JP5625273B2 - リチウムイオン電池用正極材料の製造方法 - Google Patents

リチウムイオン電池用正極材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、リチウムイオン電池用正極材料の製造方法に関する。より詳細には、電池の高容量化のための改良に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素量の低減が切に望まれている。自動車業界では、電気自動車やハイブリッド電気自動車の導入による二酸化炭素排出量の低減に期待が集まっており、これらの実用化の鍵を握るモータ駆動用電池の開発が盛んに行われている。
モータ駆動用電池としては、比較的高い理論エネルギーを有するリチウムイオン電池が注目を集めており、現在急速に開発が進められている。リチウムイオン電池は、一般に、バインダーを用いて正極活物質等を正極集電体の両面に塗布した正極と、バインダーを用いて負極活物質等を負極集電体の両面に塗布した負極とが、電解質層を介して接続され、電池ケースに収納される構成を有している。
こうしたリチウムイオン電池を搭載した電気自動車が広く普及するためには、リチウムイオン電池を高性能にして、より安くする必要がある。特に、電気自動車については、一充電走行距離をガソリンエンジン車に近づける必要があり、より高エネルギーの電池が望まれている。電池を高エネルギー密度にするためには、正極と負極の単位質量当たりの電気容量を大きくする必要がある。
この要請に応えられる可能性のある正極材料として、層状構造を有するリチウムマンガン系複合酸化物が提案されている。なかでも、電気化学的に不活性な層状のLiMnOと、電気化学的に活性な層状のLiMO(ここでMは、Co、Niなどの遷移金属)との固溶体は、200mAh/gを超える大きな電気容量を示しうる高容量正極材料の候補として期待されている(例えば、特許文献1参照)。
特表2004−528691号公報
特許文献1に記載の技術においては、焼成後に急冷処理を施すことによって正極材料の高容量化が図られているが、このような急冷処理は生産効率が悪いため、大量生産に適用した場合に資源的・コスト的に生産性・効率性を著しく低下させるという問題があった。
そこで本発明は、簡便かつ生産性が高い方法で得られ、安定した電池特性(特に、高容量)を有する正極材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった。その結果、正極固溶体材料において、焼成後に不活性雰囲気下で熱処理を行うことにより、上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、Li化合物、Mn化合物、Ni化合物、および必要に応じてCo化合物を含む原料を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を900〜1000℃で焼成して焼成物を得る工程と、前記焼成物を不活性ガス雰囲気下において600〜800℃で熱処理する工程と、を有するリチウムイオン電池用正極材料の製造方法である。
本発明では焼成後に不活性雰囲気下で熱処理を行うことにより、高容量な正極活物質が簡便な方法で得られる。特に、本発明の方法によれば、電気化学的に不活性な層状のLiMnOを多く含む場合であっても高容量な正極活物質が得られる。これにより、高価なNi、Coなどの遷移金属の含有量を低減することができるため、コスト的・資源的に有利で高容量な正極材料が得られる。
本発明の代表的な一実施形態である、扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池の基本構成を示す概略図である。 Li[Li1/3Mn2/3]−LiNi1/2Mn1/2−LiNi1/3Mn1/3Co1/3系の基本組成図である。 Li[Li1/3Mn2/3]・(1−x)[yLiNi1/2Mn1/2・(1−y)LiNi1/3Mn1/3Co1/3]の単位格子を示す模式図である。 本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。 本発明の一実施形態に係る組電池の外観図であって、図5Aは組電池の平面図であり、図5Bは組電池の正面図であり、図5Cは組電池の側面図である。 本発明の一実施形態に係る組電池を搭載した車両の概念図である。 実施例1−1(y=1.00)で得られた正極活物質のX線回折測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−2(y=0.75)で得られた正極活物質のX線回折測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−3(y=0.50)で得られた正極活物質のX線回折測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−4(y=0.25)で得られた正極活物質のX線回折測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−5(y=0.00)で得られた正極活物質のX線回折測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−1(y=1.00)で得られた正極活物質のラマン分光測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−2(y=0.75)で得られた正極活物質のラマン分光測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−3(y=0.50)で得られた正極活物質のラマン分光測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−4(y=0.25)で得られた正極活物質のラマン分光測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−5(y=0.00)で得られた正極活物質のラマン分光測定の各測定結果を示すグラフである。 実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−5で得られた評価用セルにおける放電容量および充電容量の測定結果を示すグラフである。 比較例1−1〜比較例3−5の評価用セルにおける放電容量および充電容量の測定結果を示すグラフである。
本発明の代表的な一実施形態は、Li化合物、Mn化合物、Ni化合物、および必要に応じてCo化合物を含む原料を混合して混合物を得る工程と、前記混合物を900〜1000℃で焼成して焼成物を得る工程と、前記焼成物を不活性ガス雰囲気下において600〜800℃で熱処理する工程と、を有するリチウムイオン電池用正極材料の製造方法である。
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は以下の実施形態のみには制限されない。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
まず、本実施形態の製造方法により得られる正極材料が適用され得るリチウムイオン電池の基本的な構成を、図面を用いて説明する。
[電池の全体構造]
本発明において、リチウムイオン電池は、本実施形態の製造方法により得られるリチウムイオン電池用正極材料を用いてなるものであればよく、他の構成要件に関しては特に制限されない。
例えば、上記リチウムイオン電池を形態・構造で区別した場合には、積層型(扁平型)電池、巻回型(円筒型)電池など、従来公知のいずれの形態・構造にも適用し得るものである。積層型(扁平型)電池構造を採用することで簡単な熱圧着などのシール技術により長期信頼性を確保でき、コスト面や作業性の点では有利である。
また、リチウムイオン電池内の電気的な接続形態(電極構造)で見た場合、非双極型(内部並列接続タイプ)電池および双極型(内部直列接続タイプ)電池のいずれにも適用し得るものである。
以下の説明では、代表的な実施形態として、リチウムイオン電池用正極材料を用いてなる非双極型(内部並列接続タイプ)リチウムイオン二次電池である場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
図1は、本発明の一実施形態である、扁平型(積層型)の非双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「積層型電池」ともいう)の基本構成を示す概略図である。図1に示すように、本実施形態の積層型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素21が、外装体であるラミネートシート29の内部に封止された構造を有する。ここで、発電要素21は、負極集電体11の両面に負極活物質層13が配置された負極と、電解質層17と、正極集電体12の両面に正極活物質層15が配置された正極とを積層した構成を有している。具体的には、1つの負極活物質層13とこれに隣接する正極活物質層15とが、電解質層17を介して対向するようにして、負極、電解質層および正極がこの順に積層されている。
これにより、隣接する負極、電解質層および正極は、1つの単電池層19を構成する。したがって、本実施形態の積層型電池10は、単電池層19が複数積層されることで、電気的に並列接続されてなる構成を有するともいえる。なお、発電要素21の両最外層に位置する最外層負極集電体には、いずれも片面のみに負極活物質層13が配置されているが、両面に活物質層が設けられてもよい。すなわち、片面にのみ活物質層を設けた最外層専用の集電体とするのではなく、両面に活物質層がある集電体をそのまま最外層の集電体として用いてもよい。また、図1とは正極および負極の配置を逆にすることで、発電要素21の両最外層に最外層正極集電体が位置するようにし、該最外層正極集電体の片面または両面に正極活物質層が配置されているようにしてもよい。
負極集電体11および正極集電体12は、各電極(負極および正極)と導通される負極集電板25および正極集電板27がそれぞれ取り付けられ、ラミネートシート29の端部に挟まれるようにしてラミネートシート29の外部に導出される構造を有している。負極集電板25および正極集電板27はそれぞれ、必要に応じて負極リードおよび正極リード(図示せず)を介して、各電極の負極集電体11および正極集電体12に超音波溶接や抵抗溶接等により取り付けられていてもよい。
以下、本実施形態の電池を構成する部材について、詳細に説明する。
(リチウムイオン電池用正極材料)
本発明では、前記正極(正極活物質層)の主要な活物質(正極材料)が、焼成後に不活性雰囲気下で熱処理を行うことにより得られることを特徴とする。すなわち、本発明の一形態によれば、(1)Li化合物、Mn化合物、Ni化合物、および必要に応じてCo化合物を含む原料を混合して混合物を得る工程(原料の混合工程)と、(2)前記混合物を900〜1000℃で焼成して焼成物を得る工程(本焼成工程)と、(3)前記焼成物を不活性ガス雰囲気下において600〜800℃で熱処理する工程(熱処理工程)と、を有する製造方法が提供される。かような方法を用いることにより、高コストで効率性・生産性が悪い急冷処理を行わなくても、従来の方法で得られた正極材料と同等以上の性能(特に、高容量)を有する正極材料が得られる。これにより、大量生産時の生産性・効率性を飛躍的に向上させることが可能となる。以下、工程順に詳細に説明する。
(1)原料の混合工程
まず、出発物質として、正極材料を構成する金属元素の化合物、すなわち、Li化合物、Mn化合物、Ni化合物、および必要に応じてCo化合物を含む原料を所定量秤量し、これらの混合物を調製する。これらの化合物の種類は特に制限されないが、例えば、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物などが挙げられる。
具体的には、Li化合物としては、LiCO、Li(OH)、LiNO、CHCOOLi、LiO等を用いることができ、好ましくは吸湿性が低い点でLiCOを用いる。これらのLi化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらのLi化合物は水和物の形態で使用してもよい。
Mn化合物としては、Mn、MnO、Mn等のマンガン酸化物、MnSO、MnCO、Mn(NO、(CHCOO)Mn等を用いることができ、好ましくは経済性の面からMnOを用いる。これらのMn化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらのMn化合物は水和物の形態で使用してもよい。
Ni化合物としては、NiSO、Ni(OH)、NiO、NiCO・2Ni(OH)、Ni(NO等を用いることができ、好ましくは経済性の面からNiSOを用いる。これらのNi化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらのNi化合物は水和物の形態で使用してもよい。
Co化合物としては、CoSO、Co(OH)、CoO、Co、Co、(CHCOO)Co、CoCl、Co(NO、CCo等を用いることができ、好ましくは経済性の面からCoSOを用いる。これらのCo化合物は1種を単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。また、これらのCo化合物は水和物の形態で使用してもよい。
なお、Li、Mn、Ni、および必要に応じてCoに加えて、他の元素を含む場合には、当該元素の化合物(例えば、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、酸化物、水酸化物、ハロゲン化物など)を上記の元素の化合物に添加して、共に混合すればよい。
これらの原料は、いずれも粉末状のものを用いればよい。混合の均一性、焼成時の反応性を高める観点から、原料の粒子径としては、平均粒子径で通常0.01〜200μmとすることが好ましい。
原料の混合は通常の粉体の混合に用いられている方法で行えばよく、乾式混合または湿式混合のいずれも選択できる。混合に用いる装置としては、ボールミル、Vブレンダー、乳鉢、ミキサー、混錬装置等の公知の手段を選択することができる。混合時間や混合温度も特に限定されないが、通常、室温(23℃)以上で1分以上である。混合が不十分であると、最終的に得られる正極材料の性能(容量特性、サイクル性)が低下する場合があるため、原料が粒子レベルで均一な状態となるまで十分に混合することが好ましい。原料の配合量は、製造しようと正極材料の組成に応じて決定すればよい。原料の混合を行う際の雰囲気は、特に制限されず、不活性雰囲気下で行っても、大気中で行ってもよいが、製造コストを考慮すると大気中で行うとよい。
(仮焼成工程)
続いて得られた混合物を本焼成する前に仮焼成することが好ましい。ただし、仮焼成工程は必須工程ではなく、上記で得た正極材料の原料の混合物をそのまま本焼成してもよい。仮焼成を行うことにより正極材料の偏析を防止し、均一な混合状態を得ることができる。仮焼成温度は400℃〜900℃の間が望ましい。400℃以上であれば反応が進行し、900℃以下であれば、焼成が進行して粉砕が困難となることが防止されうる。仮焼成時間は特に限定されないが、通常24時間程度である。仮焼成の雰囲気は酸素を含んでいれば特に限定されないが、製造コストを考慮すると大気中で行うとよい。
その後、仮焼成された原料を、再度ボールミル、Vブレンダー、乳鉢、ミキサー、混錬装置等などを用いて粉砕し、原料粉末の混合物を得る。粉砕の程度は特に限定されないが、平均粒径が0.01〜200μmとなるように粉砕するとよい。
(2)本焼成工程
上記で得た原料の混合物または仮焼成後の原料粉末の混合物を900〜1000℃で所定時間焼成して焼成物を得る。焼成温度が900℃未満であると、反応が充分に進行せず、不純物量が増加して、容量が低下するおそれがある。一方、1000℃を超える場合には、粒成長が促成されすぎて、粒子間の焼結が進行し過ぎ、容量が低下するおそれがある。一層の高容量化を図る観点で、焼成温度は好ましくは920〜980℃である。焼成は必要により、多段焼成で行ってもよい。焼成時間は焼成が完了するのに十分な時間であればよく、通常24時間程度である。焼成の雰囲気は酸素を含んでいれば特に限定されないが、製造コストを考慮すると大気中で行うとよい。
(3)不活性ガス雰囲気下での熱処理工程
上記で得られた焼成物を不活性ガス雰囲気下において600〜800℃で熱処理する。不活性ガス雰囲気下で熱処理を行うことにより、遷移金属層内の原子の再配列や遷移金属層の積層欠陥、酸素欠陥等の生成のような構造的変化が促進され、高容量を発現できるようになると考えられる。600℃以上の温度では、酸素ガス(O)の吸蔵・放出が盛んに起こり、焼成物の微視的構造的変化が生じやすい。しかし、600℃未満の温度では、焼成物の微視的構造的変化が生じにくいため好ましくない。一方、800℃を超えると、結晶化が進行しすぎるおそれがあるため好ましくない。熱処理の時間は特に限定されないが、好ましくは1時間以上であり、より好ましくは4〜24時間である。かような時間であれば、焼成物の微視的構造的変化が十分に達成され、高容量な正極材料が得られる。不活性ガスの種類としては、窒素、水素、アルゴンなどの希ガスがあり、好ましくは、窒素、アルゴンなどの希ガスであり、より好ましくは窒素である。
好ましくは、前記正極(正極活物質層)の主要な活物質が、Li[Li1/3Mn2/3]O−LiNi1/2Mn1/2−LiNi1/3Mn1/3Co1/3系の固溶体材料であることを特徴とする。すなわち、本発明の一実施形態に係る製造方法において、前記リチウムイオン正極材料は、一般式:
で表され、単斜晶(C2/m)構造を有する。
従来、このようなxLi[Li1/3Mn2/3]O・(1−x)LiMO(Mは、Co、Niなどの遷移金属)で表される、いわゆる固溶体系の正極材料は高容量材料として期待されていたが、合成方法や仕込みリチウム量などの合成条件によって電池特性が大きく異なり、安定した電池特性を有する正極材料を得ることが困難であった。
これに対して、本実施形態においては、電気化学的に不活性な層状のLi[Li1/3Mn2/3]を多く含む場合であっても高容量な正極活物質が得られる。これにより、高価なNi、Coなどの遷移金属の含有量を低減することができるため、コスト的・資源的に有利で高容量な正極材料が得られるのである。
図2にLi[Li1/3Mn2/3]O−LiNi1/2Mn1/2−LiNi1/3Mn1/3Co1/3系の基本組成図を示す。図2に示すように、当該固溶体材料は、Li[Li1/3Mn2/3]O、LiNi1/2Mn1/2、およびLiNi1/3Mn1/3Co1/3から構成される。そして、本実施形態の正極材料は、図2の網掛け部分に属する組成を有する。なお、Li[Li1/3Mn2/3]OはLiMnOとも表記できるため、本明細書では、当該固溶体材料を、「LiMnO−LiNi1/2Mn1/2−LiNi1/3Mn1/3Co1/3系固溶体材料」と称することもある。また、上記一般式(1)は下記式(2)のように表記することもできる。
上記一般式(1)および(2)中のxは0.6≦x<1を満たす数であればよい。特に好ましくはx=0.6である。
上記一般式(1)および(2)中のyは、0≦y≦1を満たす数であればよい。ただし、ハイブリッド電気自動車用としては0≦y≦0.5が好ましく、電気自動車用としては0.5≦y≦1が好ましい。
本実施形態の正極材料は、単斜晶(C2/m)構造を有する。図3はLi[Li1/3Mn2/3]・(1−x)[yLiNi1/2Mn1/2・(1−y)LiNi1/3Mn1/3Co1/3]の単位格子を示す模式図である。かような構造は、X線回折測定やラマン分光測定から確認することができる。
本実施形態の正極材料は、Mn、Ni、Co以外の他の遷移金属元素を固溶していてもよい。例えば、Li[Li1/3Mn2/3]のMnサイトはTiおよびZrからなる群から選択される1つ以上の遷移金属で置換されていてもよい。MnにTi、Zrを適量加える形態では、Ti、ZrはMnと比較すると容量特性に劣るが、結晶構造の安定化に寄与することから、Mnの持つ高容量の一部(放電容量の増大効果を損なわない範囲)を犠牲にしても安定化が求められる用途に有効活用できる。また、LiNi1/2Mn1/2やLiNi1/3Mn1/3Co1/3のMn、Ni、CoサイトはCr、Al、Zr、Ti、Fe、Mg、およびZnからなる群から選択される少なくとも1種類以上の遷移金属元素で置換されていてもよい。これらの遷移金属を添加する場合には、高容量でサイクル耐久性がよい正極材料を製造できる。
なお、上記一般式(1)で表される固溶体の同定は、X線回折(XRD)、ラマン分光、誘導結合プラズマ(ICP)元素分析を用いて分析することができる。
以上が、本実施形態のリチウムイオン電池の特徴的な構成要件に関する説明であり、他の構成要件に関しては特に制限されるものではない。よって、以下では、本発明のリチウムイオン電池の特徴的な構成要件以外の他の構成要件に関し、図1に示す積層型電池を中心に説明する。ただし、本発明は、これらに制限されるものではない。
[集電体]
集電体(負極集電体11、正極集電体12;集電体14)としては、いずれも電池用の集電体材料として従来用いられている部材が適宜採用されうる。一例を挙げると、正極集電体および負極集電体としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタンまたは銅が挙げられる。中でも、電子伝導性、電池作動電位という観点からは、正極集電体としてはアルミニウムが好ましく、負極集電体としては銅が好ましい。集電体の一般的な厚さは、10〜20μmである。ただし、この範囲を外れる厚さの集電体を用いてもよい。集電板についても、集電体と同様の材料で形成することができる。
[活物質層]
活物質層(負極活物質層13、正極活物質層15)は活物質(負極活物質、正極活物質、参照極活物質)を含んで構成される。さらに、これらの活物質層は、必要に応じてバインダー、電気伝導性を高めるための導電剤、電解質(ポリマーマトリックス、イオン伝導性ポリマー、電解液など)、イオン伝導性を高めるための電解質支持塩(リチウム塩)などを含む。
(a)活物質
正極活物質および負極活物質の材料(材質)としては、本発明のリチウムイオン電池の特徴的な構成要件を具備するものであればよく、特に制限されるものではなく、電池の種類に応じて適宜選択すればよい。
具体的には、正極活物質としては、上述した製造方法により得られるリチウムイオン電池用正極材料を正極の主要な活物質として用いる。正極活物質としては、上述した製造方法により得られるリチウムイオン電池用正極材料を単独で使用してもよいほか、さらに必要に応じて、従来公知の他の正極活物質を併用してもよい。従来公知の正極活物質としては、リチウム−マンガン複合酸化物(LiMnなど)、リチウム−ニッケル複合酸化物(LiNiOなど)、リチウム−コバルト複合酸化物(LiCoOなど)、リチウム−鉄複合酸化物(LiFeOなど)、リチウム−ニッケル−マンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.5など)、リチウム−ニッケル−コバルト複合酸化物(LiNi0.8Co0.2など)、リチウム−遷移金属リン酸化合物(LiFePOなど)、およびリチウム−遷移金属硫酸化合物(LiFe(SO)などが挙げられる。
負極活物質はリチウムを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されず、従来公知の負極活物質をいずれも使用できる。例えば、高結晶性カーボンであるグラファイト(天然グラファイト、人造グラファイト等)、低結晶性カーボン(ソフトカーボン、ハードカーボン)、カーボンブラック(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック等)、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンフィブリルなどの炭素材料;Si、Ge、Sn、Pb、Al、In、Zn、H、Ca、Sr、Ba、Ru、Rh、Ir、Pd、Pt、Ag、Au、Cd、Hg、Ga、Tl、C、N、Sb、Bi、O、S、Se、Te、Cl等のリチウムと合金化する元素の単体、およびこれらの元素を含む酸化物(一酸化ケイ素(SiO)、SiO(0<x<2)、二酸化スズ(SnO)、SnO(0<x<2)、SnSiOなど)および炭化物(炭化ケイ素(SiC)など)等;リチウム金属等の金属材料;リチウム−チタン複合酸化物(チタン酸リチウム:LiTi12)等のリチウム−遷移金属複合酸化物;ならびにその他の従来公知の負極活物質が使用可能である。上記負極活物質は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
各活物質層(13、15)に含まれるそれぞれの活物質の平均粒子径は特に制限されないが、高容量化、反応性、サイクル耐久性の観点から、通常は0.1〜100μm程度であり、好ましくは1〜20μmである。
各活物質層(13、15)中に含まれる成分の配合比は特に限定されず、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオン電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。また、活物質層の厚さについても特に制限はなく、リチウムイオン二次電池またはリチウムイオン電池についての従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、活物質層の厚さは、2〜100μm程度である
(b)バインダー
バインダーは、活物質同士または活物質と集電体とを結着させて電極構造を維持する目的で添加される。
かようなバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびポリアクリロニトリル(PAN)などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、およびユリア樹脂などの熱硬化性樹脂、ならびにスチレンブタジエンゴム(SBR)などのゴム系材料が挙げられる。
(c)導電剤
導電剤とは、導電性を向上させるために配合される導電性の添加物をいう。本実施形態で使用しうる導電剤は特に制限されず、従来公知のものを利用することができる。例えば、アセチレンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、炭素繊維などの炭素材料が挙げられる。導電剤を含むと、活物質層の内部における電子ネットワークが効果的に形成され、電池の出力特性の向上、電解液の保液性の向上による信頼性向上に寄与しうる。
(d)電解質
電解質としては、後述する[電解質層]の項で説明する液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質を特に制限なく用いることができる。液体電解質、ゲルポリマー電解質、および真性ポリマー電解質の具体的な形態については、後述する(電解質層)の項で説明するため、詳細はここでは省略する。これらの電解質は1種単独であってもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、後述する電解質層に用いた電解質と異なる電解質を用いてもよいし、同一の電解質を用いてもよい。
[電解質層]
電解質層は、非水電解質を含む層である。電解質層に含まれる非水電解質(具体的には、リチウム塩)は、充放電時に正負極間を移動するリチウムイオンのキャリアーとしての機能を有する。非水電解質としてはかような機能を発揮できるものであれば特に限定されないが、液体電解質またはポリマー電解質が用いられうる。
液体電解質は、可塑剤である有機溶媒に支持塩であるリチウム塩が溶解した形態を有する。可塑剤として用いられうる有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)等のカーボネート類が例示される。また、支持塩(リチウム塩)としては、Li(CFSON、Li(CSON、LiPF、LiBF、LiAsF、LiTaF、LiClO、LiCFSO等の電極の合剤層に添加されうる化合物が同様に採用されうる。
一方、ポリマー電解質は、電解液を含むゲルポリマー電解質(ゲル電解質)と、電解液を含まない真性ポリマー電解質に分類される。
ゲルポリマー電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマー(ホストポリマー)に、上記の液体電解質が注入されてなる構成を有する。電解質としてゲルポリマー電解質を用いることで電解質の流動性がなくなり、各層間のイオン伝導性を遮断することが容易になる点で優れている。マトリックスポリマー(ホストポリマー)として用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、特に限定されない。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンの共重合体(PVDF−HFP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。ここで、上記のイオン伝導性ポリマーは、活物質層において電解質として用いられるイオン伝導性ポリマーと同じであってもよく、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。電解液(電解質塩および可塑剤)の種類は特に制限されず、上記で例示したリチウム塩などの電解質塩およびカーボネート類などの可塑剤が用いられうる。
真性ポリマー電解質は、上記のマトリックスポリマーに支持塩(リチウム塩)が溶解してなる構成を有し、可塑剤である有機溶媒を含まない。従って、電解質として真性ポリマー電解質を用いることで電池からの液漏れの心配がなく、電池の信頼性が向上しうる。
ゲルポリマー電解質や真性ポリマー電解質のマトリックスポリマーは、架橋構造を形成することによって、優れた機械的強度を発現しうる。架橋構造を形成させるには、適当な重合開始剤を用いて、高分子電解質形成用の重合性ポリマー(例えば、PEOやPPO)に対して熱重合、紫外線重合、放射線重合、電子線重合等の重合処理を施せばよい。
これらの電解質層に含まれる非水電解質は、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
なお、電解質層が液体電解質やゲルポリマー電解質から構成される場合には、電解質層にセパレータを用いる。セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
電解質層の厚さは、内部抵抗を低減させるには薄ければ薄いほどよいといえる。電解質層の厚さは、通常1〜100μm、好ましくは5〜50μm、とするのがよい。
[外装体]
リチウムイオン二次電池では、使用時の外部からの衝撃や環境劣化を防止するために、発電要素全体を外装体に収容するのが望ましい。外装体としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。ラミネートフィルムには、例えば、PP、アルミニウム、ナイロンをこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
[電池の外観]
図4は、本発明の一実施形態である積層型電池の外観を模式的に表した斜視図である。図4に示すように、積層型電池10は、長方形状の扁平な形状を有しており、その両側部からは電力を取り出すための負極集電板25、正極集電板27が引き出されている。発電要素21は、電池10の外装体29によって包まれ、その周囲は熱融着されており、発電要素21は負極集電板25および正極集電板27を引き出した状態で密封されている。ここで、発電要素21は、図1に示す積層型電池10の発電要素21に相当し、負極(負極活物質層)13、電解質層17および正極(正極活物質層)15で構成される単電池層(単セル)19が複数積層されたものである。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池は、図1に示すような扁平な形状(積層型)のものに制限されるわけではない。例えば、巻回型のリチウムイオン電池では、円筒型形状のものであってもよいし、こうした円筒型形状のものを変形させて、長方形状の扁平な形状にしたようなものであってもよい。上記円筒型の形状のものでは、その外装材に、ラミネートシートを用いてもよいし、従来の円筒缶(金属缶)を用いてもよく、特に制限はない。
また、図4に示す集電板25、27の取り出しに関しても、特に制限されず、負極集電板25と正極集電板27とを同じ辺から引き出すようにしてもよいし負極集電板25と正極集電板27をそれぞれ複数に分けて、各辺から取り出すようにしてもよい。また、巻回型の双極型二次電池では、集電板に代えて、例えば、円筒缶(金属缶)を利用して端子を形成すればよい。
本実施形態によれば、高容量なリチウムイオン二次電池が提供されうる。本実施形態のリチウムイオン二次電池は、電気自動車やハイブリッド電気自動車や燃料電池自動車やハイブリッド燃料電池自動車などの大容量電源として、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に好適に利用することができる。
[組電池]
本実施形態の電池の複数個を、並列および/または直列に接続して、組電池としてもよい。図5は、本発明の一実施形態に係る組電池の外観図である。図5Aは組電池の平面図であり、図5Bは組電池の正面図であり、図5Cは組電池の側面図である。
図5に示す形態では、上記実施形態の積層型電池10を複数、直列および/または並列に接続して装脱着可能な小型の組電池35が形成されている。そして、この装脱着可能な小型の組電池35がさらに複数、直列および/または並列に接続され、組電池37とされている。これにより、組電池37は、高体積エネルギー密度、高体積出力密度が求められる車両駆動用電源や補助電源に適した大容量、大出力を持つ組電池37とされる。作成した装脱着可能な小型の組電池35は、バスバーのような電気的な接続手段を用いて相互に接続され、この組電池35は接続治具39を用いて複数段積層される。何個の非双極型ないし双極型のリチウムイオン二次電池を接続して組電池35を作製するか、また、何段の組電池35を積層して組電池37を作製するかは、搭載される車両(電気自動車)の電池容量や出力に応じて決めればよい。本実施形態によれば、高容量な組電池が提供されうる。
[車両]
積層型電池10または組電池37は、車両の駆動用電源として用いられうる。積層型電池10または組電池37は、例えば、自動車ならばハイブリッド電気自動車、燃料電池自動車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バスなどの商用車、軽自動車など)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)に用いられうる。これにより、充放電サイクルに優れた自動車が提供されうる。ただし、用途が自動車に限定されるわけではなく、例えば、他の車両であれば、電車などの移動体の各種電源であっても適用は可能であるし、無停電電源装置などの載置用電源として利用することも可能である。
図6は、本発明の組電池37を搭載した車両の概念図である。図6に示すように、組電池37を自動車40のような車両に搭載するには、自動車40の車体中央部の座席下に搭載する。座席下に搭載すれば、車内空間およびトランクルームを広く取ることができるからである。なお、組電池37を搭載する場所は、座席下に限らず、後部トランクルームの下部でもよいし、車両前方のエンジンルームに搭載してもよい。以上のような組電池37を用いた自動車40は優れた耐久性を有し、長期間使用しても十分な出力を提供しうる。さらに、燃費、走行性能に優れた電気自動車、ハイブリッド自動車を提供できる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
1.固溶体正極材料の合成
[実施例1−1〜1−5]
(a)原料の混合工程
まず、炭酸リチウム(LiCO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化コバルト(Co)、酸化ニッケル(NiO)を所定量(上記一般式(1)および(2)において、x=0.6かつyの値が以下に掲げる表1に示す値となるように)秤量し、これらを大気中でめのう製乳鉢と乳棒を用いて1〜2時間混合した。
(b)仮焼成工程
得られた混合物を大気中において、600℃で12時間仮焼成した後に、850℃で24時間仮焼成した。得られた仮焼成物をボールミルを用いて粉砕・混合した。
(c)本焼成工程
その後、得られた混合物を大気中において950℃で24時間焼成した。
(d)不活性ガス雰囲気下での熱処理工程
得られた焼成物を窒素ガス雰囲気下、600℃で4時間熱処理した。これにより、Li[Li1/5Mn8/15+y/15Ni2/15+y/15Co2/15−2y/15]Oの組成式を有し、y=0、0.25、0.5、0.75、1である固溶体正極材料をそれぞれ得た。なお、Li[Li1/5Mn8/15+y/15Ni2/15+y/15Co2/15−2y/15]Oは上記一般式(1)および(2)において、x=0.6とした場合の組成式に相当する。
[比較例1−1〜1−5]
(d)不活性ガス雰囲気下での熱処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1−1と同様にして固溶体正極材料を得た。
[比較例2−1〜2−5]
(c)本焼成工程において800℃で24時間仮焼成したことおよび(d)不活性ガス雰囲気下での熱処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1−1と同様にして固溶体正極材料を得た。
[比較例3−1〜3−5]
(c)本焼成工程において1000℃で24時間仮焼成したことおよび(d)不活性ガス雰囲気下での熱処理工程を行わなかったこと以外は、実施例1−1と同様にして固溶体正極材料を得た。
2.合成試料の分析
実施例1−1〜1−5で得た正極材料に対して、X線回折測定およびラマン分光測定を行った。測定結果をそれぞれ図7A〜図7Eおよび図8A〜図8Eに示す。なお、参考として、図7A〜図7Eの下段には、結晶構造が空間群C2/mに帰属するLiMnOのX線回折データが示されており、図8A〜図8Eの下段には、結晶構造が空間群C2/mに帰属するLiMnOのラマン分光データが示されている。これらの結果から、合成した試料の結晶構造はLiMnOと同様の単斜晶構造(空間群:C2/m)を有することが確認された。
3.正極材料の評価
(1)電極と評価用セルの作製
上記の表1〜3の正極活物質を用いて以下の手順により評価用セルを作製した。まず、正極活物質:導電性結着剤(TAB−2)=66:34(質量比)にして、混練法を用いて直径16mmのペレットに成形し、同径のステンレスメッシュ(集電体)に2トンの圧力で圧着して、真空下、120℃で4時間加熱乾燥してサンプル正極とした。なお、単位面積当たりの活物質量は10mgと一定した。
負極として金属リチウムを用いた。セパレータとしての厚さ25μmのポリプロピレンの多孔質膜2枚を介して上記で得たサンプル正極と負極とを対向させ、コインセルの底部の上に配置させた。続いて、正極と負極との間の絶縁性を保つためのガスケットを装着した後に、シリンジを用いて電解液を注液し、スプリングおよびスペーサを積層した。そして、コインセルの上部を重ね合わせ、かしめを行って評価用セルとした。なお、電解液としては、1M LiPFのエチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:2(体積比)の電解液を用いた。
(2)充放電試験
上記の方法で作製した各評価用セルについて、定電流0.4mAにて、4.8V(=最高電位)となるまで充電した後、2.0V(=最低電位)となるまで放電させた。このときの充電容量と放電容量とを測定した。結果を図9および図10に示す。
図9は、実施例1−1〜1−5および比較例1−1〜1−5で得られた評価用セルにおける放電容量および充電容量の測定結果を示すグラフである。図9から、窒素ガス雰囲気下で熱処理を行った実施例のセルは、窒素ガス雰囲気下での熱処理を行っていないセルに比べて、概ね充電容量および放電容量が高いことが確認される。特に、Co含有比率が小さい、0.5≦y≦1.0である実施例1−1〜1−3の評価用セルは、窒素ガス雰囲気下での熱処理を行っていないセルに比べて、放電容量が有意に向上することが確認された。
図10は、比較例1−1〜比較例3−5の評価用セルにおける放電容量および充電容量の測定結果を示すグラフである。図10から、焼成温度が950℃である比較例1の評価用セルは、焼成温度が900℃または1000℃である比較例2または3の評価用セルに比べて、概ね充電容量および放電容量が高いことが確認される。
以上から、窒素ガス雰囲気下での熱処理を行うことにより、高容量な正極活物質が得られることが確認された。特に、この熱処理による高容量化の効果は、高価なCo元素の含有量を低減した場合に顕著に発揮され、コスト的・資源的に有利で高容量な正極材料が得られることがわかった。
10 積層型電池、
11 負極集電体、
12 正極集電体、
13 負極活物質層(負極)、
15 正極活物質層(正極)、
17 電解質層、
19 単電池層(単セル)、
21 発電要素、
25 負極集電板、
27 正極集電板、
29 外装体(ラミネートシート)、
35 装脱着可能な小型の組電池、
37 組電池、
39 接続治具、
40 自動車、
101 リチウム原子(Li)、
102 酸素原子(O)、
103 遷移金属原子。

Claims (4)

  1. Li化合物、Mn化合物、Ni化合物、および必要に応じてCo化合物を含む原料を混合して混合物を得る工程と、
    前記混合物を酸素を含む雰囲気下において900〜1000℃で焼成して焼成物を得る工程と、
    前記焼成物を不活性ガス雰囲気下において600〜800℃で熱処理する工程と、
    を有する、一般式:
    (式中、0.6≦x<1であり、0≦y≦1である)
    で表され、単斜晶(C2/m)構造を有するリチウムイオン電池用正極材料の製造方法。
  2. 0.5≦y≦1.0である、請求項に記載の製造方法。
  3. x=0.6である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたリチウムイオン電池用正極材料を正極活物質として用いてなるリチウムイオン電池。
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