繊維は特に限定されず、これらの繊維から1または複数のものを任意に選択してよい。
本実施形態では、特に、溶剤紡糸法で得られるセルロース系繊維(以下、「溶剤紡糸セルロース系繊維」とも呼ぶ)が好ましく用いられる。溶剤紡糸セルロース系繊維は、疎水性繊維処理剤を付着させることによって、高い疎水性を示すものとなり得る。疎水性繊維処理剤を付着させた溶剤紡糸セルロース繊維は、例えば、レンツィング社から、テンセル(登録商標)バイオソフトの商品名で販売されている。テンセル(登録商標)バイオソフトは柔軟であるため、不織布の触感の点からも好ましく用いられる。
セルロース系繊維の表面に付着させる疎水性繊維処理剤は、例えば、平均炭素数が14以上、好ましくは炭素数が16〜22のアルキル基を有するアルキルホスフェートのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはアミン塩を含む繊維処理剤や、分子量が1000〜10000、酸価5〜50のカルボキシ変性ポリエチレンワックスを含む繊維処理剤、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などの水溶性フッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキル含有オリゴマー、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物などの油溶性フッ素系界面活性剤、フッ素含有ビニルモノマーを重合した撥水撥油加工剤を含むフッ素含有繊維処理剤、ポリジメチルシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性、エポキシ変性、カルボキシル変性、第4級アンモニウム塩変性、高級アルキル変性、フッ素変性などの各種変性シリコーンやシリコーンと親水基を結合させたシリコーン系界面活性剤を含むシリコーン含有繊維処理剤、また、公知の疎水化剤、例えば、炭素数8〜40の炭化水素基を有するアルキルケテンダイマー、置換されたコハク酸無水物や置換されたグルタル酸無水物に例示される置換された環式ジカルボン酸無水物を含む繊維処理剤である。
疎水性繊維処理剤の付着量は、繊維質量(繊維処理剤を除く繊維の質量)の0.03質量%以上5質量%以下であってよい。また、疎水性繊維処理剤は繊維表面全体に付着している、すなわち、繊維表面において繊維処理剤が付着していない部分が存在しないことが好ましい。疎水性繊維処理剤は、セルロース系繊維が疎水性を持続的に発揮することを可能にするもの、すなわち、繊維に耐久疎水性を付与するものであってよい。表面疎水セルロース系繊維が耐久疎水性であると、本実施形態の不織布を複数回にわたって液体に曝して使用する、あるいは長期間交換せずに使用する際、設計した不織布の初期性能(例えば液透過性など)が維持されやすくなるため好ましい。例えば、本実施形態の不織布を吸収性物品の表面シートに用いた場合、1つの吸収性物品が複数回の排泄に付される、あるいは1回の排泄で大量の排泄物に曝される場合でも、吸収性物品の使用中全期間にわたって、不織布は所定の機能を発揮しやすい。
疎水性繊維処理剤が表面に付着したセルロース系繊維は、沈降速度が10秒より大きいものである。沈降速度の意味は先に説明したとおりである。
表面疎水セルロース系繊維の繊度は特に限定されず、例えば、0.3dtex以上12dtex以下、好ましくは0.5dtex以上10dtex以下、より好ましくは0.7dtex以上8.0dtex以下であってよい。繊度が小さいほど、不織布の触感が良好なものとなる傾向にある。一方、繊度が大きいほど、不織布の比容積が大きくなって液透過性が向上する傾向にある。ただし、繊度が極端に大きい、例えば12dtexを超える繊度の繊維は、それを含む不織布の触感を硬くする、または不織布表面を粗い、ザラザラとした触感のものとする傾向にある。なお、表面疎水セルロース系繊維の繊度は、不織布の使用条件を考慮して最適な繊度に調整することができる。不織布が肌に直接触れる用途、または不織布の触感や風合いが重視される用途の場合、表面疎水セルロース系繊維の繊度は0.3dtex以上6dtex以下であってもよいし、0.8dtex以上5dtex以下であってもよいし、1.4dtex以上4.5dtex以下であってもよい。
一方、不織布が直接肌に触れない用途、不織布が肌に触れる機会が少ない用途、あるいは不織布の触感や風合いが重視されない用途の場合、表面親水合成繊維の繊度は2.0dtex以上12dtex以下であってもよいし、3dtex以上10dtex以下であってもよいし、4.0dtex以上8dtex以下であってもよい。
表面疎水セルロース系繊維の繊維長は特に限定されず、表面親水合成繊維と同様、不織布の製造方法および/または不織布の用途等に応じて適宜選択される。具体的な繊維長は先に表面親水合成繊維に関連して説明したとおりであるから、ここでは省略する。
[その他の繊維]
本実施形態の不織布は、表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維以外の繊維を含んでよい。他の繊維は、例えば、ウールおよびシルク等の動物繊維等である。他の繊維の繊度および繊維長は特に限定されず、例えば、表面親水合成繊維のそれらと同じであってよく、あるいは表面疎水セルロース系繊維のそれらと同じであってよい。
[不織布構成]
本実施形態の不織布は、表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維を含み、表面親水合成繊維により繊維同士が接着されてなる。表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維は、両者を合わせた質量を100としたときに、表面親水合成繊維:表面疎水セルロース系繊維が95:5〜72:28(質量比)となるように混合してよい。より好ましい割合は、表面親水合成繊維:表面疎水セルロース系繊維=92:8〜75:25(質量比)であり、さらにより好ましい割合は90:10〜78:22(質量比)であり、特に好ましい割合は90:10〜82:18(質量比)である。
表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%未満であると、表面親水合成繊維の割合が多くなり、不織布全体の吸水性が高くなる。不織布の吸水性が高すぎる場合には、不織布において液体が拡散しにくくなる傾向がある。液体の拡散性が低下すると、液透過性を重視する用途では不利となる場合がある。特に本実施形態の不織布を吸収性物品の表面シートとする場合、その液体拡散性が低いと、表面シート上に落下した排泄物に含まれる液体の吸収体への移行がスポット的に進行し、特に軟便のような固形分や疎水性の成分を含む排泄物中の液体の吸収には不利である。固形分等を含む排泄物の場合、固形分等が不織布の狭い領域に集中して付着するために液体の通路がふさがれやすいため、液体をある程度拡散させながら、吸収体へ移動させることが、吸液速度を高めるうえでは好ましい。一方、表面疎水セルロース系繊維の割合が28質量%を超えると、不織布全体の疎水性が高くなる。不織布の疎水性が高すぎる場合には、吸液速度がやはり低下する傾向にある。また、表面疎水セルロース系繊維の割合が大きくなると、表面親水合成繊維の割合が小さくなって、不織布の強度が小さくなる、あるいは不織布の表面に毛羽立ちが生じやすくなる。この傾向は、表面親水合成繊維により繊維同士を接着させる不織布において、より顕著となる。
本実施形態の不織布は、表面親水合成繊維として、繊維表面に親水繊維処理剤が付着している同心芯鞘型複合繊維および/または偏心芯鞘型複合繊維を含んでいることが好ましい。なお、いずれの複合繊維も表面親水合成繊維として用いられるものであるから、その表面に親水性繊維処理剤が付着していることはいうまでもない。この場合、同心芯鞘型複合繊維は、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対し、0質量%以上95質量%以下含まれており、親水性繊維処理剤が付着した偏心芯鞘型複合繊維は、本実施形態の不織布の質量に対し、0質量%以上95質量%以下含まれている。
同心芯鞘型複合繊維と偏心芯鞘型複合繊維は両者とも、本実施形態において接着性繊維、特に熱接着性を示す熱接着性繊維として用いられ得る。両者を比較すると、同心芯鞘型複合繊維は繊維同士を接着する作用、すなわち得られる不織布の機械的強度を高める作用が大きく、偏心芯鞘型複合繊維は繊維間の距離を広げる作用、すなわち得られる不織布の厚さや比容積を大きくする作用が高い。吸収性物品に使用する不織布には、嵩高な不織布にすることで得られる柔らかい触感、および使用中に不織布が破れないこと、すなわち機械的強度の両方が求められることがある。この要求に応えるために、本実施形態の不織布は、表面親水合成繊維として、同心芯鞘型複合繊維および偏心芯鞘型複合繊維をともに含むことが好ましい。本実施形態の不織布が表面親水合成繊維として、同心芯鞘型複合繊維および偏心芯鞘型複合繊維の両方を含むことで、得られる不織布は嵩高で比容積が大きいだけでなく、強度の面でも好ましいものとなる。
本実施形態の不織布が表面親水合成繊維として同心芯鞘複合繊維および偏心芯鞘型複合繊維を含む場合、表面親水合成繊維と表面疎水性セルロース系繊維を合わせた質量に対し、同心芯鞘型複合繊維は、5質量%以上90質量%以下の割合で含まれてよく、偏心芯鞘型複合繊維は、5質量%以上90質量%以下の割合で含まれてよい。本実施形態の不織布が前記割合で同心芯鞘型複合繊維及び偏心芯鞘型複合繊維含むことで、得られる不織布は嵩高で比容積が大きいだけでなく、吸収性物品を構成する不織布シートとして使用するのに十分な強度を有する不織布となる。本実施形態の不織布が表面親水合成繊維として同心芯鞘複合繊維および偏心芯鞘型複合繊維を含む場合、表面親水合成繊維と表面疎水性セルロース系繊維を合わせた質量に対し、同心芯鞘型複合繊維の割合は好ましくは10質量%以上82質量%以下、より好ましくは25質量%以上75質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以上70質量%以下であり、最も好ましくは40質量%以上70質量%以下である。偏心芯鞘型複合繊維の割合は好ましくは10質量%以上82質量%以下、より好ましくは15質量%以上65質量%以下であり、特に好ましくは20質量%以上60質量%以下であり、最も好ましくは20質量%以上50質量%以下である。
不織布が、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維以外の他の繊維を含む場合、他の繊維の割合は、不織布を構成する全ての繊維の質量を100質量%としたときに、30質量%以下とすることが好ましい。他の繊維の割合が多すぎると、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維とを組み合わせて用いることによる効果、すなわち良好な液透過性を実現できないことがある。
不織布の目付は特に限定されず、用途に応じて選択され、例えば10〜80g/m2であってよい。例えば、不織布を吸収性物品の表面シートとして使用する場合には、その目付は12g/m2〜60g/m2としてよく、特に18g/m2〜50g/m2としてよい。表面シートとして用いる場合に、目付が小さいほど、液透過性は向上する傾向にあるが、小さすぎると、不織布の構成繊維本数が少なくなって不織布が疎らとなり、吸収体に吸収された排泄物が表面シート越しに利用者の肌に触れる(液戻り)等の不都合が生じることがある。表面シートの目付が大きすぎると、液透過性が低下し、排泄物を速やかに吸収体へ移動させることが困難となる傾向にある。
不織布を吸収性物品の中間シート、すなわち装着者の肌に直接触れる表面シート(トップシートとも称される)と、吸収体の間に配置されるシートとして用いる場合には、その目付は10g/m2〜50g/m2としてよく、特に15g/m2〜40g/m2としてよい。中間シートは、例えば、排泄物の吸収体への移行を促進するとともに、吸収体に吸収された排泄物が表面シートに逆戻りすること(液戻り)を防止するために設けられる。本実施形態の不織布を、液透過性を重視して繊度の大きい繊維で構成する場合には、触感が低下することがあるため、例えば、細い繊維から成る不織布を表面シートとして用い、本実施形態の不織布を中間シートとすることが望ましい場合もある。中間シートとして用いる不織布の目付が小さすぎる場合、および目付が大きすぎる場合の問題点は先に表面シートの目付に関連して説明したとおりである。
不織布の比容積もまた、用途に応じて選択され、例えば8〜80cm3/gであってよい。例えば、不織布を吸収性物品の表面シートとして使用する場合には、その比容積は8cm3/g〜80cm3/gとしてよく、好ましくは10cm3/g〜75cm3/gとしてよく、より好ましくは15cm3/g〜70cm3/gとしてよく、特に好ましくは20cm3/g〜65cm3/gとしてもよい。表面シートとして用いる場合に、比容積が大きいほど、液透過性は向上する傾向にあるが、比容積が大きすぎると不織布の嵩が高くなりすぎて、触感が悪くなることがある。表面シートの比容積が小さすぎると、液透過性が低下し、排泄物を速やかに吸収体へ移動させることが困難となる傾向にある。
不織布を吸収性物品の中間シートとして用いる場合には、その比容積は8cm3/g〜80cm3/gとしてよく、好ましくは10cm3/g〜75cm3/gとしてよく、より好ましくは15cm3/g〜70cm3/gとしてよく、特に20cm3/g〜70cm3/gとしてよい。中間シートとして用いる不織布の比容積が小さすぎる場合、および比容積が大きすぎる場合の問題点は先に表面シートの比容積に関連して説明したとおりである。
本実施形態の不織布は、繊維同士が接着された構成にすると好ましい。繊維同士が接着した構成とは、不織布を構成する繊維によって繊維間が接着された構成や、後述する繊維ウェブに対し、バインダー(接着剤)を適用して、繊維間をバインダーによって強制的に接着させた構成が例示される。
繊維の接着により一体化された不織布は、繊維間に比較的大きな空隙を有しており、嵩高である。繊維間の空隙は、液体または固形分を保持できるので、排泄物が吸収体に移行されるまでの間に、一時的に排泄物を溜めて、排泄物の漏れを抑制する役割をする。接着による一体化はまた、合成繊維およびセルロース系繊維に付着した繊維処理剤の脱落が生じにくい方法により実現することもできるので、表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維による所望の機能を良好に発揮させることを可能とする。
本実施形態の不織布はより好ましくは表面親水合成繊維によって繊維間が接着された構成である。かかる構成とすると、上記の範囲の比容積を実現しやすいものとなる。後述するように、加熱により表面親水合成繊維を溶融または軟化させて繊維同士を接着する場合、熱接着処理を、熱風を吹き付けて行う方法で実施する場合には、より比容積の大きい不織布を得やすい。表面親水合成繊維による接着は、熱によるものに限定されず、電子線等の照射、超音波溶着によるものであってもよい。
不織布は、任意の形態の繊維ウェブを熱接着処理または他の接着処理(例えば電子線照射、超音波溶着(超音波ウェルダー))に付して得られるものであってよい。繊維ウェブは、例えば、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、および湿式抄紙ウェブのいずれの形態であってもよい。あるいは、繊維ウェブは、スパンボンドウェブのような長繊維ウェブの形態であってよい。
あるいは、本実施形態の不織布は、繊維同士が交絡されることにより一体化した不織布であってよく、あるいはまた、繊維同士が交絡されるとともに、繊維同士が接着された構成のものであってよい。繊維同士は、例えば、ニードルパンチ処理により交絡されていてよい。
本発明の不織布は、その層構造は限定されない。即ち、本発明の不織布は実質的に1枚(単層)の繊維層からなる単層不織布であってもよいし、複数の繊維層が一体化してなる積層不織布であってもよい。本発明の不織布が積層不織布である場合、積層不織布全体が、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維とを合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が前記範囲内にある構成(以下、「繊維割合構成」とも呼ぶ)を有してよい。あるいは、積層不織布を構成する繊維層のうち、少なくとも一つの繊維層が前記繊維割合構成を有する層であってよい。言い換えるならば、積層不織布全体が、表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維を含み、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下となる構成であってもよいし、積層不織布を構成する繊維層のうち少なくとも一つの繊維層が表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維を含み、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下となる構成であってもよい。
本発明の不織布が積層不織布であり、複数の繊維層のうち一つの繊維層のみが前記繊維割合要件を有し、他の層が前記繊維割合構成を有しない場合、積層不織布全体が前記繊維割合構成を有しないことがある。即ち、不織布全体において、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%未満となったり、28質量%を越えることがあってもよい。具体的には、不織布が2層の繊維層からなる積層不織布であり、一方の表面を構成する繊維層が表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維を含み、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下となる構成であり、もう一方の表面を構成する繊維層が前記繊維割合構成を有しない構成(例えば表面親水合成繊維からなる繊維層)であってもよい。
[不織布の製造方法]
不織布は、表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維とを混合して、繊維ウェブを作製し、繊維同士を一体化させる工程に付すことによって製造できる。繊維ウェブは、公知の方法で作製することができる。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブ、スパンボンドウェブのような長繊維ウェブのいずれの形態であってもよい。
得られた繊維ウェブにおいて繊維同士を一体化させる工程においては、繊維同士を機械的に交絡させる機械的な交絡処理を用いてよく、あるいは熱接着処理または接着剤処理等の接着処理を用いてよい。
機械的な交絡処理は、例えばニードルパンチ処理および水流交絡処理である。ただし、水流交絡処理においては、繊維ウェブに噴射される水流が繊維表面に付着している繊維処理剤を脱落させやすく、得られる不織布において、合成繊維およびセルロース系繊維に所定の繊維処理剤が付着していないことがある。そのため、本実施形態の不織布の製造に際し、水流交絡処理は好ましくない。また、機械的な交絡処理は不織布の比容積を減少させる傾向にあるので、その実施に際しては、不織布に求められる嵩高性を考慮することが好ましい。
上記のとおり、本実施形態の不織布は繊維同士が表面親水合成繊維によって繊維同士を接着させた構成であることが好ましい。そのような構成を得るためには、繊維ウェブは、好ましくは熱処理に付される。熱処理によれば、表面親水合成繊維を構成する成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が熱処理の際、加熱によって溶融し、繊維ウェブを構成する繊維同士を接着させることができる。熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用した熱処理である。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。本実施形態の不織布は、嵩高性が求められる場合には、熱風加工処理を実施して製造することが好ましい。熱風加工処理によれば、比容積の減少を比較的抑制できる。熱風の温度は、前記表面親水合成繊維を構成する成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が軟化または溶融する温度としてよく、例えば、当該成分の融点以上の温度としてよい。例えば、表面親水合成繊維を構成する成分のうち最も融点の低い成分が高密度ポリエチレンである場合には、130℃〜150℃の温度の熱風を吹き付けてよい。
あるいは、接着処理は、電子線等の照射、または超音波溶着によるものであってよく、これらの接着処理によっても、表面親水合成繊維を構成する成分で繊維同士を接着させることができる。あるいはまた、接着処理は、繊維ウェブに接着剤(バインダ−)を、スプレー等を用いて付着させるものであってよい。
[用途]
本実施形態の不織布は、液透過性に優れ、さらに構成繊維の繊度および不織布構成を適宜選択することにより優れた柔軟性および嵩高性を示すため、様々な用途、例えば、各種医療用品(一例として創傷面保護パッド、手術用ドレープシート、および医療用使い捨て衣類などがある)を構成する不織布、パップ剤用シート、母乳パッドや腋下部の汗吸収シートの肌当接面用シート、使い捨て温熱器具の表面シート、対人用ワイピングシート、液体化粧料含浸皮膚被覆シート、食肉または魚肉を梱包した食品トレー内に載置するドリップ吸着シート、家庭用の食用油吸着シート、または業務用または産業用オイルフィルターなどの油脂吸着材、対物ワイピングシート、ならびに加湿器などに使用される液吸い上げ材に使用できる。
本実施形態の不織布は、特に、吸収性物品を構成する部材として好ましく用いられる。
具体的には、幼児用、大人用(介護用とも称す)などの各種紙おむつ、生理用ナプキン、おりもの吸収シート(パンティーライナーとも称される)、軽失禁用パッド、および紙おむつの上に置いて用いられる軟便吸収シート(軟便キャッチシート、軟便用パッドとも称されるほか、単に便吸収シートとも称される)の表面シート、表面シートの一部を構成するサイドギャザー、中間シート、および吸収体包装シートとして用いてよい。表面シートは、吸収性物品において、利用者の皮膚と直接接して排泄物と最初に接する部材である。吸収性物品においては、表面シートの下に吸収体および液不透過性のバックシート等が配置される。表面シートと吸収体との間には、必要に応じて中間シートが設けられる。本実施形態の不織布は、この中間シートとして用いられてよい。例えば、本実施形態の不織布を繊度の大きい繊維で構成し、それにより柔軟性が低下する場合には、別の柔軟な不織布を表面シートとして、本実施形態の不織布を中間シートとして用いてよい。吸収性物品において、中間シートは2以上配置されることもあり、その場合、1つの中間シートのみを本実施形態の不織布としてよく、あるいは複数またはすべての中間シートを本実施形態の不織布としてよい。
本実施形態の不織布は表面シートおよび中間シートとして用いる場合には、優れた液透過性を有し、排泄物に含まれる液体をある程度拡散させながら、吸収体に速やかに移行させるので、排泄物の漏れを有効に抑制することができる。特に、本実施形態の不織布は、1回あたりの排泄物に含まれる液体の量が比較的多く、かつ固形分が液体の移行に影響を及ぼす軟便等から、液体を速やかに吸収体へ移行させ得るので、紙おむつおよび便吸収シートの表面シートおよび中間シートに適している。特に、大人用の紙おむつは介護の現場にて用いられることが多く、紙おむつからの排泄物、特に便の漏れは介護者の負担を増すものとなるが、本実施形態の不織布を大人用の紙おむつに適用すれば、介護者の負担減を図ることができる。
下記の繊維を、不織布を構成する繊維として用意した。
合成繊維1:繊度3.3dtex、繊維長51mmの芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が高密度ポリエチレンであり、芯成分の偏心率が25%である、偏心芯鞘型複合繊維であって、繊維表面に耐久性の親水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は3秒である。なお、偏心率は、次式に基づいて求めた。
Figure 0006611651

合成繊維2:繊度4.4dtex、繊維長51mmの芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が高密度ポリエチレンであり、芯成分が偏心していない芯鞘型複合繊維であって、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は3秒である。
合成繊維3:繊度1.7dtex、繊維長51mmの芯成分がポリプロピレン、鞘成分が高密度ポリエチレンであり、芯成分が偏心していない芯鞘型複合繊維であって、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は4秒である。
合成繊維4:繊度3.3dtex、繊維長51mmのポリエチレンテレフタレートからなる単一繊維であって、繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は14秒である。
合成繊維5:繊度2.2dtex、繊維長51mmの芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分が高密度ポリエチレンであり、繊維断面において芯成分と鞘成分が同心に配置された芯鞘型複合繊維であって、繊維表面に耐久性の親水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は3秒である。
セルロース系繊維1:繊度1.7dtex、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維であって、繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着している繊維(商品名テンセルバイオソフト、レンツィング社製)。沈降速度は1分以上である。
セルロース系繊維2:繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨンであって、繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は30秒以上である。
セルロース系繊維3:繊度1.7dtex、繊維長40mmのビスコースレーヨンであって、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している繊維。沈降速度は5秒である。
セルロース系繊維4:繊度1.7dtex、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維であって、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している繊維(商品名テンセル、レンツィング社製)。沈降速度は5秒である。
(実施例1〜11、比較例1〜3、6)
上記繊維から、表1および表2に示すように一つまたは複数の繊維を選択し、それらを表1に示す割合で混合して、パラレルカード機を用いて繊維ウェブを作製した。繊維ウェブの狙い目付はそれぞれ表1〜表3に示すとおりである。繊維ウェブを、温度140℃に設定した熱風貫通式熱処理機にて10秒間熱処理し、合成繊維の高密度ポリエチレンを溶融させ、前記繊維ウェブに含まれる繊維同士を接着させて不織布を得た。なお、実際に製造される不織布の目付は、必ずしも狙い目付けどおりとはならず誤差を有する(以下においても同じ)。
(比較例4および5)
上記繊維から、表3に示すように複数の繊維を選択し、それらを表3に示す割合で混合して、パラレルカード機を用いて繊維ウェブを作製した。繊維ウェブの狙い目付はそれぞれ表3に示すとおりである。繊維ウェブに水流交絡処理を施して繊維同士を交絡させた。水流交絡処理は、孔径0.1mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられたノズルを用いてウェブの一方の面に2.0MPaの柱状水流を1回噴射し、他方の面に3.0MPaの柱状水流を1回噴射して実施した。その後、乾燥処理を施して、不織布を得た。
得られた不織布の目付、厚さおよび比容積を表1〜表3に示す。厚さは、厚み測定機(商品名 THICKNESS GAUGE モデル CR−60A (株)大栄科学精器製作所製)を用い、試料1cm2あたり3gの荷重を加えた状態で測定した。比容積は、目付と厚さから計算して求めた。
実施例1〜11で得た不織布については、MD方向の5%モジュラス強度、10%モジュラス強度、および引張強度を測定した。それらの結果は表1および表2に示す。なお、これらの強度は以下の方法に従って測定した。
(モジュラス強度、引張強度)
JIS L 1096 6.12.1 A法(ストリップ法)に準じて、定速緊張形引張試験機を用いて、試料片の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で引張試験に付し、5%伸長させたときの伸長応力(5%モジュラス強度)、10%伸長させたときの伸長応力(10%モジュラス強度)、および破断時の強度を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)を引張方向として実施した。
(液透過性の評価−吸液速度の測定)
固形分を比較的多く含む、市販の野菜ジュース(商品名 野菜と果実ミックス濃縮ジュース、カゴメ株式会社製)と蒸留水を体積比1:1で混合し、よく撹拌したものを、軟便の代替液体とした。
市販の生理用ナプキン(多い日の昼用、製品長さ23cm、羽根つき)から表面シートを剥がし、その上に各実施例および各比較例で得た不織布を置いた。さらにその上に、透明の円筒の筒(直径2.5cm)を載せた。円筒内に軟便代替液体20mlを入れ、円筒内の液体が10ml減少するのに要した時間を測定した。10ml減少したかどうかは、円筒に予め「しるし」を付けておき、液体の上面がこのしるしに到達したかどうかで判別した。1つの実施例につき、3つの試料について吸液速度を測定し、3回の測定結果の平均値をその実施例の吸液速度とした。
吸液速度の測定結果を表1〜表3に示す。なお、吸液速度が70秒を超えると、実際に吸収性物品の表面シートとして用いたときには、吸液が不十分で、排泄物(特に軟便)の漏れが生じやすくなる。
Figure 0006611651
Figure 0006611651
Figure 0006611651
表1および表2に示すとおり、実施例の不織布はいずれも吸液速度が高い、すなわち、より短い時間で所定量の液体が吸収された。実施例1〜3と比較例3の吸液速度を比較することで、表面疎水セルロース系繊維の割合が吸液速度に影響を及ぼし、表面疎水セルロース系繊維の割合が28質量%以下であれば吸液速度を70秒以下とすることができることがわかった。
実施例4および実施例5はともに同程度の吸液速度を示した。実施例4は実施例5と比較して、表面親水合成繊維の繊度がより大きく、比容積がより大きいにもかかわらず、実施例4の吸液速度は実施例5のそれとほぼ同じであった。これは、実施例5で用いた表面親水合成繊維は偏心芯鞘型複合繊維であり、繊維が三次元的な捲縮を有していたことによるものと推察される。
表面親水合成繊維の断面構造が違うことにより、吸液性能(吸液速度)に差が出るか検証するため、表面親水合成繊維として断面が同心芯鞘型である複合繊維と、断面が偏心芯鞘型複合繊維を用意し、混綿比を変化させた不織布の評価結果を表2に示す。断面構造が異なる2種類の表面親水合成繊維を使用した場合も、吸液速度は70秒以下であった。また、実施例5と実施例7、9を比較すると、実施例7および9は実施例5と比較して目付が5g/m2大きいものの、不織布の引っ張り強度がそれぞれ7.5N/5cm、13.2N/5cmも大きく、この引張強度の差は、目付が大きいことによるものだけではなく、二種類の芯鞘型複合繊維を併用したことによると考えられる。
表面親水合成繊維のみで構成された比較例1は、比容積は大きかったものの、吸液速度が70秒を超え、実施例よりも液透過性において劣っていた。また、比較例2は、不織布を構成する繊維がすべて表面親水性であったため、セルロース系繊維の高い吸液性と相俟って、不織布それ自体の吸液性および液保持性が高くなったものと推察される。その結果、液体が拡散せずにその場で不織布に吸収されたり、表面上を流れ、拡散したとしても一方向に流れたりするようになった。このように、比較例2では、表面での液体の拡散性が低いため、液体の吸収に利用される面積が実施例の不織布と比較して狭くなり、固形分によって液体の吸収が阻害されて、吸液速度が低下したものと推察される。比較例3の不織布は、表面疎水セルロース系繊維の割合が多かったために、吸液速度が低下したものと推察される。また、比較例3の不織布は、合成繊維の割合が少なかったためか、毛羽立ちが多いものであった。
比較例4および5は、いずれも吸液速度の低いものであった。これは水流交絡処理により繊維同士を一体化させたために、不織布の比容積が小さくなったこと、および繊維表面に付着させた処理剤が水流の作用により脱落して、合成繊維およびセルロース系繊維がもはや表面親水合成繊維および表面疎水セルロース系繊維といえるものではなくなったことによると推察される。比較例6の結果から、軟便のような固形分を含む排泄物の液体を速やかに吸収体に移行させるためには、表面が親水化処理されているものと、表面が疎水化処理されているものを任意に組み合わせるだけでは足りないことが分かった。
本実施形態の不織布は以下の態様のものを含む。
(態様1)
繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している合成繊維(以下、「表面親水合成繊維」)、および繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着しているセルロース系繊維(以下、「表面疎水セルロース系繊維」)を含み、
表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下である不織布。
(態様2)
表面疎水セルロース系繊維が、繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着している溶剤紡糸セルロース繊維である、態様1の不織布。
(態様3)
比容積が8cm3/g以上80cm3/g以下である、態様1または2の不織布。
(態様4)
繊維同士が前記表面親水合成繊維により接着されて一体化している、態様1ないし3のいずれかの不織布。
(態様5)
表面親水合成繊維が、同心芯鞘型複合繊維および/または偏心芯鞘型複合繊維である、態様1ないし4のいずれかの不織布。
(態様6)
前記表面親水合成繊維として、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着した同心芯鞘型複合繊維(以下、「表面親水同心芯鞘型複合繊維」)および繊維表面に親水性繊維処理剤が付着した偏心芯鞘型複合繊維(以下、「表面親水偏心芯鞘型複合繊維」)を含み、
前記表面親水合成繊維と前記表面疎水セルロース系繊維とを合わせた質量に対する、前記表面親水同心芯鞘型複合繊維の割合が5質量%以上90質量%以下であり、前記表面親水偏心芯鞘型複合繊維の割合が5質量%以上90質量%以下である態様5の不織布。
(態様7)
態様1ないし6のいずれかの不織布である、吸収性物品用不織布。
(態様8)
前記吸収性物品が、幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ、軽失禁パッド、軟便吸収シート、生理用ナプキン、またはおりもの吸収シートであり、
当該吸収性物品の表面シート、前記表面シートと吸収体との間に配置されるシート、または吸収体被覆シートである、態様7の吸収性物品用不織布。
本実施形態の不織布は、液透過性に優れる不織布であり、特に吸収性物品を構成する不織布として使用することができる。本実施形態の不織布を各種吸収性物品の表面シートとして用いた場合、食物繊維等の固形分およびある程度の油分を含む排泄物(特に軟便)をある程度拡散させながら、排泄物中の液体を速やかに吸収体に移行させやすく、排泄物が該不織布表面にて「流れる」ことを有効に抑制する。よって、本実施形態の不織布は、各種紙おむつ、生理用ナプキン、および便吸収シート等の吸収性物品の表面シートとして有用である。

Claims (8)

  1. 繊維表面に親水性繊維処理剤が付着している合成繊維(以下、「表面親水合成繊維」)、および繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着しているセルロース系繊維(以下、「表面疎水セルロース系繊維」)を含み、
    表面親水合成繊維と表面疎水セルロース系繊維を合わせた質量に対する、表面疎水セルロース系繊維の割合が5質量%以上28質量%以下である、
    不織布。
  2. 表面疎水セルロース系繊維が、繊維表面に疎水性繊維処理剤が付着している溶剤紡糸セルロース繊維である、請求項1に記載の不織布。
  3. 比容積が8cm3/g以上80cm3/g以下である、請求項1または2に記載の不織布。
  4. 繊維同士が前記表面親水合成繊維により接着されて一体化している、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の不織布。
  5. 表面親水合成繊維が、同心芯鞘型複合繊維および/または偏心芯鞘型複合繊維である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の不織布。
  6. 前記表面親水合成繊維として、繊維表面に親水性繊維処理剤が付着した同心芯鞘型複合繊維(以下、「表面親水同心芯鞘型複合繊維」)および繊維表面に親水性繊維処理剤が付着した偏心芯鞘型複合繊維(以下、「表面親水偏心芯鞘型複合繊維」)を含み、
    前記表面親水合成繊維と前記表面疎水セルロース系繊維とを合わせた質量に対する、前記表面親水同心芯鞘型複合繊維の割合が5質量%以上90質量%以下であり、前記表面親水偏心芯鞘型複合繊維の割合が5質量%以上90質量%以下である請求項5に記載の不織布。
  7. 請求項1ないし6のいずれか1項に記載の不織布である、吸収性物品用不織布。
  8. 前記吸収性物品が、幼児用紙おむつ、大人用紙おむつ、軽失禁パッド、軟便吸収シート、生理用ナプキン、またはおりもの吸収シートであり、
    当該吸収性物品の表面シート、前記表面シートと吸収体との間に配置されるシート、または吸収体被覆シートである、請求項7に記載の吸収性物品用不織布。
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