JP5874581B2 - 熱延鋼板 - Google Patents
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(1)質量%で、C:0.01%以上0.20%以下、Si:0.01%以上2.5%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.02%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.02%以上0.5%以下、Ti:0.02%以上0.25%以下およびN:0.01%以下、を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成と、面積%で、フェライトおよびベイナイト:合計で80%以上、パーライト:5%以下、マルテンサイト:10%以下、ならびに残留オーステナイト:3%以下であるとともに、板厚をtとしたときの板厚中心から±0.12tの範囲内である板厚中心部において、鋼板面垂直方向に<112>結晶方位が10°以内で配向している結晶コロニーに占める円相当直径10μm以上の結晶コロニーの面積率が30%以下であり、前記結晶コロニーに占める短軸aと長軸bの比(a/b)が0.35以下である結晶コロニーの面積率が40%以下であり、前記板厚中心部に存在する円相当直径が5μm以上である介在物、晶出物および析出物の合計数密度が30個/mm 2 以下である金属組織と、板厚中心において、ランダム試料に対する{001}<110>〜{112}<110>間のX線回折強度比の最大値が6.0以下である集合組織と、590MPa以上の引張強さと、を有することを特徴とする
熱延鋼板。
C:0.01%以上0.20%以下
Cは、鋼の強度を高める作用を有する。C含有量が0.01%未満では590MPa以上の引張強度を確保することが困難である。したがってC含有量は0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上である。一方、C含有量が0.20%超では、粒界に粗大な炭化物が形成され、加工性を損なう。したがって、C含有量は0.20%以下とする。好ましくは0.18%以下、さらに好ましくは0.15%以下である。
Siは、強度と延性のバランスを向上させる作用を有する。Si含有量が0.01%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.01%以上とする。好ましくは0.2%以上、さらに好ましくは0.5%以上である。一方、Si含有量が2.5%超では、上記作用による効果は飽和するとともに溶接性が損なわれる。したがって、Si含有量は2.5%以下とする。好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
Mnは、鋼の強度を高める作用を有する。Mn含有量が0.5%未満では590MPa以上の引張強度を確保することが困難である。したがって、Mn含有量は0.5%以上とする。好ましくは0.8%以上、さらに好ましくは1.0%以上である。一方、Mn含有量が3.0%超では、熱間圧延完了後のフェライト変態が過度に遅延してしまい、より高い成形性を望む場合において、成形性に富むフェライトを確保することが困難となる。したがって、Mn含有量は3.0%以下とする。また、Mn含有量が高いとスラブ中心部に偏析する傾向が強くなり成形性を劣化させるので、斯かる観点からは、Mn含有量は2.5%以下とすることが好ましく、2.2%以下とすることがさらに好ましい。
Pは、一般に不純物として含有され、粒界に偏析し脆化を生じて切断端面の割れを助長する。したがって、P含有量は0.02%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.007%以下である。
Sは、一般に不純物として含有され、MnやTi等と結合して粗大な硫化物系の介在物を形成し、切断端面の割れを助長するとともに、加工性を著しく損なう。したがって、S含有量は0.005%以下とする。好ましくは0.002%以下、さらに好ましくは0.001%以下である。
Alは、フェライト変態を促進して成形性を向上させるとともに、粗大なセメンタイトの形成を抑制して端面割れの起点を抑制する作用を有する。sol.Al含有量が0.02%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は0.02%以上とする。好ましくは0.08%以上、さらに好ましくは0.11%以上である。一方、sol.Al含有量が0.5%超では、オーステナイト−フェライト変態温度を上昇させ、製造性を損なう。したがって、sol.Al含有量は0.5%以下とする。好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.25%以下である。
Tiは、Cと結合することによる微細析出強化に有効である。Ti含有量が0.02%未満では、590MPa以上の引張強度を確保することが困難である。したがってTi含有量は0.02%以上とする。好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.08%以上である。一方、Ti含有量が0.25%超では、上記作用による効果は飽和してしまい原料コストの高騰を招くとともに、粗大な炭窒化物を形成して成形性を劣化させる場合がある。したがって、Ti含有量は0.25%以下とする。好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.17%以下である。
Nは、一般に不純物として含有され、Ti、Nb、V等と結合して粗大な窒化物を形成し、切断端面の性状を損なう。したがって、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。
Nbは、鋼中に炭窒化物を形成し、オーステナイト粒を微細化してフェライトの核生成サイトを増やし、鋼組織の粗大化を抑制する作用を有する。また、Vおよび/またはTiと複合して含有させると、微細な析出物を形成し、鋼の強度を効果的に高める作用を有する。したがって、Nbを含有させてもよい。しかし、Nb含有量が0.1%超では、熱間圧延完了後のフェライト変態が過度に遅延してしまい、延性を重視してフェライトの面積率を高めたい場合には、成形性に富むフェライトを得ることが困難になる。したがって、Nb含有量は0.1%以下とする。バンド状組織の形成を抑制して、切断端面の性状を一層改善させるには、Nb含有量は0.05%以下とすることが好ましく、0.03%以下とすることがさらに好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはNb含有量を0.002%以上とすることが好ましい。0.006%以上とすることがさらに好ましく、0.008%以上とすることが特に好ましい。
これらの元素は、いずれもCと結合して微細な炭化物となり、鋼を微細化・析出強化する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、いずれの元素も含有量が0.4%超では、上記作用による効果は飽和して、コスト的に不利になる。したがって、各元素の含有量は上記のとおりとする。各元素の含有量は、いずれも0.35%以下とすることが好ましく、0.30%以下とすることがさらに好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、いずれかの元素を0.01%以上含有させることが好ましい。いずれかの元素を0.05%以上含有させることがさらに好ましく、いずれかの元素を0.08%以上含有させることが特に好ましい。
これらの元素は、いずれも溶鋼中でオキサイドを形成し、脱酸作用により鋼の清浄度を向上させる作用を有し、特性改善に寄与する。また、炭窒化物の形成核として作用するため、適切に微細分散化すると、粗大な短窒化物の形成を抑制して、切断端面の割れを抑止する作用も有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上含有させてもよい。しかし、いずれの元素も0.01%を超えて含有させると、粗大オキサイドを形成し、却って鋼の清浄度を低下させ、成形性を損なう。したがって、各元素の含有量は上記のとおりとする。各元素の含有量は、いずれも0.0050%以下とすることが好ましく、0.0030%以下とすることがさらに好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、いずれかの元素を0.0002%以上含有させることが好ましい。いずれかの元素を0.0005%以上含有させることがさらに好ましく、いずれかの元素を0.0010%以上含有させることが特に好ましい。
フェライトとベイナイトの合計:80%以上
成形性の確保のため、金属組織中にフェライトとベイナイトが占める面積割合の合計を80%以上とする。この面積割合は好ましくは90%以上であり、100%であってもよい。従って、金属組織の主相はフェライトおよび/またはベイナイトである。延性を重視する場合には、フェライト面積率を10%以上とすることが好ましく、20%以上とすることがさらに好ましい。
組織中にパーライトが占める面積割合が5%を超えると、切断時の割れの起点となり、端面を劣化させる。好ましくは3%以下である。
組織中にマルテンサイトが占める面積割合が10%を超えると、切断時の割れの起点となり、端面を劣化させる。さらに、マルテンサイトは少量の含有で穴拡げ性を著しく劣化させるため、好ましくは3%以下とする。1%以下とすることがさらに好ましい。
残留オーステナイト(残留γ)は、打抜き時にマルテンサイトに変態し、穴拡げ性を劣化させるため、組織中に占める面積割合を3%以下とする。残留γは、切断クリアランスが大きくなると端面割れの起点となり、切断端面性状を劣化させるため、好ましくは1%以下とする。
板厚中心(板厚の1/2深さ位置)において、ランダム試料に対する{001}<110>〜{112}<110>間のX線回折強度比の最大値:6.0以下とすることにより、集合組織の異方性を低減し、穴拡げ性を向上させるとともに、切断方向による端面性状の異方性を抑制することができる。このX線回折強度比は好ましくは5.0以下、より好ましくは4.8以下とする。
本発明において「板厚中心部」とは、板厚をtとしたときの板厚中心から±0.12tの範囲内を意味する。すなわち、板厚中心から板厚方向両側に板厚の12%ずつの領域を板厚中心部とする。
上記板厚中心部において、前記結晶コロニーに占めるアスペクト比(短軸/長軸)が0.35以下である扁平な結晶コロニーの面積率を40%以下とすると、切断端面の割れがさらに抑止されるので、好ましい。<112>配向粒のうち、{112}<110>方位は未再結晶状態のオーステナイトからのフェライト変態方位であり、圧延方向にそってバンド状に伸長した結晶粒コロニーを生じ易く、特に切断を圧延方向と平行に行った際の端面性状を著しく劣化させるため、鋼板中にこのような扁平コロニーの占める面積割合を40%以下に低減させることが好ましい。上記面積率は30%以下とすることがさらに好ましい。
上記板厚中心部に存在する円相当直径5μm以上の粗大な介在物、晶出物および析出物は、切断の際に母相との間に粗大なクラックの起点となり、端面性状を劣化させる。したがって、上記板厚中心部に存在する円相当直径が5μm以上である介在物、晶出物および析出物の数密度を50個/mm2以下とすることが好ましい。さらに好ましくは30個/mm2以下である。
本発明に係る熱延鋼板は、引張強さ590MPa以上の高強度を有し、クリアランス5〜30%でせん断加工を行った際にも切断端面に割れを生じ難い優れたせん断加工性を優れた穴拡げ性とともに有する。さらには延性にも優れている。
本発明に係る上述した化学組成、金属組織、および特性を有する熱延鋼板の製造方法は特に限定されないが、以下の製造条件を採用することが好適である。熱間圧延に供するスラブは、作業効率のよい連続鋳造により製造することが好ましい。
粗大介在物の晶出を抑制するため、連続鋳造時におけるスラブ中心の冷却速度を5℃/sec以下とすることが好ましい。凝固速度が速すぎると、特にスラブの表面割れの原因となるため、0.5℃/sec以上とすることが好ましい。
熱間圧延工程において、スラブを1100℃以上に1時間以上保持することが好ましい。これより温度が低いと、鋳造後の凝固時に析出したTi炭窒化物が未固溶のままで残存し、強度を低下させるばかりか、切断時の端面性状を劣化させる。一方で、加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、スケールロスによる歩留まりの悪化を招くため上限を1300℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延工程において、1100℃〜1000℃の温度域での総圧下率を35%以上とすることが好ましい。これより圧下率が低いと、特定の結晶粒コロニーが粗大となり、せん断加工での端面性状が低下する。この総圧下率は好ましくは40%以上とする。
熱間圧延工程において圧下率を高め過ぎると、集合組織の発達が顕著となり、切断性を低下させる方位を持つ結晶コロニーのバンド組織化を助長するため、1000℃以下の温度域の総圧下率を70%以下とすることが好ましい。この時の圧下率が小さすぎると形状不良の原因となるため、この総圧下率を10%以上とすることが好ましい。
最終圧下率とは、多パス熱間圧延における最終スタンドでの圧下率を意味する。この最終圧下率は、上記の1000℃以下での総圧下率に含まれる。熱間圧延工程において、最終圧下率を過度に増加させると、集合組織が発達してバンド組織を助長するため、最終圧下率は35%以下とすることが好ましい。最終圧下率が小さすぎると、形状不良の原因となるため、最終圧下率を5%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは10%以上である。
熱間圧延工程において仕上げ圧延温度を930℃以上とすることが好ましい。仕上温度がこれを下回ると、組織のバンド化が進み、端面不良の原因となる。仕上げ圧延温度が高すぎると、オーステナイトが粗大化し、変態後の組織が不均一となりやすく、端面性状の劣化を招くため、980℃以下とすることが好ましい。
熱間圧延工程において圧延後の空冷時間を3秒以上とすることが好ましい。空冷時間がこれを下回ると、組織のバンド化が進み、端面不良の原因となる。一方で、圧延後の空冷時間が長すぎると、粗大なTi炭窒化物が析出し、強度が低下するため、10秒以下とすることが好ましい。
熱間圧延・空冷後の冷却速度を15℃/sec以上とすることが好ましい。冷却速度がこれより遅いと、フェライトが高温で粗大に析出するとともに、Ti炭窒化物が粗大析出し、強度が低下する。一方、冷却速度が過度に速すぎると、表層部が過冷されやすくなり、表層部に低温変態相が形成されて伸びを損なうため、冷却速度の上限を200℃/sec以下とすることが好ましい。この冷却を一次冷却という。この一次冷却は、水冷などの強制冷却により実施される。
熱間圧延工程において、上記一次冷却の停止温度を400℃以上とすることが好ましい。一次冷却停止温度がこれを下回ると、組織に硬質相が形成され、伸びあるいは穴広げ性が劣化する。一方で、一次冷却停止温度が高すぎると、冷却過程で析出するTi炭窒化物の粗大化により強度が低下するため、750℃以下とすることが好ましい。一次冷却停止温度はより好ましくは450℃以上730℃以下である。
一次冷却を上記温度域で停止した後、一時的に冷却を中断して、当該温度で2秒以上の滞留時間を設けてもよい。フェライトの析出が安定し、強度と伸びおよび穴拡げ性のバランスを改善する作用がある。滞留時間が長すぎると、パーライトの析出やTi炭窒化物の粗大化が生じ、強度と穴拡げ性のバランスが低下するため、滞留温度は15秒以下とすることが好ましい。より好ましくは5秒以上10秒以下である。この滞留時間は設けなくてもよい。その場合には、一次冷却停止後、直ちに次に述べる巻取り温度に達するまで空冷すればよい。
熱間圧延工程におけるコイル巻取りを400℃以上で実施することが好ましい。一方で巻取り温度が高すぎると、切断端面の性状が劣化するため、500℃以下とすることが好ましい。
上記以外の条件は一般的な熱間圧延工程に従えばよい。例えば、良好な表面性状を得るために、加熱炉から抽出後、仕上げ圧延終了までに適宜デスケーリングを行うことができる。
Claims (4)
- 質量%で、C:0.01%以上0.20%以下、Si:0.01%以上2.5%以下、Mn:0.5%以上3.0%以下、P:0.02%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.02%以上0.5%以下、Ti:0.02%以上0.25%以下およびN:0.01%以下、を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成と、
面積%で、フェライトおよびベイナイト:合計で80%以上、パーライト:5%以下、マルテンサイト:10%以下、ならびに残留オーステナイト:3%以下であるとともに、板厚をtとしたときの板厚中心から±0.12tの範囲内である板厚中心部において、鋼板面垂直方向に<112>結晶方位が10°以内で配向している結晶コロニーに占める円相当直径10μm以上の結晶コロニーの面積率が30%以下であり、前記結晶コロニーに占める短軸aと長軸bの比(a/b)が0.35以下である結晶コロニーの面積率が40%以下であり、前記板厚中心部に存在する円相当直径が5μm以上である介在物、晶出物および析出物の合計数密度が30個/mm 2 以下である金属組織と、
板厚中心において、ランダム試料に対する{001}<110>〜{112}<110>間のX線回折強度比の最大値が6.0以下である集合組織と、
590MPa以上の引張強さと、
を有することを特徴とする熱延鋼板。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Nb:0.1%以下を含有する請求項1に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、V:0.4%以下、Mo:0.4%以下、W:0.4%以下およびCr:0.4%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有する請求項1または請求項2に記載の熱延鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有する請求項1から請求項3までのいずれかに記載の熱延鋼板。
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