JP5791009B2 - 乳酸菌およびそれらを用いた飲食物又は化粧品 - Google Patents

乳酸菌およびそれらを用いた飲食物又は化粧品 Download PDF

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Description

本発明は、乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とする美肌用組成物、該美肌用組成物を含有する飲食品又は皮膚外用剤、及び該美肌用組成物の有効成分として好適な乳酸菌に関する。
女性にとって肌のトラブルは重大な問題である。皮膚組織においてその保水性や弾力性に大きく関与している成分としては、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などの酸性ムコ多糖やコラーゲンなどが知られている。しかし、加齢や生活習慣などによりこれらの量が減少すると、皮膚の保水性や弾力性が失われてしまい、肌荒れや小じわなどの肌トラブルが生じやすい。
このため、このような肌トラブルを解消し得る安全な素材の開発が強く求められている。このような美肌効果を有する化粧品や飲食品としては、たとえば、ヒアルロン酸やコラーゲン等の皮膚組織を構成する成分を多く含むものが知られている。
一方、乳酸菌は、整腸作用や免疫賦活作用を有する安全な素材として知られており、これらの乳酸菌を大量に含むヨーグルト等が、健康と美容によい飲食品として女性消費者に広く支持されている。また、皮膚の状態は、紫外線等の外的要因のみではなく、便通や疲労、健康状態等の内的要因にも大きく左右される。このため、皮膚状態の改善を目的とした飲食品や化粧品の原料として、乳酸菌やその培養物を用いることが行われている。
たとえば、(1)免疫調節作用の高いラクトバチルス属菌を含んでなる美容組成物(例えば、特許文献1参照。)や、(2)セラミドと乳酸菌、好ましくはペプチドを組み合わせることにより肌の状態の相乗的改善効果を有する美容食品(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。また、(3)燕の酵素分解物、コラーゲン、SOD活性物質、ラクトフェリン、乳酸菌・酵母を含む美肌促進剤が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。さらに、(4)美肌効果・治療効果の高いサーモフィラス菌OLS3059やその培養物を用いた組成物や、サーモフィラス菌OLS3059とブルガリア菌を用いて調製した発酵乳が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
特開2008−179601号公報 特開2004−254632号公報 特開2003−95961号公報 特開2007−39423号公報
上記の組成物は、いずれも経口摂取することにより、ある程度の皮膚状態の改善効果が奏されるものの、その効果は未だ不十分である。さらに、上記(1)の美容組成物、(2)の美容食品、(3)の美肌促進剤に原料として添加されている乳酸菌は、主に、乳酸菌が有する一般的な整腸作用や免疫賦活作用等により便通等の健康状態を改善することを目的として添加されており、皮膚状態の改善に直接作用効果を奏するものではない。一方、上記(4)の組成物は、美肌効果等の高い特定の乳酸菌株を使用しているものの、該乳酸菌の摂取した場合にどのような作用機序により皮膚状態の改善効果が得られるのかについては、具体的な記載は一切ない。
本発明は、食品由来の安全な素材であって、より優れた美肌作用を有する素材、該素材を含有する美肌用組成物、並びに該美肌用組成物を含有する飲食品及び皮膚外用剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、食品由来の特定の乳酸菌の中に、皮膚細胞に対するコラーゲン産生促進作用、皮膚細胞に対するヒアルロン酸産生促進作用、皮膚の水分含有量増大作用、及び皮膚の水分蒸散抑制作用が有ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする美肌用組成物を提供するものである。
また、本発明は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の菌体有効成分とすることを特徴とする皮膚細胞のコラーゲン産生促進剤、皮膚細胞のヒアルロン酸産生促進剤、皮膚の水分含有量増大剤、又は皮膚の水分蒸散抑制剤を提供するものである。
また、本発明は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の菌体有効成分とすることを特徴とする美肌用飲食品又は美肌用皮膚外用剤を提供するものである。
また、本発明は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株を提供するものである。
本発明の美肌用組成物は、食品由来の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とするため、非常に安全摂取することができる。また、本発明の美肌用組成物の有効成分である特定の乳酸菌の菌体又は培養物は、皮膚細胞に対するコラーゲン産生促進作用、皮膚細胞に対するヒアルロン酸産生促進作用、皮膚に対する保水作用、及び皮膚に対する水分蒸散抑制作用からなる群より選択される1以上の作用を少なくとも有するため、非常に優れた美肌効果を奏する。さらに、前記乳酸菌の菌体又は培養物は、経口摂取のみならず、皮膚へ直接塗布する等の経皮摂取した場合にも効果を奏し得ることから、飲食品や皮膚外用剤に好適に用いることができる。
本発明の美肌用組成物、皮膚細胞のコラーゲン産生促進剤、皮膚細胞のヒアルロン酸産生促進剤、皮膚の水分含有量増大剤、及び皮膚の水分蒸散抑制剤(以下、美肌用組成物等、ということがある。)は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株、ラクトバチルス・パラプランタラムFBA1株、ストレプトコッカス・ボビスFBA5株、ロイコノストック・メセンテロイデスFBA4株、及びラクトバチルス・サケイFBA3株からなる群より選択される1種以上の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とすることを特徴とする。これらの乳酸菌は、食品から分離された乳酸菌であり、皮膚細胞に対するコラーゲン産生促進作用、皮膚細胞に対するヒアルロン酸産生促進作用、皮膚に対する保水作用、及び皮膚に対する水分蒸散抑制作用からなる群より選択される1以上の作用を有する。このため、これらの乳酸菌を有効成分とする本発明の美肌用組成物は、コラーゲン産生能力、ヒアルロン酸産生能力、及び水分含有量を向上させ、水分蒸散量を抑制させる等の皮膚機能の改善を図ることができ、優れた美肌効果を奏することができる。
ラクトバチルス・カルバタスFBA2株、ラクトバチルス・パラプランタラムFBA1株、ストレプトコッカス・ボビスFBA5株、ロイコノストック・メセンテロイデスFBA4株、及びラクトバチルス・サケイFBA3株は、乳酸菌191株に対するヒト皮膚由来線維芽細胞のコラーゲン産生促進作用のスクリーニング、及び乳酸菌66株に対するヒト皮膚由来線維芽細胞のヒアルロン酸産生促進作用のスクリーニングを行い、ヒト皮膚由来線維芽細胞のコラーゲン産生促進作用又はヒアルロン酸産生促進作用を有する乳酸菌を選抜することにより得られた。以下、詳細に説明する。
1.コラーゲン産生促進作用を有する乳酸菌のスクリーニング
表1に示した乳酸菌191株を供試菌株とした。これらの乳酸菌を、MRS培地にて培養し殺菌後、凍結乾燥した。その後、ジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬)により3,10,30mg/mlの濃度になるように懸濁したものを、乳酸菌懸濁液とした。該乳酸菌懸濁液を、ヒト皮膚由来線維芽細胞(KURABO,Lot.No.070518−901,20歳女性皮膚由来)に3,10,30μg/mlの濃度で添加し、24時間培養後に培養上清を回収した。陽性対照として、乳酸菌懸濁液に換えて同濃度のアスコルビン酸(AsA、和光純薬)を用いた。回収した培養上清をミリQ水で一晩透析した後、凍結乾燥し、20mM Tris−HCl(pH7.5)により10倍濃縮した試料を調製した。これらの試料を用いて、I型コラーゲンに対するポリクローナル抗体(ROCKLAND,Cat.No.600−401−103−0)を用いてウェスタンブロッティングを行うことにより、コラーゲン量を測定した。画像の数値化はソフトウェアQuantity One(バイオ・ラッド ラボラトリーズ)を用いて行った。
Figure 0005791009
図1はウェスタンブロッティングの結果を示した図であり、図2は、図1の結果を画像解析により数値化した結果を示した図である。この結果、FBA1株、FBA2株、FBA3株、FBA4株、FBA5株由来の乳酸菌懸濁液を添加したヒト皮膚由来線維芽細胞では、アスコルビン酸(AsA)を添加した細胞と同様に、濃度依存的なコラーゲン産生促進作用が認められた。
2.ヒアルロン酸産生促進作用を有する乳酸菌のスクリーニング
表2に示した乳酸菌66株を供試菌株とした。上記1と同様にして調製した乳酸菌懸濁液を、ヒト皮膚由来線維芽細胞に3,10,30μg/mlの濃度で添加し、48時間培養後に培養上清を回収した。陽性対照として、乳酸菌懸濁液に換えて同濃度のN−アセチルグルコサミン(NAG、Sigma−aldrich)を用いた。回収した培養上清をミリQ水で一晩透析した後、凍結乾燥し、20mM Tris−HCl(pH7.5)により10倍濃縮した試料を調製した。ヒアルロン酸ELISAキット(生化学工業,Cat.No.280566)を用いて、これらの試料中のヒアルロン酸量を測定した。測定はN=3で実施し、平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。
Figure 0005791009
測定結果を図3に示す。図3中、「0」はN−アセチルグルコサミンと乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、FBA1株、FBA4株由来の乳酸菌懸濁液を添加したヒト皮膚由来線維芽細胞では、3、10、30μg/mlで濃度依存的に有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。FBA5株由来の乳酸菌懸濁液を添加したヒト皮膚由来線維芽細胞では、10、30μg/mlで有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。FBA2株、FBA3株由来の乳酸菌懸濁液を添加したヒト皮膚由来線維芽細胞では、30μg/mlで有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。
3.マウスに経口摂取させた場合の美肌効果
ヒト皮膚由来線維芽細胞に対するコラーゲン産生促進作用及びヒアルロン酸産生促進作用が確認されたFBA1株、FBA2株、FBA3株、FBA4株、及びFBA5株をマウスに経口摂取させた場合の美肌効果について調べた。
具体的には、6週齢の雌性HR−1マウスを、12%カゼイン食餌摂取にて7日間馴化飼育後、12%カゼイン食餌摂取群(普通食摂取群)及び6%カゼイン食餌摂取群(低タンパク食摂取群)に分け、各群に各乳酸菌懸濁液を200又は600mg/kg/dayで6週間、毎日強制経口投与した。陽性対照として、乳酸菌に換えて、グルコサミン塩酸塩(Glc、和光純薬)を400mg/kg/day又はアスコルビン酸(AsA)を600mg/kg/dayで6週間、毎日強制経口投与した。なお、各摂取群を構成するマウスは5匹とした。
・水分蒸散量の測定
薬剤を6週間強制経口投与後、各群のマウスの背部皮膚における水分蒸散量を測定した。皮膚水分蒸散量は、肌のバリア機能の状態の指標とすることができる。皮膚水分蒸散量の測定は、VapoMeter(Delfin technologies Ltd.)を用いて、背部の尾付け根より首に向かい2cm、腰椎から右側に0.5cmの部位の水分蒸散量(g/mh)を3回測定して平均を求めた。各群5匹の平均値からその群の平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。測定結果を図4に示す。図4中、「0」はグルコサミン塩酸塩、アスコルビン酸、及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取群では水分蒸散量が有意に増加したが、5株全ての投与群において、陽性対照であるグルコサミン塩酸塩を投与した群やアスコルビン酸を投与した群と同程度に有意な水分蒸散量の抑制が認められた。
・コラーゲン量の測定
薬剤を6週間強制経口投与後、各群のマウスの背部皮膚0.2gを切除し、凍結乾燥したものに1mlの抽出バッファー(1%SDS含有20mM Tris−HCl(pH7.5))を加えてマルチビーズショッカー(MB601(S)型、安井器械)にて1,500rpm、1分処理して懸濁液を得た。懸濁液を4℃、15,000rpmで遠心後、上清を0.45μmのフィルターでろ過してタンパク質抽出物を得た。このタンパク質抽出物を用いてI型コラーゲン量を上記1と同様にウェスタンブロッティングで測定し、皮膚機能向上作用を評価した。画像の数値化はソフトウェアQuantity One(バイオ・ラッド ラボラトリーズ)を用いて行い、各群5匹の平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。図5はウェスタンブロッティングの結果を示した図であり、図6は、図5の結果を画像解析により数値化した結果を示した図である。図6中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取群ではI型コラーゲン量が有意に低下したが、FBA1株、FBA2株、FBA5株の投与群において、特に有意なI型コラーゲン産生促進作用が認められた。
・ヒアルロン酸量の測定
薬剤を6週間強制経口投与後、各群のマウスの背部皮膚中のヒアルロン酸量を測定した。ヒアルロン酸量の測定は、各群のマウスの背部皮膚から抽出したタンパク質抽出物を用いて、上記2と同様にしてヒアルロン酸ELISAキットを用いて測定し、各群5匹の平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。測定結果を図7及び8に示す。図7及び8中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取群ではヒアルロン酸量が有意に低下したが、FBA2株、FBA5株、FBA3株、FBA4株の投与群において、有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。特に、FBA2株、FBA5株の投与群においては、普通食と同等までヒアルロン酸量が回復した。
・皮膚水分含有量の測定
さらに、薬剤を6週間強制経口投与後、各群のマウスの皮膚水分含有量を測定した。水分含有量の測定は、モイスチャーチェッカー(スカラ製,MY−808S)を用い、背部の尾付け根より首に向かい2cm、腰椎から右側に0.5cmの部位の水分量(%)を3回測定して平均を求めた。各群5匹の平均値からその群の平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。測定結果を図9に示す。図9中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、FBA2株投与群において、有意な水分含有量の増大が認められた。
4.FBA2株をマウスに経口摂取させた場合の美肌効果に必要な用量の設定
FBA2株をマウスに経口摂取させた場合の美肌効果について、必要な用量を調べた。具体的には、6週齢の雌性HR−1マウスを、12%カゼイン食餌摂取にて3週間馴化飼育後、12%カゼイン食餌摂取群(普通食摂取群)及び6%カゼイン食餌摂取群(低タンパク食摂取群)に分け、各群にミリQ水で懸濁した乳酸菌懸濁液を40、60、100又は200mg/kg/dayで6週間、毎日強制経口投与した。陽性対照として、乳酸菌に換えて、グルコサミン塩酸塩(Glc、和光純薬)を400mg/kg/dayで6週間、毎日強制経口投与した。なお、各摂取群を構成するマウスは5匹とした。
・水分蒸散量の測定
FBA2株を6週間強制経口投与後、各群のマウスの背部皮膚における水分蒸散量を測定した。皮膚水分蒸散量の測定は、上記3と同様にして行った。測定結果を図10に示す。図10中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取により有意に水分蒸散量が増加したが、FBA2株を100又は200mg/kg/dayで経口投与した群においては、低タンパク食摂取による水分蒸散量増加を有意に抑制する作用が認められた。
・皮膚水分含有量の測定
FBA2株を6週間強制経口投与後、各群のマウスの皮膚水分含有量を測定した。水分含有量の測定は、上記3と同様にして行った。測定結果を図11に示す。図11中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取により水分量が低下したが、FBA2株を200mg/kg/dayで経口投与した群においては、低タンパク食摂取による水分量低下を有意に回復する作用が認められた。
・コラーゲン量の測定
FBA2株を6週間強制経口投与後、各群のマウスの背部皮膚0.2gを切除し、凍結乾燥したものに1mlの抽出バッファー(1%SDS含有20mM Tris−HCl(pH7.5))を加えてマルチビーズショッカー(MB601(S)型、安井器械)にて1,500rpm、1分処理して懸濁液を得た。懸濁液を4℃、15,000rpmで遠心後、上清を0.45μmのフィルターでろ過してタンパク質抽出物を得た。このタンパク質抽出物を用いてI型コラーゲン量をコラーゲンELISAキット(エーシーバイオテクノロジーズ,Cat.No.EC1−E105)を用いて行い、各群5匹の平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。測定結果を図12に示す。図12中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取により有意にコラーゲン量が低下したが、FBA2株を100又は200mg/kg/dayで経口投与した群においては、低タンパク食摂取によるコラーゲン量低下を有意に回復する作用が認められた。
・ヒアルロン酸量の測定
FBA2株を6週間強制経口投与後、各群のマウスの背部皮膚中のヒアルロン酸量を測定した。ヒアルロン酸量の測定は、各群のマウスの背部皮膚から抽出したタンパク質抽出物を用いて、上記2と同様にしてヒアルロン酸ELISAキットを用いて測定し、各群5匹の平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。測定結果を図13に示す。図13中、「0」はグルコサミン塩酸塩及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。この結果、低タンパク食摂取により有意にヒアルロン酸量が低下したが、FBA2株を100又は200mg/kg/dayで経口投与した群においては、低タンパク食摂取によるヒアルロン量低下を有意に回復する作用が認められた。
以上の結果より、低タンパク食摂取による皮膚機能低下動物モデルにおいて、FAB2株の水分蒸散量抑制作用、コラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸促進作用に必要な用量は100mg/kg/day以上であることが明らかになった。動物およびヒトでの経口投与による美肌作用が知られている食品素材として、アスコルビン酸およびグルコサミン塩酸塩が知られており、アスコルビン酸は動物では600mg/kg/day、ヒトでは300mg/dayで、グルコサミン塩酸塩は動物では400mg/kg/day、ヒトでは200mg/dayで有効性が確認されている。これらの知見から鑑みて、FBA2株をヒトに経口投与した場合は、50mg/kg/day以上であれば有意な効果が期待できる。
5.三次元皮膚モデルに経皮摂取させた場合の美肌効果
ヒト皮膚三次元モデルはヒトの皮膚の疑似モデルとして、安全性評価や有効性評価に広く用いられている。ヒト皮膚三次元モデルは、TESTSKIN(LSE−d)(東洋紡績)を用いた。TESTSKIN(LSE−d)の外側のウェルに培地を添加し、24時間培養した。その後、ジメチルスルホキシド(DMSO、和光純薬)により1,3,10mg/mlの濃度になるように懸濁した乳酸菌懸濁液を1,3,10μg/mlの濃度で培地に添加し、角質層上部のアッセイリング内の組織上に60μl添加し、24時間培養した。その後、角質層上部の培地を除去後、紫外線照射機器(クリニカル・サプライ,デルマレイ−200)を用いてUVAおよびUVBをそれぞれ10J/cmおよび300mJ/cmで照射した。紫外線強度は紫外線強度測定計VLX3W(VIRBER LOURMAT)で測定した。対照としてUVAおよびUVBを照射しない群のヒト皮膚三次元モデルも作製した。その後、培養液を交換するとともに、各乳酸菌懸濁液を添加した培地を角質層上部のアッセイリング内の組織上に60μl再添加し、24時間培養した。組織を回収し、組織抽出用溶液{50mM Tris−HCl(pH7.5)、0.5%(Octylphenoxy)polyethoxyethanol(Sigma−Aldrich)}を加え、ホモジナイザーでホモジナイズした。10,000×G、30分間遠心して組織片を除去した後、蒸留水中で4℃、一晩透析した。その後、凍結乾燥により水分を除いた。20倍濃縮になるように組織抽出用溶液を加え、三次元皮膚モデル抽出サンプルとして用いた。
・コラーゲン量の測定
コラーゲン量の測定は、三次元皮膚モデル抽出サンプルを用いて、コラーゲンELISAキット(エーシーバイオテクノロジーズ,Cat.No.EC1−E105)を用いて測定した。測定はN=3で実施し、平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。紫外線非照射の測定結果を図14に、紫外線照射の測定結果を図15に示す。図14及び15中、「0」はアスコルビン酸(AsA)及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。
この結果、紫外線非照射時のFBA1株、FBA2株、FBA3株の経皮摂取においては1,3,10μg/mlで濃度依存的に有意なコラーゲン産生促進作用が認められた。FBA4株の経皮摂取においては3,10μg/mlで有意なコラーゲン産生促進作用が認められた。FBA5株の経皮摂取においては10μg/mlで有意なコラーゲン産生促進作用が認められた。また、紫外線照射により傷害を与えた場合には、紫外線非照射時に比べてコラーゲン量が有意に低下したが、FBA1株、FBA2株、FBA3株の経皮摂取においては1,3,10μg/mlで濃度依存的に有意に紫外線照射によるコラーゲン産生低下を回復する作用が認められた。FBA4株の経皮摂取においては3,10μg/mlで有意に紫外線照射によるコラーゲン産生低下を回復する作用が認められた。FBA5株の経皮摂取においては10μg/mlで有意に紫外線照射によるコラーゲン産生低下を回復する作用が認められた。
・ヒアルロン酸量の測定
上記コラーゲン量測定と同様の三次元皮膚モデル抽出サンプルを用いてヒアルロン酸ELISAキット(生化学工業,Cat.No.280566)により測定した。測定はN=3で実施し、平均値±標準誤差(SD)を算出した。2群間の有意差検定は、student’s t−test(有意水準p<0.05)で実施した。紫外線非照射の測定結果を図16に、紫外線照射の測定結果を図17に示す。図16及び17中、「0」はN−アセチルグルコサミン(NAG)及び乳酸菌のいずれも投与していない無処理群を示す。
この結果、紫外線非照射時のFBA1株の経皮摂取においては1,3,10μg/mlで濃度依存的に有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。FBA2株、FBA4株、FBA5株の経皮摂取においては3,10μg/mlで有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。FBA3株の経皮摂取においては10μg/mlで有意なヒアルロン酸産生促進作用が認められた。また、紫外線照射により傷害を与えた場合には、紫外線非照射時に比べてヒアルロン酸量が有意に低下したが、FBA1株、FBA2株の経皮摂取においては1,3,10μg/mlで濃度依存的に有意に紫外線照射によるヒアルロン酸産生低下を回復する作用が認められた。FBA3株、FBA4株、FBA5株の経皮摂取においては3,10μg/mlで有意に紫外線照射によるヒアルロン酸産生低下を回復する作用が認められた。
以上の結果より、これら5株の乳酸菌は、皮膚細胞に対するコラーゲン産生促進作用とヒアルロン酸産生促進作用とを有していること、及び、これらの作用は、皮膚に直接塗布する等により経皮摂取した場合と経口摂取した場合とのいずれの場合でも作用効果を発揮し得ることが確認された。
FBA2株は大根人参ぬか漬けから単離同定されたラクトバチルス・カルバタスに属する乳酸菌であり、FBA1株は白菜浅漬けから単離同定されたラクトバチルス・パラプランタラムに属する乳酸菌であり、FBA5株はやぎ乳から単離同定されたストレプトコッカス・ボビスに属する乳酸菌であり、FBA3株は高知たかなから単離同定されたラクトバチルス・サケイに属する乳酸菌であり、FBA4株はたくあん古漬けから単離同定されたロイコノストック・メセンテロイデスに属する乳酸菌である。すなわち、いずれも食品から単離同定された乳酸菌であり、安全に摂取し得ることが明らかである。
各乳酸菌を、37℃で2日間、MRS寒天培地で培養した場合に形成されるコロニーの形態を表3に示す。これらの形態学的特徴は、各株の同属の乳酸菌と同様であった。
Figure 0005791009
また、各乳酸菌の菌学的性質を表4〜6に示す。なお、糖資化性は、API50CHLキット(日本ビオメリュー製)を用いて測定した。
Figure 0005791009
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ラクトバチルス・カルバタスFBA2株、ラクトバチルス・パラプランタラムFBA1株、ストレプトコッカス・ボビスFBA5株、ロイコノストック・メセンテロイデスFBA4株、及びラクトバチルス・サケイFBA3株(以下、本発明の乳酸菌ということがある。)は、新規に単離同定された乳酸菌であり、皮膚細胞に対するコラーゲン産生促進作用とヒアルロン酸産生促進作用とを有する非常に有用な新規乳酸菌である。そこで、本発明者らは、これらの乳酸菌を、独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部特許微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に新規菌株として寄託した。受託番号は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株がNITE P−649、ラクトバチルス・パラプランタラムFBA1株がNITE P−648、ストレプトコッカス・ボビスFBA5株がNITE P−652、ロイコノストック・メセンテロイデスFBA4株がNITE P−651、及びラクトバチルス・サケイFBA3株がNITE P−650である。なお、寄託日は、いずれも平成20年9月25日である。
本発明の美肌用組成物等の有効成分として含有させる本発明の乳酸菌の菌体は、生菌であってもよく、死菌であってもよい。生菌を含有させた美肌用組成物を経口摂取することにより、本発明の美肌効果のみならず、他の乳酸菌を摂取した場合と同様に、より効果的な整腸作用や免疫賦活作用等も期待できる。一方、生菌を殺菌処理等することにより得られた死菌であってもよい。該殺菌処理としては、本発明の乳酸菌が有する皮膚に対するコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、保水作用、又は水分蒸散抑制作用等の美肌作用を損なうことなく処理し得る方法であれば、特に限定されるものではなく、例えば、125℃、40秒間の加熱処理、UV照射処理、ホルマリン処理、酵素処理、破砕処理等がある。
本発明の乳酸菌の菌体は、他の乳酸菌と同様に、菌末として用いることができる。菌末を調製する方法は、特に限定されるものではなく、フリーズドライ法、スプレードライ法、ドラムドライ法等の一般的に乳酸菌の菌末を調製する方法から適宜選択して用いることができる。生菌の状態で菌末とし得ること、乳酸菌が有する美肌作用に対する影響を抑えることができることから、フリーズドライ法により調製することが好ましい。
本発明の美肌用組成物等の有効成分として含有させる本発明の乳酸菌の培養物は、乳酸菌を培地中で培養して得られるものであれば特に限定されるものではなく、菌体を培地中で増殖させて得られる培養液であってもよく、培養液の上清(遠心分離処理等により培養液から菌体等の固形成分を除いたもの)であってもよく、培養液の濃縮物であってもよく、培養液に菌体破砕処理等を施したものであってもよく、培養液から菌体内成分を抽出したものであってもよい。また、本発明の乳酸菌は、適当な培地中で培養することにより、他の乳酸菌と同様に発酵乳等の発酵物を調製することができるため、本発明の美肌用組成物等の有効成分として、本発明の乳酸菌の発酵乳等の発酵物やその調製物(例えば、乾燥物、濃縮物、抽出物等)を含有させてもよい。なお、遠心分離処理、濃縮方法、菌体破砕処理、抽出方法、発酵方法等は、公知の方法から適宜選択して常法により行うことができる。
本発明の乳酸菌を培養する培地は、各乳酸菌株が生育し得る培地であれば、特に限定されるものではなく、乳酸菌の培養において一般的に用いられる培地やその改変培地等から適宜選択して用いることができる。本発明の乳酸菌を培養する培地に含有される炭素源としては、例えば、通常の微生物の培養に利用されるグルコース、蔗糖、乳糖、糖蜜等からなる群より選択される1又は2種以上を用いることができる。また、窒素源としては、ペプトン、カゼイン、カゼイン分解物、ホエー、ホエー分解物等からなる群より選択される1種類又は2種類以上を用いることができる。また、その他の栄養素の供給源としては、コーンスティプリカー(CSL)、酵母エキス、肉エキス、肝臓エキス、トマトジュース等からなる群より選択される1又は2種以上を用いることができる。さらに、本発明の乳酸菌を培養するための培地には、L−システイン等の還元剤等;ビタミン、核酸関連物質、酢酸塩やクエン酸塩、脂肪酸エステル、特に好ましくはツイーン80等の生育促進因子;リン酸塩等の緩衝能を付与し得る化合物等が、適宜添加されても良い。このような培地として、例えば、MRS培地等の合成培地や、野菜や果物等の搾汁等、牛乳、豆乳、還元脱脂粉乳培地等の発酵乳の製造に一般的に用いられる培地等が挙げられる。
培養形式は、特に限定されるものではなく、培養スケール、得られた乳酸菌培養物の使用用途、該培養物が添加される美肌用組成物等の種類等を考慮して適宜決定することができる。例えば、寒天平板培地に塗布して培養してもよく、液体培地中で培養してもよい。液体培地における培養形式として、静置培養、回分培養等が挙げられる。例えば、継代培養の場合には、簡便であるため、寒天平板培地上で培養することや、適当な液体培地中で静置培養、回分培養することが好ましい。
また、本発明の乳酸菌の培養条件は、特に限定されるものではなく、乳酸菌を培養する場合に一般的に用いられる条件により培養することができる。例えば、培養温度は20〜40℃であることが好ましく、25〜37℃であることがより好ましく、30℃であることがさらに好ましい。また、培地のpHは3.5〜8.0であることが好ましく、4.0〜7.0であることがより好ましい。特に、乳酸菌の培養においては、該乳酸菌が産生する乳酸により培地のpHが低下するため、培養開始時の培地のpHは6.0〜7.0であることが好ましい。その他、本発明の乳酸菌は、他の乳酸菌と同様に嫌気的条件で培養することが好ましい。
本発明の美肌用組成物等の有効成分である乳酸菌の菌体又は培養物は、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株、ラクトバチルス・パラプランタラムFBA1株、ストレプトコッカス・ボビスFBA5株、ロイコノストック・メセンテロイデスFBA4株、又はラクトバチルス・サケイFBA3株のいずれか1種類の乳酸菌のみの菌体又は培養物からなるものであってもよく、これら5種類のうちの2種類以上の乳酸菌の菌体又は培養物の混合物であってもよい。なかでも、本発明の美肌用組成物等としては、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株、ラクトバチルス・パラプランタラムFBA1株、及びストレプトコッカス・ボビスFBA5株からなる群より選択される1種以上の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とすることが好ましく、ラクトバチルス・カルバタスFBA2株の菌体又は培養物を有効成分とすることが特に好ましい。
本発明の美肌用組成物等は、本発明の乳酸菌の菌体又は培養物のみからなるものであってもよく、本発明の乳酸菌の菌体又は培養物による皮膚細胞や皮膚に対する効果を阻害しない程度において、その他の物質を含有するものであってもよい。例えば、本発明の乳酸菌の菌体等に加えて、コラーゲンペプチド、ヒアルロン酸、セラミド、SOD活性物質、ラクトフェリン、ビタミン、ポリフェノール等の美肌作用を有する公知物質を含有させることにより、より高い美肌効果を得ることが期待できる。
本発明の美肌用組成物等は、経口摂取するものであってもよく、経皮摂取するものであってもよい。経口摂取するものとしては、具体的には、飲食品であることが好ましい。なお、本発明における飲食品には、そのまま喫食可能な食品や飲料に加えて、食品添加物も含まれる。また、経皮摂取するものとしては、皮膚外用剤が好ましい。皮膚外用剤として、具体的には、化粧品、医薬部外品、医薬品等が挙げられるが、化粧品であることがより好ましい。
本発明の美肌用組成物等を経口摂取するものとして用いる場合には、例えば、乳酸菌の菌体等に、必要に応じて助剤、保存料、抗酸化剤、安定化剤、調味料、香料等を適宜配合し、常法により製造することができる。具体的には、乳酸菌の菌体等に、澱粉、乳糖、麦芽糖、植物油脂粉末、カカオ脂末、ステアリン酸等の適当な助剤を添加した後、慣用の手段を用いて、食用に適した形態、例えば、顆粒状、粒状、ゲル状、錠剤、カプセル、キャプレット、ペースト等に成形して健康補助食品、保健機能食品等とすることができる。
また、本発明の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とする美肌用飲食品の形態は、特に限定されるものではなく、種々の形態をとることができる。美肌用飲食品の形態として、例えば、飲料、固形食品、半流動食品、ゲル状食品、錠剤、キャプレット、カプセル剤等が挙げられる。具体的には、例えば、本発明の乳酸菌の菌体又は培養物を、種々の食品、例えば、ヨーグルト等の発酵乳製品、クッキー、ビスケット、パン、ゼリー等の菓子類、ハム、ソーセージ等の食肉加工食品、かまぼこ、ちくわ等の水産加工食品、バター、粉乳等に原料として添加してもよく、ヨーグルトドリンク、水、果汁、牛乳、清涼飲料水等の飲料に添加して使用してもよい。
本発明の美肌用組成物等を皮膚外用剤等の経皮摂取するものとして用いる場合には、例えば、乳酸菌の菌体等に、小麦胚芽油、オリーブ油等の油分を添加して、皮膚外用剤等を製造することができる。また、本発明の美肌用組成物等や、本発明の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とする美肌用皮膚外用剤等は、美肌効果が期待できる外用可能なあらゆる剤形、例えば、クリーム、乳液、ローション、ゲル剤、エアゾール剤、軟膏、ハップ剤、エッセンス、パック、洗浄剤、浴用剤、ファンデーション等として使用することができる。本発明の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とする皮膚外用剤等を製造する場合には、その種類、剤形等に応じた公知の成分を配合できる。例えば、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、金属石鹸、pH調整剤、防腐剤、香料、保湿剤、粉体、紫外線吸収剤、増粘剤、色素、酸化防止剤等の成分を配合することができる。
本発明の美肌用組成物等や、本発明の美肌用飲食品又は美肌用皮膚外用剤の有効成分である本発明の乳酸菌の菌体又は培養物の含有量は、本発明の乳酸菌による皮膚に対する効果を奏し得る濃度である限り、特に限定されるものではなく、菌体や培養物の種類・状態、美肌用組成物の種類等を考慮して、適宜決定することができる。例えば、本発明の美肌用組成物等や美肌用飲食品等が経口摂取するものである場合には、0.01〜20重量%であることが好ましく、0.1〜10重量%であることがより好ましい。本発明の美肌用組成物等や美肌用皮膚外用剤等が経皮摂取するものである場合には、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%であることがより好ましい。
本発明の美肌用組成物等、並びに本発明の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とする美肌用飲食品の一日当たりの好ましい摂取量は、摂取する対象、摂取の形態等の種類、摂取の間隔等の要因に依存して変動するものであり特に限定されないが、低タンパク食摂取による皮膚機能低下動物モデルに乳酸菌を経口投与した試験結果を鑑みると、ヒト成人一人の一日当たりの摂取量として30mg以上であることが好ましく、50mg以上であることがより好ましい。この一日量を、一度に摂取してもよく、2〜4回に分割して摂取することもできる。
本発明の美肌用組成物等、並びに本発明の乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とする美肌用皮膚外用剤の一日当たりの好ましい摂取量は、摂取する対象、摂取の形態等の種類、摂取の間隔等の要因に依存して変動するものであり特に限定されないが、例えばヒト成人一人の一日当たりの顔への皮膚塗布量として、0.01〜5重量%で配合された皮膚外用剤0.01〜5gを均一に塗布することが好ましく、0.1〜0.5gを均一に塗布することがより好ましい。この一日量を、一度に摂取してもよく、2〜4回に分割して摂取することもできる。
なお、乾燥菌体重量とは、菌体を乾燥させた後の重量を意味する。乾燥後の菌体重量は、例えば、まず、乳酸菌の培養物を遠心分離処理することにより、菌体を沈殿として回収する。回収した菌体を遠心分離操作により2回水洗した後、105℃で5時間乾燥させた後の重量を測定することにより、求めることができる。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[製造例1 乳酸菌FBA2株菌体末の調製]
MRS培地(Difco社)を121℃にて15分間で滅菌後、乳酸菌FBA2株を接種し、30℃にて18時間静置培養した液を前培養液とした。2Lのジャーファーメンターを用いて、1Lの滅菌MRS培地に本前培養液を1%となるように接種し、30℃にて24時間、pH6.0に調整しながら培養した。培養終了後、菌体を蒸留水にて1回洗浄した後、6000rpmにて15分間で遠心分離して菌体を回収した。得られた菌体を再度水に懸濁し、100℃にて30分間加熱殺菌した後、凍結乾燥を行い、乳酸菌FBA2株の乾燥死菌体1.25gを得た。
[製造例2 乳酸菌FBA1株菌体末の調製]
乳酸菌FBA2株に換えて乳酸菌FBA1株を用いた以外は、製造例1と同様にして、乳酸菌FBA1株の乾燥死菌体3.14gを得た。
[製造例3 乳酸菌FBA3株菌体末の調製]
乳酸菌FBA2株に換えて乳酸菌FBA3株を用いた以外は、製造例1と同様にして、乳酸菌FBA3株の乾燥死菌体2.36gを得た。
[製造例4 乳酸菌FBA4株菌体末の調製]
乳酸菌FBA2株に換えて乳酸菌FBA4株を用いた以外は、製造例1と同様にして、乳酸菌FBA4株の乾燥死菌体0.81gを得た。
[製造例5 乳酸菌FBA5株菌体末の調製]
乳酸菌FBA2株に換えて乳酸菌FBA5株を用いたこと、培養温度を30℃から37℃に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、乳酸菌FBA5株の乾燥死菌体1.29gを得た。
[製造例6 醗酵人参汁の調製]
乳酸菌FBA2株、乳酸菌FBA1株、乳酸菌FBA3株、乳酸菌FBA4株、又は乳酸菌FBA5株を用いて、滅菌濃縮人参果汁を発酵させ、醗酵人参汁を調製した。
各乳酸菌を、それぞれ5mLのMRS培地に植菌し、30℃にて24時間、アネロパックを用いて静置嫌気培養を行った。本培養液から、遠心分離機にて菌体を回収し、滅菌生理食塩水にて1回洗浄した後、OD660=1.0となるように滅菌生理食塩水に懸濁し、菌懸濁液を調製した。Brix20となるように希釈した滅菌濃縮人参果汁200mLに、得られた菌懸濁液を2mL植菌し、30℃にて醗酵させた。醗酵終了後の濃縮人参汁を、Brix6となるように希釈して、各乳酸菌による醗酵人参汁をそれぞれ作成した。
[処方例1 錠剤]
常法に従って、表7記載の成分を混合し、打錠して錠剤を得た。なお、乳酸菌菌体末は、製造例1で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株菌体末を用いた。
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[処方例2 ジュース]
常法に従って、表8記載の組成のジュースを製造した。なお、乳酸菌菌体末は、製造例1で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株菌体末を用いた。
Figure 0005791009
[処方例3 人参醗酵飲料]
常法に従って、表9記載の組成の人参醗酵飲料を製造した。なお、醗酵人参汁は、製造例6で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株の醗酵人参汁を用いた。
Figure 0005791009
[処方例4 ゼリー]
常法に従って、表10記載の組成のゼリーを製造した。なお、乳酸菌菌体末は、製造例1で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株菌体末を用いた。
Figure 0005791009
[処方例5 ゼリー飲料]
常法に従って、表11記載の組成のゼリー飲料を製造した。なお、乳酸菌菌体末は、製造例1で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株菌体末を用いた。
Figure 0005791009
[処方例12 皮膚外用クリーム]
表12記載の成分(1)〜(10)を80℃に加熱溶解し油相とした。成分(11)〜(13)を70℃に加熱溶解し水相とした。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら40℃まで冷却し、さらに30℃まで攪拌冷却してクリームを得た。なお、乳酸菌菌体末は、製造例1で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株菌体末を用いた。
Figure 0005791009
[処方例7 皮膚外用乳液]
表13記載の成分(1)に(2)を加え、80℃に加熱溶解した。成分(3)〜(8)を加え、80℃に加熱溶解し油相とした。成分(9)〜(11)を70℃に加熱溶解し水相とした。油相に水相を徐々に加え乳化し、攪拌しながら30℃まで冷却した。さらに、成分(12)及び(13)を(14)に加えて攪拌溶解したものを加え、3攪拌冷却して乳液を得た。なお、乳酸菌菌体末は、製造例1で得たラクトバチルス・カルバタスFBA2株菌体末を用いた。
Figure 0005791009
本発明の美肌用組成物は、食品由来乳酸菌の菌体又は培養物を有効成分とするため、非常に安全であり、かつ、皮膚に対するコラーゲン産生促進作用、ヒアルロン酸産生促進作用、保水作用、及び水分蒸散抑制作用からなる群より選択される1以上の作用を少なくとも有するものであり、特に皮膚状態の改善、美肌効果を期待して利用される飲食品や皮膚外用剤の製造分野において利用が可能である。
ヒト皮膚由来線維芽細胞に本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液を添加して培養した後の培養上清中のコラーゲン量をウェスタンブロッティングにより測定した結果を示した図である。 図1の結果を画像解析により数値化した結果を示した図である。 ヒト皮膚由来線維芽細胞に本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液を添加して培養した後の培養上清中のヒアルロン酸量を測定した結果を示した図である。 本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合の、マウス背部皮膚中の水分蒸散量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA1株、FBA2株、及びFBA5株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合の、マウス背部皮膚中のコラーゲン量をウェスタンブロッティングにより測定した結果を示した図である。 図5の結果を画像解析により数値化した結果を示した図である。 本発明のFBA2株、FBA5株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合の、マウス背部皮膚中のヒアルロン酸量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA3株、FBA4株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合の、マウス背部皮膚中のヒアルロン酸量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA2株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合の、マウス背部皮膚中の皮膚水分量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA2株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合のマウス背部皮膚中の水分蒸散量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA2株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合のマウス背部皮膚中の水分量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA2株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合のマウス背部皮膚中のコラーゲン量を測定した結果を示した図である。 本発明のFBA2株の乳酸菌懸濁液をマウスに経口摂取させた場合のマウス背部皮膚中のヒアルロン酸量を測定した結果を示した図である。 本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液を三次元皮膚モデルに経皮摂取させた場合のコラーゲン量を測定した結果を示した図である。 本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液を紫外線照射した三次元皮膚モデルに経皮摂取させた場合のコラーゲン量を測定した結果を示した図である。 本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液を三次元皮膚モデルに経皮摂取させた場合のヒアルロン酸量を測定した結果を示した図である。 本発明の5菌株の乳酸菌懸濁液を紫外線照射した三次元皮膚モデルに経皮摂取させた場合のヒアルロン酸量を測定した結果を示した図である。

Claims (8)

  1. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする美肌用組成物。
  2. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする皮膚細胞のコラーゲン産生促進剤。
  3. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする皮膚細胞のヒアルロン酸産生促進剤。
  4. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする皮膚の水分含有量増大剤。
  5. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする皮膚の水分蒸散抑制剤。
  6. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする美肌用飲食品。
  7. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)の菌体有効成分とすることを特徴とする美肌用皮膚外用剤。
  8. ラクトバチルス・カルバタス(Lactobacillus curvatus)FBA2株(受託番号 NITE P−649)。
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