まず、本発明による3次元造形装置が前提とするインクジェット方式の造形装置の概略構成について、図1〜図5を用いて説明する。
<造形システム100>
図1は、本発明の実施の形態による3次元造形装置10を含む造形システム100の一構成例を示したシステム図である。この造形システム100は、3次元造形装置10と、LAN(Local Area Network)1を介して3次元造形装置10に接続された造形依頼者端末20及び管理者端末21と、インターネット23上のメールサーバ24と、ルータ22により構成される。ルータ22は、LAN1及びインターネット23間のデータ伝送を中継する中継装置である。メールサーバ24は、電子メールの送受信を行う。
3次元造形装置10は、インクジェット方式の積層型造形機であり、所定のUV硬化樹脂を造形材として用い、後述する造形ステージ上に造形材からなる造形材層を順に積層形成することによって所望の立体造形物を形成する。造形依頼者端末20は、3次元造形用のアプリケーションプログラムがインストールされたPC(パーソナルコンピュータ)であり、所望の立体造形物を作製するための造形データを生成する造形データ作成装置として機能する。
造形データは、造形対象物の3次元形状を示す形状情報と、形状情報以外の造形条件とからなる。造形データは、例えば、CADデータに基づいて作成され、必要に応じて、3次元造形装置10で用いられる積層データとして、各層単位でのデータに加工される。但し、層単位でのデータ加工は、3次元造形装置10側で行われても良い。形状情報以外の造形条件とは、造形対象物に関わらず指定することが可能な造形情報のことであり、造形材の種類、造形材層の厚さ、走査速度などの造形パラメータと、造形ステージ上における造形対象物の配置態様を示す配置情報とからなる。
造形依頼者端末20において作成された造形データは、3次元造形装置10へ送信される。3次元造形装置10では、LAN1を介して造形依頼者端末20から受信した複数の造形データが造形ジョブとして管理される。すなわち、造形ジョブは、造形データと、造形データに関連付けて保持される属性情報とからなる。この属性情報には、造形データの識別情報、造形データの送受信日時、造形依頼者の識別情報などが含まれる。造形依頼者端末20は、この様な造形処理の依頼者が使用する端末装置であり、管理者端末21は、3次元造形装置10を管理する管理者が使用する端末装置である。
この3次元造形装置10は、実行時刻を予め指定して造形処理を行う予約造形機能を備え、予約造形対象の造形ジョブや予約造形の終了時刻を予め指定しておくことにより、造形対象物を形成するための造形処理を自動的に開始させることができる。
造形にかかる時間は、造形物の形状情報、造形パラメータ、造形物の配置情報から算出が可能である。したがって、造形の開始予定時刻又は終了予定時刻のいずれかの指定を操作者から受け付ければ、算出された造形時間に基づいて造形の開始予定時刻及び終了予定時刻の両方を決定することができる。なお、造形時間の算出は、造形依頼者端末20から受信した造形データに基づいて3次元造形装置10で計算してもよいが、造形依頼者端末20で予め計算し、造形データと合わせて3次元造形装置10に送信してもよい。また、造形の開始予定時刻又は終了予定時刻の指定は、3次元造形装置10の後述する操作部を用いて指定してもよいし、造形依頼者端末20で予め指定し、造形データと合わせて3次元造形装置10に送信する構成としてもよい。
また、3次元造形装置10は、使用前の造形材を収容するタンクの交換を促し、或いは、造形処理が終了することを知らせるための報知メールを送信する。報知メールは、メールアドレスで指定された送信先へメールサーバ24を介して送信される。報知メールの送信先には、造形依頼者端末20を指定することができる。報知メールの送信先を示す送信先アドレスは、例えば、造形依頼者端末20において指定され、造形データと共に3次元造形装置10へ送信される。また、複数の造形ジョブに共通の送信先として、管理者端末21を指定することもできる。
また、3次元造形装置10は、造形依頼者が造形データの作成時に指定したパスワードに基づいて、再造形を制限し、また、上部扉11のロック解除を制限するセキュリティロック機能を備える。造形依頼者が造形依頼者端末20において指定したパスワードは、造形データと共に3次元造形装置10へ送信される。このパスワードは、造形データに関連づけて記憶され、造形データに基づく造形処理により造形物の造形が完了した後に、上部扉11のロックを解除するために必要となる。パスワードは、各造形データに関連付けて記憶されるため、各造形データに異なるパスワードが設定可能である。したがって、1つの3次元造形装置10を複数の操作者が共有して使用する場合に、各操作者が造形指示を行う造形データに対して個別のパスワードを設定することが可能である。
なお、パスワードの設定は、造形依頼者端末20にて、各造形データに関連づけて3次元造形装置10に送信する構成に限らず、3次元造形装置10の操作表示部12を用いて造形予定の造形データの中から一つを選択し、選択された造形データに対してパスワードを設定する構成としてもよい。
この3次元造形装置10には、上部扉11、操作表示部12及び前面扉13が設けられている。上部扉11は、外部から後述する作業空間110へアクセスするのを規制し、また、造形材などが外部空間へ飛散するのを防止するための開閉可能な遮断扉であり、手前側を持ち上げることにより、作業空間110へアクセスすることができる。操作表示部12は、例えば、タッチパネルからなり、ユーザによる操作を受け付け、また、動作状態や各種のエラーメッセージを画面表示する。前面扉13は、造形材カートリッジなどを収容するカートリッジ収容部130用の開閉扉であり、上部を手前側へ移動させることにより、後述するカートリッジ収容部130へアクセスすることができる。
<3次元造形装置10>
図2は、図1の3次元造形装置10の一構成例を示した斜視図であり、作業空間110及びカートリッジ収容部130内の様子が示されている。図中には、上部扉11及び前面扉13を開扉した状態の3次元造形装置10が示されている。
作業空間110とは、造形材を吐出するヘッドユニット111を2次元走査させ、また、吐出した造形材を造形ステージ112上に堆積させるための空間のことであり、作業台としての天板116上に形成されている。この天板116には、x走査用係合溝113、パージトレイ114及び受光孔115が配置されている。
造形ステージ112は、水平で平坦な造形面を有し、造形面上に造形材を堆積させ、立体造形物を形成するための可動ステージであり、鉛直方向に移動させることができる。この造形ステージ112は、天板116の中央に配置されている。ヘッドユニット111は、図示しない駆動装置によって、造形ステージ112と平行に2次元走査される可動ユニットである。
この3次元造形装置10では、鉛直方向をz方向とし、互いに直交する水平方向をxy方向とすれば、ユーザから見て左右方向となるx方向を主走査方向とし、ユーザから見て前後方向となるy方向を副走査方向として、2次元走査が行われる。造形材は、主走査方向の走査時に吐出される。また、ヘッドユニット111は、上記2次元走査により、矩形エリア内の任意の位置に移動させることができ、当該矩形エリアが可動エリアとなる。
また、言い換えれば、ここでのy方向とは、後述するモデル材用ノズルユニット32及びサポート材用ノズルユニット31の各々が有する複数のオリフィス(後述する吐出口2)が配列した並び方向であり、x方向は水平面内においてこのy方向と直交する方向である。
x走査用係合溝113は、ヘッドユニット111を主走査方向へ走査する駆動装置と係合させるための溝であり、天板116の前端部及び後端部に形成されている。パージトレイ114は、ヘッドユニット111から排出された造形材を一時的に収容する造形材収容部である。このパージトレイ114は、ヘッドユニット111の可動エリア内であって、造形ステージ112よりも左側に配置されている。
3次元造形装置10では、造形処理中において、定期的にパージ処理が行われる。パージ処理は、ヘッドユニット111を造形エリアとしての造形ステージ112上からパージトレイ114上に移動させ、ヘッドユニット111に搭載されている造形材ノズル312,322から造形材を強制的に吐出させることにより、造形材を吐出するための吐出口2や、吐出口2に造形材を供給するための造形材供給経路内に残留する残留物を除去するとともに、造形材ノズル312,322の表面に、図示しないゴム部材を当接させ、摺動させることにより、造形材ノズル表面を清掃する処理である。ここで、ノズルから吐出された造形材は、後述する廃液タンク13Hに回収されるようになっている。
受光孔115は、造形材を硬化させるためのUV光の照度を検出する照度センサ用の受光窓であり、天板116に形成された貫通孔からなる。この受光孔115は、造形ステージ112を挟んでパージトレイ114とは反対側に配置されている。また、具体的な動作としては、操作表示部12に設けられるランプユニット35の照度検査スイッチを押下し、ヘッドユニット111を駆動させることにより、自動的に受光孔115の真上に位置させ、ランプユニット35を点灯させ、UV光の照度を、受光孔115の内部に設けられる照度センサにより検出させる。
カートリッジ収容部130内には、2つのモデル材カートリッジ13Mと、2つのサポート材カートリッジ13Sと、廃液タンク13Hが収容されている。ヘッドユニット111から吐出される造形材には、造形対象物自体を構成するモデル材Mと、造形対象物のオーバーハング部分や孤立部分を支持し、最終的には除去されるサポート材Sとがある。
本実施例では、サポート材Sは、モデル材Mに比べ、サポート材Sを除去するための水に対する溶解性の高い材料が含まれている。なお、ここでのオーバーハング部分とは、造形物がz方向(つまり高さ方向)において下方に位置する造形部分よりx−y平面で張り出した部分を意味し、言い換えれば、オーバーハング形状を有する造形物とは、既に成形されたモデル材のスライスが存在しない部分の上表面に新たなモデル材のスライスが成形される部分(オーバーハング部)を有する造形物である。
モデル材カートリッジ13Mは、使用前のモデル材Mを収容する着脱式の造形材タンクである。サポート材カートリッジ13Sは、使用前のサポート材Sを収容する着脱式の造形材タンクである。つまり、モデル材カートリッジ13Mやサポート材カートリッジ13Sには、ヘッドユニット111の造形材ノズル312,322から吐出させる前の造形材が収容される。
廃液タンク13Hは、パージトレイ114や後述するヘッドユニット111内のローラードレイントレイ(図示せず)から回収された排液を蓄積するための貯留容器であり、取り外して交換することができる。なお、廃液タンク13Hには、内部に液面検出用のセンサや、廃液タンク13H自体の重量を検出する重量センサなどを設けることにより、廃液タンク13H内の廃液の程度を検出し、オペレータに通知する機能を搭載している。
カートリッジ収容部130内には、2個のモデル材カートリッジ13Mと、2個のサポート材カートリッジ13Sとが収容可能であり、両カートリッジを交互に使用することにより、造形処理を中断させることなく空になったカートリッジを交換することができる。
<ヘッドユニット111>
図3は、図2のヘッドユニット111の概略構成の一例を示した図であり、図中の(a)には、ヘッドユニット111をy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)から見た様子が示され、(b)には、x方向(ヘッドユニット111の主走査方向)から見た様子が示され、(c)には、z方向から見た様子が示されている。
このヘッドユニット111は、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32、y走査用ホルダユニット33、ローラーユニット34及びランプユニット35により構成され、これらのユニット31〜35を一体的に保持している。ユニット31〜35は、この順に、x方向に配列されている。
なお、x軸方向に沿うサポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32、ローラーユニット34及びランプユニット35の配列の基本的な考え方は、以下の通りである。ヘッドユニット111の主走査方向の往路方向をベースに考えると、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32は、いずれか一方が他方の前方に位置すればよい。このようなノズルユニットのレイアウトに対して、ローラーユニット34ならびにランプユニット35は、ローラーの作用を往路で行いたい場合は、往路進行方向において、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32の後方にローラーユニット34、ランプユニット35の順で配置し、ローラーの作用を復路で行いたい場合は、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32の復路の進行方向において後方にローラーユニット34、ランプユニット35の順で配置すればよい。
また、上記実施例においては、ヘッドユニット111から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラーユニット34による余剰樹脂の掻き取りを行った後、ランプユニット35によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法を採用した。
しかし、これ以外にも、ヘッドユニット111から新たな最上層となるための樹脂を吐出させた後、余剰樹脂層を含む最上層に対して、ランプユニット35によって一旦光を照射した後、造形途中の未硬化状態の最上層の樹脂層に対して、ローラーユニット34による余剰樹脂の掻き取りを行い、その後再度ランプユニット35によって少なくとも最上層の樹脂層に対する硬化のためのUV光を照射する方法もある。
この場合、ランプユニット35は、ヘッドユニット111において、x方向、つまりヘッドユニット111の主走査方向で、サポート材用ノズルユニット31、モデル材用ノズルユニット32を挟む前後方向に一対のランプユニット35を設けることにより、上述のような二度の照射を行うことができる。また、この場合、一度目の照射と二度目の照射を合わせて、最終的に所望する樹脂の硬化の程度を達成するようになるため、一度目の照射後の樹脂は硬化状態ではなく、まだその後のローラーユニット34による掻き取り動作のために、流動可能な、半硬化状態である。このため、この場合においても、ローラーユニット34による樹脂の掻き取り前の最上層の状態は、未硬化または流動可能な状態と表現することとする。
モデル材用ノズルユニット32は、モデル材カートリッジ13Mから供給されるモデル材Mを吐出するためのノズルユニットであり、モデル材Mを一時的に収容するリザーブタンク321と、造形ステージ112に対しモデル材Mを吐出する複数の吐出口2がy方向に配列された造形材ノズル322からなる。
サポート材用ノズルユニット31は、サポート材カートリッジ13Sから供給されるサポート材Sを吐出するためのノズルユニットであり、サポート材Sを一時的に収容するリザーブタンク311と、サポート材Sを吐出する複数の吐出口2がy方向に配列された造形材ノズル312からなる。
モデル材Mやサポート材Sは、造形材ノズル322ならびに312の各々に設けられる吐出口2ごとにノズルユニット内に設けられる圧電素子の振動を利用することにより、吐出口2から液滴となって射出される。吐出口2は一定ピッチでy方向において直線上に配置されている。
ヘッドユニット111は、造形材ノズル312,322から造形材を吐出させながらx方向に走査することにより、造形材ノズル312,322の各々に設けられる全ての吐出口2の配列長さに対応する所定幅の造形材層を1回の主走査によって造形ステージ112上に形成することができる。
y走査用ホルダユニット33は、ヘッドユニット111を副走査方向へ走査するために、x走査用係合溝113間を結ぶ橋梁体に支持されている。このy走査用ホルダユニット33が上記橋梁体に支持されるとともに、橋梁体上に設けられる図示しない駆動部により、橋梁体に設けられる図示しないy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)に延びる軸に沿ってヘッドユニット111を駆動する構造となっている。なお、ヘッドユニット111のy方向(ヘッドユニット111の副走査方向)の駆動方式としては、ヘッドユニット111自体に駆動部を内蔵させ、上述した軸上を移動させるようにしてもよい。
ローラーユニット34は、膜厚調整用ローラー341と、このローラー341を回転させる駆動部(図示せず)と、膜厚調整用ローラー341によって造形ステージ112上に形成される造形材層の最表面から掻き取られた造形材を一時的に収容するためのローラードレイントレイ(図示せず)からなる。
膜厚調整用ローラー341は、造形ステージ112上に吐出し堆積させた造形材膜の厚さを調整する。より詳細に説明すれば、膜厚調整用ローラー341は、造形材ノズル312,322から吐出された造形材にて形成された最表面層の一部を、ランプユニット35にて硬化させる前に所定の厚みを掻き取ることにより、最表面層の厚みの最適化を図っている。また、膜厚調整用ローラー341は、造形材膜の表面を平坦化するためのローラーでもあり、y方向の回転軸を中心として回転する。より詳細に説明すれば、膜厚調整用ローラー341が作用する際のヘッドユニット111の進行方向に対して、膜厚調整用ローラー341は、順方向に回転する。膜厚調整用ローラー341にて掻き取られ、上記ローラードレイントレイ内に収容された造形材は、使用済み造形材からなる排液として廃液タンク13Hへ送られる。
ランプユニット35は、造形ステージ112上に吐出し堆積させた造形材膜にUV光を照射するためのUVランプ351からなり、吐出口2の配列長さよりも幅が広い照射エリアを造形ステージ112上に形成することができる。
図3に示すランプユニット35のレイアウトを採用した場合は、図の左から右にヘッドユニット111を移動させる、いわゆる主走査の往路においては、ランプユニット35は、造形材ノズル312,322よりも先行した位置に配置されるため、往路に吐出した造形物の表面にUV光を照射することがない。従って、点灯制御を容易化するため、常時点灯していてもよい。実際のUV光の照射は、復路において、膜厚調整用ローラー341が造形物の最表面の厚みを適正化した後の最表面に対して行われることとなる。
なお、ここでのランプユニット35は、UV光を照射する光源であれば、UV光照射用ランプに限る必要はなく、UV光を照射するLED光源も含むものである。つまり、UV光などの樹脂硬化に必要な特定波長の光を照射する樹脂硬化用の光照射手段である。更に、光硬化型の樹脂に代えて、造形用樹脂として所定の温度によって硬化するような熱可塑性樹脂を採用するのであれば、本発明のランプユニット35に代えて、樹脂硬化手段として、冷却または加熱手段を採用したり、場合によっては、不要な場合もある。
<造形処理>
図4は、図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、造形ステージ112上に立体造形物が形成される様子が示されている。図中には、立体造形物を造形中の3次元造形装置10におけるヘッドユニット111及び造形ステージ112をzx面に平行な鉛直面で切断した場合の切断面の様子が示されている。
モデル材M及びサポート材Sは、造形ステージ112に対し、主走査方向(x方向)の走査中にヘッドユニット111から下方へ液滴3となって吐出される。主走査往路時に造形ステージ112上に吐出し堆積させたこれらの造形材からなる造形材層は、主走査復路において、膜厚調整用ローラー341により膜厚が調整され、UVランプ351によるUV光の照射によって硬化する。なお、上記の説明では、モデル材M及びサポート材Sの吐出を、主走査の往路方向にて行うと共に、ヘッドユニット111の主走査の復路において行っても良い。また、モデル材M及びサポート材Sの吐出を、ヘッドユニット111の主走査の復路単独で行ってもよい。
本実施の形態におけるモデル材M及びサポート材Sは、共にUV硬化性の樹脂であり、同一のUVランプ351によりUV光が照射されることにより硬化する。なお、3次元造形装置10に使用可能な樹脂としては、光硬化性の樹脂の他に、熱を与えて硬化させる熱硬化性の樹脂や、自然冷却により硬化する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
ヘッドユニット111のy方向の長さ(ヘッド幅)に対応する一定幅の帯状領域は、フィールドと呼ばれ、あるフィールドについて、造形材層の形成が完了すれば、ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)へ移動させ、隣接するフィールドに対する造形材層の形成が開始される。どの程度ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)へ移動させるかは、造形ステージ112上にて形成する造形物をどのような位置に配置させるかによって決定され、その決定は、造形依頼者端末20における依頼者の入力に基づいて行われる。
ヘッドユニット111は、x走査用係合溝113間をy方向に跨ぐ門型の橋梁体に支持され、一対のx走査用係合溝113に沿って主走査方向に走査される。なお、本実施の形態では、門型の橋梁体にヘッドユニット111を支持させ、一対のx走査用係合溝113に沿ってヘッドユニット111を主走査方向に移動させる構成としたが、x走査用係合溝113を1本とし、ヘッドユニット111を片持ちで支持した状態で主走査方向に移動させる構成としても良い。
ヘッドユニット111に配設されたモデル材用ノズルユニット32及びサポート材用ノズルユニット31により造形可能なy方向の幅は造形ステージ112上の造形エリアに対して短いため、ヘッドユニット111を主走査方向へ往復移動させて1フィールド分の造形が完了すると、ヘッドユニット111を副走査方向(y方向)に移動させて隣接するフィールドの造形が行われる。ユーザが設定した立体造形物が1フィールド内に収まる場合には、ヘッドユニット111の副走査方向への移動は行われない。なお、ヘッドユニット111による造形可能なy方向の幅が造形ステージ112上の造形エリアのy方向の幅よりも同一又は大きい場合には、ヘッドユニット111は副走査方向へ移動させながら造形する必要はなく、副走査方向への移動機構は不要となる。
造形ステージ112上には、上述したヘッドユニット111の主走査及び副走査によって造形材層がフィールドごとに形成され、立体造形物を構成する1つの樹脂層が形成される。この樹脂層は、スライス層と呼ばれ、あるz方向の位置でスライス層の形成が完了すれば、造形ステージ112をスライス層の厚さに相当する距離だけ下方向(z方向)へ移動させ、次のスライス層の形成が開始される。
この3次元造形装置10では、着脱可能な可搬プレート41の上面が造形ステージ112であり、可搬プレート41と、可搬プレート41が載置されるプレート取付台42とから、z方向に移動可能なz移動ユニット40が構成される。z移動ユニット40は、z駆動装置43によりz方向の位置が調整される。z駆動装置43は、ヘッドユニット111と造形ステージ112との間の高さ方向の相対位置を変化させる垂直駆動手段である。可搬プレート41は、矩形状の金属板からなり、造形依頼者端末20から指示した全ての造形が完了した時点で、立体造形物を載せたままの状態で、プレート取付台42から取り外すことができる。プレート取付台42には、可搬プレート41を固定するための固定機構(図示せず)が設けられる。
立体造形物は、モデル材Mによって構成され、サポート材Sは、立体造形物のオーバーハング部分や孤立部分を支持し、最終的には所定の方法によって除去される。例えば、モデル材Mとして、水に対し不溶性又は難溶性の樹脂を用い、サポート材Sとして、易溶性の樹脂を用いれば、可搬プレート41上に形成された造形物を取り出して水に浸すことにより、サポート材Sからなる造形材層だけを容易に除去することができる。また、言うまでもなく、造形物としてのモデル材Mからサポート材Sの除去は、従来通り、手を用いてモデル材Mからサポート材Sを外すようにしても良い。
この例では、可搬プレート41上に形成された下地層SS上にモデル材M及びサポート材Sからなるスライス層を積層形成することによって所望の立体造形物が形成される。下地層SSは、可搬プレート41の傾きや表面の凹凸を吸収し、また、造形物を剥離し易くするサポート材Sからなる。さらに、この下地層SSは、可搬プレート41の傾きや表面の凹凸を吸収できるのであれば、造形依頼者端末20における造形条件において、中実の構造以外に格子状などの中空構造を採用することにより、材料の使用量の低減を図ることもできる。
<主走査>
図5は、図2の3次元造形装置10における造形時の動作の一例を模式的に示した説明図であり、図中の(a)には、x方向の主走査往路の様子が示され、(b)には、主走査復路の様子が示されている。主走査往路では、z方向に関して造形ステージ112の位置がヘッドユニット111から離間した位置に固定され、モデル材Mやサポート材Sが造形材ノズル312,322から吐出される。造形ステージ112上には、これらの造形材からなる造形材層4が形成される。
なお、図5(a)に開示するヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離と、図5(b)に開示するヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離とは明らかに異なるように示しているが、これは動作の内容をわかりやすく説明するためであり、実際は、図5(a)の状態でのヘッドユニット111と造形ステージ112との間の距離は2mm以下であり、図5(b)におけるその距離は、図5(a)の状態から造形ステージ112をz方向で且つヘッドユニット111に近づくように1mm以下の距離を移動させるようになっている。
造形材層4の厚みはユーザが造形精度や造形速度の観点から決定することができる。つまり、ユーザが造形精度を優先することを選択すれば、造形材層4の厚みは設定可能な最小の厚み又はその近傍の厚みに設定し、造形速度を優先することを選択すれば、最低限の造形精度を維持した厚みに設定すればよい。このような選択は、造形依頼者端末20において形状情報以外の造形条件として選択、設定することができるようになっている。
主走査復路の走査は、膜厚調整用ローラー341が造形材層4と接触する位置まで造形ステージ112を上方へ移動させた状態で行われる。この主走査復路では、主走査往路での造形材の吐出に加え、モデル材Mやサポート材Sが造形材ノズル312,322から吐出させることも可能であり、主走査往路や復路で吐出し堆積させた造形材層4の上層部が膜厚調整用ローラー341によって掻き取られる。
造形材ノズル312,322に配設された各ノズルからの造形材の吐出量には個体差があり、また、予め設定された厚みの造形材層4が正確に得られるように、造形材ノズル312,322からの造形材の吐出量を制御するのは困難であるため、少なくとも各造形層を形成する単位で、造形材ノズル312,322からは設定された厚み以上の造形材を吐出し、余分な造形材を膜厚調整用ローラー341により回収することで、予め設定された厚みの造形材層4を維持し、均一な厚みの造形材層4を積層することができる。但し、膜厚調整用ローラー341を、その時点での造形層の最表面に当接させるタイミングは、造形データとしての各スライス層データ単位での最表面で行う必要はなく、造形の種々の狙い、例えば、造形精度と造形速度の両立の観点から、必要なタイミングにて行うことができる。
膜厚調整用ローラー341は、主走査の往路及び復路に関わらず、一定の回転数で同じ向きに回転する。UVランプ351は、造形材の種類や造形材層4の厚さ、x方向の走査速度に応じた所定の光度で点灯し、主として、膜厚調整用ローラー341による膜厚調整後の造形材層4をUV光の照射によって硬化させる。
<造形ステージ112上のフィールドFd1〜Fd4>
図6は、造形ステージ112上に形成される各フィールドFd1〜Fd4に対し、4回のパス(x方向の走査)が行われる様子を模式的に示した説明図である。ヘッドユニット111は、造形ステージ112上の矩形からなる造形エリアに対し、x方向の主走査及びy方向の副走査により、造形エリア内の任意の位置へ移動させることができる。
インクジェット方式の積層造形法では、x方向の走査をパスと呼び、造形材ノズル312,322に対応する一定幅の帯状領域をフィールドFdと呼ぶ。1つのフィールドFd内の造形材層は、複数回のパスによって形成される。この例では、y方向の分解能を造形材ノズル312,322における吐出口2の配列ピッチによって規定される分解能の4倍にまで向上させるために、y方向の位置を互いに異ならせた4回のパスによってフィールドFd内の造形材層が形成される。
ヘッドユニットは、フィールドFd1について造形材層の形成が完了すれば、1フィールド分だけy方向に移動し、フィールドFd2に対する造形材層の形成が開始される。造形エリア内の各フィールドFd1〜Fd4について造形材層の形成が完了すれば、1つのスライスが完成する。
1スライス分の造形材層の厚さは、造形材ノズル312,322のx方向の走査速度と、単位時間当たりの造形材の吐出量によって規定される。従って、1フィールド分の造形材層を形成するのに要する時間や造形材の使用量は、造形材層の厚さや走査速度といった造形パラメータを含む造形データに基づいて推定することができる。
図7は、造形対象物の配置態様の一例を示した図である。図中の(a)には、同じ造形物を1つのフィールドFd1内に配置する場合(配置態様A1)と、2つのフィールドFd1及びFd2に跨るように配置する場合(配置態様A2)とが示されている。
造形処理は、フィールドFdごとに行われるので、同一の形状及びサイズの造形対象物であれば、1つのフィールドFd内に収まるように配置した方が、複数のフィールドFdにまたがって配置する場合に比べて、造形対象物を積層形成するのに要する時間は短い。つまり、配置態様A1の方が配置態様A2よりも造形時間は短い。
図中の(b)には、同じ造形物をz方向の高さが低くなるように配置する場合(配置態様A3)と、高さが高くなるように配置する場合(配置態様A4)とが示されている。造形処理は、スライスを積層形成することによって行われるので、同一の形状及びサイズの造形対象物であれば、z方向の高さが低くなるように配置した方が、高くなるように配置する場合に比べて、造形対象物を積層形成するのに要する時間は短い。つまり、配置態様A3の方が配置態様A4よりも造形時間は短い。
造形依頼者端末20では、造形データを作成する際、造形処理に要する時間と、造形処理における造形材の使用量とが推定される。この推定造形時間は、各スライス層を造形するのにかかる時間を総て足し合わせた造形時間と、パージ処理に要する時間とを足し合わせた累計造形時間からなり、造形データの中に含まれる造形物の形状情報、配置、姿勢、走査速度、各スライス層の厚みを参照することにより、算出される。
また、造形材の推定使用量は、モデル材Mの推定使用量と、サポート材Sの推定使用量とからなり、それぞれが造形データに基づいて算出される。また、各スライス層を造形するのに必要なモデル材M及びサポート材Sの使用量を総て足し合わせた推定使用量と、パージ処理における推定使用量とを足し合わせた累計使用量が造形データに基づいて算出される。
<造形依頼者端末20>
図8は、図1の造形依頼者端末20の一構成例を示したブロック図である。この造形依頼者端末20は、CADデータ記憶部201、操作部202、造形データ生成部203、造形推定部204、送信先設定部205、造形設定記憶部206、ネットワーク通信部207、メール取得部208、報知メール記憶部209、表示部210及び認証コード設定部211により構成される。
CADデータ記憶部201には、造形対象物のCADデータが保持される。CADデータは、CAD(Computer Aided Design)ソフトを利用して作成された立体造形物の3次元形状データからなる。操作部202は、造形依頼者による操作を受け付けると、その操作内容に応じた操作信号を造形データ生成部203、送信先設定部205及びメール取得部208へ出力する。
造形データ生成部203は、CADデータを変換して、造形対象物の形状情報、配置情報及び造形パラメータからなる造形データ221を生成し、造形設定記憶部206内に格納する。具体的には、まずこのCADデータを、例えばSTL(Stereo Lithography Data)データに変換し、更にこのSTLデータを複数の薄い断面体にスライスして得られる断面データを生成し、そしてこのスライスデータを、一括又は各スライス層単位にて3次元造形装置10に対して送信を行う。この際、三次元CAD等で設計されたモデルデータ(実際は、変換後のSTLデータ)の造形ステージ112上における姿勢の決定に対応し、この姿勢におけるモデル材Mにて形成されるモデルを支持することが必要な空間又は箇所に対して、サポート材Sを設ける位置の設定が行われ、これらのデータを元に各層に対応するスライスデータが形成される。
造形データ221は、例えば、造形依頼者による作成指示に基づいて生成され、配置情報及び造形パラメータは、造形依頼者により指定される。配置情報は、造形ステージ112上における造形対象物の配置態様であり、1つの造形物を作製する場合、造形ステージ112上における造形物の位置と造形物の姿勢とが造形依頼者により指定される。また、複数の造形物を1回の造形処理によって作製する場合には、各造形物の位置及び姿勢が配置態様として指定される。
造形推定部204は、造形データ221に基づいて、造形対象物を形成するための造形処理に要する推定造形時間222と、造形処理における造形材の推定使用量223とを算出し、造形設定記憶部206内に格納する。なお、造形推定部204を3次元造形装置10に設け、造形依頼者端末20から受信した造形データ221に基づいて推定造形時間及び推定使用量を3次元造形装置10で算出する構成としてもよい。
送信先設定部205は、報知メールの送信先を示すメールアドレスを設定し、送信先アドレス224として造形設定記憶部206内に格納する。送信先アドレス224は、例えば、造形依頼者により指定され、複数のメールアドレスを指定することもできる。
認証コード設定部211は、各造形データ221と関連付けて認証コードを設定し、造形設定記憶部206内に格納する。認証コードは、ユーザ認証のための識別情報であり、各造形データ221に対して個別に設定することができる。ここでは、文字や記号の配列からなるパスワード225が、認証コードとして設定され、造形データ221に関連づけて保持される。
造形データ221、推定造形時間222、推定使用量223、送信先アドレス224及びパスワード225は、造形設定データとして互いに関連付けて保持される。ネットワーク通信部207は、この造形設定データをLAN1経由で3次元造形装置10へ送信する。
メール取得部208は、ネットワーク通信部207及びLAN1経由でメールサーバ24に対し、報知メールのダウンロード要求を送信し、3次元造形装置10からの報知メールを取得する。報知メール記憶部209には、取得した報知メールが保持される。表示部210は、取得した報知メールを画面上に表示する。
図9は、図1の3次元造形装置10内の機能構成の一例を示したブロック図である。この3次元造形装置10は、操作部121、表示部122、ネットワーク通信部400、造形ジョブ記憶部401、造形処理部402、開始予定時刻設定部403、終了予定時刻算出部404、残量検出部405、タンク交換判定部406、推奨時刻算出部407及び報知メール送信部408により構成される。
ネットワーク通信部400は、LAN1経由で造形依頼者端末20から受信した造形設定データを造形ジョブ記憶部401内に格納する一方、報知メールをLAN1経由で造形依頼者端末20や管理者端末21へ送信する。造形ジョブ記憶部401には、造形依頼者端末20から取得した複数の造形ジョブが保持される。
造形ジョブは、造形データとその属性情報とからなり、造形ジョブの識別情報に関連付けて保持される。造形データの属性情報は、造形依頼者端末20から取得した推定造形時間、推定使用量、送信先アドレス及びパスワード(認証コード)と、後述する予約時刻とからなる。
造形処理部402は、造形ジョブ記憶部401内の造形データに基づいて、造形ステージ112上に造形対象物を形成するための造形処理を行う。この造形処理は、例えば、造形操作者による造形指示に基づいて開始され、ヘッドユニット111のxy駆動制御、造形ステージ112のz駆動制御、造形材ノズル312,322内の圧電素子の駆動制御が行われる。
操作部121は、3次元造形装置10の操作者を造形操作者と呼ぶことにすれば、造形操作者による操作を受け付けると、その操作内容に応じた操作信号を開始予定時刻設定部403へ出力する。開始予定時刻設定部403は、予約造形の開始予定時刻を設定し、終了予定時刻算出部404へ出力する。予約造形は、実行時刻を予め指定して行われる造形処理であり、予約造形の開始予定時刻は、例えば、造形操作者が予約造形対象の造形ジョブを指定して行った操作入力に基づいて、設定される。
終了予定時刻算出部404は、造形ジョブ記憶部401内における予約造形対象の造形ジョブの推定造形時間と、開始予定時刻設定部403により設定された開始予定時刻とに基づいて、予約造形を終了させる終了予定時刻を求める。この終了予定時刻は、開始予定時刻よりも累計造形時間だけ後の時刻として求められる。予約造形の開始予定時刻及び終了予定時刻は、造形ジョブ記憶部401内に予約時刻として格納される。
なお、本実施の形態では造形開始予定時刻の指定を受け付けることにより、造形終了予定時刻を算出する構成としたが、造形終了予定時刻の指定を受け付けることで造形開始予定時刻を算出する構成としてもよいことは云うまでもない。また、ここで云う時刻の指定とは、具体的な開始予定時刻の指定に限られず、その時点から何時間後に造形を開始するかの指定も含む。
また、開始予定時刻設定部403及び終了予定時刻算出部404は、必ずしも3次元造形装置10にある必要はなく、造形依頼者端末20上に設けてもよい。具体的には、造形依頼者端末20で開始予定時刻又は終了予定時刻のいずれか一方を設定し、他方の予定時刻を算出し、造形データと合わせて3次元造形装置10に送信する構成とすることもできる。或いは、開始予定時刻又は終了予定時刻のいずれか一方を造形依頼者端末20上で設定し、他方の予定時刻は3次元造形装置10で算出する構成とすることもできる。
造形処理部402は、予約時刻が指定された造形ジョブについて、開始時刻が到来すれば、造形データに基づく造形処理を自動的に開始する。
残量検出部405は、造形材タンク内における造形材の残量を検出し、その検出結果をタンク交換判定部406及び推奨時刻算出部407へ出力する。具体的には、各モデル材カートリッジ13M内のモデル材Mの残量と、各サポート材カートリッジ13S内のサポート材Sの残量とが検出される。これらの残量検出には、例えば、圧電素子を用いて、モデル材カートリッジ13Mやサポート材カートリッジ13Sの重量を測定し、カートリッジ自体の重量を減算する方法が利用される。
タンク交換判定部406は、残量検出部405により検出された残量に基づいて、造形処理の実行中における造形材タンクの交換の要否を判定し、その判定結果を表示部122へ出力する。タンク交換の要否判定は、モデル材M及びサポート材Sについて、現在の造形材の残量を造形処理における造形材の累計使用量と比較することによって行われる。
表示部122は、タンク交換判定部406による判定結果を少なくとも造形処理が開始されるよりも前に画面表示する。例えば、タンク交換の判定結果は、造形操作者が予約造形の終了時刻を指定する際に、表示される。
推奨時刻算出部407は、残量検出部405により検出された造形材の残量と、造形ジョブ記憶部401に記憶された推定使用量とに基づいて、タンク交換の推奨時刻を求める。タンク交換の推奨時刻は、造形処理の実行中において造形材タンクの交換を推奨する時刻であり、モデル材カートリッジ13M及びサポート材カートリッジ13Sについて算出される。
具体的には、モデル材カートリッジ13Mについて、一方のカートリッジが空になったときから他方のカートリッジの残量が規定量以下となるまでの期間をカートリッジ交換の推奨期間とし、この推奨期間の終端時刻が推奨時刻として算出される。サポート材カートリッジ13Sについても、モデル材カートリッジ13Mの場合と同様にして推奨時刻が算出される。
表示部122は、造形処理の実行中にモデル材カートリッジ13M又はサポート材カートリッジ13Sのいずれかを交換しなければならない場合に、推奨時刻算出部407により算出された推奨時刻を少なくとも造形処理が開始されるよりも前に画面表示する。
報知メール送信部408は、タンク交換の推奨時刻が到来する際に、タンク交換を促すためのメッセージを含む報知メールを生成し、送信先アドレスで指定された送信先へ送信する。また、報知メール送信部408は、造形処理の終了時刻が到来する際に、造形処理の終了を知らせるためのメッセージを含む報知メールを生成し、送信先アドレスで指定された送信先へ送信する。報知メールは、推奨時刻又は終了時刻よりも前に送信される。例えば、報知メールは、推奨時刻又は終了時刻よりも一定時間前に送信される。
報知メールは、造形処理の実行中におけるタンク交換の推奨時刻が到来した時や造形処理が終了した時の他に、1つ前の造形処理の終了時、造形処理の異常終了又は中断時、造形予約した造形処理のキャンセル時、ヘッドユニット111のメンテナンス時期の到来時などに送信しても良い。この様な報知メールの通知タイミングは、造形ジョブごとに任意に指定することができる。
<造形予約>
図10は、図9の3次元造形装置10における造形予約時の動作の一例を示した図である。図中の(a)には、造形対象の造形ジョブを指定した際に表示部122に表示される造形設定の受付画面50が示されている。
この受付画面50には、ユーザが造形対象として指定した造形ジョブのジョブ名に対応付けて、受付時刻51、見積時間52、サポート材Sの推定使用量53及びモデル材Mの推定使用量54が表示されている。また、受付画面50には、造形ボタン55及びタイマー予約ボタン56が配置されている。
受付時刻51は、ユーザが造形対象として指定した造形ジョブを受け付けた時刻であり、この例では、2011年5月16日、10時37分が表示されている。見積時間52は、造形ジョブデータとして、造形ジョブに関連付けて保持される累計造形時間であり、4時間20分が表示されている。
推定使用量53は、造形ジョブデータとして、造形ジョブに関連付けて保持されるサポート材Sの累計使用量であり、30gが表示されている。推定使用量54は、造形ジョブデータとして、造形ジョブに関連付けて保持されるモデル材Mの累計使用量であり、150gが表示されている。
推定使用量53,54の表示欄には、タンク交換の要否がそれぞれ表示される。すなわち、造形処理の実行中にサポート材カートリッジ13S又はモデル材カートリッジ13Mを交換しなければならなくなると判定された場合に、タンク交換が必要である旨が表示される。一方、タンク交換が不要である場合には、タンク交換が不要である旨が表示される。
造形ボタン55は、造形処理を直ちに開始させるための操作アイコンである。タイマー予約ボタン56は、予約造形の開始予定時刻又は終了予定時刻を設定するための操作アイコンである。タイマー予約ボタン56を操作することにより、設定画面60が表示される。
ユーザは、この様な受付画面50により、造形ジョブの累計造形時間や造形材の累計使用量を事前に確認することができる。また、造形処理の実行中にカートリッジ13M,13Sの交換が必要になるか否かを事前に認識することができる。従って、ユーザは、交換が必要になると推定された造形材タンクを交換することにより、造形材を補充してから造形処理を開始させることができる。
図中の(b)には、受付画面50内のタイマー予約ボタン56を操作した際に表示される予約造形の設定画面60が示されている。この設定画面60には、時間入力欄61、終了時刻62、カートリッジ交換の推奨時刻63及び64が表示され、また、予約セットボタン65及びキャンセルボタン66が配置されている。
時間入力欄61は、受付時刻51に対し、何時間後に造形処理を開始させるかを指定するための入力欄であり、インクリメントボタン又はデクリメントボタンを操作することにより、0時間から99時間までの時間を1時間単位で指定することができる。終了予定時刻62は、時間入力欄61において指定された時間に基づいて造形処理を開始させた場合に、当該造形処理が終了すると推定される時刻である。
推奨時刻63は、時間入力欄61において指定された時間に基づいて造形処理を開始させた場合のタンク交換の推奨時刻であり、造形処理の実行中にサポート材カートリッジ13Sを交換しなければならなくなると判定された場合に表示される。タンク交換が不要である場合には、タンク交換が不要である旨が表示される。
推奨時刻64は、時間入力欄61において指定された時間に基づいて造形処理を開始させた場合のタンク交換の推奨時刻であり、造形処理の実行中にモデル材カートリッジ13Mを交換しなければならなくなると判定された場合に表示される。タンク交換が不要である場合には、タンク交換が不要である旨が表示される。
予約セットボタン65は、時間入力欄61において指定された時間を確定し、予約造形の待機モードへ動作モードを切り替えるための操作アイコンである。キャンセルボタン66は、時間入力欄61において指定された時間を取消し、受付画面50に復帰させるための操作アイコンである。
<待機画面70とモニター画面80>
図11は、図9の3次元造形装置10における動作の一例を示した図であり、図中の(a)には、予約造形の待機モード時に表示される待機画面70が示され、(b)には、造形処理中のモニター画面80が示されている。
待機画面70には、予約した造形ジョブの開始予定時刻、終了予定時刻、カートリッジ交換の推奨時刻が表示され、また、キャンセルボタン71が配置されている。ユーザは、この様な待機画面70により、造形予約時以降の任意のタイミングで、待機モード中であることや、予約ジョブの開始予定時刻及び終了予定時刻、カートリッジ13M,13Sの交換時期を確認することができる。
待機モード中は、新たに予約ジョブを設定したり、予約ジョブ以外の造形ジョブを実行することが制限される。キャンセルボタン71は、待機モードを解除し、通常モードに復帰させるための操作アイコンである。
モニター画面80には、モデル材カートリッジ13Mごとのモデル材Mの残量と、サポート材カートリッジ13Sごとのサポート材Sの残量と、カートリッジ13M,13Sの交換の推奨時刻と、使用中のカートリッジを示すアイコンと、廃液タンク13H内の造形材量が表示されている。
モデル材M及びサポート材Sの残量は、一定時間ごとに更新され、造形材の実際の使用量に基づいて、カートリッジ交換の推奨時刻が補正される。ユーザは、この様なモニター画面により、カートリッジ13M,13Sの残量や交換時期、廃液タンク13Hの交換が必要であるか否かを確認することができる。
なお、本実施の形態では3次元造形装置10の操作表示部12を介して造形の開始予定時刻又は終了予定時刻の指定を行う構成としたが、開始予定時刻又は終了予定時刻は造形依頼者端末20で予め指定し、造形データと合わせて3次元造形装置10に送信する構成としてもよい。
<報知メールの設定画面230>
図12は、図8の造形依頼者端末20における造形設定時の動作の一例を示した図であり、報知メールの設定画面230が示されている。この設定画面230は、報知メールの送信条件を設定するための入力画面であり、メール送信の選択欄231、送信先アドレスの入力欄232及び通知タイミングの選択欄233〜236が配置されている。
選択欄231は、報知メールで通知するか否かを選択するための入力欄である。入力欄232には、報知メールで通知する場合に、報知メールの送信先を示すメールアドレスが入力される。選択欄233は、造形処理が正常に終了した時点で、その旨を報知メールで通知する場合に選択する入力欄である。選択欄234は、造形処理が異常中断され、或いは、異常終了し、或いは、キャンセルされた時点で、その旨を報知メールで通知する場合に選択する入力欄である。
選択欄235は、カートリッジ13M,13Sの交換時期が近付いた時点で、その旨を報知メールで通知する場合に選択する入力欄である。選択欄236は、1つ前の造形ジョブが終了した時点で、その旨を報知メールで通知する場合に選択する入力欄である。造形依頼者は、この様な設定画面230より、報知メールの送信先や通知タイミングを設定することができる。
図13のステップS101〜S107は、図9の3次元造形装置10における造形予約時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、開始予定時刻設定部403は、ユーザ操作に基づいて予約造形の開始予定時刻を設定する(ステップS101)。終了予定時刻算出部404は、開始予定時刻と累計造形時間とから予約造形の終了予定時刻を算出する(ステップS102)。
次に、タンク交換判定部406は、造形材の残量を累計使用量と比較し、造形処理の実行中におけるタンク交換の要否を判定する(ステップS103)。このとき、推奨時刻算出部407は、タンク交換が必要であれば、タンク交換の推奨時刻を算出する(ステップS104)。タンク交換の要否及び推奨時刻は、設定画面60内に表示される(ステップS105)。
造形処理部402は、予約セットボタン65が操作されれば、設定内容を確定し、待機モードへ移行する(ステップS106,S107)。一方、キャンセルボタン66が操作された場合には、設定内容が破棄され、この処理は終了する。
図14のステップS201〜S211は、図9の3次元造形装置10における造形処理時の動作の一例を示したフローチャートである。造形処理部402は、待機モード中に予約ジョブの開始予定時刻が到来すれば、対応する造形データを造形ジョブ記憶部401から読み出して造形処理を開始する。この造形処理中は、モニター画面80に表示するために、造形材の実際の使用量に基づいてカートリッジ交換の推奨時刻が補正される。また、カートリッジの交換時期や造形処理の終了時期が近いことが報知メールで通知される。
すなわち、3次元造形装置10は、カートリッジ13M,13S内の残量を検出し、その検出結果に基づいて、モデル材M及びサポート材Sの実際の使用量を算出する(ステップS201,S202)。そして、3次元造形装置10は、算出した使用量に基づいて、単位時間当たりの推定使用量を補正し、カートリッジ交換の推奨時刻を修正する(ステップS203)。カートリッジ13M,13Sの交換時期が近づけば、ステップS205へ移行し、それ以外はステップS207へ移行する(ステップS204)。
次に、報知メール送信部408は、カートリッジ交換の推奨時刻が近づけば、報知メールを送信する(ステップS205)。この報知メールは、カートリッジ13M,13Sが交換されない限り、所定回数だけ一定時間ごとに繰返し送信される。
造形処理部402は、カートリッジ13M,13Sが交換されないまま推奨時刻が到来すれば、造形処理を中断する(ステップS206,S209,S210)。
次に、報知メール送信部408は、カートリッジ13M,13Sが交換され(ステップS206又はS211)、その後、造形処理の終了予定時刻が近づけば(ステップS207)、報知メールを送信する(ステップS208)。この報知メールは、所定の停止条件がクリアされない限り、所定回数だけ一定時間ごとに繰返し送信される。ステップS201からステップS206までの処理手順は、造形処理の終了予定時刻が到来するまで繰り返される。
なお、図9の3次元造形装置10では、造形予約時に、現在の造形材の残量を予約ジョブにおける造形材の累計使用量と比較することによってタンク交換の要否が判定される場合の例について説明したが、本発明は要否判定をこれに限定するものではない。例えば、判定対象の造形ジョブよりも前に実行予定の造形ジョブがある場合に、当該実行予定の造形ジョブにおける造形材の推定使用量と現在の造形材の残量とに基づいて、タンク交換の要否判定を行うような構成であっても良い。
図15は、図9の3次元造形装置10における造形予約時の動作の他の一例を示した図であり、判定対象ジョブJ3よりも前に予約ジョブJ1,J2がある場合が示されている。判定対象ジョブJ3よりも前に実行予定の予約ジョブJ1,J2がある場合、タンク交換判定部408は、予約ジョブJ1,J2における造形材の累計使用量と現在の造形材の残量を比較することにより、判定対象の造形処理の期間中におけるタンク交換の要否を判定する。
予約ジョブJ1は、開始予定時刻t1及び終了予定時刻t2の造形ジョブであり、予約ジョブJ2は、開始予定時刻t3及び終了予定時刻t4の造形ジョブであり、判定対象ジョブJ3は、開始予定時刻t5及び終了予定時刻t6の造形ジョブである。
予約ジョブJ1,J2及び判定対象ジョブJ3における累計使用量をそれぞれG1〜G3とし、現在の造形材の残量をG0として、条件(G1+G2)<G0<(G1+G2+G3)が満たされているか否かに基づいて、判定対象ジョブJ3の実行中におけるタンク交換の要否が判定される。この様に構成することにより、判定対象ジョブJ3よりも前に実行予定の予約ジョブJ1,J2がある場合に、実行予定の予約ジョブJ1,J2における造形材の累計使用量と現在の造形材の残量とからタンク交換の要否判定を行うので、要否判定の精度を向上させることができる。
また、図9の3次元造形装置10では、モデル材カートリッジ13M及びサポート材カートリッジ13Sについて、カートリッジ交換の推奨期間における終端時刻が推奨時刻として表示される場合の例について説明したが、本発明はタンク交換の推奨時刻をこれに限定するものではない。例えば、モデル材カートリッジ13M及びサポート材カートリッジ13Sについて、カートリッジ交換の推奨期間を表示するような構成であっても良い。また、両カートリッジ間で推奨期間に重複期間があれば、重複期間を表示するような構成であっても良い。
図16は、モデル材カートリッジ13Mの推奨期間T1とサポート材カートリッジ13Sの推奨期間T2とに重複期間T3がある場合の残量変化の一例を示した図である。モデル材Mは、時刻t11で一方のカートリッジ131が空になって残量がm1となり、時刻t12で他方のカートリッジ131内の残量がm2となっている。推奨期間T1は、時刻t11から時刻t12までの期間である。
一方、サポート材MSAは、時刻t21で一方のカートリッジ132が空になって残量がs1となり、時刻t22で他方のカートリッジ132内の残量がs2となっている。推奨期間T2は、時刻t21から時刻t22までの期間である。重複期間T3は、時刻t21から時刻t12までの期間であり、この期間内であれば、造形処理を中断させることなく、両カートリッジ13M,13Sを同時に交換することができる。
また、図10では、時間入力欄61において時間を入力することによって予約造形の開始予定時刻が指定される場合の例について説明したが、本発明は予約造形の時刻指定をこれに限定するものではない。例えば、造形依頼者は、予約造形の終了予定時刻を指定し、この終了予定時刻と造形処理の推定造形時間とから造形処理を開始させる開始予定時刻を推定して表示するような構成であっても良い。この様に構成することにより、造形依頼者が指定した時刻に造形処理を自動的に開始させることができるとともに、造形処理の終了予定時刻を事前に認識することができる。
次に、造形依頼者が造形データの作成時に指定したパスワードに基づいて、再造形を制限するとともに、上部扉11のロック解除を制限するセキュリティロック機能について、図17〜図23を用いて説明する。
図17は、図1の造形依頼者端末20の他の構成例を示したブロック図である。この造形依頼者端末20は、CADデータ記憶部201、操作部202、造形データ生成部203、造形設定記憶部206、ネットワーク通信部207、表示部210及び造形設定画面生成部212により構成される。CADデータ記憶部201、操作部202、造形データ生成部203、造形設定記憶部206、ネットワーク通信部207及び表示部210は、図8の造形依頼者端末20におけるものと同様の構成である。
造形データ生成部203は、造形依頼者が造形データの作成を指示した場合に、当該作成指示に基づいて、造形データ221を生成し、造形設定記憶部206内に格納する。造形設定画面生成部212は、造形情報を保護するか否かを造形依頼者に選択させ、また、造形情報を保護する場合に、パスワード(認証コード)を入力させるための画面データを生成し、表示部210へ出力する。表示部210は、造形設定画面生成部212からの画面データに基づいて、造形設定画面を表示する。
造形設定記憶部206には、造形設定画面の表示中に入力されたパスワードが造形データに関連付けて保持される。パスワードは、造形設定データとして保持される。ネットワーク通信部207は、造形依頼者による送信指示に基づいて、パスワードを含む造形設定データを3次元造形装置10へ送信する。パスワードは、各造形データに対して個別に設定することができる。
<セキュリティロックの設定画面240>
図18は、図17の造形依頼者端末20における造形設定時の動作の一例を示した図であり、セキュリティロックの設定画面240が示されている。この設定画面240は、造形情報を保護するか否かを造形依頼者に選択させるための入力画面であり、パスワード設定の選択欄241及びパスワードの入力欄242が配置されている。
選択欄241は、パスワードを設定することによって造形情報を保護するか否かを選択するための入力欄である。パスワードは、ユーザ認証のための認証コードであり、数字又は英文字からなる任意の文字列をパスワードとして指定することができる。入力欄242には、パスワードを設定する場合に、パスワードを構成する文字列を入力することができる。
パスワードを設定すれば、造形履歴を利用した再造形の指示時と、上部扉11のロック解除時とにユーザ認証が行われる。このため、再造形によって造形データが造形依頼者以外の人に知られ、或いは、作製した造形物が造形依頼者以外の人によって取り出されるのを防止することができる。なお、ユーザ認証は上記の場合に限られず、3次元造形装置10の操作表示部12を介して最初の造形指示を行う場合や、造形予約を行う場合にユーザ認証を行うようにしてもよい。
図19は、図1の3次元造形装置10内の機能構成の他の一例を示したブロック図である。この3次元造形装置10は、操作部121、表示部122、ネットワーク通信部400、造形ジョブ記憶部401、造形処理部402、造形履歴記憶部421、履歴リスト生成部422、認証画面生成部423、コード比較部424、遮断扉ロック部425及びロック解除部426により構成される。操作部121、表示部122、ネットワーク通信部400、造形ジョブ記憶部401及び造形処理部402は、図9の3次元造形装置10におけるものと同様の構成である。
造形処理部402は、造形処理が終了した造形データを造形履歴として造形履歴記憶部421内に格納する。造形ジョブ記憶部401には、造形依頼者端末20から造形設定データとして造形データと共に受信したパスワードが当該造形データに関連づけて保持される。パスワードは、造形ジョブの属性情報として保持され、ユーザ認証時には登録コードとして用いられる。造形履歴は、造形データと、パスワードを含む属性情報とからなる。
履歴リスト生成部422は、造形操作者による履歴表示指示に基づいて、複数の造形履歴からなる履歴リスト画面を表示するための画面データを生成し、表示部122へ出力する。表示部122は、履歴リスト生成部422からの画面データに基づいて、履歴リスト画面を表示し、造形履歴のいずれかを再造形対象として造形操作者に選択させる。
認証画面生成部423は、照合コードを造形操作者に入力させる認証画面を表示するための画面データを生成し、表示部122へ出力する。照合コードは、登録コードと照合させるための入力コードである。表示部122は、認証画面生成部423からの画面データに基づいて、再造形用の認証画面を表示する。この認証画面は、履歴リスト画面の表示中における再造形対象の造形履歴を指定した造形指示に基づいて、表示される。
コード比較部424は、認証画面の表示中に入力された照合コードを対応する登録コードと比較し、その比較結果を造形処理部402及びロック解除部426へ出力する。すなわち、再造形対象の選択時に入力された照合コードが対応する登録コードと比較される。
造形処理部402は、コード比較部424の比較結果に基づいて、再造形対象として選択された造形履歴を用いた造形処理を行う。具体的には、照合コードが登録コードと一致すれば、再造形対象に指定された造形履歴に基づく造形処理が開始される。一方、照合コードが登録コードと一致しなければ、造形履歴に基づく造形処理は行わず、造形操作者による造形指示は無効化される。つまり、造形処理部402は、再造形対象として選択された造形履歴に認証コードが関連づけられていれば、照合コードと、造形履歴に関連づけられた認証コードとが一致した場合にのみ、造形処理を行う。ただし、パスワードが設定されていない造形履歴の場合、その様な造形履歴を指定した造形指示が検知されれば、当該造形履歴に基づく造形処理が直ちに実行される。
遮断扉ロック部425は、造形処理の実行中、上部扉11をロックする。ロック解除部426は、造形処理が終了した後、コード比較部424の比較結果に基づいてロック状態を解除する。具体的には、造形処理部402からのロック要求に基づいて、上部扉11がロックされる。ロック要求は、造形データの造形開始指示に同期して発生し、造形処理部402は、遮断扉ロック部425からのロック完了応答に基づいて、造形処理を開始する。
表示部122は、造形処理の終了時に、ロック解除用の認証画面を表示する。コード比較部424は、認証画面の表示中に入力された照合コードを対応する登録コードと比較する。ロック解除部426は、照合コードが登録コードと一致すれば、上部扉11のロック状態を解除する。一方、照合コードが登録コードと一致しなければ、ロック解除は行わず、上部扉11のロック状態が維持される。つまり、ロック解除部426は、造形処理が終了した造形データに認証コードが関連づけられていれば、照合コードと、造形データに関連づけられた認証コードとが一致した場合にのみ、上部扉11のロックを解除する。
ただし、パスワードが設定されていない造形処理の場合、造形処理が終了した後、上部扉11のロック状態は自動的に解除される。この場合、ヘッドユニット111周辺の温度が一定温度に下がるのに要する時間を考慮して、造形処理の終了後、一定時間が経過してからロック状態が解除される。なお、ロック解除用の認証画面は、造形処理が終了した直後に表示しても良いし、或いは、造形処理が終了する直前に表示しても良い。
<履歴リスト画面90>
図20は、図19の3次元造形装置10における再造形時の動作の一例を示した図であり、造形履歴の閲覧時に表示部122に表示される履歴リスト画面90が示されている。この履歴リスト画面90には、造形履歴として保持されている複数の造形ジョブについて、ジョブ名、造形処理の実行時刻が表示され、再造形ボタン91が造形ジョブに対応づけて配置されている。この例では、再造形ボタン91が造形ジョブごとに設けられている。
実行時刻は、造形処理の実行時の時刻情報であり、開始予定時刻及び終了予定時刻からなる。再造形ボタン91は、造形履歴を用いた造形処理を開始させるための操作アイコンである。パスワードが設定されていない造形ジョブの場合、再造形ボタン91を操作することにより、対応する造形履歴に基づく造形処理が直ちに開始される。これに対し、パスワードが設定されている造形ジョブの場合には、再造形ボタン91を操作することにより、再造形用の認証画面が表示される。
<認証画面92>
図21は、図19の3次元造形装置10における再造形時の動作の一例を示した図であり、図中の(a)には、履歴リスト画面90内の造形履歴を指定して再造形を指示した際に表示される認証画面92が示され、(b)には、ユーザ認証に失敗した場合に表示されるエラー画面95が示されている。
認証画面92には、パスワードの入力欄93及び文字入力ボタン94が配置されている。入力欄93は、登録コードと照合させるための照合コードを入力させる入力欄であり、文字入力ボタン94を操作することにより、数字又は英文字からなる文字列を照合コードとして指定することができる。
文字入力ボタン94は、複数の操作アイコンが整列配置されたキーボードタイプの入力ボタンであり、数字0〜9及び英文字A〜Zを入力することができる。照合コードを入力欄93に入力した後、文字入力ボタン94内の確定ボタンを操作することにより、入力された照合コードと登録コードとの照合処理が開始される。
エラー画面95は、照合コードが登録コードと一致しなかった場合に表示される認証エラー画面であり、戻るボタンを操作すれば、認証画面92を再度表示させることができる。
図22のステップS301〜S307は、図19の3次元造形装置10における再造形時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、認証画面生成部423は、履歴リスト画面90上の造形履歴のいずれかを再造形対象に指定した造形指示が検知された場合に、造形履歴として保持されている造形データにパスワードが関連づけられていれば、再造形用の認証画面92を表示部122に表示する(ステップS301,S302)。一方、造形履歴として保持されている造形データにパスワードが関連づけられていない場合には、ステップS306へ移行し、造形履歴に基づく造形処理が開始される。
次に、コード比較部424は、認証画面92上で照合コードが入力されれば、対応する登録コードと比較し、その比較結果を造形処理部402へ出力する(ステップS303,S304)。造形処理部402は、照合コードが登録コードと一致していれば、造形履歴に基づく造形処理を開始する(ステップS305,S306)。
一方、造形処理部402は、照合コードが登録コードと一致していなければ、造形履歴に基づく造形処理を行わず、エラー画面95を表示してこの処理を終了する(ステップS305,S307)。
図23のステップS401〜S409は、図19の3次元造形装置10における造形処理の終了時の動作の一例を示したフローチャートである。まず、認証画面生成部423は、UVランプ351の消灯後、一定時間が経過した場合に(ステップS401,S402)、処理が終了した造形データにパスワードが関連づけられていれば、ロック解除用の認証画面92を表示部122に表示する(ステップS403,S404)。一方、造形データにパスワードが関連づけられていない場合には、ステップS408へ移行し、上部扉11のロック状態が解除される。
次に、コード比較部424は、認証画面92上で照合コードが入力されれば、対応する登録コードと比較し、その比較結果をロック解除部426へ出力する(ステップS405,S406)。ロック解除部426は、照合コードが登録コードと一致していれば、上部扉11のロック状態を解除する(ステップS407,S408)。
一方、ロック解除部426は、照合コードが登録コードと一致していなければ、ロック解除を行わず、エラー画面95を表示し、ステップS404の処理手順が繰り返される(ステップS407,S409)。
本実施の形態によれば、造形操作者が指定した時刻に造形処理が終了するように造形処理を自動的に開始させることができる。これにより、造形が終了するタイミングを造形操作者の所望のタイミングに合わせることができるので、造形操作者が不在時に造形が終了し、造形物が3次元造形装置10内に長時間放置されることによる造形材の潮解や、第三者が完成した造形物を勝手に持ち去ることを防止できる。
また、造形操作者は、開始予定時刻か終了予定時刻のいずれかを指定するだけで良いので、造形予約を簡単に行うことができる。さらに、タンク交換の要否判定結果が造形処理の開始前に表示されるので、造形操作者は、造形処理の実行中に造形材タンクの交換が必要になるか否かを事前に認識することができる。また、造形材の残量と推定使用量とからタンク交換の推奨時刻を求めて造形処理の開始前に表示するので、造形操作者は、造形処理の実行中において造形材タンクを交換するのに適切なタイミングを事前に認識することができる。
例えば、造形操作者が不在時に造形材タンクの交換が必要となった場合、造形操作者は造形材タンクの交換を行うことはできない。この場合、造形材が不足し、造形処理が中断してしまう。そこで、タンク交換の推奨時刻を表示することにより、推奨時刻中にタンク交換が難しいと造形操作者が判断した場合は、推奨時刻がタンク交換が可能な時間帯となるように造形開始予定時刻をずらして予約することができるので、造形処理の中断を未然に防止できる。
また、タンク交換の推奨時刻が到来する際と、造形処理の終了予定時刻が到来する際とに、報知メールが送信されるので、造形依頼者にタンク交換を促し、或いは、造形処理の終了を知らせることができる。
なお、本実施の形態では、可搬プレート41とプレート取付台42とからz移動ユニット40が構成される場合の例について説明したが、本発明は、可搬プレート41及びプレート取付台42からなるユニットが可動式のものに限定するものではなく、固定式のものであっても良い。すなわち、ヘッドユニット111を鉛直方向へ移動させることにより、造形ステージ112上に造形材層を積層形成するようなものも本発明には含まれる。
また、本実施の形態では、3次元造形装置10がインクジェット方式の積層型造形機である場合の例について説明したが、本発明は造形対象物の造形方法をこれに限定するものではなく、造形ステージ112上に造形材層を順に積層形成するものであれば他の方式のものであっても良い。例えば、UV硬化樹脂にレーザー光を照射して固化させる光造形法を採用した造形装置にも本発明は適用することができる。光造形法は、UV硬化樹脂からなる液体を入れた容器の上方から樹脂液面にレーザー光を照射し、レーザー光を2次元走査することによって樹脂液面を選択的に露光し固化させる。或いは、本発明は、粉末結合法、シート積層法、樹脂押し出し法を採用した造形装置にも適用することができる。粉末結合法は、熱可塑性の粉末からなる粉末層にレーザー光を照射することによって粉末層を選択的に溶融固化させ、或いは、砂などの粉末にバインダー液を塗布することによって粉末層を選択的に固化させる造形法である。シート積層法は、LOM(Laminated Object Manufacturing)方式とも呼ばれ、紙などのシート材同士を接着し、ナイフなどを用いて上側のシート材を切断することにより所定形状に切れ目を入れる造形法である。樹脂押し出し法は、FDM(Fused Deposition Molding)方式とも呼ばれ、熱可塑性樹脂を溶融させた状態でノズルから押し出しながらノズルを走査して樹脂層を形成する造形法である。