JP5983149B2 - タッチパネル用電極基材、及びタッチパネル、並びに画像表示装置 - Google Patents

タッチパネル用電極基材、及びタッチパネル、並びに画像表示装置 Download PDF

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Description

本発明は、タッチパネル用電極基材と、これを用いたタッチパネル、並びに該タッチパネルを用いた画像表示裝置に関する。特に、ディスプレイパネルの画素の周期的配列との干渉によるモアレが視認され難いタッチパネル用電極基材とタッチパネル、並びに画像表示装置に関する。
近年、各種電子機器の入力装置としてタッチパネルが普及してきている。タッチパネルは抵抗膜方式など各種方式のものが実用化されているが、なかでも最近注目されているのは、マルチタッチ(多点同時入力)が可能な静電容量方式のタッチパネルである。
タッチパネルは、一般的には、図17の断面図で示すように、タッチパネル用電極基材40として、ガラス板やポリエチレンテレフタレートフィルム等からなる透明基材41の片方の面上に、ITO(インジウム錫酸化物)薄膜からなる透明導電膜42aを形成したものが使用されている(特許文献1)。
ただ、ITO薄膜からなる透明導電膜42aは、インジウムというレアメタル(希土類元素)が使用される為に高価である点、及び、抵抗(表面抵抗率)がタッチパネルの大面積化を図るには高抵抗である点で、低コスト化及び大画面化への要求に対応し難い。
そこで、ITO薄膜の透明導電膜42aに代えて、図18(A)の断面図、及び図18(B)の平面図で示すタッチパネル用電極基材40のように、透明基材41に、金属細線パターンからなる金属メッシュ42bを形成したものが提案されている(特許文献2)。金属メッシュ42bによれば、ITO薄膜に比べて低コストかつ低抵抗にできる。
特開2008−310551号公報 特開2011−134311号公報
しかしながら、上記金属メッシュ42bは、細い細線から構成されるために不可視ではあるが、図18(B)のように、正方格子状の周期的パターンであるために、ディスプレイパネルの画素の周期的配列と干渉して、モアレ(縞模様)が視認され、これを回避することは一般的に困難である。
すなわち、本発明の課題は、金属に代表される導電体のメッシュを用いていながらディスプレイパネルの画素の周期的配列との干渉によるモアレが視認され難いタッチパネル用電極基材と、これを用いたタッチパネルを提供することである。
そこで、本発明では、次の様な構成のタッチパネル用電極基材及びタッチパネル、並びに画像表示装置とした。
(1)透明基材と、この透明基材の少なくとも片面に形成され多数の開口領域を画成する導電体メッシュとを有するタッチパネル用電極基材であって、
前記導電体メッシュの平面視形状であるメッシュパターンが、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
前記メッシュパターンは、前記境界線分及び前記開口領域について、
(条件A)5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域、及び、7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域のうち、少なくとも二種類の開口領域が含まれている。
(条件B)6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、最も多く含まれている。
(条件C)周囲を取り囲む境界線分の数が同一の開口領域の形状は一定でない。
の3条件を満たすメッシュパターンを含み、
AVG −3σ≦D≦D AVG +3σとしたときに(D AVG は開口領域の大きさDの平均値、σは開口領域の大きさDの分布の標準偏差)、3σ=0.1D AVG 〜0.5D AVG である
タッチパネル用電極基材。
(2)前記(1)のタッチパネル用電極基材を含んでなる、タッチパネル。
(3)前記(2)のタッチパネルをディスプレイパネルの表示面側に配置してなる、画像表示裝置。
本発明によれば、導電体メッシュが透明導電膜として機能してタッチパネルに必要な透明性及び導電性が確保された上で、この導電体メッシュのメッシュパターンと、ディスプレイパネルの画素の周期的配列との干渉によるモアレを視認され難くすることができる。
本発明によるタッチパネル用電極基材の一実施形態を説明する断面図(A)と平面図(B)。 本発明によるタッチパネル用電極基材の別の実施形態(両面形成)を説明する断面図。 本発明によるメッシュパターンの一例を示す平面図。 メッシュパターンで画成される開口領域の配置に、周期性を有する方向が存在しないことを説明する平面図。 メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。 メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。 メッシュパターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。 決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。 決定された母点からボロノイ図を作成してメッシュパターンを決定する方法を示す図。 本発明によるメッシュパターンを示す平面図。 ディスプレイパネルの画素配列を示す平面図。 図10Aと図10Bとを重ねた状態を示す平面図。 従来の周期的メッシュパターンを示す平面図。 ディスプレイパネルの画素配列を示す平面図。 図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。 メッシュパターンがタッチパネル用電極基材の寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。 本発明によるタッチパネルの一実施形態(表面型静電容量方式)を模式的に説明する平面図。 本発明によるタッチパネルの別の実施形態(投影型静電容量方式)を模式的に説明する平面図。 図14で第1の電極パターンの形状(A)と第2の電極パターンの形状(B)を説明する平面図。 本発明によるタッチパネルを、ディスプレイパネルと組み合わせた、本発明による画像表示装置の一実施形態を示す断面図。 従来のタッチパネル用電極基材の一例を示す断面図。 従来のタッチパネル用電極基材の別の一例を示す断面図(A)と平面図(B)。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
「シート面」とは、シート状のタッチパネル用電極基材10を全体的かつ大局的に見た場合において、その平面方向と一致する面のことを意味する。
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線の方向から見た形状のことを意味する。
「シート面」は、通常、透明基材1の表面又は裏面と平行な面でもあり、図1に於いては、XY平面又はこれと平行な面となる。
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
〔B〕タッチパネル用電極基材:
先ず、本発明によるタッチパネル用電極基材を、図1に示す一実施形態例を参照して説明する。図1(A)は断面図、図1(B)は平面図である。
図1に示す実施形態のタッチパネル用電極基材10は、透明基材1の片面に導電体メッシュ2を有し、この導電体メッシュ2は多数の開口領域Aを画成することで、タッチパネルに必要な透明性と導電性とを確保している。さらに、この導電体メッシュ2の平面視形状であるメッシュパターン2Pが、本発明特有のパターンとなっている。
すなわち、このメッシュパターン2Pは、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成され、境界線分L、及び開口領域Aについて、
(条件A)5本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域A、6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域A、及び、7本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aのうち、少なくとも二種類の開口領域Aが含まれている。
(条件B)6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aが、最も多く含まれている。
(条件C)周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aの形状は一定でない。
の3条件を満たすメッシュパターンを含むパターンとなっている。
このため、本実施形態では、導電体メッシュ2及びそのメッシュパターン2Pについて、ディスプレイパネルの画素の周期的配列との干渉によるモアレを視認され難くすることができる。
以下、更に本発明について、構成要素毎に詳述する。
《透明基材》
透明基材1は、透明で電気絶縁性の基材であれば特に制限はなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート樹脂などからなる樹脂シート、ガラス、セラミックス等からなる無機板を用いることができる。
なお、一般に、タッチパネル用電極基材或いはこれを用いたタッチパネルを、液晶表示パネルの表示面上に配置する場合、その透明基材として通常の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートを用いると、当該シートが有する光学異方性による液晶表示パネル出射光の偏光面の回転効果と当該シートが有する偏光フィルタ効果(透過光中にはP偏光成分が、又反射光中にはS偏光成分が増えることによる)との複合効果によって、干渉縞乃至は虹色のムラが視認され画像視認性が阻害されることが知られている(特許第3947950号公報、特許第4888853号公報等参照)。本発明のタッチパネル用電極基材10乃至はこれを用いたタッチパネルに於いても、こうした問題は生じ得る。このような干渉縞乃至は虹色のムラを解消する為には、透明基材1として、以下の何れかのものを使うことが有効である。
(1)トリアセチルセルロースシートの様な屈折率異方性の小さい材料。
(2)特許第3947950号公報、特許第4888853号公報等に開示される如くの、面内位相差値Reが通常の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートシートよりも十分大な値、具体的には、Re≧3000nm、より好ましくはRe≧8000nmの高延伸倍率(3〜7倍程度)で延伸されたポリエチレンテレフタレートシート等のポリエステル樹脂シート。ここで面内位相差値Reは、上記樹脂シートのシート面内の遲相軸方向屈折率nx、進相軸方向屈折率ny、及び厚みdから、Re=(nx−ny)×dとして定義される。
《導電体メッシュ》
導電体メッシュ2は、導電体材料が所定のメッシュパターン2Pで形成されてなる。導電体材料としては、銅、金、銀、白金、錫、アルミニウム、ニッケル等の高導電性金属(これらの合金も含む)を用いることができる。特にこれらの高導電性金属は、ITO薄膜等の金属酸化物薄膜に比べて、導電体メッシュ2を形成した面の表面抵抗率を低くできる利点がある。高導電性金属を用いた導電体メッシュ2は、金属箔、金属蒸着層などの金属層のエッチングによるパターンニング、或いは、金属粉末とバインダ樹脂を含む導電ペースト等を用いた印刷法など、公知の形成法で形成することができる。
バインダ樹脂として、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などを用いることができる。なかでも、アクリレート系の電離放射線硬化性樹脂は、硬化が迅速で且つ導電体メッシュ2の強度にも優れ、好ましい樹脂の一種である。
導電体メッシュ2は、許容されるならば、表面抵抗率は金属からなる場合に比べて高くなるが、ITO薄膜、IZO(インジウム亜鉛酸化物)薄膜のような、完全に透明ではなく注視すればパターンが視認できる透明導電膜で形成されたものでもよい。
導電体メッシュ2の線幅は、導電体メッシュ2が金属からなる不透明な場合は、透明性が要求される位置検知領域内については、視認距離に応じた不可視性及び要求される面積抵抗率により適宜設定する。例えば、線幅は50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下とするとよい。下限は、例えば、断線を回避する為に1μm以上、好ましくは3μm以上とする。
なお、図1に示す実施形態では、導電体メッシュ2が透明基材1の片面に形成された形態であるが、本発明のタッチパネル用電極基材10は、図2の断面図で示す実施形態例のように、導電体メッシュ2が透明基材1の両面に形成された形態もあり得る。
以下、本発明に特徴的なメッシュパターン2Pについて説明する。
〔メッシュパターン2Pとこれにより画成される開口領域A〕
メッシュパターン2Pは、導電体メッシュ2を、シート面の法線方向(図1でZ軸方向)から観察した場合における、導電体メッシュ2の平面視形状である。以下、このメッシュパターン2Pについて、図3及び図9を主として参照しながら説明する。
図3及び図9に示すように、メッシュパターン2Pは、二つの分岐点Bの間を延びて開口領域Aを画成する多数の境界線分Lから形成される。
メッシュパターン2Pのライン部Ltは、多数の分岐点Bを含んでいる。メッシュパターン2Pのライン部Ltは、両端において分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成されている。すなわち、メッシュパターン2Pのライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びる多数の境界線分Lから構成されている。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続されていくことにより、開口領域Aが画成されている。言葉を換えて言うと、境界線分Lで周囲を取り囲まれ、区画されて1つの閉領域としての開口領域Aが画成されている。
なお、本実施形態におけるメッシュパターン2Pは、図3及び図9に示すように、ライン部Ltが境界線分Lのみから構成されているため、ライン部Ltを構成する境界線分Lは全て相互に電気的に接続された閉回路を構成する結果、開口領域Aの内部に延び入って行き止まりとなる面積抵抗率には寄与せず透明性を低下させるだけのライン部Ltは存在しない。このような態様によれば、導電体メッシュ2に十分な低抵抗と高い透明性とを同時に付与することを効果的に実現することできる。
メッシュパターン2Pは、境界線分L及び開口領域Aについて、
(条件A)5本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域A、6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域A、及び、7本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aのうち、少なくとも二種類の開口領域Aが含まれている。
(条件B)6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aが、最も多く含まれている。
(条件C)周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aの形状は一定でない。
の3条件を満たすメッシュパターンを含むパターンとなっている。
[(条件A)及び(条件B);開口領域Aの周囲を取り囲む境界線分Lの数]
(条件A)5本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域A、6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域A、及び、7本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aのうち、少なくとも二種類の開口領域Aが含まれている。及び、
(条件B)6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aが、最も多く含まれている。
の2条件において、周囲を取り囲む境界線分Lの数とは、開口領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数(或いは辺数〕と一致する。
即ち、各開口領域Aを構成する境界線分Lが全て直線のみからなる場合は、5本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aは、5角形となり、6本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aは6角形となり、7本の境界線分Lによって周囲を取り囲まれた開口領域Aは、7角形となる。
なお、境界線分Lは、後述するように、直線、折れ線、曲線など、他の境界線分Lと接触しなければ、何れでもよい。
ちなみに、後述する図10Aのメッシュパターン2Pについて、合計4631個の開口領域Aについて、周囲を取り囲む境界線分Lの数(本数)と、境界線分Lの数毎の開口領域Aの個数とを計測したところ、
3本 0個
4本 79個
5本 1141個
6本 2382個
7本 927個
8本 94個
9本 8個
10本以上 0個
であり、周囲を取り囲む境界線分Lの数が、5本、6本、及び7本の開口領域Aを全て含み、且つ6本の開口領域Aの数が最多であった。
[(条件C);開口領域Aの形状]
(条件C)周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aの形状は一定でない。
この(条件C)の意味は、周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aの全部が互いに同一形状ではなく、少なくとも1つは残りの開口領域Aと異なる形状のものを含むと言う意味である。なお、好ましくは、周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aの50%以上が、互いにその形状が異なるようにする。
ここで、2つの開口領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、その2つの開口領域Aの形状は互いに異なると見なす。
(開口領域Aの面積)
周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aは、その形状が一定でないことに加えて、更にその面積も一定でないことが、より好ましい。これは、言い換えると、メッシュパターン2Pに含まれる開口領域Aのうち、周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一となる開口領域Aのうち、その形状及び面積がすべての開口領域Aで同一ではなく、少なくとも一部の開口領域Aは他と異なるものになると言うことを意味する。本実施形態におけるメッシュパターン2Pは、こうしたメッシュパターンからなる。
このようにすることによって、より一層、モアレを視認され難くすると共に、明暗ムラ
を、より一層視認され難くすることができる。
[3条件での効果]
本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単にメッシュパターンのパターンを不規則化するのではなく、上記(条件A)、(条件B)及び(条件C)の3条件を満たすメッシュパターンを含むメッシュパターン2Pとすることにより、金属メッシュ42bが周期的パターンである構成の従来のタッチパネル用電極基材40と、周期的画素配列を有するディスプレイパネルとを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に視認され難くすることができると判明した。
こうしたモアレ防止効果が、導電体メッシュ2の全域に亘って得られるようにするには、そのメッシュパターン2Pの全領域が、上記(条件A)、(条件B)及び(条件C)の3条件を満たすメッシュパターンのみから構成されていることが好ましい。本実施形態においては、このようなメッシュパターン2Pとなっている。
[一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数]
さらに、本実施形態によるメッシュパターン2Pでは、上記(条件A)、(条件B)及び(条件C)の3条件を満たすメッシュパターンが、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となるメッシュパターンとなっている。このように一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、メッシュパターン2Pの配列パターンを、図11Aに示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、ハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。
こうすることによって、モアレを、極めて効果的に且つ安定的に視認され難くすることができる。
なお、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、メッシュパターン2P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延びる境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの開口領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、後述の寸法例で開口領域Aが形成されているメッシュパターン2Pにおいては、10mm×10mmの部分)に含まれる分岐点Bについて延びる境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該メッシュパターン2Pについての一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
実際に、図3に示された導電体メッシュ2のメッシュパターン2Pでは、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3のメッシュパターン2Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
[繰返周期の不存在]
本実施形態におけるメッシュパターン2Pは、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている。
図4は、メッシュパターン2Pに対するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。同図では、メッシュパターン2Pで画成される多数の開口領域Aが、周囲を取り囲む境界線分Lの数が同一の開口領域Aの面積及び形状は一定でない。そして、開口領域Aに一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しない、言い換えると、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない。同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの開口領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の開口領域Aに対して直線di上で隣接する別の開口領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の開口領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共にメッシュパターン2Pとは分離して描いてある。
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各開口領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された開口領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、開口領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での開口領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、開口領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、とも表現する。
このように、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことが、モアレを視認され難くすることに寄与している。
〔メッシュパターンのパターン形状の作成方法〕
ここで、本発明固有の上記メッシュパターン2Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定してメッシュパターン2P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標系と区別する為、頭に「絶対」を付記する)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系O−X−Y上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
以上の手順で、メッシュパターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。メッシュパターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、メッシュパターン2Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
なお、図8(A)に於いて、これら母点群から得られるボロノイ境界(図9参照)を参考までに破線で図示してある。この図から、例えば、BP3とBP1の両母点は互いに隣接するが、BP3とBP6の両母点は互いに隣接しないことがわかる。
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標系上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる開口領域Aの大きさ(乃至は開口領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)ではなく、有限の範囲内に分布したものとなる。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点BPから見た他の母点BPの方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、こうした母点(群)BPから生成されるメッシュパターン2Pに於ける開口領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
この様に構成することにより、開口領域Aの面分布がより均一化して、メッシュパターン2Pの粗密がより均一化し、導電体メッシュ2を目視した際の透明性の均一性が不足すると生じる明暗ムラを、より一層効果的に目立たなくさせることができる。
モアレを防止しつつ、明暗ムラをより目立ち難くさせる為には、開口領域Aの大きさDの分布を、
AVG−3σ≦D≦DAVG+3σ
としたときに(但し、DAVGは大きさDの平均値、σは大きさDの分布の標準偏差)、
3σ=0.1DAVG〜0.5DAVG
とするのが好ましい。
ここで、開口領域Aの大きさDは、全ての開口領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この開口領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの開口領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描けない場合は、この開口領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値(多角形の場合は最長の対角線長)を以って、大きさDとする。
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの開口領域Aの大きさDを大きくすることができる。
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各垂直二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、垂直二等分線からなる線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、メッシュパターン2Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。
境界線分Lは、同図のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。
境界線分Lは、同図のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、作成されたメッシュパターン2Pを呈する導電体メッシュ2によって得られる表面抵抗率と透明性とを勘案して、決定される。以上のようにして、メッシュパターン2Pのパターンを決定することができる。
なお、メッシュパターン2Pの代表的な寸法パラメータとしては、例えば、境界線分Lの線幅を1〜100μm、開口領域Aの大きさDの平均値DAVGを50〜1000μmとすることができる。
[ディスプレイパネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10Cには、図3及び図10Aに示されたメッシュパターン2Pを、図10Bに示されたディスプレイパネル30に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図10Cからも理解され得るように、図3及び図10Aに示されたメッシュパターン2Pを実際に作製してディスプレイパネル30の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度のモアレは生じなかった。
ここで、図10Bで示されたディスプレイパネル30の画素配列は、ディスプレイパネル30に於ける典型的な画素配列である。図10Bに示す様に、このディスプレイパネル30では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)Prと、緑色に発光する副画素Pgと、青色に発光する副画素Pbと、から構成されている。すなわち、ディスプレイパネル30はカラーで画像を形成することができる。図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素Pr、緑色に発光する副画素Pg及び青色に発光する副画素Pbは、それぞれ、一つの方向(図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素Pr、緑色に発光する副画素Pg及び青色に発光する副画素Pbは、当該一つの方向に直交する方向(図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図10Bは、ディスプレイパネル30の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、ディスプレイパネル30のパネル面への法線方向から当該ディスプレイパネル30を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
一方、画成される開口領域Aの配置が周期性を有する周期的メッシュパターン42Pの場合のモアレ発生を例示するのが図11A〜図11Cである。
図11Aは、正方格子状の周期的メッシュパターン42Pであり、本発明のメッシュパターン2Pとは異なるものである。
図11Cには、図11Aに示された周期的メッシュパターン42Pを、図11Bに示されたディスプレイパネル30(図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11A、図11B及び図11Cからも理解され得るように、周期的メッシュパターン42Pを有するタッチパネル用電極基材40がディスプレイパネル30の画素配列上に配置されると、周期的メッシュパターン42Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図11Cに示された例では、モアレとして左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
なお、図11A及び図11Cに示された例では、周期的メッシュパターン42Pのストライプを構成する多数の直線の配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳ではなく、この他、画素P及び周期的メッシュパターン42Pの周期比、周期的メッシュパターン42Pの線幅等の要因にも依存する。周期的メッシュパターン42Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、ディスプレイパネル30の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なるタッチパネル用電極基材を用意する必要がある。
これに対して、本発明固有のメッシュパターン2Pは、バイアス角を考慮することなく、1種類のパターンのみで各種画素設計のディスプレイパネル30に対してモアレが視認され難く、実用上モアレが視認されない汎用性の高いタッチパネル用電極基材10を提供することができる。
以上のように本実施形態のタッチパネル用電極基材10によれば、周期的配列された画素Pを有するディスプレイパネル30に重ねたときに、モアレが視認され得る程度に生じることを効果的に防止することができる。
《変形形態》
本発明のタッチパネル用電極基材10は、上記した形態以外の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
〔単位パターン領域としてのメッシュパターン2Pの繰り返し〕
上述した実施形態では、メッシュパターン2Pの全領域において、開口領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている例を説明した。
ただ、本発明においては、図12の様に、その内部に於いて導電体メッシュ2が有するメッシュパターン2Pの全領域が、単位パターン領域Sを特定方向に配列することによって複数集合してメッシュパターン2Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の開口領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、メッシュパターン2Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで開口領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰り返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレは視認され難くなっている。この例において、一つの単位パターン領域S内におけるメッシュパターン2Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
特に最近では、ディスプレイパネルの大型化が進んでおり、この様な大画面のディスプレイパネル30に対しては、導電体メッシュ2が有するメッシュパターン2Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで開口領域Aが配列されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、メッシュパターン2Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図12に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰り返しが存在する。図12の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に開口領域AをM個有するとき、直線dj上の或る開口領域Aに注目すると、直線dj上では開口領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の開口領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、開口領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、開口領域Aとしての繰返周期(周期性)ではなく、各単位パターン領域S内に於いて開口領域Aがその配置に周期性を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、ディスプレイパネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
図12に示された例では、タッチパネル用電極基材10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各導電体メッシュ2が有するメッシュパターン2Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図12の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図12の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
〔着色フィルタの追加〕
本発明のタッチパネル用電極基材10は、実質上、ディスプレイパネルの画素の周期的配列との干渉によるモアレが生じないとともに、明暗ムラも生じない。しかしながら、原因は現在不明であるが、タッチパネル用電極基材10を用いたタッチパネルを、ディスプレイパネルの表示面側に設置した場合、条件如何によっては、画像に微細なチラツキが生じる場合がある。このチラツキを目立ち難くする為に、本発明のタッチパネル用電極基材10は、その表面上、裏面上、或いは構成層間中の適宜位置に、可視光線中の特定波長域の中に吸収スペクトルを持つ着色フィルタを積層することが有効である。すなわち、本発明のタッチパネル用電極基材10は、前記着色フィルタを構成層として含むことができる。前記着色フィルタとしては、無彩色(黒色乃至灰色)、有彩色(青、茶、緑等)の何れでもよいが、画像の色彩に影響が少ない点で無彩色の方が好ましい。
〔C〕タッチパネル:
本発明によるタッチパネルは、上記したタッチパネル用電極基材10を含んでなる入力装置である。
上記タッチパネル用電極基材10は、その導電体メッシュ2の必要な部分を残し、不必要な部分は除去して、必要な電極パターンを形成した形で、タッチパネルに組み込まれる。あるいは、上記タッチパネル用電極基材10は、その導電体メッシュ2の形成時から必要な電極パターンで形成しておいてもよい。タッチパネルに組み込まれたタッチパネル用電極基材10は、電極パターン以外の配線等その他の導電層で形成されてなるパターンも、その一部又は全部を導電体メッシュ2で形成されたものとしてもよい。
図13及び図14は、本発明のタッチパネル20の実施形態例である。図13は表面型静電容量方式のタッチパネル20を模式的に示す。図14は投影型静電容量方式のタッチパネル20を模式的に示す。
なお、投影型静電容量方式はマルチタッチ(多点同時入力)が可能な点でも注目されている方式であるが、他の方式でもマルチタッチを可能にする技術が提案されている。
図13の表面型静電容量方式のタッチパネル20は、透明基材1の片面に一様に導電体メッシュ2からなる長方形形状の電極パターン3を有する。この電極パターン3の外周部に接続された複数の配線5から、透明基材1の外部に設けた制御回路6に、図示しないフレキシブル配線基板を介して接続され、この制御回路6により、駆動及び入力位置検知が行われる。
図14の投影型静電容量方式のタッチパネル20は、図15(A)に示すような第1の方向に延びる第1の電極パターン3aと、図15(B)に示すような第2の方向に延びる第2の電極パターン3bと、を有する。第1の電極パターン3aと第2の電極パターン3bとは互いに電気的に絶縁されている。
第1の方向と第2の方向とは互いに交差し、本実施形態例では互いに直交する。複数の第1の電極パターン3aのそれぞれは、四角形状乃至は菱形形状の単位電極4aを、その角部分で複数連ねて形成される。同様に、第2の電極パターン3bのそれぞれも、四角形状乃至は菱形形状の単位電極4bを、その角部分で複数連ねて形成される。
図14の図中右下で示すように、単位電極4aは、本発明特有のメッシュパターン2Pを有する。複数の単位電極4aは、全て同一パターンのメッシュパターン2Pにしてもよい。つまり、前記図12を参照して説明した、単位パターン領域Sが、単位電極4aに該当する。複数の単位電極4bも同様にして良く、複数の単位電極4aと複数の単位電極4bに於けるメッシュパターン2Pを全てを同一パターンとしてもよい。
第1の電極パターン3aと第2の電極パターン3bとの形成面は、透明基材1の同一面に形成される態様と、それぞれを異なる面に形成する態様とがある。後者の異なる面に形成する態様ではさらに、1枚の同じ透明基材1の表裏両面に分けて形成される態様と、2枚の異なる透明基材1のそれぞれの片面に分けて形成される態様とがある。
第1の電極パターン3aと第2の電極パターン3bとが同一面に形成される態様の場合は、図示はしないが、従来と同様に、第1の電極パターン3aと第2の電極パターン3bとは、互いの交差部分(それぞれの単位電極4a同士、或いは単位電極4b同士を接続する部分)に絶縁層と導通層等を設けることで、第1の電極パターン3aと第2の電極パターン3bとが互いに電気的に絶縁されて形成される。
複数の第1の電極パターン3aと複数の第2の電極パターン3bとは、それぞれ配線5a,配線5bを介して、透明基材1の外部に設けた制御回路6に、図示しないフレキシブル配線基板を介して接続され、この制御回路6により、駆動及び入力位置検知が行われる。
以上、図13及び図14を参照して、静電容量方式のタッチパネル20の基本的な構成を説明したが、上記した構成要素以外に、製品仕様に応じて設ける、コネクタ、保護ガラス、保護膜など、公知の部材を含み得る。
また、位置検知方式として、表面型と投影型の静電容量方式のタッチパネルを例に挙げて説明したが、本発明のタッチパネル用電極基材10、乃至はこれを用いたタッチパネル20は、その位置検知方式は、これに限定されるものではない。
また、電極パターンの形状は、例えば同じ投影型静電容量方式のタッチパネルであっても、上記で説明した以外に、各種あり得る。
〔着色フィルタの追加〕
本発明によるタッチパネル20は、前記タッチパネル用電極基材10の変形形態として説明したのと同様の理由から、タッチパネル20をディスプレイパネルの表示面側に設置
したとき、画像に微細なチラツキが生じる場合は、このチラツキを目立ち難くする為に、前記着色フィルタを構成層として含むことが好ましい。
〔反射防止処理の追加〕
本発明によるタッチパネル用電極部材10を構成要素とするタッチパネル20の画像観察者側表面、ディスプレイパネル30側表面、或いは画像観察者側表面とディスプレイパネル30側表面の両面に反射防止処理を施すことができる。画像観察者側表面に反射防止処理を施した場合、日光、電灯光等の外来光の反射による画面の白化や周囲の風景の映り込みによる画像視認性低下を防止し得る。ディスプレイパネル30側表面に反射防止処理を施した場合は、ディスプレイパネル30とタッチパネル20との間の光多重反射による干渉縞(Newton環等)、ゴースト像等の発生を防止し得る。こうした反射防止処理としては従来公知のものを適宜採用し得る。例えば、以下の(1)〜(3)を採用し得る。
(1)低屈折率層の単層、或いは、低屈折率層と高屈折率層とを、該低屈折率層が最上層に位置する様に交互に積層した多層構成からなる反射防止層。低屈折率層はケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。なお、ここで高(低)屈折率層とは、該層と隣接する層(例えば、透明基材1、或いは低(高)屈折率層)と比較して該層の屈折率が相対的に高(低)いという意味である。
(2)外来光を散乱乃至は拡散させる為に、光の入射する最表面を粗面化する処理。この粗面化処理には、サンドブラスト法やエンボス法等により基体表面に直接微細凹凸を形成して粗面化する方法;基体表面に放射線、熱の何れかもしくは組み合わせにより硬化する樹脂バインダ中に、光拡散性粒子としてシリカなどの無機粒子や、樹脂粒子などの有機粒子を含有させた塗膜により粗面化層を設ける方法;及び基体表面に海島構造による多孔質膜を形成する方法等を挙げることができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、熱硬化性或いは電離放射線硬化性のアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が好適に使用される。
(3)特許第4406553号公報、特許第4265729号公報、特許第4632589号公報等に開示される如く、表面に隣接突起間距離dが可視光線波長帯域の最短波長λmin以下で配列した微小突起群からなる微小凹凸構造を形成する処理。該微小突起は厚み方向に直交する仮想的切断面に於ける断面積が外部(隣接する空気の側)に向かうに従って減少するような形状とされる。こうした微細凹凸構造は入射光に対する表面部分の屈折率の厚み方向の変化を、該微小突起を構成する材料の屈折率から外部の媒質(通常は空気)の屈折率に向かって連続的に変化させるように機能する。これによって、物体と外部媒質との界面に於ける屈折率の不連続に起因する光反射を低減し得る。
〔D〕画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、上記したタッチパネル20をディスプレイパネルの表示面側に配置してなる構成の画像表示装置である。
図16の断面図は、本発明の画像表示装置の一実施形態を示し、同図の画像表示装置100は、ディスプレイパネル30と、このディスプレイパネル30の表示面30a側に配置された本発明のタッチパネル20とを、少なくとも含む構成の装置である。
ディスプレイパネル30としては、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、EL(電界発光)パネル、電子ペーパーなどの各種ディスプレイパネルの他、ブラウン管でもよい。
〔着色フィルタの追加〕
本発明による画像表示装置100は、前記タッチパネル用電極基材10の変形形態として説明したのと同様の理由から、画像に微細なチラツキが生じる場合は、このチラツキを目立ち難くする為に、タッチパネル20が前記着色フィルタを含まないか又は含んでいても、ディスプレイパネル30の表示面30a側の適宜位置に、前記着色フィルタを含むことが好ましい。
〔E〕用途:
本発明によるタッチパネル用電極基材10、及びタッチパネル20の用途は、特に限定されない。ただし、特にモアレが生じ得る周期的パターンを有する物と組み合わせる用途が好適である。例えば、ディスプレイパネル、或いは網点で表現された白黒乃至はカラーの印刷物である。
本発明の画像表示裝置100は、テレビジョン受像裝置、電算機器、電話機、計測器、医療用機器、遊戯機器、事務用機器、現金自動支払機、電子黒板、電子書籍端末、電子看板、自販機等の、入力手段を表示部等に備えた画像表示装置に広く適用できる。
1 透明基材
2 導電体メッシュ
2P メッシュパターン
3,3a,3b 電極パターン
4a,4b 単位電極
5,5a,5b 配線
6 制御回路
10 タッチパネル用電極基材
20 タッチパネル
30 ディスプレイパネル
30a 表示面
40 従来のタッチパネル用電極基材
41 透明基材
42a 透明導電膜
42b 金属メッシュ
42P 周期的メッシュパターン
100 画像表示装置
A 開口領域
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域

Claims (3)

  1. 透明基材と、この透明基材の少なくとも片面に形成され多数の開口領域を画成する導電体メッシュとを有するタッチパネル用電極基材であって、
    前記導電体メッシュの平面視形状であるメッシュパターンが、二つの分岐点の間を延びて前記開口領域を画成する多数の境界線分から形成され、
    前記メッシュパターンは、前記境界線分及び前記開口領域について、
    (条件A)5本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域、6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域、及び、7本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域のうち、少なくとも二種類の開口領域が含まれている。
    (条件B)6本の境界線分によって周囲を取り囲まれた開口領域が、最も多く含まれている。
    (条件C)周囲を取り囲む境界線分の数が同一の開口領域の形状は一定でない。
    の3条件を満たすメッシュパターンを含み、
    AVG −3σ≦D≦D AVG +3σとしたときに(D AVG は開口領域の大きさDの平均値、σは開口領域の大きさDの分布の標準偏差)、3σ=0.1D AVG 〜0.5D AVG である、タッチパネル用電極基材。
  2. 請求項1に記載のタッチパネル用電極基材を含んでなる、タッチパネル。
  3. 請求項2に記載のタッチパネルをディスプレイパネルの表示面側に配置してなる、画像表示装置。
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