JP5818163B2 - 射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法 - Google Patents

射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法 Download PDF

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Description

本発明は、樹脂成形品にフィルムを一体成形させ、その表面に加飾性や機能性を付与させるフィルムインサート成形方法に係り、詳しくは、複数の樹脂から成る積層成形品を成形対象とする射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法に関する。
樹脂成形品の加飾性や機能性を高める方法として、樹脂成形品の表面にそのような加飾性や機能性を有するフィルム(機能性フィルム)を一体成形するフィルムインサート成形が多く用いられている。具体的には、着色、光沢、ソフト感等、樹脂では表現が難しい加飾性・機能性を有するフィルム(加飾シート、絵付けシート、絵付けフィルム等の呼称もある)を金型にインサートさせた後に射出充填させることで、それらフィルムを樹脂成形品の意匠面に融着一体化させるもので、このような樹脂成形品をフィルムインサート成形品等と呼称することもある。特に、自動車内装部品(インストルメントパネル、ドア内側等の内装パネル)や家電OA機器及び建材等の外観構成部品に、ソフト感、レザー調、木目調の加飾性や、傷付き防止のためのハードコート、埃や塵等の付着防止のための帯電防止等の機能性を付与させる場合にこのようなフィルムインサート成形品の需要が多い。
更に、近年は、軽量化や組み立て工数の削減を主目的に、自動車等のガラス部材を、透光性を有する樹脂を使用するガラス代替部と、有色樹脂等を使用する取付構造部や補強構造部等とを積層成形させたガラス代替樹脂成形品に置換する動きが進んでいる。そのため、窓等のガラス部材に要求される耐UV性(紫外線カット性)や、ガラス部材に対して樹脂成形品が劣っているとされる耐候性や耐スクラッチ性(傷付き防止性)等の様々な機能を、一方の面だけでなくその表裏両面に付与するために、このようなフィルムインサート成形方法が有効と考えられている。同様に、ソーラーパネルや、液晶テレビ及びパソコンのモニター、携帯電話やタブレットの表示画面等も、ガラス代替部と、取付構造部や補強構造部等とを積層成形させたガラス代替樹脂成形品の表裏両面に異なる機能を付与させることが多く、このようなフィルムインサート成形方法の採用が検討されている。
従来、樹脂成形品の表裏両面に機能性フィルムを一体成形する場合は、特許文献1のように、加飾シート(機能性フィルム)を成形金型間に挟み込み、この成形金型の加飾シート間に溶融樹脂を射出充填するフィルムインサート成形方法が一般的である。特許文献1においては、樹脂成形品毎に必要な加飾シートを、剥離層を介して連続する基体シート上に貼り付けたものを使用する。ところが、この基体シートを巻き取ったロール部から、加飾シートを基体シートごと成形金型間に供給し、樹脂成形品との一体成形により加飾シートが剥離された基体シートのみを別のロール部で巻き取る加飾シート送り装置(フィルム供給手段)において、例えば金型の上方から下方へ加飾シートの供給を行う場合、この送り装置を固定金型側と可動金型側の両方に設置すると装置同士の設置スペース(特に前出したロール部)が干渉するため、より広いスペースが必要になってしまうという問題がある。特許文献1は、この加飾シート送り装置の基体シートの送り方向を、固定金型側と可動金型側とで直交させる装置配置によりこの問題を解決するものである。
一方、特許文献2には、耐擦傷性(耐スクラッチ性)を有する硬化皮膜層付フィルム(機能性フィルム/ハードコートフィルム)を樹脂と一体成形させて車両用風防部材を製造する製造方法において、該フィルムを可動型と固定型との各成形面(金型キャビティ面)の上部のみに固定した後に、該フィルムの上端より更に上方から樹脂を供給(射出充填)する製造方法が開示されている。これは、延性に乏しい硬化皮膜層を有する該フィルムの、金型の成形面になじみ難いという特徴により成形時に該フィルムに生じる、皮膜層のクラックやしわ、皮膜層と該フィルムとの剥離等を、樹脂の拡散・充填に伴って樹脂流動方向に生じる該フィルム内のストレス(無理な力)を、樹脂流動方向と同じ方向の、成形面に固定されていない該フィルムの自由端側に逃がすことにより防止するものである。
また、特許文献3には、その同一平面上に取り付けた複数の金型を、型開閉方向と一致し、その同一平面に直交する回転軸回りに任意に回転させることができる回転盤を可動盤側に備え、回転盤に取り付けられた複数の金型と、固定盤に取り付けられた同じく複数の金型との組み合わせを、回転盤の回転動作により任意に切り換えることができる二重成形(積層成形)用の射出成形装置(いわゆる、ダイロータリーインジェクション:DRI方式)を使用するフィルムインサート成形方法が開示されている。具体的には、このDRI方式の射出成形装置の固定盤側に、2セットの絵付けフィルム搬送手段(フィルム供給手段)を配置し、二次樹脂成形品(二次成形体)の表面と、二次樹脂成形品及び一次樹脂成形品(一次成形体)間とに、それぞれ別の絵付けフィルム(機能性フィルム)を一体成形した樹脂成形品(積層成形品)を得るものである。
尚、上記特許文献1から特許文献3に関する記載中の括弧は、括弧直前の構成要件に相当あるいは類似すると考えられる本発明の構成部材を、本発明の理解が容易になるように記載したものであり、括弧直前の構成要件と括弧内構成部材とが一致することを示唆したものではない。
特開2004−181885号公報 特開平10−024443号公報 特開2007−216622号公報
ここで、一層ではなく、一次成形体と二次成形体との少なくとも2層からなる積層成形品の表裏両面に、機能性フィルムを一体成形するフィルムインサート成形方法を考えた場合、特許文献1にはそのような積層成形品を対象とする記載はない。よって、特許文献3のようなDRI方式の射出成形装置に特許文献1のような加飾シート送り装置を配置させる場合、回転動作する回転盤にも該装置を配置させる必要がある。その場合、特許文献3(段落0005乃至0007)にも記載されているように、回転駆動する可動金型側に、絵付けシート搬送装置(加飾シート送り装置/フィルム供給手段)のような重量物を配置すると、大きな回転駆動力が必要になる。回転駆動力を小さくするために小さい絵付けシート搬送装置を用いれば、絵付けシート(加飾シート)の自由度を損なう虞がある。更に、回転盤の回転動作によって絵付けシートと金型キャビティの位置がずれる虞がある。
また、特許文献2にもそのような積層成形品を対象とする記載はない。よって、特許文献3のようなDRI方式の射出成形装置に特許文献2のような製造方法を適用する場合、回転盤側の可動型の成形面と固定盤側の固定型の成形面とに硬化皮膜層付フィルムを固定する際、いずれか一方の金型の成形面の上部に該フィルムを固定したとしても、他方の金型の成形面への該フィルムの固定は、回転盤の回転動作を前提として、その上部ではなく下部を固定せざるを得ない。また、回転盤側の金型においては、最初は該金型の成形面の上部に該フィルムを固定したとしても、回転盤の回転動作により、その固定位置は上下逆になってしまう。そのため、該フィルムを精度よく成形面に固定できず、特許文献2と同等の効果を奏することは困難であり、回転盤の回転動作によって該フィルムとそれぞれが固定された成形面との位置がずれる虞がある。
更には、DRI方式の射出成形装置の場合、可動盤側の回転盤の同一平面に複数の金型(少なくとも2個)がその回転軸対称に取り付けられるため、可動盤の同一平面に1つの金型しか取り付けない汎用の射出成形装置のサイズに対して使用可能な金型のサイズが小さいという問題がある。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、機能性フィルムの供給方法や金型サイズの制約が少ない、積層成形品の表裏両面に機能性フィルムを一体成形可能な射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法を提供することを目的としている。
本発明の上記目的は、本発明の上記目的は、共通金型と、
前記共通金型が取り付けられる固定盤と、
ダミープレートと、
前記ダミープレートが取り付けられる可動盤と、
前記固定盤と前記可動盤との間に配置され、前記共通金型と組み合わされて金型キャビティを形成させる少なくとも2つの金型分割面を有し、少なくとも2つの前記金型分割面の一方が、前記共通金型と組み合わされて前記金型キャビティを形成させるとともに、少なくとも2つの前記金型分割面の他方が、前記ダミープレートと組み合わされて密閉空間を形成させる回転金型部と、
前記回転金型部を、型開閉方向に直交する回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持手段と、
前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填可能に配置される少なくとも2つの射出ユニットと、
前記共通金型及び前記回転金型部間に第1フィルムを供給させる第1フィルム供給手段と、
前記回転金型部及び前記ダミープレート間に第2フィルムを供給させる第2フィルム供給手段と、
を備える射出成形装置によって達成される。
この射出成形装置の構成により、共通金型と組み合わされる回転金型部を回転させることにより、少なくとも2種類の金型キャビティを形成させて、共通金型及び回転金型部間において積層成形品を成形させることができる。また、第1フィルム及び第2フィルムを1つの金型キャビティに同時に供給せず、回転金型部とそれぞれ対向する共通金型及びダミープレート間に別々に供給するため、機能性フィルムの供給方法の制約が少ない。更には、同一平面に取り付けられた金型ではなく、少なくとも2つの金型分割面を有する回転金型部を回転させることにより、それぞれの1つの金型分割面を1つの共通金型と組み合わせて、少なくとも2種類の金型キャビティを形成させるため、射出成形装置のサイズに対して使用可能な金型のサイズが小さくなることはなく、金型サイズの制約が少ない。
また、このような射出成形装置は、前記第1フィルムを吸引により前記回転金型部の一方の金型分割面に対向する前記共通金型側に保持させる第1保持手段と、
前記第2フィルムを吸引により前記ダミープレートに対向する前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させる第2保持手段と、
を備えることが好ましい。
更に、このような射出成形装置は、前記第1フィルムを加熱する第1加熱手段と、
前記第2フィルムを加熱する第2加熱手段と、
を備え、
前記第1加熱手段及び前記第2加熱手段により加熱された前記第1フィルム及び前記第2フィルムを、前記第1保持手段及び前記第2保持手段により、それぞれを保持させた金型の金型キャビティ面の形状に真空成形する射出成形装置であっても良い。
このような射出成形装置を使用して、型締めにより、前記共通金型及び前記回転金型部の一方の金型分割面間に形成させる第1金型キャビティに、前記射出ユニットの一方から第1溶融樹脂を射出充填させて、前記第1溶融樹脂と前記共通金型側に保持させた前記第1フィルムとを一体成形させた一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形体及び前記第1フィルムを前記共通金型側に保持させた状態で、前記回転金型部及び前記ダミープレートを前記共通金型から型開きさせた後、前記回転金型部を回転させて、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムを前記共通金型に対向する位置に移動させる一次回転工程と、
型締めにより、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムと、前記共通金型に保持させた前記一次成形体との間に形成させた第2金型キャビティに、前記射出ユニットの他方から第2溶融樹脂を射出充填させて、前記第2フィルムと前記第2溶融樹脂とを一体成形させた二次成形体を成形する二次成形工程と、
を有し、前記一次成形体及び前記二次成形からなる両面フィルムインサート積層成形品を成形する積層成形品のフィルムインサート成形方法を行うことが好ましい。
また、この積層成形品のフィルムインサート成形方法は、型締めにより、前記共通金型及び前記回転金型部の一方の金型分割面間に形成させる第1金型キャビティに、前記射出ユニットの一方から第1溶融樹脂を射出充填させて、前記第1溶融樹脂と前記共通金型側に保持させた前記第1フィルムとを一体成形させた一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形体及び前記第1フィルムを前記共通金型側に保持させた状態で、前記回転金型部及び前記ダミープレートを前記共通金型から型開きさせた後、前記回転金型部を回転させて、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムを前記共通金型に対向する位置に移動させる一次回転工程と、
型締めにより、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムと、前記共通金型に保持させた前記一次成形体との間に形成させた第2金型キャビティに、前記射出ユニットの他方から第2溶融樹脂を射出充填させて、前記第2フィルムと前記第2溶融樹脂とを一体成形させた二次成形体を成形する二次成形工程と、
前記一次成形工程の間、前記回転金型部の他方の金型分割面及び前記ダミープレート間に形成させる密閉空間において、前記第2加熱手段及び前記第2保持手段により、前記第2フィルムを前記回転金型部の他方の金型分割面側の金型キャビティ形状に真空成形する二次予備賦形工程と、を有していても良い。
更に、この積層成形品のフィルムインサート成形方法は、前記一次成形工程に、前記第1加熱手段及び前記第1保持手段により、前記第1フィルムを前記共通金型の金型キャビティ形状に真空成形する一次予備賦形工程を含んでいても良い。
また、更に、この積層成形品のフィルムインサート成形方法は、前記一次成形工程、又は、前記二次成形工程において、微少型開きによりその容積を拡張させた金型キャビティに射出充填した後、型締めにより前記金型キャビティの容積を縮小させる金型キャビティ容積縮小動作を行っても良い。
本発明に係る射出成形装置は、共通金型と、前記共通金型が取り付けられる固定盤と、ダミープレートと、前記ダミープレートが取り付けられる可動盤と、前記固定盤と前記可動盤との間に配置され、前記共通金型と組み合わされて金型キャビティを形成させる少なくとも2つの金型分割面を有し、少なくとも2つの前記金型分割面の一方が、前記共通金型と組み合わされて前記金型キャビティを形成させるとともに、少なくとも2つの前記金型分割面の他方が、前記ダミープレートと組み合わされて密閉空間を形成させる回転金型部と、前記回転金型部を、型開閉方向に直交する回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持手段と、前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填可能に配置される少なくとも2つの射出ユニットと、前記共通金型及び前記回転金型部間に第1フィルムを供給させる第1フィルム供給手段と、前記回転金型部及び前記ダミープレート間に第2フィルムを供給させる第2フィルム供給手段と、を備えるため、共通金型と組み合わされる回転金型部を回転させることにより、少なくとも2種類の金型キャビティを形成させて、共通金型及び回転金型部間において積層成形品を成形させることができる。また、第1フィルム及び第2フィルムを1つの金型キャビティに同時に供給せず、回転金型部とそれぞれ対向する共通金型及びダミープレート間に別々に供給するため、機能性フィルムの供給方法の制約が少ない。更には、同一平面に取り付けられた金型ではなく、少なくとも2つの金型分割面を有する回転金型部を回転させることにより、それぞれの1つの金型分割面を1つの共通金型と組み合わせて、少なくとも2種類の金型キャビティを形成させるため、射出成形装置のサイズに対して使用可能な金型のサイズが小さくなることはなく、金型サイズの制約が少ない。
また、本発明に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法は、型締めにより、前記共通金型及び前記回転金型部の一方の金型分割面間に形成させる第1金型キャビティに、前記射出ユニットの一方から第1溶融樹脂を射出充填させて、前記第1溶融樹脂と前記共通金型側に保持させた前記第1フィルムとを一体成形させた一次成形体を成形する一次成形工程と、
前記一次成形体及び前記第1フィルムを前記共通金型側に保持させた状態で、前記回転金型部及び前記ダミープレートを前記共通金型から型開きさせた後、前記回転金型部を回転させて、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムを前記共通金型に対向する位置に移動させる一次回転工程と、
型締めにより、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムと、前記共通金型に保持させた前記一次成形体との間に形成させた第2金型キャビティに、前記射出ユニットの他方から第2溶融樹脂を射出充填させて、前記第2フィルムと前記第2溶融樹脂とを一体成形させた二次成形体を成形する二次成形工程と、
を有するため、本発明に係る射出成形装置を使用して、一次成形体及び二次成形からなる両面フィルムインサート積層成形品を成形することができる。
本発明の実施例1に係る射出成形装置の主要構成要件の概略側面図である。 本発明の実施例1に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程の前半を示す概略部分断面図である。 本発明の実施例1に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程の後半を示す概略部分断面図である。 本発明の実施例1に係る両面フィルムインサート積層成形品及び機能性フィルムの概略断面図である。 本発明の応用例である実施例2に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程を示す概略部分断面図である。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1乃至図4を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る射出成形装置の主要構成要件の概略側面図である。図2は本発明の実施例1に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程の前半を示す概略部分断面図である。図2(a)がフィルムインサート工程、図2(b)が二次予備賦形工程、一次予備賦形工程及び一次成形工程、図2(c)が一次回転工程後の型開き状態を示す。図3は本発明の実施例1に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程の後半を示す概略部分断面図である。図3(a)が二次成形工程の射出充填状態、図3(b)が二次成形工程の金型キャビティ容積の縮小動作(金型キャビティ容積縮小動作)、図3(c)が型開き後の製品取り出し工程を示す。図4は本発明の実施例1に係る両面フィルムインサート積層成形品及び機能性フィルムの概略断面図である。図4(a)が図3(c)の要部Aの概略詳細図でもある両面フィルムインサート積層成形品の概略断面図、図4(b)が第1フィルムの概略構成図、図4(c)が第2フィルムの概略構成図である。
最初に、図1を参照しながら、本発明に係る射出成形装置1の基本構成について説明する。射出成形装置1は製品取り出し工程が完了し、新たな機能性フィルムを供給させるフィルムインサート工程が行われている型開き状態である。ベッド2に固定された固定盤3と、固定盤3に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動盤5と、固定盤3及び可動盤5の間に配置され、取り付けられた回転金型部40を型開閉方向に直交する鉛直方向の回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持機構4と、回転金型部40の一部を構成し、固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型取付面を有し、回転金型支持機構4に型開閉方向に直交する鉛直方向の回転軸周りに回転可能に支持される回転金型取付部41と、固定盤3側に設けられた第1射出ユニット17と、を備えている。
固定盤3には、正面側(可動盤5と対向する側)の面に、共通金型19が取り付けられると共に、背面側から正面側に亘って第1射出ユニット17を共通金型19に向けて進退させるための貫通穴3aが形成されている。第1射出ユニット17は、この貫通孔3aから共通金型19に接続可能に配置されており、型締めにより共通金型19及び回転金型部40間に形成させる金型キャビティに、図示しない樹脂流路を介して溶融樹脂を射出充填可能に構成されている。固定盤3の四隅からは図示しないタイバーが突出して設けられ、このタイバーは、可動盤5を貫通している。
また、固定盤3には第1射出ユニット17とは別に、共通金型19に接続可能に第2射出ユニット18が配置されており、型締めにより共通金型19及び回転金型部40間に形成させる金型キャビティに図示しない樹脂流路を介して溶融樹脂を射出充填可能に構成されている。ここで、第2射出ユニット18は、図1において共通金型19の上面に接続されるように図示されているが、これは、第2射出ユニット18が共通金型19に接続されることを概略的に示すものであり、実際には、第2射出ユニット18は共通金型19の側面や、第1射出ユニット17と並べて共通金型19の背面に接続可能に配置されても良い。
第2射出ユニット18は移動しない共通金型19に接続されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、回転金型部40に接続されても良い。また、成形する積層成形品の射出充填量の多い方の樹脂を第1射出ユニット17で、少ない方の樹脂を第2射出ユニット18で射出充填させるように構成させることにより、第2射出ユニット18を小型化できれば、その配置上の制約が減少し、射出成形装置の設置状況に対応させて、先に説明したような第2射出ユニット18の様々な配置が選択可能になる。更に、汎用の射出成形装置に回転金型支持機構等を追加して、本発明に係るフィルムインサート成形方法を行う場合にも、第2射出ユニット18として、比較的、射出充填量の多くない市販の追加用小型射出ユニット等を採用することができる。
共通金型19には第1保持手段50及び第1加熱手段19aが配置されている。簡単のために、図1において射出成形装置1外に図示されている第1保持手段50は、共通金型19の金型キャビティ面19cや金型分割面に配置された複数の図示しない吸引孔から、該吸引孔に接続される吸引管路19bを介して金型キャビティ内の空気を吸引することにより、後述する第1フィルム供給手段60により、共通金型19及び回転金型部40間に供給させる第1フィルム60aを共通金型19側に保持させるものである。第1保持手段50は射出成形装置1外に配置させる必要はなく、共通金型19や固定盤3に配置させても良いし、射出成形装置1近傍に工場設備としてのバキュームライン(配管)等があれば、吸引力を調整可能なバルブユニット等を介して、それらバキュームラインと吸引管路19bを直接接続する形態でも良い。
また、第1加熱手段19aは、一般的な金型温調装置とは別に、共通金型19の金型キャビティ面19cを任意で加熱させるものであり、供給させる第1フィルム60aが耐スクラッチ性等を有し、フィルム自体の伸び率の低いハードコートフィルム等である場合に、第1フィルム60aを加熱により軟化させ、第1保持手段50の吸引力により、射出充填前に金型キャビティ面19cの形状に真空・吸引成形(予備賦形)させるものである。第1加熱手段19aは、加熱温度や加熱パターンの制御が容易な電気式ヒータ等が好ましいが、ハードコートフィルム等を軟化させるのに十分な加熱能力を有する公知の加熱手段が適宜採用されれば良い。一方、第1フィルム60aが、十分な伸び率を有し、射出充填させる溶融樹脂の圧力と温度のみで金型キャビティ面の形状に成形可能な場合は、第1加熱手段19aを共通金型19に配置させる必要はない。尚、このように、フィルム状の対象物を加熱・軟化させ、その対象物及び金型キャビティ面間の空気等を減圧又は真空に吸引させて、その対象物を金型キャビティ面形状に賦形させる成形は、「真空・吸引成形」あるいは「減圧・吸引成形」等と呼称されるが、一般的には単純に「真空成形」と呼称されることが多いため、本出願においても、「真空成形」の呼称を使用するものとする。
可動盤5には、回転金型部40と対向する面に、ダミープレート6が取り付けられ、図示しないタイバーに案内され、図示しない型締手段によって、固定盤3に対して進退自在に設けられている。ダミープレート6は、型締め時に、対向する回転金型部40の金型分割面を保護すると共に、その回転金型部40の金型分割面と対向する面に加熱手段6aが配置されている。これらダミープレート6及び加熱手段6aについては、他の構成を説明した後に説明する。
回転金型支持機構4は、固定盤3と可動盤5との間に配置され、ベッド2上を型開閉方向に移動可能に設けられている。この回転金型支持機構4の型開閉方向の移動の案内(ガイド)は、ベッド2に設けられた直動ガイド等の案内手段によるものであっても良いし、回転金型部40の回転金型取付部41を、金型取付面を有し回転する回転部と、これを回転可能に支持し回転しない枠部とで構成し、この回転しない枠部の四隅に、図示しないタイバーを貫通させて案内させるものであっても良いし、公知の案内手段が適宜、選択されれば良い。この回転金型支持機構4により、型開閉方向に直交する鉛直方向の回転軸周りに回転可能に支持される回転金型部40は、固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型取付面を有する回転金型取付部41と、回転金型取付部41の金型取付面にそれぞれ取り付けられた第1回転金型20及び第2回転金型21から構成され、回転金型支持機構4に着脱可能に取り付けられている。
これら回転金型取付部41と、第1回転金型20及び第2回転金型21とは、固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型分割面を有する1つの金型(回転金型部)として構成され、回転金型支持機構4、あるいは、先に説明した回転金型取付部41の回転しない枠部に着脱可能に取り付けられても良い。また、回転金型部40は、型開閉方向に直交する水平方向の回転軸周りに回転可能に支持される形態であっても良い。
第1回転金型20及び第2回転金型21は異なる金型キャビティ形状を有している。後述する一次成形工程において、第1回転金型20は型締めにより共通金型19と組み合わされて、第1フィルム60aが一体成形された一次成形体9aを成形する第1金型キャビティ30を形成させる。一方、後述する二次成形工程において、第2回転金型21は型締めにより、第1フィルム60aが一体成形された一次成形体9a及び第1フィルム60aを保持させた共通金型19と組み合わされて、第2フィルム61aが一体成形された二次成形体9bを成形する第2金型キャビティ31を形成させる。また、回転金型部40には第2保持手段51が配置されている。簡単のために、図1において射出成形装置1外に図示されている第2保持手段51は、第1保持手段50と同様の構成であり、第2回転金型21の金型キャビティ面21cや金型分割面に配置された複数の図示しない吸引孔から、該吸引孔に接続される吸引管路21bを介して金型キャビティ内の空気を吸引することにより、後述する第2フィルム供給手段61により、回転金型部40及びダミープレート6間に供給される第2フィルム61aを第2回転金型21側に保持させるものである。本実施例1では、第1回転金型20側に保持手段を配置させる必要はない。
ダミープレート6は、型締めにより第2回転金型21と組み合わされて、密閉空間33を形成させると共に、型締め時に、対向する回転金型部40の金型分割面を保護する。そして、ダミープレート6の、回転金型部40の金型分割面に対向する面に配置されている第2加熱手段6aは、供給される第2フィルム61aが耐スクラッチ性等を有し、フィルム自体の伸び率の低いハードコートフィルム等である場合に、型締めにより、ダミープレート6及び回転金型部40間に形成させた密閉空間33内において、第2保持手段51により第2回転金型21側に保持させた第2フィルム61aを加熱により軟化させ、第2保持手段51の吸引力により、金型キャビティ面21cの形状に真空成形(予備賦形)させるものである。第2加熱手段6aは、第1加熱手段19aと同様の構成であり、第2フィルム61aが、十分な伸び率を有し、射出充填させる溶融樹脂の圧力と温度のみで金型キャビティ面の形状に成形可能な場合、回転金型部40に配置させる必要がないことは言うまでもない。
また、共通金型19及び回転金型部40間に第1フィルム60aを供給する第1フィルム供給手段60が、回転金型部40及びダミープレート6間に第2フィルム61aを供給する第2フィルム供給手段61が配置されている。本実施例1において、第1フィルム供給手段60及び第2フィルム供給手段61は、多関節ロボット等の可動するアーム部を有する装置と、そのアーム部の先端に設けられた把持手段とで構成されており、それぞれの指定位置にそれぞれの機能性フィルムを1枚ずつ把持して供給するものである。
ここで、第1フィルム供給手段60及び第2フィルム供給手段61の別の形態として、特許文献1のように、樹脂成形品毎に必要な機能性フィルム(加飾シート)を、剥離層を介して連続する基体フィルム(基体シート)上に貼り付けたものを使用し、この基体フィルムを巻き取ったロール部から、機能性フィルムを基体フィルムごと成形金型間に供給し、樹脂成形品との一体成形により機能性フィルムが剥離された基体フィルムのみを別のロール部で巻き取る形態も可能である。
本発明に係る射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法においては、第1フィルム60aの供給位置(共通金型19及び回転金型部40間)及び第2フィルム60bの供給位置(回転金型部40及びダミープレート6間)が一定なので、これらフィルムが仕様の異なるフィルムであっても、第1フィルム供給手段60及び第2フィルム供給手段61の位置を固定することができる。すなわち、前者の多関節ロボット等の可動するアーム部を有する装置であっても、これら2つの装置が交差して互いに異なる位置にフィルムを供給させるような必要はない。また、後者の、2つのロール部を使用する形態の装置であっても、一方の装置を固定盤3に、他方の装置を可動盤5にと、回転金型部40を挟んで距離を置いて配置させることができるため、これら2つの装置の設置スペースを十分に確保することができ、特許文献1のようにフィルムの送り方向を直交させるようにこれら2つの装置を配置させる必要はない。更に、これら第1フィルム供給手段60及び第2フィルム供給手段61を、金型を回転させる部位(例えば特許文献3の回転盤等)に配置させる必要がないため、金型の回転動作に際して、大きな回転駆動力は必要なく、機能性フィルムと金型キャビティ面との位置ずれ等が生じる虞もない。
次に、本実施例1の前提について説明する。図4(a)(図3(c)の要部Aの詳細図)に示すように、成形対象は、取り付け等のための部位(一次成形体9a)が、透光性を有するガラス代替部(二次成形体9b)の外周部の少なくとも一部に積層成形された自動車等のガラス代替樹脂窓(両面フィルムインサート積層成形品9)である。透光性を有するガラス代替部に意匠面及び非意匠面の区別がないため、以下の実施例の説明においては、機能性フィルムを一体成形させる意匠面及び非意匠面を、自動車等のガラス代替樹脂窓の車外側及び車内側と呼称する。最初の一次成形工程において、取り付け等のための部位(第1溶融樹脂/一次成形体9a)の車内側に第1フィルム60aを一体成形し、次の二次成形工程において、該取り付け等のための部位(一次成形体9a)がその外周部の少なくとも一部になるように、透光性を有するガラス代替部(第2溶融樹脂/二次成形体9b)を射出プレス成形方法により射出成形すると共に、その車外側に第2フィルム61aを一体成形し、最終的に、その内外面(表裏両面)に異なる機能を有する第1フィルム60a及び第2フィルム61aを一体成形させたガラス代替樹脂窓(両面フィルムインサート積層成形品9)を成形するものとする。
一次成形工程において車内側に一体成形する第1フィルム60aの概略構成図を図4(b)に示す。第1フィルム60aは、一次成形体9a側から、接着層91、耐スクラッチ性処理層93、剥離層94の3層からなる。接着層91は一次成形体9a及び二次成形体9bに第1フィルム60aを強固に固着させる層であり、射出充填させる溶融樹脂の熱等によりその固着性を生じさせる公知の成分で構成されることが好ましい。耐スクラッチ性処理層93はその名称が示すように、比較的硬度が低い樹脂部分の傷付き等を防止し、その表面の外観(透光性)を長期間に亘って維持させるものであり、非常に硬度が高いため、加熱・軟化による予備賦形が必要な場合が多い。剥離層94は第1フィルム60aの保管やハンドリングのために、通常時には基体フィルムに貼り付けられている第1フィルム60aを、成形時において基体フィルムから確実に剥離させるための層である。この基体フィルム自体は図示していないが、本実施例1のように、第1フィルム60aを一枚ずつ供給する場合は、基体フィルムを保護層として第1フィルム60aと共に一体成形させ、後工程において取り除く場合が多い。また、第1フィルム60aをロール部等から連続供給させる形態の場合は、連続する基体フィルムに第1フィルム60aが均等間隔で貼り付けられたものを使用することが一般的である。
二次成形工程において車外側に一体成形する第2フィルム61aの概略構成図を図4(c)に示す。第2フィルム61aは、二次成形体9b側から、接着層91、耐候性処理層92、耐スクラッチ性処理層93、剥離層94の4層からなる。第2フィルム61aの第1フィルム60aとの相違点は、第2フィルム61aが車外側になるため、耐候性処理層92を有している点である。耐候性処理層92は樹脂部を劣化させる紫外線を樹脂部まで到達させないように遮断する機能が主であり、その外側の耐スクラッチ性処理層93により物理的な破損が回避され、紫外線による樹脂部の劣化を長期間に亘って防止する。他の層は第1フィルム60aと基本的に同じであり、耐スクラッチ性処理層93を有するため、加熱・軟化による予備賦形が必要な場合が多い点も同様である。尚、これら第1フィルム60a及び第2フィルム61aの構成は一例であり、本構成に制約されるものではない。
引き続き、図2及び図3を参照しながら、本発明の実施例1に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程を説明する。図2及び図3は成形工程の理解を容易にするために、図1の金型部分(側面図)を中心に、成形工程を順に図示した概略部分断面図であり、成形工程に直接関係ない構成部位は図示していない。また、共通金型19、第1回転金型20及び第2回転金型21、ダミープレート6にハッチングを施し、断面であることを示している。ただし、図を見やすくするために、図1において図示した共通金型19の第1加熱手段19a及び吸引管路19b、また、第2回転金型21の吸引管路21bは図示していない。
図1に示す型開き状態でのフィルムインサート工程において、第1フィルム供給手段60により第1フィルム60aを供給させ、図示しない第1保持手段50により共通金型19側に保持させる。同様に、第2フィルム供給手段61により第2フィルム61aを供給させ、図示しない第2保持手段51により回転金型部40の第2回転金型21側に保持させる。第1フィルム60aは接着層91を対向する回転金型部40側に、剥離層94(又は図示しない基体フィルム)を共通金型19側にして供給させ、第2フィルム61aは接着層91を対向するダミープレート6側に、剥離層94(又は図示しない基体フィルム)を回転金型部40側にして供給させる。
この時、図2(a)に示すように、共通金型19側に保持させた第1フィルム60aを図示しない第1加熱手段19aにより加熱・軟化させると共に、第1保持手段50の吸引力を第1フィルム60aの軟化状態に合わせて適宜調整し、第1フィルム60aを共通金型19の金型キャビティ面19cの形状に真空成形(予備賦形)させる(一次予備賦形工程)。第1加熱手段19a及び第1保持手段50が共に共通金型19側に配置されていることにより、第1フィルム60aを短時間で加熱・軟化させ、予備賦形させることができる。また、ダミープレート6に配置された第2加熱手段6aを、後述する二次予備賦形工程に備え作動させておくことが好ましい。図中の波マークはこれら第1加熱手段19a及び第2加熱手段6aが作動していることを示す。
次に、図2(b)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。矢印は金型の移動や射出ユニットの射出充填状態を示し、白抜き矢印は型締力が付与されていることを示す。この型締状態において、予備賦形させた第1フィルム60aを保持させた共通金型19及び第1回転金型20間に第1金型キャビティ30を形成させ、第2射出ユニット18から第1金型キャビティ30に第1溶融樹脂を射出充填させる(一次成形工程)。先に説明したように、一次成形工程は、取り付け等のための部位(一次成形体9a)を射出成形するものであり、一次成形体9aの仕様に好適な樹脂、成形条件が選択されれば良い。第1溶融樹脂としては、一般的には熱可塑性樹脂が選択される。また、一次予備賦形工程により既に予備賦形させた第1フィルム60aは、その接着層91の第1溶融樹脂との接触部がその熱により活性化し、一次成形体9aの表面(共通金型19側/車内側)に強固に一体成形される。第1フィルム60aの第1溶融樹脂と接触しない部分は、後述する二次成形工程において、二次成形体9bの表面(共通金型19側/車内側)に一体成形されるが、この段階においてその接着層91が活性化することはなく、第1フィルム60aが第1回転金型20の金型キャビティ面に貼り付いてしまう虞はない。
ここで、図2(b)において、第2射出ユニット18から、第1フィルム60aを貫通させて、第1金型キャビティ30に第1溶融樹脂を射出充填させるように図示しているが、第1溶融樹脂を樹脂流路から第1金型キャビティ30に充填させる図示しない射出ゲート部と一致するように、予め、第1フィルム60aに射出ゲート対応孔を加工させておけば、このような射出充填が可能になる。この射出ゲート部は、第1金型キャビティ30の形状に対応して1箇所から複数個所、適宜設けられれば良く、その位置はゲート痕が生じても問題ない部位に設けられることが好ましい。また、このように、必ずしも第1フィルム60aを貫通させて射出充填させる必要はなく、予め、第1フィルム60aに設けた切り欠きや開口部により、共通金型19及び第1回転金型20が直接型接触する部位や、直接、第1金型キャビティ30に射出充填可能な部位を形成させ、そのような部位に樹脂流路及び射出ゲートを配置させ、直接、第1金型キャビティ30に射出充填させても良い。これは、後述する二次成形工程における第2溶融樹脂の射出充填についても同様である。
一方、一次成形工程の間、回転金型部40の第2回転金型21及びダミープレート6間に形成させる密閉空間33において、第2フィルム61aを第2加熱手段6aにより加熱・軟化させると共に、第2保持手段51の吸引力を第2フィルム61aの軟化状態に合わせて適宜調整し、第2フィルム61aを第2回転金型21の金型キャビティ面21cの形状に真空成形(予備賦形)させる(二次予備賦形工程)。密閉空間33において、第2フィルム61aを第2加熱手段6aに略接触させた状態で加熱させるため、加熱効率が高く、第2フィルム61aを短時間で予備賦形させることができる。また、第1金型キャビティ33での一次成形工程の間、すなわち、第1溶融樹脂の射出充填開始から一次成形体9aの冷却固化が完了するまでの間、成形サイクルに影響を与えることなく二次予備賦形工程を任意で継続させ、十分な加熱・軟化及び真空成形を行う時間を確保することができる。そのため、第1フィルム60aよりも耐候性処理層92が多く、より厚い第2フィルム61aの予備賦形には好適である。更に、この二次予備賦形工程は密閉空間33で行われるため、必要あれば、ダミープレート6側に圧縮空気を注入させる構成を配置させ、予備賦形時に真空成形と合わせてダミープレート6側から圧縮空気を注入させる圧空成形を行うことも可能である。
第1金型キャビティ30における一次成形工程及び密閉空間33における二次予備賦形工程の完了後、図2(c)に示すように、第1フィルム60aを一体成形させた一次成形体9a及び第1フィルム60aを共通金型19に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から型開きさせる。型開き後、回転金型支持機構4により回転金型部40を回転させ、予備賦形させた第2フィルム61aを保持させた第2回転金型21を共通金型19と対向する位置に移動させる(一次回転工程)。型開きが完了する前、すなわち、ダミープレート6が図示しない型締手段により型開き限位置に到達する前に、回転金型部40をその回転が可能な位置まで移動させることができる場合は、型開き中に一次回転工程を開始させても良い。
一次回転工程後、図3(a)に示すように、再び、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。この型締状態において、第1フィルム60aを一体成形させた一次成形体9a及び第1フィルム60aを保持させた共通金型19と、予備賦形させた第2フィルム61aを保持させた第2回転金型21との間に第2金型キャビティ31を形成させ、第1射出ユニット17から第2金型キャビティ31に第2溶融樹脂を射出充填させる(二次成形工程/射出充填)。
先に説明したように、二次成形工程は、取り付け等のための部位(一次成形体9a)がその外周部の少なくとも一部になるように、透光性を有するガラス代替部(2次成形体9b)を射出プレス成形方法により射出成形するものであり、二次成形体9bの仕様に好適な樹脂、成形条件が選択されれば良い。第2溶融樹脂としては、一般的には熱可塑性樹脂が選択される。また、二次成形体9bを射出プレス成形方法により射出成形するために、第1フィルム60aを一体成形させた一次成形体9a及び第1フィルム60aを保持させた共通金型19と、予備賦形させた第2フィルム61aを保持させた第2回転金型21とは、型開閉方向に微少距離α(アルファ)だけ微少型開きさせた位置で、射出充填圧力に対抗するように位置保持されており、完全な型締状態に対して、微少型開き量αだけ金型キャビティ容積を拡張させた状態の第2金型キャビティ31に第2溶融樹脂を射出充填させる。
射出充填の完了後、あるいは完了前の適切なタイミングで、図3(b)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(二次成形工程/金型キャビティ容積縮小動作)。この二次成形工程の金型キャビティ容積縮小動作中も第1射出ユニット17により、第2金型キャビティ31内の第2溶融樹脂に樹脂充填圧力を作用させることが好ましい。また、二次予備賦形工程により既に予備賦形させた第2フィルム61aは、その接着層91の第2溶融樹脂との接触部がその熱により活性化し、二次成形体9bの表面(第2回転金型21側/車外側)に強固に一体成形される。同時に、共通金型19側に保持させた第1フィルム60aも、その接着層91の第2溶融樹脂との接触部がその熱により活性化し、二次成形体9bの表面(共通金型19側/車内側)に強固に一体成形される。このように、一次成形工程乃至二次成形工程により、その表裏両面(車内外両面)に第1フィルム60a(車内側)及び第2フィルム61a(車外側)を一体成形させた、一次成形体9a(取り付け等のための部位)及び二次成形体9b(透光性を有するガラス代替部)から成る両面フィルムインサート積層成形品9(ガラス代替樹脂窓)を成形させることができる。
本実施例1では、二次成形工程において、二次成形体9bを射出成形させるために射出プレス成形方法を行うものとしたが、成形する積層成形品に応じて、射出プレス成形方法ではない一般的な射出成形を行っても良いし、一次成形工程のみ、あるいは、一次成形工程及び二次成形工程の両方において、射出プレス成形方法を行っても良い。このような、金型キャビティ容積を拡張させた状態で射出充填させることにより溶融樹脂の充填抵抗を低減させ、その後、金型キャビティ容積を縮小させることにより、金型キャビティ内の溶融樹脂に略均一に型締力を付与させることができる射出プレス成形方法は、射出圧縮成形方法と並び、樹脂成形品の冷却固化後の内部応力を低減させて、その内部応力に起因する樹脂成形品の成形後の歪みを低減させることができ、このような歪みを極力抑える必要があるガラス代替樹脂窓や、光ディスク等の光学式記録媒体等の樹脂成形品の射出成形に好適とされている。本実施例1では、射出プレス成形方法を行う形態を説明したが、型締力を弱めた状態で、射出充填圧力により金型キャビティを拡張させる射出圧縮成形方法も行うことができることは言うまでもない。
一方、特許文献3のようなDRI方式の射出成形装置において、微少型開きにより、一次成形工程及び二次成形工程の一方でのみ射出プレス成形方法を行う場合、射出プレス成形方法を行わない他方の金型キャビティもその容積が拡張されるため、一次成形工程及び二次成形工程を別々に行わざるを得ない。また、一次成形工程及び二次成形工程の両方で射出プレス成形方法を行う場合においても、一次成形工程及び二次成形工程それぞれの微少型開き量等の射出条件が同じであるはずがなく、一次成形工程及び二次成形工程を別々に行わざるを得ない。更に、射出圧縮成形方法を行う場合、可動盤側に重量物である回転盤が配置されている上、回転盤の同一平面上に複数取り付けられている金型の1つに射出充填させて金型キャビティ容積を拡張させるため、射出充填力による型開き力を固定盤や可動盤に均等に作用させることが困難なため、その際の微少型開き量の制御が難しいという問題がある。このように、DRI方式の射出成形装置において、微少型開きにより、一次成形工程及び二次成形工程の少なくとも一方で射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法を行う場合、一次成形工程及び二次成形工程を同時に行うことができるというその利点を活かすことはできず、本実施例1のような、射出プレス成形方法や射出圧縮成形方法が採用されることが多いガラス代替樹脂窓(積層成形品)の表裏両面に機能性フィルムを一体成形させる場合に、DRI方式の射出成形装置の採用には問題がある。
ここで、本実施例1のように射出プレス成形方法を行う場合には、微少型開き時に金型キャビティが開放され、射出充填させた溶融樹脂が金型外へ漏洩しないように、シェアエッジ構造やシール機構を有する金型を使用する必要がある。シェアエッジ構造とは、くいきり構造、あるいはインロー構造等と称されることもあり、金型分割面を形成する嵌合部の構造として一般的に知られた構造であって、金型開閉方向に伸びて、互いに摺動しながら挿脱することのできる嵌合部を、金型分割面間に形成することによって金型キャビティから外に樹脂や被覆剤が漏れ出すことを防止する構造である。しかしながら、シェアエッジ構造は公知の構造であり、溶融樹脂の金型外への漏洩を防止するシール機構等は、様々な構造が開示されているため、本実施例1においては、共通金型19及び回転金型部40に、これら溶融樹脂の金型外への漏洩を防止する、図示しない構造あるいは機構が採用されているものとし、これらの構造あるいは機構については図示及び説明を割愛する。
成形工程の説明に戻る。二次成形体9bの冷却固化時間経過後、図3(c)に示すように、両面フィルムインサート積層成形品9を共通金型19及び第2回転金型21のいずれか一方に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から型開きさせ、図示しない製品取り出し手段により両面フィルムインサート積層成形品9を射出成形装置1外へ搬出させる(製品取り出し工程)。この製品取り出し工程の型開きにおいては、ダミープレート6及び回転金型部40を、回転金型部40の回転が可能な位置まで型開きさせても良いし、製品取り出しを容易にするため、回転金型部40を型開き限位置にあるダミープレート6に型合わせするまで型開きさせ、共通金型19及び回転金型部40間の距離(デーライト)が最大になるようにしても良い。その場合、ダミープレート6及び回転金型部40を一体化する機構を設けて、これらを一体で型開きさせても良い。製品取り出し工程後、回転金型部40をその回転が可能な位置で回転させ、第1回転金型20を共通金型19と対向する位置に移動させれば、図1に示す型開き状態となる(二次回転工程)。
このように、図1から図3(c)の成形工程が、本発明の実施例1に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程の1成形サイクルとなり、本成形サイクルを繰り返すことにより、その表裏両面に異なる機能を有する第1フィルム60a及び第2フィルム61aを一体成形させた、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る両面フィルムインサート積層成形品9を、型開き2回毎に連続して成形することができる。
装置外に搬送させた両面フィルムインサート積層成形品9は、後工程において第1フィルム60a及び第2フィルム61aの不要部分をトリミングさせて、最終製品あるいは部品としてハンドリングされる。また、先に説明したように、基体フィルムを成形品の保護フィルムとして第1フィルム60a及び第2フィルム61aの表面に残している場合は、このトリミングの後に除去されるか、最終製品あるいは部品として保管される間、そのまま第1フィルム60a及び第2フィルム61aの表面に残しても良い。また、第1フィルム60a及び第2フィルム61aの不要部分を、後工程でなく、二次成形工程前の型締め時に、共通金型19や第2回転金型21の金型分割面等に配置させたトリミング手段によりトリミングさせたり、製品取り出し工程前の製品押し出し動作を活用して不要部をトリミングさせたりしても良く、このような機能性フィルムの型締手段内でのトリミング方法も多く開示されている。また、機能性フィルムが、UV(Ultraviolet:紫外線)やElectron Beam(EB)光等の照射により硬化する光硬化型である場合は、後工程においてこれら光線照射により機能性フィルムを硬化させれば良い。
本実施例1で説明した本発明に係る射出成形装置及びフィルムインサート成形方法によれば、積層成形品の表裏両面に機能性フィルムを一体形成させる場合、第1フィルム及び第2フィルムを1つの金型キャビティに同時に供給せず、回転金型部とそれぞれ対向する共通金型及びダミープレート間に別々に供給するため、機能性フィルムの供給方法の制約が少ない。また、共通金型と組み合わされる回転金型部を回転させることにより、少なくとも2種類の金型キャビティを形成させるため、射出成形装置のサイズに対して使用可能な金型のサイズが小さくなることはなく、金型サイズの制約が少ない。更には、フィルム自体の伸び率の低いハードコートフィルム等を使用し、これらハードコートフィルムの予備賦形が必要である場合であっても、加熱手段と保持手段とにより成形サイクル中の予備賦形が可能である。
本実施例1においては、第1フィルム60a及び第2フィルム61a共に、予備賦形が必要な、耐スクラッチ処理層93を有する機能性フィルム(ハードコートフィルム)としたが、これに限定せず、第1フィルム60a及び第2フィルム61aのいずれか一方のみハードコートフィルムであっても良い。この場合、予備賦形が必要な機能性フィルムの側のみに対応する加熱手段を備えれば良いし、第1フィルム60a及び第2フィルム61a共に、予備賦形が不要な機能性フィルムの場合は、加熱手段は不要である。
ここで、本発明に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法は、本発明に係る射出成形装置の、一部の構成要件及び成形工程を変更することにより、積層成形品を成形するための、別の形態を有する射出成形装置でも実施することが可能である。これを、本発明に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の応用例(以下:実施例2)として、図5を参照しながら説明する。図5は実施例2に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程を示す概略部分断面図である。図5(a)が一次成形工程、図5(b)が回転工程、図5(c)が一次成形工程及び二次成形工程を示す。尚、実施例1の図2と同様に、図5は成形工程の理解を容易にするために、金型部分(側面図)を中心に、成形工程を順に図示した概略部分断面図であり、成形工程に直接関係ない構成部位は図示していない。また、共通金型19’、ダミープレート6’、第1回転金型20’及び第2回転金型21’にハッチングを施し、断面であることを示している。
実施例2に係る、別の形態を有する射出成形装置と、実施例1に係る射出成形装置1との基本構成上の相違点は、まず、可動盤5に取り付けられるダミープレート6’が成形用金型として構成されている点と、第2射出ユニット18が可動盤5と同じベース上に載置され、型締手段等により可動盤5と共に型開閉方向に移動可能であり、且つ、該ベース上で可動盤5を介してダミープレート6’の背面(可動盤5への取り付け面)に接続可能に配置されている点である(いわゆる、射出ユニットの対向配置)。一方、共通金型19’や共通金型19’が取り付けられる固定盤3、固定盤3及び可動盤5間に配置され、取り付けられた回転金型部40を型開閉方向に直交する回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持機構4は実施例1と同じ基本構成であり、積層成形品を成形するための射出成形装置として公知の形態である。
そして、次の基本構成上の相違点は、第1保持手段50が共通金型19’ではなく、成形用金型として構成されるダミープレート6’に配置されている点と、第2保持手段51が第1回転金型20’側及び第2回転金型21’側に選択的に機能性フィルムを保持させるように構成されている点である。また、実施例2における実施例1とのフィルムインサート成形方法の相違点は、実施例1において二次予備賦形工程を除く一次成形工程乃至二次成形工程がすべて共通金型19及び回転金型部40間で行われ、型開き2回と回転金型部40の回転工程2回とで行われる1成形サイクルが、共通金型19’、回転金型部40及びダミープレート6’間で行われ、型開き1回と回転金型部40の回転工程1回とで行われる点である。一次成形工程乃至二次成形工程の個々の成形工程は実施例1で説明した個々の成形工程と基本的に同じため、その説明は割愛し、図5において実施例1と同じ構成要件については同じ符号を付し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
まず、図示はしていないが、図1に示す型開き状態でのフィルムインサート工程において、共通金型19’及び回転金型部40間に、図示しない第2フィルム供給手段61により第2フィルム61aを供給させ、図示しない第2保持手段51により第1回転金型20’側に保持させる。そして、図5(a)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6’を共通金型19’に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。ここで、実施例1との成形工程の相違から、回転金型部40の第1回転金型20’及び第2回転金型21’は同じ金型キャビティ形状を有しており、この型締状態において、共通金型19’及び、第2フィルム61aを保持させた第1回転金型20’(又は、第2回転金型21’)間に第1金型キャビティ30’を形成させ、第1射出ユニット17から第1金型キャビティ30’に第2溶融樹脂を射出充填させる(一次成形工程)。実施例1と異なり、一次成形工程は、透光性を有するガラス代替部(第2溶融樹脂/二次成形体9b)を射出成形するものである。一次成形工程を実施例1と同様に射出プレス成形方法で行っても良い。第2フィルム61aは、その接着層91の第2溶融樹脂との接触部がその熱により活性化し、二次成形体9bの表面(第1回転金型20’側/車外側)に強固に一体成形される。
ここで、一次成形工程における射出充填前に第2フィルム61aを予備賦形させる場合は、図示はしていないが、第1回転金型20’側に保持させた第2フィルム61aを、型締めにより、図示しない第1加熱手段19aを配置させた共通金型19’に略接触させ、急速に加熱・軟化させると共に、図示しない第2保持手段51により、この第2フィルム61aを第1回転金型20’の金型キャビティ面20’cの形状に真空成形(予備賦形)させれば良い(二次予備賦形工程)。
一方、第2回転金型21’(又は、第1回転金型20’)及びダミープレート6’間には、図示しない第1フィルム供給手段60により第1フィルム60aを供給させ、図示しない第1保持手段50によりダミープレート6’側に保持させる。そして、後述するような二次成形工程他を行わせるが、説明を簡単にするため、ここでの説明は割愛する。
第1金型キャビティ30’における一次成形工程及び、後述する第2金型キャビティ31’における二次成形工程の完了後、図5(b)に示すように、第2フィルム61aを一体成形させた二次成形体9bを第1回転金型20’に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6’及び回転金型部40を共通金型19’から型開きさせる。型開き後、回転金型支持機構4により回転金型部40を回転させ、第2フィルム61aを一体成形させた二次成形体9bを保持させた第1回転金型20’をダミープレート6’と対向する位置に移動させる(回転工程)。
この回転工程の前後の型開き状態において、前の成形サイクルで成形させた両面フィルムインサート積層成形品9を回転金型部40及びダミープレート6’間から、図示しない製品取り出し手段により射出成形装置外へ搬出させる製品取り出し工程と、次の成形サイクルのために新たな機能性フィルムを供給するフィルムインサート工程とが行われる。これら工程により、第2フィルム61aを保持させた第2回転金型21’を、何も保持させていない共通金型19’と対向する位置に移動させると共に、ダミープレート6’に第1フィルム60aを保持させる。必要あれば、ダミープレート6’に配置させた図示しない加熱手段6aによりダミープレート6’に保持させた第1フィルム60aを加熱・軟化させると共に、図示しない第1保持手段50により、この第1フィルム60aをダミープレート6’の金型キャビティ面6’cの形状に真空成形(予備賦形)させても良い(一次予備賦形工程)。
一次回転工程後、図5(c)に示すように、再び、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6’を共通金型19’に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。この型締状態において、第2フィルム61aを一体成形させた二次成形体9bを保持させた第1回転金型20’と、第1フィルム60aを保持させたダミープレート6’との間に第2金型キャビティ31’を形成させ、第2射出ユニット18から第2金型キャビティ31’に第2溶融樹脂を射出充填させる(二次成形工程)。実施例1と異なり、この二次成形工程は、透光性を有するガラス代替部(2次成形体9b)の外周部の少なくとも一部になるように、取り付け等のための部位(第1溶融樹脂/一次成形体9a)を射出成形するものであり、先の、第1金型キャビティ30’における一次成形工程の説明の際、その説明を省略した工程であって、型締め状態において、一次成形工程と重複して行われるものである。第1フィルム60aは、その接着層91の第1溶融樹脂との接触部、また、まだ高い温度が維持されている二次成形体9bとの接触部の両部がその熱により活性化し、一次成形体9aの表面(ダミープレート6’側/車内側)、また、二次成形体9bの表面(ダミープレート6’側/車内側)に強固に一体成形される。
一次成形体9aの冷却固化時間経過後、図示はしていないが、両面フィルムインサート積層成形品9を第1回転金型20’及びダミープレート6’のいずれか一方に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6’及び回転金型部40を共通金型19’から型開きさせ、図示しない製品取り出し手段により両面フィルムインサート積層成形品9を射出成形装置外へ搬出させる(製品取り出し工程)。製品取り出し工程後、回転金型部40をその回転が可能な位置で回転させ、第1回転金型20’を共通金型19’と対向する位置に、第2フィルム61aを一体成形させた二次成形体9bを保持させた第2回転金型21’をダミープレート6’に対向する位置に移動させれば、図5(b)に示す型開き状態において、回転金型部40の第1回転金型20’及び第2回転金型21’とが入れ替わった状態となる(回転工程)。
このように、図5(b)から図5(c)の成形工程が、実施例2に係る積層成形品のフィルムインサート成形方法の成形工程の1成形サイクルとなり、本成形サイクルを繰り返すことにより、その表裏両面に異なる機能を有する第1フィルム60a及び第2フィルム61aを一体成形させた、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る両面フィルムインサート積層成形品9を、型開き1回毎に連続して成形することができる。
本発明は、上記の実施例1の中で説明した様々な形態を含め、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、本実施例1においては、積層成形品の表裏両面に機能性フィルムを一体成形させるものとしたが、どちらか一方の面のみに機能性フィルムを一体成形させることができることは言うまでもない。その場合、機能性フィルムの必要な側のみに、本発明に係る保持手段、加熱手段及びフィルム供給手段を備えれば良い。更に、取り付け等のための部位(一次成形体9a)が、透光性を有するガラス代替部(二次成形体9b)の外周部の少なくとも一部に積層成形された自動車等のガラス代替樹脂窓(両面フィルムインサー積層成形品9)であるとしたが、一次成形体が二次成形体の略全面に積層成形された積層成形品であっても、その表裏両面に機能性フィルムを一体成形させることができる。また、更に、積層成形品ではなく、一層の樹脂層からなる樹脂成形品(単層成形品)の表裏両面に機能性フィルムを一体成形させることも可能である。その場合、図2(b)に示すような一次成形工程を行わず、共通金型19及び第2回転金型21を組み合わせて形成させる第2金型キャビティ31が単層成形品の形状となるように構成させ、図3(a)、あるいは、図3(b)に示すような二次成形工程において、形成させた第2金型キャビティ31に第1射出ユニット17及び第2射出ユニット18のいずれか一方から射出充填させれば良い。すなわち、金型さえ適切なものに交換すれば、射出ユニットの一方を取り外す必要もなく、単層成形品の表裏両面に機能性フィルムを一体成形させることができる。
本発明に係る射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法は、これまで説明した通り、積層成形品の表裏両面に機能性フィルムを一体形成させる場合、第1フィルム及び第2フィルムを1つの金型キャビティに同時に供給せず、回転金型部とそれぞれ対向する共通金型及びダミープレート間に別々に供給するため、機能性フィルムの供給方法の制約が少ない。また、共通金型と組み合わされる回転金型部を回転させることにより、少なくとも2種類の金型キャビティを形成させるため、射出成形装置のサイズに対して使用可能な金型のサイズが小さくなることはなく、金型サイズの制約が少ない。更には、フィルム自体の伸び率の低いハードコートフィルム等を使用し、これらハードコートフィルムの予備賦形が必要である場合であっても、加熱手段と保持手段とにより成形サイクル中の予備賦形が可能である。更に付け加えれば、本発明に係る射出成形装置及び積層成形品のフィルムインサート成形方法は必要な金型数が少なく、本発明に係る射出成形装置の基本構成は、射出ユニットの追加と回転金型支持機構との追加により、汎用の射出成形装置を容易に改造して得ることができる。これらの点においても、多種少量生産の要求に対応する樹脂成形品製造者にとって、本発明の産業上の利用可能性は非常に高い。
1 射出成形装置
3 固定盤
4 回転金型支持機構
5 可動盤
6 ダミープレート
6a 第2加熱手段
9 両面フィルムインサート積層成形品
9a 一次成形体
9b 二次成形体
17 第1射出ユニット
18 第2射出ユニット
19 共通金型
19a 第1加熱手段
20 第1回転金型
21 第2回転金型
30 第1金型キャビティ
31 第2金型キャビティ
33 密閉空間
40 回転金型部
41 回転金型取付部
50 第1保持手段
51 第2保持手段
60 第1フィルム供給手段
60a 第1フィルム
61 第2フィルム供給手段
61a 第2フィルム

Claims (7)

  1. 共通金型と、
    前記共通金型が取り付けられる固定盤と、
    ダミープレートと、
    前記ダミープレートが取り付けられる可動盤と、
    前記固定盤と前記可動盤との間に配置され、前記共通金型と組み合わされて金型キャビティを形成させる少なくとも2つの金型分割面を有し、少なくとも2つの前記金型分割面の一方が、前記共通金型と組み合わされて前記金型キャビティを形成させるとともに、少なくとも2つの前記金型分割面の他方が、前記ダミープレートと組み合わされて密閉空間を形成させる回転金型部と、
    前記回転金型部を、型開閉方向に直交する回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持手段と、
    前記金型キャビティに溶融樹脂を射出充填可能に配置される少なくとも2つの射出ユニットと、
    前記共通金型及び前記回転金型部間に、第1フィルムを供給させる第1フィルム供給手段と、
    前記回転金型部及び前記ダミープレート間に、第2フィルムを供給させる第2フィルム供給手段と、
    を備えることを特徴とする射出成形装置。
  2. 前記第1フィルムを吸引により前記回転金型部の一方の金型分割面に対向する前記共通金型側に保持させる第1保持手段と、
    前記第2フィルムを吸引により前記ダミープレートに対向する前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させる第2保持手段と、
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
  3. 前記第1フィルムを加熱する第1加熱手段と、
    前記第2フィルムを加熱する第2加熱手段と、
    を備え、
    前記第1加熱手段及び前記第2加熱手段により加熱された前記第1フィルム及び前記第2フィルムを、前記第1保持手段及び前記第2保持手段により、それぞれを保持させた金型の金型キャビティ面の形状に真空成形することを特徴とする請求項2に記載の射出成形装置。
  4. 型締めにより、前記共通金型及び前記回転金型部の一方の金型分割面間に形成させる第1金型キャビティに、前記射出ユニットの一方から第1溶融樹脂を射出充填させて、前記第1溶融樹脂と前記共通金型側に保持させた前記第1フィルムとを一体成形させた一次成形体を成形する一次成形工程と、
    前記一次成形体及び前記第1フィルムを前記共通金型側に保持させた状態で、前記回転金型部及び前記ダミープレートを前記共通金型から型開きさせた後、前記回転金型部を回転させて、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムを前記共通金型に対向する位置に移動させる一次回転工程と、
    型締めにより、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムと、前記共通金型に保持させた前記一次成形体との間に形成させた第2金型キャビティに、前記射出ユニットの他方から第2溶融樹脂を射出充填させて、前記第2フィルムと前記第2溶融樹脂とを一体成形させた二次成形体を成形する二次成形工程と、
    を有し、前記一次成形体及び前記二次成形からなる両面フィルムインサート積層成形品を成形することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形装置を使用する積層成形品のフィルムインサート成形方法。
  5. 型締めにより、前記共通金型及び前記回転金型部の一方の金型分割面間に形成させる第1金型キャビティに、前記射出ユニットの一方から第1溶融樹脂を射出充填させて、前記第1溶融樹脂と前記共通金型側に保持させた前記第1フィルムとを一体成形させた一次成形体を成形する一次成形工程と、
    前記一次成形体及び前記第1フィルムを前記共通金型側に保持させた状態で、前記回転金型部及び前記ダミープレートを前記共通金型から型開きさせた後、前記回転金型部を回転させて、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムを前記共通金型に対向する位置に移動させる一次回転工程と、
    型締めにより、前記回転金型部の他方の金型分割面側に保持させた前記第2フィルムと、前記共通金型に保持させた前記一次成形体との間に形成させた第2金型キャビティに、前記射出ユニットの他方から第2溶融樹脂を射出充填させて、前記第2フィルムと前記第2溶融樹脂とを一体成形させた二次成形体を成形する二次成形工程と、
    前記一次成形工程の間、前記回転金型部の他方の金型分割面及び前記ダミープレート間に形成させる前記密閉空間において、前記第2加熱手段及び前記第2保持手段により、前記第2フィルムを前記回転金型部の他方の金型分割面側の金型キャビティ形状に真空成形する二次予備賦形工程と、
    を有することを特徴とする請求項3に記載の射出成形装置を使用する積層成形品のフィルムインサート成形方法。
  6. 前記一次成形工程に、前記第1加熱手段及び前記第1保持手段により、前記第1フィルムを前記共通金型の金型キャビティ形状に真空成形する一次予備賦形工程を含むことを特徴とする請求項に記載の積層成形品のフィルムインサート成形方法。
  7. 前記一次成形工程、又は、前記二次成形工程において、微少型開きによりその容積を拡張させた金型キャビティに射出充填した後、型締めにより前記金型キャビティの容積を縮小させる金型キャビティ容積縮小動作を行うことを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか1項に記載の積層成形品のフィルムインサート成形方法。
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