JP6609138B2 - アキシャルギャップ型回転電機 - Google Patents

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Description

本発明は、モータや発電機等の回転電機に関し、特に、励磁コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とが、軸方向に間隔を空けて配置されるアキシャルギャップ型の回転電機に関する。
アキシャルギャップ型の回転電機は、固定子が回転子の外周側に設けられるラジアルギャップ型のものに比べて、薄型化が可能、大トルクを得やすいといった利点がある。当該回転電機は、コア部材及び励磁コイルを備える固定子と、永久磁石を備える回転子とが、軸方向に微小な間隔(アキシャルギャップ)を空けて配置される構造を有する。固定子のコア部材としては、磁性鋼帯を巻回してなる円筒型の土台部の上に、励磁コイルの巻芯となるポール部材を複数個載置してなるコア部材が使用されることがある。
上記のコア部材においては、土台部及びポール部材という2つの部材によって構成されるため、両者を一体的に固定する必要がある。一般的には、ポール部材が土台部に対して接着剤や樹脂等を用いて固定される。この固定に際しては、設計通りの磁気回路を形成できるように、ポール部材を土台部に対して正確に位置決めする必要がある。特許文献1には、固定子及び回転子を収容するケーシングを用いて、ポール部材を位置決め及び固定を行う技術が開示されている。
特開2014−117029号公報
しかしながら、ケーシングを用いてポール部材を位置決め及び固定する場合、当該ケーシングに相応の加工を施す必要性が生じる。このことは、ケーシングの構造を複雑化させ、組み立て工数を増加させる共にコストアップを招来する。
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、構造を複雑化させることなく、固定子のポール部材を土台部に対して的確に位置決めすることができるアキシャルギャップ型回転電機を提供することを目的とする。
本発明の一局面に係るアキシャルギャップ型回転電機は、コア部材及び複数の励磁コイルを備える固定子と、回転中心軸の周囲に周方向に配列された複数の永久磁石を備え、前記固定子に対して軸方向に間隔を空けて配置される回転子と、を備え、前記コア部材は、帯状の磁性部材の巻回体からなる円筒型の土台部と、前記励磁コイルが巻回される複数のポール部材とを含み、前記ポール部材は、軸方向における前記土台部の端面に載置され、前記永久磁石の配列に応じて周方向に配列されており、前記固定子は、前記円筒型の土台部の内周面に配置される円環状のバルク芯材をさらに備え、前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記土台部と前記バルク芯材との境界部に位置合わせされた状態で、前記ポール部材が前記土台部に固定されており、前記バルク芯材は、少なくとも前記境界部において、前記土台部の端面よりも軸方向に突出する突出部を備え、前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記突出部に当接している。
この回転電機によれば、円筒型の土台部の内周面に円環状のバルク芯材が配置される構成を備える。このため、前記土台部と前記バルク芯材との間には、明確な境界部が存在する。この境界部を利用して、前記ポール部材の径方向内側の端面を位置合わせさせ得る。従って、ポール部材を、土台部の所定位置に的確に位置合わせさせることができる。また、前記突出部にポール部材の径方向内側の端面を当接させることによって、当該ポール部材の位置決めを行うことができる。このため、ポール部材の位置決めを簡単且つ確実に行わせることができる。さらに、前記突出部と前記端面とが当接しているので、固定子の組み立て後におけるポール部材の位置ズレを防ぐことができる。例えば、組み立て後に樹脂モールドを施してパーツを固着してなる固定子において、前記樹脂モールド層が熱伸縮した場合でも、ポール部材の位置ズレを防止することができる。
上記の回転電機において、前記バルク芯材は、前記帯状の磁性部材が巻回される巻芯部材であることが望ましい。
この回転電機によれば、帯状の磁性部材の巻回体からなる土台部を製作する際に用いられる巻芯が、そのまま前記バルク芯材として用いられるので、前記巻回体の巻回作業後に巻芯を抜き取る作業、及び、新たにバルク芯材となる部材を前記巻回体に新たに装着する作業を省くことができる。
本発明の他の局面に係るアキシャルギャップ型回転電機は、コア部材及び複数の励磁コイルを備える固定子と、回転中心軸の周囲に周方向に配列された複数の永久磁石を備え、前記固定子に対して軸方向に間隔を空けて配置される回転子と、を備え、前記コア部材は、帯状の磁性部材の巻回体からなる円筒型の土台部と、前記励磁コイルが巻回される複数のポール部材とを含み、前記ポール部材は、軸方向における前記土台部の端面に載置され、前記永久磁石の配列に応じて周方向に配列されており、前記固定子は、前記円筒型の土台部の内周面に配置される円環状のバルク芯材をさらに備え、前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記土台部と前記バルク芯材との境界部に位置合わせされた状態で、前記ポール部材が前記土台部に固定されており、前記帯状の磁性部材は軸方向において第1の幅を持つ部材であって、前記土台部は前記軸方向に前記第1の幅を有し、前記バルク芯材は軸方向において前記第1の幅よりも長い第2の幅を有し、前記第1の幅と前記第2の幅との相違に基づく段差部が前記境界部に形成され、前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記段差部に当接している。

このような構成によっても、前記段差部を利用してポール部材の位置決めを行い、またポール部材の位置ズレを防止することができる。
上記の回転電機において、前記バルク芯材は、前記ポール部材の一部と係合し該ポール部材の周方向の移動を規制する係合部を、前記境界部を形成する面に備えていることが望ましい。
この回転電機によれば、前記境界部を利用してポール部材の径方向の位置決めが行えるだけでなく、前記係合部を利用して周方向の位置決めも行うことができる。従って、より一層ポール部材の位置決め精度を高めることができる。
この場合、前記係合部は、前記ポール部材の各々の、前記径方向内側の端面の周方向幅に略等しい幅を有する凹部であることが望ましい。
この回転電機によれば、ポール部材の径方向内側の端面部分を、前記凹部に嵌め込むだけで、ポール部材の径方向及び周方向の位置決めを達成することができる。
上記の回転電機において、前記固定子及び前記回転子を収容するケーシングと、前記ケーシングと前記バルク芯材とを機械的に結合する結合部材と、をさらに備え、前記結合部材を用いた前記ケーシングと前記バルク芯材との結合によって、前記固定子が前記ケーシングに固定されていることが望ましい。
一般に、帯状の磁性部材の巻回体からなる土台部に、ケーシングとの機械的な結合を行わせる加工、例えばネジ孔の穿孔加工を施すことは困難性を伴う。しかし、バルク芯材であれば、前記加工は比較的容易である。従って、上記の回転電機によれば、固定子とケーシングとの固定構造を簡易な加工によって実現することができる。
本発明によれば、固定子のコア部材として土台部及びポール部材を用いるアキシャルギャップ型回転電機において、構造を複雑化させることなく、ポール部材を土台部に対して的確に位置決めさせることができる。
本発明の実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機の構造を概略的に示す図である。 第1実施形態に係る回転電機の固定子及び回転子の側面図である。 前記固定子及び回転子の分解斜視図である。 前記固定子及び回転子の組み立て状態の斜視図である。 前記固定子の、励磁コイルを除いた状態の斜視図である。 図5のVI−VI線断面図である。 本実施形態との比較構造を示す断面図である。 第2実施形態に係る固定子を示す斜視図である。 図8のIX−IX線断面図である。 第3実施形態に係るバルク芯材の平面図である。 第3実施形態に係る固定子を示す斜視図である。 ポール部材のバルク芯材への係合状態を示す模式図である。 第4実施形態に係る固定子を示す斜視図である。 第4実施形態に係る固定子のケーシングへの固定状態を示す断面図である。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るアキシャルギャップ型回転電機1の構造を概略的に示す図である。本発明において、アキシャルギャップ型回転電機1は、例えばモータ又は発電機、若しくはこれらの兼用機の形態をとり得る。本実施形態では、アキシャルギャップ型回転電機の好ましい一例として、アキシャルギャップ型DCブラシレスモータを例示している。
[アキシャルギャップ型回転電機の全体構造]
アキシャルギャップ型回転電機1は、ケーシング10と、このケーシング10からその一部が突出した回転軸11とを備える。回転軸11は、当該回転電機1がモータとして用いられる場合はトルクを発生する出力回転軸となり、発電機として用いられる場合は回転駆動力が入力される入力回転軸となる。
回転電機1は、ケーシング10内に収容された円盤状の固定子2と、2個の円盤状の回転子3とを含む。固定子2と回転子3とは、回転軸11の軸方向に並ぶように配置されている。本実施形態では、固定子2の一の円盤面に一方の回転子3が対向し、固定子2の他の円盤面に他方の回転子3が対向し、これにより2個の回転子3の間に固定子2が挟まれる形態の、ダブルロータ、ダブルギャップ型の回転電機1を例示している。もちろん、回転子の一の円盤面に一方の固定子が対向し、回転子の他の円盤面に他方の固定子が対向し、これにより2個の固定子の間に回転子が挟まれる形態の、シングルロータ、ダブルギャップ型の回転電機であっても良い。また、回転電機1は、一の回転子3が一の固定子2と軸方向に対向配置されるシングルロータ、シングルギャップ型であっても良い。
各回転子3は、固定子2に対して軸方向に間隔Gを空けて配置されている。間隔Gは、いわゆるアキシャルギャップであり、その長さは0.1mm〜数mm程度である。回転軸11は、円盤状の回転子3に、その回転中心と芯合わせして固定されている。2つの回転子3は、固定子2の中空部を貫通し、回転軸11と同じ軸上に配置された連結軸(図略)によって互いに連結されている。
[第1実施形態]
図2は、第1実施形態に係る回転電機1の固定子2及び回転子3の側面図である。図3は、図2に示す固定子2及び回転子3を、互いに左右に拡げるように分解した斜視図、図4は、固定子2及び回転子3の組み立て状態の斜視図である。図3には、回転子3の回転中心軸AX(回転軸11の軸心)が示されている。なお、図2〜図4においては、図1に示す2つの回転子3のうちの一つの回転子と、これに対向する側の固定子2を描いており、もう一方の回転子3及びこれに対向する固定子2は省いている。
固定子2は、円筒型の土台部21と、この土台部21の周方向(回転子3の回転方向)に配列された複数の電磁石ユニット20とを含む。各電磁石ユニット20は、扇形のポール部材22と、このポール部材22に巻回された励磁コイル23とを備える。本実施形態におけるコア部材は、土台部21及びポール部材22である。土台部21の内周面には、円環状のバルク芯材4(図4)が配置されている。複数のポール部材22は、軸方向における土台部21の一方の端面に載置されており、回転中心軸AXの軸回りに円環状に均等に配置されている。
土台部21は、いわゆる巻鉄心であり、帯状の磁性部材の巻回体からなる。前記帯状の磁性部材としては、例えば磁性鋼帯が好適である。土台部21は、帯状の磁性部材を、バルク芯材4の外周面に渦巻き状に多数回巻回することによって形成されている。つまり、バルク芯材4は、前記巻回体を製作する際に、帯状の磁性部材の巻芯となる部材である。バルク芯材4は、鉄やニッケルなどの磁性体、或いはアルミニウムや真鍮などの非磁性体によって形成することができる。土台部21とバルク芯材4とは、帯状の磁性部材の巻回張力によって強固に接合されている。本実施形態では、土台部21とバルク芯材4との軸方向の厚みは略同一である。
土台部21は帯状の磁性部材の巻回体であるので、径方向でみると鋼帯の層が複数積層されている態様である。よって、電磁石ユニット20が作る磁束は、土台部21の径方向には流れ難く、専ら周方向に流れる。このため、磁性体からなるバルク芯材4を用いたとしても、土台部21の内周面(径方向内側)に位置するバルク芯材4には、磁束は流れ込み難い。従って、バルク芯材4の配置によって磁気回路が乱され、回転トルクの低下を招くことは無い。但し、後述の第2実施形態のようにバルク芯材4の軸方向の厚みを土台部21よりも厚くする場合は、バルク芯材4への磁束の流れ込みが想定されるので、バルク芯材4を非磁性体にて形成することが望ましい。
ポール部材22は、電磁石ユニット20において磁性コアとなる部材であり、励磁コイル23の巻芯となる部材である。ポール部材22の軸方向の一端面は、土台部21との接合面であり、軸方向の他端面にはボビン形状を形成するための鍔部221が備えられている。ポール部材22の前記一端面は、例えばエポキシ樹脂系接着剤を用いて土台部21に固定される。ネジ等の固定具を用いることによって、ポール部材22を土台部21へ固定することもできる。しかし、土台部21は帯状部材の巻回体からなるため、孔開け加工等が行い難いので、接着剤を用いた固定が好ましい。
ポール部材22は、圧粉コアであることが好ましい。圧粉コアは、電気絶縁膜で被覆された鉄粉が強固に押し固められることによって形成されたコアである。渦電流を抑制するという観点からは、この圧粉コアに加え、複数枚の電磁鋼板の積層体からなる積層コアも用い得る。圧粉コアは、前記積層コアに比べて気密性が高く、また成型の自由度も高いため、ポール部材22としてはより好ましい。
励磁コイル23は、ボビン形状のポール部材22を巻芯として絶縁電線が所要のターン数だけ巻回されてなる。励磁コイル23への直流電流の通電によって、回転軸11と平行な方向にポール部材22を貫く磁束が発生する。また、励磁コイル23への直流電流の通電方向を正逆反転させることで、前記磁束の方向を反転させることができる。各励磁コイル23へ通電及び通電方向の切り替えは、図略のドライバ回路によって制御され、これにより回転子3を回転軸11回りに回転させる磁力線が形成される。
回転子3は、複数の永久磁石32と、これら永久磁石32を支持する円盤状の基材31とを備えている。各永久磁石32は、ネオジウム等からなり、軸方向視で扇形の平板型の磁石である。基材31は、固定子2と対向する側に、回転中心軸AXと直交する円形の支持面31Sを有する。複数の永久磁石32は、支持面31Sの中心点O(回転中心軸AXと交差する点)の周囲に、S極とN極とが周方向に交互に並ぶように、支持面31Sの外周縁付近に、環状に配列されている。
固定子2のポール部材22は、この永久磁石32の配列に応じて、土台部21の周方向に配列される。図2に示す通り、永久磁石32とポール部材22の鍔部221とが、軸方向に所定の間隔G(アキシャルギャップ)を置いて対向するよう、固定子2と回転子3とが組み立てられる。
円盤状の基材31は、鋼材などの磁性体で形成された部材であり、上述の永久磁石32の支持機能と、永久磁石32のバックヨークとしての機能とを兼ねている。固定子2と対向する表面がS極に着磁されている永久磁石32は、その裏面がN極となる。これに隣接する永久磁石32は、表面がN極で裏面がS極である。基材31は、これら永久磁石32の裏面側を支持すると共に、裏面側のS極−N極との間に磁路を形成する役目を果たす。永久磁石32は、例えばエポキシ樹脂系接着剤のような接着剤を用いて、支持面31Sに固定される。勿論、ネジ等の機械的な固定手段を用いて永久磁石32を支持面31Sに固定しても良い。
以上の通り、本実施形態の固定子2においては、コア部材が土台部21とポール部材22との2つの部材からなっている。本実施形態によれば、シンプルな形状の2つの別体部材の組合せにてコア部材を作成できるので、コア部材の製造が容易となるメリットがある。また、土台部21は、帯状の磁性部材をバルク芯材4上に巻回するだけで製造することができ、材料歩留まりが良く、製造が容易であるというメリットがある。また、バルク芯材4の径を変更することで巻回体のサイズ変更が容易であり、大径の土台部21も容易に作成できる。さらに、ポール部材22についても、土台部21と分離されているのでサイズが小さくなり、製造が容易になるメリットがある。
他方で、コア部材が2つの別体部材からなるので、土台部21の所定位置にポール部材22を位置決めして固定する必要がある。既述の通り、土台部21は帯状部材の巻回体からなるため、ネジ孔等を形成する加工が容易ではなく、一般的に接着剤を用いてポール部材22は土台部21に固定されている。実際の固定作業では、作業者がポール部材22の一端面に接着剤を塗布し、これを土台部21の端面に位置決めして載置するという手順が取られる。
しかし、前記固定作業において、ポール部材22を作業性良く的確に位置決めすることは難しく、土台部21上における設計位置に対して位置ズレが生じることがある。ポール部材22は、回転子3の永久磁石32と対向する鍔部221を備える部材である。このため、ポール部材22の位置決め精度が悪く、例えば永久磁石32と鍔部221との距離が長くなると、回転電機1のトルクが低下する等のデメリットが発生する。そこで、本実施形態では、ポール部材22を土台部21に対して的確且つ容易に位置決めすることできる工夫が施されている。
図5は、固定子2の、励磁コイル23を除いた状態の斜視図である。ポール部材22は、軸方向と直交する断面の形状が扇形乃至は台形であり、土台部21の径方向において互いに対向する、外側端面222と内側端面223とを有している。本実施形態では、このポール部材22の内側端面223が、土台部21とバルク芯材4との境界部Bに位置合わせされた状態で、ポール部材22が土台部21に固定されている。つまり、土台部21の内周面にバルク芯材4をあえて存置することで、土台部21の内周側に明確な目印となる境界部Bを作っている。作業者は、この境界部Bを少なくとも径方向の位置決めラインとして利用し、ポール部材22を土台部21上に位置決めすることができる。
図6は、図5のVI−VI線断面図である。土台部21は、帯状の磁性部材の巻き終わり側に相当する外周面211と、巻き始め側に相当する内周面212とを有する円筒形状を備える。円環状のバルク芯材4は、内周面212に接する外周面41と、径中心に向く内周面42とを備える。この土台部21の内周面212と、バルク芯材4の外周面41とが接合する部分が境界部Bである。ポール部材22の外側端面222は、土台部21の外周面211よりも径方向内側に位置している。一方、ポール部材22の内側端面223は、境界部Bに位置合わせされている。なお、内側端面223は、バルク芯材4の外周面41に合致した形状とすることが、より的確な位置決めを実現させる点で望ましい。
帯状の磁性部材の巻回体からなる土台部21を製作するには、必ず巻芯となる部材が必要となる。一般的には、帯状の磁性部材の巻回作業を終えると、巻芯は取り除かれ、前記巻回体に対して樹脂含浸を行うことで当該巻回体を保形(巻きほぐれの防止)する。本実施形態では、前記巻芯がバルク芯材4である。そして、前記巻回作業の後、バルク芯材4は取り除かれることなく、固定子2の一部として存置される。これにより作業者は、土台部21とバルク芯材4との境界部Bを目印として、容易にポール部材22を位置決めすることができる。なお、バルク芯材4を存置することで、帯状の磁性部材の巻回張力によって巻回体(土台部21)の保形が行えるので、樹脂含浸だけに依存して保形する場合に比べて有利である。
バルク芯材4は、前記巻芯として用いられるもの以外の部材であっても良い。しかし、本実施形態では、帯状の磁性部材の巻回体からなる土台部21を製作する際に用いられる巻芯が、そのままバルク芯材4として用いられる。このため、前記巻回体の巻回作業後に巻芯を抜き取る作業、及び、新たにバルク芯材4を前記巻回体に装着する作業を省くことができ、作業性が良い。
さらに、バルク芯材4は、励磁コイル23の鍔部としての機能も果たす。図7は、本実施形態に対する比較構造を示す断面図である。ポール部材22を位置決めする目印という点では、境界部Bほどの明確性は無いものの、土台部21の内周面212を目印として利用して位置決めを行えなくはない。つまり、バルク芯材4が存在せずとも、土台部21の内周面212と、ポール部材22の内側端面223とを位置合わせすれば、ポール部材22の径方向の位置合わせは行い得る。図7はこのような位置合わせ状態を示している。
しかし、この場合は、励磁コイル23の径方向外側の下面231は土台部21の外周面211付近と対向するものの、径方向内側の下面232には対向する部分が無い。すなわち、励磁コイル23の径方向内側の下面232を支える部材がなく、該下面232は浮いた状態となる。これに対し本実施形態では、図6に示す通り、土台部21の内周面212に隣接して、バルク芯材4が存在する。このバルク芯材4が励磁コイル23の下面232と対向することになるので、該下面232は浮いた状態とはならない。従って、励磁コイル23は安定的にポール部材22に保持させることができる。
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係る固定子2Aを示す斜視図、図9は、図8のIX−IX線断面図である。固定子2Aが第1実施形態と相違する点は、バルク芯材4Aが、境界部Bにおいて、土台部21の内周面212よりも軸方向に突出する突出部43を備えている点である。そして、ポール部材22の径方向の内側端面223が突出部43に当接することによって、ポール部材22の位置決めが実現されている。
第1実施形態では、土台部21とバルク芯材4とは、軸方向に同一の厚みを持つ部材が適用されたが、この第2実施形態では、バルク芯材4Aは、土台部21よりも軸方向の厚みが距離hだけ厚い部材が適用される。すなわち、土台部21を構成する帯状の磁性部材として軸方向において所定の第1の幅を持つ帯部材が用いられ、これにより土台部21は軸方向に前記第1の幅を有するものが作製される。これは第1実施形態と同じである。これに対し、バルク芯材4Aとしては、軸方向において前記第1の幅よりも長い第2の幅を有するものが用いられる。
帯状の磁性部材をバルク芯材4Aに巻回するに際しては、バルク芯材4Aの底面421に帯状の磁性部材の幅方向片側端が沿うように巻回される。これにより、土台部21の底面213がバルク芯材4Aの底面421と面一とされる。そうすると、前記第1の幅と前記第2の幅との相違に基づく距離hの段差部431が、境界部Bに形成されることになる。ポール部材22の径方向の内側端面223が段差部431に当接することで、ポール部材22が位置決めされている。
第2実施形態では、バルク芯材4Aは、土台部21から軸方向に突出する突出部43を具備する。このため、突出部43を通してバルク芯材4Aへ磁束が流れ込む経路が生成され得る。従って、バルク芯材4Aの材料として、非磁性体を用いることが望ましい。バルク芯材4Aの材料として磁性体を用いる場合は、磁束の流れ込みを抑制するために、距離hを可及的に小さくすることが望ましい。
第2実施形態に係る固定子2Aによれば、作業者は、突出部43にポール部材22の内側端面223を当接させることによって、当該ポール部材22の位置決めを行うことができる。このため、ポール部材22の位置決めを一層簡単且つ確実に行わせることができる。さらに、突出部43と内側端面223とが当接しているので、固定子2Aの組み立て後におけるポール部材22の位置ズレを防ぐことができる。固定子の組み立て後に、全体に樹脂モールドを施して各部材を相互に固着して、固定子を完成させることがある。このような樹脂モールドを本実施形態の固定子2Aに施した場合において、前記樹脂モールド層が熱伸縮した場合でも、突出部43と内側端面223とが当接していることによって、ポール部材22の位置ズレを防止することができる。
[第3実施形態]
図10は、第3実施形態に係るバルク芯材4Bの平面図、図11は、第3実施形態に係る固定子2Bを示す斜視図である。固定子2Bが第1及び第2実施形態と相違する点は、バルク芯材4Bが、ポール部材22の一部と係合し該ポール部材22の周方向の移動を規制する係合部を、境界部Bを形成する面に備えている点である。
バルク芯材4Bは、土台部21よりも厚い軸方向の厚みを有し、ポール部材22の径方向の内側端面223が土台部21の突出部分に当接することによって、ポール部材22の径方向の位置決めが為されている。この点は、第2実施形態と同じである。これに加え、前記係合部によって、ポール部材22の周方向の位置決めも為されている。前記係合部は、本実施形態では、バルク芯材4Bの外周面41に形成された複数の凹部44である。
図12は、ポール部材22のバルク芯材4Bへの周方向の係合状態を示す模式図である。凹部44は、外周面41を部分的に径方向内側に凹没させてなり、隣接する凹部44間には凸部45が存在している。個々の凹部44は、ポール部材22の内側端面223の周方向幅に略等しい幅を有している。図12に示す通り、ポール部材22の内側端面223の近傍領域が、凹部44に嵌まり込んでいる。前記近傍領域は、凸部45の側壁で拘束されることになり、ポール部材22の周方向の移動が規制される。
第3実施形態に係る固定子2Bによれば、作業者は、境界部Bを利用してポール部材22の径方向の位置決めが行えるだけでなく、凹部44及び凸部45を利用して周方向の位置決めも行うことができる。つまり、ポール部材22の径方向の内側端面223付近を、凹部44に嵌め込むだけで、ポール部材22の径方向及び周方向の位置決めを達成することができる。従って、極めて簡単に、一層ポール部材22の位置決め精度を高めることができる。
[第4実施形態]
図13は、第4実施形態に係る固定子2Cを示す斜視図である。固定子2Cが備えるバルク芯材4Cは、軸方向に貫通する複数のネジ孔46を有している。バルク芯材4Cは、巻鉄心のような積層体の部材ではなく、バルク体であるので、ネジ孔46を穿孔する加工を容易に行うことができる。ネジ孔46を穿孔するベースとなるバルク芯材は、上述の実施形態1〜3のバルク芯材4、4A、4Bのいずれであっても良い。
図14は、第4実施形態に係る固定子2Cのケーシング10への固定状態を示す断面図である。ここでは、図1とは異なり、シングルロータ型の回転電機を示している。固定子2C及び回転子3を収容するケーシング10は、一対の側壁101、102と、外周壁103とを含む。回転子3は、永久磁石32を支持する基材31が回転軸11に固定されることによって、回転軸11と一体的に回転する。回転軸11は、一対の側壁101、102の内周端において、それぞれ軸受12、12によって回転自在に支持されている。
固定子2Cは、一方の側壁101に取り付けられている。側壁101には、バルク芯材4Cのネジ孔46に対応した通し孔104が穿孔されている。固定子2Cは、土台部21及びバルク芯材4Cが側壁101に沿い、ネジ孔46と通し孔104との位置が合うように配置される。ネジ孔46には、通し孔104を貫通してネジ13(結合部材)が螺合されている。前記螺合によって、側壁101とバルク芯材4Cとが機械的に結合され、この結合によって、固定子2Cがケーシング10に固定されている。なお、バルク芯材4Cと土台部21とは、帯状の磁性部材の巻回張力によって、強固に接合している。
一般に、帯状の磁性部材の巻回体からなる土台部21に、ケーシング10との機械的な結合を行わせる加工、例えばネジ孔の穿孔加工を施すことは困難性を伴う。しかし、バルク芯材4Cであれば、前記加工は比較的容易である。従って、上記の回転電機によれば、固定子2Cとケーシング10との固定構造を簡易な加工によって実現することができる。また、ネジ13で機械的に締結する構造であるので、樹脂モールドによって固定子のケーシング10への定着を図る場合に比べて、強固な固定を実現することができる。
以上説明した本発明に係るアキシャルギャップ型回転電機1によれば、固定子2のコア部材として土台部21及びポール部材22を用いる場合において、構造を複雑化させることなく、ポール部材22を土台部21に対して的確に位置決めさせることができる。従って、本発明によれば、設計通りのトルクを確実に発生できるアキシャルギャップ型回転電機1を提供することができる。
1 アキシャルギャップ型回転電機
10 ケーシング
13 ネジ(結合部材)
2、2A、2B、2C 固定子
21 土台部
22 ポール部材
23 励磁コイル
3 回転子
32 永久磁石
4、4A、4B、4C バルク芯材
43 突出部
431 段差部
44 凹部(係合部)
AX 回転中心軸
B 境界部
G 間隔(アキシャルギャップ)

Claims (6)

  1. コア部材及び複数の励磁コイルを備える固定子と、
    回転中心軸の周囲に周方向に配列された複数の永久磁石を備え、前記固定子に対して軸方向に間隔を空けて配置される回転子と、を備え、
    前記コア部材は、帯状の磁性部材の巻回体からなる円筒型の土台部と、前記励磁コイルが巻回される複数のポール部材とを含み、前記ポール部材は、軸方向における前記土台部の端面に載置され、前記永久磁石の配列に応じて周方向に配列されており、
    前記固定子は、前記円筒型の土台部の内周面に配置される円環状のバルク芯材をさらに備え、
    前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記土台部と前記バルク芯材との境界部に位置合わせされた状態で、前記ポール部材が前記土台部に固定されており、
    前記バルク芯材は、少なくとも前記境界部において、前記土台部の端面よりも軸方向に突出する突出部を備え、
    前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記突出部に当接している、アキシャルギャップ型回転電機。
  2. コア部材及び複数の励磁コイルを備える固定子と、
    回転中心軸の周囲に周方向に配列された複数の永久磁石を備え、前記固定子に対して軸方向に間隔を空けて配置される回転子と、を備え、
    前記コア部材は、帯状の磁性部材の巻回体からなる円筒型の土台部と、前記励磁コイルが巻回される複数のポール部材とを含み、前記ポール部材は、軸方向における前記土台部の端面に載置され、前記永久磁石の配列に応じて周方向に配列されており、
    前記固定子は、前記円筒型の土台部の内周面に配置される円環状のバルク芯材をさらに備え、
    前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記土台部と前記バルク芯材との境界部に位置合わせされた状態で、前記ポール部材が前記土台部に固定されており、
    前記帯状の磁性部材は軸方向において第1の幅を持つ部材であって、前記土台部は前記軸方向に前記第1の幅を有し、
    前記バルク芯材は軸方向において前記第1の幅よりも長い第2の幅を有し、
    前記第1の幅と前記第2の幅との相違に基づく段差部が前記境界部に形成され、
    前記ポール部材の径方向内側の端面が、前記段差部に当接している、アキシャルギャップ型回転電機。
  3. 請求項1又は2に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
    前記バルク芯材は、前記帯状の磁性部材が巻回される巻芯部材である、アキシャルギャップ型回転電機。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
    前記バルク芯材は、前記ポール部材の一部と係合し該ポール部材の周方向の移動を規制する係合部を、前記境界部を形成する面に備えている、アキシャルギャップ型回転電機。
  5. 請求項4に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
    前記係合部は、前記ポール部材の各々の、前記径方向内側の端面の周方向幅に略等しい幅を有する凹部である、アキシャルギャップ型回転電機。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のアキシャルギャップ型回転電機において、
    前記固定子及び前記回転子を収容するケーシングと、
    前記ケーシングと前記バルク芯材とを機械的に結合する結合部材と、をさらに備え、
    前記結合部材を用いた前記ケーシングと前記バルク芯材との結合によって、前記固定子が前記ケーシングに固定されている、アキシャルギャップ型回転電機。
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