JP5582786B2 - 変性ジエン系ゴム及びその製造方法、並びにそれを用いたゴム組成物及びタイヤ - Google Patents

変性ジエン系ゴム及びその製造方法、並びにそれを用いたゴム組成物及びタイヤ Download PDF

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Description

本発明は、変性ジエン系ゴム及びその製造方法、並びに該変性ジエン系ゴムを用いたゴム組成物及びタイヤに関し、特に従来より安価に製造でき、低ロス性、耐摩耗性及び耐破壊性に優れたゴム組成物に関するものである。
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなりつつあり、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く(以下、低ロス性とする)、低発熱性に優れたゴム組成物が求められている。また、トレッド用のゴム組成物においては、低ロス性に加え、耐摩耗性及び破壊特性に優れることが求められる。これに対して、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を改良するには、ゴム組成物中のカーボンブラックやシリカ等の充填剤とゴム成分との親和性を向上させることが有効である。
例えば、ゴム組成物中の充填剤とゴム成分との親和性を向上させ、充填剤による補強効果を向上させるために、末端変性により充填剤との親和性を向上させた合成ゴムや、官能基含有単量体を共重合させて充填剤との親和性を向上させた合成ゴム等が開発されている。
一方、天然ゴムに関しては、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、該極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中の天然ゴム分子にグラフト重合させ、更に凝固及び乾燥してなる変性天然ゴムをゴム成分として使用することで、ゴム成分と充填剤との親和性を向上させてゴム組成物の補強性を改善し、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を向上させる技術が開示されている(特許文献1参照)。
上述のように、ゴム成分として特許文献1に開示の変性天然ゴムを用いることで、ゴム成分と充填剤との親和性が向上して、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性等が向上するが、昨今、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を更に向上させることが要求されている。
ここで、変性天然ゴム分子の鎖状分子運動を考慮すると、極性基が分子末端に存在する変性天然ゴムの方が、極性基が分子鎖中に存在する変性天然ゴムよりも、充填剤との相互作用を高めることができると期待され、実際に上述した合成ゴムを変性する技術においては、同様の理由により、末端変性した合成ゴムにてより高い変性効果が得られている。特許文献1記載の手法に従って、極性基を天然ゴム分子の主鎖に導入することができるが、この場合、極性基が導入される位置は、分子末端に限られない。これに対して、天然ゴムの分子の主鎖の末端を変性することによって、ゴム組成物の低ロス性、耐摩耗性及び破壊特性を更に向上させる技術として、メタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入する技術が開示されている(特許文献2参照)。
国際公開第2004/106397号パンフレット 特開2007−204637号公報
上述した特許文献2記載のメタセシス触媒と極性基含有オレフィンを用いて天然ゴムの分子の主鎖の末端に極性基を導入する技術においては、変性天然ゴムの製造に用いるメタセシス触媒が高価であることから、製造コストが高くなる。さらに、昨今、天然ゴムのみならず、他のジエン系ゴムを用いたゴム組成物についても、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を更に向上させることが要求されている。
そこで、本発明の目的は、従来より安価に製造でき、かつゴム組成物のゴム成分として用いることでゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を向上させることが可能な変性ジエン系ゴムと、該変性ジエン系ゴムの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる変性ジエン系ゴムを用いたゴム組成物と、該ゴム組成物を用いたタイヤを提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加することによって、極性基をジエン系ゴムの分子鎖の末端に簡便かつ安価に導入することができ、更に、このようにして得られた変性ジエン系ゴムをゴム成分として使用することによって、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に向上させることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の変性ジエン系ゴムは、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなり、前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする。
本発明の変性ジエン系ゴムの好適例においては、前記ジエン系ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであることを特徴とする。
本発明の変性ジエン系ゴムの他の好適例においては、前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記ジエン系ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%であることを特徴とする。
本発明の変性ジエン系ゴムの他の好適例においては、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であることを特徴とする。
本発明の変性ジエン系ゴムの他の好適例においては、前記ジエン系ゴムラテックスの酸化を、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、酸化することによって行うことを特徴とする。ここで、前記酸化を、空気酸化又はオゾン酸化することによって行うことが好ましい。
本発明の変性ジエン系ゴムの他の好適例においては、前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行うことを特徴とする。
本発明の変性ジエン系ゴムの他の好適例においては、前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類であることを特徴とする。
本発明の変性ジエン系ゴムの他の好適例においては、前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれることを特徴とする。
また、本発明の変性ジエン系ゴムの第1の製造方法は、ジエン系ゴムラテックスを酸化し、更に凝固し、得られた酸化ジエン系ゴムラテックスの凝固物に極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、ここで、該極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、該極性基含有ヒドラジド化合物を該酸化ジエン系ゴムラテックスの凝固物中のジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加反応させ、更に乾燥することを特徴とする。
更に、本発明の変性ジエン系ゴムの第2の製造方法は、ジエン系ゴムラテックスを酸化し、更に凝固及び乾燥し、得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、ここで、該極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、該極性基含有ヒドラジド化合物を該酸化ジエン系ゴム中のジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加反応させることを特徴とする。
更に、本発明の変性ジエン系ゴムの第3の製造方法は、ジエン系ゴムラテックスを酸化し、得られた酸化ジエン系ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、ここで、該極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、該極性基含有ヒドラジド化合物を該酸化ジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加反応させ、更に凝固及び乾燥することを特徴とする。
また、本発明のゴム組成物は、上記変性ジエン系ゴムを用いたことを特徴とし、本発明のタイヤは該ゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたことを特徴とする。
本発明によれば、従来より安価に製造でき、ゴム組成物のゴム成分として用いることでゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性を大幅に向上させることが可能な変性ジエン系ゴムと、該変性ジエン系ゴムの製造方法を提供できるという有利な効果を奏する。また、該変性ジエン系ゴムを用いた低ロス性及び耐摩耗性に優れたゴム組成物及びタイヤを提供することができるという有利な効果を奏する。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の変性ジエン系ゴムは、ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなることを特徴とする。上記変性ジエン系ゴムにおいては、ジエン系ゴムの分子鎖の末端に極性基が存在するため、例えば上述した特許文献1記載の変性天然ゴムのような極性基が分子鎖中に存在する変性ジエン系ゴムよりも、カーボンブラックやシリカ等の種々の充填剤に対する親和性に優れる。そして、本発明の変性ジエン系ゴムをゴム成分として用いたゴム組成物は、前述した極性基が分子鎖中に存在する変性ジエン系ゴムをゴム成分として用いたゴム組成物に比べて、ゴム成分に対する充填剤の分散性が高く、充填剤の補強効果が十分に発揮されて、耐摩耗性及び低ロス性(低発熱性)が向上している。また、該ゴム組成物をタイヤ、特にタイヤのトレッドに用いることで、転がり抵抗を大幅に低減しつつ、耐摩耗性を著しく改善することができる。
本発明の変性ジエン系ゴムにおいて、酸化反応に用いるジエン系ゴムラテックスとしては、天然ゴムラテックス、ポリイソプレンゴムラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル−ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックスが挙げられる。該ジエン系ゴムラテックスは1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、合成ゴムの場合は、重合の過程で分子鎖末端に極性基を導入することが可能であるが、天然物である天然ゴムはメタセシス触媒を用いる手法等を除けば不可能であり、本発明により可能となることを考えると天然ゴムラテックスを用いることが好ましい。
天然ゴムラテックスとしては、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス、前記のものを組み合わせたものなど、いずれも使用することができる。副反応を少なくするためには、天然ゴムラテックスの純度を上げて使用するとよい。
上記ジエン系ゴムラテックスの酸化は公知の方法で行うことができる。例えば、特開平8−81505号公報に従って、有機溶剤に1〜30質量%の割合で溶解した上記ジエン系ゴムラテックスを金属系酸化触媒の存在下で空気酸化することによって上記ジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。ここで、空気酸化を促進するために用いられる金属系酸化触媒の好適な金属種はコバルト、銅、鉄等であり、これらの塩化物や有機化合物との塩や錯体が用いられる。なかでも塩化コバルト、コバルトアセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト等のコバルト系触媒が好適である。
有機溶媒としては、それ自体がゴムと反応せず、また容易に酸化されることがなく、ゴムを溶解するものであれば良く、種々の炭化水素系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、有機ハロゲン系溶媒等が好適に用いられる。炭化水素系溶媒としては、例えばヘキサン、ガソリン等が使用可能である。芳香族炭化水素系溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、ベンゼン等が使用可能である。有機ハロゲン系溶媒としては、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等が使用可能である。中でも芳香族炭化水素系のトルエンを用いるのが好適である。また、それらとアルコール等との混合溶媒を用いることも可能である。
また、特開平9−136903号公報に記載されているように、上記ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、ジエン系ゴムラテックスを酸化することによって、ジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。ジエン系ゴムラテックスに添加するカルボニル化合物は、ゴム分に関係なくラテックス容量に対して20容量%(V/V%)以下、好ましくは0.5〜10容量%となるように添加するのが適当である。カルボニル化合物の濃度が上記範囲を超えても問題はないが、反応性を高めないばかりか、経済的に不利となるおそれがある。ここで、カルボニル化合物の好適な例としては、種々のアルデヒド類、ケトン類等があげられる。
アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、カプロアルデヒド、ヘプタアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、トルアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、アニスアルデヒド、バニリン、ピペロナール、メチルバレルアルデヒド、イソカプロアルデヒド、パラホルムアルデヒド等があげられる。
ケトン類としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルn−プロピルケトン、ジエチルケトン、イソプロピルメチルケトン、ベンジルメチルケトン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、イソブチルメチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、n−ブチロフェノン、ベンゾフェノン、3−ニトロ−4′−メチルベンゾフェノン等があげられる。
上述したカルボニル化合物を上記ジエン系ゴムラテックスに添加することによって酸化を行うことができるが、酸化方法として、空気酸化を行う場合、特開平9−136903号公報に記載されているように、空気酸化を促進するためにラジカル発生剤の存在下で空気酸化を行うのが好ましい。ラジカル発生剤としては、例えば過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤、アゾ系ラジカル発生剤等が好適に用いられる。過酸化物系ラジカル発生剤としては、例えば過酸化ベンゾイル、過酸化ジ−t−ブチル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルペルオキシカルボナート、ジシクロヘキシルペルオキシカルボナート等が使用できる。
レドックス系ラジカル発生剤としては、例えばクメンヒドロキシペルオキシドとFe(II)塩、過酸化水素とFe(II)塩、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムと亜硫酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウムと亜硫酸ナトリウム、硫酸セリウム(IV)とアルコール、アミン又は澱粉、過酸化ベンゾイルや過酸化ラウロイル等の過酸化物とジメチルアニリン、tert−ブチルハイドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミン等が使用できる。
アゾ系ラジカル発生剤としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩、4,4′−アゾビス−4−シアノ吉草酸等が使用できる。
上述のラジカル発生剤は上記ジエン系ゴムラテックス中に溶解又は分散させて用いられる。ラジカル発生剤の添加量は、ジエン系ゴム固形分に対して0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜1質量%であるのが適当である。ラジカル発生剤の濃度が上記範囲より低いと空気酸化の速度が遅く実用的でない。一方、ラジカル発生剤の濃度が上記範囲を超えると、分子鎖切断が進み、分子量の低下に伴い、ゴム組成物としての低ロス性、耐摩耗性、破壊強度が悪化するおそれがある。
空気酸化では、溶液を空気と均一に接触させることが望ましい。空気との接触を均一にする手法は特に限定されないが、例えば振盪フラスコ中で振盪させるほか、攪拌や空気を吹き込むバブリング等により容易に行うことができる。空気酸化を進める温度は、通常、室温〜100℃で行われるが、特に限定されるものではない。反応は、通常1〜5時間程度で終了する。
また、特開2001−261707号公報の記載に従って、ジエン系ゴムラテックスにオゾン含有ガスを吹き込み、オゾンの酸化作用でジエン系ゴムラテックスの酸化を行うことができる。この方法では、過酸化水素の添加により、分解反応が促進される。
本発明においては、上記の手法によって、上記ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。ここで、後述するように、ジエン系ゴムラテックスを酸化して得られた酸化ジエン系ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよいし、又は得られた酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固して得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加してもよい。
上記手法で得られた酸化ジエン系ゴムラテックスは、ジエン系ゴム分子鎖の末端にカルボニル基を有する。極性基含有ヒドラジド化合物は、高い反応性を有し、そのため、酸化ジエン系ゴムラテックス又は該酸化ジエン系ゴムラテックスを凝固して得られた酸化ジエン系ゴム中のジエン系ゴム分子末端のカルボニル基と容易に反応する。よって、酸化ジエン系ゴムラテックス又は酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加することで、高価な触媒を用いることなく、ジエン系ゴム分子末端に、簡便かつ安価に極性基を導入することができる。
上記極性基含有ヒドラジド化合物としては、分子内に少なくとも一つの極性基を有するヒドラジド化合物であれば特に制限されない。具体的には、例えば、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボ二ル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基、アルコキシシリル基などを好適に挙げることができる。これらの極性基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有するヒドラジド化合物が挙げられる。これらのアミノ基含有ヒドラジド化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
第1級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−アミノアセトヒドラジド、3−アミノプロピオン酸ヒドラジド、4−アミノブタン酸ヒドラジド、2−アミノベンゾヒドラジド、4−アミノベンゾヒドラジド等が挙げられる。
第2級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−(メチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(エチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(メチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(エチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(プロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(イソプロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、4−(メチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(エチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、2−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(メチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4一(エチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(プロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(イソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
第3級アミノ基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、N,N−ジ置換アミノアルキルヒドラジド化合物、N,N−ジ置換ベンゾヒドラジド化合物等が挙げられる。これらの化合物としては、例えば、2−(ジメチルアミノ)アセトヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)アセトヒドラジド、3−(ジメチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(ジエチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジト、3−(ジプロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(ジイソプロピルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ブタン酸ヒドラジド、2−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、2−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジメチルアミノ)ベンソヒドラジド、4−(ジエチルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド、4−(ジイソプロピルアミノ)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。
また、アミノ基の代わりに含窒素複素環基であってもよく、その含窒素複素環基としては、例えば、ピロール、ヒスチジン、イミダソール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。なお、含窒素複素環は、他のへテロ原子を環中に含んでいてもよい。ここで、含窒素複素環基としてピリジル基を有するヒドラジド化合物としては、例えば、イソニコチノヒドラジド、ピコリノヒドラジドが挙げられる。これら含窒素複素環基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ニトリル基を有するヒドラジド化合物としては、2−ニトロアセトヒドラジド、3−ニトロプロピオン酸ヒドラジド、4−ニトロブタン酸ヒドラジド、2−ニトロベンゾヒドラジド、4−ニトロベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらのニトリル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記ヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、1分子中に少なくとも1個の第1級、第2級又は第3級ヒドロキシル基を含有するヒドラジド化合物が挙げられる。このようなヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物としては、例えば、2−ヒドロキシアセトヒドラジド、3−ヒドロキシプロピオン酸ヒドラジド、4−ヒドロキシブタン酸ヒドラジド、2−ヒドロキシベンゾヒドラジド、4−ヒドロキシベンゾヒドラジドが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有ヒドラジド化合物は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記カルボキシル基を含有するヒドラジド化合物としては、3−カルボキシプロピオン酸ヒドラジド、4−カルボキシブタン酸ヒドラジド、2−安息香酸ヒドラジド、4−安息香酸ヒドラジド等が挙げられる。これらカルボキシル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記エポキシ基を有するヒドラジド化合物としては、2−(オキシラン−2−イル)アセトヒドラジド、3−(オキシラン−2−イル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)プロピオン酸ヒドラジド等が挙げられる。これらエポキシ基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記スズ含有基を有するヒドラジド化合物としては、3−(トリブチルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリメチルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリフェニルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリオクチルスズ)プロピオン酸ヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリフェニルスズ)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ブタン酸ヒドラジド、2−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリブチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリメチルスズ)ベンゾヒドラジド、2−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド、4−(トリオクチルスズ)ベンゾヒドラジド等のスズ含有ヒドラジド化合物を挙げることができる。これらスズ含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
上記アルコキシシリル基を含有するヒドラジド化合物としては、2−(トリメトキシシリル)アセトヒドラジド、2−(トリエトキシシリル)アセトヒドラジド、3−(トリメトキシシリル)プロピオン酸ヒドラジド、3−(トリエトキシシリル)プロピオン酸ヒドラジド、4−(トリメトキシシリル)ブタン酸ヒドラジド、4−(トリエトキシシリル)ブタン酸ヒドラジド、2−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド、2−(トリエトキシシリル)ベンゾヒドラジド、4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド、4−(トリエトキシシリル)ベンゾヒドラジド等が挙げられる。これらアルコキシシリル基含有ヒドラジド化合物は、一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合せて用いてもよい。
極性基含有ヒドラジド化合物の添加方法としては、下記の通り3つ挙げられる。第1の方法では、上記酸化反応したジエン系ゴムラテックスを凝固、粉砕し、クラム化した後、上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。その後、例えば、ミキサー、押出機、混練機(プリブレーカー)等を用いて混練を行い、乾燥した変性ジエン系ゴムを得ることができる。
第2の方法では、上記酸化反応したジエン系ゴムラテックスを凝固、粉砕、乾燥した後、上記極性基含有ヒドラジド化合物を添加する。例えば、乾燥後の固形の酸化ジエン系ゴムへの極性基含有ヒドラジド化合物溶液の添加をミキサー、押出機、混練機等により行う工程が挙げられ、好ましくは、分散性向上の点から混練磯で混合することが好ましい。
第3の方法では、上記酸化反応したジエン系ゴムラテックス中に、水及び必要に応じて乳化剤を加えたものの中に上記極性基含有ヒドラジド化合物を加え、所定の温度で攪拌して反応させる。上記極性基含有ヒドラジド化合物の酸化ジエン系ゴムラテックスへの添加に際しては、予め酸化ジエン系ゴムラテックス中に乳化剤を加えておくか、あるいは極性基含有ヒドラジド化合物を乳化した後、酸化ジエン系ゴムラテックスに加える。必要に応じて有機過酸化物を添加することもできる。使用し得る乳化剤としては、特に限定されないが、ノニオン系の界面活性剤、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられる。このようにして極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、反応させて得られた変性ジエン系ゴムラテックスを凝固、乾燥することによって、変性ジエン系ゴムを得ることができる。
なお、上述した3つの方法において、酸化ジエン系ゴムラテックス又は変性ジエン系ゴムラテックスを凝固するのに用いる凝固剤としては、特に限定されるものではないが、ギ酸、硫酸等の酸や、塩化ナトリウム等の塩が挙げられる。また、酸化ジエン系ゴムラテックス又は変性ジエン系ゴムラテックスの乾燥は、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて行うことができる。
また、上記変性ジエン系ゴムを、カーボンブラックやシリカ等の充填剤と配合したとき、加工性を低下させずに低ロス特性や耐摩耗性を向上させるという目的を考えると、ジエン系ゴムの各分子にまんべんなく少量の極性基が導入されることが重要であるため、上記変性ジエン系ゴムにおいて極性基含有ヒドラジド化合物の付加量は、上記ジエン系ゴム中のゴム成分に対し0.01〜5.0質量%が好ましく、0.01〜1.0質量%がより好ましい。
また、上記変性ジエン系ゴムは、ゴム組成物として、優れた低ロス性、耐摩耗性及び破壊強度を確保するという観点から、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であるのが好ましく、400,000以上であるのがより好ましい。
本発明のゴム組成物は、上記変性ジエン系ゴムを用いたことを特徴とし、更に充填剤を含有することが好ましい。ここで、充填剤の配合量は、特に限定されるものではないが、上記変性ジエン系ゴム100質量部に対して5〜100質量部の範囲が好ましく、10〜70質量部の範囲が更に好ましい。充填剤の配合量が5質量部未満では、充分な補強性が得られない場合があり、100質量部を超えると、加工性が悪化する場合がある。
本発明のゴム組成物に用いる充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられ、ここで、無機充填剤としては、シリカ及び下記式(I):
nM・xSiOy・zH2O ・・・(I)
[式中、Mは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム及びジルコニウムからなる群から選ばれる金属、これらの金属の酸化物又は水酸化物、及びそれらの水和物、またはこれらの金属の炭酸塩から選ばれる少なくとも一種であり;n、x、y及びzは、それぞれ1〜5の整数、0〜10の整数、2〜5の整数、及び0〜10の整数である]で表される無機化合物が挙げられる。これら充填剤は、一種単独で用いてもよし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記カーボンブラックとしては、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのもの等が挙げられ、また、上記シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等が挙げられる。更に、上記式(I)の無機化合物としては、γ-アルミナ、α-アルミナ等のアルミナ(Al2O3);ベーマイト、ダイアスポア等のアルミナ一水和物(Al2O3・H2O);ギブサイト、バイヤライト等の水酸化アルミニウム[Al(OH)3];炭酸アルミニウム[Al2(CO3)3]、水酸化マグネシウム[Mg(OH)2]、酸化マグネシウム(MgO)、炭酸マグネシウム(MgCO3)、タルク(3MgO・4SiO2・H2O)、アタパルジャイト(5MgO・8SiO2・9H2O)、チタン白(TiO2)、チタン黒(TiO2n-1)、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム[Ca(OH)2]、酸化アルミニウムマグネシウム(MgO・Al2O3)、クレー(Al2O3・2SiO2)、カオリン(Al2O3・2SiO2・2H2O)、パイロフィライト(Al2O3・4SiO2・H2O)、ベントナイト(Al2O3・4SiO2・2H2O)、ケイ酸アルミニウム(Al2SiO5、Al4・3SiO4・5H2O等)、ケイ酸マグネシウム(Mg2SiO4、MgSiO3等)、ケイ酸カルシウム(Ca2SiO4等)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al2O3・CaO・2SiO2等)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO4)、炭酸カルシウム(CaCO3)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、水酸化ジルコニウム[ZrO(OH)2・nH2O]、炭酸ジルコニウム[Zr(CO3)2]、各種ゼオライトのように電荷を補正する水素、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を含む結晶性アルミノケイ酸塩等を挙げることができる。
本発明のゴム組成物には、上記変性ジエン系ゴム、充填剤の他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、老化防止剤、軟化剤、シランカップリング剤、ステアリン酸、亜鉛華、加硫促進剤、加硫剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明のゴム組成物は、変性ジエン系ゴムに、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いたことを特徴とし、上記ゴム組成物をトレッドに用いることが好ましい。上記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤは、低燃費性、破壊特性及び耐摩耗性に優れる。なお、本発明のタイヤは、上述のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(酸化天然ゴム製造工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間攪拌しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。次に、ギ酸を加えることでpHを4.7に調整し凝固させた。この固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーを通してクラム化した。
(変性工程)
得られた凝固物の乾燥ゴム含有量を求めた後、乾燥ゴム量換算で600gの凝固物とイソニコチノヒドラジド3.0gのエマルジョン溶液を混練機(プレブレーカー)内で室温にて30rpmで2分間練りこみ、均一に分散させ、乾燥した変性天然ゴムAを得た。また、該変性天然ゴムAを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することにより、未反応のヒドラジド化合物の分離を行ったところ、抽出物の分析から未反応のヒドラジド化合物は検出されず、よって該変性天然ゴムAにおけるイソニコチノヒドラジドの付加量は天然ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.51質量%であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8020、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、変性天然ゴムAのポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。
<実施例2〜7>
イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、実施例2では3−(ジメチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド3.0g、実施例3では4−(ジメチルアミノ)ベンゾヒドラジド3.9g、実施例4では4−ヒドロキシベンゾヒドラジド3.3g、実施例5では4−安息香酸ヒドラジド3.9g、実施例6では4−(トリブチルスズ)ブタン酸ヒドラジド8.5g、実施例7では4−(トリメトキシシリル)ベンゾヒドラジド5.6gを加え、それ以外は上記実施例1と同様にして変性天然ゴムB〜Gを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムB〜Gにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めて、それぞれ表1に示す結果を得た。
<実施例8>
(酸化天然ゴム製造工程)
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間攪拌しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。
(変性工程)
得られた酸化天然ゴムラテックスに、予め10mLの水と90mgの乳化剤[エマルゲン1108,花王株式会社製]をイソニコチノヒドラジド3.0gに加えて乳化したものを添加し、攪拌しながら60℃で12時間反応させることで、変性天然ゴムラテックスを得た。
(凝固及び乾燥工程)
次に、上記変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムHを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムHにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めて、それぞれ表1に示す結果を得た。
<実施例9、10>
イソニコチノヒドラジド3.0gの代わりに、実施例9では3−(ジメチルアミノ)プロピオン酸ヒドラジド3.0g、実施例10では4−ヒドロキシベンゾヒドラジド3.3g、を加え、それ以外は上記実施例8と同様にして変性天然ゴムI、Jを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムI、Jにおける極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めて、それぞれ表1に示す結果を得た。
<比較例1>
(天然ゴムラテックスの変性反応工程)
フィールドラテックスを、ラテックスセパレーター(斎藤遠心工業製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離することで、乾燥ゴム濃度あ60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mLの水と90mgの乳化剤「エマルゲン1108」(花王株式会社製)をN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gに加えて乳化したものを990mLの水と共に添加し、窒素置換しながら30分間撹拌した。次いで、tert−ブチルハイドロパーオキサイド1.2g、テトラエチレンペンタミン1.2gを加え、40℃で1時間反応させることで、変性天然ゴムラテックスを得た。
(凝固及び乾燥工程)
次に、上記変性天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムKを得た。このようにして得られた変性天然ゴムKの質量から、添加したN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率が100%であることが確認された。また、該変性天然ゴムKを石油エーテルで抽出し、更にアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することで、ホモポリマーの分離を試みたが、抽出物を分析したところホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムKの重量平均分子量(Mw)を求めて、表2に示す結果を得た。
<比較例2、3>
極性基含有単量体としてN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gの代わりに、比較例2では2-ヒドロキシエチルメタクリレートを2.1g、比較例3では4−ビニルピリジンを1.7g加える以外は、上記比較例1と同様にして変性天然ゴムL、Mを得た。また、変性天然ゴムKと同様にして、変性天然ゴムL、Mを分析したところ、それぞれ添加した極性基含有単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることが確認された。また、変性天然ゴムAと同様にして、変性天然ゴムL、Mの重量平均分子量(Mw)を求めて、表2に示す結果を得た。
<比較例4>
フィールドラテックスをラテックスセパレーター[斎藤遠心工業製]を用いて回転数7500rpmで遠心分離して、乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機及び温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、1000gの水を加えた。その後、過硫酸カリウム9.0g、プロピオンアルデヒド3.0gを添加し、60℃、30時間攪拌しながら反応させることで酸化天然ゴムラテックスを得た。次に、上記酸化天然ゴムラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、酸化天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して酸化天然ゴムNを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、酸化天然ゴムNの重量平均分子量(Mw)を求めて、表2に示す結果を得た。
<比較例5>
フィールドラテックスにギ酸を加えpHを4.7に調整し、フィールドラテックスを凝固させた。このようにして得られた固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化した後、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して天然ゴムOを得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、酸化天然ゴムNの重量平均分子量(Mw)を求めて、表2に示す結果を得た。
<実施例11>
JSR製SBRエマルジョン 0561(全固形分69%、pH10.3)を用いた以外は上記実施例1の酸化天然ゴム製造工程と同様にして、酸化スチレンブタジエンゴム(SBR)凝固物を得た。酸化天然ゴム凝固物の代わりに乾燥ゴム重量600g相当の酸化SBR凝固物を用いた以外は上記実施例1の変性工程以後の操作方法と同様にして、変性SBR1を得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めたところ、ヒドラジド化合物の付加量は0.50%、重量平均分子量は27.3万であった。
<比較例6>
JSR製SBRエマルジョン 0561(全固形分69%、pH10.3)1500gを水で固形分20%に希釈し、硫酸を用いて凝固し、脱水乾燥して乾燥SBR1を得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、重量平均分子量(Mw)を求めたところ、重量平均分子量は45.2万であった。
<比較例7>
実施例11で得られた酸化SBR凝固物をそのまま脱水乾燥して、酸化SBR1を得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、重量平均分子量(Mw)を求めたところ、重量平均分子量は26.1万であった。
<実施例12>
JSR製SBRエマルジョン 0561(全固形分69%、pH10.3)を天然ゴムの濃縮ラテックスの代わりに用いた以外は上記実施例8と同様にして変性SBR2を得た。また、変性天然ゴムAと同様にして、極性基含有ヒドラジド化合物の付加量を分析し、重量平均分子量(Mw)を求めたところ、ヒドラジド化合物の付加量は0.49%、重量平均分子量は24.3万であった。
Figure 0005582786
Figure 0005582786
次に、プラストミルで混練して表3に示す配合処方のゴム組成物を調製し、該ゴム組成物に対して、下記の方法でムーニー粘度、引張強さ(Tb)、tanδ及び耐摩耗性を測定・評価した。配合1に従うゴム組成物の結果を表4に、配合2に従うゴム組成物の結果を表5に、ゴム成分として各種SBRを用いたゴム組成物の結果を表6に示す。
(1)ムーニー粘度
JIS K6300−1:2001に準拠して、130℃にてゴム組成物のムーニー粘度ML1+4(130℃)を測定した。ムーニー粘度が小さい程、加工性に優れることを示す。
(2)引張強さ
上記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、JIS K6251-2004に準拠して引張試験を行い、引張強さ(Tb)を測定した。引張強さが大きい程、耐破壊性が良好であることを示す。
(3)tanδ
上記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、粘弾性測定装置[レオメトリックス社製]を用い、温度50℃、歪み5%、周波数15Hzで損失正接(tanδ)を測定した。tanδが小さい程、低ロス性に優れることを示す。
(4)耐摩耗性
上記ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得た加硫ゴムに対し、ランボーン型摩耗試験機を用い、室温におけるスリップ率60%での摩耗量を測定し、実施例13〜21及び比較例8〜11においては比較例11の摩耗量の逆数を100として指数表示し、実施例22〜30及び比較例12〜16においては比較例16の摩耗量の逆数を100として指数表示し、実施例31、32及び比較例17、18においては比較例17の摩耗量の逆数を100として指数表示し、実施例33、34及び比較例19、20においては比較例19の摩耗量の逆数を100として指数表示した。指数値が大きい程、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れることを示す。
Figure 0005582786
*1 使用したゴム成分の種類を表4及び5に示す.
*2 東ソー・シリカ(株)製, 商標:ニプシルAQ.
*3 デグッサ社製, 商標Si69, ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド.
*4 N-(1,3-ジメチルブチル)-N'-フェニル-p-フェニレンジアミン.
*5 N,N'-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
*6 ジフェニルグアニジン.
*7 ジベンゾチアジルジスルフィド.
*8 N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド.
Figure 0005582786
Figure 0005582786
表4及び表5のそれぞれにおける実施例と比較例の比較から、天然ゴムに代えて予め酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物で変性した変性天然ゴムを用いることで、ゴム組成物の破壊特性、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。また、極性基が天然ゴムの主鎖中にグラフトしている比較例1、2、5〜7よりも、実施例の方が低ロス性の改善効果が大きいことが分かる。
Figure 0005582786
表6における実施例と比較例の比較から、SBRに代えて予め酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物で変性した変性SBRを用いることで、ゴム組成物の破壊特性を同等に維持又はそれ以上に改善でき、低ロス性及び耐摩耗性を大幅に改善できることが分かる。

Claims (14)

  1. ジエン系ゴムラテックスを酸化した後、極性基含有ヒドラジド化合物をジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加させてなり、前記極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする変性ジエン系ゴム。
  2. 前記ジエン系ゴムラテックスが天然ゴムラテックスであることを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  3. 前記極性基含有ヒドラジド化合物の付加量が、前記ジエン系ゴムラテックス中のゴム成分に対して0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  4. ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算重量平均分子量が200,000以上であることを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  5. 前記ジエン系ゴムラテックスの酸化を、ジエン系ゴムラテックスにカルボニル化合物を添加し、酸化することによって行うことを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  6. 前記酸化を、空気酸化又はオゾン酸化によって行うことを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  7. 前記空気酸化をラジカル発生剤の存在下で行うことを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  8. 前記カルボニル化合物が、アルデヒド類及び/又はケトン類であることを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  9. 前記ラジカル発生剤が過酸化物系ラジカル発生剤、レドックス系ラジカル発生剤及びアゾ系ラジカル発生剤からなる群から選ばれることを特徴とする請求項記載の変性ジエン系ゴム。
  10. ジエン系ゴムラテックスを酸化し、更に凝固し、得られた酸化ジエン系ゴムラテックスの凝固物に、極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、ここで、該極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、該極性基含有ヒドラジド化合物を該酸化ジエン系ゴムラテックスの凝固物中のジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加反応させ、更に乾燥することを特徴とする変性ジエン系ゴムの製造方法。
  11. ジエン系ゴムラテックスを酸化し、更に凝固及び乾燥し、得られた酸化ジエン系ゴムに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、ここで、該極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、該極性基含有ヒドラジド化合物を該酸化ジエン系ゴム中のジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加反応させることを特徴とする変性ジエン系ゴムの製造方法。
  12. ジエン系ゴムラテックスを酸化し、得られた酸化ジエン系ゴムラテックスに極性基含有ヒドラジド化合物を添加し、ここで、該極性基含有ヒドラジド化合物の極性基がアミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、スズ含有基及びアルコキシシリル基からなる群から選ばれる少なくとも一つであり、該極性基含有ヒドラジド化合物を該酸化ジエン系ゴムラテックス中のジエン系ゴムの分子鎖の末端に付加反応させ、更に凝固及び乾燥することを特徴とする変性ジエン系ゴムの製造方法。
  13. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の変性ジエン系ゴムを用いたゴム組成物。
  14. 請求項13記載のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いたタイヤ。
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