JP6154126B2 - 検査キットおよび検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、デングウイルスによる感染を、感染の有無ばかりでなく感染したデングウイルスの血清型をも検査することができる検査キットおよび検査方法に関するものである。
デングウイルスによる熱帯性感染症であるデングウイルス感染症は、デング熱(DF)・デング出血熱およびデングショック症候群(DHF/DSS)に分類され、地球の温暖化やヒト、物資の移動範囲拡大、時間短縮等により、その患者数、発症地域が近年増加の一途を辿っている。
WHO(世界保健機構)の推定に拠れば、熱帯・亜熱帯に居住する約25億人のうち、毎年5000万人の人々がデングウイルスに感染し、50万人のDHF/DSS患者を含め800万人程度が入院をし、小児を主として毎年3万人前後の人々が死亡している。本邦においても、海外旅行者の増加に伴い輸入感染症として年々増加している。しかしながら、このデングウイルス感染症に対する、治療薬およびワクチンは、未だ開発されていないのが実情である。
WHOは、この世界的な感染者数、および感染地域の拡大に留意して、デングウイルス感染症を、Neglected Tropical Diseases(顧みられない熱帯性疾患)の1つに取り上げ、治療薬、ワクチンの開発とともに、その感染拡大の予防、防止に努め、発症患者動向、ウイルスの種別(血清型)等の情報報告を各国に求めている。
ここで、デングウイルスは、日本脳炎ウイルス、西ナイルウイルス、黄熱病ウイルス等と同様にフラビウイルス科フラビウイルス属に属し、1型から4型の4種類の血清型があり、ヤブ蚊属のネッタイシマカやヒトスジシマカを媒介とし、ヒト(感染者)、蚊、ヒトにより感染が拡大することが知られている。
また、4種類の血清型デングウイルスのうち、ある1つの血清型デングウイルスに感染すると、多くは不顕性に経過するが、15〜20%の割合でデング感染症が発症すると言われている。さらに、この1つの血清型デングウイルスによる感染後に、別の血清型デングウイルスに感染すると、致死率が15〜20%に増加する憎悪なデング出血熱/デングショック症候群(DHF/DSS)を発症しやすくなると言われている。
しかしながら、このDHF/DSSの発症による高い致死率も早期に診断し、対処療法であるが適切な治療を行うことで半分以下に低減させることが可能になると言われている。
そのため、デングウイルス感染症の感染拡大防止には、ウイルスの血清型を含めた発生動向を早期に把握することが必須であり、さらに死亡率の低下には、1型から4型の4種類の血清型を含めた正確な早期診断が必要不可欠である。
ところで、近年、感染症に対する感染の有無を、簡便、迅速でかつ安価に検査することができる方法として、抗原−抗体反応を利用した免疫クロマト方式を用いた検査方法が広く用いられている(例えば、特許文献1参照。)。
デングウイルス感染症の感染の有無についても、この免疫クロマト方式を用いた検査方法が適用されているが、この場合、デングウイルスの感染の有無を知ることができるものの、前述した1型から4型の4種類の血清型のうち、何れの血清型に感染しているかについては知ることができないのが実情である。
特表2003−511697号公報
本発明の目的は、デングウイルスによる感染の有無の検査時に、感染の有無ばかりでなく、感染したデングウイルスの血清型をも検査することができる検査キットおよび検査方法を提供することにある。
このような目的は、下記(1)〜()の本発明により達成される。
(1) デングウイルスによる感染の有無、および感染したデングウイルスの血清型を検査するのに用いられる検査キットであって、
前記デングウイルスを含有する検査試料を展開する展開層と、該展開層の途中に設けられた認識部と、前記検査試料が前記展開層を展開する展開方向を基準としたとき、前記展開層の上流側の縁部に接触するように配置された試薬部とを有し、
前記認識部は、それぞれ別個に形成された、血清型が1型のデングウイルスを特異的に認識する第1の特異抗体が固定化された第1の認識部位と、2型のデングウイルスを特異的に認識する第2の特異抗体が固定化された第2の認識部位と、3型のデングウイルスを特異的に認識する第3の特異抗体が固定化された第3の認識部位と、4型のデングウイルスを特異的に認識する第4の特異抗体が固定化された第4の認識部位とを有しており、
前記試薬部は、前記デングウイルスを特異的に認識する機能を有し、かつ標識物質で標識化されている標識化抗体を含み、
第1〜第4の前記特異抗体は、1型〜4型の前記デングウイルスがそれぞれ有する内部抗原の一部を特異的に認識するものであり、かつ、前記標識化抗体は、前記デングウイルスが有する前記内部抗原における、前記デングウイルスの1型〜4型の血清型に共通の抗原決定部位を認識するものであることを特徴とする検査キット。
) 前記内部抗原は、エンベロープが有するEタンパクである上記()に記載の検査キット。
) 前記試薬部の上流側の縁部に接触するように配置された試料供給部と、該試料供給部上に積層するように配置された血球ろ過部とを有し、前記検査試料が全血であり、
前記血球ろ過部を介して前記試料供給部に前記検査試料を供給することにより、前記検査試料に含まれる血球成分が除去されるよう構成されている上記(1)または(2)に記載の検査キット。
) 上記(1)ないし()のいずれかに記載の検査キットを用いて、デングウイルスによる感染の有無、および感染したデングウイルスの血清型を検査する検査方法であって、
前記検査試料を前記展開層に供給する第1の工程と、
前記検査試料が前記展開層を展開する際に、前記展開層の途中に設けられた前記認識部が備える第1〜第4の前記認識部位のうちいずれの部位に、前記デングウイルスが捕捉されているかを確認する第2の工程とを有することを特徴とする検査方法。
本発明によれば、デングウイルスによる感染の有無を検査できるばかりでなく、デングウイルスの血清型である1型〜4型の4種類のうち、何れの血清型のデングウイルスに感染したかをも識別することができる。
その結果、ウイルスの血清型を含めた早期診断を行い、適切な治療方針を立てることができるため、デング出血熱/デングショック症候群(DHF/DSS)の発症、さらにはDHF/DSS発症に起因する致死率を低減させることができる。
本発明の検査キットの実施形態を示す図(図1(a)は平面図、図1(b)は縦断面図)である。 本発明の検査キットが備える免疫クロマト試験片の実施形態を示す図(図2(a)は斜視図、図2(b)は分解斜視図)である。
以下、本発明の検査キットおよび検査方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の検査キットの実施形態を示す図(図1(a)は平面図、図1(b)は縦断面図)、図2は、本発明の検査キットが備える免疫クロマト試験片の実施形態を示す図(図2(a)は斜視図、図2(b)は分解斜視図)である。なお、説明の都合上、以下の説明では、図1(a)、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
まず、本発明の検査キットについて説明する。
本発明の検査キットは、免疫(イムノ)クロマト方式を用いて、デングウイルスの感染の有無を検査するために用いられるものであり、さらに、この感染の有無ばかりでなく、感染したデングウイルスの1型から4型の4種類の血清型についても検査することができるものである。
ここで、免疫クロマト方式とは、一般的に、以下のような工程を経て、検査試料(検体)中における被測定物(本発明では、「デングウイルス」。)の有無を判別する方法である。すなわち、1:まず、被測定物(本発明では、「デングウイルス」。)を特異的に認識する標識化抗体に、検査試料(検体)を接触させ、2:次いで、この検査試料を展開層において毛細管現象により展開し、この展開の際に、展開層の途中に固定化した被測定物を特異的に認識する特異抗体で、被測定物と前記標識化抗体との複合体を捕捉し、3:この捕捉された複合体が有する標識化抗体を観察することにより被測定物の有無を判別する方法である。
かかる方法によれば、血液(全血)や尿のような検査試料を、展開層を備える試験片に滴下する等の簡単な操作で、検査試料中に含まれる被測定物を検出(分析)することができる。したがって、免疫クロマト方式は、近年、検査試料に含まれる被測定物を、簡便かつ迅速に検出するのに非常に有用な手法として用いられている。
以下、この免疫クロマト方式を用いて、デングウイルスの感染の有無、さらには、感染したデングウイルスの血清型についても検査することができる本発明の検査キットについて説明する。
図1に示す検査キット1は、デングウイルスの感染の有無、さらには感染したデングウイルスの血清型を判別する免疫クロマト試験片10と、この免疫クロマト試験片10を収納するハウジングケース(ケーシング)20とを有している。
また、免疫クロマト試験片(以下、単に「試験片」と言う。)10は、図2に示すように、支持基板11と、この支持基板11上にそれぞれ配置された、検査試料中の血球成分をろ過する血球ろ過部15と、血球成分がろ過された検査試料が供給される試料供給部14と、検査試料中に含まれるデングウイルスを特異的に認識する標識化抗体を含有する試薬部13と、検査試料を展開する展開層12と、この展開層12の途中に設けられ、検査試料中に含まれるデングウイルスを特異的に認識する特異抗体が固定化された認識部17と、展開層12の途中に前記認識部17の試薬部13に対する反対側に設けられ、標識化抗体を認識する抗抗体(抗標識化抗体抗体)が固定化されたコントロール部18と、展開層12を展開した検査試料を吸水する吸収部16とを有している。
なお、試験片10では、検査試料が展開層12を展開する展開方向を基準としたとき、展開層12の上流側に、試薬部13を介して試料供給部14が配置され、展開層12の下流側に、吸収部16が配置されている。換言すれば、支持基板11上において、前記展開方向の上流側から下流側に向かって、互いの縁部同士が接触するように、試料供給部14、試薬部13、展開層12および吸収部16が、この順で配置されている。
支持基板11は、短冊(平板)状をなしており、試験片10を構成する各種部材、すなわち、血球ろ過部15、試料供給部14、試薬部13、展開層12および吸収部16を支持するためのものである。
この支持基板11の構成材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレートのような樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
支持基板11の厚さは、特に限定されず、例えば、0.05〜0.6mm程度であることが好ましく、0.1〜0.5mm程度であることがより好ましい。
血球ろ過部15は、その全体形状が短冊状をなし、試料供給部14上に積層するように配置されており、血球成分をろ過(分離)して、血球成分がろ過された検査試料、すなわち血漿成分を試料供給部14に供給するためのものである。
このように試験片10を、血球ろ過部15を備える構成とすることにより、デングウイルスの存在の有無を確認する検査試料として、赤血球、白血球、血小板のような血球成分を含有するもの、すなわち全血等を用いることができる。そのため、全血等から血漿成分を、遠心分離等を用いて分離する際の手間の低減および時間の短縮を図ることができる。
この血球ろ過部15は、通常、ガラスフィルター等のろ過膜で構成され、その細孔径は、好ましくは100〜1500nm程度に設定され、より好ましくは200〜1000nm程度に設定される。これは、デングウイルスの大きさが約40〜70nm程度であり、血球成分の大きさが約2000μm以上であることから、ろ過膜の細孔径をかかる範囲内に設定することで、血球成分をろ過しつつ、デングウイルスを血漿成分側に移行させることができる。したがって、血球ろ過部15に捕捉されるデングウイルスの捕捉率を低減させて、展開層12で展開されるデングウイルスの展開率を向上させることができるため、試験片10を用いてデングウイルスの感染の有無を検出する際の検出感度が向上する。
なお、検査試料として全血を用いず、予め血球成分が除去された血漿成分および血清成分等を用いる場合には、この血球ろ過部15の試料供給部14上への載置を省略することができる。
試料供給部14は、その全体形状が短冊状をなし、その長手方向の下流側の縁部が試薬部13に接触する(重なる)ように配置されており、血球ろ過部15を介して添加された検査試料を、試薬部13に供給するためのものである。
この試料供給部14は、液体透過性を備えるものであれば特に限定されず、例えば、多孔質材料および繊維質材料を用いて形成される。なお、試料供給部14を、多孔質材料または繊維質材料を用いて形成した場合、試料供給部14の多孔性は、試料供給部14の長手方向に対して、気孔の連通方向または繊維の延伸方向が平行をなしている一方向性を備えるものであっても良いし、気孔の連通方向または繊維の延伸方向がランダムとなっている多方向性を備えるものであっても良い。
このような多孔質材料および繊維質材料の構成材料としては、例えば、紙やニトロセルロールのようなセルロース材料の他、ガラスウール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル、アクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレンのような樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
試薬部13は、その全体形状が短冊状をなし、その長手方向の上流側の縁部が試料供給部14に接触し(重なり)、下流側の縁部が展開層12に接触するように配置されており、試料供給部14を介して供給された検査試料を展開層12に供給する。
さらに、この試薬部13は、試薬として、デングウイルスを特異的に認識する機能を有し、かつ標識物質で標識化されている標識化抗体が、液体の通過(透過)により遊離可能な状態で、多孔質担体に担持(保持)されたものである。すなわち、試薬部13は、試薬として、デングウイルスを特異的に認識する機能を有し、かつ標識物質で標識化されている標識化抗体を含むものである。
そのため、検査試料が試薬部13を透過(通過)して展開層12に供給された際には、検査試料中には、標識化抗体(試薬)が添加された状態となっている。
また、検査試料中にデングウイルスが含まれる場合、すなわち被検者がデングウイルスに感染している場合(陽性の場合)には、標識化抗体がデングウイルスを特異的に認識するため、標識化抗体とデングウイルスとで構成される複合体が形成され、この複合体を形成した状態で、検査試料は展開層12に供給される。
この試薬部13が備える多孔質担体は、液体透過性のものであれば特に限定されず、例えば、前記試料供給部14と同様に、多孔質材料および繊維質材料を用いて形成される。
また、標識化抗体は、デングウイルスを特異的に認識する抗体(2次抗体)を、標識物質で標識化したものであるが、この抗体(2次抗体)としては、特に限定されず、例えば、IgG、IgA、IgM、IgEおよびIgDのいずれであってもよいが、取り扱いの容易さからIgGが好ましく用いられる。
さらに、この抗体は、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体のいずれでもよいが、モノクローナル抗体であるのが好ましい。
さらに、上記のような抗体(2次抗体)は、デングウイルスを特異的に認識するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、NS1、NS2a、NS2B、NS3、NS4a、NS4B、NS5のような外部抗原、エンベロープが備えるEタンパク、Mタンパク、Cタンパクのような内部抗原の何れの一部を抗原決定部位(エピトープ)として認識するものであってもよいが、内部抗原の一部を抗原決定部位として認識するものであるのが好ましい。
ここで、デングウイルスが備えるエンベロープは、EタンパクとMタンパクとで構成され、1つのEタンパクと1つのMタンパクを1ユニットとして、約200ユニットが互いに連結することで形成されている。そのため、Eタンパク、Mタンパクのような内部抗原は、1つのウイルス中に多量に含まれていることとなる。
したがって、抗体(2次抗体)として、Eタンパクのような内部抗原の一部を認識するものを選択することで、1つのウイルスを複数(最大で200程度)の抗体で認識させることができ、1つのウイルスに複数の標識化抗体を結合させることができるようになる。そのため、検査試料中における1つのウイルスの有無をより確実に確認することができることから、検査キット1の検出感度の向上を図ることができる。
また、通常、感染が成立した検査試料中には、約107〜9/mLオーダーの数のデングウイルスが含まれていると言われることから、検査試料中には、約109〜11/mLオーダーの数のEタンパクのような内部抗原が含まれていることとなる。すなわち、検査試料中には、多量の内部抗原が含まれていると言うことができる。したがって、かかる観点からも、抗体(2次抗体)として、Eタンパクのような内部抗原の一部を認識するものを選択することにより、検査キット1の検出感度を向上させることができる。
さらに、デングウイルスは、前述の通り、1型〜4型の4種類の血清型に分類することができ、Eタンパクのような内部抗原には、1型〜4型の血清型に共通の抗原決定部位(以下、「共通決定部位」と言う。)と、1型〜4型の血清型に個別の抗原決定部位(以下、「個別決定部位」と言う。)とが含まれている。抗体(2次抗体)は、かかる構成の内部抗原における、共通決定部位と、個別決定部位との何れを認識するものであってもよいが、共通決定部位を認識するものであるのが好ましい。ここで、例えば、抗体として個別決定部位を認識するもの選択した場合、検査試料中に1型のデングウイルスが含まれているとすると、2型〜4型のデングウイルスの内部抗原が有する個別決定部位を認識する抗体を備える標識化抗体は、1型のデングウイルスを認識することなく無駄となる。これに対して、抗体として共通決定部位を認識するもの選択することにより、このような無駄が生じるのを確実に防止することができるため、検査キット1の検出感度を向上させることができる。
抗体を標識化する方法としては、特に制限されず、例えば、金コロイド標識、着色ラテックス粒子標識、放射性標識、蛍光色素標識、酵素標識等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、金コロイド標識であるのが好ましい。金コロイド標識であれば、標識化抗体とデングウイルスとで構成される複合体を優れた感度で視認することができるようになる。
なお、抗体を標識化する方法として金コロイド標識を用いる場合、金コロイドによる抗体の標識化は、例えば、抗体と金コロイドとを緩衝液中で混合することにより行われる。かかる方法によれば、抗体が金コロイドに物理的に吸着することで、抗体が標識化される。
さらに、多孔質担体に標識化抗体(試薬)を担持させる方法、すなわち試薬部13の形成方法としては、例えば、標識化抗体を含有する水溶液を調製した後、この水溶液を、多孔質担体に含浸させ、その後、乾燥する方法が挙げられる。かかる方法によれば、標識化抗体を多孔質担体に対して均一に担持させることができる。
展開層12は、その全体形状が短冊状をなし、その長手方向の上流側の縁部が試薬部13に接触し(重なり)、下流側の縁部が吸収部16に接触するように配置されており、試薬部13から供給された、標識化抗体(試薬)を含有する検査試料を、毛細管現象により、その上流側の縁部から下流側の縁部まで展開するためのものである。
この展開層12は、毛細管現象により検査試料を展開し得るように、通常、多孔質担体で構成され、具体的には、例えば、セルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体で構成される膜、ガラスフィルター、ろ紙等で構成されるが、中でもニトロセルロース膜で構成されているのが好ましい。展開層12をニトロセルロース膜で構成される多孔質担体とすることで、後述する認識部17における特異抗体の固定化、およびコントロール部18における抗抗体の固定化を容易に行うことができる。
また、展開層12の気孔径は、1μm以上であるのが好ましく、5μm以上であるのがより好ましく、8μm以上、12μm以下であるのがさらに好ましい。これにより、検査試料に含まれる液状成分ばかりでなく、デングウイルスや、標識化抗体、さらにはこれらの複合体を、気孔内を確実に透過させることができるようになる。そのため、デングウイルスの感染の有無をより高感度に検出することが可能となる。
また、上述したような構成の展開層12には、その途中に、認識部17と、この認識部17よりも下流側に配置されたコントロール部18とが設けられている。
認識部17は、展開層12の途中に、デングウイルスを特異的に認識する特異抗体(1次抗体)が固定化されたものである。
本発明では、この認識部17は、展開層12の途中に、それぞれ別個に形成された、第1の認識部位171と、第2の認識部位172と、第3の認識部位173と、第4の認識部位174とを有し、これらが、コントロール部18側からこの順で形成されている。
そして、第1の認識部位171では、デングウイルスを1型から4型の4種類の血清型で分類したとき、1型のデングウイルスを特異的に認識する特異抗体(第1の特異抗体)が固定化され、また、第2の認識部位172では、2型のデングウイルスを特異的に認識する特異抗体(第2の特異抗体)が固定化され、第3の認識部位173では、3型のデングウイルスを特異的に認識する特異抗体(第3の特異抗体)が固定化され、さらに、第4の認識部位174では、4型のデングウイルスを特異的に認識する特異抗体(第4の特異抗体)が固定化されている。
なお、第1〜第4の認識部位171〜174は、本実施形態では、展開層12のコントロール部18よりも上流側に、それぞれ、展開層12の長手方向に直交するように、帯状に形成されている。
かかる構成の第1〜第4の認識部位171〜174を有する認識部17が設けられた展開層12に、デングウイルスを含む検査試料、すなわちデングウイルスに感染している被検者に由来する検査試料(陽性の検査試料)が試薬部13から供給されると、デングウイルスの血清型の種類に応じて、以下のようにして認識部17においてデングウイルスが確認される。
すなわち、検査試料に含まれるデングウイルスの血清型が1型であると、第2〜第4の認識部位172〜174で固定化されている特異抗体は1型のデングウイルスを認識することなく、第1の認識部位171で固定化されている特異抗体(第1の特異抗体)が1型のデングウイルスを選択的に認識する。そのため、第1の認識部位171に1型のデングウイルスが捕捉される。また、これと同様に、検査試料に含まれるデングウイルスの血清型が2型であると、第2の認識部位172で固定化されている特異抗体(第2の特異抗体)が2型のデングウイルスを選択的に認識し、第2の認識部位172に2型のデングウイルスが捕捉される。また、検査試料に含まれるデングウイルスの血清型が3型であると、第3の認識部位173で固定化されている特異抗体(第3の特異抗体)が3型のデングウイルスを選択的に認識し、第3の認識部位173に3型のデングウイルスが捕捉される。さらに、検査試料に含まれるデングウイルスの血清型が4型であると、第4の認識部位174で固定化されている特異抗体(第4の特異抗体)が4型のデングウイルスを選択的に認識し、第4の認識部位174に4型のデングウイルスが捕捉される。
さらに、前記試薬部13の説明で述べたように、試薬部13を透過して展開層12に供給された検査試料では、デングウイルスと標識化抗体とで構成される複合体が形成されているため、各認識部位171〜174においてそれぞれ1型〜4型のデングウイルスが認識(捕捉)された際には、1型〜4型のデングウイルスとともに複合体を形成した状態で、標識化抗体も捕捉される。
したがって、各認識部位171〜174において、標識化抗体の捕捉の有無を確認することにより、固定化されている特異抗体と複合体との反応が確認されることとなる。
そのため、認識部17において、標識化抗体の捕捉が確認されることで、検査試料中にデングウイルスが含まれている(被検者がデングウイルスに感染している)と言うことができる。さらに、各認識部位171〜174のうちの何れの部位で標識化抗体の捕捉が確認されるかにより、1型〜4型のうち何れの血清型のデングウイルスが検査試料中に含まれているか(被検者が感染しているデングウイルスの血清型)を知ることができる。
以上のようにして、デングウイルスによる感染の有無を検査できるばかりでなく、デングウイルスの血清型である1型〜4型の4種類のうち、何れの血清型のデングウイルスに感染したかをも識別することができる。
よって、得られた検査結果に基づいて、ウイルスの血清型を含めた早期診断を行い、適切な治療方針を立てることができるため、デング出血熱/デングショック症候群(DHF/DSS)の発症、さらにはDHF/DSS発症に起因する致死率を低減させることができる。
さらに、本発明では、第1〜第4の認識部位171〜174において、それぞれ、第1〜第4の特異抗体(1次抗体)を固定化して、第1〜第4の認識部位171〜174における1型〜4型のデングウイルスの捕捉の有無をそれぞれ確認することで、デングウイルスによる感染の有無を知る構成としたが、かかる構成とすることにより、以下のような利点が得られる。
ここで、前記試薬部13の説明で述べたように、デングウイルスを特異的に認識する抗体として、NS1、NS2a、NS2B、NS3、NS4a、NS4B、NS5のような外部抗原を認識するものが挙げられるが、これらの外部抗原は、1型〜4型の血清型に共通の抗原決定部位(以下、「共通決定部位」と言うこともある。)を有するものである。そのため、例えば、デングウイルスを特異的に認識する特異抗体として、この共通決定部位を認識する特異抗体を用いた場合には、かかる特異抗体が固定化された認識部位において、1型〜4型の血清型に関係なくデングウイルスの捕捉の有無を確認することができるようになる。
このような認識部位を備える展開層を有する検査キットを用いて、検査試料中におけるデングウイルスの有無を検査すると、検査試料が1度目のデングウイルスに感染した被検者由来のものである場合には、共通決定部位を、この共通決定部位を認識する特異抗体により認識させることができ、その結果、被検者のデングウイルスの感染を知ることができる。
ところが、この被検者が2度目以上にデングウイルスに感染したとすると、前回までのデングウイルスに感染した既往歴に起因して、この被検者はデングウイルスに対する生涯免疫を獲得している。そのため、検査試料中には、共通決定部位を認識する抗体として、被検者に由来するものが予め含まれており、この被検者由来の抗体により共通決定部位がマスキングされ、認識部位に固定化した特異抗体により共通決定部位を認識させることができなくなる確率が高くなる。すなわち、認識部位に固定化した特異抗体で、デングウイルスを捕捉することができない確率が高くなる。その結果、被検者を誤って陰性(偽陰性)と判断する可能性が高くなるという問題が生じる。
これに対して、本発明では、前述の通り、第1〜第4の認識部位171〜174において、それぞれ、第1〜第4の特異抗体(1次抗体)を固定化して、第1〜第4の認識部位171〜174における1型〜4型のデングウイルスの捕捉の有無をそれぞれ確認することで、デングウイルスによる感染の有無を知る構成としている。
そのため、まず、例えば、被検者が1度目の感染で1型のデングウイルスに感染し、2度目の感染で2型のデングウイルスに感染したとすると、1度目の感染では被検者はデングウイルスに対する生涯免疫を獲得していないため、第1の認識部位171に固定化された第1の特異抗体により1型のデングウイルスを捕捉することができるため、被検者の第1のデングウイルスの感染を知ることができる。
さらに、2度目の感染では被検者はデングウイルスに対する生涯免疫を1度目の感染に起因して獲得している。しかしながら、検査試料中に被検者に由来する抗体として含まれているものは、共通決定部位を認識する抗体と、1型の血清型に個別の抗原決定部位を認識する抗体とに限られる。そのため、被検者由来の抗体によりマスキングされる抗原決定部位は、2型のデングウイルスが有する共通決定部位に限られ、2型の血清型に個別の抗原決定部位がマスキングされることはない。したがって、デングウイルスによる2度目の感染であっても、第2の認識部位172に固定化された第2の特異抗体により2型のデングウイルスを捕捉することができ、被検者の2型のデングウイルスによる感染を知ることができる。
なお、上記では、1度目の感染で1型のデングウイルスに感染し、2度目の感染で2型のデングウイルスに感染した場合について説明したが、1度目と2度目とで感染するウイルスの型はこれらの組み合わせに限定されず、1型と3型との組み合わせや、2型と4型との組み合わせのように任意の血清型の組み合わせであってもよい。さらに、デングウイルスによる3度目の感染や4度目の感染であっても上記と同様の結果を得ることができる。
以上のように、本発明によれば、第1〜第4の認識部位171〜174において、それぞれ、第1〜第4の特異抗体(1次抗体)を固定化することで、複数回目のデングウイルスの感染であっても確実に感染の有無を知ることができる。すなわち、検査キット1の検出感度を優れたものとすることができる。
また、第1〜第4の特異抗体は、それぞれ、1型〜4型の血清型に個別の抗原決定部位を認識するものであれは特に限定されず、外部抗原および内部抗原のいずれを認識するものであっても良いが、Eタンパクのような内部抗原を認識するものであるのが好ましい。
ここで、前述したように、デングウイルスが備えるエンベロープは、1つのEタンパクと1つのMタンパクを1ユニットとして、約200ユニットが互いに連結することで形成されたものであると考えられるため、Eタンパクのような内部抗原は、1つのウイルス中に多量に含まれていることとなる。
したがって、第1〜第4の特異抗体として、それぞれ、内部抗原が有する1型〜4型の血清型に個別の抗原決定部位を認識するものを選択することで、1つのウイルス中には複数の抗原決定部位が存在することとなる。よって、複数の抗原決定部位のうちいずれかが何らかの理由によりマスキングされていたとしても、これとは異なる抗原決定部位を特異抗体(1次抗体)で認識させることができるため、第1〜第4のデングウイルスを、それぞれ、第1〜第4の認識部位171〜174において固定化された第1〜第4の特異抗体により確実に捕捉することができるようになると推察される。
さらに、この点も前述したように、通常、感染が成立した検査試料中には、約107〜9/mLオーダーの数のデングウイルスが含まれていると言われることから、検査試料中には、約109〜11/mLオーダーの数のEタンパクのような内部抗原が含まれていることとなる。すなわち、検査試料中には、多量の内部抗原が含まれていると言うことができる。したがって、かかる観点からも、第1〜第4の特異抗体として、それぞれ、内部抗原が有する1型〜4型の血清型に個別の抗原決定部位を認識するものを選択することにより、検査キット1の検出感度を向上させることができると推察される。
なお、第1〜第4の特異抗体としては、各認識部位171〜174において、それぞれ、1型〜4型の血清型のデングウイルスを特異的に認識するものであれば、特に限定されず、例えば、IgG、IgA、IgM、IgEおよびIgDのいずれであってもよいが、取り扱いの容易さからIgGが好ましく用いられる。
また、認識部17(各認識部位171〜174)における、特異抗体の固定化は、上述したように展開層12をニトロセルロース膜で構成される多孔質担体とした場合、特異抗体を含有する水溶液を、認識部17を形成すべき領域に滴下した後、乾燥および洗浄することにより行うことができる。このように展開層12をニトロセルロースで構成することで、展開層12または特異抗体に対して化学的な処理を予め施すことなく、展開層12と特異抗体との間で化学的な結合が形成される。そのため、特異抗体を含有する水溶液を展開層12に接触させるという単純な工程で、展開層12に特異抗体を確実に固定化して、認識部17を形成することができる。
なお、前記水溶液を乾燥させる際の温度は、特に限定されないが、例えば、40〜70℃程度であるのが好ましく、50〜65℃程度であるのがより好ましい。これにより、特異抗体が備える抗原認識能の失活を抑制または防止しつつ、特異抗体を展開層12に確実に固定化することができる。
また、展開層12をろ紙で構成される多孔質担体とした場合、前記固定化は、展開層12と特異抗体との間に、CNBr、カルボニルジイミダゾール、塩化トレシル等を用いた化学結合を形成することにより行なうことができる。
なお、本実施形態では、認識部17において、第1の認識部位171と、第2の認識部位172と、第3の認識部位173と、第4の認識部位174とは、コントロール部18側から展開層12の途中にこの順で形成されている場合について説明したが、第1〜第4の認識部位171〜174を配置する順序はこの順に限定されることなく、所望の順序に配置することができる。
また、このように第1〜第4の認識部位171〜174を配置する順序に限定されず所望の位置に配置することができるのは、第1〜第4の認識部位171〜174にそれぞれ固定化された第1〜第4の特異抗体の1型〜4型のデングウイルスの認識強度が優れたものであることによる。
ここで、例えば、第1の特異抗体の認識強度が、第2〜第4の特異抗体の認識強度と比較して劣るものである場合、第1の認識部位171に固定化する第1の特異抗体の数を増量したり、第1の認識部位171を配置する位置を上流側すなわち試薬部13に近い位置とすることにより、第1の認識部位171における第1のデングウイルスの検出力を高めることが考えられる。しかしながら、本発明では、デングウイルスが有する抗原決定部位を優れた認識強度で認識する第1〜第4の特異抗体を選択しているため、上記のような検討をすることなく、第1〜第4の認識部位171〜174を所望の位置に配置することができる。
コントロール部18は、展開層12の途中の認識部17よりも下流側に、標識化抗体を認識する抗抗体(抗標識化抗体抗体)が固定化されたものである。
このコントロール部18は、本実施形態では、展開層12の長手方向に直交するように、帯状に形成されている。
かかる構成のコントロール部18において、固定化された抗抗体と標識化抗体との反応が確認されることにより、展開層12に供給された検査試料に含まれる標識化抗体が、展開層12の上流側から、下流側に位置するコントロール部18にまで展開されたことを示す証拠となる。そのため、コントロール部18でかかる反応が確認されることで、認識部17で確認された検出結果(判定結果)が正確であることが判る。
また、抗抗体としては、標識化抗体を認識し得る抗体、すなわち、コントロール部18よりも上流側の展開層12を展開(透過)してきた標識化抗体を捕捉し得る機能を有するものであれば、特に限定されず、例えば、IgG、IgA、IgM、IgEおよびIgDのいずれであってもよいが、取り扱いの容易さからIgGが好ましく用いられる。
なお、このような抗抗体としては、通常、標識化抗体が備える抗体の定常部位を認識するものが用いられる。
また、コントロール部18における抗抗体の固定化は、認識部17における特異抗体の固定化で説明したのと同様の方法を用いて行うことができる。
吸収部16は、その全体形状が短冊状をなし、その長手方向の上流側の縁部が展開層12に接触する(重なる)ように配置されており、展開層12を展開してきた検査試料を展開層12の下流側の端部から吸収(吸水)する。
これにより、吸収部16が展開層12における毛細管現象を補助する機能を発揮するため、展開層12における上流側から下流側に向かった検査試料の展開をより円滑に行うことができるようになる。
この吸収部16は、液体透過性のものであれば特に限定されず、前記試料供給部14と同様に、多孔質材料および繊維質材料を用いて形成することができる。
ハウジングケース20は、防水性を備え、試験片10の形状に対応した中空部21を有しており、この中空部21に試験片10を収納することで、試験片10(検査キット1)の取り扱い性を容易にするためのものである。
このハウジングケース20は、検査試料供給窓22と、検査結果観察窓23とを有し、中空部21に試験片10を収納した状態で、検査試料供給窓22から血球ろ過部15の一部(上面)が露出し、検査結果観察窓23から展開層12の一部(認識部17およびコントロール部18が形成されている領域)が露出するように構成されている。
これにより、検査試料供給窓22から露出する血球ろ過部15に検査試料を滴下することで、血球ろ過部15を介して試料供給部14に検査試料を供給することができる。そして、検査結果観察窓23から露出する展開層12に設けられた認識部17およびコントロール部18における、標識化抗体の捕捉の有無を観察することにより、デングウイルスの感染の有無を検出することができる。
このハウジングケース20の構成材料としては、防水性と適度な強度とを備えるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートのような樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
次に、上述した検査キット1の使用方法、すなわち、被検者がデングウイルスに感染しているか否かを判定し、さらに感染したデングウイルスの1型から4型の4種類の血清型についても検査する検査方法(本発明の検査方法)について説明する。
なお、以下では、被検者が血清型として1型のデングウイルスに感染している場合を一例に説明する。
[1] まず、被検者から採取した検査試料(検体)である全血を、検査試料供給窓22から露出する血球ろ過部15に滴下する。
これにより、血球ろ過部15を介して試料供給部14に、血球成分が除去された検査試料すなわち血漿成分が供給され、さらに、この検査試料が試料供給部14から試薬部13に移行する。
この際、試薬部13に含まれる標識化抗体(試薬)と、検査試料に含まれる1型のデングウイルス(以下、単に「デングウイルス」と言うこともある。)とが接触し、この接触により、標識化抗体とデングウイルスとで構成される複合体が形成される。
[2] 次に、試薬部13を透過した検査試料が、展開層12に供給される(第1の工程)。
そして、この供給の後、展開層12中を展開する(第2の工程)。
このとき、展開層12中を前記複合体も展開し、この複合体中には血清型が1型のデングウイルスが含まれるため、展開層12の途中に形成された、認識部17が備える第1〜第4の認識部位171〜174のうち、第1の認識部位171に固定化された、1型のデングウイルスを特異的に認識する特異抗体により、1型のデングウイルスを含む複合体が選択的に捕捉される。
そして、複合体には標識化抗体が含まれているため、第1の認識部位171における複合体の捕捉を確認することにより、被検者が1型のデングウイルスに感染していることを知ることができる。
すなわち、本実施形態では、第1の認識部位171に1型のデングウイルスが捕捉されていることが確認され、これにより、被検者がデングウイルス感染しており、さらにその血清型が1型であることを知ることができる。
[3] 次に、認識部17を透過した検査試料が、さらに展開層12の認識部17よりも下流側に位置するコントロール部18にまで到達する。
このとき、コントロール部18に到達した検査試料中には、複合体の形成に関与しなかった標識化抗体が含まれるため、この標識化抗体が、コントロール部18に固定化された標識化抗体を認識する抗抗体により捕捉される。
そのため、このコントロール部18における標識化抗体の捕捉を確認することにより、第1の認識部位171で確認された被検者が1型のデングウイルスに感染しているという検出結果(判定結果)が正確であることを知ることができる。
なお、コントロール部18を透過した検査試料は、さらに展開層12のコントロール部18よりも下流側を展開して端部にまで到達し、最終的には吸収部16へと吸水されていく。
以上のような検査キット1を用いた工程を経ることで、被検者のデングウイルスの感染の有無、および感染したデングウイルスの血清型を知ることができる。
なお、本実施形態では、検査試料中への標識化抗体の添加は、試験片10を、試薬部13を備える構成とし、この試薬部13を検査試料が透過する際に行われる構成としたが、かかる構成に限定されず、例えば、血球ろ過部15への検査試料の供給(滴下)に先立って、予め検査試料に直接添加するようにしてもよい。なお、かかる構成とする場合、試験片10を、試薬部13を有しない構成のものとすることができる。
以上、本発明の検査キットおよび検査方法を好適実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の検査キットでは、各構成を、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、あるいは、任意の構成のものを付加することができる。
さらに、検査方法では、任意の目的で、1以上の工程を追加することができる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
(実施例)
1.検査キットの製造
1−1.展開層への認識部およびコントロール部の形成
(a)第1の認識部位の形成
短冊状をなす0.5cm×3.0cmのニトロセルロース(ミリポア社製)を展開層として用意し、この展開層の上流側の端部から1.4cmの位置に、1型のデングウイルスを特異的に認識する第1の特異抗体5mg/mLを含有するリン酸緩衝液1.0μLを、展開層の長手方向対して直交する方向に幅約0.1cmのライン状に滴下した。その後、リン酸緩衝液を60℃×4時間の条件で乾燥させることにより、展開層の途中に1型のデングウイルスを特異的に認識する第1の特異抗体が固定化された第1の認識部位を形成した。
(b)第2の認識部位の形成
第1の特異抗体に代えて2型のデングウイルスを特異的に認識する第2の特異抗体を含有するリン酸緩衝液調製し、このリン酸緩衝液を、展開層の第1の認識部位を形成した位置よりも上流側に0.1cmの間隔を空けて滴下したこと以外は前記第1の認識部位の形成と同様にして、第2の認識部位を形成した。
(c)第3の認識部位の形成
第1の特異抗体に代えて3型のデングウイルスを特異的に認識する第3の特異抗体を含有するリン酸緩衝液調製し、このリン酸緩衝液を、展開層の第1の認識部位を形成した位置よりも上流側に0.2cmの間隔を空けて滴下したこと以外は前記第1の認識部位の形成と同様にして、第3の認識部位を形成した。
(d)第4の認識部位の形成
第1の特異抗体に代えて4型のデングウイルスを特異的に認識する第4の特異抗体を含有するリン酸緩衝液調製し、このリン酸緩衝液を、展開層の第1の認識部位を形成した位置よりも上流側に0.3cmの間隔を空けて滴下したこと以外は前記第1の認識部位の形成と同様にして、第4の認識部位を形成した。
以上のような(a)〜(d)の工程を経ることにより、展開層の途中に、第1〜第4の認識部位を有する認識部を形成した。
(e)コントロール部の形成
第1の特異抗体に代えて、後述する標識化抗体を認識する抗抗体を含有するリン酸緩衝液調製し、このリン酸緩衝液を、展開層の上流側の端部から1.8cmの位置に滴下したこと以外は前記第1の認識部位の形成と同様にして、コントロール部を、展開層の途中の前記認識部よりも下流側の位置に形成した。
1−2.試薬部の作製
短冊状をなす0.5cm×1.0cmのガラスウールで構成される多孔質担体を用意し、デングウイルスを特異的に認識する機能を有する抗体を金コロイドで標識化した標識化抗体を含有するリン酸緩衝液に、多孔質担体を含浸した後、かかる多孔質担体を凍結乾燥することにより、標識化抗体が多孔質担体に担持された試薬部を得た。
1−3.検査キットの組立
まず、中空部を備える2.7cm×8.5cmのポリカーボネートで構成されるハウジングケースと、短冊状をなす0.5cm×7.5cmの白色ポリスチレン、白色ビニール、白色ポリエステル、クリアポリエステルで構成される支持基板と、短冊状をなす1.2cm×1.9cmのガラスフィルター(ミリポア社製)で構成される試料供給部と、短冊状をなす0.5cm×1.0cmのガラスウールで構成される多孔質担体からなる試料供給部と、短冊状をなす0.5cm×3.0cmのガラスウールで構成される多孔質担体からなる濾紙で構成される多孔質担体からなる吸収部と、前記工程1−1で作製した認識部およびコントロール部が形成された展開層と、前記工程1−2で作製した試薬部とをそれぞれ用意した。
次に、支持基板上に、互いの縁部同士が接触するように、上流側から下流側に向かって、試料供給部と、試薬部と、展開層と、吸収部とを、この順で配置した後、試料供給部上に血球ろ過部を配置することにより、図2に示すような免疫クロマト試験片を得た。
次に、得られた免疫クロマト試験片をハウジングケースが有する中空部に収納することで、図1に示すような検査キットを組み立てた。
2.デングウイルスの感染の有無の検査
2−1. 対象症例
デングウイルスの感染が疑われた被検者を対象とした。
2−2. RT−PCR法
デングウイルスの感染が疑われた被検者について、検体として血液を採取し、この検体中からRT−PCR法を用いてデングウイルス遺伝子が検出された108例をデングウイルス感染群(陽性群)とした。
なお、デングウイルス遺伝子が検出された108例のうち、血清型が1型、2型、3型および4型のデングウイルス遺伝子が検出されたものは、それぞれ、27例、28例、28例および25例であった。
2−3. 免疫クロマト法(実施例)
デングウイルスの感染が疑われた被検者について、検体として血液(全血)を採取し、実施例の検査キットのハウジングケースが備える検査試料供給窓から露出する血球ろ過部に検体を滴下した後、検査結果観察窓から露出する展開層に設けられた認識部およびコントロール部における、標識化抗体の捕捉の有無を観察した。
その結果、前記2−1で陽性群とされた108例のうち、97例(94.3%)について、認識部における標識化抗体の捕捉が確認された。
また、これら97例のうち、認識部が有する第1〜第4の認識部位において確認された標識化抗体の捕捉結果から、血清型が1型、2型、3型および4型のデングウイルスと判定されたものは、それぞれ、25例(92.6%)、26例(92.9%)、23例(82.1%)および23例(92.0%)であった。
以上の結果を、再度、表1に示す。
Figure 0006154126
表1から明らかなように、実施例の検査キットを用いることにより、被検者のデングウイルスによる感染の有無の検査することができ、さらに、感染したデングウイルスの血清型をも検査することができた。
また、RT−PCR法で陽性と判断された108例の陽性群のうち97例(94.3%)について、実施例の検査キットにより陽性と判定され、実施例の検査キットは、優れた検出感度を有していることが判った。
なお、NS1を共通の抗原決定部位として認識する特異抗体が認識部に固定化された従来の検査キットでは、1度目のデングウイルスに感染した被検者由来の検体の検出感度は70%程度と言われており、2度目以上にデングウイルスに感染した被検者由来の検体の検出感度は60%以下に低下すると言われている。かかる知見と、RT−PCR法で陽性と判断された108例の陽性群には2度目以上にデングウイルスに感染した被検者が複数含まれていると推察されることからも、実施例の検査キットは、優れた検出感度を有していると言うことができる。
1 検査キット
10 免疫クロマト試験片(試験片)
11 支持基板
12 展開層
13 試薬部
14 試料供給部
15 血球ろ過部
16 吸収部
17 認識部
171 第1の認識部位
172 第2の認識部位
173 第3の認識部位
174 第4の認識部位
18 コントロール部
20 ハウジングケース
21 中空部
22 検査試料供給窓
23 検査結果観察窓

Claims (4)

  1. デングウイルスによる感染の有無、および感染したデングウイルスの血清型を検査するのに用いられる検査キットであって、
    前記デングウイルスを含有する検査試料を展開する展開層と、該展開層の途中に設けられた認識部と、前記検査試料が前記展開層を展開する展開方向を基準としたとき、前記展開層の上流側の縁部に接触するように配置された試薬部とを有し、
    前記認識部は、それぞれ別個に形成された、血清型が1型のデングウイルスを特異的に認識する第1の特異抗体が固定化された第1の認識部位と、2型のデングウイルスを特異的に認識する第2の特異抗体が固定化された第2の認識部位と、3型のデングウイルスを特異的に認識する第3の特異抗体が固定化された第3の認識部位と、4型のデングウイルスを特異的に認識する第4の特異抗体が固定化された第4の認識部位とを有しており、
    前記試薬部は、前記デングウイルスを特異的に認識する機能を有し、かつ標識物質で標識化されている標識化抗体を含み、
    第1〜第4の前記特異抗体は、1型〜4型の前記デングウイルスがそれぞれ有する内部抗原の一部を特異的に認識するものであり、かつ、前記標識化抗体は、前記デングウイルスが有する前記内部抗原における、前記デングウイルスの1型〜4型の血清型に共通の抗原決定部位を認識するものであることを特徴とする検査キット。
  2. 前記内部抗原は、エンベロープが有するEタンパクである請求項に記載の検査キット。
  3. 前記試薬部の上流側の縁部に接触するように配置された試料供給部と、該試料供給部上に積層するように配置された血球ろ過部とを有し、前記検査試料が全血であり、
    前記血球ろ過部を介して前記試料供給部に前記検査試料を供給することにより、前記検査試料に含まれる血球成分が除去されるよう構成されている請求項1または2に記載の検査キット。
  4. 請求項1ないしのいずれかに記載の検査キットを用いて、デングウイルスによる感染の有無、および感染したデングウイルスの血清型を検査する検査方法であって、
    前記検査試料を前記展開層に供給する第1の工程と、
    前記検査試料が前記展開層を展開する際に、前記展開層の途中に設けられた前記認識部が備える第1〜第4の前記認識部位のうちいずれの部位に、前記デングウイルスが捕捉されているかを確認する第2の工程とを有することを特徴とする検査方法。
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