JP5574657B2 - 光電変換装置 - Google Patents

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Description

本発明は光電変換装置に関するものであり、特に、色素増感型太陽電池に関するものである。
太陽電池には、バルク型結晶系のシリコン太陽電池、非晶質のシリコン薄膜を用いてなる薄膜型アモルファスシリコン系太陽電池等の様々な形態がある。また、シリコン原料の削減を目的とし、このようなシリコンを利用しない次世代太陽電池として、色素増感型太陽電池が注目されている。
このような色素増感型太陽電池としては、特許文献1のように増感色素が坦持された半導体層を有する第1の電極と、該第1の電極と対向するように配置された第2の電極と、この一対の電極間に注入された電解質と、を備えている。この電解質は、外部に漏れないように、一対の電極とそれらを接合する接合部材とによって構成された電解質室に収納されている。
特開2002−313443号公報
しかしながら、特許文献1に開示された色素増感型太陽電池は、長期間の使用によって接合部材が電解質によって劣化され、電解質室の気密性が低下し、動作の信頼性が低くなる可能性があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、長期間、気密性を維持することにより、動作の信頼性の高い光電変換装置を得ることである。
本発明の光電変換装置に係る一実施形態は、第1の主面を有する透光性基板と、前記第1の主面に対向する第2の主面を有する支持基板と、前記透光性基板の第1の主面および前記支持基板の第2の主面に形成された電極と、前記透光性基板と前記支持基板間で形成された間隙内に配された電解質と、前記電解質と空隙を介して配置された、前記透光性基板の第1の主面に形成された電極と前記支持基板の第2の主面に形成された電極とを接合する接合部材と、を具備しており、前記接合部材は、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、もしく銅の単体、またはこれら2種以上の化合物、およびガラスを含んでいるとともに、前記透光性基板の第1の主面に形成された電極と前記接合部材との間、および前記支持基板の第2の主面に形成された電極と前記接合部材との間、の少なくとも一方に絶縁性の台部を具備しており、該台部は、前記接合部材の幅よりも広い幅を有していることを特徴とする。なお空隙とは、気体で満たされた隙間、または真空状の隙間をいう。
このような構成により、電解質と接合部材間を空隙で離間することにより、接合部材の電解質に対する耐性を高めることができる。さらに、電解質および接合部材が離間して配置されているので、接合部材による封止の際、電解質等への熱等の影響を抑制することができ、光電変換特性および信頼性を高めることができる。そして、台部が、接合部材の幅よりも広い幅を有していることにより、接合部材が広がって電極に接触することを有効に抑制できる。以上の結果、長期間、気密性を維持し、作動信頼性の高い光電変換装置を得ることができる。
また、前記接合部材は、無機材を含む。これにより、電解質成分の漏洩をより有効に抑制することができる。
また、前記無機材は、ガラスを含む。これにより、電解質成分の漏洩あるいは外界の水分、酸素等の浸入を抑制することができ、長期信頼性を得ることができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記接合部材は、400〜2400nmの領域のいずれかの波長に対する吸収係数が前記台部よりも大きい。上記台部を設けること
により、接合部材の体積を小さくすることができ、封止時の熱歪、熱応力を低減でき、封止の信頼性を向上することができる。また、上記波長範囲の光は透光性基板を透過できるため、台部より上記波長範囲の吸収係数が大きい接合部材を選択的に加熱することができ、封止時の熱歪、熱応力を低減でき、封止の信頼性を向上することができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記台部は、前記透光性基板と前記支持基板のそれぞれに設けられている。このように基板に台部を対称的に配置させ、前記接合部材により封止することより、基板への熱歪あるいは熱応力を低減することができ、封止の信頼性を向上することができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記接合部材の軟化点は、前記台部の軟化点よりも低い。これにより、選択的に接合部材を軟化させ、封着することにより、基板への熱歪あるいは熱応力を低減することができ、封止の信頼性を向上することができる。また、前記台部により前記透光性基板と前記支持基板間の距離を調整することができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記台部の軟化点は、前記台部が設けられた前記透光性基板の軟化点または前記台部が設けられた前記支持基板の軟化点よりも低い。これにより、前記透光性基板と前記支持基板上で台部を軟化させ、気密性の高い台部を形成することができる。
また、前記接合部材は、光吸収体を含む。これにより、光吸収体の濃度により光加熱封止時の加熱状態を調整することができ、封止の信頼性を向上することができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記無機材は金属を含む。これにより、電気加熱、超音波と電気加熱との併用、レーザー加熱等により、透光性基板や支持基板の歪点よりも低い温度にて、透光性基板と支持基板とを接合することができるので、透光性基板や支持基板に熱歪あるいは熱応力が生じるのを低減することができ、封止の信頼性を向上することができる。
また、前記透光性基板の第1の主面に形成された電極と前記接合部材との間、および前記支持基板の第2の主面に形成された電極との間、の少なくとも一方に絶縁性の台部を具備している。これにより、電極の引き出しを良好に行うことができる。上記構成において、前記台部はガラスを含むことが好ましい。これにより、緻密で、封止性が高く、長期信頼性を向上させることができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記電解質は、揮発性有機溶媒およびイオン液体から選ばれた少なくとも一種を含み、粘度0.1Pa・s以上の電解質、もしくはゲル状電解質である。これにより、電解質と接合部材間に空隙を維持し、形成することができ、長期信頼性を向上することができる。
本発明の光電変換装置において好ましくは、前記電解質は、固体電解質であることを特徴とする。これにより、電解質と接合部材間に空隙をさらに維持し、形成することができ、長期信頼性を向上することができる。
本発明の光電変換装置によれば、腐食性の高い電解質に対して接合部材を離間させているため、接合部材の劣化を抑制できる。その結果、作動の信頼性の高い光電変換装置とすることができる。
参考例としての光電変換装置の実施の形態を示す断面図である。 参考例としての光電変換装置の実施の形態を示す断面図である。 参考例としての光電変換装置の実施の形態を示す断面図である。 本発明に係る光電変換装置の第の実施の形態を示す断面図である。 参考例としての光電変換装置の実施の形態を示す断面図である。 本発明に係る光電変換装置の第の実施の形態を示す断面図である。 本発明に係る光電変換装置の第の実施の形態を示す断面図である。
以下に、本発明の光電変換装置に係る実施の形態について模式的に示した図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、参考例としての光電変換装置に係る実施形態を示した断面図である。光電変換装置X1は、一主面同士が対向するように配置された一対の基板(以下、第1の基板1、第2の基板8とする)と、第1の基板1および第2の基板8の一主面にそれぞれ第1の電極2および第2の電極7が形成されている。また、光電変換装置X1は、第1の基板1と第2の基板8の一主面間における間隙内に電解質4が配されている。言い換えれば、電解質4は、第1の電極2と第2の電極7との間に挟まれるように配されている。また、第1の電極2上には、図示しない色素が坦持された半導体層3が形成されている。また、図示していないが第2の基板8および第2の電極7には、外部から電解質4を注入するために注入孔が形成されていてもよい。また、第2の電極7上には、図示しないプラチナ、パラジウム等の貴金属やPEDOT:TsO(ポリエチレンジオキシチオフェン−トルエンスルフォネート)、カーボン等の有機材料からなる触媒が形成されていてもよい。
この電解質4は、ヨウ素等からなり、腐食性が高いため、接合部材6と離間させて形成する。この離間により空隙5を形成する。この空隙5とは、気体で満たされた隙間、または真空状の隙間をいう。この空隙5は熱伝導性が低いため、有機成分を含む電解質4を形成させた後、接合部材6を局所的に加熱し、この接合部材6により第1の基板1および第2の基板8を接合しても、電解質4への熱伝導を有効に抑制することができる。その結果、電解質4が熱で劣化したり気化したりするのを抑制することができる。そのため、接合部材6として、有機材料から成る接着材よりも比較的融点の高い、ガラスフリットやハンダなどの無機材による接合も可能となる。この接合部材6の局所加熱には、超音波、光、レーザー、マイクロ波、熱プローブ等が使用できる。
また、電解質4と接合部材6の間に空隙5が存在するため、空隙5により電解質4の熱膨張の応力を吸収、緩和し、封止を長期間維持することができる。
さらに、接合部材6が電解質4と空隙5を介して設けられているため、腐食性の高い電解質4に接合部材6が接触せず、電解質4による接合部材6の劣化、溶出等を抑制できる。逆に、電解質4中への接合部材6の溶出が抑制できるため、電解質4の劣化も抑制でき、光電変換特性を長期間維持することができる。また、接合部材6に電解質4が接触しないため、電解質4により接合部材6の表面が汚れず、電解質4と接合部材6を同時に封じることができ、工程を簡略することができる。
この空隙5は、接合部材6で封止した際の熱が電解質4へ伝達するのをより効果的に抑制するという観点からは、接合部材6よりも熱伝導率の低い物質が充填されているか、または、真空となっている。なお、この接合部材6よりも熱伝導率の低い物質としては、特に、空気、窒素、酸素、および、電解質に含まれる溶媒の蒸気および電解質に含まれる溶質の蒸気からなる群から選択された少なくとも1種類で充たされていることが好ましい。
以下に、上述した参考例としての実施の形態に係る光電変換装置を構成する部材の詳細を示す。
<第1および第2の基板>
第1の基板1は、一主面上で第1の電極2、および該第1の電極2上に配置された半導体層3を支持するものである。また、第1の基板1は、主として光が入射される側に設けられるため、透光性を有している透光性基板である。
この第1の基板1の材質としては、例えば、可視光に対して透光性を有する青板ガラス、白板ガラス、無アルカリガラス等のガラス材料、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂材料が挙げられる。
第2の基板8は、一主面上で第2の電極7を支持するための支持基板である。この第2の基板8は、第1の基板1と同様に透光性を有する材質である青板ガラス、白板ガラス、無アルカリガラス等のガラス材料、またはPET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂材料で構成されていれば、光の入射面(受光面)をより拡大し、光電変換効率を高めることができる。また、この第2の基板8は、光の入射側に位置していなくとも良いため、透光性が小さいものであってもよい。このような透光性が小さい材質としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、ニッケル、タングステン、ステンレスまたはアルミニウム合金等の金属材料が挙げられる。このような導電性を有する金属材料であれば、第1の基板1自体が電極として作用するため、第2の電極7は不要となり、部品点数を低減できる。また、第2の基板8が金属の場合は、電解質4に対する耐食性を向上させるという観点から、チタン、ニッケル、タングステン、アルミで構成すると好適である。
<第1および第2の電極>
第1の電極2は、半導体層3で発電された電流を取りだす機能を有し、第1の基板1の一主面に設けられている。この第1の電極2は、第1の基板1の他主面側から光が入射されるため、可視光に対して透光性を有するほうが好ましい。
第1の電極2の材質としては、例えば、ITO(錫ドープインジウム酸化物:酸化インジウム錫)層、FTO(フッ素ドープ錫酸化物)層、ドープ酸化錫層、酸化錫層からなる群から選択された少なくとも1種類から形成される。また、第1の電極2の厚みは、製造の簡易さ、および適度なシート抵抗とするという観点から、0.3〜2μm程度がよい。このような第1の電極2は、例えば、CVD法、スパッタリング法、スプレー法等によって層状に形成される。
第2の電極7は、電解質4に電荷を渡すためのものであり、第2の基板8の一主面に設けられている。この第2の電極7の材質としては、第2の基板8も受光部として利用するのであれば、第1の電極2と同じ材料、即ち、上述した透光性を有する材料を用いればよい。一方、第2の基板8から光を受光しないのであれば、第2の電極7は、透光性材料で構成しなくてもよく、例えば、チタン、ニッケル、ステンレス、アルミ、アルミニウム合金またはタングステン等の金属材料で構成してもよい。
また、第2の電極7は、電解質4との接触面にプラチナ、パラジウム、ルテニウム、オスミニウム、ロジウム、イリジウム等や、カーボン、PEDOT:TsO(ポリエチレンジオキシチオフェン−トルエンスルフォネート)等から成る図示していない触媒層を形成すれば、電解質4への電荷移動を効率良く行うことができる。
<電解質>
電解質4は、第2の電極7から受けとった電荷を、半導体層3に坦持された色素に渡す機能を有している。
電解質4は、例えば、有機溶媒にレドックス材料を添加したものである。このような有機溶媒としては、アセトニトリル、メトキシアセトニトリル、メトキシプオピオニトリル、バレロニトリル等のニトリル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の炭酸エステル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等の非プロトン極性溶媒類が挙げられ、これらの溶媒は単独でも2種以上の混合物を用いてもよい。好ましくは、電解質4に用いられる有機溶媒は、揮発性有機溶媒およびイオン液体から選ばれた少なくとも一種を含むのがよい。これにより、レドックスのイオンの拡散定数が大きくなり、発電効率を高くすることができる。なお、本実施形態における揮発性有機溶媒とは、260℃以下の沸点を有する溶媒を言う。一般に揮発性のある有機溶媒は分子が小さく、分極によるモーメントが大きくなり易いため、イオンの拡散定数が大きくなりやすい。
また、上記有機溶媒に添加されるレドックス材料としては、ヨウ化リチウム、ヨウ化マグネシウム、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイド、ブチルメチルイミドゾリウムアイオダイド、N−メチルベンズイミドゾール、4−tert−ブチルピリジン、グアニジウムチオシアネート等が挙げられる。
電解質4は、好ましくは、粘度0.1Pa・s(25℃、ずり速度26sec−1、B型粘度計10rpm)以上である電解質4であるか、もしくはゲル状電解質4であるか、または固体電解質4でのがあるのがよい。また、チキソトロピー指数TI(TI=η12)(η1はずり速度が1sec−1の時の粘度、10η2はずり速度が10sec−1の時の粘度)は1以上5未満がよい。電解質4の流動を抑え良好に空隙5を形成するという観点からは、TIが1以上であるのがよい。また、電解質4を良好に塗布形成するという観点からはTIが5以下であるのがよい。これにより、第1の基板1もしくは第2の基板8のいずれかに電解質4を形成した後、電解質4が流れ出る前に第1の基板1並びに第2の基板8で電解質4を挟み込むことができる。そのため、電解液注入孔等が不要となり、部材簡略化、工程簡略化が出来る。
なお、ゲル状電解質又は固体電解質というのは、静置した場合に、流動性を有しない状態をいう。ゲル状電解質4又は固体電解質4は、例えば、ヨウ素/ヨウ化物塩、臭素/臭化物塩、コバルト錯体、フェロシアン化カリウム等の電解液にゲル化剤を添加することにより得られる。なお、「ヨウ素/ヨウ化物塩」という表記は、電解質の化学反応によってヨウ素とヨウ化物塩の含有率が変化するものであることを意味する。
このゲル状電解質4のゲル化剤は、例えば、層状粘土鉱物、有機化液状層状粘土鉱物、クレイ、タルク、酸化チタン等のナノ粒子などの無機ゲル化剤やジェラン等の多糖類(電解液)、ポリビニリデンフルオダイド-コ-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニルピリジン、ポリアクリル酸などの有機ゲル化等を用いることができ、注入後に固体になるようなものであってもよい。層状粘土鉱物、有機化液状層状粘土鉱物、クレイ、タルクとしては、ケイ酸四面体が2次元シート状に結合したフィロケイ酸塩の使用が好ましく、具体的には、例えばスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト系粘土鉱物、マイカなどの、天然又は合成の粘土鉱物を挙げることができる。
粘度0.1Pa・s以上である電解質4、又はゲル状電解質4、又は固体電解質4は、色素を担持した半導体層3を形成した第1の電極2あるいは第2の電極7にゲル状電解質4又は固体電解質4をスクリーン印刷、メタルマスク印刷、ドクターブレード塗布、ディスペンサ塗布、スプレー塗布、ローラ塗布、カレンダー塗布、インクジェット塗布、ダイコーター等で塗布してもよい。また、電解質4の厚み、即ち、第1の基板1の一主面と第2の基板8の一主面との間の距離は、1〜500μm程度がよい。
<空隙および接合部材>
電解質4の外周に沿って形成された空隙5は、気体で満たされているか、または真空である。好ましくは、空隙5は、空気、窒素、酸素、溶媒蒸気、電解質揮発成分からなる群から選択された少なくとも1種類から形成されているのがよい。これにより、電解質4の特性を長期にわたり良好に維持することができる。
接合部材6は第1の基板1と第2の基板8との間に電解質4を気密に閉じ込めるべく、空隙5の周囲に配され、電解質4成分の外部への漏れを抑制するための部材である。接合部材6は、ガラス、金属等の無機材を含む。これにより、気密性を高めることができ、電解質成分の漏洩、および外界の水分や酸素等の浸入を抑制することができる。その結果、太陽電池の特性劣化を抑制することができる。特に接合部材6がガラスを含む場合、ガラ
ス等からなる基板との熱膨張を合わせることができ、封止の長期信頼性を高めることができる。接合部材6として、燐酸系、ビスマス系あるいはバナジウム系のガラスフリットを用いると、例えばソーダライムガラスの歪点以下である500℃以下で封着が可能であるため、熱歪みを小さくでき、封止の長期信頼性を高めることができ好ましい。また、ガラスを含む接合部材6は仮焼成後の膜厚により、第1の基板1と第2の基板8との間のギャップを制御することもできる。また、アルミナ等の高融点のフィラーを添加した接合部材6でもギャップを制御することもできる。
接合部材6による第1の基板1と第2の基板8との接着は圧着、湿気硬化封着、熱封着、UV封着、レーザー封着、光封着、超音波封着、マイクロ波封着でもよい。接合部材6は軟化点が第1の基板1および第2の基板8の軟化点あるいは歪点よりも低い方がよい。これにより、例えば、接合部材6をマイクロ波加熱やレーザー加熱により選択的に熔融でき、第1の基板1と第2の基板8とを良好に接着、封止することができる。接合部材6をマイクロ波加熱する場合、接合部材6にはマイクロ波を選択的に吸収するマイクロ波吸収体を含めた方がよい。また、接合部材6をレーザー加熱する場合、接合部材6にはレーザー光を吸収する光吸収体を含めた方がよい。
また、接合部材6は、400〜2400nmの領域のいずれかの波長に対する吸収係数が透光性基板である第1の基板1よりも大きいことが好ましい。太陽電池の場合、400〜2400nmの太陽光を利用する必要があり、透光性基板は400〜2400nmの光を透過することができる。このような構成により、400〜2400nmの光を照射して接合部材6を選択的に加熱することができ、電解質4への熱伝導を抑制しながら接合部材6による封止を良好に行うことができる。
このような接合部材6は、ガラス等のマトリックス材料にレーザー吸収成分等の光吸収体を含有させることによって構成る。光吸収体の種類や含有量を調整することにより、接合部材6の光吸収係数を容易に制御することができる。よって、接合部材6の熔解、封着に必要な膜厚に対する熱量、光エネルギーを容易に制御でき、信頼性の高い封着を可能とすることができる。
また、接合部材6の材質としては、レーザ吸収成分とガラス成分を含むガラスフリットであることが好ましい。このレーザ吸収成分は、レーザ光を選択的に吸収し、そのエネルギーを熱に変換することでガラスフリットを効率よく熔融し、焼結させる役割を担う。このレーザ吸収成分は、ガラスフリットを成すマトリックスの一部として熔融されていることが好ましいが、マトリックス中に偏析していてもよい。また、接合部材6のガ
ラスフリットの熱膨張係数は、第2の基板8の熱膨張係数と近くなるようにすれば、クラック等の不具合の発生を低減することができる。ガラスフリットを成すガラス成分としては、例えば、燐酸系、ビスマス系、バナジウム系、SiO−Bi−MO系、B−Bi−MO系、SiO−CaO−Na(K)O−MO系、P−MgO−MO系(Mは一種以上の金属元素で、Xは整数である。)などが挙げられる。また、レーザ吸収成分としては、例えば、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、もしくは銅の体、またはこれら2種以上の化合物である
接合部材6は金属を含むことが好ましい。金属としては、低融点金属、低融点合金、易融合金、ハンダ、錫合金、ビスマス合金、鉛合金、ガリウム合金、カドミウム合金、セラソルザ(黒田テクノ(株)製)からなる群から選択された少なくとも1種類から形成されているのがよい。また、接合部材6には、熱膨張率調整にアルミナ、珪酸ジルコニウム等、着色に顔料等、第1の電極2と第2の電極7間のギャップ制御にアルミナ、石英等のフィラーを含んでもよい。これにより、封止の信頼性を高めることができる。また、電気加熱、超音波加熱、マイクロ波加熱、超音波と電気加熱との併用、レーザー加熱、光加熱等により、第1の基板1や第2の基板8の歪点よりも低い温度にて、第1の基板1と第2の基板8とを接合することができるので、第1の基板1や第2の基板8に熱歪あるいは熱応力が生じるのを低減することができ、封止の信頼性をより向上することができる。例えば、封止部材7がセラソルザの場合、超音波はんだ付け装置を用いることにより、短時間のうちに界面の空気層を除去する超音波振動エネルギーと熱により、接合部材6をFTO(フッ素ドープ酸化錫)の第1の電極2あるいは第2の電極7およびソーダーガラスの第1の基板1あるいは第2の基板8およびガラスフリット等の台部9(後述する図2等で用いる台部9をいう)に容易に接着することができ、信頼性の高い封着を可能とすることができる。
<半導体層>
半導体層3は、色素を担持する機能を有する多孔質体で構成されている。このように多孔質の半導体層3は、表面積が大きく、色素をより多く担持(吸着)させることができるため、効率良く光を吸収して光電変換効率向上に寄与する。半導体層3は図1の光電変換装置X1では透光性基板1側に設けられているが、支持基板8側に設けられていてもよい。
このような多孔質の半導体層3の材料としては、例えば、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、ニオブ(Nb)、インジウム(In)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、バナジウム(V)、タングステン(W)等の金属の少なくとも1種の金属酸化物半導体がよく、また窒素(N)、炭素(C)、弗素(F)、硫黄(S)、塩素(Cl)、リン(P)等の非金属元素の1種以上を含有していてもよい。特に、酸化チタンは、電子エネルギーバンドギャップが可視光のエネルギーより大きい2〜5eVの範囲にあり、好ましい。また、多孔質の半導体層は、電子エネルギー準位においてその伝導帯が色素の伝導帯よりも低いn型半導体がよい。
また、半導体層3は、多孔質体であるため、内部に微細な空孔(空孔径が好ましくは10〜40nm程度のもの)を多数有している。また、半導体層3の厚みは、光電変換作用を最適化するという観点から、1〜50μmがよく、より好適には10〜30μmがよい。また、半導体層3と第1の電極2との間に、酸化チタンや酸化ニオブ等のn型酸化物半導体の極薄(厚み200nm程度)の緻密層を挿入するとよく、逆電流を抑制する効果があり、変換効率を向上することができる。
色素は、例えば、ルテニウム−トリス、ルテニウム−ビス、オスミウム−トリス、オスミウム−ビス型の遷移金属錯体、多核錯体、またはルテニウム−シス−ジアクア−ビピリジル錯体、またはフタロシアニンやポルフィリン、多環芳香族化合物、ローダミンB等のキサンテン系のものを用いること色素が好ましい。
多孔質の半導体層3に色素を吸着させるためには、色素に少なくとも1個以上のカルボキシル基、スルホニル基、ヒドロキサム酸基、アルコキシ基、アリール基、ホスホリル基等を置換基として有することが有効である。ここで、置換基は色素自体を多孔質の半導体層3に強固に化学吸着させることができ、励起状態の増感色素から多孔質の半導体層3へ容易に電荷移動できるものであればよい。
半導体層3に色素を吸着させる方法としては、例えば、第1の基板1上に形成された半導体層3を、色素を溶解した溶液に浸漬する方法が挙げられる。半導体層3に色素を吸着させる際、色素を溶解させる溶液の溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル等のエーテル類、アセトニトリル等の窒素化合物等を1種または2種以上混合したものが挙げられる。溶液中の色素の濃度は5×10-5〜2×10-3mol/l(l(リットル):1000cm3)程度が好ましい。
次に、参考例としての他の実施の形態について説明する。
図2は、参考例としての光電変換装置に係る実施形態を示した断面図である。光電変換装置X2は、接合部材6が台部9の上に形成されている点で光電変換装置X1と相違する。台部9は第1の基板1の主面または第2の基板8の主面から突出した台状の部位のことである。台部9は数μm程度の薄膜状のものも含む。
光電変換装置X2では、台部9を設けることにより、接合部材6の膜厚を薄くすることができる。これにより、例えば、接合部材6の場合、マイクロ波あるいはレーザー光により接合部材6を熔融する熱量が少なくでき、熱歪が小さい状態で接合部材6による第1の基板1と台部9との封着ができ、気密封止の信頼性を高めることができる。
台部9は、第1の基板1および第2の基板8の少なくとも一方に形成することができる。台部9はガラス、ガラスフリット、金属からなる群から選択された少なくとも1種類から形成されていることが、気密封止の信頼性を高める上で好ましい。
台部9の軟化点は、この台部9が設けられている第1の基板1の軟化点またはこの台部9が設けられている第2の基板8の軟化点よりも低い方がよい。すなわち、台部9が第1の基板1に設けられている場合、台部9の軟化点は第1の基板1の軟化点よりも低い方がよい。また、台部9が第2の基板8に設けられている場合、台部9の軟化点は第2の基板8の軟化点よりも低い方がよい。これにより、台部9を加熱して熔融させ、台部9を第1の基板1または第2の基板8に接合する際、第1の基板1または第2の基板8に歪が生じるのを抑制でき、気密封止の信頼性を高めることができる。台部9は第1の電極2あるいは第2の電極7と接合部材6とを絶縁するために配置する。台部9は第1の基板1あるいは第2の基板8の歪点よりも低い融点の材料が良い。さらに、台部9は第1の電極2と第2の電極7が不可逆的に高抵抗化する温度よりも低い融点の材料が良い。また、台部9は絶縁性だけでなく、封止性を兼ね備える材料が良い。台部9として、金属酸化物薄膜、金属酸化物ナノ粒子、低融点ガラス、低融点ガラスフリットが良い。台部9は特に低融点ガラスフリットの鉛系ガラスフリット(PbO−B系等)、ビスマス系ガラスフリット(SiO−Bi−MO系、B−Bi−MO系(Mは一種以上の金属元素で、Xは整数である。)、Bi−SnO系、Bi−B系、Bi−B−BaO系、Bi−ZnO−SiO−B系等)、バナジウム系ガラスフリット(V−ZnO−BaO系等)、燐酸系ガラスフリット(P−SnO系、P−CuO系、P−MgO−MO系(Mは一種以上の金属元素で、Xは整数である。)等)、ホウ珪酸系ガラスフリット(B−SiO系等)、亜鉛系ガラスフリット(ZnO−SiO−B−RO系等)等が良い。また、台部9は熱膨張調整のためのアルミナ、珪酸ジルコニウム等、着色のための顔料等、第1の電極2と第2の電極7間のギャップ制御のためのアルミナ、石英等のフィラーを含んでも良い。
また、接合部材6の軟化点は、台部9よりも低い方がよい。これにより、接合部材6を選択的に熔融させることができ、台部9に熱歪が生じるのを抑制し、接合部に応力が生じるのを抑制できる。
また、接合部材6は、400〜2400nmの領域のいずれかの波長に対する吸収係数が台部9よりも大きいことが好ましい。これにより、400〜2400nmのレーザー光を照射して接合部材6を選択的に加熱することができ、電解質4の熱伝導を抑制しながら接合部材6による封止を行うことができる。
台部9が第1の基板1に設けられている場合、第1の基板1の主面に形成されている第1の電極2は、台部9と第1の基板1との界面に延出している。これにより、容易に光電変換の出力を取り出すことができる。なお、同様の観点から、台部9が第2の基板8に設けられている場合、第2の基板8の主面に形成されている第2の電極7は、台部9と第2の基板8との界面に延出している。
接合部材6が金属を含む場合、接合部材6の材質としてはインジウム、鉛、ビスマス、銀、スズ系合金、インジウム系合金、ビスマス系合金、銀系合金、スズ−ビスマス系合金、スズ−鉛系合金、スズ−銀系合金、スズ−銅系合金、スズ−銀−銅系合金、インジウム−銀系合金、金−スズ系合金、セラソルザ(黒田テクノ(株)製)などが挙げられる。さらに接合部材6の外部からの腐蝕等を抑制するために、外側に保護材を被覆させてもよい。
接合部材6が金属を含む場合、台部9は絶縁性である。これにより、第1の電極2または第2の電極7の光電変換装置の外表面への引き出しを良好に行うことができる。すなわち、第1の電極2または第2の電極7が接合部材6と接触してショート等の不良が生じるのを抑制できる。このような絶縁性の台部9は、絶縁性と封止性をともに高めるという観点から、ガラスを含むことが好ましい。
次に、参考例としての他の実施の形態について説明する。
図3は、参考例としての光電変換装置に係る実施形態を示した断面図である。光電変換装置X3は、台部9が第1の基板1および第2の基板8のそれぞれに設けられており、接合部材6を台部9の間に形成している点で光電変換装置X2と相違する。
光電変換装置X3では、接合部材6を台部9の間に形成していることにより、接合部材6の膜厚を薄くすることができる。また、例えば、接合部材6の場合、マイクロ波あるいはレーザー光により接合部材6を熔融する熱量を少なくでき、熱歪が小さい状態で接合部材6による第1の基板1と台部9との封着ができ、気密封止の信頼性を高めることができる。さらに、接合部材6を中心に対称な部材構成で組めるため、接合歩留りを向上し、接合強度を高めることができる。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の光電変換装置に係る第の実施形態を示した断面図である。光電変換装置X4は、台部9が、接合部材6の幅(図4における電解質4側の側面とその反対側の側面との間の厚み)よりも広い幅を有している点で光電変換装置X3と相違する。これにより、接合部材6が金属を含む場合、接合部材6が広がって第1の電極2または第2の電極7に接触することを有効に抑制できる。
次に、参考例としての他の実施の形態について説明する。
図5は、参考例としての光電変換装置に係る実施形態を示した断面図である。光電変換装置X5は、接合部材6の外側に保護材10を設けている点で光電変換装置X1と相違する。光電変換装置X5では、接合部材6の外側に保護材10を設けていることにより、外界の水、酸素、酸、衝撃、振動等の化学的、機械的刺激に対し、保護材10によって接合部材6を保護し、長期信頼性を向上することができる。このような保護材10は、ポリエチレン、変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソブチレン樹脂、シリコーン樹脂またはアクリレート樹脂等の樹脂材料あるいは熱可塑性樹脂、熱硬化樹脂、光硬化樹脂、光熱硬化樹脂、湿気硬化樹脂、二液混合硬化樹脂が好ましい。また、この保護材10は、接合部材6の機械的強度を高めるという観点から、必要に応じてフィラー等を含有させてもよい。
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図6は、本発明の光電変換装置に係る第の実施形態を示した断面図である。光電変換装置X6は、光電変換装置X4の接合部材6の外側に保護材10を設けている。これにより、接合部材6の広がりを抑制できるとともに接合部材6を保護して長期信頼性を高めることができる。
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。
図7は、本発明の光電変換装置に係る第の実施形態を示した断面図である。光電変換装置X7は、接合部材6が第1の基板1と第2の基板8の少なくとも一方からはみ出し(図7では両方からはみ出している)、第1の基板1の側面または第2の基板8の側面と接合している点で光電変換装置X1と相違する。
これより、第1の基板1の側面または第2の基板8の側面から直接、接合部材6を超音波・熱加熱併用等により熔融することができるため、接合部材6周辺の部材の加熱を低減することができ、接合部への熱歪を低減できるため、第1の基板1や第2の基板8のクラック、接合部材6のクラックや剥離等の封止歩留りを向上することができ、長期信頼性も向上することができる。さらに、例えば、第1の基板1上の第1の電極2あるいは第2の基板8上の第2の電極7の一部を除去し、絶縁部11を設けることにより、接合部材6が金属を含む場合、接合部材6による第1の電極2と第2の電極7との短絡を抑制することができる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何等差し支えない。例えば、光電変換装置X1〜X7において、半導体層3は透光性基板である第1の基板1側でなく、支持基板である第2の基板8側に設けてもよく、第1の基板1側と第2の基板8側の両方に設けてもよい。また、光電変換装置X2〜X4、X6,X7における台部10は、接合部材6の全周に沿って枠状に形成してもよく、例えば、第1の電極2や第2の電極8と重なる部位のみに部分的に形成してもよい。
X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7:光電変換装置
1:第1の基板(透光性基板)
2:第1の電極
3:半導体層
4:電解質
5:空隙
6:接合部材
7:第2の電極
8:第2の基板(支持基板)
9:台部
10:保護材
11:絶縁部

Claims (8)

  1. 第1の主面を有する透光性基板と、
    前記第1の主面に対向する第2の主面を有する支持基板と、
    前記透光性基板の第1の主面および前記支持基板の第2の主面に形成された電極と、
    前記透光性基板と前記支持基板間で形成された間隙内に配された電解質と、
    前記電解質と空隙を介して配置された、前記透光性基板の第1の主面に形成された電極と前記支持基板の第2の主面に形成された電極とを接合する接合部材と、を具備しており、前記接合部材は、クロム、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、もしくは銅の単体、またはこれら2種以上の化合物、およびガラスを含んでいるとともに、前記透光性基板の第1の主面に形成された電極と前記接合部材との間、および前記支持基板の第2の主面に形成された電極と前記接合部材との間、の少なくとも一方に絶縁性の台部を具備しており、
    該台部は、前記接合部材の幅よりも広い幅を有していることを特徴とする光電変換装置。
  2. 記接合部材は、400〜2400nmの領域のいずれかの波長に対する吸収係数が前記台部よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 前記台部は、前記透光性基板と前記支持基板のそれぞれに設けられていることを特徴とする請求項に記載の光電変換装置。
  4. 前記接合部材の軟化点は、前記台部の軟化点よりも低いことを特徴とする請求項またはに記載の光電変換装置。
  5. 前記台部の軟化点は、前記台部が設けられた前記透光性基板の軟化点または前記台部が設けられた前記支持基板の軟化点よりも低いことを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の光電変換装置。
  6. 前記台部はガラスを含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置。
  7. 前記電解質は、揮発性有機溶媒およびイオン液体から選ばれた少なくとも一種を含み、粘度0.1Pa・s以上の電解質、もしくはゲル状電解質であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の光電変換装置。
  8. 前記電解質は、固体電解質であることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載の光電変換装置。
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