JP5876327B2 - 電解質材料並びにそれを用いた電池用材料及び二次電池 - Google Patents
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Description
以下に本発明を詳述する。
本発明の電解質材料が含む重合体を得るための単量体成分は、一般式(1)で表される単量体を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、本発明の電解質材料は、一般式(1)で表される単量体を含む単量体成分から得られる重合体を含むものである限り、その他の構造を有するエーテル結合を側鎖に有する重合体を含んでいてもよい。
上記一般式(1)で表される単量体を含む単量体成分から得られる重合体(以下、重合体(A)ともいう。)の詳細については後述する。
上記支持体としては、重合体(A)及び/又は電解質塩を支持することができるものであれば特に限定されないが、織布、不織布、多孔質膜及びガラス成形体からなる群より選択される少なくとも1種からなるものであることが好ましい。支持体がこのような形態であると、重合体(A)及び/又は電解質塩を支持体に含浸させることができるため、得られる電解質膜がイオン伝導性に一層優れたものとなる。
上記多孔質膜としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、四フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体等のフッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド系樹脂等の樹脂からなるものを挙げることができる。
上記ガラス成形体としては、ガラスクロス等を挙げることができる。
これら支持体としては、更に親水性を向上させるために、界面活性剤を付与する方法、発煙硫酸、クロルスルホン酸等の化学薬品によるスルホン化、フッ素化、グラフト化処理等の方法、又は、コロナ放電やプラズマ放電等による方法によって親水化処理したものを用いても良い。
なお、使用する支持体としてはこれらに限定されるものではないが、使用する支持体として好ましくは、ポリエステル系樹脂、アラミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、セルロース系樹脂、ガラス繊維からなる織布及び不織布、ポリエステル系樹脂からなる多孔質膜であり、より好ましくは、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ガラス繊維からなる織布及び不織布である。
保水率としてより好ましくは150%以上であり、更に好ましくは、200%以上である。特に好ましくは、300%以上である。
支持体の保水率は、一定の大きさに切り取った支持体を一定時間水に浸した後、水切りを行った後の保水重量を測定し、支持体に含まれる水の重量(保水重量−水に浸す前の支持体重量)の、水に浸す前の支持体重量に対する割合から求めることができる。
上記支持体の厚みとしてより好ましくは、1〜100μmであり、更に好ましくは、5〜70μmであり、特に好ましくは、10〜50μmである。
上記電解質塩としては、上記イオン性化合物を1種含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。また、本発明の電解質材料が上記イオン性化合物以外の、その他の電解質塩を含んでいてもよい。
上記アニオンとしては、R3SO2N−SO2R4(R3及びR4は、同一又は異なって、F、CF3、C2F5のいずれかを表す。)、PF6 −、及び、[B(CN)4−m(R5)m]−(式中、R5は独立して、水素原子、ハロゲン原子又は原子数1〜30の有機置換基を表し、mは0〜3の整数を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、R3´SO2N−SO2R4´(R3´及びR4´は、同一若しくは異なって、F又はCF3を表す。)、及び、[B(CN)4−m(R5)m]−(式中、R5は独立して、水素原子、ハロゲン原子又は原子数1〜30の有機置換基を表し、mは0〜3の整数を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
上記一般式(1)中、Raの炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖を有する炭化水素基としては、メチレン(−CH2−)、エチレン(−CH2CH2−)、トリメチレン(−CH2CH2CH2−)、テトラメチレン(−CH2CH2CH2CH2−)等の、直鎖のアルキレン基;エチリデン[−CH(CH3)−]、プロピレン[−CH(CH3)CH2−]、プロピリデン[−CH(CH3CH2)−]、イソプロピリデン[−C(CH3)2−]、ブチレン[−CH(CH3CH2)CH2−]、イソブチレン[−C(CH3)2CH2−]、ブチリデン[−CH(CH3CH2CH2)−]、イソブチリデン[−CH(CH(CH3)2)−]等の分岐鎖のアルキレン基等が挙げられる。
これらの中でも、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン等の直鎖アルキレン基、プロピレン、プロピリデン、ブチレン、ブチリデン等の分岐鎖アルキレン基が好ましい。より好ましくは、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、プロピレン、プロピリデン、ブチレンである。
上記一般式(1)において、Raは1種であっても2種以上であってもよい。Raが2種以上である場合、−(RaO)−で表されるオキシアルキレン基の付加形態は、ブロック状、ランダム状等のいずれの形態であってもよい。
このように、オキシアルキレン構造の平均の繰り返し数がある程度大きい方が、重合体の室温以下の低温領域でのイオン伝導性は更に良好に発揮されることとなる。この効果は、重合体中のオキシアルキレン構造の平均の繰り返し数が大きくなると、重合体の物性へのオキシアルキレン構造の寄与が大きくなって、低温では凍結してしまう等により性能が低下してしまうことが予想されるところ、却って、更に良好なイオン伝導性を発揮したという点で意外な効果である。
R2の炭素数が大きすぎると、得られる重合体のガラス転移温度が低くなるものの、疎水性が向上するため好ましくない。これらの中でも、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等の炭素数1〜8の脂肪族が好ましい。より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチルである。
また、重合体の誘電率を高めるために、R2にカーボネート基やエステル基などの極性置換基を含ませることが有効である。
また、上記付加反応触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウム等の金属水素化物、ブチルリチウム、メチルリチウム、フェニルリチウム等の有機金属化合物、三フッ化ホウ素、四塩化チタン等のルイス酸、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド等の金属アルコキシド等を用いることができる。
塩基性化合物、塩基性触媒、付加反応触媒の使用量は、反応原料の量等に応じて適宜設定することができる。
他の単量体としては、ラジカル共重合可能な重合性化合物として(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−(アセトアセトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、メチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル(α−ヒドロキシメチル)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、カルボキシル基末端カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸スルホエチル、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の酸性官能基含有重合性単量体類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のビニル化合物類;ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン等の珪素含有重合性単量体類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフルオロペンチル、(メタ)アクリル酸ヘプタドデカフルオロデシル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸N,N’−ジメチルアミノエチル、N−メチル−N−ビニルホルムアミド、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルピロリドン、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等の窒素原子含有重合性単量体類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビニロキシエチル(メタ)アクリレート、ビニロキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等の多官能性重合性単量体類;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸α−メチルグリシジル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有重合性単量体類;2−(メタ)アクロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクロイルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,αジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート基含有重合性単量体類;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−(メタ)アクリロイル−4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の紫外線安定性重合性単量体類等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
すなわち、本発明において用いられる重合体が分子内に架橋性官能基を有する架橋性重合体であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、本発明において用いられる重合体の単量体成分として、上記一般式(1)で表される単量体のうちオキシアルキレン構造の平均の繰り返し数が大きいもの、及び、多官能モノマーが用いられると、得られる重合体は、特に良好なイオン伝導性を発揮することができ、室温以下の低温領域でも高いイオン伝導性を発揮することができるものとなる。すなわち、上記重合体が上記一般式(1)で表される単量体を含む単量体成分から得られる重合体を含み、上記一般式(1)におけるnは、6〜30であり、上記重合体は、分子内に架橋性官能基を有する架橋性重合体である形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
このように、上記架橋性重合体が、更に、ビニルエーテル基含有(メタ)アクリル酸エステル類を含む単量体成分から得られる重合体であることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
また、上記重合体が、上記一般式(1)で表される単量体、及び、ビニロキシエトキシエチルアクリレートを含む単量体成分から得られる重合体である形態もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
すなわち、本発明の電解質材料が、重合体の分子内にある架橋性官能基を反応させることで得られる架橋した重合体を含むことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本発明において「電解質材料」とは、構成成分であるエーテル結合を側鎖に有する重合体が、分子内に架橋性官能基を有する重合体である場合、該重合体の架橋反応が行われる前の分子内に架橋性官能基を有した状態の重合体、該重合体の架橋反応が終了し架橋構造を形成した状態の重合体(架橋体)、いずれを含むものも表しているが、特に、上記重合体の架橋反応が行われる前の分子内に架橋性官能基を有した重合体を含むものを「電解質材料原料組成物」、上記重合体の架橋反応が終了し架橋構造を形成した重合体を含むものを「電解質材料」、とすることで区別することもできる。
重量平均分子量は、以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めることができる。
測定機器:HLC−8120
分子量カラム:G5000HXL、GMHXL−L(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン
検量線用標準物質:ポリスチレン
測定方法:溶離液に測定対象物の固形分が0.3質量%となるように溶解し、フィルターにてろ過したものを測定する。
重合体のガラス転移温度は、既に得られている知見に基づいて決定されてもよいし、単量体成分の種類や使用割合によって制御されてもよいが、理論上は、以下の計算式より算出され得る。
(1)ラジカル重合
単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の量は、得られるアクリル系重合体の所望する物性などに応じて適宜設定すればよいが、通常、単量体成分100質量%あたり、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.05〜20質量%である。
単量体成分を重合させる際の重合条件は、重合方法に応じて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。重合温度は、好ましくは室温(25℃)〜200℃、より好ましくは室温(25℃)〜140℃である。反応時間は、単量体成分の重合反応が完結するように適宜設定すればよい。
カチオン重合は、通常用いられる方法で行うことができる。カチオン重合開始剤としては、ヘテロポリ酸、熱潜在カチオン重合開始剤、過塩素酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、ピクリルスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のプロトン酸;3弗化ホウ素、臭化アルミニウム、塩化アルミニウム、5塩化アンチモン、塩化第2鉄、4塩化スズ、4塩化チタン、塩化水銀、塩化亜鉛等のルイス酸;その他として、ヨウ素、トリフェニルクロロメタン等を使用することができる。
本発明に用いられるヘテロポリ酸は部分的に中和された塩でも使用できる。これらの部分中和塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、有機アミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。ヘテロポリ酸の部分中和塩は調製してから反応系中に添加してもよいが、ビニルエーテル中でヘテロポリ酸と塩基とを反応させることにより生成させてもよい。
(R5 aR6 bR7 cR8 dZ)+m(AXn)−m (2)
(式中、Zは、S、Se、Te、P、As、Sb、Bi、O、N及びハロゲン元素からなる群より選ばれる少なくとも一つの元素を表す。R5、R6、R7及びR8は、同一又は異なって、有機基を表す。a、b、c及びdは、0又は正数であり、a、b、c及びdの合計はZの価数に等しい。カチオン(R5 aR6 bR7 cR8 dZ)+mはオニウム塩を表す。Aは、ハロゲン化物錯体の中心原子である金属元素又は半金属元素(metalloid)を表し、B、P、As、Al、Ca、In、Ti、Zn、Sc、V、Cr、Mn、Coからなる群より選ばれる少なくとも一つである。Xは、ハロゲン元素を表す。mは、ハロゲン化物錯体イオンの正味の電荷である。nは、ハロゲン化物錯体イオン中のハロゲン元素の数である。)で表される化合物が好適である。
反応圧力は、常圧または加圧の何れでも良いが、通常は常圧で実施する。
重合体の分子内にある架橋性官能基を反応させて架橋体を形成する方法としては、このように重合体が有する架橋性官能基を連鎖的に付加反応させる方法の他、重合体が有する架橋性官能基と反応し得る官能基を2つ以上有する化合物(架橋剤)を加えて架橋構造を形成する方法等が挙げられるが、これらの中でも、重合体が有する架橋性官能基を連鎖的に付加反応させる方法により架橋構造を形成することが好ましい。
なお、ここでいうアニオン重合開始剤とは、重合開始アニオン種を発生する重合反応を開始する成分であって、光アニオン重合開始剤に該当しないものを意味する。
これらのアニオン重合開始剤および/または光アニオン重合開始剤はそれぞれ単独で、あるいは2種以上併用して使用しても良い。
また、上記アニオン重合開始剤および/または光アニオン重合開始剤の配合量は、プレポリマー量に対して、通常0.01〜30質量%が用いられる。
また、本発明の電解質膜における上記支持体を含めた膜厚(α)と、支持体の膜厚(β)の比率(α/β)が、1〜10となるように形成することが好ましい。支持体を含む電解質の膜厚が、支持体のみの厚みと同じ(=電解質成分が支持体中に全て吸収され、電解質成分が表面に出てこない状態)であると、電解質としての性能を充分に発揮できないおそれがある。また、支持体を含む電解質の膜厚が、支持体のみの厚みの10倍を超えると、機械的強度が不十分となりサイクル特性が低下する。本発明の電解質膜における上記支持体を含めた膜厚(α)と、支持体の膜厚(β)の比率(α/β)は、より好ましくは、1〜8であり、更に好ましくは、1〜5である。
ここでいう不純物には、本発明におけるエーテル結合を側鎖に有する重合体の製造時に用いられる重合禁止剤、連鎖移動剤、溶媒や未反応の反応原料、反応原料が分解してできる副生成物等が含まれる。
M(=O)m(OR9)3 (3)
(式中、R9は、直鎖、分岐鎖又は環状構造を有する炭素数1〜18の炭化水素基又はアルキレンカーボネート基のいずれかを表す。Mは、Al、B、Pのいずれかの元素を表し、MがAlの場合はm=0で、アルミン酸エステル類となり、MがBの場合はm=0で、ホウ酸エステル類となり、MがPの場合はm=1で、リン酸エステル類となる)で表される化合物;
本発明の電解質材料が溶媒を含む場合、その含有量は、電解質成分100質量%に対して、1〜500質量%であることが好ましい。より好ましくは、1〜100質量%である。
電解質材料の粘度は、例えば、市販のB型粘度計、E型粘度計により測定することができる。
なお、本発明の電解質材料は、上記0〜30℃の動作温度領域外の幅広い温度範囲においても優れたイオン伝導性を発揮し、使用することが可能である。
これらのうち、電解質、導電助剤、バインダーの少なくとも1つとして本発明の電解質材料を用いた二次電池は、本発明の二次電池である。
オリビン構造を有する化合物とは、下記一般式(4);
LixAyDzPO4 (4)
(式中、AはCr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される1種又は2種以上であり、Dは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y及び希土類元素の群から選ばれる1種又は2種以上である。x、y及びzは、0<x<2、0<y<1.5、0≦z≦1.5を満たす数である。)で表される構造を有する化合物である。このような正極活物質を用いると、構造内の酸素原子がリンと結合することで(PO4)3−ポリアニオンを形成しており、酸素が結晶構造中に固定化される為に原理的に燃焼反応が起こらず安全性に優れたものとなることから、中大型電源への用途を考えると好ましい。上記A成分として好ましくはFe、Mn、Niであり、特に好ましくはFeである。上記D成分として好ましくは、Mg、Ca、Ti、Alである。
これらオリビン構造を有する化合物の具体例としては、リン酸鉄リチウムやリン酸マンガンリチウム等であり、正極活物質がこれら化合物を含むことが好ましい。更に好ましくはカーボン被覆したリン酸鉄リチウムである。リン酸鉄リチウムは、安全性や過充電に対する安定性が高く、また、鉄、リン等の豊富な資源を用いるものであることから安価であり、製造コストの面でも好ましい。
正極活物質がオリビン構造を有する化合物を含む割合としては、正極活物質全体100質量%に対して、オリビン構造を有する化合物が70質量%以上であることが好ましい。より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは正極活物質がオリビン構造を有する化合物のみから成ることである。
このように上記二次電池は、正極活物質としてオリビン型リン酸鉄のリチウム塩を用いて構成されることは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記正極用材料における溶媒の含有量は、正極活物質100質量%に対して、50〜300質量%であることが好ましい。溶媒の含有量がこの範囲にあることで、適当な粘度のスラリーを作製することができる。より好ましくは70〜200質量%である。
分散剤の含有量は、導電助剤100質量%に対して5〜20質量%であることが好ましい。分散剤の含有量がこのような範囲であると、正極活物質と導電助剤とを充分に均一に分散させることが可能となる。より好ましくは、導電助剤100質量%に対して6〜15質量%である。
負極用材料が含む導電助剤、溶媒、分散剤としては、上述したものと同様のものを用いることができる。
(重量平均分子量)
以下の測定条件下で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定により求めた。
測定機器:HLC−8120
分子量カラム:G5000HXL、GMHXL−L(いずれも東ソー社製)を直列に接続して使用
溶離液:テトラヒドロフラン
検量線用標準物質:ポリスチレン
測定方法:溶離液に測定対象物の固形分が0.3質量%となるように溶解し、フィルターにてろ過したものを測定する。
1辺が50mm正方形の支持体試験片の重量を量りこれをM1とした。次いで、試験片を25±2℃に保ったイオン交換水を入れた容器に浸した。10分後、試験片を水から取り出し、そのまま温度25±2℃、湿度65±20%下で1分間放置した後、乾燥したろ紙で表面に付着した余分な水滴を取り除いて重量を量り、これをM2として、次式により保水率を求めた。
保水率(%)=(M2−M1)/M1×100
調製した電解質膜のイオン伝導度を、以下の方法にて測定した。
電極面積12φのSUS電極間に試料(電解質膜)を挟み、交流インピーダンス法(0.1V,周波数10Hz〜10MHz)により抵抗を測定し、イオン伝導度を算出した。測定装置は、インピーダンスアナライザーSI1260(ソーラトロン社製)を用い、測定セルは以下のものを用いた。
電極面積12φのSUS電極間に試料(電解質膜)を挟み、交流インピーダンス法(0.1V,周波数10Hz〜10MHz)により抵抗を測定し、イオン伝導度を算出した。
(合成例1)
温度計、攪拌機、原料導入管及び窒素導入管を備えた1リットルのSUS製オートクレーブ反応容器に、ジエチレングリコールモノビニルエーテル277部、付加反応触媒として水酸化ナトリウム4.1部仕込み、撹拌しながら反応容器内を窒素置換した後100℃まで昇温した。次いで、安全圧下で100℃を保持したままエチレンオキシド735部を反応器内に4時間かけて導入し、導入完了後、内温100℃で0.5時間熟成した。エチレンオキシドは全量反応し、得られた反応生成物はビニルアルコールに平均10モルのエチレンオキシドが付加したデカエチレングリコールビニルエーテルであった。
ついで、攪拌機、滴下ロート、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた1リットルのフラスコ内に、得られたデカエチレングリコールビニルエーテル500部と水酸化ナトリウム80部とを仕込んだ。窒素雰囲気下、攪拌しながら40℃に昇温した後、ヨウ化メチル287部を内温40℃以下に保ちながらゆっくりと滴下した。滴下終了後、5時間熟成を行い、減圧下で蒸留して未反応のヨウ化メチルを除去した。さらに過剰の水酸化ナトリウム及び、反応後生成した水とヨウ化ナトリウムを除去するため吸着剤による吸着処理を行い、デカエチレングリコールメチルビニルエーテルを得た。
このようにして得られたデカエチレングリコールメチルビニルエーテルの純度は99%以上であり、原料として使用したジエチレングリコールモノビニルエーテルに対する収率は約40%であった。
(合成例2)
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた0.5リットルのフラスコ内に、酢酸ブチル150部と、デカエチレングリコールメチルビニルエーテル40部を仕込んだ。アセトン−ドライアイスバスで冷却を行いながら10分間撹拌することで反応溶液を−5℃に冷却した。重合開始剤としてピクリルスルホン酸0.01部と酢酸ブチル1部の混合物をフラスコ内に投入し、自己発熱によって昇温させた。15分後、液温上昇がみられなくなったのでトリエチルアミン0.04部を投入し中和した後、重合体の不揮発分が21.0%の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は11000であった。重合体溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、減圧乾燥機にて揮発成分を取り除き、重合体を得た。
(製造例1)
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた0.5リットルのフラスコ内に、酢酸ブチル150部と、デカエチレングリコールメチルビニルエーテル40部、ビニロキシエトキシエチルアクリレート0.3部を仕込んだ。アセトン−ドライアイスバスで冷却を行いながら10分間撹拌することで反応溶液を−5℃に冷却した。重合開始剤としてピクリルスルホン酸0.01部と酢酸ブチル1部の混合物をフラスコ内に投入し、自己発熱によって昇温させた。15分後、液温上昇がみられなくなったのでトリエチルアミン0.04部を投入し中和した後、重合体の不揮発分が21.0%の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は12000であった。重合体溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、減圧乾燥機にて揮発成分を取り除き、得られた重合体10部にLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)2.5部、光ラジカル重合開始剤KTO46(DKSHジャパン社製)0.05部を溶解させ混合物を得た。得られた混合物溶液を、テフロン(登録商標)シート上でアプリケーター6milを用いて支持体としてのPET不織布A(日本製紙パピリア株式会社製、膜厚:10μm)に塗布し、含浸させた。塗布膜にUVを照射し(UV照射機:ウシオ電機社製、焼付用光源装置URM−100、UV照射条件:(出力)450W、(照射時間)80秒)、重合体組成物からなる98μm厚(支持体を含む電解質の膜厚)の電解質膜(1)を得た。なお、PET不織布Aの保水率は701%であった。
製造例1において、使用したアプリケーター、支持体の材質、支持体の厚さ、及び、電解質膜の厚さを表1に示すようにしたこと以外は、製造例1と同様の方法で電解質膜(2)〜(6)を得た。表1には、各支持体の保水率の測定結果も示した。
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた0.3リットルのフラスコ内に、酢酸ブチル50部と、デカエチレングリコールメチルビニルエーテル12.8部、ビニロキシエトキシエチルアクリレート0.25部を仕込んだ。アセトン−ドライアイスバスで冷却を行いながら10分間撹拌することで反応溶液を−5℃に冷却した。重合開始剤としてピクリルスルホン酸0.001部と酢酸エチル1部の混合物をフラスコ内に投入し、自己発熱によって昇温させた。15分後、液温上昇がみられなくなったのでトリエチルアミン0.03部を投入し中和した後、重合体の不揮発分が20.5%の溶液を得た。得られた重合体の重量平均分子量は10000であった。重合体溶液をロータリーエバポレーターにて濃縮した後、減圧乾燥機にて揮発成分を取り除き、得られた重合体10部にLiTFSI(リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド)2.5部、光ラジカル重合開始剤KTO46(DKSHジャパン社製)0.05部を溶解させ混合物を得た。得られた混合物溶液を、テフロン(登録商標)シート上でアプリケーター2milを用いて支持体としてのPET不織布A(日本製紙パピリア株式会社製、膜厚:10μm)に塗布し、含浸させた。塗布膜にUVを照射し(UV照射機:ウシオ電機社製、焼付用光源装置URM−100、UV照射条件:(出力)450W、(照射時間)80秒)、重合体組成物からなる50μm厚(支持体を含む電解質の膜厚)の電解質膜(7)を得た。
製造例7において、使用したアプリケーター、支持体の材質、支持体の厚さ、及び、電解質膜の厚さを表1に示すようにしたこと以外は、製造例7と同様の方法で電解質膜(8)を得た。
正極の作製
密閉容器中にLiTFSI0.09部、アセチレンブラック0.04部、リン酸鉄リチウム0.85部、上記合成例2で得られた重合体0.42部、アセトニトリル1.2部を仕込み、ミキサーで混合及び分散させて得た正極組成物のスラリーを、アルミニウム集電体上にアプリケーター10milで塗工した。次いで、減圧乾燥機で60℃×30分間乾燥して正極シートを作製した。
上記正極シートと、製造例1〜8で作製した電解質膜と、金属Li箔とをポンチで打ち抜いた。ここで、正極膜は精密天秤にてカソード付き集電体の重量を測定した。
層間に空気が入らないように注意しながら、Li箔/電解質膜/正極シートの順番で積層させ、コイン電池内に積層物を入れた後、バネで圧着を図りながらかしめ機でかしめて、実施例1〜8のリチウムイオン電池を作製した。
作製した実施例1〜8の電池について、Battery Labo System[BS2501 Series](株式会社計測器センター製)を用いて、60℃又は30℃にて、充放電レートを1/24Cとして3.7Vまで充電した後、2.5Vまで放電し、支持体を用いた電解質膜の1サイクル目の初期放電容量を測定した結果を表1に示した。
実施例1〜8の電池について、表2に示す評価条件下(温度及び充放電レート)で充放電サイクル試験を行った。結果を表2に示した。
上記製造例1において、重合体混合物溶液を支持体に含浸させずに、テフロン(登録商標)シート上にアプリケーター2milにて塗布し、塗布膜にUVを照射し(UV照射機:ウシオ電機社製、焼付用光源装置URM−100、UV照射条件:(出力)450W、(照射時間)80秒)、重合体組成物からなる50μm厚の電解質膜を作成した。そして、該電解質膜をテフロン(登録商標)シートから剥離して実施例1と同様に電池の作成を試みたが、電解質膜の強度が弱く電池への搭載が困難であった。
上記製造例1において、重合体混合物溶液を支持体に含浸させる代わりに、実施例1で作製した正極シート上に重合体混合物溶液を、アプリケーター2milにて直接塗布し、塗布膜にUVを照射し(UV照射機:ウシオ電機社製、焼付用光源装置URM−100、UV照射条件:(出力)450W、(照射時間)80秒)、重合体組成物からなる50μm厚の電解質膜を電極上に作成し、複合正極シートを作製した。該複合正極シートと金属Li箔とをポンチで打ち抜き、実施例1と同様に電池を作製したが、短絡を起こし電池評価が不可能であった。
上記製造例2〜8において得られた電解質膜(2)〜(8)について、温度を変えてイオン伝導度を測定した。結果を表3に示した。
本発明の一般式(1)で表される単量体を含む単量体成分から得られる重合体、電解質塩及び支持体を含む電解質材料は、電池への搭載に耐え得る充分な機械的強度を有するとともに−20℃の低温から60℃の高温域までの幅広い温度域でイオン伝導性を発揮し、更に、該電解質材料を用いて作成したリチウムイオン電池は室温又はそれ以上の温度領域で良好な充放電特性を発揮することが確認された。
なお、上記実施例においては、特定の重合体を含む電解質材料について評価を行った例が示されているが、本願発明の電解質材料が幅広い温度領域において優れたイオン伝導性を示し、また、該電解質材料を用いた電池が幅広い温度領域において優れた充放電特性を示す機構は、本発明の一般式(1)で表される単量体を含む単量体成分から得られる重合体であればすべて同様であることから、上記実施例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において、本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができるといえる。
Claims (9)
- エーテル結合を側鎖に有する重合体及び電解質塩を必須成分とする電解質材料であって、
該重合体は、下記一般式(1);
該電解質材料は、更に、該重合体及び/又は該電解質塩を支持するための支持体を含んで構成されることを特徴とする電解質材料。 - 前記電解質塩は、R3SO2N−SO2R4(R3及びR4は、同一又は異なって、F、CF3、C2F5のいずれかを表す。)、PF6 −、BF4 −、CF3SO3 −、[B(CN)4−m(R5)m]−(式中、R5は独立して、水素原子、ハロゲン原子又は原子数1〜30の有機置換基を表し、mは0〜3の整数を表す。)からなる群より選択される少なくとも1種のアニオンと、アルカリ金属カチオンとからなるイオン性化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解質材料。
- 前記支持体は、織布、不織布、多孔質膜及びガラス成形体からなる群より選択される少なくとも1種からなるものであり、厚さが1〜200μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質材料。
- 前記重合体及び前記電解質塩は、前記支持体に含浸及び保持されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電解質材料。
- 前記一般式(1)におけるRaOで表される基の平均付加モル数を表すnが、1〜50であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電解質材料。
- 前記電解質材料は、動作温度領域が0〜30℃を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電解質材料。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の電解質材料を用いた電池用材料。
- 請求項7に記載の電池用材料を用いて構成されることを特徴とする二次電池。
- 正極活物質としてオリビン型リン酸鉄のリチウム塩を用いて構成されることを特徴とする請求項8に記載の二次電池。
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