JP5654742B2 - 非水系リチウム型蓄電素子 - Google Patents
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Description
これらの蓄電システムにおける第一の要求事項は、用いられる蓄電素子のエネルギー密度が高いことである。この様な要求に対応可能な高エネルギー密度電池の有力候補として、リチウムイオン電池の開発が精力的に進められている。
第二の要求事項は、出力特性が高いことである。例えば、高効率エンジンと蓄電システムとの組み合わせ(例えば、ハイブリッド電気自動車)、あるいは燃料電池と蓄電システムとの組み合わせ(例えば、燃料電池電気自動車)において、加速時には蓄電システムにおける高出力放電特性が要求されている。
一方、現在ハイブリッド電気自動車で採用されているニッケル水素電池は、電気二重層キャパシタと同等の高出力を実現し、かつ160Wh/l程度のエネルギー密度を有している。しかしながら、そのエネルギー密度、出力をより一層高めるとともに、高温での安定性をさらに改善し、耐久性を高めるための研究が精力的に進められている。
リチウムイオンキャパシタは、リチウム塩を電解質として含む非水系電解液を使用する蓄電素子(非水系リチウム型蓄電素子)であって、正極においては電気二重層キャパシタと同様の陰イオンの吸着・脱着による非ファラデー反応、負極においてはリチウムイオン電池と同様のリチウムイオンの吸蔵・放出によるファラデー反応によって充放電を行う蓄電素子である。
また、正極活物質として活性炭を用い、負極活物質として易黒鉛化炭素と難黒鉛化炭素とからなる炭素材料を用いた蓄電素子が提案されている(特許文献6参照)。
上述の特許文献1〜6記載の蓄電素子は、自己放電は比較的少ないものの、時定数が大きいという課題を有している。また、上述の特許文献7記載の蓄電素子は、出力特性に優れ、時定数が比較的小さいものの、内部抵抗が小さいことから自己放電速度が速い(単位時間当たりの自己放電量が多い)ため、さらなる改良の余地がある。
本発明の課題は、時定数が小さいことと自己放電が少ないことを兼ね揃えた非水系リチウム型蓄電素子を提供することである。
(1) BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm1(cc/g)が、0.01≦Vm1<0.10である。
(2) MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm2(cc/g)が、0.01≦Vm2<0.30である。
(3) BET比表面積が10m 2 /g以上1000m 2 /g未満である。
(4) 平均粒径が1.5〜25μmである。
(1)BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)V1(cc/g)が、0.3<V1≦0.8である。
(2)MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)V2が、0.5≦V2<1.0である。
(3)BET法により測定された比表面積が1500m2/g以上3000m2/g以下である。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、前記負極電極体の単位面積あたりの容量が0.25〜0.75(F/cm2)の範囲内であることが好ましい。
本発明の蓄電モジュールは、本発明の非水系リチウム型蓄電素子を複数個含むことを特徴とする。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子の使用方法は、前記負極電極体の単位面積あたりの容量が0.25〜0.75(F/cm2)の範囲内である非水系リチウム型蓄電素子を、前記負極活物質層のエッジ率が0.30≦L/S<1.0を満たす範囲で最も小さくなる配置で、所定空間に配置して使用することを特徴とする。
本発明の蓄電モジュールの製造方法によれば、同じ所定空間に他の方法で蓄電素子が配置されて得られた蓄電モジュールと比較して、同じ大きさで自己放電が最も少ない蓄電モジュールが得られる。
[負極活物質について]
先ず、本発明の非水系リチウム型蓄電素子を構成する負極活物質について説明する。
一般的な非水系リチウム型蓄電素子では、負極活物質として、黒鉛、易黒鉛化性炭素材料、難黒鉛化性炭素材料、活性炭、活性炭の表面に炭素質材料を有する(被着させた)複合多孔性材料、ポリアセン系物質などのアモルファス炭素質材料、ケッチェンブラックやアセチレンブラックといったカーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンナノフォーン、繊維状炭素質材料などの炭素質材料、リチウムチタン複合酸化物、導電性高分子などリチウムイオンを吸蔵放出する材料を使用することができる。
(1)BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm1(cc/g)が、0.01≦Vm1<0.10である。
(2)MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm2(cc/g)が、0.01≦Vm2<0.30である。
前記マイクロ孔量及びメソ孔量は、以下の方法により求めた値である。すなわち、試料を500℃で一昼夜真空乾燥を行い、窒素を吸着質とし吸脱着の等温線の測定を行なう。このときの脱着側の等温線を用いて、マイクロ孔量はMP法により、メソ孔量はBJH法により算出した。
上記複合多孔性炭素材料は、例えば、活性炭と炭素質材料前駆体を共存させた状態で熱処理することにより得ることができる。
また、前述の熱処理方法により製造した複合多孔性炭素材料においては、一般の表面コーティングとは異なり、活性炭の表面に炭素質材料を被着させた後にも凝集がなく、該活性炭の平均粒径にほとんど変化がないことを特徴とする。このことと、細孔が減少し比表面積が低下していることから、本発明においては、被着する炭素質材料の原料となるピッチなどの揮発成分、あるいは、熱分解成分の大部分は、活性炭細孔内に被着し、この被着成分が炭素質材料となる反応が進行したものと推測できる。
平均粒径が1μm未満であると、活物質層の密度が低下してしまい、体積当たりの容量が低下し好ましくない。更には、平均粒径が小さいことは、時定数が小さいという特性は発現できるが、自己放電が大きくなりやすく、また耐久性が落ちるといった欠点も持つ。逆に、平均粒径が30μmより大きくなると、高速充放電には適さなくなる。従って、好ましくは1.5〜25μmであり、更に好ましくは、2〜20μmである。
難黒鉛化性炭素材料においては、特に制限はないが、以下のものを好ましいものとして例示することができる。ナフタレン、アントラセンなどの低分子有機化合物;フェノール樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂類;コールタールピッチ、酸素架橋石油ピッチ、石油又は石炭系ピッチなどのピッチ類などを原料とし、加熱又は焼成して得られる難黒鉛化性炭素材料などが挙げられる。ここで言う加熱又は焼成の方法は、公知の方法に従えばよい。例えば、上記原料を窒素などの不活性ガス雰囲気下中、500〜1200度程度の温度範囲で炭化することで得られる。
上記のように加熱又は焼成して得られたものをそのまま用いても良いし、更に賦活などの処理で細孔容積を増加させたものを用いても構わない。また、必要に応じて、ボールミル等の既知の粉砕機を用いて粉砕させたものを用いても構わない。
本発明で使用する難黒鉛化性炭素材料の比表面積は、BET法により測定される比表面積で好ましくは1m2/g以上1000m2/g未満であり、3〜100m2/gであるものがより好ましく、4〜20m2/gであるものが更に好ましい。
BET比表面積が1m2/g以上の場合には、十分なエネルギー密度が得られる。一方、BET比表面積が1000m2/g未満の場合には、耐久性に優れることが判明した。その理由は定かではないが、例えば、BET比表面積の向上に伴い電解液との接触面積も向上することにより、リーク電流の増大や自己放電の増大が起きやすいためと考えられる。
平均粒径が5μm未満であると、活物質層の密度が低下してしまい、体積当たりの容量が低下し好ましくない。更には、平均粒径が小さいことは耐久性が落ちるといった欠点も持つ。逆に、平均粒径が30μmより大きくなると、高速充放電には適さなくなる。従って、好ましくは6〜25μmであり、更に好ましくは、7〜20μmである。
次に、本発明の非水系リチウム型蓄電素子を構成する正極活物質について説明する。
一般的な非水系リチウム型蓄電素子の正極活物質には、活性炭、ポリアセン系物質などのアモルファス炭素質材料、ケッチェンブラックやアセチレンブラックといったカーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンエアロゲルなどの炭素質材料を使用することができる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子では、正極活物質の主成分として活性炭を使用する。これにより、非水系リチウム型蓄電素子の時定数を小さくでき、電子伝導性が高くなり、イオン拡散性が高くなる。
これらの原料の炭化方法としては、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ネオン、一酸化炭素、燃焼排ガスなどの不活性ガス、或いはこれらの不活性ガスを主成分とした他のガスとの混合ガスを使用して、400〜700℃(特に450〜600℃)程度で30分〜10時間程度焼成する方法が挙げられる。
この賦活方法では、賦活ガスを0.5〜3.0kg/h(特に0.7〜2.0kg/h)の割合で供給しながら、上記炭化物を3〜12時間(好ましくは5〜11時間、さらに好ましくは6〜10時間)かけて800〜1000℃まで昇温して賦活するのが好ましい。
上記炭化方法における焼成温度/時間と、上記賦活方法における賦活ガス供給量/昇温速度/最高賦活温度とを適宜組み合わせることにより、以下の特徴を有する活性炭を製造することができる。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、前記正極活物質の主成分である活性炭が下記の条件(1) 〜(3) を満たすことが好ましい。
(1)BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)V1(cc/g)が、0.3<V1≦0.8である。
(2)MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)V2が、0.5≦V2<0.30である。
(3)BET法により測定された比表面積が1500m2/g以上3000m2/g以下である。
一方、マイクロ孔量V2は、活性炭の比表面積を大きくし、容量を増加させるために、0.5cc/g以上であることが好ましく、また、活性炭の嵩を抑え、電極としての密度を増加し、単位体積あたりの容量を増加させるという点から、1.0cc/g以下であることが好ましい。また、より好ましくは、0.6cc/g以上、1.0cc/g以下、さらに好ましくは、0.8cc/g以上、1.0cc/g以下である。
尚、本発明で使用する正極活物質は、主成分(全体の50質量%以上)を活性炭とするものであるが、蓄電素子のエネルギー密度を向上させるという観点から、リチウムイオン二次電池の正極活物質として公知のリチウムイオンを吸蔵放出する金属酸化物、例えば、コバルト酸リチウムを50質量%未満の範囲で添加してもよい。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、負極活物質層の平面積S(cm2)に対する、前記負極活物質層の平面視における外形線の全長L(cm)の比率であるエッジ率(L/S)が、0.30≦<L/S<1.00を満たすものである。これにより、前述した特定の炭素材料を負極活物質とすることで得られる、時定数を小さくできる効果を保持しながら、自己放電を少なくすることができる。
負極活物質層が、負極集電体の両面に形成されている場合は、両負極活物質層の周長および平面積の平均値を、各負極活物質層の周長および平面積とする。また、負極集電体に負極外部リードを接続するための耳部を設ける場合は、その部分には負極活物質層が形成されない。図3の例では、長方形の負極集電体1に長方形の耳部2が形成されているため、負極活物質層3の平面形状は長方形であるが、負極活物質層3の平面形状は長方形の一部が欠けた形状となる場合もある。負極活物質層の平面形状に基づいて平面積Sと周長Lを算出する必要がある。
本発明の非水系リチウム型蓄電素子は、以下の定義による時定数が3.0以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましく、1.5以下であることがさらに好ましい。この時定数の定義は、蓄電素子を、25℃で500Cの放電電流にて放電した際の内部抵抗値R(Ω)と、25℃で1Cの放電電流にて放電した際のセル容量C(F)との積RC(Ω・F)である。
時定数が3.0より大きくなると、セルの出力特性は低くなり、特に大電流使用時に、セルのジュール発熱量がより大きくなってしまう。このことは、多数のセルを直列化したモジュールを考えたとき、モジュールシステムからの発熱が大きくなるほど冷却システムにかかる設備・コストは大きくなるので好ましくない。
同じ電極体を複数積層した電極積層体においては、電極体が並列接続されているため、積層数が2倍になれば内部抵抗Rが1/2になるとともにセル容量Cが2倍になる。従って、積層数を増減させても時定数には変化はないので、時定数を用いることで積層数の差異による影響を受けずに蓄電素子の評価を行うことができる。
次に、本発明の非水系リチウム型蓄電素子を構成するその他の要素について説明する。
集電体の材質は、蓄電素子にした際、溶出や反応などの劣化がおこらない金属箔であれば特に制限はなく、例えば、銅箔、アルミニウム箔などが挙げられる。本発明の非水系リチウム型蓄電素子においては、正極集電体をアルミニウム箔、負極集電体を銅箔とすることが好ましい。
また、集電体は貫通孔を持たない通常の金属箔でも良いし、貫通孔を有する金属箔でも構わない。集電体の厚さは、特に制限はないが、1μmより小さいと電極体の形状や強度を十分に保持できなくなり、100μmより大きいと蓄電素子として質量及び体積が大きくなりすぎ、質量及び体積当たりの性能が劣ってしまうため、1〜100μmが好ましい。
活物質層を集電体に固着させた電極体において、活物質層の厚さは、通常、30〜200μm程度が好ましい。
活物質層の厚さが30μm未満であると、蓄電素子全体に対する活物質量の割合が少なくなり、エネルギー密度が低下する。更に、理由は定かではないが、電極内吸着イオン量が少ないことから、保存状態でのイオン放出量率が大きいため、電極電位変化も大きいことより、自己放電が大きい。
逆に、活物質層の厚さ200μmより大きくなると、上記のように自己放電は小さくなるが、電極内部の抵抗が大きくなり、出力密度が低下してしまう。
セパレータの厚さは10μm以上50μm以下が好ましい。10μm未満の厚さでは、内部のマイクロショートによる自己放電が大きくなるため好ましくない。また、50μmより厚いと、蓄電素子のエネルギー密度が減少するだけでなく、出力特性も低下するため好ましくない。
これら溶媒に溶解する電解質はリチウム塩である必要があり、好ましいリチウム塩を例示すれば、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2C2F5)2、LiN(SO2CF3)(SO2C2F5)、LiN(SO2CF3)(SO2C2F4H)およびこれらの混合塩を挙げることができる。
非水系電解液中の電解質濃度は、0.5〜2.0mol/lの範囲が好ましい。0.5mol/l未満では陰イオンが不足して蓄電素子の容量が低下する。また、2.0mol/lを超えると未溶解の塩が該電解液中に析出したり、該電解液の粘度が高くなりすぎたりすることによって、逆にイオン伝導度が低下して出力特性が低下する。
負極活物質として、活性炭の表面に炭素質材料を被着させた複合多孔性材料を用いる場合は、複合多孔性材料の質量あたり700mAh/gを超える量であることが好ましく、750mAh/g以上であることがより好ましい。上限については1500mAh/g以下であり、リチウム金属の析出を考慮すると1300mAh/g以下であることが好ましい。ドープ量が700mAh/g以下の場合、高エネルギー密度かつ高出力であるが、十分な耐久性が得られない。
上記は、負極活物質として、難黒鉛化性炭素材料やその他の材料を用いる場合も同様で、負極電位が十分に低く、且つLiが電析しない範囲のドープ量を適宜選択することが好ましい。
本発明の蓄電素子において、使用する電極体の単位面積当たりの容量は、高エネルギー密度の観点からは大きいほうがよく、高出力密度の観点からはある程度以下であることがよい。そのため、両者のバランスから、電極体の単位面積当たりの容量は0.25〜0.75(F/cm2)の範囲であることが好ましい。電極体の単位面積当たりの容量は、活物質の種類、及び活物質層における含有量、並びに活物質層の厚さによりコントロールできる。また、本発明の蓄電素子としての容量が50〜5000F程度であると、本発明の効果が高いため好ましい。
蓄電素子の容量が50Fの場合は、電極積層体の総電極面積は100cm2となる。従って、電極積層体を構成する負極電極体を1層にする場合は、負極活物質層の平面積Sは100cm2、周長Lは40cm、エッジ率0.40となる。同様に、電極積層体を構成する負極電極体を2層にする場合は、負極活物質層の平面積Sは50cm2、周長Lは28.3cm、エッジ率0.57となる。以下同様にして、電極積層体を構成する負極電極体を3層にする場合は、負極活物質層の平面積Sは33.3cm2、周長Lは23.1cm、エッジ率0.69となる。
上述のように、蓄電素子として必要な容量と、使用する電極体の容量密度(単位面積あたりの容量)から、電極積層体の積層数を特定の範囲に設定することで、特定のエッジ率を満たした自己放電の少ない蓄電素子を製造することができる。また、特定の容量の蓄電素子が必要である場合、より自己放電の少ない蓄電素子を選択して使用することが可能となる。
本発明の蓄電素子は、必要な容量や電圧を得るために、複数個組み合わせて蓄電モジュールとして使用することができる。蓄電モジュールは、蓄電素子、外装体、及び電極端子を含み、必要に応じて制御回路、安全装置、冷却装置等の付加装置を含んでいてもよい。蓄電モジュールで使用される蓄電素子が複数の場合は、少なくともその1/2以上が本発明の蓄電素子であることが好ましく、すべてが本発明の蓄電素子であることがより好ましい。
前記所定空間が、例えば、6×12cmの長方形を底面とした直方体である場合、負極活物質層の平面形状が6×12cmの長方形である蓄電素子を用いると、図1(a)に示すように、直方体の底面内の負極活物質層の数は1である。これに対して、負極活物質層の平面形状が3×4cmの長方形である蓄電素子を用いて、同じ空間で蓄電モジュールとしてほぼ同じ容量を得るためには、図1(b)に示すように、直方体の底面内の負極活物質層の数を6(=2×3)にする必要がある。
ここで、底面が6×12cmの長方形で、高さが6対の正・負極活物質層を有する電極積層体の厚さに相当する直方体の空間に、前述の各蓄電素子を複数個配置して得られる蓄電モジュールの例を図2に示す。図2(a)に示すように、前述のエッジ率が0.50である負極活物質層と正極活物質層が1対積層された電極積層体を有する蓄電素子10を、直方体の高さ方向に6個配置したものを、第1のモジュールとする。また、図2(b)に示すように、前述のエッジ率が1.16である負極活物質層と正極活物質層が6対積層された電極積層体を有する蓄電素子11を、直方体の底面に6個配置したものを、第2のモジュールとする。
一方、前記所定空間が、例えば、6×12×3cmの直方体である場合、底面(負極活物質層が平行に配置される面)は上述の6×12cmの長方形とする以外に、3×12cmの長方形、3×6cmの長方形とすることもできる。
また、「エッジ率が最小になる配置」は、前記底面として前記所定空間の何れの面を選択するかと、その底面内に配置する負極活物質層の数で決まるため、例えば図2(a)に示す配置が「エッジ率が最小になる配置」である場合、負極活物質層の寸法を6×12cmより少し小さくした点のみが異なるものは、この「エッジ率が最小になる配置」に含まれる。
[実施例1]
<正極電極体の作製>
破砕されたヤシ殻炭化物を小型炭化炉に入れ、窒素中、500℃で3時間炭化処理した。炭化処理後の炭化物を賦活炉内へ入れ、この賦活炉内に、予熱炉で加温した水蒸気を1kg/hで導入し、賦活炉内を900℃まで8時間かけて昇温した。その後、賦活炉から取り出した炭化物を窒素雰囲気下で冷却することで、活性炭を得た。得られた活性炭に対して通水洗浄を10時間行った後に、水切りした。次いで、この活性炭を115℃に保持された電気乾燥機内で10時間乾燥した後、ボールミルで1時間粉砕した。
活性炭1を80.8質量部、ケッチェンブラックを6.2質量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を10質量部、PVP(ポリビニルピロリドン)を3.0質量部の比率で配合したものに、溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)を混合することで、スラリーを得た。得られたスラリーを、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスした。
これにより、アルミニウム箔からなる正極集電体の両面に、活性炭1を主成分とする正極活物質層が、厚さ55μmで形成された正極電極体を得た。
市販の活性炭(BET法による比表面積が1955m2/g)150gをステンレススチールメッシュ製の籠に入れ、この籠を、石炭系ピッチ300gを入れたステンレス製バットの上に置いた。このバットを電気炉 (炉内有効寸法300mm×300mm×300mm)内に設置し、活性炭の表面に炭素質材料を結合して複合多孔性炭素材料とするための熱処理を行った。この熱処理は、窒素雰囲気下で、670℃まで4時間で昇温し、同温度で4時間保持し、続いて自然冷却により60℃まで冷却することで行った。
その後、バットを電気炉から取り出して、得られた複合多孔性炭素材料の細孔分布を前述の測定装置で調べたところ、BET比表面積は255m2/g、メソ孔量(Vm1)が0.0580cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.0854cc/g、平均粒径は2.9μmであった。
これにより、銅箔からなる負極集電体の両面に、前記細孔分布を有する複合多孔性炭素材料を主成分とする負極活物質層が、厚さ60μmで形成された負極電極体を得た。
前記負極電極体の負極活物質層と同面積で厚さ30μmのリチウム金属箔を、負極活物質層に接触させて圧着し、前記正極電極体と前記負極電極体の間に、厚さ30μmのセルロース系セパレータを配置することで、電極積層体を作製した。
<蓄電素子の組立て>
前記電極積層体の正極電極体及び負極電極体の耳部に、アルミニウムからなる正極端子用リードタブおよびニッケルからなる負極端子用リードタブの一端を、それぞれ超音波溶接することで、タブ付き電極積層体を作製した。得られたタブ付き電極積層体を、ラミネートフィルムで形成された外装体内に挿入し、電解液を注入して外装体を密閉することで非水系リチウム型蓄電素子を組立てた。電解液としては、エチレンカーボネートとメチルエチルカーボネートを1:4質量比で混合した溶媒に、1mol/lの濃度でLiPF6を溶解した溶液を使用した。
以下の特性評価を25℃において行った。
組立てた蓄電素子を1Cの電流量で4.0Vまで充電した後、4.0Vの定電圧を印加する定電流定電圧充電を行った。続いて、1Cの定電流量で2.0Vまで放電した。これを1サイクルとし、続けて充放電を繰り返すことにより、安定した容量が得られることを確認した。その後、1Cの電流量での放電容量を、この実施例の蓄電素子のセル容量として求めた。
上記測定したセル容量と内部抵抗の積より、この蓄電素子の時定数は1.40ΩFであった。また、単位面積当たりの容量は0.25(F/cm2)であった。
正極活物質として、市販の活性炭(マックスソープMSP20:関西熱化学(株)製)を用意した。この活性炭の細孔分布を実施例1と同様の方法にて行った。その結果、BET比表面積は2305m2/g、メソ孔量(V1)は0.112cc/g、マイクロ孔量(V2)は0.948cc/gであった。この活性炭を「活性炭2」とする。この活性炭2を活性炭1の代わりに用いた以外は実施例1と同様にして、正極電極体を作製した。
負極活物質として、難黒鉛化性炭素材料(カーボトロンP:呉羽化学工業(株)製)を用意し、そのX線広角回折測定を、X線としてCuKα線を用いて行い、高純度Siを内標に使用して(002)面の回折ピークを測定した。その結果、d002は0.372であった。また、その細孔分布を、ユアサアイオニクス社製細孔分布測定装置(AUTOSORB−1 AS−1−MP)を用いて測定した。その結果、BET比表面積は5.2m2/g、細孔分布はメソ孔量(Vm1)が0.0085cc/g、マイクロ孔量(Vm2)が0.0017cc/gであった。
このようにして得られた負極電極体と、実施例2と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製し、これを用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.99ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.35(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、229日であった。
得られたスラリーを、負極活物質層のエッジ率(L/S)が0.30となるように、厚さ20μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様に負極電極体を作製した。
得られた負極電極体と、実施例1と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製した。この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.30ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.50(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、202日であった。
実施例2と同様に作製した正極電極体と、実施例4と同様に作製した負極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製した。この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.85ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.64(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、185日であった。
得られたスラリーを、負極活物質層のエッジ率(L/S)が0.30となるように、厚さ20μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布したこと以外は、参考例3と同様に負極電極体を作製した。
この負極電極体と、実施例2と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製した。この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.98ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.70(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、461日であった。
得られたスラリーを、負極活物質層のエッジ率(L/S)が2.43となるように、厚さ20μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様に負極電極体を作製した。
この負極電極体と、実施例1と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製した。この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.21ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.25(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、35日であった。
比較例1と同様に作製した負極電極体と、実施例2と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製した。この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.72ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.32(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、30日であった。
得られたスラリーを、負極活物質層のエッジ率(L/S)が2.43となるように、厚さ20μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布したこと以外は、実施例3と同様に負極電極体を作製した。
この負極電極体と、実施例2と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製し、この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.98ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.35(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、75日であった。
得られたスラリーを、負極活物質層のエッジ率(L/S)が1.77となるように、厚さ20μmの銅箔(負極集電体)の両面に塗布したこと以外は、実施例1と同様に負極電極体を作製した。
この負極電極体と、実施例1と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製し、この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は1.31ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.25(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、45日であった。
負極活物質として、黒鉛(MCMB:大阪ガス(株)製)を用意した。この黒鉛のBET比表面積は3.0m2/gである。
この黒鉛を3.0質量部、アセチレンブラックを2.0質量部、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を5.0質量部の比率で配合したものに、溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)を混合することで、スラリーを得た。得られたスラリーを厚さ20μmの穿孔銅箔の両面に塗布し、乾燥し、プレスすることで、エッジ率(L/S)が0.67の負極活物質層を形成した。
この負極電極体と、実施例2と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製し、この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は3.51ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.33(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、251日であった。
得られたスラリーを、負極活物質層のエッジ率(L/S)が2.43となるように、厚さ20μmの穿孔銅箔(負極集電体)の両面に塗布したこと以外は、比較例5と同様に負極電極体を作製した。
この負極電極体と、実施例2と同様に作製した正極電極体を用いて、実施例1と同じ方法で電極積層体を作製し、この電極積層体を用いて実施例1と同じ方法で蓄電素子を組み立てた。この蓄電素子の特性評価を実施例1と同じ方法で行って、セル容量と内部抵抗を求めた。これらの値から算出した時定数は3.44ΩFであり、単位面積当たりの容量は0.33(F/cm2)であった。また、初期電圧4.0Vの80%の電圧(3.2V)となるまでに要する日数は、83日であった。
以上の結果を以下の表1にまとめて示す。
2 耳部
3 負極活物質層
10 蓄電素子
11 蓄電素子
Claims (6)
- 負極集電体の一面または両面に負極活物質層が形成された負極電極体、正極集電体の一面または両面に正極活物質層が形成された正極電極体、およびセパレータが積層された電極積層体と、
リチウム塩を電解質として含む非水系電解液と、
前記電極積層体および非水電解液を収納する外装体と、
を備えた非水系リチウム型蓄電素子であって、
前記負極活物質層を構成する負極活物質の主成分が、活性炭の表面に炭素質材料を有する複合多孔性炭素材料であり、この複合多孔性炭素材料が下記の条件(1) 〜(4) を満たし、
前記正極活物質層を構成する正極活物質の主成分が活性炭であり、
前記負極活物質層の平面積S(cm2)に対する、前記負極活物質層の平面視における外形線の全長L(cm)の比率であるエッジ率(L/S)が、0.30≦L/S<1.00を満たし、
前記リチウム塩としてLiPF 6 を含む非水系リチウム型蓄電素子。
(1) BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)Vm1(cc/g)が、0.01≦Vm1<0.10である。
(2) MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)Vm2(cc/g)が、0.01≦Vm2<0.30である。
(3) BET比表面積が10m 2 /g以上1000m 2 /g未満である。
(4) 平均粒径が1.5〜25μmである。 - 前記正極活物質の主成分である活性炭が下記の条件(1) 〜(3) を満たす、請求項1記載の非水系リチウム型蓄電素子。
(1) BJH法で算出されたメソ孔量(直径が2nm以上50nm以下である細孔の量)V1(cc/g)が、0.3<V1≦0.8である。
(2) MP法で算出されたマイクロ孔量(直径が2nm未満である細孔の量)V2が、0.5≦V2<1.0である。
(3) BET法により測定された比表面積が1500m2/g以上3000m2/g以下である。 - 前記負極電極体の単位面積あたりの容量が0.25〜0.75(F/cm2)の範囲内である請求項1または2記載の非水系リチウム型蓄電素子。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水系リチウム型蓄電素子を複数個含む蓄電モジュール。
- 請求項3記載の非水系リチウム型蓄電素子を所定空間に配置して蓄電モジュールを製造する際に、
前記エッジ率が0.30≦L/S<1.0を満たす範囲で最小になるように、前記所定空間内の前記負極活物質層を平行に配置する底面と、その底面内に配置する負極活物質層の数を決めることを特徴とする蓄電モジュールの製造方法。 - 請求項3記載の非水系リチウム型蓄電素子を、前記負極活物質層のエッジ率が0.30≦L/S<1.0を満たす範囲で最小になる配置で、所定空間に配置して使用する非水系リチウム型蓄電素子の使用方法。
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