本発明は、結着樹脂、着色剤及びエステルワックスを含有するトナー粒子と、該トナー粒子表面に存在する無機微粒子とを含有するトナーであって、
該エステルワックスは2乃至6官能の多官能エステルワックスであり、
該エステルワックスの融点が65℃以上85℃以下であり、
該エステルワックスの組成分布において、最多成分の割合が30質量%以上80質量%以下であり、
該エステルワックスの最多成分の分子量をM1とした時に、M1±20%以内の成分がエステルワックス全量に対し90質量%以上であり、
該トナーはヘッドスペース法によるトナーの加熱温度120℃における有機揮発成分分析において、トナー質量を基準としたトルエン換算のスチレン誘導体の総量が0.05ppm以上0.60ppm以下含有することを特徴とするものである。
本発明者らが鋭意検討した結果、トナーに特定のエステルワックスを用いた上でスチレン誘導体を適正量含有させることにより画像両末端の濃度薄は大幅に改善でき、本発明に至った。
まず、画像両末端の濃度薄に関して考えると、前述したように定着時に揮発したワックス成分が熱源から離れるにつれて冷却され、凝固して粒子となる。このとき、粒子の粒径を考えると粒径の大きなものより小さなものの方が気流に乗りやすいため、主として微小な粒子がスキャナー部分に到達し、画像両末端の濃度薄を引き起こす。したがって、凝固物の粒径を制御することが重要であった。以下、揮発したワックス成分が凝固して出来た粒子を、単に凝固物と呼ぶ。
次に、揮発したワックス成分の凝固について、本発明者らの考えを述べる。揮発したワックス成分は凝固する過程において最初に結晶核が生成し、その後、結晶は成長する。この過程について詳しく述べると、核生成の理論より核生成の活性化エネルギー(Gt)は下式(1)の通りであることが知られている。
(ここで、Rは臨界核半径、ΔGは自由エネルギー変化、γは定数。)
これをRで微分すると、Rは下式(2)のようになる。
ここで、「臨界核半径」は核生成が促進される最小の粒径として考えることが出来、一般に、臨界核半径に到達しない小さな核は安定なエネルギー準位を取れず、消滅すると言われている。
結晶の成長過程について考えると、結晶核が大きく、且つゆっくり結晶成長した場合に大きな結晶となり、粒径としても大きくなると考えられる。したがって、結晶核の大きさと結晶成長速度が、凝固物の粒径に対して大きな影響を及ぼす。
そこでまず、結晶核の大きさについて考えると、結晶核の大きさは前述した臨界核半径として考えることが出来るため、臨界核半径を大きくすることが重要であり、そのためには式(2)から、ΔGを小さくする必要がある。ΔGはギブスの自由エネルギーの式より以下のように表わされる。
ΔG=H−TΔS ・・・式(3)
ここで、ΔGはギブスの自由エネルギー変化、Tは温度、ΔSはエントロピー変化である。そのため、ある温度でのΔGを小さくするためには、ΔSを大きくする必要がある。
本発明のトナーに用いられるエステルワックスは、最多成分の割合が30質量%以上80質量%以下であることが重要である。エステルワックスの最多成分の割合が30質量%以上80質量%以下であるということは、エステルワックスに組成分布が有ることを意味している。
ここでエステルワックスの組成について考えると、単一なものに比べ分布があるものの方がエントロピーが大きくなる事は明らかである。すなわち、組成分布があると式(3)からΔGは小さくなり、式(2)から臨界核半径Rは大きくなるものと考えられる。そのため、凝固物の粒径は大きくなると考えられる。
これらのことから、エステルワックスの最多成分の割合が80質量%よりも高い場合、単一組成の状態に近づくためにエントロピーは小さく、凝固物の粒径は小さくなってしまう。その結果、画像両末端の濃度薄が発生し、好ましくない。また、エステルワックスの最多成分の割合が30質量%よりも低い場合、組成分布がブロードになり過ぎるため、保存性や現像性が悪化し、好ましくない。
本発明者らの検討によると、最多成分の割合は好ましくは30質量%以上65質量%以下であり、更に好ましくは、30質量%以上45質量%以下である。
次に結晶成長に着目すると、一般に、結晶成長速度が小さい場合に結晶は大きく成長することが知られている。そのため、凝固物の粒径を大きくするためには、結晶成長速度を小さく抑えることが重要と考えられる。更に、結晶成長が行われている部分について考えると、成長が進んでいる部分の表面は準安定な結晶構造であり、安定なエネルギー準位に到達するまで大きな速度で結晶成長が進む。そのため、速度を抑えるためには、準安定な結晶構造のエネルギー準位を下げることが必要になる。
本発明のトナーはヘッドスペース法によるトナーの加熱温度120℃における有機揮発成分分析において、トナー質量を基準としたトルエン換算のスチレン誘導体の総量が0.05ppm以上0.60ppm以下含有する。スチレン誘導体に関しての詳細は後述するが、本発明におけるスチレン誘導体とは、スチレンのビニル基をOH基やアルデヒド基、カルボキシル基、エチル基等の官能基に置換した構造を持つ化合物を指す。
スチレン誘導体を0.05ppm以上0.60ppm以下含有するということは、ワックスが結晶成長する過程において気相部にスチレン誘導体が存在することを意味する。詳細なメカニズムは不明であるが、スチレン誘導体が気相部に共存すると、準安定状態の表面に対してスチレン誘導体が配位又は吸着し、エネルギー準位は安定な方向に向かうと推察している。このことで結晶成長速度が抑制され、結晶径、すなわち凝固物の粒径を大きくすることが出来ると考えられる。
また、スチレン誘導体が存在するとエントロピーも大きくなることは明らかであり、式(2)及び式(3)から臨界核半径は大きくなり、大きな結晶になりやすい。
これらのことから、スチレン誘導体の含有量が0.05ppm未満である場合、上記のような結晶成長速度を抑制し、且つエントロピーを高める効果が得られず、凝固物の粒径は小さくなってしまう。その結果、画像両末端の濃度薄が発生し、好ましくない。0.60ppmを超えて含有すると、結晶成長過程における結晶表面を安定化する傾向が強まり、結晶成長を停止することで寧ろ凝固物の粒径が小さくなりやすく、画像両末端の濃度薄が発生し、好ましくない。
また、本発明のトナーに用いるエステルワックスは、エステルワックス中の存在割合が最も多いエステル化合物の分子量をM1としたときに、M1±20%以内の成分がエステルワックス全量に対して90質量%以上であることが重要である。これも、臨界核半径に影響を及ぼしていると推測される。この理由についてであるが、本発明者らは以下のように考えている。
式(2)のR(臨界核半径)について考えると、上述したように一般的には臨界核半径よりも小さな核は安定なエネルギー準位を取れず、単独では消滅すると言われている。しかし例外もあり、臨界核半径を超えた大きな核が近傍に存在すれば、臨界核半径よりも小さな核は準安定な結晶構造を取りつつ、臨界核半径を超えた大きな核を覆う構造を取ることも知られている。このような構造はエネルギー準位が低くなるため、結晶成長速度は小さくなる。ここで、M1±20%以内の成分がエステルワックス全量に対して90質量%以上であると、上述した構造をスムーズに形成すると考えている。これは、適度に近似した物質が存在することで準安定状態の形成が進みやすくなり、結晶核が大きくなるためであると考えている。
また、本発明のトナーに用いるエステルワックスは、2乃至6官能の多官能エステルワックスであることが重要である。ここで、本発明において、エステルワックスの官能基とはエステル基を指す。例えば2官能のエステルワックスとは、1分子内に2つエステル基を有するものである。
2乃至6官能ということは、エステルとして2つ以上のエステル結合を有し、分子構造として折れ曲がった形を取っていることになる。折れ曲がった構造は直線的な構造や分岐構造に対して可動部が多く、エントロピーが大きくなることは明らかである。このため、臨界核半径が大きくなると共に凝固物の粒径も大きくなることで画像両末端の濃度薄が改善したと考えている。これらのことから1官能であると、エステル結合は1つでありエントロピー増加の効果が得にくいため、好ましくない。一方、分岐が多い構造を持つ低分子ポリマーは一般に結晶化の速度が大きく、結晶径は小さい。このことから、6官能を越えると粒径の小さい凝固物が生成しやすくなり、好ましくない。
このように、スチレン誘導体を適量含有し、組成分布を持つ2乃至6官能のエステルワックスを用いることで結晶核を大きくすると共に、結晶成長速度も抑制される。これにより、ワックス成分が揮発及び凝固して生成する粒子の径は大きくなるため、小粒径の凝固物は大幅に減少する。
本発明に用いるエステルワックスの融点は65℃以上85℃以下である。65℃未満であると、トナー中での結晶化度が低くなるため、保存性や現像性を悪化させるため好ましくない。また、85℃超であると、トナーの定着温度が高まるため、好ましくない。
本発明に用いるエステルワックスは、2乃至6官能であるが、好ましくは4乃至6官能の多官能エステルワックスであり、更に好ましくは6官能である。エステルワックスとしては、融点、最多成分の割合、M1±20%以内の成分比率を満たす構成であれば特に限定されない。
以下に、エステルワックスが含有できる成分を具体的に例示する。
まず、2官能のエステルワックスとしては、ジカルボン酸とアルコールの縮合物、又はジオールとカルボン酸の縮合物を用いることが出来る。中でも好ましい構造を示す。
式(4):R1−CO−O−(CH2)x−O−OC−R2
式(5):R3−O−OC−(CH2)x−CO−O−R4
式(4)及び(5)において、R1乃至R4はアルキル基であり、xは8乃至10の整数であることが好ましい。
具体的には、ジカルボン酸としてデカン二酸、ドデカン二酸が挙げられ、ジオールとしては、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが挙げられる。なお、ここでは直鎖脂肪酸、直鎖アルコールを例示したが、分岐構造を有していても構わない。また、R4は炭素数14乃至26のアルキル基であることが好ましい。
また、ジカルボン酸と縮合させるアルコールとしては、脂肪族アルコールが好ましい。具体的には、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール等が挙げられる。
また、ジオールと縮合させるカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸が好ましい。具体的には、脂肪酸としてミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸等が挙げられる。
3官能のエステルワックスとしては、グリセリン化合物と1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。4官能のエステルワックスとしては、ペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物、ジグリセリンとカルボン酸の縮合物が挙げられるが、トナーの保存性を考えた時に好ましくはペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物である。5官能のエステルワックスとしては、トリグリセリンと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。6官能のエステルワックスとしては、ジペンタエリスリトールと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物、テトラグリセリンと1官能の脂肪族カルボン酸の縮合物が挙げられる。
上述したカルボン酸としては、いずれも炭素数14乃至26の脂肪族カルボン酸であることが好ましい。具体的には、脂肪酸としてミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、トリコサン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられる。
本発明のトナーは、結着樹脂100質量部に対しエステルワックスを総量で3質量部以上25質量部以下含有していることが好ましい。エステルワックスの含有量が3質量部以上25質量部以下であると、トナー製造安定性に優れると共に、画像両末端の濃度薄も生じ難く好ましい。
本発明のトナーは、結晶性ポリエステルを含有することが好ましい。ここで結晶性ポリエステルとは、示差走査熱量(DSC)測定において、モジュレーティッドモードを用い、昇温時に吸熱ピークがあり、かつ降温時に発熱ピークがあるポリエステルをいう。DSC測定は、ASTM D 3417−99に準じて行う。例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いて測定される。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプル(ポリエステル)をアルミニウム製のパンに入れて測定し、対照として空のパンをセットして測定する。
<モジュレーティッドモードを用いる測定条件>
・20℃で1分間平衡を保つ。
・振幅1.5℃、周波数1/minのモジュレーションをかけながら、180℃まで2℃/分で昇温。
・180℃で10分間平衡に保つ。
・振幅1.5℃、周波数1/minのモジュレーションをかけながら、2℃/分で20℃まで降温。
本発明では、上記DSC測定より得られる吸熱曲線において、結晶性ポリエステルは50乃至130℃の範囲に吸熱ピークのピークトップを有することが好ましい。
結晶性ポリエステルの含有量は、製造安定性、保存安定性の観点からトナー粒子100質量部に対して2乃至50質量部が好ましい。
また、結晶性ポリエステルの含有量(α)とエステルワックスの含有量(β)の比(α/β)が0.3以上3.0以下であると、スキャナー汚れが良化する傾向があり、好ましい。これは、結晶性ポリエステルのような単純構造を持つポリエステルとエステルワックスの構造が近いため、一部相溶して存在するために熱定着時の揮発量が低減されていると推測している。0.3未満では結晶性ポリエステルの効果が薄く、3.0超だと保存性が低下し易いため、好ましくない。
上記結晶性ポリエステルは、結晶性を有する公知のポリエステルを使用でき、モノマー成分も特に限定されないが、好ましくは脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合させて得られる結晶性ポリエステルである。
脂肪族ジオールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、特に1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオールが好ましく例示される。
一方、脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、好ましくは直鎖状の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸の具体例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、1,10−ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、およびイタコン酸、ならびにこれらの酸無水物が含まれる。さらに、低級アルキルエステルを加水分解させて前記脂肪族ジカルボン酸として用いることもできる。これらの中でも、特にセバシン酸、1,10−ドデンカン二酸が好ましく例示される。
本発明における結晶性ポリエステルは、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望の結晶性ポリエステルを得ることができる。
また前記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、反応率が99%以上となるように適宜調整すれば良い。
本発明のトナーに用いる結晶性ポリエステルの重量平均分子量は2,000乃至20,000であることが好ましい。結晶性ポリエステルの数平均分子量が2,000未満の場合、トナー粒子製造時に結着樹脂に含まれる他の樹脂への相溶を生じ易く、20,000よりも大きいと、溶解性の低下に伴い、トナー内部への分散性が低下する傾向にある。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量はGPC法により求められる。具体的な測定手順としては、測定対象であるポリエステル0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解させる;得られた溶液を135℃において24時間振とう機で振とうする;得られた溶液を0.2μmフィルターで濾過する;得られた濾液を試料として、以下の分析条件にて測定する。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSK GMHHR−H HT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/min.
試料濃度:約0.3%
注入量:300μl
検出器:示差屈折率検出器 Shodex RI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂により作成した分子量校正曲線を使用する。標準ポリスチレン樹脂の例には、東ソー社製TSK スタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500が含まれる。
本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)は3μm以上12μm以下であることが好ましく、より好ましくは4μm以上9μm以下である。
本発明のトナーのガラス転移温度(Tg)は40から70℃であることが好ましい。ガラス転移温度が40℃未満では保存安定性が低下すると共に、長期使用においてトナー劣化しやすく、70℃よりも高いと定着性が悪化する。よって、定着性と保存安定性、そして現像性のバランスを考えるとトナーのガラス転移温度は40から70℃であることが好ましい。
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂を用いることができ、これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。この中でも特にスチレン系共重合体及びポリエステル樹脂が現像特性、定着性等の点で好ましい。
本発明のトナーには、帯電特性向上のために必要に応じて荷電制御剤を配合しても良い。荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、帯電スピードが速く、且つ一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が特に好ましい。更に、トナーを後述するような重合法を用いて製造する場合には、重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物が実質的にない荷電制御剤が特に好ましい。荷電制御剤のうち、ネガ系荷電制御剤として具体的な化合物として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリックスアレーン等が挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物等が挙げられる。
荷電制御剤をトナーに含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と、懸濁重合によりトナーの製造を行う場合には、造粒前に重合性単量体組成物中に荷電制御剤を添加する方法が一般的である。また、水中で油液滴を形成し重合を行っている最中、又は重合後に荷電制御剤を溶解、懸濁させた重合性単量体を加えることによりシード重合を行い、トナー表面を均一に覆うことも可能である。また、荷電制御剤として有機金属化合物を用いる場合は、トナー粒子にこれら化合物を添加し、シェアをかけ混合・撹拌することにより導入することも可能である。
これらの荷電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるものであり一義的に限定されるものではない。しかし、トナー粒子に内部添加する場合、好ましくは結着樹脂100質量部に対して0.1から10質量部の範囲で用いられる。また、トナー粒子に外部添加する場合、トナー100質量部に対し好ましくは0.005から1.0質量部である。
本発明のトナーは目的の色味に合わせた着色剤を含有する。本発明のトナーに用いられる着色剤としては公知の有機顔料又は染料、カーボンブラック、磁性粉体等のいずれも用いることができる。
本発明のトナーは、着色剤として磁性粉体を用いることが好ましい。磁性粉体は結着樹脂100質量部に対して50から130質量部を用いることが好ましい。磁性粉体はエステルワックスに対して親水性であるため、互いに混じりにくい。そのため、例えば水系媒体中でトナーを製造する際にはワックスの内包化を促進し、また、例えば粉砕法にてトナーを製造する際にはワックスの微分散を促進する。内包化すると熱定着時のワックス揮発量は抑制され、一方、微分散すると結着樹脂との相溶する速度が増すため、やはりワックス揮発量は抑制される傾向が見られる。磁性粉体の添加量が50質量部未満であると上記効果は乏しく、130質量部を超えると、定着性が悪化する懸念と共に全ての磁性粉体をトナー中に分散することが困難になる。
なお、トナー中の磁性粉体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置、TGA7を用いて測定することができる。測定方法は以下の通りである。窒素雰囲気下において昇温速度25℃/分で常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂量とし、残存質量を近似的に磁性粉体量とする。
本発明のトナーに磁性粉体を用いる場合、磁性粉体は、四三酸化鉄やγ−酸化鉄などの磁性酸化鉄を主成分とするものであり、リン、コバルト、ニッケル、銅、マグネシウム、マンガン、アルミニウム、珪素などの元素を含んでもよい。これら磁性粉体は、窒素吸着法によるBET比表面積が2から30m2/gであることが好ましく、3から28m2/gであることがより好ましい。また、モース硬度が5から7のものが好ましい。磁性粉体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形等の異方性の少ないものが、画像濃度を高める上で好ましい。
磁性粉体は、体積平均粒径が0.10から0.40μmであることが好ましい。一般に磁性粉体の粒径は小さい方が着色力は上がるものの磁性粉体が凝集しやすくなり、トナー中での磁性粉体の均一分散性が劣るものとなり好ましくない。また、体積平均粒径が0.10μm以下では磁性粉体自身が赤味を帯びた黒となるために、特にハーフトーン画像において赤味の目立つ画像となり、高品位な画像とは言えず好ましくない。一方、体積平均粒径が0.40μm以上ではトナーの着色力が不足すると共に、本発明の好適なトナーの製造方法である懸濁重合法(後述)においては均一分散が難しくなり好ましくない。
なお、磁性粉体の体積平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナー粒子を十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させ得られた硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍ないしは4万倍の拡大倍率の写真で視野中の100個の磁性粉体粒子径を測定する。そして、磁性粉体の投影面積に等しい円の相当径を基に、体積平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
本発明のトナーに用いられる磁性粉体は、例えば下記の方法で製造することができる。第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウム等のアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製した水溶液のpHをpH7以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粉体の芯となる種晶をまず生成する。
次に、種晶を含むスラリー状の液に前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。液のpHを5から10に維持しながら空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粉体を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性粉体の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて液のpHは酸性側に移行していくが、液のpHは5未満にしない方が好ましい。このようにして得られた磁性体を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性粉体を得ることができる。
また、本発明において重合法にてトナーを製造する場合、磁性粉体表面を疎水化処理することが非常に好ましい。乾式にて表面処理をする場合、洗浄・ろ過・乾燥した磁性粉体にカップリング剤処理を行う。湿式にて表面処理を行う場合、酸化反応終了後、乾燥させたものを再分散させる、又は酸化反応終了後、洗浄、濾過して得られた酸化鉄体を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させ、カップリング処理を行う。本発明においては、乾式法及び湿式法どちらも適宜選択出来る。
本発明における磁性粉体の表面処理において使用できるカップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。より好ましく用いられるのはシランカップリング剤であり、一般式(I)で示されるものである。
RmSiYn (I)
[式中、Rはアルコキシ基を示し、mは1から3の整数を示し、Yはアルキル基、ビニル基、エポキシ基、(メタ)アクリル基などの官能基を示し、nは1から3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
一般式(I)で示されるシランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。本発明においては、一般式(I)のYがアルキル基であるものが好ましく用いることが出来る。中でも好ましいのは、炭素数3以上6以下のアルキル基であり、特に好ましくは3又は4である。炭素数が3又は4であると磁性粉体表面の疎水化度が適度に低くなるため、水系媒体中で製造する場合、トナー粒子の外側近傍に分布しやすい。更に疎水化度が低いことで本発明のエステルワックスと相溶し難く、トナー内部に十分内包されることでワックスの揮発量を抑制しやすいと考えられる。
上記シランカップリング剤を用いる場合、単独で処理する、或いは複数の種類を併用して処理することが可能である。複数の種類を併用する場合、それぞれのカップリング剤で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
用いるカップリング剤の総処理量は磁性粉体100質量部に対して0.9から3.0質量部であることが好ましく、磁性粉体の表面積、カップリング剤の反応性等に応じて処理剤の量を調整することが重要である。
本発明では、磁性粉体以外に他の着色剤を併用しても良い。併用し得る着色剤としては、上記した公知の染料及び顔料の他、磁性又は非磁性の無機化合物が挙げられる。具体的には、コバルト、ニッケルなどの強磁性金属粒子、又はこれらにクロム、マンガン、銅、亜鉛、アルミニウム、希土類元素などを加えた合金。ヘマタイトなどの粒子、チタンブラック、ニグロシン染料/顔料、カーボンブラック、フタロシアニン等が挙げられる。これらもまた、表面を処理して用いることが好ましい。
本発明のトナーはコアシェル構造を有し、コア層はスチレンアクリル樹脂を含有してなり、シェル層は非晶質ポリエステル樹脂を含有してなることが好ましい。本発明において、コアシェル構造を有するとは、シェル層がコア層の表面を被覆している構造をいう。ここで、「被覆」とは、コア層の表面をシェル層でかぶせ包むことを意味する。
また、本発明のトナーは水系媒体中で製造することが好ましい。これは、本発明のトナーに必要なエステルワックスについて考えると、樹脂成分とエステルワックスが相溶する機会を十分に持たせられるためである。また、水系媒体中での製造に置いては、コア粒子にシェル用の超微粒子を付着させ、乾燥させることによりシェル層を形成させることが可能である。
本発明のトナーにおいて、コア層を構成するスチレンアクリル樹脂は、スチレンと(メタ)アクリル酸又はその誘導体を共重合することにより得られる樹脂であり、スチレンアクリル樹脂と称される公知のものを意味する。
上記スチレンアクリル樹脂を形成する重合性単量体としては、以下のものが例示できる。
スチレン系重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンの如きスチレン系重合性単量体が挙げられる。
アクリル系重合性単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体が挙げられる。
メタクリル系重合性単量体としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
なお、スチレンアクリル樹脂の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。結着樹脂全量に対するスチレンアクリル樹脂の含有量は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
また、結着樹脂は、上記非晶質ポリエステル樹脂及び上記スチレンアクリル樹脂以外に、本発明の効果に影響を与えない程度に、トナーの結着樹脂に用いられる公知の樹脂を含むことができる。
本発明のトナーは、公知のいずれの方法によっても製造することが可能である。まず、粉砕法により製造する場合は、例えば、結着樹脂、着色剤、エステルワックス、低融点物質、荷電制御剤等のトナーとして必要な成分及びその他の添加剤等をヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合器により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練してトナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行ってトナー粒子を得ることができる。分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては生産効率上、多分割分級機を用いることが好ましい。
粉砕工程は、機械衝撃式、ジェット式等の公知の粉砕装置を用いた方法により行うことができる。また、更に熱をかけて粉砕したり、補助的に機械的衝撃を加える処理を行ったりすることが好ましい。また、微粉砕(必要に応じて分級)されたトナー粒子を熱水中に分散させる湯浴法、熱気流中を通過させる方法などを用いても良い。
機械的衝撃力を加える手段としては、例えば川崎重工社製のクリプトロンシステムやターボ工業社製のターボミル等の機械衝撃式粉砕機を用いる方法が挙げられる。また、ホソカワミクロン社製のメカノフージョンシステムや奈良機械製作所製のハイブリダイゼーションシステム等の装置のように、高速回転する羽根によりトナーをケーシングの内側に遠心力により押しつけ、圧縮力、摩擦力等の力によりトナーに機械的衝撃力を加える方法が挙げられる。
本発明のトナーは、上述のように粉砕法によって製造することも可能であるが、本発明のトナーは分散重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、懸濁重合法等、水系媒体中でトナーを製造することが好ましい。特に、懸濁重合法は本発明の好適な物性を満たしやすく非常に好ましい。
懸濁重合法とは、重合性単量体及び着色剤(更に必要に応じて重合開始剤、架橋剤、荷電制御剤、その他の添加剤)を均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。その後、この重合性単量体組成物を分散剤を含有する連続層(例えば水相)中に適当な撹拌器を用いて分散し同時に重合反応を行なわせ、所望の粒径を有するトナーを得るものである。この懸濁重合法で得られるトナー(以後「重合トナー」ともいう)は、個々のトナー粒子形状がほぼ球形に揃っているため、帯電量の分布も比較的均一となるために画質の向上が期待できる。
本発明に関わる重合トナーの製造において、重合性単量体組成物を構成する重合性単量体としては以下のものが挙げられる。
重合性単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;その他のアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体が挙げられる。これらの単量体は単独で、又は混合して使用し得る。上述の単量体の中でも、スチレンを単独で、或いは他の単量体と混合して使用することがトナーの現像特性及び耐久性の点から好ましい。
本発明のトナーの重合法による製造において使用される重合開始剤としては、重合反応時における半減期が0.5から30時間であるものが好ましい。また、重合性単量体100質量部に対して0.5から20質量部の添加量で用いて重合反応を行うと、分子量5,000から50,000の間に極大を有する重合体を得、トナーに望ましい強度と適当な溶融特性を与えることができる。
具体的な重合開始剤例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート等の過酸化物系重合開始剤が挙げられる。
本発明のトナーを重合法により製造する際は、架橋剤を添加しても良く、好ましい添加量としては、重合性単量体100質量部に対して0.001から15質量部である。
ここで架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物;が単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
本発明のトナーを重合法で製造する方法では、一般に上述のトナー組成物等を適宜加えて、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機等の分散機に依って均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を、分散剤を含有する水系媒体中に懸濁する。この時、高速撹拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。重合開始剤添加の時期としては、重合性単量体中に他の添加剤を添加する時同時に加えても良いし、水系媒体中に懸濁する直前に混合しても良い。また、造粒直後、重合反応を開始する前に重合性単量体又は溶媒に溶解した重合開始剤を加えることもできる。
造粒後は、通常の撹拌機を用いて、粒子状態が維持され且つ粒子の浮遊・沈降が防止される程度の撹拌を行なえば良い。
本発明のトナーを製造する場合には、分散剤として公知の界面活性剤や有機分散剤・無機分散剤が使用できる。中でも無機分散剤は、有害な超微粉を生じ難く、その立体障害性により分散安定性を得ているので反応温度を変化させても安定性が崩れ難く、洗浄も容易でトナーに悪影響を与え難いため、好ましく使用できる。こうした無機分散剤の例としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイト等の燐酸多価金属塩、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、メタ硅酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機化合物が挙げられる。
これらの無機分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2から20質量部を使用することが望ましい。また、上記分散剤は単独で用いても良いし、複数種を併用してもよい。更に、0.001から0.1質量部の界面活性剤を併用しても良い。
これら無機分散剤を用いる場合には、そのまま使用しても良いが、より細かい粒子を得るため、水系媒体中にて該無機分散剤粒子を生成させて用いることができる。例えば、燐酸三カルシウムの場合、高速撹拌下、燐酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合して、水不溶性の燐酸カルシウムを生成させることができ、より均一で細かな分散が可能となる。この時、同時に水溶性の塩化ナトリウム塩が副生するが、水系媒体中に水溶性塩が存在すると、重合性単量体の水への溶解が抑制されて、乳化重合による超微粒トナーが発生し難くなるので、より好都合である。
界面活性剤としては、例えばドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等が挙げられる。
上記重合性単量体を重合する工程において、重合温度は40℃以上、一般には50から90℃の温度に設定される。この温度範囲で重合を行なうと、内部に封じられるべきエステルワックスが相分離により析出して内包化がより完全となる。
これは本発明のトナーは、スチレン誘導体を0.05ppm以上0.60ppm以下含有する。本発明におけるスチレン誘導体とは、スチレンのビニル基をOH基やアルデヒド基、カルボキシル基、エチル基等の官能基に置換した構造を持つ化合物を指す。具体的には、スチレン、エチルベンゼン、ベンズアルデヒド、フェノール、アセトフェノン、酢酸ベンジル等があるが、同様の骨格を持つ化合物であれば良く、これらに限定されない。スチレン誘導体量は、少なくともスチレン又はスチレン誘導体を含有する重合性単量体を重合し、更に蒸留工程を入れることで調整することが好ましい。蒸留方法としては公知の手法を用いることが出来る。例えば、減圧下で加熱する減圧蒸留法やピュアーな飽和水蒸気を吹き込む水蒸気蒸留法が挙げられる。スチレン誘導体量の調整しやすさの観点で、水蒸気蒸留法が好ましい。
得られた重合体粒子を公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥することによりトナー粒子が得られる。このトナー粒子に、後述するような無機微粉体を必要に応じて混合して該トナー粒子の表面に付着させることで、本発明のトナーを得ることができる。また、製造工程(無機微粉体の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉をカットすることも可能である。
本発明においてトナーは、流動化剤として個数平均1次粒径が4から80nm、より好ましくは6から40nmの無機微粉体がトナー粒子に添加されることも好ましい形態である。無機微粉体は、トナーの流動性改良及びトナー粒子の帯電均一化のために添加されるが、無機微粉体を疎水化処理するなどの処理によってトナーの帯電量の調整、環境安定性の向上等の機能を付与することも好ましい形態である。無機微粉体の個数平均1次粒径の測定法は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行う。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、酸化チタン、アルミナなどが使用できる。シリカ微粉体としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両者が使用可能である。しかし、表面及びシリカ微粉体の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2-等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。また乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン等他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、それらも包含する。
個数平均1次粒径が4から80nmの無機微粉体の添加量は、トナー粒子に対して0.1から3.0質量%であることが好ましく、添加量が0.1質量%未満ではその効果が十分ではなく、3.0質量%以上では定着性が悪くなる。無機微粉体の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
本発明において無機微粉体は疎水化処理された物であることが、トナーの環境安定性を向上させることができるため好ましい。トナーに添加された無機微粉体が吸湿すると、トナー粒子の帯電量が著しく低下し、帯電量が不均一になり易く、トナー飛散が起こり易くなる。無機微粉体の疎水化処理に用いる処理剤としては、シリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機硅素化合物、有機チタン化合物等の処理剤を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記処理剤の中でも、シリコーンオイルにより処理したものが好ましく、無機微粉体をシラン化合物で疎水化処理すると同時に又は処理した後に、シリコーンオイルにより処理したものがより好ましい。このような無機微粉体の処理方法としては、例えば第一段反応として、シラン化合物でシリル化反応を行いシラノール基を化学結合により消失させた後、第二段反応としてシリコーンオイルにより表面に疎水性の薄膜を形成することができる。
無機微粉体をシリコーンオイルで処理する方法としては、例えば、シラン化合物で処理された無機微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサー等の混合機を用いて直接混合する方法や、無機微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法が挙げられる。或いは、適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解又は分散させた後、無機微粉体を加えて混合し、溶剤を除去する方法でもよい。無機微粉体の凝集体の生成が比較的少ない点で噴霧する方法がより好ましい。
シリコーンオイルの処理量は、無機微粉体100質量部に対し1から40質量部、好ましくは3から35質量部が良い。シリコーンオイルの量が少なすぎると良好な疎水性が得られず、多すぎるとカブリ発生等の不具合が生ずる傾向がある。
本発明で用いられる無機微粉体は、トナーに良好な流動性を付与させる為に、窒素吸着によるBET法で測定した比表面積が20から350m2/g範囲内のものが好ましく、25から300m2/gのものがより好ましい。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置オートソーブ1(湯浅アイオニクス社製)を用いて試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて算出される。
本発明のトナーは、クリーニング性向上等の目的で、一次粒径が30nmを超える、より好ましくは一次粒径が50nm以上の無機又は有機の球状に近い微粒子を、更にトナー粒子に添加することも好ましい形態のひとつである。例えば球状シリカ粒子、球状ポリメチルシルセスキオキサン粒子、球状樹脂粒子等が好ましく用いられる。
本発明のトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内で更に他の添加剤、例えばフッ素樹脂粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末の如き滑剤粉末;酸化セリウム粉末、炭化硅素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末などの研磨剤;例えば酸化チタン粉末、酸化アルミニウム粉末などの流動性付与剤;ケーキング防止剤;または逆極性の有機微粒子及び無機微粒子を現像性向上剤として少量用いることもできる。これらの添加剤の表面を疎水化処理して用いることも可能である。
次に、本発明のトナーを好適に用いることのできる画像形成装置の一例を図1に沿って具体的に説明する。図1において、100は感光ドラムであり、その周囲に一次帯電ローラー117、現像スリーブ102を有する現像器140、転写帯電ローラー114、クリーナー116、レジスタローラー124等が設けられている。感光ドラム100は一次帯電ローラー117によって例えば−600Vに帯電される(印加電圧は例えば交流電圧1.85kVpp、直流電圧−620Vdc)。そして、レーザー発生装置121によりレーザー光123を感光体100に照射することによって露光が行われ、目的の画像に対応した静電潜像が形成される。感光ドラム100上の静電潜像は現像器140によって一成分トナーで現像されてトナー画像を得、トナー画像は転写材を介して感光体に当接された転写ローラー114により転写材上へ転写される。トナー画像を載せた転写材は搬送ベルト125等により定着器126へ運ばれ転写材上に定着される。また、一部感光体上に残されたトナーはクリーナー116によりクリーニングされる。
なお、ここでは磁性一成分ジャンピング現像の画像形成装置を示したが、本発明のトナーはトナーであっても非トナーであってもよく、一成分現像方式又は二成分現像現像方式のいずれに用いられるトナーであってもよい。更には、ジャンピング現像又は接触現像のいずれの方法に用いられるものであってもよい。
次に、本発明のトナーに係る各物性の測定方法に関して記載する。
(1)エステルワックスの融点
エステルワックスの融点はDSCにて測定した際の、吸熱ピークのピークトップ温度として求めることが出来る。測定はASTM D 3417−99に準じて行う。これらの測定には、例えばパーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。測定サンプルにはアルミニウム製のパンを用い、対照用に空パンをセットし測定する。
(2)トナーの平均粒径及び粒度分布
本発明のトナーの重量平均粒径及び粒度分布は、コールターカウンターTA−II型又はコールターマルチサイザー(コールター社製)等を用いた種々の方法で測定可能である。本発明においてはコールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、これに個数分布、体積分布を出力するインターフェイス(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続する。電解液としては1級塩化ナトリウムを用いて調製した1%NaCl水溶液を用いる。このような電解液として、例えばISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
測定手順は以下の通りである。上記電解液100から150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩を0.1から5mlを加え、更に測定試料を2から20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1から3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナー粒子の個数を測定して個数分布を算出する。それを基に重量平均粒径を求める。
(3)エステルワックスの分子量及び組成分布測定
エステルワックスの組成分布は、まずGPCにより分子量分布を測定し、その領域をGC(ガスクロマトグラフィー)又はMARDI TOF MASSにて測定することで得る。エステルワックスのGPCは下記条件で測定する。
(GPC測定条件)
カラム:GMH−HT30cm2連(東ソー社製)
温度 :135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン(0.1%アイオノール添加)
流速 :1.0m1/min
試料 :0.15%の試料を0.4ml注入
上の条件で測定し、試料の分子量算出にあたっては単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用する。さらに、Mark−Houwink粘度式から導き出される換算式でポリエチレン換算することによって算出される。
GPCにより得られたピークを解析し、エステルワックスの分子量分布の最大値と最小値を算出する。下記のようにGCやMARDI TOFF MASSで分析する際、このGPCで得られた最大値と最小値に挟まれた領域を、「エステルワックスの分子量分布の範囲」と見なす。本発明のエステルワックスは、GC,MARDI TOF MASSいずれによっても測定できるが、ガス化が困難な場合はMARDI,マトリックスとピークが重なってしまう場合はGC、といったように適宜選択する。両方の測定方法を述べる。
(GC測定条件)
エステルワックスの組成分布をガスクロマトグラフィー(GC)で測定する場合の具体的な条件を述べる。ガスクロマトグラフィー(GC)として、GC−17A(島津製作所製)を用いる。試料10mgをトルエン1mlに加え、80℃の恒温層にて20分加熱・溶解する。次いで、この溶解液1μlをオンカラムインジェクターを備えたGC装置に注入する。カラムは、0.5mm径×10m長のUltra Alloy−1(HT)を用いる。カラムは初め40℃から40℃/minの昇温スピードで200℃迄昇温させ、更に15℃/minで350℃迄昇温させ、次に7℃/minの昇温スピードで450℃迄昇温させる。キャリアガスは、Heガスを50kPaの圧力条件で流す。
ここで、ガス化成分をマススペクトロメーター(質量分析計)に導入し、GCにて得られる複数のピークの分子量を得ることで、上述した「エステルワックスの分子量分布の範囲」に入るピーク群を見出す。それらピーク群を解析し、ピーク面積の総和を算出する。また、GCで得たピークのうち、ピーク面積が最大のピークをエステルワックスの最多成分に由来するピークとし、全ピーク面積の総和に対して最多成分のピーク面積比を取ることで、エステルワックスの組成分布における最多成分の割合を得る。
化合物の同定は、別途構造が既知のエステルワックスを注入し同一の流出時間同士を比較することや、ガス化成分をマススペクトロメーターに導入し、スペクトル解析する事により行う事が出来る。
本発明における最多成分の分子量M1は、上記最多成分に由来するピークをマススペクトロメーターに導入し、解析することで求めることが出来る。M1に1.2を乗ずることでM1+20%の分子量、0.8を乗ずることでM1−20%の分子量を算出する。GCにて得られるスペクトルで得た複数のピークに関してマススペクトロメーターによる解析を行い、M1±20%の領域に入るピークを探し、解析してピーク面積の総和を算出する。この面積値の、上述した「エステルワックスの分子量分布の範囲」に入るピーク面積の総和に対する比を求めることで、M1±20%以内の成分比を得ることが出来る。
(MARDI TOF MASS測定条件)
エステルワックスの組成分布をMARDI TOF MASSにて測定する場合について述べる。選択するマトリックスは材料種によって最適なものを選び、マトリックスのピークと材料由来のピークが重ならないように配慮した。
MARDI TOF MASSで得られたピークのうち、上述した「エステルワックスの分子量分布の範囲」に入るピークを見出し、各ピーク強度の総和を算出する。それらピークの中で強度が最大のものを最多成分に由来するピークとする。エステルワックスの組成分布における最多成分の割合は、上記ピーク強度の和に対する、最多成分由来のピーク強度の比、で算出する。
化合物の同定は、別途構造が既知のエステルワックスをMARDI TOF MASSで得られたスペクトルを解析する事で行うことが出来る。
最多成分の分子量M1は、上記最多成分に由来するピークの分子量をスペクトル解析によって得る。また、M1に1.2を乗ずることでM1+20%の分子量、0.8を乗ずることでM1−20%の分子量を算出し、M1±20%の領域に入るピークの強度の和を算出する。この強度の和の、上述した「エステルワックスの分子量分布の範囲」に入るピーク強度の総和に対する比を求めることで、M1±20%以内の成分比を得ることが出来る。
(4)スチレン誘導体の総量の測定方法
本発明のスチレン誘導体の総量は、ヘッドスペース法によるトナーの加熱温度120℃における有機揮発成分分析を行い、トナー質量を基準としたトルエン換算の濃度を算出することで得る。測定条件を下記に示す。
測定は、マルチプルヘッドスペース抽出法を用いた。マルチプルヘッドスペース抽出方法は、所定の容積の密閉容器中に試料を収容し、密閉容器を必要に応じて加熱し、密閉容器中の気相を抜き出す(抽出する)方法である。ヘッドスペースサンプラーは、株式会社パーキンエルマージャパン製、HS40XL、GC/MSはサーモクエスト株式会社製、TRACE GC,TRACE MSを用いて行う。サンプルバイアルは、ガスクロマトグラフィーに接続される。
(i)ヘッドスペースサンプラー条件
・サンプル量:500mg
・サンプル温度:120℃
・ニードル温度:150℃
・トランスファーライン温度:180℃
・保持時間:60min
・加圧時間:0.25min
・注入時間:0.08min
(ii)GC条件
・カラム:HP5−MS(0.25mm,60m)
・カラム温度:40℃で3min間保持、40〜70℃の間は2.0℃/minで昇温、70〜150℃の間は5.0℃/minで昇温、150〜300℃の間は10.0℃/minで昇温
・スプリット比 50:1
(iii)器具
密閉容器として、株式会社パーキンエルマージャパン製、ヘッドスペース分析用ガラス製バイアルを使用する。
(iv)方法
1)標準試料の作製
まず、スチレン誘導体定量用の標準サンプルとして、トルエン濃度が1000ppmのアセトン溶液を調製し、この液の5μlを、10μl容積のマイクロシリンジを用いてガラス製バイアルに入れ、高温分析用セプタムによりすばやく密栓する。
2)トナー試料の作製
トナー500mgをガラス製バイアルに入れ、高温分析用セプタムにより密栓しサンプルとする。
(v)解析
該トルエン溶液の標準サンプルを定量的マルチプルヘッドスペース抽出方法を使用して測定し、トルエン0.005μl当りの総ピーク面積を求める(なお、GCの感度は日間変動があるため、トルエン化合物0.005μl当りのピーク面積は測定毎に調べておく必要がある)。なお、ガス化成分をマススペクトロメーター(質量分析計)に導入し、得られたピークがトルエン由来のピークであることを確認しておく。次に、トナーをトルエンと同様に測定し、マススペクトロメーターに導入し、スチレン誘導体(スチレンのビニル基をOH基やアルデヒド基、カルボキシル基、エチル基等の官能基に置換した構造を持つ化合物)由来のピークを特定し、ピーク面積の総和を求める。トルエン標準サンプルのピーク面積から比例計算により測定サンプル中のスチレン誘導体量を算出し、トナー中のスチレン誘導体量を得る。
以下、本発明を製造例及び実施例により更に具体的に説明するが、これらは本発明をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数は全て質量部を示す。
以下にエステルワックスの製造例について説明する。本発明では、エステル化合物を製造し、それらを所定の配合率で溶融混合することで、エステルワックスを得た。
<エステル化合物D−22,12,14,16,17,18,19,20,24,26の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン210モル部、ドコサン酸(ベヘン酸)180モル部、ジペンタエリスリトール30モル部、さらにp−トルエンスルホン酸7モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物D−22を得た。
同様に、ドコサン酸をそれぞれ別種のモノカルボン酸に変更し、エステル化合物を得た。ドコサン酸をドデカン酸(ラウリン酸)に変更してエステル化合物D−12を、テトラデカン酸(ミリスチン酸)に変更してエステル化合物D−14を、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)に変更してD−16を、ヘプタデカン酸に変更してD−17を得た。更に、ドコサン酸をオクタデカン酸(ステアリン酸)に変更してD−18を、ノナデカン酸に変更してD−19を、エイコサン酸(アラキジン酸)に変更してD−20を、テトラコサン酸に変更してD−24を、ヘキサコサン酸(セロチン酸)に変更してD−26を得た。
<エステル化合物P−22,16,20,24の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン210モル部、ドコサン酸(ベヘン酸)168モル部、ペンタエリスリトール42モル部、さらにp−トルエンスルホン酸7モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物P−22を得た。
同様に、ドコサン酸をそれぞれ別種のモノカルボン酸に変更し、エステル化合物を得た。ドコサン酸をヘキサデカン酸(パルミチン酸)に変更してP−16を、エイコサン酸(アラキジン酸)に変更してP−20を、テトラコサン酸に変更してP−24を得た。
<エステル化合物S−22,20,24の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、ドコサノール(ベヘニルアルコール)200モル部、デカン二酸(セバシン酸)100モル部、さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物S−22を得た。
同様に、ドコサノールをそれぞれ別種のアルコールに変更し、エステル化合物を得た。ドコサノールをエイコサノールに変更してS−20を、テトラコサノールに変更してS−24を得た。
<エステル化合物N−22,20,24の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、ドコサン酸(ベヘン酸)200モル部、1,9−ノナンジオール100モル部、さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物N−22を得た。
同様に、ドコサン酸をそれぞれ別種のモノカルボン酸に変更し、エステル化合物を得た。ドコサン酸をエイコサン酸に変更してN−20を、テトラコサン酸に変更してN−24を得た。
<エステル化合物B−22,20,24の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン200モル部、ドコサン酸(ベヘン酸)100モル部、ドコサノール(ベヘニルアルコール)100モル部、さらにp−トルエンスルホン酸7モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物B−22を得た。
同様に、ドコサン酸をそれぞれ別種のモノカルボン酸に変更し、エステル化合物を得た。ドコサン酸をエイコサン酸に変更してB−20を、テトラコサン酸に変更してB−24を得た。
<エステル化合物DD−22,20,24の製造>
ジムロート、Dean−Stark水分離器、温度計を装着した反応装置にベンゼン300モル部、ドコサノール(ベヘニルアルコール)200モル部、ドデカン二酸100モル部、さらにp−トルエンスルホン酸10モル部を加え十分撹拌し溶解後、6時間還流せしめた後、水分離器のバルブを開け、共沸留去を行った。共沸留去後炭酸水素ナトリウムで十分洗浄後、乾燥しベンゼンを留去した。得られた生成物を再結晶後、洗浄し精製してエステル化合物DD−22を得た。
同様に、ドコサノールをそれぞれ別種のアルコールに変更し、エステル化合物を得た。ドコサノールをエイコサノールに変更してDD−20を、テトラコサノールに変更してDD−24を得た。
<エステルワックス1の製造>
D−20,D−22,D−24を表1に記載の割合で溶融混合し、冷却した後に解砕し、エステルワックス1を得た。表1にGS−MASSで測定した組成割合、M1±20%を満たす割合、エステルワックスの融点も合せて示す。
<エステルワックス2乃至17の製造>
エステル化合物を表1に記載の割合で溶融混合し、冷却した後に解砕し、エステルワックス1を得た。表1にGS−MASSで測定した組成割合、M1±20%を満たす割合、エステルワックスの融点も合せて示す。
<非晶質ポリエステル樹脂の製造>
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールA−PO2モル付加物とビスフェノールA−EO2モル付加物、そしてテレフタル酸を50モル、50モル、100モルのモル比で入れ、230℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら10時間反応させた。この際、触媒としては、チタン系触媒(チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート))を、酸及びアルコールのモノマー総量100部に対して、0.25部添加した。
次いで20mmHgの減圧下に反応させ、酸価が0.5(mgKOH/g)以下になった時点で180℃に冷却し、無水トリメリット酸を酸及びアルコールのモノマー総量100質量部に対して5.0質量部添加し、常圧密閉下2時間反応後取り出し、室温まで冷却後、粉砕して非晶質ポリエステル樹脂1を得た。得られた非晶質ポリエステル樹脂のガラス転移温度は68℃、ピーク分子量は10000であった。
<結晶性ポリエステル樹脂1の製造>
加熱乾燥した三口フラスコに、1,10−ドデカン二酸250部、1,9−ノナンジオール150部、触媒としてジブチル錫オキサイド0.4部を投入した。減圧操作により、三口フラスコ内の空気を窒素に置換して不活性雰囲気下として、機械撹拌により180℃、5時間撹拌し、且つ還流して反応を進行させた。反応の間、反応系内において生成した水を留去した。その後、減圧下において、230℃まで徐々に昇温し、3時間撹拌して反応を停止して結晶性ポリエステル樹脂1を得た。GPCにて分子量を確認したところ、重量平均分子量は25000、DSCによる融点は73.6℃であった。
<結晶性ポリエステル樹脂2の製造>
加熱乾燥した三口フラスコに、セバシン酸:200部、1,6−ヘキサンジオール:120部、触媒としてテトラブトキシチタン0.045部を投入した。三口フラスコ内の空気を窒素に置換して不活性雰囲気下として、機械撹拌により180℃、5時間撹拌し、且つ還流して反応を進行させた。反応の間、反応系内において生成した水を留去した。その後、減圧下において、200℃まで徐々に昇温し、3時間撹拌して反応を停止して結晶性ポリエステル樹脂2を得た。GPCにて分子量を確認したところ、重量平均分子量は15000であり、DSCによる融点は88℃であった。
<磁性粉体1の製造>
(未処理磁性体の製造)
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.0当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対してケイ素元素換算で1.5質量%のケイ酸ソーダを混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液をpH9.0に維持しながら、空気を吹き込み、80℃以上90℃以下で酸化反応を行い、種晶を生成させるスラリー液を調製した。次いで、このスラリー液にアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し1.0当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた。その後、スラリー液をpH8.0に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。このスラリーをろ過と洗浄を行った後、再びろ過をした。その後、解砕、乾燥を行い、未処理磁性体を得た。
(シラン化合物1の調製)
イソブチルトリメトキシシラン20質量部をイオン交換水80質量部に対して攪拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH5.5、温度40℃に保持し、ディスパー翼を用いて0.46m/sで2時間分散させて加水分解を行い、加水分解物を含有する水溶液であるシラン化合物1を得た。
(磁性粉体1の製造)
未処理磁性体100質量部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))に入れ、34.5m/sで分散しながら、シラン化合物1を3.8質量部噴霧して加えた。そのまま10分間分散させた後、シラン化合物1が吸着した磁性体を取り出し、160℃で2時間静置して乾燥すると共に、シラン化合物の縮合反応を進行させた。その後、目開き100μmの篩を通過させて磁性粉体1を得た。
<磁性粉体2の製造>
(未処理磁性体の製造)
磁性粉体1と同様に製造した。
(シラン化合物2の調製)
n−プロピルトリメトキシシラン20質量部をイオン交換水80質量部に対して攪拌しながら滴下した。その後、この水溶液をpH4.2、温度60℃に保持し、ディスパー翼を用いて0.46m/sで1時間分散させて加水分解を行い、加水分解物を含有する水溶液であるシラン化合物2を得た。
(磁性粉体2の製造)
使用するシラン化合物をシラン化合物1から2に変更し、添加量を4.5質量部とすること以外は同様に処理を行い、磁性粉体2を得た。
<磁性粉体3の製造>
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.1当量の苛性ソーダ溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.12質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.55質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。水溶液のpHを7.5とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(苛性ソーダのナトリウム成分)に対し1.1当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。濾過、洗浄した後、この含水スラリー液を一旦取り出した。この時、含水サンプルを少量採取し、含水量を計っておいた。次に、この含水サンプルを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整する。そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランを磁性酸化鉄100部に対し1.5部(磁性酸化鉄の量は含水サンプルから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行うと共にスラリーを循環させながらピンミルにて分散を行い、分散液のpHを8.6にして疎水化処理を行った。得られた疎水性磁性粉体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性粉体3を得た。
<トナー1の製造>
イオン交換水720部に0.1M−Na3PO4水溶液450部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 78.0部
・n−ブチルアクリレート 22.0部
・ジビニルベンゼン 0.48部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・磁性粉体1 90.0部
・非晶質ポリエステル樹脂 5.0部
・結晶性ポリエステル樹脂1 5.0部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス1を15部添加混合し、溶解した後に重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)4.5部を溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で5時間反応させることで重合体分散液を得た。その後撹拌を停止し重合体分散液をキャリアーガス投入管、ベント配管及びベント配管から出たガスを冷却、凝縮するコンデンサーを具備する蒸留容器に投入した。重合体分散液に対し、100部/hr(スチーム圧力120kPa)のピュアー飽和水蒸気を導入したところ、飽和水蒸気の導入開始から10分後、ベント配管よりコンデンサーを介して留分が出始めた。留分が出始めた時点を開始点とし、水蒸気蒸留を行った。そこから5時間、蒸留を継続した後、ピュアー飽和水蒸気の導入を止め、冷却した。その後、塩酸を加えて洗浄した後に濾過及び解砕・乾燥してトナー粒子1を得た。
このトナー粒子1を100部と、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ0.8部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径(D4)が7.8μmのトナー1を得た。トナー1をヘッドスペース法により有機揮発成分分析したところ、スチレン誘導体の総量は0.25ppmであった。トナー1の物性を表2に示す。
<トナー2の製造>
トナー1の製造において、表2に示すようなエステルワックス、結晶性ポリエステルの配合に変更したこと以外は、トナー1の製造と同様にしてトナー2を得た。トナー2の組成、物性を表2に示す。
<トナー3の製造>
トナー1の製造において、表2に示すようなエステルワックス、結晶性ポリエステルの配合とし、使用する磁性粉体を磁性粉体2に変更したこと以外は、トナー1の製造と同様にしてトナー3を得た。トナー3の組成、物性を表2に示す。
<トナー4の製造>
トナー1の製造において、結晶性ポリエステルを使用しなかった事以外は、トナー1の製造と同様にしてトナー4を得た。トナー4の組成、物性を表2に示す。
<トナー5の製造>
トナー4の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更し、蒸留時間を12時間としたこと以外は、トナー4の製造と同様にしてトナー5を得た。トナー5の組成、物性を表2に示す。
<トナー6の製造>
トナー4の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更し、蒸留時間を2.5時間としたこと以外は、トナー4の製造と同様にしてトナー6を得た。トナー6の組成、物性を表2に示す。
<トナー7の製造>
トナー6の製造において、使用する磁性粉体を磁性粉体1から磁性粉体3に変更すること以外は、トナー6の製造と同様にしてトナー7を得た。トナー7の組成、物性を表2に示す。
<トナー8の製造>
トナー7の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更し、蒸留時間を5時間としたこと以外は、トナー7の製造と同様にしてトナー8を得た。トナー8の組成、物性を表2に示す。
<トナー9から12の製造>
トナー8の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更したこと以外は、トナー8の製造と同様にしてトナー9から12を得た。トナー9から12の組成、物性を表2に示す。
<トナー13の製造>
トナー8の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更し、蒸留時間を12時間としたこと以外は、トナー8の製造と同様にしてトナー13を得た。トナー13の組成、物性を表2に示す。
<トナー14及び15の製造>
トナー8の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更し、蒸留時間を2.5時間としたこと以外は、トナー8の製造と同様にしてトナー14及び15を得た。トナー14及び15の組成、物性を表2に示す。
<トナー16の製造>
トナー15の製造において、用いる磁性粉体の量を90.0質量部から50.0質量部に変更すること以外は、トナー15の製造と同様にしてトナー16を得た。トナー16の組成、物性を表2に示す。
<トナー17の製造>
トナー15の製造において、用いる磁性粉体の量を90.0質量部から130.0質量部に変更すること以外は、トナー15の製造と同様にしてトナー17を得た。トナー17の組成、物性を表2に示す。
<トナー18の製造>
トナー15の製造において、用いる磁性粉体の量を90.0質量部から30.0質量部に変更すること以外は、トナー15の製造と同様にしてトナー18を得た。トナー18の組成、物性を表2に示す。
<比較用トナー1から4の製造>
トナー4の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更し、蒸留時間を18時間とし、更に乾燥後に40℃に保温したまま真空乾燥を24時間行ったこと以外は、トナー4の製造と同様にして比較用トナー1から4を得た。比較用トナー1から4の組成、物性を表2に示す。
<比較用トナー5の製造>
トナー11の製造において、蒸留時間を1時間としたこと以外は、トナー11の製造と同様にして比較用トナー5を得た。比較用トナー5の組成、物性を表2に示す。
<比較用トナー6の製造>
トナー11の製造において、蒸留時間を1.5時間としたこと以外は、トナー11の製造と同様にして比較用トナー6を得た。比較用トナー6の組成、物性を表2に示す。
<比較用トナー7の製造>
トナー11の製造において、用いるエステルワックスをエステルワックス4;7.5部、エステルワックス8;7.5部に変更したこと以外は、トナー11の製造と同様にして比較用トナー7を得た。比較用トナー7の組成、物性を表2に示す。なお、比較用トナー7におけるエステルワックスの最多成分の割合は30%であり、M1±20%以内の成分は50%であった。
<比較用トナー8から11の製造>
トナー11の製造において、表2に示すようなエステルワックスの配合に変更したこと以外は、トナー11の製造と同様にして比較用トナー8から11を得た。比較用トナー8から11の組成、物性を表2に示す。
<比較用トナー12の製造>
イオン交換水600部に0.1M−Na3PO4水溶液500部を投入して60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液70部を添加して、分散剤を含む水系媒体を得た。
・スチレン 78.0部
・2−エチルヘキシルアクリレート 22.0部
・ジビニルベンゼン 0.10部
・モノアゾ染料の鉄錯体(T−77:保土ヶ谷化学社製) 1.5部
・カーボンブラック 7.0部
・非晶質ポリエステル樹脂 2.0部
上記処方をアトライター(三井三池化工機(株))を用いて均一に分散混合して単量体組成物を得た。この単量体組成物を60℃に加温し、そこにエステルワックス12を10部添加混合し、溶解した後に重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)8.0部を溶解した。
上記水系媒体中に上記単量体組成物を投入し、60℃、N2雰囲気下においてTK式ホモミキサー(特殊機化工業(株))にて12000rpmで10分間撹拌し、造粒した。その後パドル撹拌翼で撹拌しつつ70℃で10時間反応させることで重合体分散液を得た。その後、撹拌を停止し重合体分散液をキャリアーガス投入管、ベント配管及びベント配管から出たガスを冷却、凝縮するコンデンサーを具備する蒸留容器に投入した。重合体分散液に対し、100部/hr(スチーム圧力120kPa)のピュアー飽和水蒸気を導入したところ、飽和水蒸気の導入開始から10分後、ベント配管よりコンデンサーを介して留分が出始めた。留分が出始めてから1時間後、ピュアー飽和水蒸気の導入を止め、冷却した。40℃まで冷却し、塩酸を加えて洗浄した後に濾過及び解砕・乾燥して比較用トナー粒子12を得た。このトナー粒子12を100部と、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ0.8部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、重量平均粒径(D4)が6.5μmの比較用トナー12を得た。比較用トナー12の物性を表2に示す。
<比較用トナー13から15の製造>
(重合体微粒子Aの製造方法)
下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
[モノマー類]
スチレン 80.0部
n−ブチルアクリレート 20.0部
アクリル酸 3.0部
ブロモトリクロロメタン 0.5部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ジビニルベンゼン 0.15部
[乳化剤水溶液]
10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 4.0部
脱塩水 100.0部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 9.0部
8%アスコルビン酸水溶液 9.0部
重合反応終了後冷却し、重合体微粒子分散液Aを調製した。
(重合体微粒子Bの製造方法)
下記のモノマー類・乳化剤水溶液の混合物を重合開始から5時間かけて、開始剤水溶液を重合開始から6時間かけて添加し、さらに30分保持した。
[モノマー類]
スチレン 80.0部
n−ブチルアクリレート 20.0部
アクリル酸 3.0部
ブロモトリクロロメタン 0.5部
2−メルカプトエタノール 0.01部
ジビニルベンゼン 0.80部
[乳化剤水溶液]
10%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 4.0部
脱塩水 100.0部
[開始剤水溶液]
8%過酸化水素水溶液 9.0部
8%アスコルビン酸水溶液 9.0部
重合反応終了後冷却し、重合体微粒子Bを調製した。
(ワックス分散液1の製造方法)
エステルワックス13を25.0部、アニオン界面活性剤(ネオゲンSC 第一工業製薬社製)2.5部、脱塩水100.0部を90℃に加熱しディスパーで15分撹拌した。次いで、この分散液をホモジナイザー(15ーM−8PA型 ゴーリン社製)を用い高圧剪断95℃,4900kPa(50kg/cm2)の条件で乳化し、ワックス分散液1を得た。
(ワックス分散液2及び3の製造方法)
ワックス分散液1の製造において、使用するエステルワックスをエステルワックス14に変更したこと以外はワックス分散液1と同様にして、ワックス分散液2を製造した。また、使用するエステルワックスをエステルワックス15とすることでワックス分散液3を製造した。
(着色剤分散液の製造方法)
脱塩水100.0部に、カーボンブラックを25.0部、及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル6.0部を加え、ボールミルにて分散し、磁性粉体分散液を得た。
(帯電制御剤微粒子分散液の製造方法)
脱塩水100.0部に、帯電制御剤4,4’−メチレンビス〔2−〔N−(4−クロロフェニル)アミド〕−3−ヒドロキシナフタレン〕25.0部、及びアルキルナフタレンスルホン酸塩5.0部の存在下にボールミルにて分散し、帯電制御剤微粒子分散液を得た。
(比較用トナー13の製造方法)
・重合体微粒子A分散液 410.0部(固形分として)
・着色剤分散液 40.0部(固形分として)
・帯電制御剤微粒子分散液 1.0部(固形分として)
以上を撹拌装置、冷却管、温度計を装着した凝集熟成用の反応容器に投入し撹拌した。
この混合液を1.0N水酸化カリウム水溶液を用いてpH=5.1に調整した。
上記混合液に凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液180.0部を20分間で滴下し、加熱用オイルバス中で反応容器内を撹拌しながら50℃まで加熱し、50℃で1時間保持し、さらに55℃まで昇温し1時間保持して(重合体微粒子+着色剤+帯電制御剤微粒子)の凝集体を作製した。
上記凝集体分散液中に、
・ワックス分散液1 76.5部(固形分として)
を添加し、凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液500.0部を滴下し、上記同様の製造方法で凝集体を作製した。
さらに、上記凝集体分散液中に、
・重合体微粒子B分散液 50.0部(固形分として)
を添加し、凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液500.0部を滴下し、上記同様の製造方法で凝集体を作製した。
最後に上記凝集体分散液中に、
・重合体微粒子B分散液 35.0部(固形分として)
を添加し、凝集剤として、20.0%塩化ナトリウム水溶液500.0部を滴下し、上記同様の製造方法で、凝集体を作製した。そこへアニオン性界面活性剤(第一工業製薬製:ネオゲンSC)5.0部を添加した後、反応容器を密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら95℃まで加熱し、5時間保持した。上記スラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄した後、スラリーをキャリアーガス投入管、ベント配管及びベント配管から出たガスを冷却、凝縮するコンデンサーを具備する蒸留容器に投入した。重合体分散液に対し、100部/hr(スチーム圧力120kPa)のピュアー飽和水蒸気を導入したところ、飽和水蒸気の導入開始から10分後、ベント配管よりコンデンサーを介して留分が出始めた。留分が出始めてから1時間後、ピュアー飽和水蒸気の導入を止め、冷却、乾燥をして比較用トナー粒子13を得た。
この比較用トナー粒子13を100部と、個数平均1次粒径12nmの疎水性シリカ0.8部をヘンシェルミキサー(三井三池化工機(株))で混合し、比較用トナー13を得た。比較用トナー13の物性を表2に示す。
(比較用トナー14の製造方法)
ワックス分散液1をワックス分散液2へ変更する以外は、比較用トナー13と同様にして比較用トナー14を得た。比較用トナー14の物性を表2に示す。
(比較用トナー15の製造方法)
ワックス分散液1をワックス分散液3へ変更する以外は、比較用トナー13と同様にして比較用トナー15を得た。比較用トナー15の物性を表2に示す。
エステルワックスや結晶性ポリエステルの添加部数は、結着樹脂100部に対する量を示す。
<実施例1>
(画像形成装置)
画像形成装置としてLaserJET P2055dnを用い、トナー1を使用し、常温常湿環境下(23℃/60%RH)にて印字率が4%の横線を連続モードで3000枚画出し試験を行った。間欠モードは1枚画出し毎に空回転が入るので、定着器の温度が常に高く保たれ、ワックス成分の揮発には厳しい評価モードである。なお、記録媒体としてはA4の75g/m2の紙を使用した。同様の画出し試験を更に繰り返し、計2回画出し試験を行った。
画出し試験終了後、ベタ画像部を形成し、このベタ画像の濃度を測定した。更に、画像両端の濃度低下が生じていないかをハーフトーン画像にて確認した。画像中央部の反射濃度が0.60乃至0.65となるように現像バイアスを設定して画出しし、画像中央部と端部の濃度差を確認した。また、ベタ黒画像も同様な条件で画出しして画像濃度を測定した。なお、画像濃度はマクベス反射濃度計(マクベス社製)にて測定した。
また、同様の試験を低温低湿環境下(15℃/10%RH)でも実施した。低温低湿環境では、揮発したワックス成分の凝固が促進されるため、厳しい評価モードである。
その結果、いずれの評価においても画像両端部の濃度低下は生じておらず、高濃度の画像を得ることができた。評価結果を表3に示す。
<実施例2から18>
実施例1にて、トナー1をトナー2から18に変更したこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーにおいても耐久試験前後で画像濃度が高く、画像両末端の濃度低下は小さかった。評価結果を表3に示す。
<比較例1から15>
実施例1にて、トナー1を比較用トナー1から15に変更したこと以外は実施例1と同様に画出し試験を行った。その結果、いずれのトナーにおいても耐久試験前後で画像濃度が高かったが、画像両末端の濃度低下は増大していた。評価結果を表3に示す。