JP5607851B2 - 接続構造体の製造方法、及び圧着装置 - Google Patents

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Description

この発明は、例えば自動車用ワイヤーハーネスのコネクタ等に装着されるような接続構造体の製造方法、及び圧着装置に関する。
自動車等に装備された電装機器は、被覆電線を束ねたワイヤーハーネスを介して、別の電装機器や電源装置と接続して電気回路を構成している。この際、ワイヤーハーネスと電装機器や電源装置とは、それぞれに装着したコネクタ同士で接続されている。上述したコネクタには、圧着端子を被覆電線に対して圧着接続した接続構造体が装着されている。
昨今の電装品の多機能化、高性能化に伴って電気回路はますます複雑化しており、各圧着端子と被覆電線との圧着接続部での導通性の確実性がより求められている。そのため、これまでのように、オープンバレル型の圧着端子の場合、過酷な使用環境下において圧着部は露出しているため、圧着接続部分における圧着部表面や導体表面が腐食し、導電性が低下するおそれがあった。
このような問題に対して、例えば、特許文献1の段落[0005]に記載されているクローズドバレル型の圧着部を備えた圧着端子を用いることにより、圧着接続部分における圧着部表面や導体表面に生じる腐食を防止することが想定できる。
クローズドバレル型の圧着端子としては、例えば下記特許文献2に開示されたものがある。特許文献2の圧着端子は、特許文献2の図10〜図15に開示されているように、長手方向の一方に、他端を閉じた円筒状の圧着部を有している。この円筒状の圧着部に、被覆電線の先端部分を挿入して圧着することで、圧着端子と被覆電線の導体とを確実に導通させ、また、圧着接続部分における圧着部表面や導体表面に生じる腐食を防止することができると考えられる。
しかし、実際にはクローズドバレル型の圧着部を備えた圧着端子を用いるだけでは、実用に耐えるだけの腐食を抑えることはできず、止水材やモールド樹脂などの樹脂材料を用いて圧着部を封止する必要があり、工数やコストも高くなっていた。
また、上述したようなコネクタは、様々な環境の下で使用されているため、雰囲気温度の変化による結露などによって意図しない水分が被覆電線の表面に付着することがあった。
このような圧着端子において、挿入孔に挿入した状態で圧着端子を圧着し、圧着後に導体先端部が外部に露出しないように構成しているが、被覆圧着部の基端部、すなわち、挿入孔の基端側の口縁部は、基端方向に向けて突状となる自由端であるため、圧着端子を圧着する際に、前記被覆先端部が挿入孔の基端側へ移動することがあった。その結果、圧着後に前記導体先端部が外部に露出し、前記導体先端部の表面が腐食し、安定した導電性が得られないおそれがあった。
特許第4598039号公報 米国特許第3955044号公報
この発明は、安定した導電性を得ることができる接続構造体の製造方法、及び圧着装置を提供することを目的とする。
この発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における電線先端部の圧着接続を許容する圧着部を備えた圧着端子における前記圧着部によって前記被覆電線と前記圧着端子とを圧着接続する接続構造体の製造方法であって、前記電線先端部は、前記被覆電線における先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部と、前記絶縁被覆の先端部分に有する被覆先端部とで構成され、前記圧着部を、断面中空形状の圧着部で構成するとともに、前記導体先端部を圧着する導体圧着部と、前記被覆先端部を圧着する被覆圧着部とを配置して構成し、前記電線先端部に前記圧着部を圧着接続する電線圧着工程において、前記電線先端部を前記圧着部の内部に配置し、前記被覆圧着部の基端側端部の圧着を、前記被覆圧着部の先端側端部の圧着よりも先に開始することを特徴とする。
接続構造体の製造方法。
上記圧着端子は、一対構成した端子組の他方の端子の接続部との接続を許容する接続部を有する接続端子、あるいは圧着部のみで構成する端子であることを含む。
この発明によれば、安定した導電性を得ることができる。
詳述すると、前記被覆圧着部の基端側端部の圧着を、前記被覆圧着部の先端側端部の圧着よりも先に開始することにより、被覆圧着部の内部に存在する被覆先端部が押圧により弾性変形し、その反発力により被覆圧着部の内圧が高まり、被覆先端部が被覆圧着部に固定される。これにより、導体先端部は、押圧により被覆圧着部の方へ移動しにくくなる。その結果、導体先端部が被覆圧着部から露出することを抑止することができ、安定した導電性を得ることができる。
また、時間経過とともに前記被覆圧着部の基端側端部から前記被覆圧着部の先端側端部に向かって圧着を開始することにより、被覆電線における基端側端部よりも先端側の部分に対し、先端側端部へ向かう力を加えることができるので、導体先端部の露出を抑止する効果を高めることができる。
この発明の態様として、前記電線圧着工程において、
前記被覆圧着部の基端側端部の圧着と前記被覆圧着部の先端側端部の圧着とを同一工程にて行うことができる。
この発明により、導体圧着部の圧着と被覆圧着部の圧着とを別工程にて行う必要がなくなり、製造工程の簡略化を図ることができる。
またこの発明の態様として、前記電線圧着工程において、前記被覆圧着部の先端側端部の圧着した後、前記導体圧着部を順次圧着することができる。
この発明により、被覆電線における、基端側端部よりも先端側の部分に対し、先端側へ向かう力を加えることができるので、導体先端部の露出を抑止する効果を高めることができる。
従って、導体先端部が被覆圧着部から露出することを抑止することができ、安定した導電性を得ることができる。
またこの発明の態様として、前記電線圧着工程において、前記導体圧着部の圧着と前記被覆圧着部の圧着とを別工程にて行うことができる。
この発明により、被覆圧着部の圧着を、導体圧着部の圧着よりも先に開始することが容易になる。
またこの発明は、導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における先端部である電線先端部を圧着端子の内部に配置した状態で、前記電線先端部を前記圧着端子に圧着接続する圧着装置であって、前記電線先端部は、前記被覆電線における先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部と、前記絶縁被覆の先端部分に有する被覆先端部とで構成され、前記被覆圧着部の基端側端部の圧着を、前記被覆圧着部の先端側端部の圧着よりも先に開始するように、前記圧着端子を圧着する圧着部材を備えたことを特徴とする。
この発明により、安定した導電性を得ることができる。
この発明の態様として、前記圧着部材を第1の型と、前記第1の型と係合する第2の型とで構成し、前記第1の型における前記被覆圧着部を圧着する部分に、第2の型へ向かう方向の傾斜を設けることができる。
この発明により、前記被覆圧着部の基端側端部の圧着を前記被覆圧着部の先端側端部の圧着よりも先に開始することができる。
前記第1の型における、前記被覆先端部を圧着する部分に、前記第2の型の方向へ突出する第1凸部を備えるとともに、前記第2の型における、前記被覆先端部を圧着する部分に、前記第1凸部の方向へ突出する第2凸部を備え、前記第1凸部と第2凸部とを、対向する位置に配設することができる。
この発明により、被覆圧着部における、第1凸部と第2凸部とに圧着される部分は、第1凸部と第2凸部とに圧着されない部分よりも局部的に大きな荷重で圧着されるため、電線先端部が電線圧着部から飛び出ることをより防止することができるとともに、止水性をより向上させることができる。
好ましくは、被覆圧着部における、導体圧着部との境界付近に第1凸部と第2凸部とを備えることが望ましい。
これにより、導体先端部が導体圧着部からずれることを防止することはもちろん、被覆圧着部の内部に導体が浸入することを防止して、侵入した導体によって絶縁被覆が傷付くことを防止することができる。
なお、第1の型と第2の型とは、上述のような第1凸部と第2凸部とを備えた構成だけに限らず、第1の型を、第1凸部の部分と、第1凸部以外の部分とを分割して構成したものを組み立てた第1の型であってもよい。これら第1凸部の部分と第1以外の部分とは、互いに連動する構成であってもよく、それぞれが単独で移動する構成であってもよい。第2の型においても、第1の型と同様に、分割構造であってもよい。
この発明によれば、安定した導電性を得ることができる接続構造体の製造方法、及び圧着装置を提供することができる。
第1実施形態の圧着端子付き電線の説明図。 圧着端子付き電線の先端部分の幅方向中央縦断面図。 圧着部における溶接について説明する説明図。 第1実施形態の圧着端子付き電線の圧着工程の様子を示す説明図。 第1実施形態の圧着端子付き電線の圧着工程における圧着工具と被覆圧着部との関係を示した断面図。 第1実施形態の圧着方法が奏する作用効果の説明図。 第2実施形態の圧着端子付き電線の圧着工程の様子を示す断面図。 第3実施形態の圧着端子付き電線の圧着工程の様子を示す断面図。 他の実施形態の圧着端子付き電線の圧着前の様子を示す断面図。 他の実施形態の雌型圧着端子について説明する説明図。
この発明の一実施形態を以下図面に基づいて詳述する。
なお、図1は第1実施形態の圧着端子付き電線1の説明図を示し、図2は圧着端子付き電線1の先端部分の幅方向中央縦断面図を示し、図3は圧着部30における溶接について説明する説明図を示し、図4は、第1実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程の様子を示す説明図を示している。
また、図5は第1実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程における圧着工具300と被覆圧着部31aとの関係を示した断面図を示し、図6は第1実施形態の圧着方法が奏する作用効果の説明図を示し、図7は第2実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程の様子を示す断面図を示し、図8は第3実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程の様子を示す断面図を示している。
(第1実施形態)
本実施形態の圧着端子付き電線1は、図1(a)及び図2に示すように、被覆電線200を雌型圧着端子10に接続して構成している。つまり、被覆電線200における電線先端部200aを、雌型圧着端子10の圧着部30に圧着接続している。
雌型圧着端子10に圧着接続する被覆電線200は、アルミニウム素線201aaを束ねたアルミニウム芯線201を、絶縁樹脂で構成する絶縁被覆202で被覆して構成している。詳しくは、アルミニウム芯線201は、断面が0.75mmとなるように、アルミニウム合金線を撚って構成している。
なお、被覆電線200は、アルミニウムやアルミニウム合金を構成するアルミニウム芯線201だけでなく、銅や銅合金で構成する銅系芯線であってもよく、アルミニウム芯線201の断面を0.75mmとするだけに限らない。
電線先端部200aは、被覆電線200の先端部分において、被覆先端部202aと導体先端部201aとを先端側へ向けてこの順に直列に備えた部分である。
導体先端部201aは、被覆電線200の前方側の絶縁被覆202を剥がしてアルミニウム芯線201を露出させた部分である。被覆先端部202aは、被覆電線200の先端部分であるが、導体先端部201aよりも後方側部分であって、アルミニウム芯線201を絶縁被覆202で被覆した部分である。
以下において、雌型圧着端子10について詳述する。
雌型圧着端子10は、長手方向Xの先端側である前方から後方に向かって、図示省略する雄型端子における挿入タブの挿入を許容するボックス部20と、ボックス部20の後方で、所定の長さのトランジション部40を介して配置された圧着部30とを一体に構成している。
なお、本実施形態では、上述したように、ボックス部20と圧着部30で構成する雌型圧着端子10で構成したが、圧着部30を有する圧着端子であれば、上述の雌型圧着端子10におけるボックス部20に挿入接続する挿入タブと圧着部30とで構成する雄型圧着端子でも、圧着部30のみで構成し、複数本の被覆電線200のアルミニウム芯線201を束ねて接続するための圧着端子であってもよい。
また、長手方向Xとは、図1に示すように、圧着部30を圧着して接続する被覆電線200の長手方向と一致する方向であり、幅方向Yは雌型圧着端子10の幅方向に相当し、長手方向Xに対して平面方向において交差する方向である。また、圧着部30に対するボックス部20の側を前方(先端側)とし、逆に、ボックス部20に対する圧着部30の側を後方(基端側)としている。
ボックス部20は、倒位の中空四角柱体で構成され、内部に、長手方向Xの後方に向かって折り曲げられ、挿入される雄型コネクタの挿入タブ(図示省略)に接触する弾性接触片21を備えている。
また、中空四角柱体であるボックス部20は、底面部22の長手方向Xと直交する幅方向Yの両側部に連設された側面部23を重なり合うように折り曲げて、長手方向Xの先端側から見て略矩形状に構成している。
圧着部30は、電線圧着部31と封止部32とを後方から前方側へこの順に配設するとともに、周方向全体において連続する連続形状で一体に形成している。
電線圧着部31は、被覆圧着部31a及び導体圧着部31bを、後方から前方側へこの順に連続して直列に配設し、被覆圧着部31aから導体圧着部31bにかけて電線先端部200aを挿入可能に後方側のみが開口するとともに、先端側及び周面部全体が開口していない中空形状(筒状)で構成し、クローズドバレル型で構成している。
被覆圧着部31aは、電線先端部200aを電線圧着部31に挿入した状態において、電線圧着部31の長手方向Xにおける被覆先端部202aに相当する部分であり、導体圧着部31bは、電線先端部200aを電線圧着部31に挿入した状態において、電線圧着部31の長手方向Xにおける導体先端部201aに相当する部分である。
なお、被覆圧着部31a及び導体圧着部31bは、圧着前の状態においては互いに略同じ径をした筒状に形成している。
封止部32は、中空形状(筒状)で構成した電線圧着部31よりも前方端部を略平板状に押し潰すように変形させて、雌型圧着端子10を構成する板状の端子基材100が重合する偏平形状で構成している。
続いて、上述した雌型圧着端子10の製造方法について図3を用いて説明する。
図3は圧着部30における溶接について説明する説明図を示し、詳しくは、図3(a)はファイバーレーザ溶接装置Fwでファイバーレーザ溶接を行っている様子を示す作用説明図であり、図3(b)は図3(a)のa部拡大図である。
上述した雌型圧着端子10は、端子基材100を、中空四角柱体のボックス部20と後方視略O型の圧着部30とからなる立体的な端子形状に曲げ加工するとともに、圧着部30をレーザーLにより溶接してクローズドバレル形式の雌型圧着端子10で構成している。
なお、端子基材100は、雌型圧着端子10を構成するために板状の基材であり、表面が錫メッキ(Snメッキ)された黄銅等の銅合金条(図示せず)を、平面展開した端子形状に打ち抜いた板材であり、圧着前の圧着部30に相当する部分に、圧着面、及び該圧着面の幅方向Yの両側から延出したバレル構成片を備えて形成している。
詳しくは、雌型圧着端子10は、端子基材100を、長手方向を中心軸とする方向に丸めて端部32a同士が底面側で突き合わさるようにして丸めて円筒状を構成する。そして、端子基材100の対向端部32a同士を突き合わせた状態でレーザー照射装置Fwを長手方向Xに沿ってスライドさせながら一対の対向端部32a同士を溶接することで長手方向溶接部W1を形成する。
その後、レーザー照射装置Fwを圧着部30の前方側で長手方向Xに沿ってスライドさせながら圧着部30の前方部分を溶接することで幅方向溶接箇所W2を形成する。
続いて、上述した雌型圧着端子10を、電線先端部200aに圧着接続する圧着工程について図4(a),(b),(c)を用いて説明する。
図4は第1実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程の様子を断面により示した作用説明図であり、詳しくは、図4(a)は電線先端部200aに対して雌型圧着端子10を圧着する直前の状態を示す縦断面図であり、図4(b)は電線先端部200aに対して雌型圧着端子10を圧着した直後の状態を示す縦断面図である。図4(c)は図4(b)のa部拡大図である。
まず、図4(a)に示すように、圧着部30における電線圧着部31に電線先端部200aを挿入する。このとき、図4(a)に示すように、被覆圧着部31aの内部に電線先端部200aの被覆先端部202aが挿入されるとともに、導体圧着部31bの内部に電線先端部200aの導体先端部201aが挿入される。
この状態で、互いに係合するクリンパ301とアンビル302とで構成された圧着工具300により電線圧着部31を押圧し、電線先端部200aに対して電線圧着部31を圧着する。
その際、図4(a)に示すように、クリンパ301とアンビル302を、圧着部30を隔てて互いに対向配置させる。
この状態でクリンパ301とアンビル302により圧着部30を両側から挟み込むことで、図4(b)に示すように、電線圧着部31を電線先端部200aに圧着する。
これにより、図2に示すように、被覆電線200の電線先端部200aに対して雌型圧着端子10を圧着接続することができる。
続いて、上述した圧着工程に使用される圧着工具300の詳細な構成、及び圧着工程における被覆圧着部31aの挙動について詳細に説明する。
図5は第1実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程における圧着工具300と被覆圧着部31aとの関係を示した断面図であり、詳しくは、図5(a)は図4(a)のA−A線断面図であり、図5(b)は図4(a)のB−B線断面図であり、図5(c)は図4(b)のA−A線断面図であり、図5(d)は図4(b)のB−B線断面図である。図5(a)、(b)、(c)、及び(d)はいずれも、被覆圧着部31aの長手方向を法線とする断面図である。図5(e)はクリンパ301おける被覆圧着部31aを圧着する部分の幅WD1及びWD2の変化を模式的に示すグラフである。
圧着工具300を図5(a)及び(b)に示すように構成する。クリンパ301におけるアンビル302と対向する位置に、アンビル302と係合する凹部311を形成し、凹部311を、圧着後の被覆圧着部31aの形状を規定する底部311aと、底部311aと外部を連通する連通部311bとで構成する。
被覆圧着部31aの長手方向を法線とする断面で見た場合の連通部311bの幅WD2は、底部311aと連通部311bの境界部から凹部311の開口部312に向かって増加する。被覆圧着部31aの長手方向に沿った第1の位置(ここでは先端側端部PO1の位置)における連通部311bの特定の深さでの幅WD2は、図5(a),(b),及び(e)に示すように、被覆圧着部31aの長手方向に沿った第2の位置(ここでは基端側端部PO2の位置)における連通部311bの特定の深さでの幅WD2よりも小さい。幅WD2は、図5(e)に示すように、被覆圧着部31aの長手方向に沿って第1の位置から第2の位置に向かって増加することが望ましい。
なお、底部311aの幅WD1は、被覆圧着部31aの長手方向の位置によらず一定である。底部311aの幅WD1を、被覆圧着部31aの長手方向に沿った先端側端部PO2の位置と基端側端部PO1の位置で互いに異なるようにすることもできる。
圧着工具300を上述のように構成することにより、基端側端部PO1の圧着を先端側端部PO2の圧着よりも先に開始することができる。また、基端側端部PO1の圧着と先端側端部PO2の圧着とを同一工程にて行うことができる。
詳しくは、クリンパ301及びアンビル302が図4(a)に示す位置に存在するタイミングでは、図5(b)に示すように、基端側端部PO1がクリンパ301の連通部311bの壁面と接触し、基端側端部PO1の圧着が開始する。一方で、クリンパ301及びアンビル302が図4(a)に示す位置に存在するタイミングでは、図5(a)に示すように、先端側端部PO2の被覆圧着部31aはクリンパ301と未だ接触せず、先端側端部PO2の圧着は開始しない。先端側端部PO2の圧着は基端側端部PO1の圧着の開始後に開始する。
図5(e)に示すように、幅WD2が被覆圧着部31aの長手方向に沿って第1の位置から第2の位置に向かって増加する場合には、時間経過とともに基端側端部PO1から先端側端部PO2に向かって順に圧着が開始する。
圧着工程は、上述するように、先端側端部PO2の圧着は基端側端部PO1の圧着の開始後に開始して、その後導体圧着部31bの先端側に向けて順次圧着を行う。つまり、圧着工程は、被覆圧着部31aの圧着の開始後に導体圧着部31bの圧着を開始する。
クリンパ301及びアンビル302が図4(b)に示す位置に存在するタイミング(圧着が完了したタイミング)では、図5(c)及び(d)に示すように、先端側端部PO2及び基端側端部PO1の各々は、底部311aの壁面により圧着され、底部311aによって形状が規定される。
底部311aの幅WD1が被覆圧着部31aの長手方向の位置によらず一定である場合には、被覆圧着部31aの幅は被覆圧着部31aの長手方向に沿って均一になる。
上述した圧着方法が奏する作用効果について説明する。
図6(a)に示すように、電線先端部200aを電線圧着部31の内部に配置した状態で圧着を開始すると、被覆圧着部31aは変形し、被覆圧着部31aの内部に挿入された被覆先端部202aに対して圧力を加える。この圧力により被覆先端部202aは弾性変形する。被覆圧着部31aは、クローズドバレル型の被覆圧着部31aであるので、被覆先端部202aの反発力により被覆圧着部31aの内圧が高まる。
ここで、被覆圧着部31a全体に対して同時に圧着を開始した場合には、被覆先端部202aが基端側(図6(a)中右上方向)へ移動することにより、導体先端部201aが被覆圧着部31aから露出し、安定した導電性を得ることができなくなる。
本実施形態では、図6(b)に示すように、被覆圧着部31aの基端側端部PO1の圧着を、被覆圧着部31aの先端側端部PO2の圧着よりも先に開始し、導体圧着部31bを順次圧着する。圧着完了後の雌型圧着端子10及び被覆電線200は、図6(c)に示すような状態になる。これにより、図6(d)に示すように、基端側端部PO1における被覆圧着部31aの内部に存在する被覆先端部202aが押圧により弾性変形し、その反発力により基端側端部PO1における被覆圧着部31aの内圧が高まり、基端側端部PO1において被覆先端部202aが被覆圧着部31aに固定される。これにより、被覆電線200は押圧により基端側端部PO1の方(図6(d)中右方)へ移動しなくなる。その結果、導体先端部201aが被覆圧着部31aから露出することを抑止することができ、安定した導電性を得ることができる。
また、時間経過とともに基端側端部PO1から先端側端部PO2に向かって圧着を開始する場合には、被覆電線200における基端側端部PO1よりも先端側の部分に対し、先端側端部PO2へ向かう力(図6(d)中左方へ向かう力)を加えることができるので、導体先端部201aの露出を抑止する効果を高めることができる。
なお、被覆圧着部31aの圧着に引き続いて、同一工程あるいは別工程で導体圧着部31bを圧着してもよいし、被覆圧着部31aより先に導体圧着部31bを圧着してから被覆圧着部31aを圧着しても上述の効果を奏することができる。
以下では、他の実施形態における圧着方法を説明する。
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程の様子を断面により示した作用説明図であり、詳しくは、図7(a)は被覆圧着部31aの基端側端部PO1を圧着する直前の状態を示す縦断面図であり、図7(b)は被覆圧着部31aの先端側端部PO2を圧着する直前の状態を示す縦断面図である。
図7(a)及び(b)に示すように、本実施の形態では、クリンパ301をクリンパ301aとクリンパ301bとに分離して構成し、基端側端部PO1の圧着と先端側端部PO2の圧着とを別工程にて行う。
詳しくは、図7(a)に示すように、始めに、クリンパ301aとアンビル302により圧着部30を両側から挟み込むことで、基端側端部PO1付近の被覆圧着部31aを被覆先端部202aに対して圧着する。この時、先端側端部PO2はクリンパ301aによって圧着されない。
クリンパ301aを用いた圧着が完了した後で、図7(b)に示すように、クリンパ301bとアンビル302により圧着部30を両側から挟み込むことで、先端側端部PO2付近の被覆圧着部31aを被覆先端部202aに対して圧着し、導体圧着部31bを導体先端部201aに対して圧着する。この時、基端側端部PO1に対して被覆圧着部31aを再度圧着することもできる。
これにより、図2に示すように、電線先端部200aに対して雌型圧着端子10を圧着接続することができる。
本実施形態のように、クリンパ301をクリンパ301aとクリンパ301bとに分離して構成し、基端側端部PO1の圧着と先端側端部PO2の圧着とを別工程にて行うことで、つまり、被覆圧着部31aを複数回に分けて圧着することで、基端側端部PO1の圧着を先端側端部PO2の圧着よりも先に開始することができる。
なお、クリンパ301aにおける基端側端部PO1を押圧する部分の、被覆圧着部31aの長手方向を法線とする断面形状と、クリンパ301bにおける先端側端部PO2を押圧する部分の断面形状とは、同一であってもよいし、それぞれ図5(a)及び(b)に示すように互いに異なっていてもよい。
また、クリンパ301における導体先端部201aを押圧する部分が、クリンパ301における電線先端部200aを押圧する部分から分離するように、クリンパ301を構成することもできる。これにより、導線先端部201aの圧着と電線先端部200aの圧着とを別工程にて行うことができる。
(第3実施形態)
図8は第3実施形態の圧着端子付き電線1の圧着工程の様子を断面により示した作用説明図であり、詳しくは、電線先端部200aに対して雌型圧着端子10を圧着する直前の状態を示す縦断面図である。
図8に示すように、本実施の形態では、クリンパ301における被覆圧着部31aを押圧する部分(底部311a)に、アンビル302へ向かう方向(図8中下側)の傾斜を設ける。
詳しくは、クリンパ301における被覆圧着部31aを押圧する部分が、先端側端部PO2を押圧する部分から基端側端部PO1を押圧する部分にかけて、アンビル302へ向かう方向(図8中下側)に突出している。
本実施形態のように、クリンパ301における被覆圧着部31aを押圧する部分に、アンビル302へ向かう方向の傾斜を設けることで、基端側端部PO1の圧着を先端側端部PO2の圧着よりも先に開始することができる。
この発明の構成と、実施形態との対応において、
この発明の接続構造体は、実施形態の圧着端子付き電線1に対応し、
以下同様に、
圧着端子は、雌型圧着端子10に対応し、
導体は、アルミニウム芯線201に対応し、
圧着装置は、圧着工具300に対応し、
第1の型は、クリンパ301,301a,301bに対応し、
第2の型は、アンビル302に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
例えば、第1、第2、及び第3実施形態の圧着端子付き電線1の構成、製造方法、圧着工具200の構成は、上述した構成、製造方法に限定しない。
具体的には、基端側端部PO1の圧着が先端側端部PO2の圧着よりも先に開始するように、たとえば図5(e)示すような幅WD2を有する凹部をクリンパ301側ではなくアンビル302側に設けてもよい。
また、本発明では、上述のようなクリンパ301とアンビル302だけに限らず、図9(a)に示すように、被覆圧着部31aを圧着するクリンパ301aに、アンビル302の方向へ突出する凸部300zを形成するとともに、該凸部300zと対向するように、クリンパ301aの方向へ突出する凸部300zをアンビル302に形成してもいい。
図9(a)及び図9(b)は、他の実施形態における圧着工程前の様子をあらわす断面図を示している。
この構成により、被覆圧着部31aは、凸部300z以外の部分よりも局部的に強圧着することができるため、導体先端部201aが導体圧着部31bからずれることを防止することができるとともに、止水性を向上させることができる。
なお、クリンパ301aとアンビル302とは、上述のような凸部300zを備えた構成だけに限らず、クリンパ301aとアンビル302とをさらに分割した構造であってもよい。
詳述すると、クリンパ301aは、図9(b)に示すように、凸部300zの部分を備えたクリンパ301cと、凸部300z以外の部分で構成されたクリンパ301dとで構成することができる。これらクリンパ301c,301dは、長手方向Xに沿って交互に並列配置する。
同様に、アンビル302も、凸部300zの部分を備えたアンビル302aと、凸部300z以外の部分で構成されたアンビル302bとで構成することができる。
クリンパ301c,301dとアンビル302a,302bとの少なくとも一方は、互いに連動する構成であってもよく、それぞれが単独で移動する構成であってもよい。
また、本発明では、圧着工程を、被覆圧着部31aの圧着の開始後に導体圧着部31bの圧着を開始するだけに限らず、被覆圧着部31aの圧着と、導体圧着部31bの圧着と、被覆圧着部31aの圧着とをこの順に行ってもよい。
圧着工程を上述のように行うことで、仮に導体圧着部31bの圧着が、該導体圧着部31bの圧着前に行った被覆圧着部31aの圧着状態に影響を与えても、再度、被覆圧着部31aの圧着を行うことで、止水性と圧着強度を確保することができる。
このとき、導体圧着部31bの圧着の前後に行う被覆圧着部31aの圧着のうち少なくとも一方の圧着を、上記クリンパ301c,301dとアンビル302a,302bとを用いて行ってもよい。
さらに、圧着工程において、導体圧着部31bの圧着よりも先に被覆圧着部31aの圧着を行えば、基端側端部PO1と先端側端部PO2とを同時に圧着してもよいし、基端側端部PO1の圧着よりも先に先端側端部PO2の圧着を開始してもよい。
また、本発明では、被覆圧着部31a及び導体圧着部31bを、圧着前の状態において、互いに略同じ径をした筒状に形成した電線圧着部31だけに限らず、図10(a)及び図10(b)に示すように、被覆圧着部31aと導体圧着部31bとを段差状に形成した電線圧着部31zであってもよい。
図10(a)は、段差状の電線圧着部31zを有する雌型圧着端子10の斜視図を示し、図10(b)は、段差状の電線圧着部31zを有する雌型圧着端子10の断面図を示している。
詳述すると、被覆圧着部31aの直径を、絶縁被覆202の直径と略同等、または、わずかに大きく形成するとともに、導体圧着部31bの直径を、アルミニウム芯線201の直径と略同等、または、わずかに大きく形成して、電線圧着部31zを段差状に形成する。
上記構成により、電線圧着部31を段差状に形成していない場合に比べて、圧着前における導体圧着部31bとアルミニウム芯線201との隙間を小さくすることができる。したがって、導体圧着部31bから導体先端部201aがずれたり、アルミニウム芯線201が電線圧着部31から飛び出ることを、より防止することができる。
さらに、導体圧着部31bとアルミニウム芯線201との隙間を小さくすることで、アルミニウム芯線201と圧着する際の導体圧着部31bの縮径率は小さくなり、圧着時に発生する導体圧着部31bの材料が余肉としてあらわれることを防止する。したがって、導体圧着部31bとアルミニウム芯線201とが密着した圧着状態を得ることができる。
1…圧着端子付き電線
10…雌型圧着端子
30…圧着部
31a…被覆圧着部
31b…導体圧着部
200…被覆電線
200a…電線先端部
201…アルミニウム芯線
201a…導体先端部
202…絶縁被覆
202a…被覆先端部
300…圧着工具
300z…凸部
301,301a〜301d…クリンパ
302,302a,302b…アンビル
311…凹部
311a…底部
311b…連通部
WD2…連通部の特定の深さでの幅

Claims (7)

  1. 導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における電線先端部の圧着接続を許容する圧着部を備えた圧着端子における前記圧着部によって前記被覆電線と前記圧着端子とを圧着接続する接続構造体の製造方法であって、
    前記電線先端部は、前記被覆電線における先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部と、前記絶縁被覆の先端部分に有する被覆先端部とで構成され、
    前記圧着部を、断面中空形状の圧着部で構成するとともに、前記導体先端部を圧着する導体圧着部と、前記被覆先端部を圧着する被覆圧着部とを配置して構成し、
    前記電線先端部に前記圧着部を圧着接続する電線圧着工程において、
    前記電線先端部を前記圧着部の内部に配置し、
    前記被覆圧着部の基端側端部の圧着を、前記被覆圧着部の先端側端部の圧着よりも先に開始する
    接続構造体の製造方法。
  2. 前記電線圧着工程において、
    前記被覆圧着部の基端側端部の圧着と前記被覆圧着部の先端側端部の圧着とを同一工程にて行う
    請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
  3. 前記電線圧着工程において、
    前記被覆圧着部の先端側端部の圧着した後、前記導体圧着部を順次圧着する
    請求項1または2に記載の接続構造体の製造方法。
  4. 前記電線圧着工程において、
    前記導体圧着部の圧着と前記被覆圧着部の圧着とを別工程にて行う
    請求項に記載の接続構造体の製造方法。
  5. 導体を絶縁被覆で被覆した被覆電線における先端部である電線先端部を圧着端子の内部に配置した状態で、前記電線先端部を前記圧着端子に圧着接続する圧着装置であって、
    前記電線先端部は、前記被覆電線における先端側の前記絶縁被覆を剥がして前記導体を露出させた導体先端部と、前記絶縁被覆の先端部分に有する被覆先端部とで構成され、
    前記被覆圧着部の基端側端部の圧着を、前記被覆圧着部の先端側端部の圧着よりも先に開始するように、前記圧着端子を圧着する圧着部材を備えた
    圧着装置。
  6. 前記圧着部材を第1の型と、前記第1の型と係合する第2の型とで構成し、
    前記第1の型における前記被覆圧着部を圧着する部分に、第2の型へ向かう方向の傾斜が設けられている
    請求項5に記載の圧着装置。
  7. 前記第1の型における、前記被覆先端部を圧着する部分に、前記第2の型の方向へ突出する第1凸部を備えるとともに、
    前記第2の型における、前記被覆先端部を圧着する部分に、前記第1凸部の方向へ突出する第2凸部を備え、
    前記第1凸部と第2凸部とを、対向する位置に配設した
    請求項6に記載の圧着装置。
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