JP5768952B2 - 白色インク組成物およびこれを用いた記録物 - Google Patents

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Description

本発明は、白色インク組成物およびこれを用いた記録物に関する。
従来、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等の白色顔料を含有する白色インク組成物が、様々な印刷方式に用いられている。白色インク組成物は、例えばプラスチック製品や金属製品のような下地の色が白色とは限らない記録媒体にカラー画像を記録する場合において、カラー画像の発色性を向上させるべく下地の色を消す用途に使用されることがある。また、透明シートにカラー画像を記録する場合にあっては、カラー画像の透過性を下げる白色遮蔽層の形成に用いられることがある。
白色インク組成物には、白色顔料を記録媒体に定着させるための定着樹脂が含まれることがある。特許文献1には、白色色材である中空樹脂粒子と、定着樹脂としてガラス転移温度が50℃以下のポリウレタン樹脂と、を含有する白色インク組成物が開示されている。かかる構成によれば、耐擦性に優れた白色画像が得られるとしている。特許文献2には、白色色材である中空樹脂粒子と、前記中空樹脂粒子以上の平均粒子径を有する樹脂粒子と、を含有する白色インク組成物が開示されている。かかる構成によれば、耐擦性に優れた白色画像が得られるとしている。特許文献3には、顔料と、顔料を定着させる定着樹脂として両親媒性高分子化合物およびガラス転移点(Tg)が−30℃以上60℃以下の高分子化合物の2種と、を含有するインクジェット用インクが開示されている。特許文献3では、かかる構成によって、様々な記録媒体上に形成した文字、画像の耐水性、耐擦過性、ブリード耐性に優れ、且つインク出射安定性が良好なインクジェットインクが得られると記載されている。このように、白色インク組成物の性能や得られる画質は定着樹脂の種類や添加量に大きく依存する。
特開2009−138077号公報 特開2009−138078号公報 特開2006−96933号公報
しかしながら、定着樹脂としてウレタン系樹脂を用いた場合、遮蔽性および記録媒体との密着性に優れた画像を記録することができる一方で、画像の表面がべたつき、記録媒体を複数枚重ねた際には画像同士が接着するおそれがあった。また、定着樹脂としてウレタン系樹脂を用いるだけでは、記録された画像の耐擦性および耐水擦性が不十分であった。
本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、記録された画像表面のべたつきを抑制すると共に、従来よりも耐擦性および耐水擦性が格段に向上した白色インク組成物を提供するものである。
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係る白色インク組成物の一態様は、
白色顔料と、定着樹脂と、を含有する白色インク組成物であって、
前記定着樹脂は、ウレタン系樹脂と、フルオレン系樹脂と、ポリオレフィンワックスと、を含む。
[適用例2]
適用例1において、
前記ウレタン系樹脂と前記フルオレン系樹脂とを質量基準で2:1〜1:4となる量比で含むことができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2において、
前記ポリオレフィンワックスと前記フルオレン系樹脂とを質量基準で2:1〜1:5となる量比で含むことができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一項において、
前記ウレタン系樹脂の含有量が0.5質量%以上10質量%以下であることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一例において、
前記白色顔料が、二酸化チタンであることができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例において、
前記ウレタン系樹脂の平均粒子径が、100nm以上200nm以下であることができる。
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例において、
前記ポリオレフィンワックスの平均粒子径が、30nm以上700nm以下であることができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例7のいずれか一例において、
アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種をさらに含有することができる。
[適用例9]
適用例1ないし適用例8のいずれか一例において、
アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤をさらに含有することができる。
[適用例10]
適用例1ないし適用例9のいずれか一例に記載の白色インク組成物は、インクジェット記録方式に適用することができる。
[適用例11]
本発明に係る記録物の一態様は、適用例1ないし適用例10のいずれか一例に記載の白色インク組成物によって画像が記録されたものである。
以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.白色インク組成物
本発明の一実施形態に係る白色インク組成物は、白色顔料と、前記白色顔料を定着するための定着樹脂と、を含有する。また、前記定着樹脂は、ウレタン系樹脂と、フルオレン系樹脂と、ポリオレフィンワックスと、を含む。
1.1.白色顔料
本実施の形態に係る白色インク組成物は、白色顔料を含有する。白色顔料としては、例えば金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、白色度および耐擦性の観点から、二酸化チタンが好ましい。
前記白色顔料の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上15質量%以下である。白色顔料の含有量が前記範囲を超えると、インクジェット式記録ヘッドの目詰まり等の信頼性を損なうことがある。一方、前記範囲未満であると、白色度等の色濃度が不足する傾向がある。
白色顔料の平均粒子径は、好ましくは30nm以上600nm以下であり、より好ましくは200nm以上400nm以下である。平均粒子径が前記範囲を超えると、粒子が沈降するなどして分散安定性を損なうことがあり、またインクジェット式記録ヘッドの目詰まり等信頼性を損なうことがある。一方、平均粒子径が前記範囲未満であると、白色度が不足する傾向にある。
なお、本明細書における平均粒子径とは、粒径加積曲線におけるd50を意味する。粒径加積曲線とは、インク組成物等の液体中に分散された粒子について、粒子の直径および当該粒子の存在数を求めることができる測定を行った結果を統計的に処理して得られる曲線の一種である。粒径加積曲線は、粒子の直径を横軸に取り、粒子の質量(粒子を球と見なしたときの体積、粒子の密度、および粒子数の積)について、直径の小さい粒子から大きい粒子に向かって積算した値(積分値)を縦軸に取ったものである。そして、粒径d50とは、粒径加積曲線において、縦軸を規格化(測定された粒子の総質量を1と)したときに、縦軸の値が50%(0.50)となるときの横軸の値、すなわち粒子の直径のことをいう。
白色顔料の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
1.2.定着樹脂
本実施の形態に係る白色インク組成物は、前記白色顔料を記録媒体に定着させるための定着樹脂を含有する。本実施の形態に係る白色インク組成物は、前記定着樹脂として、ウレタン系樹脂、フルオレン系樹脂、ポリオレフィンワックスを少なくとも含有する。
1.2.1.ウレタン系樹脂
本実施の形態に係る白色インク組成物は、定着樹脂としてウレタン系樹脂を含有することにより、記録した画像の遮蔽性および記録媒体に対する密着性を向上させることができる。
ウレタン系樹脂としては、溶媒中に粒子状で分散されたエマルジョンタイプ、溶媒中に溶解した状態で存在している溶液タイプのいずれのタイプを用いてもよいが、溶媒中に粒子状で分散されたエマルジョンタイプが好ましい。また、エマルジョンタイプは、その乳化方法によって強制乳化型と自己乳化型に分類することができるが、本発明においてはいずれの型式でも用いることができる。
ウレタン系樹脂としては、例えば「W−6061」(三井化学ポリウレタン株式会社製)、「W−605」(三井化学ポリウレタン株式会社製)、「W−635」(三井化学ポリウレタン株式会社製)、「WS−6021」(三井化学ポリウレタン株式会社製)、「WBR−016U」(大成ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
このようなウレタン系樹脂の製造方法としては、公知の方法を適用することができ、例えば、ポリイソシアネート、ポリオールおよび鎖延長剤を触媒の存在下または非存在下において反応させることにより製造することができる。
ウレタン系樹脂として上記のエマルジョンタイプを適用した場合、ウレタン系樹脂の平均粒子径は、好ましくは30nm以上200nm以下であり、より好ましくは50nm以上200nm以下であり、特に好ましくは100nm以上200nm以下である。ウレタン系樹脂の平均粒子径が前記範囲にあると、白色インク組成物中においてウレタン系樹脂を均一に分散させることができる。また、耐擦性を向上させる観点からは100nm以上であることが望ましい。
ウレタン系樹脂の平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
ウレタン系樹脂の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。ウレタン系樹脂の含有量が前記範囲を超えると、インクの信頼性(目詰まりや吐出安定性など)を損なうことがあり、インクとしての適切な物性(粘度など)が得られないことがある。また、記録された画像において、べたつきを抑制することができないことがある。一方、前記範囲未満であると、記録媒体上におけるインクの定着性に優れず、耐擦性に優れた画像を形成することができず、白さの観点からも望ましくない。
1.2.2.フルオレン系樹脂
本実施の形態に係る白色インク組成物は、定着樹脂としてフルオレン系樹脂を含有することにより、記録した画像の耐擦性および耐水擦性を向上させることができる。また、ウレタン系樹脂を添加することにより記録した画像がべたつくことがあるが、ウレタン系樹脂に加えてフルオレン系樹脂をさらに添加することで画像のべたつきを防止することもできる。
フルオレン系樹脂は、フルオレン骨格を有する樹脂であれば特に制限されるものではなく、例えば下記のモノマー単位(a)ないし(d)を共重合することにより得ることができる。
(a)イソホロンジイソシアネート(CAS No.4098−71−9)
(b)4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス[2−(フェノキシ)エタノール](CAS No.117344−32−8)
(c)3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸(CAS No.4767−03−7)
(d)トリエチルアミン(CAS No.121−44−8)
本発明に用いられるフルオレン系樹脂は、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス[2−(フェノキシ)エタノール](CAS No.117344−32−8)で示されるフルオレン骨格を有するモノマーを含有する樹脂であれば特に制限されない。
フルオレン系樹脂の含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.25質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上6質量%以下、特に好ましくは1質量%以上3質量%以下である。フルオレン系樹脂の含有量が前記範囲を超えると、記録された画像において遮蔽性が低下し、ヒビ割れが発生することがある。一方、前記範囲未満であると、耐擦性および/または耐水擦性に優れた画像を形成することができないことがある。また、記録された画像表面のべたつきを抑制することができないことがある。
本実施の形態に係る白色インク組成物においては、ウレタン系樹脂とフルオレン系樹脂とが質量基準で2:1〜1:4となる量比で含まれることが好ましく、2:1〜1:3であることがより好ましい。本実施の形態に係る白色インク組成物は、ウレタン系樹脂とフルオレン系樹脂とを前記量比で配合することで、画像表面のべたつきを抑制すると共に、白色度、遮蔽性、耐擦性および耐水擦性に優れ、記録媒体との密着性にも優れた高品質な画像を記録することができる。ウレタン系樹脂が前記量比を超えて多すぎると、画像表面に凹凸が生じ、表面状態が不良となる傾向がある。また、画像の耐水擦性が低下することがある。一方、フルオレン系樹脂が前記量比を超えて多すぎると、記録された画像において遮蔽性が低下し、ヒビ割れが発生する傾向がある。
1.2.3.ポリオレフィンワックス
本実施の形態に係る白色インク組成物は、定着樹脂としてポリオレフィンワックスを含有することにより、画像の遮蔽性を高めると共に、画像のヒビ割れを防止することができる。すなわち、本実施の形態に係る白色インク組成物は、前述したようにフルオレン系樹脂を含有しているので、画像にヒビ割れが発生することがある。そこで、ポリオレフィンワックスをさらに添加することで、画像のヒビ割れを効果的に防止することが可能となる。
ポリオレフィンワックスとしては、特に限定されるものではなく、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンまたはその誘導体から製造したワックスおよびそのコポリマー、具体的には、ポリエチレン系ワックス、ポリプロピレン系ワックス、ポリブチレン系ワックス等が挙げられる。これらの中でも、画像のヒビ割れ防止に優れた効果を有する観点から、ポリエチレン系ワックスが好ましい。これらのポリエチレンワックスは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィンワックスとしては、市販されているものを利用することができる。具体例として、「ケミパールW4005」(三井化学株式会社製、ポリエチレン系ワックス、粒径200〜800nm、環球法軟化点110℃、針入度法硬度3、固形分40%)等のケミパールシリーズが挙げられる。その他、AQUACER513(ポリエチレン系ワックス、粒径100〜200nm、融点130℃、固形分30%)、AQUACER507、AQUACER515、AQUACER840(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等のAQUACERシリーズや、ハイテックE−7025P、ハイテックE-2213、ハイテックE-9460、ハイテックE-9015、ハイテックE−4A、ハイテックE−5403P、ハイテックE−8237(以上、東邦化学株式会社製)等のハイテックシリーズ、ノプコートPEM−17(サンノプコ社製、ポリエチレンエマルジョン、粒径30nm)等が挙げられる。これらは、常法によりポリオレフィンワックスを水中に分散させた水系エマルジョンの形態で市販されている。本実施の形態に係る白色インク組成物においては、水系エマルジョンの形態のまま直接添加することができる。
ポリオレフィンワックスの平均粒子径は、好ましくは30nm以上700nm以下であり、より好ましくは200nm以上700nm以下である。ポリオレフィンワックスの平均粒子径が前記範囲にあると、画像のヒビ割れを低減することができるが、200nm以上700nm以下の平均粒子径を有するポリオレフィンワックスを用いることでヒビ割れ防止効果がより一層高くなる。
ポリオレフィンワックスの平均粒子径は、レーザー回折散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置により測定することができる。粒度分布測定装置としては、例えば、動的光散乱法を測定原理とする粒度分布計(例えば、「マイクロトラックUPA」日機装株式会社製)を用いることができる。
ポリオレフィンワックスの含有量(固形分)は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.25質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上6質量%以下、特に好ましくは1質量%以上3質量%以下である。ポリオレフィンワックスの含有量が前記範囲を超えると、記録された画像において白色度が低下することがある。一方、前記範囲未満であると、画像のヒビ割れを防止する効果が期待できない。
本実施の形態に係る白色インク組成物においては、ポリオレフィンワックスとフルオレン系樹脂とが質量基準で2:1〜1:5となる量比で含まれることが好ましく、2:1〜1:3となる量比で含まれることがより好ましく、2:1〜1:1となる量比で含まれることが特に好ましい。本実施の形態に係る白色インク組成物は、ポリオレフィンワックスとフルオレン系樹脂とを前記量比で配合することで、白色度、遮蔽性、耐擦性および耐水擦性に優れ、画像のヒビ割れを防止した高品質な画像を記録することができる。ポリオレフィンワックスが前記量比を超えて多すぎると、画像の白色度が低下することがある。一方、フルオレン系樹脂が前記量比を超えて多すぎると、記録された画像において遮蔽性が低下し、ヒビ割れが発生する傾向がある。
1.3.その他の成分
本実施の形態に係る白色インク組成物は、前記成分に加えて、アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種を添加してもよい。アルカンジオールやグリコールエーテルは、記録媒体等の被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アルカンジオールとしては、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の炭素数が4〜8の1,2−アルカンジオールであることが好ましい。この中でも炭素数が6〜8の1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールは、記録媒体への浸透性が特に高いため、より好ましい。
グリコールエーテルとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが挙げられる。これらの中でも、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを用いると良好な記録品質を得ることができる。
これらのアルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、前記成分に加えて、アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤を添加してもよい。アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤は、記録媒体などの被記録面への濡れ性を高めてインクの浸透性を高めることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オール等が挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、市販品を利用することもでき、例えば、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学株式会社製)、サーフィノール104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(以上、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
さらに、本実施の形態に係る白色インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等のその他の界面活性剤を添加してもよい。
界面活性剤の含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜0.5質量%である。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、前記成分に加えて、多価アルコールを添加してもよい。多価アルコールは、インクの乾燥を防止し、インクジェット式記録ヘッド部分におけるインクの目詰まりを防止することができる。
多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
多価アルコールの含有量は、白色インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.1〜30質量%であり、より好ましくは0.5〜20質量%である。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、通常溶媒として水を含有する。水は、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水を用いることが好ましい。特に、これらの水を紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理した水は、長期間に亘りカビやバクテリアの発生を抑制することができるので好ましい。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、溶媒として水以外に、有機溶媒を併用してもよい。このような有機溶媒としては、例えばエタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、2−ピロリドン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられる。このような有機溶媒を用いることで、記録媒体への浸透性を向上させると共に、ノズル目詰まりを防止することができる。これらは、1種単独または2種以上併用してもよく、白色インク組成物の全質量に対して、0.1〜10質量%程度含有することが好ましい。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、従来公知の装置、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、バスケットミル、ロールミルなどを使用して、従来の顔料インクと同様に調製することができる。調製に際しては、メンブランフィルターやメッシュフィルター等を用いて粗大粒子を除去することが好ましい。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、各種記録媒体に塗布することにより白色画像を形成することができる。記録媒体としては、例えば、紙、厚紙、繊維製品、シートまたはフィルム、プラスチック、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
本実施の形態に係る白色インク組成物は、その用途は特に限定されないが、各種インクジェット記録方式に適用することができる。インクジェット記録方式としては、例えば、サーマルジェット式インクジェット、ピエゾ式インクジェット、連続インクジェット、ローラーアプリケーション、スプレーアプリケーション等が挙げられる。
2.記録物
本発明はまた、上述した白色インク組成物によって画像が形成された記録物を提供することができる。本発明に係る記録物によれば、記録された画像表面のべたつきを抑制すると共に、従来よりも耐擦性および耐水擦性が格段に向上した高品質な白色記録物を得ることができる。なお、本発明に係る記録物は、白色度、遮蔽性、密着性にも優れており、カラーインクとのにじみやヒビ割れが防止された、品質のバランスに優れたものである。
3.実施例
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
3.1.白色インク組成物の調製
表1に示す配合量で、二酸化チタン粒子、定着樹脂、有機溶媒、多価アルコール、有機溶媒、界面活性剤およびイオン交換水を混合撹拌し、孔径5μmの金属フィルターにてろ過、真空ポンプを用いて脱気処理をして、例1〜15の各インク組成物を得た。なお、表1の例1〜15に記載されている濃度の単位は、質量%であり、二酸化チタン粒子、ウレタン系樹脂、フルオレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、およびポリエチレンワックスについてはいずれも固形分換算濃度である。
二酸化チタン粒子には、市販品「NanoTek(R) Slurry」(シーアイ化成株式会社製)を用いた。NanoTek(R) Slurryは、平均粒子径300nmの二酸化チタン粒子を固形分濃度15%の割合で含むスラリーである。
界面活性剤には、ポリシロキサン系界面活性剤である「BYK−348」(ビックケミー・ジャパン株式会社製)を使用した。
表1に記載した定着樹脂は、下記の通りである。
・ウレタン系樹脂A(三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名「W−605」、平均粒子径:35nm)
・ウレタン系樹脂B(三井化学ポリウレタン株式会社製、商品名「W−635」、平均粒子径:135nm)
・スチレンアクリル系樹脂(BASF社製、商品名「ジョンクリル62J」、水溶液、分子量8500)
・ポリエチレンワックスA(ビックケミー・ジャパン株式会社製、商品名「AQ513」、平均粒子径100〜200nm)
・ポリエチレンワックスB(三井化学株式会社製、商品名「W4005」、平均粒子径200〜700nm)
・ポリエチレンワックスC(サンノプコ社製、商品名「ノプコート PEM−17」、平均粒子径30nm)
表1に記載したフルオレン系樹脂は、以下のようにして合成した。フルオレン系樹脂は、イソホロンジイソシアネート30質量部、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス[2−(フェノキシ)エタノール]50質量部、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸100質量部、トリエチルアミン30質量部を秤り取り十分に混合した後、触媒存在下120℃で5時間撹拌することにより合成した。得られたフルオレン系樹脂は、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス[2−(フェノキシ)エタノール]をモノマー構成比率略50質量%含有する、分子量3300の樹脂であった。
3.2.印刷物の評価
表1に記載の白色インク組成物を、インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、製品名「PX−G930」)の専用カートリッジのブラックインク室にそれぞれ充填した。このようにして作製されたインクカートリッジをプリンターに装着し、印刷試験を行った。ブラック以外のインクカートリッジはそれぞれ市販のものを装着した。これは、ダミーとして用いるもので、本実施例の評価では用いないので、効果には関与しない。
次いで、「ルミラー(R) S10−100μm」(東レ株式会社製、インク受容層が形成されていない市販のPETシート)に対して、1440×720dpiの解像度で印刷を行った。印刷パターンは、100%dutyベタパターンとした。なお、「duty」とは、下式で算出される値である。
duty(%)=実印字ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実印字ドット数」は単位面積当たりの実印字ドット数であり、「縦解像度」および「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。100%dutyとは、画素に対する単色の最大インク質量を意味する。)
以上の工程により得られた記録物について、下記の各評価試験を行った。
3.2.1.白色度の評価
市販の黒が基板となっている測色機、例えばGretag Macbeth SpetroscanおよびSpectrolino(X-Rite社製)を用い、CIE/L表色系におけるL値を測定することにより記録物の白さを判定した。評価基準は下記の通りである。
20点:L値が75以上
15点:L値が73以上、75未満
10点:L値が70以上、73未満
5点:L値が70未満
3.2.2.遮蔽性の評価
得られた記録物を偏角測色計(日本分光株式会社製、形式「ARM−500V」)にセットして、可視光線領域(380nm〜700nm)における1nm毎の各波長の透過率Tn(%)を測定した。その測定結果から、可視光領域(380nm〜700nm)における各波長毎の透過率Tnの積分値を算出することにより、遮蔽性を評価した。この評価方法によれば、得られる積分値は、0〜32000の間の数値となり、完全に遮蔽されていれば0、完全に透過すれば32000となる。評価基準は下記の通りである。
20点:透過率Tnの積分値が120以下
15点:透過率Tnの積分値が120以上、150未満
10点:透過率Tnの積分値が150以上、200未満
5点:透過率Tnの積分値が200以上
3.2.3.表面状態の評価
次いで、記録物の表面状態を調べた。表面状態の評価は、試験担当者が指で記録物の表面を触れることにより行い、下記評価基準により判定した。
10点:印刷物表面にべたつきがない。
5点:印刷物表面がわずかにべたつく。
−20点:印刷物表面がべたつく。
3.2.4.耐擦性の評価
耐擦性は、白色インク組成物が記録されたPETシートを50℃の恒温槽で10分乾燥後、試験担当者の「布による擦り試験」を行うことにより判定した。この布による擦り試験は、布で印刷面を2〜3往復擦る試験方法である。評価基準は下記の通りである。
10点:布で擦っても印刷面に傷がつかない。
5点:布で擦ると印刷面にわずかに傷がつく。
−20点:布で擦ると印刷面にはっきりと傷がつく。
3.2.5.耐水擦性の評価
耐水擦性は、白色インク組成物が記録されたPETシートを50℃の恒温槽で10分乾燥後、試験担当者の「布による擦り試験」を行うことにより判定した。なお、この布には、水が十分に染み込ませてある。この布による擦り試験は、布で印刷面を2〜3往復擦る試験方法である。評価基準は下記の通りである。
10点:布で擦っても印刷面が剥がれない。
5点:布で擦ると印刷面がわずかに剥がれる。
−20点:布で擦ると印刷面が完全に剥がれる。
3.2.6.密着性の評価
密着性は、白色インク組成物が記録されたPETシートを50℃の恒温槽で10分乾燥後、試験担当者の「爪による擦り試験」を行うことにより判定した。この爪による擦り試験は、爪で印刷面を2〜3回擦る試験方法である。評価基準は下記の通りである。
10点:爪で擦っても剥がれない。
5点:爪で擦るとわずかに剥がれる。
−20点:爪で擦ると完全に剥がれる。
3.2.7.にじみの評価
(1)記録方法
被記録面がプラスチックフィルムである記録媒体(ルミラー(R) S10−100μm(東レ株式会社製))に、C、M、Y、K、白の5色を充填したインクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、製品名「PX−G930」)を用いて、シートフィーダー部をドライヤーで70℃に加熱して印刷時に記録媒体が45℃となるようにし、調製したインク組成物のそれぞれに対して、1440×720dpiの解像度で、100%Duty白ベタパターンの印刷行った。その直後に、白ベタの上から10%〜100%の各Dutyでそれぞれ2色が接触しているパターンを1440×720dpiの解像度で印刷した。
(2)評価方法
印刷パターンの2色が接する部分における滲みの発生の有無を各Dutyで調べ、下記基準に従って評価した。
10点:Duty100%でも滲まない。
5点:Duty70%までなら滲まない。
0点:Duty40%までなら滲まない。
−20点:Duty40%未満で滲む。
3.2.8.信頼性の評価
信頼性は、上述した工程により白色記録物を作製した後、インクジェットプリンターのヘッド部分の目詰まりが起こりやすいか否か、目詰まりがクリーニングで回復するか否かを試験担当者が判定した。評価基準は下記の通りである。
10点:ヘッドの目詰まりが起こりにくく、クリーニングで容易に回復する。
0点:ヘッドの目詰まりは起こりにくいが、クリーニングで回復しにくい。
0点:ヘッドの目詰まりは起こりやすいが、クリーニングで容易に回復する。
−20点:ヘッドの目詰まりが起こりやすく、クリーニングでも回復しにくい。
3.2.9.ヒビ割れの評価
ヒビ割れは、白色インク組成物が記録されたPETシートを50℃の恒温槽で10分乾燥後、試験担当者が画像表面を目視により判定した。評価基準は下記の通りである。
0点:乾燥後、ヒビ割れが起こらない。
−20点:乾燥後、ヒビ割れが起こる。
3.2.10.総合品質
上記の評価結果の合計得点から品質を総合的に判定した。合計得点が50点以上であれば品質上問題なく使用することができ、70点以上であれば特に品質に優れた白色インク組成物であると評価することができる。合計得点が50点未満であると、いずれかの評価項目において良好な結果が得られていないため、製品としては不適格であると評価することができる。
3.3.評価結果
以上の評価結果を表1に併せて示す。
Figure 0005768952
表1に記載の例1〜8の白色インク組成物によれば、いずれも記録された画像の表面状態が良好(画像表面のべたつきがない、または僅かにある程度)であり、白色度、耐擦性および耐水擦性に優れ、画像のヒビ割れも防止できることが判った。
一方、例9の白色インク組成物(ウレタン系樹脂:フルオレン系樹脂=3:1)によれば、記録された画像の表面がべたつき、耐水擦性が著しく低下することが判った。
例10の白色インク組成物(フルオレン系樹脂の代わりにスチレンアクリル系樹脂を添加)によれば、耐水擦性が著しく低下することが判った。この結果から、耐水擦性の観点においては、スチレンアクリル系樹脂よりもフルオレン系樹脂の方が優れていることが判った。
例11の白色インク組成物(フルオレン系樹脂無添加)によれば、記録された画像の表面がべたつくと共に、耐擦性および耐水擦性が著しく低下することが判った。
例12の白色インク組成物(ウレタン系樹脂無添加)によれば、記録された画像の遮蔽性が低下すると共に、記録媒体との密着性にも劣ることが判った。
例13の白色インク組成物(ポリオレフィンワックス無添加)によれば、記録された画像の遮蔽性を高めることができるものの、画像のヒビ割れが発生することが判った。
例14の白色インク組成物(ウレタン系樹脂:フルオレン系樹脂=1:5)によれば、記録された画像の遮蔽性が低下すると共に、記録媒体との密着性にも劣ることが判った。
例15の白色インク組成物(ポリオレフィンワックス:フルオレン系樹脂=1:6)によれば、記録された画像のヒビ割れが発生することが判った。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (10)

  1. 白色顔料と、定着樹脂と、を含有する白色インク組成物であって、
    前記定着樹脂は、ウレタン系樹脂と、フルオレン系樹脂と、ポリオレフィンワックスと、を含み、
    前記ポリオレフィンワックスと前記フルオレン系樹脂とを質量基準で2:1〜1:5となる量比で含む、白色インク組成物
  2. 請求項1において、
    前記ウレタン系樹脂と前記フルオレン系樹脂とを質量基準で2:1〜1:4となる量比で含む、白色インク組成物。
  3. 請求項1または請求項2において、
    前記ウレタン系樹脂の含有量が0.5質量%以上10質量%以下である、白色インク組成物。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記白色顔料が、二酸化チタンである、白色インク組成物。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか一項において、
    前記ウレタン系樹脂の平均粒子径が、100nm以上200nm以下である、白色インク組成物。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれか一項において、
    前記ポリオレフィンワックスの平均粒子径が、30nm以上700nm以下である、白色インク組成物。
  7. 請求項1ないし請求項6のいずれか一項において、
    アルカンジオールおよびグリコールエーテルから選択される少なくとも1種をさらに含有する、白色インク組成物。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項において、
    アセチレングリコール系界面活性剤またはポリシロキサン系界面活性剤をさらに含有する、白色インク組成物。
  9. インクジェット記録方式に適用される、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の白色インク組成物。
  10. 請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の白色インク組成物によって画像が記録された、記録物。
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