JP6291378B2 - インクジェット印刷装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インク循環式のインクジェット印刷装置に関する。
インクを循環させつつインクジェットヘッドからインクを吐出して印刷するインク循環式のインクジェット印刷装置が知られている。
インク循環式のインクジェット印刷装置には、インクジェットヘッドに対して加圧タンクを高い位置に配置し、負圧タンクを低い位置に配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
このようなインクジェット印刷装置では、加圧タンク、負圧タンク、インクジェットヘッドの位置関係に基づく水頭圧により、加圧タンクからインクジェットヘッドへのインクの供給、およびインクジェットヘッドから負圧タンクへのインクの回収が行われる。加圧タンクへは、負圧タンクからインクポンプによりインクが送られる。
上記のようなインクジェット印刷装置において、インク循環および印刷を行わない待機状態では、負圧タンクは大気開放される。一方、加圧タンクは、加圧タンクから負圧タンクへインクが流れることを防止するため、弁により密閉状態とされる。
ところで、高解像度で印刷可能にするためノズルが高密度で配置されたインクジェットヘッドでは、インクジェットヘッド内のインクの流路が狭く、流路抵抗が大きい。このようなインクジェットヘッドを用いる場合、上述のようにインクジェットヘッド、加圧タンク、負圧タンクの配置による水頭圧だけでは、必要なインク流量を確保できないことがある。
そこで、必要なインク流量を確保するために、エアポンプを用いて、加圧タンクに正圧を付与し、負圧タンクに負圧を付与するインクジェット印刷装置が知られている。このようなインクジェット印刷装置では、インク循環を行う際、加圧タンクおよび負圧タンクをそれぞれ弁により密閉状態とし、エアポンプにより圧力を付与する。待機状態では、上述のように、加圧タンクを密閉状態とし、負圧タンクを大気開放状態とする。
このようなインクジェット印刷装置では、加圧タンクを大気開放状態と密閉状態との間で切り替えるための弁として、通電時に開、非通電時に閉となるノーマルクローズ型の電磁弁が用いられる。一方、負圧タンクを大気開放状態と密閉状態との間で切り替えるための弁として、通電時に閉、非通電時に開となるノーマルオープン型の電磁弁が用いられる。これにより、待機状態や電源オフ状態における各弁の非通電状態において、加圧タンクが密閉状態となり、負圧タンクが大気開放状態となるようにできる。
ここで、加圧タンクは、インク循環中も待機中も密閉状態であるが、インク循環を終了して待機状態へ移行する際、加圧タンクの弁を一時的に開き、加圧タンクを大気開放して圧力を逃がす。加圧タンクが密閉されて正圧を保ったまま負圧タンクが大気開放されると、インクジェットヘッドのノズルにかかる圧力が上昇してインクのメニスカスが破壊され、インク漏れが生じるおそれがあるからである。
特開2008−162262号公報
しかし、何らかの理由によりインク循環中に電源が遮断された場合、加圧タンクの弁を一時的に開く制御ができないまま、加圧タンクの密閉状態が維持される。一方、負圧タンクのノーマルオープン型の弁が電源の遮断により開くため、負圧タンクは密閉状態から大気開放状態へ移行する。これにより、加圧タンクの正圧が保たれたまま負圧タンクが大気開放されるので、インクジェットヘッドのノズルの圧力が上昇してインクのメニスカスが破壊されるおそれがある。メニスカスが破壊されると、ノズルからのインク漏れが生じるおそれがある。
本発明は上記に鑑みてなされたもので、ノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑制できるインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェット印刷装置の特徴は、インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドより高い位置に配置され、インクを貯留する第1タンクと、前記インクジェットヘッドより低い位置に配置され、インクを貯留する第2タンクと、前記第1タンク、前記インクジェットヘッド、および前記第2タンクの間でインクの循環を行うための循環経路と、前記第1および第2タンクのうちの一方のタンクに正圧を付与する正圧付与部と、前記第1および第2タンクのうちの他方のタンクに負圧を付与する負圧付与部と、前記正圧付与部により前記一方のタンクに所定の正圧を付与するとともに前記負圧付与部により前記他方のタンクに所定の負圧を付与するよう制御する制御部と、空気流路を介して前記第1タンク内のインク上の空気層および第2タンク内のインク上の空気層と接続された共通気室と、通電時に閉、非通電時に開となり、前記第1タンクと前記共通気室との間の空気流路を開閉する第1弁と、通電時に開、非通電時に閉となり、前記第2タンクと前記共通気室との間の空気流路を開閉する第2弁と、通電時に閉、非通電時に開となり、前記第2タンクを大気から遮断された状態と大気に通じた状態との間で切り替える第3弁とを備え、非通電時において、前記インクジェットヘッドのノズル圧がメニスカス破壊圧以下となることにある。
本発明に係るインクジェット印刷装置の特徴によれば、非通電時において、インクジェットヘッドのノズル圧がメニスカス破壊圧以下となるので、インク循環中に電源が遮断されても、電源遮断後のノズル圧は、メニスカス破壊圧以下に抑えられる。したがって、ノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑制できる。
第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。 第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。 インクポンプおよびインク供給弁の制御の説明図である。 第2実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。 第2実施形態に係るインクジェット印刷装置の動作を説明するためのフローチャートである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。なお、以下の説明における上下方向は鉛直方向であり、図1における紙面の上下を上下方向とする。
図1に示すように、第1実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、インクジェットヘッド2と、インク循環部3と、インク供給部4と、制御部5とを備える。
インクジェットヘッド2は、インク循環部3により供給されるインクを吐出する。インクジェットヘッド2は、複数のヘッドモジュール7からなる。
ヘッドモジュール7は、インクを貯留するインクチャンバと、インクを吐出する複数のノズル(いずれも図示せず)とを有する。インクチャンバ内には、ピエゾ素子(図示せず)が配置されている。ピエゾ素子の駆動により、ノズルからインクが吐出される。
インク循環部3は、インクを循環させつつインクジェットヘッド2にインクを供給する。インク循環部3は、加圧タンク11と、分配器12と、集合器13と、負圧タンク14と、インクポンプ15と、インク導管16〜18と、加圧側エアポンプ19と、負圧側エアポンプ20と、共通気室21と、加圧側連通弁22と、負圧側連通弁23と、負圧タンク大気開放弁24と、加圧側圧力センサ25と、負圧側圧力センサ26と、空気導管27〜31とを備える。
加圧タンク11は、インクジェットヘッド2に供給するインクを貯留する。加圧タンク11のインクは、インク導管16および分配器12を介してインクジェットヘッド2に供給される。加圧タンク11内には、インクの液面上に空気層が形成されている。加圧タンク11内の空気層は、空気導管29を介して共通気室21に接続されている。加圧タンク11は、インクジェットヘッド2より高い位置(上方)に配置されている。インクジェット印刷装置1において、加圧タンク11は、請求項の第1タンクに相当する。
加圧タンク11には、加圧タンク液面センサ36が設けられている。加圧タンク液面センサ36は、加圧タンク11内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。加圧タンク液面センサ36は、加圧タンク11内のインクの液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
分配器12は、インク導管16を介して加圧タンク11から供給されるインクを、インクジェットヘッド2の各ヘッドモジュール7に分配する。
集合器13は、インクジェットヘッド2で消費されなかったインクを各ヘッドモジュール7から集める。集合器13により集められたインクは、インク導管17により負圧タンク14へと流れる。
負圧タンク14は、インクジェットヘッド2で消費されなかったインクを集合器13から受け取り貯留する。また、負圧タンク14は、後述するインク供給部4のインクカートリッジ41から供給されるインクを貯留する。負圧タンク14内には、インクの液面上に空気層が形成されている。負圧タンク14内の空気層は、空気導管30を介して共通気室21に接続されている。負圧タンク14は、インクジェットヘッド2より低い位置(下方)に配置されている。インクジェット印刷装置1において、負圧タンク14は、請求項の第2タンクに相当する。
負圧タンク14には、負圧タンク液面センサ37が設けられている。負圧タンク液面センサ37は、負圧タンク14内のインクの液面高さが基準高さに達しているか否かを検出するためのものである。負圧タンク液面センサ37は、負圧タンク14内のインクの液面高さが基準高さ以上である場合に「オン」を示す信号を出力し、基準高さ未満である場合に「オフ」を示す信号を出力する。
インクポンプ15は、負圧タンク14から加圧タンク11へインクを送る。インクポンプ15は、インク導管18の途中に設けられている。
インク導管16は、加圧タンク11と分配器12とを接続する。インク導管16には、加圧タンク11から分配器12に向かってインクが流れる。インク導管17は、集合器13と負圧タンク14とを接続する。インク導管17には、集合器13から負圧タンク14に向かってインクが流れる。インク導管18は、負圧タンク14と加圧タンク11とを接続する。インク導管18には、負圧タンク14から加圧タンク11に向かってインクが流れる。インク導管16〜18と分配器12と集合器13とにより、加圧タンク11とインクジェットヘッド2と負圧タンク14との間でインクを循環させる循環経路が構成される。
加圧側エアポンプ19は、空気導管27を介して空気を加圧タンク11へ送ることで、加圧タンク11に正圧を付与する。加圧側エアポンプ19は、空気導管27の途中に配置されている。加圧側エアポンプ19は、請求項の正圧付与部に相当する。
負圧側エアポンプ20は、空気導管28を介して空気を負圧タンク14から吸引することで、負圧タンク14に負圧を付与する。負圧側エアポンプ20は、空気導管28の途中に配置されている。負圧側エアポンプ20は、請求項の負圧付与部に相当する。
共通気室21は、インク循環の終了時に加圧タンク11内の圧力を逃がすための空間である。共通気室21は、空気導管29を介して加圧タンク11内の空気層と接続され、空気導管30を介して負圧タンク14内の空気層と接続されている。
加圧側連通弁22は、空気導管29内の空気流路を開閉する。加圧側連通弁22が開かれると、加圧タンク11の空気層と共通気室21とが連通される。加圧側連通弁22は、空気導管29の途中に配置されている。加圧側連通弁22は、通電時に閉、非通電時に開となるノーマルオープン型の電磁弁からなる。インクジェット印刷装置1において、加圧側連通弁22は、請求項の第1弁に相当する。
負圧側連通弁23は、空気導管30内の空気流路を開閉する。負圧側連通弁23が開かれると、負圧タンク14の空気層と共通気室21とが連通される。負圧側連通弁23は、空気導管30の途中に配置されている。負圧側連通弁23は、通電時に開、非通電時に閉となるノーマルクローズ型の電磁弁からなる。インクジェット印刷装置1において、負圧側連通弁23は、請求項の第2弁に相当する。
負圧タンク大気開放弁24は、負圧タンク14を大気から遮断された状態と大気に通じた状態との間で切り替える。負圧タンク大気開放弁24は、空気導管31の途中に配置されている。負圧タンク大気開放弁24は、ノーマルオープン型の電磁弁からなる。インクジェット印刷装置1において、負圧タンク大気開放弁24は、請求項の第3弁に相当する。
加圧側圧力センサ25は、加圧タンク11内の圧力を検出する。負圧側圧力センサ26は、負圧タンク14内の圧力を検出する。
空気導管27は、加圧側エアポンプ19により加圧タンク11に送られる空気の流路を形成する。空気導管27は、一端が加圧タンク11の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
空気導管28は、負圧側エアポンプ20により負圧タンク14から吸引される空気の流路を形成する。空気導管28は、一端が負圧タンク14の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
空気導管29は、加圧タンク11と共通気室21との間の空気流路を形成する。空気導管29は、一端が加圧タンク11の空気層に接続され、他端が共通気室21に接続されている。
空気導管30は、負圧タンク14と共通気室21との間の空気流路を形成する。空気導管30は、一端が負圧タンク14の空気層に接続され、他端が共通気室21に接続されている。
空気導管31は、負圧タンク14を大気開放するための空気の流路を形成する。空気導管31は、一端が負圧タンク14の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
インク供給部4は、インク循環部3にインクを供給する。インク供給部4は、インクカートリッジ41と、インク供給弁42と、インク導管43とを備える。
インクカートリッジ41は、インクジェットヘッド2による印刷に用いるインクを収容している。インクカートリッジ41内のインクは、インク導管43を介してインク循環部3の負圧タンク14に供給される。
インク供給弁42は、インク導管43内のインクの流路を開閉する。インク供給弁42は、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。
インク導管43は、インクカートリッジ41と負圧タンク14とを接続する。インク供給時において、インク導管43には、インクカートリッジ41から負圧タンク14に向かってインクが流れる。
制御部5は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部5は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
制御部5は、印刷を行う際、加圧側連通弁22を閉、負圧側連通弁23を開、負圧タンク大気開放弁24を閉とする。そして、制御部5は、加圧側エアポンプ19により加圧タンク11に正圧を付与するとともに、負圧側エアポンプ20により負圧タンク14に負圧を付与する。これにより、インク循環部3内でインク循環が行われる。インク循環開始後、制御部5は、インクジェットヘッド2からインクを吐出するよう制御する。ここで、負圧側連通弁23が開状態のため、負圧タンク14とともに共通気室21にも負圧が付与されている。
制御部5は、インク循環を終了する際、インク循環時の状態から、加圧側連通弁22、負圧側連通弁23および負圧タンク大気開放弁24の開閉状態を逆転させる。すなわち、制御部5は、加圧側連通弁22を開、負圧側連通弁23を閉、負圧タンク大気開放弁24を開とする。これにより、共通気室21が負圧タンク14と遮断され、加圧タンク11に連通される。負圧状態の共通気室21に加圧タンク11が連通されることで、加圧タンク11の圧力が低下する。また、負圧タンク大気開放弁24が開かれることで、負圧タンク14は大気開放状態となる。これにより、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。
図2は、インクジェット印刷装置1の動作を説明するためのフローチャートである。図2のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図2のステップS1において、制御部5は、加圧側連通弁22を閉、負圧側連通弁23を開、負圧タンク大気開放弁24を閉とする。これにより、加圧タンク11が共通気室21から遮断され、負圧タンク14が共通気室21に連通される。加圧タンク11は、単独で密閉状態(大気から遮断された状態)となる。負圧タンク14は、共通気室21とともに密閉状態となる。
次いで、ステップS2において、制御部5は、圧力生成を行う。具体的には、制御部5は、加圧側エアポンプ19を駆動させて加圧タンク11の空気層に空気を送る。これにより、加圧タンク11の空気層が加圧される。制御部5は、加圧側圧力センサ25で検出される加圧タンク11内の正圧が所定の基準値になると、加圧側エアポンプ19を停止させる。これにより、加圧タンク11に基準値の正圧が付与された状態となる。
また、制御部5は、負圧側エアポンプ20を駆動させて負圧タンク14の空気層から空気を吸引する。これにより、負圧タンク14の空気層および共通気室21が減圧される。制御部5は、負圧側圧力センサ26で検出される負圧タンク14内の負圧が所定の基準値になると、負圧側エアポンプ20を停止させる。これにより、負圧タンク14および共通気室21に基準値の負圧が付与された状態となる。
加圧タンク11に正圧、負圧タンク14に負圧が付与されると、加圧タンク11からインクジェットヘッド2を経由して負圧タンク14へ向かうインクの流れが生じ、インク循環が始まる。
この後、ステップS3において、制御部5は、印刷ジョブに基づきインクジェットヘッド2を制御して印刷を開始する。
ここで、インク循環しつつ印刷を行う際、制御部5は、加圧タンク液面センサ36および負圧タンク液面センサ37の状態に応じて、インクポンプ15およびインク供給弁42の制御を行う。
具体的には、図3に示すように、加圧タンク液面センサ36および負圧タンク液面センサ37がともにオンの状態では、制御部5は、インクポンプ15をオフ、インク供給弁42を閉とする。加圧タンク液面センサ36がオンで負圧タンク液面センサ37がオフの状態でも同様に、制御部5は、インクポンプ15をオフ、インク供給弁42を閉とする。
加圧タンク液面センサ36がオフで負圧タンク液面センサ37がオンの状態では、制御部5は、インクポンプ15をオン、インク供給弁42を閉とする。
加圧タンク液面センサ36および負圧タンク液面センサ37がともにオフの状態では、制御部5は、インクポンプ15をオフ、インク供給弁42を開とする。
例えば、加圧タンク液面センサ36および負圧タンク液面センサ37がともにオンの状態からインク循環が開始されると、加圧タンク11からインクジェットヘッド2へインクが流出し、やがて加圧タンク液面センサ36がオフとなる。これにより、制御部5は、インクポンプ15を駆動させて負圧タンク14から加圧タンク11へインクを送る。負圧タンク14からのインクの流入により加圧タンク11の液面が上昇し、加圧タンク液面センサ36がオンになると、制御部5は、インクポンプ15を停止する。
印刷が進行し、インクジェットヘッド2およびインク循環部3において循環しているインクが減少してくると、やがて加圧タンク液面センサ36および負圧タンク液面センサ37がともにオフになる。この状態において、制御部5は、インク供給弁42を開いて負圧タンク14へのインク供給を行う。
インク供給により負圧タンク液面センサ37がオンになると、制御部5は、インク供給弁42を閉じて負圧タンク14へのインク供給を終了する。このとき、加圧タンク液面センサ36がオフで負圧タンク液面センサ37がオンの状態になっているため、制御部5は、インクポンプ15を駆動させて負圧タンク14から加圧タンク11へインクを送る。加圧タンク液面センサ36がオンになると、制御部5は、インクポンプ15を停止する。
このような加圧タンク液面センサ36および負圧タンク液面センサ37の状態に応じたインクポンプ15およびインク供給弁42の制御により、加圧タンク11および負圧タンク14の液面が基準高さ付近に維持されつつ印刷が行われる。
図2に戻り、ステップS3に続いて、ステップS4において、制御部5は、印刷ジョブが終了したか否かを判断する。印刷ジョブが終了していないと判断した場合(ステップS4:NO)、制御部5は、ステップS4を繰り返す。
印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS4:YES)、ステップS5において、制御部5は、加圧側連通弁22を開、負圧側連通弁23を閉、負圧タンク大気開放弁24を開とする。これにより、インク循環が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
上述のように、インク循環が終了する際、負圧側連通弁23が閉じられ、負圧タンク大気開放弁24が開かれることで、負圧タンク14が共通気室21から遮断されるとともに大気開放される。また、加圧側連通弁22が開かれ、負圧側連通弁23が閉じられることで、加圧タンク11は共通気室21に連通され、共通気室21とともに密閉状態となる。ここで、インク循環時に正圧が付与されている加圧タンク11と、負圧が付与されている共通気室21とが連通することで、加圧タンク11の圧力が下がる。後述するように、このとき、インクジェットヘッド2のノズル圧の大きさが、メニスカス破壊圧以下となるようになっている。したがって、ノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑えつつ、インク循環状態から待機状態へ移行できる。
ここで、インク循環中にインクジェット印刷装置1の電源が遮断された場合、加圧側連通弁22、負圧側連通弁23、および負圧タンク大気開放弁24が非通電状態になる。このため、ノーマルオープン型である加圧側連通弁22および負圧タンク大気開放弁24がそれぞれ開き、ノーマルクローズ型である負圧側連通弁23が閉じる。すなわち、インク循環中に電源が遮断され、加圧側連通弁22、負圧側連通弁23、および負圧タンク大気開放弁24の開閉制御が不可能な場合でも、これらの弁は、上述した制御部5の制御によりインク循環を終了する場合と同様の開閉状態となる。
したがって、インク循環中に電源が遮断された場合でも、インクジェット印刷装置1は、インクジェットヘッド2のノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑えつつ、待機状態へ移行できる。メニスカス破壊が生じると、ノズルからのインク漏れが生じるが、これを回避できる。
次に、インク循環状態から、加圧側連通弁22および負圧タンク大気開放弁24がそれぞれ開、負圧側連通弁23が閉となったときにおいて、ノズル内のインクのメニスカスが破壊されない条件について説明する。なお、圧力はゲージ圧とする。
ノズル圧Pnは、下記の式(1)で表される。
Pn=((Pk+Phk)+(Pf+Phf))/2 …(1)
ここで、Pkは、加圧タンク11の圧力である。Pfは、負圧タンク14の圧力である。Phkは、加圧タンク11の液面とインクジェットヘッド2のノズル面との高低差(水頭差)Hkに基づく水頭圧である。Phfは、インクジェットヘッド2のノズル面と負圧タンク14の液面との高低差(水頭差)Hfに基づく水頭圧である。
ノズル圧Pnがメニスカス破壊圧Pn_max以下であれば、ノズル内のインクのメニスカスが破壊されない。すなわち、以下の式(2)が満たされれば、ノズル内のインクのメニスカスは破壊されない。

メニスカス破壊圧Pn_maxは、ノズルの径およびインクの表面張力に応じて決まる値である。
ところで、前述のように、インクジェット印刷装置1では、インク循環終了時に加圧側連通弁22を開、負圧側連通弁23を閉として、共通気室21を負圧タンク14から遮断して加圧タンク11に連通させる。このときの加圧タンク11と共通気室21との連通後の加圧タンク11および共通気室21の圧力をPxとすると、ボイルの法則より、以下の式(3)が成り立つ。
Pk×Vk+Pf×Vcom=Px×(Vk+Vcom) …(3)
ここで、Vkは、加圧系のエア量である。Vcomは、共通気室系のエア量である。
加圧系のエア量Vkは、インク循環時に加圧タンク11に連通し、加圧タンク11とともに正圧が付与される部分のエア量である。加圧系のエア量Vkは、以下の式(4)で表される。
Vk=Vkt+Vkr1+Vkr2 …(4)
ここで、Vktは、加圧タンク11内の空気層の容量である。すなわち、Vktは、加圧タンク11内の液面の基準高さ以上の空間の体積に相当する。Vkr1は、空気導管27の加圧タンク11と加圧側エアポンプ19との間の部分の容量である。Vkr2は、空気導管29の加圧タンク11と加圧側連通弁22との間の部分の容量である。
共通気室系のエア量Vcomは、インク循環時に負圧タンク14に連通し、負圧タンク14とともに負圧が付与される部分のうち、インク循環終了後に加圧タンク11に連通される部分のエア量である。共通気室系のエア量Vcomは、以下の式(5)で表される。
Vcom=Vct+Vcr1+Vcr2 …(5)
ここで、Vctは、共通気室21の容量である。Vcr1は、空気導管30の共通気室21と負圧側連通弁23との間の部分の容量である。Vcr2は、空気導管29の共通気室21と加圧側連通弁22との間の部分の容量である。
式(3)から、共通気室21と連通後の加圧タンク11の圧力Pxは、以下の式(6)で表される。
Px=(Pk×Vk+Pf×Vcom)/(Vk+Vcom) …(6)
インク循環終了時に加圧タンク11と共通気室21とを連通させるとき、負圧タンク大気開放弁24が開かれることで負圧タンク14は大気開放される。これにより、Pf=0となる。
したがって、前述の式(2)にPk=Px,Pf=0を代入した以下の式(7)が満たされれば、インク循環状態から待機状態へ移行したとき、ノズル内のインクのメニスカスは破壊されない。式(7)の右辺は、加圧タンク11と共通気室21との連通後の圧力Pxに応じたノズル圧の大きさである。

式(7)に式(6)を代入して変形すると、以下の式(8)が得られる。インク循環状態から待機状態へ移行したときにノズル内のインクのメニスカスが破壊されない条件は、式(8)が満たされることである。

インクジェット印刷装置1では、加圧タンク11の空気層および共通気室21が、式(8)が満たされるだけの容量を有するように設計されている。これにより、インク循環状態から待機状態へ移行したときのインクジェットヘッド2のノズル圧の大きさが、メニスカス破壊圧以下となるようになっている。
以上説明したように、インクジェット印刷装置1では、インク循環中に電源が遮断された場合、ノーマルオープン型である加圧側連通弁22および負圧タンク大気開放弁24がそれぞれ開き、ノーマルクローズ型である負圧側連通弁23が閉じる。これにより、負圧タンク14が共通気室21から遮断されるとともに大気開放される。また、加圧タンク11が共通気室21に連通される。インク循環時に正圧が付与されている加圧タンク11が、負圧が付与されている共通気室21に連通されることで、加圧タンク11の圧力が下がる。そして、加圧タンク11の空気層および共通気室21が、加圧タンク11および共通気室21の連通後の圧力Pxに応じたノズル圧の大きさがメニスカス破壊圧以下となるだけの容量を有するので、電源遮断後(非通電時)のノズル圧は、メニスカス破壊圧以下に抑えられる。このため、ノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑制できる。これにより、ノズルからのインク漏れを抑制できる。
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係るインクジェット印刷装置の概略構成図である。
図4に示すように、第2実施形態に係るインクジェット印刷装置1Aは、図1に示した第1実施形態のインクジェット印刷装置1に対し、インク循環部3をインク循環部3Aに置き換えた構成である。
インク循環部3Aは、図1におけるインク循環部3に対し、加圧タンク11および負圧タンク14の配置を変更している。また、インク循環部3Aは、インク循環部3に対し、加圧側連通弁22、負圧側連通弁23を加圧側連通弁51、負圧側連通弁52にそれぞれ置き換え、負圧タンク大気開放弁24および空気導管31を省略し、加圧タンク大気開放弁53および空気導管54を追加した構成である。
インク循環部3Aにおいて、加圧タンク11は、インクジェットヘッド2より低い位置(下方)に配置されている。負圧タンク14は、インクジェットヘッド2より高い位置(上方)に配置されている。インクジェット印刷装置1Aでは、負圧タンク14が請求項の第1タンクに相当し、加圧タンク11が請求項の第2タンクに相当する。
加圧側連通弁51は、図1におけるインク循環部3の加圧側連通弁22とは異なり、ノーマルクローズ型の電磁弁からなる。インクジェット印刷装置1Aでは、加圧側連通弁51が請求項の第2弁に相当する。
負圧側連通弁52は、図1におけるインク循環部3の負圧側連通弁23とは異なり、ノーマルオープン型の電磁弁からなる。インクジェット印刷装置1Aでは、負圧側連通弁52が請求項の第1弁に相当する。
加圧タンク大気開放弁53は、加圧タンク11を大気から遮断された状態と大気に通じた状態との間で切り替える。加圧タンク大気開放弁53は、空気導管54の途中に配置されている。加圧タンク大気開放弁53は、ノーマルオープン型の電磁弁からなる。インクジェット印刷装置1Aでは、加圧タンク大気開放弁53が請求項の第3弁に相当する。
空気導管54は、加圧タンク11を大気開放するための空気の流路を形成する。空気導管54は、一端が加圧タンク11の空気層に接続され、他端が大気に通じている。
次に、インクジェット印刷装置1Aの動作について説明する。
図5は、インクジェット印刷装置1Aの動作を説明するためのフローチャートである。図5のフローチャートの処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。
図5のステップS11において、制御部5は、加圧側連通弁51を開、負圧側連通弁52を閉、加圧タンク大気開放弁53を閉とする。これにより、負圧タンク14が共通気室21から遮断され、加圧タンク11が共通気室21に連通される。負圧タンク14は、単独で密閉状態となる。加圧タンク11は、共通気室21とともに密閉状態となる。
次いで、ステップS12において、制御部5は、圧力生成を行う。ステップS12の処理は、前述した図2のステップS2の処理と同様である。この処理により、負圧タンク14に基準値の負圧が付与され、加圧タンク11および共通気室21に基準値の正圧が付与された状態となる。これにより、加圧タンク11からインクジェットヘッド2を経由して負圧タンク14へ向かうインクの流れが生じ、インク循環が始まる。
ステップS12に続くステップS13,S14の処理は、前述した図2のステップS3,S4の処理と同様である。また、図3に示したインクポンプ15およびインク供給弁42の制御も同様に行われる。
ステップS14において、印刷ジョブが終了したと判断した場合(ステップS14:YES)、ステップS15において、制御部5は、加圧側連通弁51を閉、負圧側連通弁52を開、加圧タンク大気開放弁53を開とする。これにより、インク循環が終了し、インクジェット印刷装置1が待機状態となる。
上述のように、インク循環が終了する際、加圧側連通弁51が閉じられ、加圧タンク大気開放弁53が開かれることで、加圧タンク11が共通気室21から遮断されるとともに大気開放される。また、負圧側連通弁52が開かれ、加圧側連通弁51が閉じられることで、負圧タンク14は共通気室21に連通され、共通気室21とともに密閉状態となる。ここで、インク循環時に負圧が付与されている負圧タンク14と、正圧が付与されている共通気室21とが連通することで、負圧タンク14の圧力が上がる。後述するように、このとき、インクジェットヘッド2のノズル圧の大きさが、メニスカス破壊圧以下となるようになっている。したがって、ノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑えつつ、インク循環状態から待機状態へ移行できる。
ここで、インク循環中にインクジェット印刷装置1Aの電源が遮断された場合、加圧側連通弁51、負圧側連通弁52、および加圧タンク大気開放弁53が非通電状態になる。このため、ノーマルオープン型である負圧側連通弁52および加圧タンク大気開放弁53がそれぞれ開き、ノーマルクローズ型である加圧側連通弁51が閉じる。すなわち、インク循環中に電源が遮断され、加圧側連通弁51、負圧側連通弁52、および加圧タンク大気開放弁53の開閉制御が不可能な場合でも、これらの弁は、上述した制御部5の制御によりインク循環を終了する場合と同様の開閉状態となる。
したがって、インク循環中に電源が遮断された場合でも、インクジェット印刷装置1Aは、インクジェットヘッド2のノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑えつつ、待機状態へ移行できる。メニスカス破壊が生じると、ノズルからのエア吸い込みが生じるが、これを回避できる。
インクジェット印刷装置1Aにおいて、インク循環状態から待機状態へ移行したときにノズル内のインクのメニスカスが破壊されない条件は、以下の式(9)が満たされることである。式(9)は、前述した式(8)と同様の手法により導出される。

ここで、Vfは、負圧系のエア量である。負圧系のエア量Vfは、インク循環時に負圧タンク14に連通し、負圧タンク14とともに負圧が付与される部分のエア量である。負圧系のエア量Vfは、以下の式(10)で表される。
Vf=Vft+Vfr1+Vfr2 …(10)
ここで、Vftは、負圧タンク14内の空気層の容量である。すなわち、Vftは、負圧タンク14内の液面の基準高さ以上の空間の体積に相当する。Vfr1は、空気導管28の負圧タンク14と負圧側エアポンプ20との間の部分の容量である。Vfr2は、空気導管30の負圧タンク14と負圧側連通弁52との間の部分の容量である。
インクジェット印刷装置1Aにおける共通気室系のエア量Vcomは、インク循環時に加圧タンク11に連通し、加圧タンク11とともに正圧が付与される部分のうち、インク循環終了後に負圧タンク14に連通される部分のエア量である。
共通気室系のエア量Vcomは、前述の式(5)で表されるが、インクジェット印刷装置1Aでは、式(5)におけるVcr1は、空気導管30の共通気室21と負圧側連通弁52との間の部分の容量である。Vcr2は、空気導管29の共通気室21と加圧側連通弁51との間の部分の容量である。
インクジェット印刷装置1Aでは、負圧タンク14の空気層および共通気室21が、式(9)が満たされるだけの容量を有するように設計されている。これにより、インク循環状態から待機状態へ移行したときのインクジェットヘッド2のノズル圧の大きさが、メニスカス破壊圧以下となるようになっている。
以上のようなインクジェット印刷装置1Aでも、電源遮断後のノズル圧をメニスカス破壊圧以下に抑えることができる。このため、ノズル内のインクのメニスカスの破壊を抑制できる。これにより、ノズルからのエア吸い込みを抑制できる。
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
1,1A インクジェット印刷装置
2 インクジェットヘッド
3,3A インク循環部
4 インク供給部
5 制御部
11 加圧タンク
12 分配器
13 集合器
14 負圧タンク
15 インクポンプ
16〜18,43 インク導管
19 加圧側エアポンプ
20 負圧側エアポンプ
21 共通気室
22,51 加圧側連通弁
23,52 負圧側連通弁
24 負圧タンク大気開放弁
25 加圧側圧力センサ
26 負圧側圧力センサ
27〜31 空気導管
41 インクカートリッジ
42 インク供給弁
53 加圧タンク大気開放弁

Claims (1)

  1. インクを吐出するノズルを有するインクジェットヘッドと、
    前記インクジェットヘッドより高い位置に配置され、インクを貯留する第1タンクと、
    前記インクジェットヘッドより低い位置に配置され、インクを貯留する第2タンクと、
    前記第1タンク、前記インクジェットヘッド、および前記第2タンクの間でインクの循環を行うための循環経路と、
    前記第1および第2タンクのうちの一方のタンクに正圧を付与する正圧付与部と、
    前記第1および第2タンクのうちの他方のタンクに負圧を付与する負圧付与部と、
    前記正圧付与部により前記一方のタンクに所定の正圧を付与するとともに前記負圧付与部により前記他方のタンクに所定の負圧を付与するよう制御する制御部と、
    空気流路を介して前記第1タンク内のインク上の空気層および第2タンク内のインク上の空気層と接続された共通気室と、
    通電時に閉、非通電時に開となり、前記第1タンクと前記共通気室との間の空気流路を開閉する第1弁と、
    通電時に開、非通電時に閉となり、前記第2タンクと前記共通気室との間の空気流路を開閉する第2弁と、
    通電時に閉、非通電時に開となり、前記第2タンクを大気から遮断された状態と大気に通じた状態との間で切り替える第3弁とを備え、
    非通電時において、前記インクジェットヘッドのノズル圧がメニスカス破壊圧以下となることを特徴とするインクジェット印刷装置。
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