JP5421750B2 - 鋼管矢板構造物およびその施工方法 - Google Patents
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Description
また、P−P継手の他に鋼管矢板の継手構造としては、軸方向にスリットを有する継手鋼管とT形鋼からなるT型の雄継手とを互いに嵌合させて鋼管矢板を連結するP−T継手や、間隔をおいて平行に内向きに設置される一対のL形鋼による雌継手と、1つのT形鋼からなる雄継手とを互いに嵌合させて鋼管矢板を連結するL−T継手などが用いられることもある。
先ず、P−P継手の場合には、継手相互が嵌合した状態の嵌合継手部に3つの空間が形成されるために、継手嵌合後に狭隘な継手部の各空間で土砂掘削や洗浄、モルタル充填等の各作業を行う必要がある。このことから、継手部の確実な洗浄および密実にモルタル充填を行うことが困難であり、品質が不安定になる可能性があることから、モルタルの付着強度が十分に確保されず、継手部のせん断耐力が確実に発揮できない可能性がある。
また、P−T継手やL−T継手においても、P−P継手の場合と同様に、継手嵌合空間が狭隘であるために、継手部の確実な洗浄および密実なモルタルの充填を行うことは困難であり、品質が不安定になる恐れがあるため、継手部のせん断耐力が確実に発揮できない可能性がある。さらに、P−T継手やL−T継手では、地震や土圧、水圧などにより鋼管矢板に水平力が作用した際に、鋼管矢板間に生じるせん断力が継手部に伝わり継手同士が相対的にずれることで、モルタルと継手との間で相対変位が生じてモルタルが膨張することにより、継手鋼管やL形鋼からなる雌継手が開く方向に変形することから、継手部の継手鋼管やT形鋼とモルタルとの付着力が低減し、継手部のせん断耐力がさらに低下してしまうという不都合も発生する。
特許文献1に記載のL−L継手では、雌型継手と雄型継手における各L型鋼材で挟まれる本管外周面に、複数本の突起付き棒状鋼材を所定間隔で固定することで、モルタルとの付着強度を確実に発揮させることができるようになっている。そして、嵌合継手内の土砂掘削洗浄およびモルタル等のセメント系常温硬化性材料(充填材)の充填作業に十分な空間を有しているために、嵌合継手内の土砂の掘削を確実に行うことができ、かつ嵌合継手内の洗浄を確実に行うことができ、さらに嵌合継手内への充填材の充填を密実に行うことができる。従って、特許文献1に記載の継手構造では、施工性が飛躍的に向上し、かつ安定した品質になるとともに、鋼管矢板本管の外周面の棒状鋼材により充填材との付着を確実にし、継手部のせん断耐力を向上させることができることから、基礎全体の安定性を向上させることにより鋼管本数の低減や鋼管板厚の減少など建設コストの削減および施工期間の短縮が実現できるようになっている。
さらに、鋼管矢板の施工において当該鋼管矢板を地中に建て込む際には、L型鋼材に囲まれ(挟まれ)拘束された部分の土圧が上昇することによって雌型継手と雄型継手とは、各々のL型鋼材が互いに離れる外側に開くように変形することがある。このように雄型継手の各L型鋼材が外側に開いて変形した場合、後から雌型継手を嵌合させつつ他の鋼管矢板を打設した場合、変形した雄型継手に変形していない雌型継手を嵌合させるため、互いのL型鋼材同士が競ってしまい、大きな打設抵抗を受けることなり施工手間が増大するとともに、施工コストも増大する可能性がある。
さらに、例えば、鋼管矢板の施工に際して、雌型継手を有した一対の鋼管矢板を先行して打設し、これらの鋼管矢板の間に、雄型継手を有した鋼管矢板を打設すれば、土圧で外側に開くように変形した雌型継手の空間に、変形していない雄型継手が嵌合されることから競りが生じることなく、互いの継手を良好に嵌合させることができ、施工効率を向上させることができる。
そして、本発明の鋼管矢板構造物のうち、雄鋼管矢板では、鋼管矢板本管の外面2箇所に、それぞれ雄型継手となる一対の雄L型鋼材が同時に溶接される。ただし、一対の雄型継手は、鋼管矢板本管の外面2箇所に2回の溶接を行って構成される。つまり、一対の雄型継手の一方および他方で一対の雄L型鋼材を同時に溶接する2回の溶接によって製造が行われる。
また、雌鋼管矢板では、表面に凹凸を有する鋼板が鋼管矢板本管の外面2箇所で同時に溶接され、その両側には、それぞれ雌型継手となる一対の雌L型鋼材が同時に溶接される。ただし、一対の雌型継手は、鋼管矢板本管の外面2箇所に2回の溶接を行って構成される。つまり、一対の凹凸を有する鋼板を同時に溶接する1回の溶接と、一対の雌型継手の一方および他方で一対の雌L型鋼材を同時に溶接する2回の溶接と、との合計3回の溶接によって製造が行われる。
このような構成によれば、雄L型鋼材は、一対の脚部が互いに対向する側の表面に縞状の突起(凹凸)を有した縞鋼板から形成され、この縞鋼板を折り曲げたアーム部の外側表面にも縞状の突起が形成されているような構成を採用することで、充填材との付着を高めて継手部のせん断耐力をさらに向上させることができる。
この発明によれば、前述したように、予め打設された雌鋼管矢板の雌型継手に雄型継手を嵌合させつつ雄鋼管矢板を打設することから、継手同士に競りが生じることがなく良好に嵌合することができ、施工効率を向上させることができる。
図1において、本実施形態の鋼管矢板構造物としての鋼管矢板基礎1は、河川や海岸近傍などに設けられる橋の橋脚を支持する井筒基礎であって、川底や海底の地盤Gに貫入される複数の鋼管矢板2を平面円形に並設するとともに、これらの鋼管矢板2同士を継手部3を介して互いに連結して構成されている。ここで、一方(図2中、下側)の鋼管矢板2は、円形鋼管からなる鋼管矢板本管4(以下、単に本管4という)と、当該本管4の側面の2箇所に設けられる雌型継手5とを有して構成される雌鋼管矢板2Aである。他方(図2中、上側)の鋼管矢板2は、円形鋼管からなる鋼管矢板本管4(以下、単に本管4という)と、当該本管4の側面の2箇所に設けられる雄型継手6とを有して構成される雄鋼管矢板2Bである。
図4は、鋼管矢板の製造手順の一工程である矯正工程を示す図である。
なお、以下では、雄鋼管矢板2Bについて図示して説明し、雌鋼管矢板2Aの図示を省略する。
先ず、雄型継手6の溶接工程としては、本管4に2つの雄L型鋼材60を同時に載置し、圧下ロールを用いて本管4の長手方向に雄L型鋼材60を本管4に押し付けることにより、本管4と雄L型鋼材60との隙間をなくしながら適当な箇所を仮付け溶接する。この後、本管4と雄L型鋼材60とを長手方向に沿って連続的にロボット溶接することによって2つの雄L型鋼材60による雄型継手6が、本管4の外面に固定される。これに続いて同様の手順によって、反対側の一対の雄L型鋼材60を本管4に固定する。
このように、一方および他方の雄型継手6において、各2つの雄L型鋼材60を同時に溶接することで、合計2回の溶接によって一本の雄鋼管矢板2Bが製造されるようになっている。
このように、雌鋼管矢板2Aは、プレート8の1回の溶接と、一対の雌型継手5の2回の溶接が行われ、合計3回の溶接によって一本の雌鋼管矢板2Aが製造されるようになっている。
以上のように雄型継手6を本溶接する際に、本管4には、溶接熱により変形が生じる。具体的には、対向する雄L型鋼材60同士の間に膨出部41が形成され、雄型継手6と他方の雄型継手6との間にも膨出部41が形成される。さらに、膨出部41と膨出部41との間には、本管4内側に入りこんでいる縮退部42が形成される。このように、4つの膨出部41と4つの縮退部42とが形成されることにより、本管4は、断面略菱形の形状に変形することとなる。
なお、雌鋼管矢板2Aに対しても同様の矯正工程を実施することで、雌鋼管矢板2Aの本管4も断面略正円に矯正されるようになっている。
先ず、雌鋼管矢板2Aを互いに所定の間隔だけ離隔した位置に先行して打設する。ここで、所定間隔としては、後から打設する雄鋼管矢板2Bとの嵌合を考慮した所定寸法によって適宜設定される。このように雌鋼管矢板2Aを打設する際には、雌型継手5の内部に入り込んだ土砂の土圧によって各雌L型鋼材50が互いに外側に開くように変形することがある。
次に、打設が完了した一対の雌鋼管矢板2Aの間隔部分に雄鋼管矢板2Bを打設する。この際、前述のように外側に開いた雌型継手5に雄型継手6を嵌合させつつ、雄鋼管矢板2Bを打設する。なお、雄鋼管矢板2Bの雄L型鋼材60も互いに外側に開くような土圧をうけることとなるが、先行の雌鋼管矢板2Aの雌L型鋼材50が外側に位置しているため、雌L型鋼材50によって雄L型鋼材60の変形が拘束されるようになっている。
また、本管4の外周に設けられる2箇所の継手は、雄型継手6あるいは雌型継手5のどちらか一方のみであり、これらの継手が対称位置に固定されることから、溶接の際の位置決めや押下げが容易になって製造効率がさらに向上できる。
また、この鋼管矢板を施工する際、雌型継手5を有した雌鋼管矢板2Aを先行して打設し、一対の鋼管矢板2A間に、雄型継手6を有した雄鋼管矢板2Bを打設することから、土圧で外側に開くように変形した雌型継手5の空間に、変形していない雄型継手6を嵌合させることで、これらの継手に競りが生じず、打設抵抗の増大を防止して施工効率が向上させることができる。さらに、後から打設する雄鋼管矢板2Bの雄型継手6が外側に開くように変形しようとしても、雌型継手5によって変形が拘束されるとともに、雄型継手6と雌型継手5との嵌合が強くなる方向に土圧が作用することから、鋼管矢板2A,2B同士の連結強度を高めることができる。
例えば、前記実施形態では、鋼管矢板構造物として、鋼管矢板基礎1を例示したが、これに限らず、土留め壁や護岸構造、地下構造物用連壁など任意の構造として鋼管矢板構造物を利用することが可能であり、その用途は特に限定されるものではない。
また前記実施形態明では、各鋼管矢板2A,2Bに雌型継手5または雄型継手6を各2箇所ずつに設けたものを例示したが、1本の鋼管矢板本管の外面に3箇所以上の継手が設けられていてもよい。その場合には、3つ目の継手が他の2つの継手と異なる形態のものでもよく、つまり、前記雌鋼管矢板2Aに対して3つ目の継手として雌型継手5および雄型継手6のいずれの継手が固定されていてもよいし、前記雄鋼管矢板2Bに対して3つ目の継手として雌型継手5および雄型継手6のいずれの継手が固定されていてもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
Claims (3)
- 隣り合う鋼管矢板の継手同士を嵌合させつつ地盤に貫入した複数の鋼管矢板を備えて構成される鋼管矢板構造物であって、
隣り合う一対の鋼管矢板のうち一方の鋼管矢板は、鋼管矢板本管と、この鋼管矢板本管の外面2箇所に設けられる一対の雌型継手とを有する雌鋼管矢板であり、前記雌型継手は、前記鋼管矢板本管の外面に脚部が固定されるとともに、当該脚部の先端から折れ曲がるアーム部同士が互いに近づく内向きに配置され、前記鋼管矢板本管の外面に同時に溶接された一対の雌L型鋼材を、前記鋼管矢板本管の外面2箇所に2回の溶接を行って構成され、前記雌鋼管矢板の外面2箇所における一対の前記雌L型鋼材の間の前記鋼管矢板本管の外面には、表面に凹凸を有する鋼板が、前記鋼管矢板本管の外面2箇所に同時に溶接されることで固定されており、
隣り合う他方の鋼管矢板は、鋼管矢板本管と、この鋼管矢板本管の外面2箇所に設けられる一対の雄型継手とを有する雄鋼管矢板であり、前記雄型継手は、前記鋼管矢板本管の外面に脚部が固定されるとともに、当該脚部の先端から折れ曲がるアーム部同士が互いに離れる外向きに配置され、前記鋼管矢板本管の外面に同時に溶接された一対の雄L型鋼材を、前記鋼管矢板本管の外面2箇所に2回の溶接を行って構成され、
前記雌鋼管矢板と前記雄鋼管矢板とが前記雌型継手と前記雄型継手との嵌合により連結されていることを特徴とする鋼管矢板構造物。 - 請求項1に記載の鋼管矢板構造物において、
前記雄L型鋼材の表面に凹凸が設けられていることを特徴とする鋼管矢板構造物。 - 請求項1または請求項2に記載の鋼管矢板構造物の施工方法であって、
少なくも一対の前記雌鋼管矢板を互いに所定間隔だけ離隔した位置に打設してから、これらの雌鋼管矢板の間において、当該雌鋼管矢板の前記雌型継手に前記雄鋼管矢板の雄型継手を嵌合させつつ当該雄鋼管矢板を打設することを特徴とする鋼管矢板構造物の施工方法。
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