JP5886372B2 - 調速機 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は、エレベータのかごの走行速度の超過を検出して調速動作を行う調速機に関する。
エレベータには、かごが過速状態に陥ったときにかごを非常停止させる調速機が設置されている。調速機は、かごの速度と同速で移動する調速ロープと、調速ロープが巻き掛けられた綱車と、綱車の回転速度に依存して変化する遠心力により変位するウェイトとを有する。かごが過速状態となると、ウェイトに機構的に結合された作動子が停止用スイッチを動作させ、巻上機の電源が遮断される。電源遮断後もさらにかごの速度が上昇する場合(かごが下降しているとき)には、フライウェイトに結合された別の作動子がロープ掴み機構を動作させ、これにより非常止め装置が動作する。
近年では、例えば超高速エレベータ等において、かご上昇時の定格速度を、かご下降時の定格速度の定格速度よりも高めたものがある。この場合、停止用スイッチを動作させる速度閾値である過速度も、かご上昇時とかご下降時とで異なる値に設定される。このように異なる上昇時過速度と下降時過速度に対応するため、調速機に2つの検出機構(第1検出機構及び第2検出機構)を設け、これらを適宜組み合わせるか、あるいはこれらを選択的に動作させることが行われている。
しかし、このように2つの検出機構を設けると、調速機が大型化する。よりコンパクトで、かつ、異なる上昇時過速度と下降時過速度を検出することができる調速機が望まれている。
特許第4306014号公報
本発明は、調速機動作基準となる過速度を異なる値に設定しうる調速機をコンパクトに形成することを目的としている。
本発明の一実施形態の調速機は、エレベータのかごと運動する調速ロープが巻き掛けられ、調速ロープの移動により回転する綱車と、綱車に結合されるとともに綱車の回転速度に応じて変化する遠心力に応じて変位するウェイトとを備え、かごの過速により前記ウェイトの変位量が所定量を超えたときに調速動作を行うものである。この調速機の綱車は、綱車の回転軸線方向に並んだ第1の綱車半体及び第2の綱車半体を有している。回転軸線方向に第1及び第2の綱車半体を相対移動させ、第1及び第2の綱車半体の間の隙間を変化させる駆動機構が設けられる。第1及び第2の綱車半体の間の隙間の大きさを変化させると、調速ロープの綱車への巻き掛け半径が変化し、調速ロープの移動速度に対する綱車の回転速度の比率が変更される。
本発明の一実施形態に係る分割構造の綱車を備えた調速機を適用しうるエレベータ装置を模式的に示した全体図である。 本発明の一実施形態に係る分割構造の綱車を備えた調速機の全体構成の一例を示す斜視図である。 本発明の一実施形態に係る分割構造の綱車を備えた調速機の一つの構成例を説明するための概略図である。 本発明の一実施形態に係る分割構造の綱車を備えた調速機の他の構成例を説明するための概略図である。 図5の構成例におけるベルトの配置について説明するための概略図である。 綱車半体同士の回転軸線方向の相対移動を可能とする機構の一例を示す概略断面図である。
以下に本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
まず、本発明の一実施形態に係る調速機を適用しうるエレベータ装置の全体構成の一例(これに限定されるものではない)について図1を参照して説明する。
図1において、符号1はエレベータの昇降路、符号2は昇降路1上部に設けられた機械室である。機械室2には、駆動シーブ3aを有する巻上機3と、そらせ車4が設けられている。巻上機3及びそらせ車4には、巻上ロープ(主索)5が巻回されている。巻上ロープ5の一端には、エレベータのかご6が吊られており、巻上ロープ5の他端には、釣り合い錘7が吊られている。かご6及び釣り合い錘7は、巻上機3を駆動することにより、昇降路1内を互いに反対方向に昇降する。
昇降路1のピット底部には、非常時に落下するかご6及び釣り合い錘7との衝突による衝撃をそれぞれ緩和するかご用緩衝器8及び釣り合い錘用緩衝器9が設けられている。
機械室2内には、巻上機3の動作を制御する制御装置10が設けられている本実施形態では、制御装置10の制御により、かご6は、上昇時と下降時とで異なる速度で運転される。
かご6には、非常止め装置11が設けられている。非常止め装置11には、かご6に取り付けられたセフティリンクなどと呼ばれるリンク機構(詳細は図示せず)の一部をなすアーム12を介して無端の調速ロープ13が接続されている。調速ロープ13は、昇降路1の底部に設けられた張り車14と、機械室2内の調速機100に設けられた綱車101とに巻き掛けられている。
調速ロープ13は、上述した図示しないリンク機構(アーム12を有する)を介してかご6に連結されているため、通常運転時には、調速ロープ13は、かご6の昇降に追従して張り車14及び綱車101間を循環して移動する。従って、かご6の速度に対応して、綱車101の回転速度が変化する。調速機100は、綱車101の回転速度に応じて遠心力により変位するフライウェイト(詳細後述)の変位に基づいてかご6の速度が所定速度を超過したことを検出し、かご6の調速を行う。
調速機100は、かご6の上昇時における所定速度(例えば定格速度の1.3倍程度)を第1上昇過速度VU1として検出し、かご6の下降時における所定速度を第1下降過速度VD1として検出する。これらの過速度VU1及びVD1が件出されると、巻上機3の駆動停止が行われる。
調速機100は、巻上機3の駆動が停止されてもかご6が停止しない場合、調速機100が、第1下降過速度VD1よりも速い第2下降過速度VD2を検出する。第2下降過速度VD2が検出されると、調速機100は、ロープ掴み機構体102により調速ロープ13を掴み制動する。これにより、調速ロープ13がかご6に対して引き上げられ、アーム12を含む図示しないリンク機構を介して非常止め装置11が動作する。非常止め装置11は、図示しないブレーキシューにより図示しないガイドレールを掴み、かご6の下降を停止させる。
調速機100の構成は、後述するように綱車101を分割構造にした点を除き、公知のものを採用することができる。採択しうる調速機100の構成の一例について、図2を参照して簡単に説明する。
調速機100はフライウェイト式のものである。調速機100は、綱車101の回転軸101Aを支持するフレーム103を有する。綱車101には一対のフライウェイト104が取り付けられている。フライウェイト104は、軸105を介して、水平方向に延びる揺動軸線を中心として揺動可能に綱車101に取り付けられている。なお、後述のように綱車101を2つの半体に分割した場合には、いずれか一方の半体にフライウェイト104を取り付ければよい。一対のフライウェイト104同士は、連結ロッド106により連結されており、両フライウエイ104の変位量(揺動角度)が互いに同じに維持される。
フライウェイト104は、調速動作が行われる過速度(上記の過速度VU1,VD1,VD2)の値(初期設定値)を調整するための付勢機構107により、これらフライウェイト104が遠心力を受けたときに変位する方向と逆の方向に常時ばね付勢されている。
綱車101に軸方向に隣接して、綱車101と同軸のラチェットホイール108が設けられている。ラチェットホイール108は通常運転時には回転せずに静止している。ラチェットホイール108の外周には保持爪(図2では隠れて見えない)が設けられており、この保持爪がロープ掴み機構体102をロープ解放位置(図2に示す斜めに傾斜した位置)に保持している。
フライウェイト104の遠心力による変位(軸105を中心とした揺動角度)が第1の所定量を超えると、フライウェイト104に装着されている作動ピン(図示せず)が停止用スイッチ109に触れて、停止用スイッチ109を動作させ、巻上機3の駆動が停止される。
フライウェイト104の遠心力による変位が第2の所定量を超えると、フライウェイト104に装着されている作動爪(図2では隠れて見えない)がラチェットホイール108の突起部に噛み合い、ラチェットホイール108を回転させる。これにより、ラチェットホイール108の図示しない保持爪によるロープ掴み機構体102の保持が解除され、ロープ掴み機構体102が水平に倒れる。これにより、ロープ掴み部材102aが、不動のロープ掴み部材102bに対面し、ロープ掴み機構体102に設けられたばね(図2では隠れて見えない)の弾性力により、調速ロープ13をロープ掴み部材102bに押し付け、これにより、調速ロープ13が制動され、非常止め装置11が作動する。
次に、図3を参照して、検出する過速度を可変とすることができる綱車101の構成について説明する。
綱車101は、軸線方向に二分割されている、すなわち、綱車は2つの綱車半体101a,101bから構成されている。綱車半体101a,101bは軸線方向に相対移動可能であり、綱車半体101a,101bの回転軸線方向の間隔Gが可変となっている。図示された実施形態では、綱車半体101aが回転軸線方向に不動であり、綱車半体101bが回転軸線方向に可動である。このような綱車半体101a,101bの相対移動は、適当な油圧駆動機構(その一例については後述する)を設けることにより実現することができる。
綱車半体101a,101bはそれぞれ、互いに対向する傾斜面101c,101dを有している。調速ロープ13は、綱車101の上半部において綱車101の概ね半周にわたって綱車101と接しており、傾斜面101c,101d上に支持されている。
図3(b)に示す状態から、可動の綱車半体101bを綱車半体101aに近接させるように移動させて綱車半体101a,101bの間隔Gを狭めると、張り車14により与えられている張力に逆らい、調速ロープ13は傾斜面101c,101d上を滑って半径方向外側に移動し、調速ロープ13の綱車101への巻き掛け半径R(調速ロープ13が綱車101に倣って曲がる屈曲半径)が大きくなる。一方、図3(a)に示す状態から、可動の綱車半体101bを綱車半体101aから遠ざけるように移動させて間隔Gを広げると、張り車14により張力を与えられている調速ロープ13は傾斜面101c,101d上を滑って半径方向内側に移動し、調速ロープ13の巻き掛け半径Rが小さくなる。
調速ロープ13の移動速度が同じ場合、調速ロープ13の綱車101への巻き掛け半径Rが小さいほど綱車101の回転速度が大きくなる。従って、前述したように第1上昇過速度VU1を第1下降過速度VD1より大きくしたい場合には、かご6の上昇時には間隔Gを狭めて巻き掛け半径Rを大きくして、かご6の上昇時には間隔Gを広げて巻き掛け半径Rを小さくすればよい。
なお、巻き掛け半径Rの変化量を大きくするには、傾斜面101c,101dの傾斜角度を大きくする(立った状態にする)か、あるいは、可動の綱車半体101bの移動量を大きくする必要がある。しかしながら、傾斜面101c,101dの傾斜角度を大きくしすぎると、綱車半体101a,101bの間で調速ロープ13がロックしてしまう可能性がある。また、可動の綱車半体101bの移動量の上限は、調速ロープ13の直径により制約を受ける。
上記の問題は、図4に示すように、調速ロープ13と綱車101との間に無端のベルト200を挟むことにより解決することができる。このようなベルト200は、図5に概略的に示すように、機械室2の底壁2a(昇降路1の天井壁)の下面に設けた支持体201により支持されたプーリー202と、綱車101との間に掛け渡すことができる。この場合、プーリー202と綱車101との間の距離が比較的小さくなるので、可動の綱車半体101bの移動に伴うベルト200の張力変動を吸収するため、適当なベルトテンショナないしテンションアジャスタ(図示せず)を設けてもよい。
図4に示すように、ベルト200は概ねV字形(すなわちVベルト)であり、ベルト200の側面は、傾斜面101c,101dとほぼ同じ角度で傾斜している。調速ロープ13をベルト200の幅方向中央の位置に維持するために、ベルト200の外周面の幅方向中央部が低くなっている。
図4(b)に示す状態から、可動の綱車半体101bを綱車半体101aに近接させるように移動させて綱車半体101a,101bの間隔Gを狭めると、ベルト200は傾斜面101c,101d上を滑って半径方向外側に移動し、ベルト200の巻き掛け半径Rが大きくなり、また、調速ロープ13はベルト200に押されて半径方向外側に移動し、調速ロープ13の巻き掛け半径Rが大きくなる。一方、図4(a)に示す状態から、可動の綱車半体101bを綱車半体101aから遠ざけるように移動させて間隔Gを広げると、ベルト200は傾斜面101c,101d上を滑って半径方向内側に移動し、これに伴い調速ロープ13も半径方向内側に移動し、調速ロープ13の巻き掛け半径Rが小さくなる。従って、図3に示す実施形態と同様に、調速動作のトリガとなる過速度を変更することができる。
図4に示す構成例では、ベルト200が綱車半体101a,101bの間の隙間に脱落しない限りにおいて(実際にはある程度の安全マージンが必要であるが)、綱車半体101a,101bの間隔Gを広げることができる。すなわち、調速ロープ13の直径よりも幅の広いベルト200を用いることにより、ベルト200を用いない場合と比較して、間隔Gの調整幅、すなわち調速ロープ13の綱車100への巻き掛け半径Rの調整幅を大きくすることができる。すなわち、調速機100の調速動作開始基準となる過速度の調整範囲を広くすることができる。
綱車半体101a,101bの相対移動を可能とする油圧駆動機構として、例えば、工作機械で用いられる回転油圧シリンダの原理、あるいは自動車で用いられる無段変速機(CVT)のプーリー(ディスク)の移動機構の原理を利用したものを用いることができる。
以下に、回転油圧シリンダの原理を用いた油圧駆動機構の構成例について図6を参照して簡単に説明しておく。図6は概略図であり、たとえ複数部品を結合してなる部品であってもその結合体が一緒に動くのであれば、連続的に同じハッチングを付けて一部品として表示してある。図6で中に×印が記載されている四角の箱で示される部材はころ軸受けであり、黒丸で示される部材はオイルシールである。
可動の綱車半体101bの回転軸301の一端が、フレーム103の右側部分103aに、中空の軸支持体302を介して支持されている。軸支持体302はそれ自体が回転自在であり、回転軸301は軸支持体302の中を軸線方向にスライド可能である。回転軸301上にピストン303が設けられている。ピストン303は、軸方向不動の綱車半体101aと一体的に回転する回転部品304に形成されたシリンダ305内に収容されている。回転部品304の中心部の空洞の内部に回転軸301が通され、回転軸301は、回転部品304に対してスライド可能である。また、回転軸301と回転部品304とは回り止めピン310により相対回転不能となっている。回り止めピン310を設ける代わりに回転軸301と回転部品304とをスプラインないしセレーションを介して相対回転不能かつ相対的回転軸線方向移動可能に結合してもよい。回転部品304は、フレーム103の左側部分103bに回転可能かつ軸方向移動不能に支持されている。回転部品304の外周の全周にわたって油供給溝306が形成されており、フレーム103に結合された部品に設けられた油供給ポート307から油供給溝306に圧油が供給される。圧油は、油供給溝306に連通する回転部品304内の油路308を通って、シリンダ室309内に供給され、これによりピストン303及びこれに結合された可動の綱車半体101bが図中左側に移動する。可動の綱車半体101bの逆方向の動きは、綱車半体101a,101b間に設けられたリターンスプリング311のバネ力及び調速ロープ13の張力により実現され、このときシリンダ室309内の圧油は、図示しない戻り油路を介して図示しない油溜めに戻される。
上記の実施形態によれば、綱車半体101a,101bの相対移動により調速動作開始基準となる過速度を調整することができる。この構成を採用すれば、調速機構体は1つだけ設ければよい。このため、調速機動作基準となる過速度を異なる値に設定しうる調速機をコンパクトに形成することができる。
上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
13 調速ロープ
100 綱車
101a,101b 綱車半体
200 無端ベルト

Claims (3)

  1. エレベータのかごと運動する調速ロープが巻き掛けられ、この調速ロープの移動により回転する綱車と、前記綱車に結合されるとともに前記綱車の回転速度に応じて変化する遠心力に応じて変位するウェイトとを備え、前記かごの過速により前記ウェイトの変位量が所定量を超えたときに調速動作を行う調速機であって、
    前記綱車が、前記綱車の回転軸線方向に並んだ第1の綱車半体及び第2の綱車半体を有しており、
    前記回転軸線方向に前記第1及び第2の綱車半体を相対移動させ、前記第1及び第2の綱車半体の間の隙間を変化させる駆動機構が設けられ、
    前記隙間の大きさを変化させることにより、前記調速ロープの前記綱車への巻き掛け半径を変化させ、これにより、前記調速ロープの移動速度に対する前記綱車の回転速度の比率を変更可能とした調速機において、
    前記第1の綱車の外周部に第1の傾斜面が設けられ、前記第2の綱車の外周部に第2の傾斜面が設けられ、前記第1及び第2の傾斜面は、半径方向外側にゆくに従って両者の距離が広がるように互いに反対方向に傾斜して互いに対面し、
    前記調速機は、前記綱車とプーリーとの間に巻きかけられた無端ベルトをさらに備え、この無端ベルトは、前記第1及び第2の傾斜面の間に挟まれた状態で前記綱車に巻き掛けられており、
    前記調速ロープは、前記無端ベルトの外周面に支持された状態で、前記無端ベルトを介して前記綱車に巻き掛けられていることを特徴とする調速機。
  2. 前記無端ベルトはVベルトである、請求項記載の調速機。
  3. 前記無端ベルトの外周面の幅方向中央部に前記調速ロープを位置決めするために、前記無端ベルトの外周面の幅方向中央部が窪んでいる、請求項1または2記載の調速機。
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