JP5451937B2 - 基地局及びプロセッサ - Google Patents

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Description

本発明は、ヘテロジーニアスネットワークが適用される無線通信システムにおける基地局及びプロセッサに関する。
現在運用されている第3世代及び第3.5世代セルラ無線通信システムよりも高速・大容量の通信を実現する次世代システムとして、標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化されているLTE(Long Term Evolution)、及びLTEを高度化したLTE Advancedがある。
LTEシステム(LTE Advancedを含む)の下りリンクでは、無線基地局は、PDSCH(Physical Downlink Shared Channel)と称されるデータ伝送用チャネルを使用して、無線端末へのユーザデータを送信する。なお、下りリンクとは、無線基地局から無線端末へ向かう方向の通信であり、上りリンクとは、無線端末から無線基地局へ向かう方向の通信である。
また、LTE Advancedにおいては、高電力基地局(いわゆる、マクロセル基地局)の通信エリアに低電力基地局(いわゆる、ピコセル基地局や、フェムトセル基地局、リレーノード)が配置されるネットワークであるヘテロジーニアスネットワークの提供が検討されている。ヘテロジーニアスネットワークは、高電力基地局の負荷を低電力基地局に分散させることが可能である。
しかしながら、無線端末は複数の無線基地局のうち無線信号の受信電力が最も高いものに接続することが一般的であることから、ヘテロジーニアスネットワークにおいては、送信電力の低い低電力基地局に無線端末が接続する機会が少なくなる可能性がある。
このような事情に鑑みて、低電力基地局からの受信電力が最も高い状態でなくても無線端末を当該低電力基地局に接続するように制御することで、低電力基地局のカバレッジ(通信エリア範囲)を拡大する手法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
ところで、隣接する無線基地局間でデータ伝送用チャネルとして使用される無線リソースが重複する場合、一方の無線基地局のデータ伝送用チャネルが、他方の無線基地局のデータ伝送用チャネルからの干渉を受け、当該一方の無線基地局のデータ伝送用チャネルを介してユーザデータを正常に受信できなくなる可能性がある。
特に、ヘテロジーニアスネットワークにおいて低電力基地局のカバレッジを拡大する手法では、低電力基地局のデータ伝送用チャネルが高電力基地局のデータ伝送用チャネルから大きな干渉を受ける可能性が高いため、上記の問題がより一層深刻になる。
そこで、本発明は、ヘテロジーニアスネットワークにおける基地局間干渉を低減し、システム全体のスループットを改善できる基地局及びプロセッサを提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明に係る無線通信システムの特徴は、高電力基地局(例えばマクロセル基地局MeNB)と、前記高電力基地局の通信エリアに配置され、前記高電力基地局よりも送信電力が低い低電力基地局(例えばピコセル基地局PeNB)とを有する無線通信システム(無線通信システム1)であって、前記高電力基地局が特定の下りリンクチャネル(例えばPDSCH)として使用すべき無線リソースについて、第1の無線リソース(例えば使用可能PDSCHリソース又は通常電力PDSCHリソース)と、前記第1の無線リソースよりも送信電力が低くなるように制限される第2の無線リソース(例えば使用不能PDSCHリソース又は低電力PDSCHリソース)との比であるリソース分割比を決定する分割比決定部(分割比決定部123又は分割比決定部225)を備え、前記分割比決定部は、前記低電力基地局のトラフィック負荷に基づいて前記リソース分割比を決定することを要旨とする。ここで、特定の下りリンクチャネルとは、例えば下りリンクのデータ伝送用チャネル(LTEシステムではPDSCH)であるが、このようなデータ伝送用チャネルに限らず、下りリンクの制御情報伝送用チャネル(LTEシステムではPDCCH)等であってもよい。また、低電力基地局とは、例えばピコセル基地局又はフェムトセル基地局であるが、ピコセル基地局又はフェムトセル基地局に限らずリレーノード等であってもよい。
上記の特徴に係る無線通信システムによれば、高電力基地局が特定の下りリンクチャネルとして使用すべき無線リソースについて、第1の無線リソースと、当該第1の無線リソースよりも送信電力が低くなるように制限される第2の無線リソースとを設けている。高電力基地局の第2の無線リソースに対応する低電力基地局の無線リソースは、高電力基地局からの干渉が低減されるため、低電力基地局のスループットを改善できる。また、低電力基地局のトラフィック負荷に基づいてリソース分割比を決定することで、高電力基地局における第2の無線リソースと第1の無線リソースとの比を適切に設定でき、第2の無線リソースが過多になることを防止できる。これにより、低電力基地局のスループットを改善することに加え、高電力基地局のスループット低下も抑制できるため、システム全体のスループットを改善できる。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記高電力基地局に接続する無線端末に無線リソースを割り当てるリソース割り当て部(リソース割り当て部124)をさらに備え、前記第1の無線リソースは、前記高電力基地局が使用可能な無線リソース(例えば使用可能PDSCHリソース)であり、前記第2の無線リソースは、前記高電力基地局が使用不能な無線リソース(例えば使用不能PDSCHリソース)であり、前記リソース割り当て部は、前記分割比決定部により決定された前記リソース分割比に従って定められる前記第1の無線リソースの中から、前記高電力基地局に接続する無線端末に無線リソースを割り当てることを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記高電力基地局に接続する無線端末に無線リソースを割り当てるリソース割り当て部(リソース割り当て部124)をさらに備え、前記第1の無線リソースは、前記高電力基地局の送信電力が制限されない無線リソース(例えば通常電力PDSCHリソース)であり、前記第2の無線リソースは、前記高電力基地局の送信電力が制限される無線リソース(例えば低電力PDSCHリソース)であり、前記リソース割り当て部は、前記分割比決定部により決定された前記リソース分割比に従って定められる前記第1の無線リソース及び前記第2の無線リソースの中から、前記高電力基地局に接続する無線端末に無線リソースを割り当てることを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記分割比決定部は、前記高電力基地局の通信エリア内に前記低電力基地局が複数配置される場合に、各低電力基地局のトラフィック負荷の平均に基づいて前記リソース分割比を決定することを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記分割比決定部は、前記低電力基地局のトラフィック負荷と前記高電力基地局のトラフィック負荷とに基づいて、前記リソース分割比を決定することを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記分割比決定部は、前記第2の無線リソースと前記第1の無線リソースとの比が、前記低電力基地局のトラフィック負荷と前記高電力基地局のトラフィック負荷との比に等しくなるように、前記リソース分割比を決定することを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記分割比決定部は、前記高電力基地局のトラフィック負荷を一定とした場合に、前記低電力基地局のトラフィック負荷が高くなるほど、前記第2の無線リソースが多く、且つ前記第1の無線リソースが少なくなるように、前記リソース分割比を決定することを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記分割比決定部は、前記低電力基地局のトラフィック負荷を一定とした場合に、前記高電力基地局のトラフィック負荷が高くなるほど、前記第2の無線リソースが少なく、且つ前記第1の無線リソースが多くなるように、前記リソース分割比を決定することを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記特定の下りリンクチャネルは、無線端末へのユーザデータを伝送するデータ伝送用チャネルであることを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記第2の無線リソースは、下りリンクの総周波数帯域のうち少なくとも一部の周波数帯域であり、前記第1の無線リソースは、前記下りリンクの総周波数帯域のうち前記一部の周波数帯域を除いた残りの周波数帯域であることを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記一部の周波数帯域及び前記残りの周波数帯域のそれぞれは、無線端末が受信品質を測定する周波数単位(例えばサブバンド)の整数倍であることを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記第2の無線リソースは、下りリンクの通信時間枠(例えばサブフレーム)において無線端末へのユーザデータを伝送するためのデータ領域のうち少なくとも一部の時間範囲であり、前記第1の無線リソースは、前記データ領域のうち前記一部の時間範囲を除いた残りの時間範囲であることを要旨とする。
本発明に係る無線通信システムの他の特徴は、上記の特徴に係る無線通信システムにおいて、前記トラフィック負荷は、通信実行中の状態(例えばアクティブ状態)にある無線端末の数であることを要旨とする。
本発明に係る高電力基地局の特徴は、自局の通信エリアに配置された、自局よりも送信電力が低い低電力基地局のトラフィック負荷を示す情報を受信する受信部(X2インタフェース通信部140)と、前記受信部が受信した前記トラフィック負荷を示す情報に基づいて、自局が特定の下りリンクチャネルとして使用すべき無線リソースについて、第1の無線リソースと、前記第1の無線リソースよりも送信電力が低くなるように制限される第2の無線リソースとの比であるリソース分割比を決定する分割比決定部(分割比決定部123)とを備えることを要旨とする。
本発明に係る低電力基地局の特徴は、高電力基地局の通信エリアに配置され、前記高電力基地局よりも送信電力が低い低電力基地局であって、自局のトラフィック負荷に基づいて、前記高電力基地局が特定の下りリンクチャネルとして使用すべき無線リソースについて、第1の無線リソースと、前記第1の無線リソースよりも送信電力が低くなるように制限される第2の無線リソースとの比であるリソース分割比を決定する分割比決定部(分割比決定部225)と、前記分割比決定部により決定された前記リソース分割比を示す情報を前記高電力基地局に送信する送信部(X2インタフェース通信部240)とを備えることを要旨とする。
本発明に係る低電力基地局の他の特徴は、上記の特徴に係る低電力基地局において、前記高電力基地局のトラフィック負荷を示す情報を受信する受信部をさらに備え、前記分割比決定部は、前記受信部が受信した前記高電力基地局のトラフィック負荷と自局のトラフィック負荷とに基づいて、前記リソース分割比を決定することを要旨とする。
本発明に係る通信制御方法の特徴は、高電力基地局の通信エリアに配置された低電力基地局のトラフィック負荷に基づいて、前記高電力基地局が特定の下りリンクチャネルとして使用すべき無線リソースについて、第1の無線リソースと、前記第1の無線リソースよりも送信電力が低くなるように制限される第2の無線リソースとの比であるリソース分割比を決定するステップを有することを要旨とする。
本発明によれば、ヘテロジーニアスネットワークにおける基地局間干渉を低減し、システム全体のスループットを改善できる無線通信システム、高電力基地局、低電力基地局、及び通信制御方法を提供できる。
第1実施形態及び第2実施形態に係るLTEシステムの概要を説明するための図である。 LTEシステムの通信フレーム構成を説明するための図である。 第1実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。 第1実施形態に係るICICを説明するための図である。 第1実施形態に係るマクロセル基地局の構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係るピコセル基地局の構成を示すブロック図である。 第1実施形態に係る無線通信システムの動作を示す動作シーケンス図である。 第2実施形態に係るマクロセル基地局の構成を示すブロック図である。 第2実施形態に係るピコセル基地局の構成を示すブロック図である。 第2実施形態に係る無線通信システムの動作を示す動作シーケンス図である。 第3実施形態に係るICICを説明するための図である。 PDSCHリソースを時間分割するケースを説明するための図である。 PDSCHリソースを時間分割する他のケースを説明するための図である。 bias値による接続基地局端末比率を示す図である。 ピコセル基地局の低トラフィック時のシミュレーション結果を示す図である。 ピコセル基地局の高トラフィック時のシミュレーション結果を示す図である。
本発明の第1実施形態〜第3実施形態、及びその他の実施形態を説明する。以下の各実施形態における図面において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付す。
[LTEシステムの概要]
第1実施形態〜第3実施形態の説明の前に、LTEシステムの概要について、本発明に関連する内容を説明する。
図1は、LTEシステムの概要を説明するための図である。図1に示すように、複数の無線基地局eNBはE−UTRAN(Evolved-UMTS Terrestrial Radio Access Network)を構成する。複数の無線基地局eNBのそれぞれは、無線端末UEにサービスを提供すべき通信エリアであるセルを形成する。
無線端末UEは、ユーザが所持する無線通信装置であり、ユーザ装置とも称される。無線端末UEは、複数の無線基地局eNBのうち参照信号の受信電力(RSRP: Reference Signal Received Power)が最も高いものに接続する。ただし、RSRPに限らず、SNR(Signal to Noise ratio)等の他の受信品質指標を使用してもよい。
各無線基地局eNBは、基地局間通信を提供する論理的な通信路であるX2インターフェースを介して互いに通信可能である。複数の無線基地局eNBそれぞれは、S1インターフェースを介して、EPC(Evolved Packet Core)、具体的には、MME(Mobility Management Entity)/S−GW(Serving Gateway)と通信可能である。
無線基地局eNBと無線端末UEとの無線通信においては、下りリンクの多重方式としてOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式が、上りリンクの多重方式としてSC−FDMA(Single-Carrier Frequency Division Multiple Access)方式がそれぞれ適用される。また、複信方式としてFDD(Frequency Division Duplex)方式又はTDD(Time Division Duplex)方式が適用される。
図2(a)は、FDD方式が使用される場合の下り無線フレーム構成を示すフレーム構成図である。図2(b)は、下りサブフレームの構成を示すフレーム構成図である。
図2(a)に示すように、下り無線フレームは、10個の下りサブフレームで構成され、各下りサブフレームは2個の下りスロットで構成される。各下りサブフレームの長さは1msであり、各下りスロットの長さは0.5msである。また、各下りスロットは、時間軸方向(time domain)で7個のOFDMシンボルを含み、図2(b)に示すように、周波数軸方向(frequency domain)で複数のリソースブロック(RB)を含む。各RBは12個のサブキャリアを含む。
図2(b)に示すように、下りサブフレームは2個の連続的な下りスロットを含む。下りサブフレーム内の一番目の下りスロットの先頭から最大3OFDMシンボルの区間は、制御情報を伝送するためのPDCCH(Physical Downlink Control Channel)として使用される無線リソースを構成する制御領域である。制御情報は、上りリンク及び下りリンクのスケジューリング情報(すなわち、割り当て無線リソースの情報)などに相当する。下りサブフレームの残りOFDMシンボル区間は、ユーザデータを伝送するためのPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)として使用される無線リソースを構成するデータ領域である。無線端末UEは、PDCCHにより伝送される制御情報をデコードすることで、PDSCHにより伝送されるユーザデータを特定できる。
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態を説明する。第1実施形態においては、高電力基地局としてのマクロセル基地局MeNBの通信エリア(マクロセル)に、低電力基地局としてのピコセル基地局PeNBが配置される形態のヘテロジーニアスネットワーク配置を例に説明する。
以下の第1実施形態においては、(1)無線通信システムの構成、(2)リソース分割による干渉制御、(3)マクロセル基地局の構成、(4)ピコセル基地局の構成、(5)無線通信システムの動作、(6)第1実施形態の効果の順に説明する。
(1)無線通信システムの構成
図3は、第1実施形態に係る無線通信システム1の概略構成図である。
図3に示すように、無線通信システム1は、マクロセル基地局MeNB(高電力基地局あるいは大出力基地局)と、マクロセル基地局MeNBに接続する無線端末MUEと、マクロセル基地局MeNBが形成するマクロセルMCに配置され、マクロセル基地局MeNBに隣接するピコセル基地局PeNB1〜3(低電力基地局あるいは小出力基地局)と、ピコセル基地局PeNB1〜3が形成するピコセルPC内でピコセル基地局PeNBに接続する無線端末PUEとを有する。以下において、ピコセル基地局PeNB1〜3を特に区別しないときは単にピコセル基地局PeNBと称する。マクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBは共通の周波数帯域を使用する。なお、ピコセル基地局PeNBが形成するピコセルPCは、以下において「ホットゾーン」と称する。
ピコセル基地局PeNB(ホットゾーンノードとも称される)は、マクロセル基地局MeNBよりも送信電力が低い低電力基地局である。このため、ヘテロジーニアスネットワークにおいては、RSRPが最も高い無線基地局eNBを選択して無線端末UEが接続する接続先選択基準である受信電力最大基準(以下、RP基準)を採用すると、ピコセル基地局PeNBのカバレッジが狭くなる可能性がある。特に、ピコセル基地局PeNBの位置がマクロセル基地局MeNBに近い状況下では、ピコセル基地局PeNBのカバレッジが非常に狭くなり、ピコセル基地局PeNBを有効活用できない。
ピコセル基地局PeNBの送信電力を上昇させずにピコセル基地局PeNBのカバレッジを拡大可能な方法としては、主に以下の2つの方法が使用できる。
第1に、RSRPが最も大きい無線信号を送信する無線基地局eNBを当該無線端末UEの接続先として選択するRP基準ではなく、無線端末UEとの間の伝搬損失(パスロス)が最も小さい無線基地局eNBを無線端末UEの接続先として選択する方法がある。これにより、例えば無線端末UEに最も近いような無線基地局eNBが接続先として選択されるため、ピコセル基地局PeNBのカバレッジを拡大できる。このような接続先選択基準は、パスロス最小基準(以下、PL基準)と称される。
第2に、無線端末UEがマクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBのそれぞれから無線信号を受信可能な場合において、ピコセル基地局PeNBに対応するRSRPとマクロセル基地局MeNBに対応するRSRPとを比較する際に、ピコセル基地局PeNBに対応するRSRPにバイアス値(bias)を加える方法がある。ピコセル基地局PeNBに対応するRSRPにバイアスを与えることで、オフセット後の当該RSRPが、マクロセル基地局MeNBに対応するRSRPを上回る可能性が高まる。よって、ピコセル基地局PeNBが優先的に接続先として選択されるため、ピコセル基地局PeNBのカバレッジを拡大できる。このような接続先選択基準は、Range Expansion基準(以下、RE基準)と称される。なお、RE基準は、biasの値をマクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBの送信電力の差(例えば16dB)とすることで、PL基準と同等の接続先選択基準となる。
第1実施形態では、RE基準によって、ピコセル基地局PeNBのカバレッジが拡大された状態であるとする。なお、無線端末UEの接続先を選択する主体は、例えば、無線端末UEが待ち受け中(アイドル状態)であれば無線端末UEであり、無線端末UEが通信実行中(アクティブ状態)であれば接続先の無線基地局eNBである。アクティブ状態においては、定期的にRSRPの測定値が無線端末UEから接続先の無線基地局eNBに報告されるため、当該接続先の無線基地局eNBは、無線端末UEの次の接続先を選択し、無線端末UEを次の接続先にハンドオーバさせることができる。
マクロセル基地局MeNBは、PDSCHを使用して、無線端末MUEへのユーザデータを送信する。ピコセル基地局PeNBは、PDSCHを使用して、無線端末PUEへのユーザデータを送信する。これらのPDSCHの周波数帯域が重複する場合、マクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBの各PDSCHは互いに干渉を与え合う。
ピコセル基地局PeNBのカバレッジが拡大された状態においては、ピコセル基地局PeNBに接続する無線端末PUEは、ピコセル基地局PeNBからの受信電力よりも、マクロセル基地局MeNBからの受信電力の方が高いことがある。この場合、ピコセル基地局PeNBのPDSCHは、マクロセル基地局MeNBのPDSCHから大きな干渉を受け、無線端末PUEがユーザデータを受信(復号)不可能になる。
(2)リソース分割による干渉制御
ヘテロジーニアスネットワークの下りリンクにおいて、RE基準でbiasを加えることでRP基準によって作られるホットゾーンよりもカバレッジを拡大しようとすると、マクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBの送信電力の違いから、所望信号の電力よりも干渉電力が大きくなってしまう。よって、SINRとして最適ではない無線端末UEがホットゾーンに収容されることになる。そのような無線端末UEは基本的に送信電力の大きいマクロセル基地局MeNBから非常に強い干渉を受けるため、SINRが非常に低くなってしまう。そこで、第1実施形態では、以下のようなICIC(ICIC:Inter-Cell Interference Coordination)によって干渉制御を行う。
図4は、第1実施形態に係るICICを説明するための図である。
図4(a)に示すように、マクロセル基地局MeNBのPDSCHリソース(図2(b)で示したデータ領域に相当)を周波数分割し、一部を使用しないことで、未使用部分をホットゾーンの低SINRの無線端末PUEが使用できるようにする。マクロセル基地局MeNBが使用不能なPDSCHリソースを「使用不能PDSCHリソース」と称し、マクロセル基地局MeNBが使用可能なPDSCHリソースを「使用可能PDSCHリソース」と称する。第1実施形態において、使用不能PDSCHリソースは、下りリンクの総リソースブロックのうち少なくとも一部のリソースブロックであり、使用可能PDSCHリソースは、下りリンクの総リソースブロックのうち上記一部のリソースブロックを除いた残りのリソースブロックである。また、第1実施形態において、使用可能PDSCHリソースは第1の無線リソースに相当し、使用不能PDSCHリソースは第2の無線リソースに相当する。
図4(b)に示すように、使用不能PDSCHリソースに対応する無線リソースはマクロセル基地局MeNBからの干渉を受けないため、ピコセル基地局PeNBは、そのような無干渉PDSCHリソースを低SINRの無線端末PUEに割り当てる。無線端末PUEは定期的に受信品質の測定結果をチャネル品質情報(CQI)としてピコセル基地局PeNBにフィードバックしており、ピコセル基地局PeNBは、無干渉PDSCHリソースに対応するCQIが良好であることに応じて、無干渉PDSCHリソースを優先して無線端末PUEに割り当てることができる。
このような周波数分割によるICICは、ホットゾーンへの干渉を回避することができる代わりに、マクロセル基地局MeNBに接続される無線端末MUEが使用できる使用可能PDSCHリソースが減ってしまう。このことから、ホットゾーンのカバレッジ拡大による特性改善のためには、負荷分散による特性改善効果が、周波数分割による使用可能リソースの減少による損失を上回る必要がある。しかし、実際の環境を想定すると、トラフィック状況や基地局の設置状況は様々であり、ある環境で有効であったRE基準のbiasの値と周波数分割の特定の組み合わせが他の環境においても有効であることは考えにくい。これを回避するためには、その環境において試行錯誤的に有効な組み合わせを探す必要があるが、実運用上現実的ではない。
そこで、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷とマクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷とに基づいて、使用不能PDSCHリソースと使用可能PDSCHリソースとの比であるリソース分割比を決定する。第1実施形態では、トラフィック負荷とは、アクティブ状態の無線端末数である。よって、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷はアクティブ状態の無線端末PUEの数であり、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷はアクティブ状態の無線端末MUEの数である。図1の例のように同一マクロセル内にピコセル基地局PeNBが複数配置される場合、各ピコセル基地局PeNBのアクティブ状態の無線端末PUE数の平均をピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷とする。
リソース分割比は任意に設定できるが、LTEの仕様上、フィードバックされるCQIの分解能に合わせて分割する。すなわち、使用可能PDSCHリソース及び使用不能PDSCHリソースのそれぞれの周波数帯域は、無線端末UEが受信品質(チャネル品質)を測定する周波数単位の整数倍である。当該周波数単位はサブバンド(Subband)と称される。
図4(a)及び図4(c)に示すように、使用不能PDSCHリソースの周波数帯域mと使用可能PDSCHリソースの周波数帯域nとの比(m:n)は、無線端末PUEの数NPUEと無線端末MUEの数NMUEとの比(NPUE:NMUE)に等しい。第1実施形態では、無線端末PUEの数NMUEは、ピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれの無線端末PUE数の平均である。使用不能PDSCHリソースの周波数帯域mと使用可能PDSCHリソースの周波数帯域nとの比から、使用不能PDSCHリソースのリソースブロック数RBは、式(1)のようになる。
Figure 0005451937
ここで、SubbandSizeはフィードバックされるCQIのサイズ(分解能)を、NRBは下りリンク周波数帯域の総RB数をそれぞれ意味する。
(3)マクロセル基地局の構成
次に、マクロセル基地局MeNBの構成を説明する。図5は、第1実施形態に係るマクロセル基地局MeNBの構成を示すブロック図である。
図5に示すように、マクロセル基地局MeNBは、アンテナ部101、無線通信部110、制御部120、記憶部130、及びX2インタフェース通信部140を有する。
無線通信部110は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、アンテナ部101を介して無線端末MUEと無線信号の送受信を行う。また、無線通信部110は、送信信号の変調と受信信号の復調とを行う。
制御部120は、例えばCPUを用いて構成され、マクロセル基地局MeNBが備える各種の機能を制御する。記憶部130は、例えばメモリを用いて構成され、マクロセル基地局MeNBの制御等に用いられる各種の情報を記憶する。X2インタフェース通信部140は、X2インタフェースを使用して他の無線基地局との基地局間通信を行う。
制御部120は、接続先選択部121、トラフィック負荷情報収集部122、分割比決定部123、及びリソース割り当て部124を有する。
接続先選択部121は、無線端末MUEから報告されるRSRPの情報(すなわち、メジャメントレポート)に基づいて、無線端末MUEの次の接続先の無線基地局を選択する。無線端末MUEがマクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBそれぞれの参照信号を受信する場合、接続先選択部121は、マクロセル基地局MeNBに対応するRSRPMeNBとピコセル基地局PeNBに対応するRSRPPeNBとを比較する際に、RSRPPeNBにbiasを与える。biasの与えられたRSRPPeNBがRSRPMeNBよりも高い場合には、接続先選択部121は、無線端末MUEの接続先をピコセル基地局PeNBに切り替えるようにハンドオーバ制御を行う。
トラフィック負荷情報収集部122は、マクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBそれぞれのトラフィック負荷の情報を定期的に収集する。
分割比決定部123は、トラフィック負荷情報収集部122が収集したマクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBそれぞれのトラフィック負荷の情報に基づいてリソース分割比を決定する。具体的には、分割比決定部123は、使用不能PDSCHリソースの周波数帯域mと使用可能PDSCHリソースの周波数帯域nとの比が、アクティブ状態の無線端末PUEの数NMUEとアクティブ状態の無線端末MUEの数NPUEとの比に等しくなるようにリソース分割比を決定する。すなわち、分割比決定部123は、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷を一定とした場合に、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷が高くなるほど、使用可能PDSCHリソースが少なく、且つ使用不能PDSCHリソースが多くなるように、リソース分割比を決定する。また、分割比決定部123は、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷を一定とした場合に、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷が高くなるほど、使用可能PDSCHリソースが多く、且つ使用不能PDSCHリソースが少なくなるように、リソース分割比を決定する。分割比決定部123は、通信状況の変化に対応するために、リソース分割比を定期的に更新することが望ましい。
リソース割り当て部124は、分割比決定部123により決定されたリソース分割比に従って定められる使用可能PDSCHリソースの中から無線端末MUEに無線リソース(リソースブロック)を割り当てる。例えば、リソース割り当て部124は、無線端末MUEからフィードバックされるCQIに基づき、プロポーショナルフェアネス(PF)等のスケジューリングアルゴリズムを用いて、使用可能PDSCHリソースの中から無線端末MUEに無線リソース(リソースブロック)を割り当てる。
(4)ピコセル基地局の構成
次に、ピコセル基地局PeNBの構成を説明する。図6は、第1実施形態に係るピコセル基地局PeNBの構成を示すブロック図である。
図6に示すように、ピコセル基地局PeNBは、アンテナ部201、無線通信部210、制御部220、記憶部230、及びX2インタフェース通信部240を有する。
無線通信部110は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成され、アンテナ部201を介して無線端末PUEと無線信号の送受信を行う。また、無線通信部210は、送信信号の変調と受信信号の復調とを行う。
制御部220は、例えばCPUを用いて構成され、ピコセル基地局PeNBが備える各種の機能を制御する。記憶部230は、例えばメモリを用いて構成され、ピコセル基地局PeNBの制御等に用いられる各種の情報を記憶する。X2インタフェース通信部240は、X2インタフェースを使用して他の無線基地局との基地局間通信を行う。
制御部220は、接続先選択部221、トラフィック負荷情報生成部222、及びリソース割り当て部223を有する。
接続先選択部221は、自局に接続する無線端末PUEから報告されるRSRPに基づいて、無線端末PUEの次の接続先の無線基地局を選択する。無線端末PUEがマクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBそれぞれの参照信号を受信する場合、接続先選択部221は、マクロセル基地局MeNBに対応するRSRPMeNBとピコセル基地局PeNBに対応するRSRPPeNBとを比較する際に、RSRPPeNBにbiasを与える。biasの与えられたRSRPPeNBがRSRPMeNBよりも低い場合には、接続先選択部221は、無線端末PUEの接続先をマクロセル基地局MeNBに切り替えるようにハンドオーバ制御を行う。
トラフィック負荷情報生成部222は、自局に接続する無線端末PUEのうちアクティブ状態の無線端末PUEの数をトラフィック負荷として示すトラフィック負荷情報を生成する。
リソース割り当て部223は、無線端末PUEに無線リソース(リソースブロック)を割り当てる。例えば、リソース割り当て部223は、無線端末PUEからフィードバックされるCQIに基づき、プロポーショナルフェアネス(PF)等のスケジューリングアルゴリズムを用いて、PDSCHリソースの中から無線端末MUEに無線リソース(リソースブロック)を割り当てる。
(5)無線通信システムの動作
図7は、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作を示す動作シーケンス図である。図7に示す動作シーケンスは定期的に実行される。
ステップS11aにおいて、ピコセル基地局PeNB1のトラフィック負荷情報生成部222は、ピコセル基地局PeNB1に接続する無線端末PUEのうちアクティブ状態の無線端末PUE数を示すトラフィック負荷情報を生成する。ステップS12aにおいて、ピコセル基地局PeNB1のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報をマクロセル基地局MeNBに送信する。マクロセル基地局MeNBのX2インタフェース通信部140は、当該トラフィック負荷情報を受信する。
ステップS11bにおいて、ピコセル基地局PeNB2のトラフィック負荷情報生成部222は、ピコセル基地局PeNB2に接続する無線端末PUEのうちアクティブ状態の無線端末PUE数を示すトラフィック負荷情報を生成する。ステップS12bにおいて、ピコセル基地局PeNB2のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報をマクロセル基地局MeNBに送信する。マクロセル基地局MeNBのX2インタフェース通信部140は、当該トラフィック負荷情報を受信する。
ステップS11cにおいて、ピコセル基地局PeNB3のトラフィック負荷情報生成部222は、ピコセル基地局PeNB3に接続する無線端末PUEのうちアクティブ状態の無線端末PUE数を示すトラフィック負荷情報を生成する。ステップS12cにおいて、ピコセル基地局PeNB3のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報をマクロセル基地局MeNBに送信する。マクロセル基地局MeNBのX2インタフェース通信部140は、当該トラフィック負荷情報を受信する。
このように、マクロセル基地局MeNBのX2インタフェース通信部140は、トラフィック負荷情報を受信する受信部に相当する。
ステップS13において、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷情報収集部122は、ピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれのトラフィック負荷情報と、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷情報(マクロセル基地局MeNBに接続する無線端末MUEのうちアクティブ状態の無線端末MUE数の情報)とを収集する。
ステップS14において、マクロセル基地局MeNBの分割比決定部123は、ピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれのトラフィック負荷情報と、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷情報とに基づいてリソース分割比を決定する。その後、マクロセル基地局MeNBのリソース割り当て部124は、分割比決定部123により決定されたリソース分割比に従って定められる使用可能PDSCHリソースの中から、無線端末MUEに無線リソース(リソースブロック)を割り当てる。
(6)第1実施形態の効果
以上説明したように、無線通信システム1は、PDSCHとして使用可能な無線リソースについて、マクロセル基地局MeNBが使用不能な使用不能PDSCHリソースを設けている。当該使用不能PDSCHリソースに対応する無線リソースをピコセル基地局PeNBがPDSCHとして使用することでマクロセル基地局MeNBからの干渉を回避できるため、ピコセル基地局PeNBのスループットを改善できる。
また、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷に基づいてリソース分割比を決定することで、マクロセル基地局MeNBの使用不能PDSCHリソースと使用可能PDSCHリソースとの比を適切に設定でき、使用不能PDSCHリソースが過多になることを防止できる。これにより、ピコセル基地局PeNBのスループットを改善しつつ、マクロセル基地局MeNBのスループット低下も防止できるため、システム全体のスループットを改善できる。
第1実施形態では、分割比決定部123は、複数のピコセル基地局PeNBそれぞれのトラフィック負荷の平均に基づいてリソース分割比を決定するため、マクロセル基地局MeNBの通信エリア内にピコセル基地局PeNBが複数配置されるケースでも、使用不能PDSCHリソースと使用可能PDSCHリソースとの比を適切に設定できる。
第1実施形態では、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷とマクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷とに基づいてリソース分割比を決定することでピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷だけでなく、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷も考慮してリソース分割比を決定することができ、リソース分割比をより適切に設定できる。
[第2実施形態]
第1実施形態では、マクロセル基地局MeNBがリソース分割比を決定していたが、第2実施形態では、ピコセル基地局PeNBがリソース分割比を決定する。以下においては、第1実施形態と異なる点を説明し、重複する説明を省略する。
図8は、第2実施形態に係るマクロセル基地局MeNBの構成を示すブロック図である。
図8に示すように、第2実施形態に係るマクロセル基地局MeNBは、トラフィック負荷情報生成部125を有しており、第1実施形態で説明したトラフィック負荷情報収集部122及び分割比決定部123を有していない。トラフィック負荷情報生成部125は、トラフィック負荷情報(マクロセル基地局MeNBに接続する無線端末MUEのうちアクティブ状態の無線端末MUE数の情報)を生成する。
図9は、第2実施形態に係るピコセル基地局PeNBの構成を示すブロック図である。
図9に示すように、第2実施形態に係るピコセル基地局PeNBは、トラフィック負荷情報収集部224及び分割比決定部225を有する。トラフィック負荷情報収集部224は、マクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBそれぞれのトラフィック負荷情報を定期的に収集する。分割比決定部225は、トラフィック負荷情報収集部224が収集したマクロセル基地局MeNB及びピコセル基地局PeNBそれぞれのトラフィック負荷情報に基づいて、第1実施形態と同様の方法でリソース分割比を決定する。
図10は、第2実施形態に係る無線通信システム1の動作を示す動作シーケンス図である。図10に示す動作シーケンスは定期的に実行される。
ステップS21aにおいて、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷情報生成部125は、マクロセル基地局MeNBに接続する無線端末MUEのうちアクティブ状態の無線端末MUE数を示すトラフィック負荷情報を生成する。ステップS22aにおいて、マクロセル基地局MeNBのX2インタフェース通信部140は、当該トラフィック負荷情報をピコセル基地局PeNB1に送信する。ピコセル基地局PeNB1のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報を受信する。
ステップS21bにおいて、ピコセル基地局PeNB2のトラフィック負荷情報生成部222は、ピコセル基地局PeNB2に接続する無線端末PUEのうちアクティブ状態の無線端末PUE数を示すトラフィック負荷情報を生成する。ステップS22bにおいて、ピコセル基地局PeNB2のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報をピコセル基地局PeNB1に送信する。ピコセル基地局PeNB1のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報を受信する。
ステップS21cにおいて、ピコセル基地局PeNB3のトラフィック負荷情報生成部222は、ピコセル基地局PeNB3に接続する無線端末PUEのうちアクティブ状態の無線端末PUE数を示すトラフィック負荷情報を生成する。ステップS22cにおいて、ピコセル基地局PeNB3のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報をピコセル基地局PeNB1に送信する。ピコセル基地局PeNB1のX2インタフェース通信部240は、当該トラフィック負荷情報を受信する。
ステップS23において、ピコセル基地局PeNB1のトラフィック負荷情報収集部224は、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷情報と、ピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれのトラフィック負荷情報とを収集する。
ステップS24において、ピコセル基地局PeNB1の分割比決定部225は、マクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷情報と、ピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれのトラフィック負荷情報とに基づいてリソース分割比を決定する。
ステップS25において、ピコセル基地局PeNB1のX2インタフェース通信部240は、分割比決定部225によって決定されたリソース分割比を示す情報をマクロセル基地局MeNBに送信する。マクロセル基地局MeNBのX2インタフェース通信部140は、リソース分割比を示す情報を受信する。このように、第2実施形態においてX2インタフェース通信部240は、リソース分割比を示す情報を送信する送信部に相当する。
その後、マクロセル基地局MeNBのリソース割り当て部124は、X2インタフェース通信部140が受信したリソース分割比を示す情報に従って定められる使用可能PDSCHリソースの中から、無線端末MUEに無線リソース(リソースブロック)を割り当てる。
以上のように、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
[第3実施形態]
第1実施形態及び第2実施形態では、マクロセル基地局MeNBのPDSCHリソースを、マクロセル基地局MeNBが使用不能な使用不能PDSCHリソースと、マクロセル基地局MeNBが使用可能な使用可能PDSCHリソースとに周波数分割していた。
第3実施形態では、マクロセル基地局MeNBのPDSCHリソースを、低電力PDSCHリソースと通常電力PDSCHリソースとに周波数分割する。低電力PDSCHリソースは、マクロセル基地局MeNBが使用可能であるものの、通常電力PDSCHリソースよりも送信電力が低くなるように制限される。第3実施形態において、通常電力PDSCHリソースは第1の無線リソースに相当し、低電力PDSCHリソースは第2の無線リソースに相当する。
図11は、第3実施形態に係るICICを説明するための図である。ここでは、第1実施形態との相違点を主として説明する。
図11に示すように、第3実施形態において、低電力PDSCHリソースは、下りリンクの総リソースブロックのうち少なくとも一部のリソースブロックであり、通常電力PDSCHリソースは、下りリンクの総リソースブロックのうち上記一部のリソースブロックを除いた残りのリソースブロックである。
マクロセル基地局MeNBの低電力PDSCHリソースに対応するピコセル基地局PeNBの無線リソースは、マクロセル基地局MeNBからの干渉レベルが低いため、ピコセル基地局PeNBは、そのような低干渉PDSCHリソースを低SINRの無線端末PUEに割り当てる。無線端末PUEは定期的に受信品質の測定結果をチャネル品質情報(CQI)としてピコセル基地局PeNBにフィードバックしており、ピコセル基地局PeNBは、低干渉PDSCHリソースに対応するCQIが良好であることに応じて、低干渉PDSCHリソースを優先して無線端末PUEに割り当てることができる。
また、マクロセル基地局MeNBは、マクロセル基地局MeNBの近傍の無線端末MUEに対して低電力PDSCHリソースを割り当てることが好ましい。具体的には、マクロセル基地局MeNBのリソース割り当て部124は、低電力PDSCHリソースに対応するCQIが良好な無線端末MUEや、マクロセル基地局MeNBとの間のパスロスが小さい無線端末MUEに対して、低電力PDSCHリソースの中からリソース(RB)を割り当てる。リソース割り当て部124は、低電力PDSCHリソースに対応するCQIが劣悪な無線端末MUEや、マクロセル基地局MeNBとの間のパスロスが大きい無線端末MUEに対して、通常電力PDSCHリソースの中からリソース(RB)を割り当てる。
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、ピコセル基地局PeNBのトラフィック負荷とマクロセル基地局MeNBのトラフィック負荷とに基づいて、低電力PDSCHリソースと通常電力PDSCHリソースとの比であるリソース分割比を決定する。第3実施形態においても、トラフィック負荷としてアクティブ状態の無線端末数を使用する。また、第1実施形態と同様に、リソース分割比は、フィードバックされるCQIの分解能に合わせる。
低電力PDSCHリソースの周波数帯域mと通常電力PDSCHリソースの周波数帯域nとの比(m:n)は、無線端末PUEの数NPUEと無線端末MUEの数NMUEとの比(NPUE:NMUE)に等しい。無線端末PUEの数NMUEは、ピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれの無線端末PUE数の平均である。低電力PDSCHリソースの周波数帯域mと通常電力PDSCHリソースの周波数帯域nとの比から、低電力PDSCHリソースのリソースブロック数RBは、第1実施形態と同様に式(1)のようになる。
以上説明したように、第3実施形態によれば、第1実施形態よりもピコセル基地局PeNBの干渉低減効果は小さくなるものの、マクロセル基地局MeNBが使用可能なPDSCHリソースは第1実施形態よりも多くなるため、マクロセル基地局MeNBのスループットを向上させることができる。
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は各実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
上述した各実施形態においては、PDSCHリソースを周波数分割するケースについて説明したが、PDSCHリソースを時間分割してもよい。図12は、PDSCHリソースを時間分割するケースを説明するための図である。図12に示すように、下りリンクサブフレームのデータ領域を時間分割し、使用不能PDSCHリソース(又は低電力PDSCHリソース)の時間範囲mと、使用可能PDSCHリソース(又は通常電力PDSCHリソース)の時間範囲nとの比は、無線端末MUEの数NPUEと無線端末PUEの数NMUEとの比に等しい。ここで、無線端末PUEの数NMUEは、同一マクロセル内のピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれの無線端末PUEの平均である。時間分割の割合は任意に設定できるが、LTEの仕様上、OFDMシンボル単位で分割する。
あるいは、サブフレーム内をOFDMシンボル単位で時間分割するのではなく、図2に示した無線フレームをサブフレーム単位で時間分割してもよい。図13は、無線フレームをサブフレーム単位で時間分割するケースを説明するための図である。図13に示すように、1つの無線フレームにおいて、使用不能PDSCHリソース(又は低電力PDSCHリソース)の時間範囲mと、使用可能PDSCHリソース(又は通常電力PDSCHリソース)の時間範囲nとの比は、無線端末MUEの数NPUEと無線端末PUEの数NMUEとの比に等しい。ここで、無線端末PUEの数NMUEは、同一マクロセル内のピコセル基地局PeNB1〜3のそれぞれの無線端末PUEの平均である。
上述した各実施形態においては、PDSCHに係るリソース分割(すなわち、データ領域の分割)を説明したが、PDSCHに限らず、PDCCHに係るリソース分割(すなわち、制御領域の分割)に応用してもよい。PDCCHに係るリソース分割についても、周波数分割又は時間分割の何れを採用してもよい。
上述した各実施形態においては、ピコセル基地局PeNBのカバレッジが拡大されるケースについて説明したが、そのようなケースに限らず、本発明は、ピコセル基地局PeNBのカバレッジが拡大されないケースであってもヘテロジーニアスネットワークにおける基地局間干渉の低減に有効である。
上述した各実施形態においては、トラフィック負荷はアクティブ状態の無線端末数であったが、そのようなトラフィック負荷指標に限らず、例えば無線リソースの使用率や送受信するパケット量等をトラフィック負荷としてもよい。
なお、LTE Advancedにおいては、バックホールを無線により構成する無線基地局であるリレーノードの採用が予定され、且つリレーノードにもX2インタフェースが採用される予定であるため、当該リレーノードを本発明に係る低電力基地局としてもよい。
さらに、上述した各実施形態では、LTEシステムについて説明したが、WiMAX(IEEE 802.16)に基づく無線通信システム等、他の無線通信システムに対して本発明を適用してもよい。
[シミュレーション結果]
最後に、シミュレーション結果を用いて、上述した各実施形態により得られる効果を説明する。
本シミュレーションで想定する環境は、マクロセル基地局MeNBで構成されるセル内に、複数の無線端末UEが集中して存在する半径40mのピコセル基地局PeNBが複数存在する環境を想定したシナリオである。さらに、トラフィックの違いによるカバレッジ拡大の影響を検証するため、2つのシナリオを想定し評価を行う。いずれのシナリオもマクロセル当たり平均30UEが存在し、一つ目のシナリオはマクロセル内に2つホットゾーンが存在し、ピコセル基地局PeNB一つ当りに少なくとも2UE が分布し、それ以外の26UEはピコセル基地局PeNBを含むマクロセルエリア内に一様に分布する、比較的ピコセル基地局PeNBが低トラフィックのシナリオである。もう一つのシナリオは、マクロセル内に2つのホットゾーンが存在し、ピコセル基地局PeNB一つ当たり10UEが一様に分布し、それ以外の10UEはピコセル基地局PeNBを含むマクロセルエリア内に一様に分布する、ピコセル基地局PeNBにUEが集中する高トラフィックのシナリオである。また、PDCCHおよび他の制御信号は理想的に取得できるものとする。
(1)低トラフィック時
低トラフィック時のシミュレーション結果を説明する。図14(a)にREのbias値による接続基地局端末比率を示し、下りリンクユーザスループット(5% worst / Median / Average)をマクロセルのみの場合の値で正規化したもの、およびそれらの平均値をプロットしたものを表1及び図15(a)に示し、ICIC無しとICIC有り(1:3)のホットゾーンの受信SINRのCDF(累積密度関数)を図15(b)に示す。
Figure 0005451937
図14(a)より、RE基準でbiasを大きくすることでカバレッジが拡大し、ピコセル基地局PeNBへ接続されるUE比率が上昇しており、負荷分散が実現されていることが分る。しかし、13(a)より、ICICを行わない場合には、下りリンクユーザスループットはREのbias値が8 dBのとき最大となり、それ以上のbias値では劣化することが分る。図15(b)から、この条件ではホットゾーンにおいて低SINRのUEの増加が原因であると考えられる。一方、周波数分割によるICICを組み合わせた場合、RE基準のbias値が0の場合、つまり、RP基準の場合にはICIC無しと比べて特性が劣化し、5% worst、Median TPに関してはマクロセルのみと比べても劣化している。これは、ホットゾーンのカバレッジの拡大が不十分で負荷分散が行えず、無線端末MUEの高スループットが望めない状況で、さらに周波数分割によって、マクロセル基地局MeNBのリソースが制限される為である。REのbias値を上げることでマクロセル基地局MeNBからホットゾーンへの負荷分散により特性は改善し始める。この時、図15(b)から、ICICの効果によってICIC無しよりもSINRの劣化を抑えつつREのカバレッジ拡大が実現可能となっていることがわかる。このREによる負荷分散と周波数分割によるICICの関係について検証すると、無線端末MUE数とホットゾーンあたりのUE数の比と、周波数分割の比に相関が見られ、両者が近い場合にピークが現れていることが分る。適応的に周波数分割比を変化させるICICを適用すると、多くのbias値において、その時最も良い静的なICICに近い特性を示している。
(2)高トラフィック時
高トラフィック時のシミュレーション結果を説明する。図14(b)にREのbias値による接続基地局比を示し、下りリンクユーザスループット(5% worst / Median / Average)をマクロセルのみの場合の値で正規化したもの、およびそれらの平均をプロットしたものを表2及び図16(a)に、ICIC無しとICIC有り(1:3)のホットゾーンの受信SINRのCDFを図16(b)に示す。
Figure 0005451937
低トラフィック時と比べて、全体的にヘテロジーニアスネットワークによる利得が大きく現れている。また、図16(a)から、低トラフィック時よりも低いbias値で特性のピークが現れている。これらの特徴はホットゾーンの周囲に高い密度でUEが存在する為、図14(b)に示されるように少ないbias値でもピコセル基地局PeNBに接続されるUEの比率が高くなる傾向があることに起因していると考えられる。つまり、高負荷領域である半径40 mのホットゾーンをカバーすれば負荷分散の効果が十分得られる。これは置局設計時に高トラフィック領域にホットゾーンを配置することによって、比較的容易にヘテロジーニアスネットワークの特性改善が得られることを意味している。適応的に周波数分割比を変化させるICICを適用すると、多くのbias値において、その時最も良い静的なICICと同等以上の特性を示している。
なお、日本国特許出願第2010−95548号(2010年4月16日出願)及び第2010−253279号(2010年11月11日出願)の全内容が、参照により、本願明細書に組み込まれている。
以上のように、本発明に係る無線通信システム、高電力基地局、低電力基地局、及び通信制御方法は、ヘテロジーニアスネットワークにおける基地局間干渉を低減し、システム全体のスループットを改善できるため、移動体通信などの無線通信において有用である。

Claims (2)

  1. 他の基地局が、下りリンクに使用する複数のサブフレームについて、通常サブフレームと、前記通常サブフレームに比べて送信電力が低くなるように制限される特定サブフレームと、の比を定める設定パターンを設定するために、前記他の基地局に対して、自局の負荷に関する情報を送信する送信部を備える、ことを特徴とする基地局。
  2. 基地局に備えられるプロセッサであって、
    前記プロセッサは、他の基地局が、下りリンクに使用する複数のサブフレームについて、通常サブフレームと、前記通常サブフレームに比べて送信電力が低くなるように制限される特定サブフレームと、の比を定める設定パターンを設定するために、前記他の基地局に対して、前記基地局の負荷に関する情報を送信する処理を行うプロセッサ。
JP2013209347A 2010-04-16 2013-10-04 基地局及びプロセッサ Active JP5451937B2 (ja)

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