JP5988881B2 - 接着剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、接着剤組成物に関する。
従来、ウレタンプレポリマーを含有する1液湿気硬化型ポリウレタン組成物が知られており、例えば接着剤組成物として用いられている。
このような1液湿気硬化型ポリウレタン組成物の製造方法としては、例えば特許文献1に記載された方法が挙げられる。該方法によれば、「合成時間短縮の観点からウレタンプレポリマーの生成に金属触媒を用いても良好な粘度を保持することができ、更に、チクソ性に優れ、外観も良好な1液湿気硬化型ポリウレタン組成物を得る」ことができるとされている(特許文献1の[0011])。
特開2007−224150号公報
自動車のウィンドウガラスは、従来はゴムガスケットを介してボデーに取り付けられていたが、衝突時にガラスを保持する能力が低いため、現在は、接着剤を用いてボデーに直接取り付けられている。この場合、接着剤の接着面は、ウィンドウガラスと、ボデーを構成する塗装鋼板とになるが、接着性を向上させる観点から、その両方にプライマーが使用されている。
ところで、近年、環境面、作業性、コスト等の観点から、プライマーレス化の要請が高まっている。
そこで、本発明者らが、特許文献1に記載された方法により得られた組成物について、接着付与剤や硬化触媒を添加して、接着剤としての性能を検討したところ、塗装鋼板との接着性が不十分な場合があり、プライマーレス化が困難であることが分かった。
また、たとえ接着性が比較的良好であっても、貯蔵中に粘度が上昇してしまう場合や、硬化物を熱老化させると切断時伸びが低下する場合があった。
本発明は、以上の点を鑑みてなされたものであり、塗装鋼板に対する接着性、貯蔵安定性、および、耐熱老化性に優れる接着剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ウレタンプレポリマーを含む混合物(ベース材)に、特定の接着付与剤および硬化触媒を特定量配合して得られた接着剤組成物については、塗装鋼板に対する接着性が優れるとともに、貯蔵中の粘度上昇を抑制でき、さらに、熱老化させた硬化物の切断時伸びの低下も抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の(1)〜(2)を提供する。
(1)1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、上記混合工程の後、上記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、上記脱水工程後の上記ペースト状混合物とを混合し、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物中の上記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物を得る生成工程と、を備える方法により得られる上記混合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物(D)である接着付与剤と、チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒と、を含有し、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の含有量が、上記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部であり、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量が、上記混合物100質量部に対して、0.001〜0.4質量部である、接着剤組成物。
(2)上記脂肪族イソシアネート化合物(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、および、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記(1)に記載の接着剤組成物。
本発明によれば、塗装鋼板に対する接着性、貯蔵安定性、および、耐熱老化性に優れる接着剤組成物を提供することができる。
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、上記混合工程の後、上記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、上記脱水工程後の上記ペースト状混合物とを混合し、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物中の上記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物を得る生成工程と、を備える方法により得られる上記混合物と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物(D)である接着付与剤と、チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒と、を含有し、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の含有量が、上記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部であり、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量が、上記混合物100質量部に対して、0.001〜0.4質量部である、接着剤組成物である。
以下、上記混合物(「ベース材」ともいう)、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)、および、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)について、順に説明する。
〔混合物(ベース材)〕
上記混合物(ベース材)については、まず製造に用いる各成分を説明した後に、その製造の各工程について説明する。
<液体成分(A)>
上記液体成分(A)は、1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する成分であれば特に限定されず、該ポリオール化合物のみ含有するものであってもよく、該ポリオール化合物以外に、例えば、可塑剤等を含有するものであってもよい。
ここで、後述する混合工程の混合時の温度で液体となる観点、および、ウレタンプレポリマー生成時の粘度の観点から、液体成分(A)中のポリオール化合物の融点が80℃以下であるのが好ましく、60℃以下であるのがより好ましい。
上記ポリオール化合物は、ヒドロキシ基(OH基)を2個以上有する化合物であれば、その分子量および骨格などは特に限定されず、その具体例としては、低分子多価アルコール類、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオール等が挙げられる。
低分子多価アルコール類としては、具体的には、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール、(1,3−または1,4−)ブタンジオール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)、1,2,5−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;ソルビトールなどの糖類;等が挙げられる。
次に、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとしては、通常、上記低分子多価アルコール類から導かれるものが用いられるが、本発明においては、更に以下に示す芳香族ジオール類、アミン類、アルカノールアミン類から導かれるものも好適に用いることができる。
ここで、芳香族ジオール類としては、具体的には、例えば、レゾルシン(m−ジヒドロキシベンゼン)、キシリレングリコール、1,4−ベンゼンジメタノール、スチレングリコール、4,4′−ジヒドロキシエチルフェノール;下記に示すようなビスフェノールA構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン)、ビスフェノールF構造(4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン)、臭素化ビスフェノールA構造、水添ビスフェノールA構造、ビスフェノールS構造、ビスフェノールAF構造のビスフェノール骨格を有するもの;等が挙げられる。
また、アミン類としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられ、アルカノールアミン類としては、具体的には、例えば、エタノールアミン、プロパノールアミン等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類として例示した化合物から選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド(テトラメチレンオキサイド)、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキサイドおよびスチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール等が挙げられる。
このようなポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
同様に、ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記低分子多価アルコール類、上記芳香族ジオール類、上記アミン類および上記アルカノールアミン類のいずれかと、多塩基性カルボン酸との縮合物(縮合系ポリエステルポリオール);ラクトン系ポリオール;ポリカーボネートポリオール;等が挙げられる。
ここで、上記縮合系ポリエステルポリオールを形成する多塩基性カルボン酸としては、具体的には、例えば、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、ピロメリット酸、他の低分子カルボン酸、オリゴマー酸、ヒマシ油、ヒマシ油とエチレングリコール(もしくはプロピレングリコール)との反応生成物などのヒドロキシカルボン酸等が挙げられる。
また、上記ラクトン系ポリオールとしては、具体的には、例えば、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを適当な重合開始剤で開環重合させたもので両末端に水酸基を有するものが挙げられる。
その他のポリオールとしては、具体的には、例えば、アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素−炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;等が挙げられる。
本発明においては、以上で例示した種々のポリオール化合物を1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、ポリプロピレングリコールであるのが、液体成分(A)を含有する組成物の硬度と破断伸びのバランスおよびコストのバランスに優れる理由から好ましい。
また、重量平均分子量が100〜10000程度であるポリオールが好ましく、1000〜5000であるポリオールがより好ましい。重量平均分子量がこの範囲であると、後述するポリイソシアネート化合物(C)との反応によって生成するウレタンプレポリマーの物性(例えば、硬度、破断強度、破断伸び)および粘度が良好となる。
上記可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA);フタル酸ジイソノニル(DINP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)を用いるのが、コストや相溶性に優れる理由から好ましい。
なお、上記液体成分(A)が上記可塑剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、20〜80質量部が好ましく、30〜70質量部がより好ましい。
<粉体成分(B)>
上記粉体成分(B)は、充填剤を含有する成分であれば特に限定されず、該充填剤のみ含有するものであってもよく、該充填剤以外に、例えば、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤(レベリング剤を含む)、分散剤、脱水剤、接着付与剤、帯電防止剤などの各種添加剤等を含有するものであってもよい。
上記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、沈降性炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム)、コロイダル炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、カーボンブラック、重質炭酸カルシウムであるのが、組成物の粘度やチクソ性を調製しやすくなる理由から好ましく、具体的には、カーボンブラックを用いた場合には物性(例えば、硬度、伸び等)に優れ、重質炭酸カルシウムを用いた場合には深部硬化性に優れる。
また、ペレットカーボンブラックであるのが、作業性が良好となるのみならず、後述するように、上記液体成分(A)との混合工程において、カーボンブラックのみならず、上記液体成分(A)の脱水がより促進する理由から好ましい。
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩などの無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラックなどの有機顔料;等が挙げられる。
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、エアロジル(日本エアロジル社製)、ディスパロン(楠本化成社製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
帯電防止剤としては、具体的には、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物等が挙げられる。
なお、上記粉体成分(B)の配合量は、特に限定されないが、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、50〜150質量部が好ましく、70〜130質量部がより好ましい。
<ポリイソシアネート化合物(C)>
上記ポリイソシアネート化合物(C)は、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物であれば特に限定されず、その具体例としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などの脂環式ポリイソシアネート;これらのポリイソシアネート化合物のカルボジイミド変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、上記ポリイソシアネート化合物(C)としては、生成するウレタンプレポリマーが、後述する脂肪族イソシアネート化合物(D)と混ざり合いにくくなり、互いに共存しやすくなることで、接着性がより良好になるという理由から、芳香族ポリイソシアネートであるのが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であるのがより好ましい。
なお、上記ポリイソシアネート化合物(C)の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記ポリイソシアネート化合物(C)のイソシアネート基(NCO)と上記ポリオール化合物のヒドロキシ基(OH)との当量比が、例えば、1.1〜2.5となる量が好ましい。
<混合工程>
上記混合工程は、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とを混合し、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る工程である。
ここで、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)とを混合する方法は、従来公知の混合方法であれば特に限定されず、具体的には、ロール、ニーダー、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、横型ミキサー(例えば、レーディゲミキサー等)、縦型ミキサー(例えば、プラネタリーミキサー等)、万能かくはん機等を用いて混合する方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、時間は、上記液体成分(A)および上記粉体成分(B)の種類により異なるため特に限定されないが、20〜110℃程度、30分〜2時間であるのが好ましい。なお、上記液体成分(A)は混合工程の混合時の温度で液体となる必要があるから、例えば、混合時の温度が100℃である場合は、その温度より低い融点のポリオール化合物を含有する液体成分(A)を用いる必要がある。
本発明においては、このような混合工程を具備することにより、上記液体成分(A)および上記粉体成分(B)中の水分の一部を除去することができる。
これは、上記液体成分(A)と上記粉体成分(B)との混合時に、トルエン等の溶剤が存在しないため上記粉体成分(B)が潰れやすく、その際に生じる圧力や発熱によって水分を除去することができると考えられる。
また、本発明においては、上記粉体成分(B)としてペレットカーボンブラックを用いた場合、上記混合工程は、上記液体成分(A)とペレットカーボンブラックとを、ペレットカーボンブラックを粉砕しながら混合するのが好ましい。
これは、ペレットカーボンブラックの粉砕により、上述した圧力や発熱が増大し、上記液体成分(A)とペレットカーボンブラックの脱水がより促進するためである。
ここで、粉砕しながら混合する方法としては、上記で例示した混合方法のうち、混合時にペレットカーボンブラックに圧力が加わった状態で混合することができる横型ミキサー(例えば、レーディゲミキサー等)等を用いて混合する方法が好適に例示される。
<脱水工程>
上記脱水工程は、上記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する工程である。
ここで、残存水分を除去する方法としては、具体的には、例えば、30〜60℃下、真空(1.2kPa以下、好ましくは0.6〜1.2kPa)下で30分間程度乾燥する方法などが挙げられる。
<生成工程>
上記生成工程は、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記脱水工程後の上記ペースト状混合物とを混合し、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物中の上記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物(ベース材)を得る工程である。
上記混合物は、上記ウレタンプレポリマーのほか、少なくとも、上記ペースト状混合物に由来する上記粉体(B)を含む。
ここで、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物とを混合する方法は、上記混合工程における混合方法と同様の方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、雰囲気は、上記ペースト状混合物中のポリオール化合物や上記ポリイソシアネート化合物(C)の種類により異なるため特に限定されないが、ウレタンプレポリマーを生成する観点から、上記ポリイソシアネート化合物(C)の融点以上の温度で混合されるのが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で混合されるのが好ましい。
本発明においては、このような生成工程を具備することにより、ウレタンプレポリマーのプレポリマー化に伴う増粘によって上記ペースト状混合物中の粉体成分(B)が潰れ、分散性が良好となり、組成物のチクソ性が良好となる。
また、本発明においては、上記生成工程は、上記ポリイソシアネート化合物(C)と上記ペースト状混合物とを、この順に添加して混合するのが以下に示す理由から好ましい。
即ち、この順で添加することにより、ポリイソシアネート化合物(C)中にポリオール化合物が添加されることになるため、安定したウレタンプレポリマーの反応が起こり、分子量が均一なウレタンプレポリマーが生成する。
一方、本発明においては、上記生成工程は、上記ペースト状混合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)とを、この順に添加して混合するのが以下に示す理由から好ましい。
即ち、この順で添加することにより、例えば、上記ペースト状混合物を得るために上記混合工程で使用した横型ミキサー内に、上記ポリイソシアネート化合物(C)をそのまま添加し、上記生成工程を施すことができるため、作業性が良好になる。
本発明においては、上記生成工程において、上記ポリイソシアネート化合物(C)と、上記ペースト状混合物とを混合した後に、更に、上記ウレタンプレポリマーの生成反応を促進する金属触媒を混合するのが好ましい。
これにより、生成するウレタンプレポリマーの粘度を良好に維持できる。これは、粉体成分(B)の存在下に金属触媒が添加されることにより、ウレタンプレポリマーの急激な生成反応が起きないため、粘度を良好に維持できるためと考えられる。
このような金属触媒としては、有機金属系触媒が挙げられ、具体的には、例えば、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ラウレート(DOTL)、ジオクチル錫ジラウレート、ビスマス系触媒(例えば、日東化成社製の無機ビスマス(ネオスタンU−600、U−660)等)が挙げられる。
上記金属触媒を用いる場合、その配合量は、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物(C)との合計100質量部に対して、0.001〜0.03質量部が好ましく、0.002〜0.02質量部がより好ましい。
〔脂肪族イソシアネート化合物(D)(接着付与剤)〕
上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物であれば特に限定されない。
ここで、接着付与剤として、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族イソシアネートを用いた場合、接着剤組成物は接着性が劣る。しかし、本発明の接着剤組成物は、接着付与剤として上記脂肪族イソシアネート化合物(D)を含有することにより、接着性が優れる。これは、上記ウレタンプレポリマーの骨格に必要なイソシアネート種(上記ポリイソシアネート化合物(C))とは別に、接着に寄与するイソシアネート種(上記脂肪族イソシアネート化合物(D))が存在することで、接着性が良好になるものと考えられる。
このような上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、例えば、上記ポリイソシアネート化合物(C)の例として記載した脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。
即ち、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)などの脂肪族ポリイソシアネートが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、上記脂肪族ポリイソシアネートのほか、例えば、上記脂肪族ポリイソシアネートとトリオールとの反応生成物;上記脂肪族ポリイソシアネートのビウレット体、イソシアヌレート体などの変性体;等であってもよく、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ここで、上記トリオールとしては、1分子中に3個のヒドロキシ基を有するものであれば特に限定されないが、例えば、1,2,5−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3−プロパントリオール、1,2,3−ベンゼントリオール、1,2,4−ベンゼントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
このような上記脂肪族イソシアネート化合物(D)としては、接着性の効果がより優れるという理由から、HDIとトリメチロールプロパンとの反応生成物、HDIのビウレット体、および、HDIのイソシアヌレート体からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
本発明の接着剤組成物において、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の含有量は、上記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部である。この含有量が少なすぎると接着性が劣り、多すぎると耐熱老化性が劣るが、上記範囲内である本発明の接着剤組成物は、接着性および耐熱老化性が優れる。
上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の含有量は、上記効果がより優れるという理由から、上記混合物100質量部に対して、0.5〜3.0質量部が好ましく、0.8〜2.5質量部がより好ましい。
〔チタンアセチルアセトネート系化合物(E)(硬化触媒)〕
上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)は、金属チタン(Ti)に配位子であるアセチルアセトネートが配位した金属キレートであり、具体的には、例えば、チタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)[(CO)Ti(C]、チタンテトラアセチルアセトナート[Ti(C]等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ここで、接着剤組成物に含有される硬化触媒として、例えば、ビスマス(Bi)系やジルコニウム(Zr)系の触媒を用いた場合、接着性が劣る。また、チタン(Ti)系であってもアセチルアセトネート系以外のキレート等の場合にも、やはり接着性が劣る。なおスズ(Sn)系を用いた場合には、接着性は比較的良好であるが、貯蔵安定性が不十分となる。
しかし、本発明の接着剤組成物は、硬化触媒として上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)を含有することにより、接着性、貯蔵安定性が優れる。
本発明の接着剤組成物において、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量は、上記混合物100質量部に対して0.001〜0.4質量部である。この含有量が少なすぎると接着性が劣り、多すぎると貯蔵安定性が劣るが、上記範囲内である本発明の接着剤組成物は、接着性および貯蔵安定性が優れる。
上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量は、上記効果がより優れるという理由から、上記混合物100質量部に対して、0.005〜0.2質量部が好ましく、0.007〜0.1質量部がより好ましい。
本発明の接着剤組成物を得る方法は、特に限定されず、例えば、上記混合物(ベース材)、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)、および、上記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)を混合し、本発明の接着剤組成物を得る方法が挙げられる。
ここで、上記混合方法として、上記混合工程における混合方法と同様の方法が好適に例示される。
また、混合時の温度、雰囲気は、特に限定されないが、上記脂肪族イソシアネート化合物(D)の融点以上の温度で混合されるのが好ましく、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下または減圧下で混合されるのが好ましい。
以上説明したように、本発明の接着剤組成物は、接着性、貯蔵安定性、および、耐熱老化性に優れるから、例えば自動車用、建築用などの接着剤として好適である。
とりわけ、本発明の接着剤組成物は、塗装鋼板に対する接着性が良好であるから、従来、自動車のウィンドウガラスをボデー(塗装鋼板)に取り付ける際に塗装鋼板と接着剤との界面に使用されていたプライマーの使用を回避することができる。
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
<混合物(ベース材)の調製>
(混合工程)
まず、レーディゲミキサー(マツボー社製)に、ポリオール化合物1および2ならびに可塑剤を液体成分(A)として添加し、その後、カーボンブラックおよび炭酸カルシウムを粉体成分(B)として添加し、110℃、2時間かくはんしてペースト状混合物を調製した。なお、各成分の配合量(単位:質量部)は、下記第1表に示すとおりである(以下同様)。
(脱水工程)
次に、ペースト状混合物が入ったレーディゲミキサー内を30〜60℃、1.2kPa以下にして、30分間乾燥した。
(生成工程)
次に、プラネタリーミキサーに、MDIをポリイソシアネート化合物(C)として添加し、更に上記乾燥後のペースト状混合物を添加した後に、金属触媒を添加して、60℃、1時間かくはんして、MDIと該ペースト状混合物中のポリオール化合物1および2との反応によりウレタンプレポリマーを生成させ、該ウレタンプレポリマーを含む混合物(ベース材)を得た。
<接着剤組成物の調製>
次に、上記ベース材を得たプラネタリーミキサーに、下記第2表に示す硬化触媒および接着付与剤を同表に示す配合量(単位:質量部)で添加し、かくはんして、比較例1〜13および実施例1〜12の接着剤組成物を得た。
上記第1表に示す各成分は、以下のとおりである。
・ポリオール化合物1:2官能ポリプロピレングリコール(EXCENOL 2020、旭硝子社製)
・ポリオール化合物2:3官能ポリプロピレングリコール(EXCENOL 5030、旭硝子社製)
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(ジェイ・プラス社製)
・カーボンブラック:カーボンブラック1(ニテロン ♯200、新日化カーボン社製)とカーボンブラック2(ニテロン ♯300、新日化カーボン社製)との混合物(質量比=75/25)
・炭酸カルシウム:重質炭酸カルシウム(スーパーS、丸尾カルシウム社製)
・MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート(コスモネートPH、三井化学社製)
・金属触媒:ビスマス系触媒(ネオスタンU−600、日東化成社製)
次に、比較例1〜13および実施例1〜12の接着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を下記第2表に示す。
<貯蔵安定性>
各接着剤組成物を調製した後、40℃で、7日間貯蔵した後のSOD粘度(Pa・s)を測定した。SOD粘度は、JASO M338−89に準拠して、圧力粘度計(ASTM D 1092)を用いて測定した。実用上の観点から、貯蔵後のSOD粘度が100Pa・s未満であれば、貯蔵安定性に優れるものとして評価できる。
<接着性>
各接着剤組成物を、アクリル系塗料が塗布された塗装鋼板上に塗布し、20℃、60%RH(±5%)の雰囲気下で7日間放置して、さらに40℃温水に7日間浸漬し、取り出して水分を拭き取り、試験片を得た。得られた試験片を用いて、ナイフカットによる手剥離試験を実施した。
手剥離試験の結果、組成物の全体が凝集破壊して界面剥離しなかったものを接着性に優れるものとして「○」と評価し、界面剥離部分が確認されたものを接着性に劣るものとして「×」と評価した。
<耐熱老化性>
各接着剤組成物の硬化物シートから厚さ2mmのダンベル状3号形試験片を切り出し、この試験片を、80℃で、14日間放置して、熱老化させた。そして、熱老化させた試験片について、JIS K6251-1993に準じた引張試験(引張速度:200mm/分)を行い、切断時伸び(単位:%)を測定した。実用上の観点から、熱老化後の切断時伸びが270%以上であれば、耐熱老化性に優れるものとして評価できる。
上記第2表に示す硬化触媒は、以下のとおりである。
・Sn系:ジオクチル錫ラウレート(ネオスタンU−810、日東化成社製)
・Bi系:無機ビスマス(ネオスタンU−600、日東化成社製)
・Zr系:ジルコニウムアセチルアセトンキレート(オルガチックスZC−700、マツモトファインケミカル社製)
・Ti系(キレート):チタンアセト酢酸エチルキレート(オルガチックスTC−750、マツモトファインケミカル社製)
・Ti系(アセチルアセトネート):チタンテトラアセチルアセトネート(オルガチックスTC−401、マツモトファインケミカル社製)
また、上記第2表に示す接着付与剤は、以下のとおりである。
・HDI変性体(3官能):ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体(タケネートD−165N、三井化学社製)
・TDI(2官能):トリレンジイソシアネート(コスモネートT−80、三井化学社製)
・TDI変性体(3官能):トリレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(デスモジュール1351、バイエル社製)
上記第2表に示す結果から明らかなように、実施例1〜12は、いずれも貯蔵後の粘度が100Pa・s未満であり、貯蔵安定性に優れていた。また、接着性の結果は、いずれも「○」であり良好であった。さらに、熱老化後の切断時伸びが、いずれも270%以上であり、耐熱老化性にも優れていた。
これに対して、比較例1〜13は、貯蔵安定性、接着性および耐熱老化性のうち、いずれかの結果が劣っていた。
具体的には、硬化触媒および接着付与剤のいずれか一方または両方を含まない比較例1〜3は、接着性が劣っていた。
また、チタンアセチルアセトネート系化合物(E)以外の硬化触媒を用いた比較例4は、貯蔵安定性に劣り、同様の比較例5〜7は接着性が劣っていた。
また、脂肪族イソシアネート化合物(D)以外の接着付与剤を用いた比較例8および9は、接着性が劣っていた。
また、チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒の量が少なすぎる比較例10は接着性が劣り、多すぎる比較例11は貯蔵安定性が劣っていた。
また、脂肪族イソシアネート化合物(D)である接着付与剤の量が少なすぎる比較例12は接着性が劣り、多すぎる比較例13は耐熱老化性に劣っていた。

Claims (2)

  1. 1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有するポリオール化合物を含有する液体成分(A)と充填剤を含有する粉体成分(B)とを混合し、前記液体成分(A)と前記粉体成分(B)とのペースト状混合物を得る混合工程と、前記混合工程の後、前記ペースト状混合物中の残存水分の少なくとも一部を除去する脱水工程と、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(C)と、前記脱水工程後の前記ペースト状混合物とを混合し、前記ポリイソシアネート化合物(C)と前記ペースト状混合物中の前記ポリオール化合物との反応により生成するウレタンプレポリマーを含む混合物を得る生成工程と、を備える方法により得られる前記混合物と、
    1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物(D)である接着付与剤と、
    チタンアセチルアセトネート系化合物(E)である硬化触媒と、を含有し、
    前記脂肪族イソシアネート化合物(D)の含有量が、前記混合物100質量部に対して0.1〜4.0質量部であり、
    前記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)の含有量が、前記混合物100質量部に対して、0.001〜0.4質量部である、接着剤組成物を得る、接着剤組成物の製造方法であって、
    前記混合物、前記脂肪族イソシアネート化合物(D)、および、前記チタンアセチルアセトネート系化合物(E)を混合する、接着剤組成物の製造方法
  2. 前記脂肪族イソシアネート化合物(D)が、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応生成物、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット体、および、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の接着剤組成物の製造方法
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