JP5477071B2 - 湿潤時に潤滑性を有する医療用具 - Google Patents

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Description

本発明は、湿潤時に潤滑性を有する医療用具に関し、特に、造影剤を含有するポリウレタン層が形成された医療用具の表面に対して、耐久性に優れた潤滑性を付与する技術に関する。
従来から、医療分野においては、カテーテルや、そのようなカテーテルを案内するためのガイドワイヤ等の医療用具が広く使用されている。それらカテーテルやガイドワイヤ等の医療用具は、血管、消化管、尿管、気管、胆管、その他の体腔あるいは組織中に挿入されて使用されるため、組織を損傷させず、目的部位まで確実に挿入できることが必要とされている。また、組織内に留置している間に、摩擦によって粘膜等を損傷したり、炎症を引き起こしたりすることがないように、医療用具の表面に、低摩擦性の親水性被覆を設ける等して、潤滑性を付与することが要求されている。
そのような要求に応えるため、特公平1−33181号公報(特許文献1)には、医療用具を構成する基材の表面に存在する反応性官能基と、無水マレイン酸系高分子物質とを共有結合させることで、湿潤時に表面が潤滑性を発現するようにした医療用具が提案されている。
また、特開平3−236853号公報(特許文献2)には、医療用具(医療用体内挿入具)を構成する基材の表面を、ジイソシアネートで部分架橋させた無水マレイン酸共重合体ハーフエステルまたはその誘導体で被覆することにより、水の存在下で湿潤性を発現するようにした医療用具が提案されている。しかしながら、これらの医療用具の基材表面には、X線存在下における造影が可能となるように、造影剤が含有された樹脂層(樹脂被膜)が形成されていることがあり、そのような造影剤が含有された樹脂層を有する医療用具に対して上述被覆を施しても、当初は潤滑性を発現するものの、繰り返しの摺動により摺動抵抗が大きく上昇して潤滑性が低下する傾向があり、耐久性の点において改善が必要であった。
特公平1−33181号公報 特開平3−236854号公報
ここにおいて、本発明は、上記事情を背景にして為されたものであって、その解決課題は、湿潤時に潤滑性を発現し、かつ繰り返し摺動しても容易に潤滑性が低下しない耐久性に優れた医療用具を提供することにある。
そして、本発明者らは、上記課題を解決するために、種々検討を重ねた結果、医療用具の基材表面に含有される造影剤が原因で、潤滑性能が大きく低下することを見いだした。そして、そのような造影剤を含有する医療用具の外周面上に、ウレタン系高分子層と形成した後、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートを含有する溶液をコーティングすることにより、水または体液との接触時に優れた表面潤滑性を発現し、しかも、繰り返し摺動した場合においてもその潤滑性が容易に低下しないことを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて為されたものであって、その特徴とするところは、造影剤を含有する樹脂層が形成された医療用具の外周面上に、ウレタン系高分子層が設けられ、さらに該ウレタン系高分子層の外周面上に、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートを含有する溶液をコーティングすることにより無水マレイン酸系高分子層が積層されていることを特徴とする湿潤時に潤滑性を有する医療用具にある。
また、本発明に係る医療用具の好ましい態様では、前記無水マレイン酸系高分子が、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体ハーフエステル化物である。
更に、本発明に係る医療用具の別の好ましい態様では、前記ウレタン系高分子層が、ウレタン系高分子とポリイソシアネートとを含有する溶液を用いて形成されている。
加えて、本発明に係る医療用具の好ましい態様では、前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートである。
また、本発明に係る医療用具の別の好ましい態様では、前記造影剤を含有する樹脂層が、硫酸バリウムを含有するポリウレタン層である。
なお、本発明に係る医療用具としては、例えば、ガイドワイヤ、カテーテルを挙げることができる。
このように、本発明に係る医療用具にあっては、造影剤を含有する樹脂層が形成された医療用具の外周面上に、まずウレタン系高分子層が形成され、さらにそのウレタン系高分子層の外周面上に、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートを含有する溶液をコーティングすることによって、無水マレイン酸系高分子層が積層されているところから、湿潤時に潤滑性を有するだけでなく、繰り返し摺動によっても、良好な潤滑性が持続し、耐久性に優れたものとなる。
本発明に従う医療用具の一例としてのガイドワイヤを示す軸直角断面説明図である。 実施例における表面潤滑性試験の説明図である。 実施例における表面潤滑性試験の結果を示すグラフである。
本発明における医療用具は、その表面に潤滑性が必要とされる医療用具であって、例えば、PTCAバルーンカテーテル、PTAバルーンカテーテル、造影用カテーテル、カテーテル導入管、マイクロカテーテル等のカテーテル、ガイドワイヤを挙げることができる。以下では、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
まず、図1には、本発明に従う医療用具の一例としてのガイドワイヤ10が、軸直角方向の断面形態において模式的に示されている。そこにおいて、12は、Ni−Ti等の金属製基材からなる芯線であり、この芯線12の外周面上には、造影剤13を含む樹脂層14が形成されている。ここで、樹脂層14に含有される造影剤13としては、硫酸バリウムやタングステン等の公知の造影剤を挙げることができる。
そして、本発明においては、上記造影剤13を含む樹脂層14の外周面上に、ウレタン系高分子層16が形成され、更に、その外周面上に、無水マレイン酸系高分子層18が、それぞれ所定厚さで、積層形成されている。これにより、親水性コーティング膜としての無水マレイン酸系高分子層18が、繰り返し摺動によって剥離するようなことが防止され、湿潤時の潤滑性が有利に維持されるようになっている。
より具体的には、本実施形態のガイドワイヤ10において、ウレタン系高分子層16は、ウレタン系高分子を含む被膜であって、例えば、ウレタン系高分子を溶解させた溶液をコーティングすることによって形成される。
ここで、ウレタン系高分子としては、例えば、ウレタン系熱硬化性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)を挙げることができ、中でも、常温でゴム弾性を有し、且つ加工が容易であるといった観点から、TPUが好適に採用される。そのようなTPUの市販品としては、例えば、ダウケミカル社製のペレセン2363−80AE、日本ミラクトラン社製のミラクトランE380などを挙げることができる。
上記ウレタン系高分子を溶解する溶媒としては、ウレタン系高分子を溶解することができるものが用いられ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランや、それらの混合溶媒などを挙げることができ、使用するウレタン系高分子によって適宜に選択される。
また、上記ウレタン系高分子を溶解した溶液には、ウレタン系高分子に加えて、ポリイソシアネートが含有されることが望ましい。ポリイソシアネートを添加させることによって、ウレタン系高分子のみの場合に比べて、生産ロット毎の摺動抵抗のばらつきが低減されて、医療用具の生産安定性が高められるようになる。なお、ポリイソシアネートとしては、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを挙げることができる。また、ウレタン系高分子とポリイソシアネートの配合割合は、使用するウレタン系高分子とポリイソシアネートの種類によって適宜に設定され、通常、重量基準にて、3:0〜3:1、より好ましくは3:0.5〜3:1.5の割合とされる。
また、上記ウレタン系高分子層16の外周面上に積層される無水マレイン酸系高分子層18は、医療用具の最外周面を構成する被膜であって、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートを含有する溶液をコーティングすることによって形成される。無水マレイン酸系高分子によって、医療用具の表面に優れた潤滑性が付与されると共に、ポリイソシアネートを加えることによって、無水マレイン酸系高分子層18が強化されて、繰り返し摺動に対する耐久性が有利に高められるといった効果が得られる。
ここで、無水マレイン酸系高分子としては、例えば、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合体、エチレン・無水マレイン酸共重合体、1−オクタデセン・無水マレイン酸共重合体、スチレン・無水マレイン酸共重合体を挙げることができる。これらの中でも、強固な被膜を形成でき、有機溶媒との相溶性に優れるとの理由から、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体のハーフエステル化物、特に、下記化学式(I)にて示されるメチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体モノエチルエステル(MVE)が、好適に用いられる。
Figure 0005477071
〔式(I)中、n=12000〜13000〕
一方、ポリイソシアネートとしては、前述のウレタン系高分子を含有する溶液に添加されるポリイソシアネートと同様なものが用いられ得る。
これら無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートを溶解するための溶媒としては、前述したウレタン系高分子の溶媒と同様なものが、使用する無水マレイン酸系高分子やポリイソシアネートに応じて適宜に選択される。
また、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートの配合割合は、使用する無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートの種類によって適宜に設定され得、一般に、重量基準にて、4:1〜1:2の割合とされる。
ところで、図1に示されるガイドワイヤ10を製造するに際しては、例えば、以下のような手法が有利に採用される。
<第1工程> ウレタン系高分子層16の形成
まず、溶媒にウレタン系高分子を溶解させてウレタン系高分子溶液(ウレタン系高分子層形成用のコーティング溶液)を調製する。このとき、ウレタン系高分子の濃度は、1〜5w/v%程度とされることが望ましい。1w/v%未満の場合には、被膜の厚さが十分な厚さとならず、5w/v%を超えると、溶液の粘度が高くなりすぎて、均一な厚さの被膜を形成することが困難となるおそれがある。そして、かかるウレタン系高分子溶液に、造影剤13が含む樹脂層14が形成された医療用具(ここでは、ガイドワイヤ10)を浸漬することにより、樹脂層14の周りにウレタン系高分子層16が一体的に積層、形成される。浸漬操作は、通常、室温で1〜60秒間行われ、その後、室温で0.5〜2時間放置して被膜を乾燥させることが好ましい。
なお、ウレタン系高分子溶液にポリイソシアネートを添加する場合には、ポリイソシアネートの反応性を考慮して、ウレタン系高分子を溶媒に十分に溶解させた後、溶液に医療用具を浸漬する直前に、ポリイソシアネートをウレタン系高分子溶液に添加、混合することが望ましい。
<第2工程> 無水マレイン酸系高分子層18の形成
溶媒に無水マレイン酸系高分子を溶解させて無水マレイン酸系高分子溶液を調製する。このとき、無水マレイン酸系高分子の濃度が1〜5w/v%程度とされることが望ましい。1w/v%未満の場合には、被膜の厚さが十分な厚さとならず、5w/v%を超えると、溶液の粘度が高くなりすぎて、均一な厚さの被膜を形成することが困難となるおそれがある。
次いで、この無水マレイン酸系高分子溶液に、ポリイソシアネートを添加、混合することによって、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートとを含有する無水マレイン酸系高分子層形成用のコーティング溶液を調製する。このとき、ポリイソシアネートの濃度は、無水マレイン酸系高分子の濃度に応じて、所定の配合割合となるように、適宜に設定される。
そして、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートとを含有する無水マレイン酸系高分子層形成用溶液に、上記ウレタン系高分子層16が形成された医療用具(ここでは、ガイドワイヤ10)を浸漬することにより、ウレタン系高分子層16の周りに無水マレイン酸系高分子層18が一体的に積層、形成される。浸漬操作は、通常、室温で1〜60秒間行われ、その後、室温で1〜60分放置して溶媒をとばし被膜を乾燥させる。
<第3工程>
上記無水マレイン酸系高分子層18を設けた後、加熱処理を行って、架橋反応を促進させて各層間の結合力を高める。かかる加熱処理は、通常、30〜60℃、30〜60RHで、2〜4時間、行われる。
<第4工程>
その後、医療用具を、室温で水に2〜4時間浸漬させて親水化処理を施し、30〜60℃で1〜3時間加熱することにより、乾燥させる。
上述のようにして得られた医療用具にあっては、造影剤13を含む樹脂層14と最外層である無水マレイン酸系高分子層18との間に、ウレタン系高分子層16が形成されているところから、湿潤時に潤滑性を有するだけでなく、繰り返し摺動によっても、良好な潤滑性が持続し、耐久性に優れたものとなる。
以上、本発明の具体的な構成について、ガイドワイヤ10を例に挙げて詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎない。
例えば、医療用具としては、ガイドワイヤ10以外にも、表面に潤滑性が必要とされる医療用具であれば何れも適用でき、PTCAバルーンカテーテル、PTAバルーンカテーテル、造影用カテーテル、カテーテル導入管、マイクロカテーテル等のカテーテルにも適用できる。また、医療用具の外周面上に、造影剤13を含有する樹脂層14が形成されておれば、医療用具の基材本体は、その材質が何ら制限されるものではなく、上例の金属の他、例えば、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリアミド、PVC、ポリアクリレート、ポリスチレン、ラテックス等の高分子物質からなるものであってもよい。
また、上記具体例では、医療用具を高分子溶液に浸漬するディッピング法によって、ウレタン系高分子層16や無水マレイン酸系高分子層18が形成されていたが、スプレー法、スピンコーティング法、ロールコーティング法などの公知の被膜形成方法を採用することも可能である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれる。
以下に、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにするが、本発明は、そのような実施例の内容に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
(1)まず、医療用具として、Ni−Ti芯線の表面に、硫酸バリウムを造影剤として含有するポリウレタン層が予め形成されたガイドワイヤ(ジーマ製0.035inch,stiff)を準備し、その表面をエタノールで拭いた。
(2)THF溶媒に、ウレタン系高分子(ダウケミカル社製ペレセン2363−80AE)を溶解させて、3w/v%のウレタン系高分子溶液を調製した。
(3)このウレタン系高分子溶液に、1w/v%となるようにMDIを添加し、1分間撹拌して、ウレタン系高分子層用のコーティング溶液を調製した。
(4)調製後、直ちに、このコーティング溶液にガイドワイヤを1秒間浸漬し、室温で1時間乾燥させ、ウレタン系高分子層を形成した。
(5)次いで、THF溶媒に、MVE(ISP社製、ガントレッツAN−169をハーフモノエチルエステル化したもの。上記化学式(I)中、n=12681)を溶解させて、2.5w/v%のMVE溶液を調製した。
(6)このMVE溶液に、2.5w/v%となるようにMDIを添加し、1分間撹拌して、無水マレイン酸系高分子層用のコーティング溶液を調製した。
(7)調製後、直ちに、このコーティング溶液にウレタン系高分子層が形成されたガイドワイヤを1秒間浸漬し、室温で1分間乾燥させ、親水性被膜である無水マレイン酸系高分子層を積層した。
(8)その後、40℃、50%RHで4時間、加温加湿した。
(9)更に、室温の水に3時間浸漬した後、54℃で3時間加熱した。
(10)このようにして得られたガイドワイヤについて、後述する表面潤滑性試験を行い、得られた結果を、下記表1及び図3に示す。
<実施例2>
ウレタン系高分子層用のコーティング溶液にMDIを添加せず、上記実施例1の(3)の工程を行わなかった以外は、実施例1と同様にした。
<実施例3>
上記実施例1の(1)の工程において、ガイドワイヤとして、Ni−Ti芯線の表面に、タングステンを造影剤として含有するポリウレタン層が予め形成されたガイドワイヤ(ジーマ製0.035inch,stiff)を用い、上記実施例1の(2)の工程において、ウレタン系高分子として日本ミラクトラン社製のミラクトランE380を用い、上記実施例1の(6)及び(7)の工程において、MVE及びMDIの濃度をそれぞれ2w/v%とした以外は、実施例1と同様にした。
<比較例1>
(1)医療用具として、Ni−Ti芯線の表面に、硫酸バリウムを造影剤として含有するポリウレタン層が予め形成されたガイドワイヤ(ジーマ製0.035inch,stiff)を準備し、その表面をエタノールで拭いた。
(2)THF溶媒に、MVE(ISP社製ガントレッツAN−169をハーフモノエチルエステル化したもの)を溶解させて、2.5w/v%のMVE溶液を調製した。
(3)このMVE溶液に、2.5w/v%となるようにMDIを添加し、1分間撹拌して、無水マレイン酸系高分子層用のコーティング溶液を調製した。
(4)調製後、直ちに、このコーティング溶液にウレタン系高分子層が形成されたガイドワイヤを1秒間浸漬し、室温で1分間乾燥させ、親水性被膜である無水マレイン酸系高分子層を積層した。
(5)その後、40℃、50%RHで4時間、加温加湿した。
(6)更に、室温の水に3時間浸漬した後、54℃で3時間加熱した。
(7)このようにして得られたガイドワイヤについて、後述する表面潤滑性試験を行い、得られた結果を、下記表1及び図3に示す。
<比較例2>
上記比較例1の(3)の工程において、MDIの濃度を5w/v%とした以外は、比較例1と同様にした。
<比較例3>
上記比較例1の(1)の工程において、ガイドワイヤとして、Ni−Ti芯線の表面に、タングステンを造影剤として含有するポリウレタン層が予め形成されたガイドワイヤ(ジーマ製0.035inch,stiff)を用い、上記比較例1の(3)の工程において、MDIの濃度を5w/v%とした以外は、比較例1と同様にした。
<表面潤滑性試験>
表面潤滑性試験は、図2に示される試験装置を用いて行った。図2中、Aは容器、Bは治具、Cは錘であり、引張試験機としてインストロン5565型を用いた。約15cmの長さにカットしたガイドワイヤを、生理食塩水で満たした容器Aの所定位置に配置し、その上部を引張試験機に固定した。次いで、治具B(表面はポリウレタン)に100gの錘Cを乗せ、ガイドワイヤに荷重をかけた。その後、引張試験機を用いて速度8mm/s、20mm幅で繰り返し上下させ、初期、摺動回数20回、40回、60回、80回及び100回後の摩擦抵抗をそれぞれ5回ずつ測定し、平均値と標準偏差を下記表1に示した。なお、摩擦抵抗値(gf)は、上昇時の応力と下降時の応力の和の2分の1とした。
Figure 0005477071
上記表1および図3の結果からも明らかなように、本発明に従って、造影剤を含む樹脂層と無水マレイン酸系高分子層との間にウレタン系高分子層が形成された実施例1〜3にあっては、ウレタン系高分子層が形成されていない比較例1〜3に比べて、摺動抵抗値が大きく低下しており、潤滑性が良好であることがわかる。加えて、摺動回数が増えても、摺動抵抗値の増加が抑えられ、耐久性にも優れていることが認められる。
また、ウレタン系高分子層の形成にMDIが用いられた実施例1は、MDIが用いられていない実施例2に比べて標準偏差が小さくなっており、摺動抵抗のばらつきが抑制されている。
10 ガイドワイヤ
12 芯線
13 造影剤
14 樹脂層
16 ウレタン系高分子層
18 無水マレイン酸系高分子層

Claims (5)

  1. 造影剤を含有する樹脂層が形成された医療用具の外周面上に、ウレタン系高分子とポリイソシアネートとを含有する溶液を用いて形成されているウレタン系高分子層が設けられ、
    さらに該ウレタン系高分子層の外周面上に、無水マレイン酸系高分子とポリイソシアネートを含有する溶液をコーティングすることにより無水マレイン酸系高分子層が積層されていることを特徴とする湿潤時に潤滑性を有する医療用具。
  2. 前記無水マレイン酸系高分子が、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体ハーフエステル化物である請求項1記載の湿潤時に潤滑性を有する医療用具。
  3. 前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートである請求項1又は2の何れかに記載の湿潤時に潤滑性を有する医療用具。
  4. 前記造影剤を含有する樹脂層が、硫酸バリウムを含有するポリウレタン層である請求項1〜記載の湿潤時に潤滑性を有する医療用具。
  5. ガイドワイヤまたはカテーテルである請求項1〜の何れかに記載の湿潤時に潤滑性を有する医療用具。
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