JP5421405B2 - ダイナミックブレーキ制御手段を備えるモータ駆動装置 - Google Patents

ダイナミックブレーキ制御手段を備えるモータ駆動装置 Download PDF

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Description

本発明は、ダイナミックブレーキ制御手段を備えるモータ駆動装置に関する。
工作機械や産業機械の送り軸、産業用ロボット等に用いられる同期式モータを駆動するモータ駆動装置では、非常停止時やアラーム(警報)発生時などの異常時には、同期式モータのモータ巻線間を短絡させて発電制動をかけるダイナミックブレーキ(Dynamic brake)が広く用いられている。永久磁石を使用した同期式モータは、電源から電気的に切り離されても界磁磁束が存在し、回転状態では発電機として働くため、回転中のモータ巻線間を短絡することにより、発電制動をかけることができる。
ダイナミックブレーキにおいてできるだけ大きなブレーキトルクを発生させて制動時間と制動時間を短縮させるには、同期式モータの特性に合わせた適切な抵抗値を有するダイナミックブレーキ用抵抗器を介してモータ巻線の相間を短絡し、同期式モータの回転エネルギーをダイナミックブレーキ用抵抗器とモータ巻線の抵抗分で速やかにジュール熱に変換し消費させるのが好ましい。しかしながら、非常時にダイナミックブレーキ用抵抗器を介してモータ巻線を短絡するため、同期式モータを駆動するために設けられたインバータの半導体スイチッチング素子とは別個に、接続切替えのための手段を設ける必要がある。
図11は、機械式接点および抵抗器を用いてダイナミックブレーキをかける従来一般的なモータ駆動装置の回路構成図である。また、図12は、図11に示すモータ駆動装置においてインバータ内の全ての半導体スイッチング素子をオフしたときの等価回路図である。また、図13は、図11に示すモータ駆動装置において抵抗器および機械式接点を用いたダイナミックブレーキの動作原理を説明するフローチャートである。
図11に示すように、モータ駆動装置100により駆動される永久磁石を用いた同期式モータ2は、一般に、直流入力側Vdcから入力された直流電力を交流電力に変換するインバータ(逆変換器)11によって交流の駆動電力が供給される。インバータ11は、例えば、還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子(パワートランジスタ)が上アームAおよび下アームBそれぞれに設けられたフルブリッジインバータとして構成される。制御部110は、インバータ11に対し、半導体スイッチング素子をオンオフ制御するためのスイッチング指令を出力する。インバータ11内の半導体スイッチング素子はスイッチング指令に従いオンオフ制御され、入力された直流を同期式モータ2の駆動のための所望の周波数の交流に変換する。なお、ここでは特に図示しないが、一般にインバータ11の直流入力側Vdcには、商用の交流電源から入力された入力された交流を直流に変換して出力する順変換器が設けられる。
通常、工作機械や産業機械の送り軸、産業用ロボット等に用いられる同期式モータを駆動するモータ駆動装置には、例えば、過電流や過負荷などの異常から同期式モータおよびモータ駆動装置を保護するために、モータ駆動装置をアラーム停止させる安全装置が取り付けられている。この他、何らかの原因によりユーザ(作業者)が同期式モータを非常停止させるためにモータ駆動装置に非常停止ボタンが設けられている場合もある。
モータ駆動装置100は、このような非常停止時やアラーム(警報)発生時などの異常時に、制御部110において、安全装置からのアラーム通知信号または非常停止ボタンに連動した非常停止信号を受信し、インバータ11内の半導体スイッチング素子に対し、直流を交流に変換するためのスイッチング指令の出力を停止し、同期式モータ2にダイナミックブレーキをかけるためのスイッチング指令(「ダイナミックブレーキ指令」と称する。)を出力する。
機械式接点を用いたダイナミックブレーキの動作原理を図13に示すフローチャートを参照して説明すると次の通りである。まず、図13のステップS201において、モータ駆動装置100内の制御部110は、非常停止信号またはアラーム通知信号を受信する。すると、制御部110は、直流を交流に変換するためのスイッチング指令の出力を停止し、同期式モータ2にダイナミックブレーキをかけるためのスイッチング指令(ダイナミックブレーキ指令)を出力する。すなわち、制御部110は、同期式モータ2への電力供給を遮断するために、まずステップS202において、インバータ11内の全ての半導体スイッチング素子に対しオフにする指令を出力し、次いでステップS203において、短絡手段112に対し同期式モータ2のモータ巻線の相間を短絡する指令を出力する。
図11および図12に示すように、短絡手段112は、リレーや電磁接触器などの機械式接点を有する切替スイッチと、これに接続されたダイナミックブレーキ用抵抗器Ru,RvおよびRwとからなる。ステップS203において短絡手段112の切替スイッチの接点が閉路されると、同期式モータ2のモータ巻線の相間はダイナミックブレーキ用抵抗器Ru,RvおよびRwを介して短絡される。図13のステップS202においてインバータ11内の全ての半導体スイッチング素子をオフしてインバータ11を直流電源Vdcから切り離しても、永久磁石を用いた同期式モータ2には界磁磁束が存在するので、直流電源Vdcから切り離した後は、惰性により回転している同期式モータ2は発電機として働き、起電力Euv、EvwおよびEuwが発生する。このとき、同期式モータ2の回転エネルギーは、同期式モータ2のモータ巻線の相間に設けられたダイナミックブレーキ用抵抗器Ru,RvおよびRwで速やかにジュール熱に変換され(図13のステップS203)、その結果発電制動をかけることができる。
また、上述の短絡手段として、リレーや電磁接触器などのような機械式接点部品を有する切替スイッチの代わりに、パワートランジスタなどの半導体スイッチング素子(すなわちインバータ内の半導体スイッチング素子とは別個のもの)を用いるダイナミックブレーキもある。
またさらに、別の方法によるダイナミックブレーキとして、インバータ内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作により回転中の同期式モータのモータ巻線間を短絡することにより発電制動をかけるダイナミックブレーキがある。この方法は、ダイナミックブレーキ用抵抗器およびダイナミックブレーキ用抵抗器に接続先を切り替える切換手段の各機能を、図11〜図13を参照して説明したように機械式接点を別個のハードウェアとして設けることにより実現するのではなく、インバータ11が有する半導体スイッチング素子のスイッチングパターンを工夫することにより実現するものである。図14は、インバータ内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を用いてダイナミックブレーキをかける従来一般的なモータ駆動装置の回路構成図である。また、図15は、図14に示すモータ駆動装置においてインバータ内の下アームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンしたときの等価回路図である。また、図16は、モータ駆動装置における半導体スイッチング素子のスイッチング動作によるダイナミックブレーキの動作原理を説明するフローチャートである。
この方法では、正常時には、直流を交流に変換するためにインバータ11の半導体スイッチング素子をオンオフ制御するが、非常時にダイナミックブレーキをかけるときには、フルブリッジ式のインバータ11の上アームAまたは下アームBのうち、一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフにし、もう一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンにすることにより、制動をかける。
このダイナミックブレーキの動作原理を図16に示すフローチャートを参照してより詳細に説明すると次の通りである。まず、図16のステップS301において、モータ駆動装置100内の制御部110は、非常停止信号またはアラーム通知信号を受信する。すると、制御部110は、直流を交流に変換するためのスイッチング指令の出力を停止し、同期式モータ2にダイナミックブレーキをかけるためのスイッチング指令(ダイナミックブレーキ指令)を出力する。すなわち、制御部110は、ステップS302において、フルブリッジ式のインバータ11の上アームAまたは下アームBのうち、一方のアーム(図示の例では上アームA)に設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフにし、もう一方のアーム(図示の例では下アームB)に設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンにする。これにより、図14に示した同期式モータ2とインバータ11との回路構成要素の接続関係は、図15に示す接続関係のようになり、回転中の同期式モータ2のモータ巻線の相間が短絡されることになる。一方のアーム(図示の例では上アームA)に設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフにし、もう一方のアーム(図示の例では下アームB)に設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンすると、永久磁石を用いた同期式モータに存在する界磁磁束下において、惰性により回転している同期式モータ2は発電機として働き、起電力Euv、EvwおよびEwuが発生する。このとき、同期式モータ2のモータ巻線の相間は、インバータ11の下アームBの半導体スイッチング素子のオン動作(図16のステップS302)と還流ダイオードの動作とにより短絡状態を構成することになる。この結果、起電力Euv、EvwおよびEuwにより生じた電流がインバータ11の下アームの半導体スイッチング素子を介してモータ巻線の相間を流れるので、同期式モータ2の回転エネルギーはモータ巻線の抵抗分でジュール熱に変換され、発電制動をかけることができる。なお、図14〜図16を参照して説明した半導体スイッチング素子のスイッチング動作によりダイナミックブレーキは、直流を交流に変換するインバータ11の回路構成をそのままダイナミックブレーキに活用したものであるので、図11〜図13を参照して説明した機械式接点を用いたダイナミックブレーキの場合とは異なり、同期式モータ2のモータ巻線の相間の短絡を、別途設けられる抵抗器を介したものとしては実現することはできない。
図14〜図16を参照して説明した半導体スイッチング素子のスイッチング動作により回転中の同期式モータのモータ巻線間を短絡することにより発電制動をかけるダイナミックブレーキの方法は、同期式モータ2の回転エネルギーについてのジュール熱への変換をモータ巻線の抵抗分のみで行うので、モータ巻線の抵抗分のみならず抵抗器も用いて行う機械式接点を用いたダイナミックブレーキの場合に比べて制動時間が長くなってしまう。
そこで、ダイナミックブレーキ時の制動時間を短縮させるための方法として、最初はモータ駆動するために元来備わっているインバータの上アームまたは下アームのいずれか一方に設けられたパワートランジスタ(半導体スイッチング素子)をオンオフ制御することでダイナミックブレーキでモータに流れる電流を一定電流に制御してモータを減速させ、その後、接点を閉じてダイナミック用抵抗器を介してモータ巻線を短絡する技術が提案されている (例えば、特許文献1参照。)。
特許第3279102号公報
一般的に、リレーや電磁接触器など機械式接点を有する切替スイッチは、接点開閉時の接点間の印加電圧によって接点の開閉寿命が大きく左右される。機械式接点では、開放から閉路に転じる際は、2つの接点の表面が接触と開離とを小刻みに繰り返すチャタリング(あるいはバウンズ)と呼ばれる現象が一定時間発生した後、最終的に接点同士が安定的に接触して閉路状態に落ち着く。しかしながら、接点間に高電圧が印加されたままの状態で機械式接点間を閉路しようとすると、チャタリングの最中に接点間にアーク放電やグロー放電によるスパークが発生する。
図11〜図13を参照して説明した機械式接点を用いたダイナミックブレーキの場合、図13のステップS202においてインバータ11内の全ての半導体スイッチング素子をオフしてインバータ11を直流電源Vdcから切り離しても、永久磁石を用いた同期式モータ2には界磁磁束が存在するので、惰性により回転している同期式モータ2は発電機として働き、起電力Euv、EvwおよびEuwが発生する。起電力Euv、EvwおよびEuwは、ステップS202においてインバータ11内の全ての半導体スイッチング素子をオフしてからステップS203において短絡手段11により同期式モータ2のモータ巻線の相間が短絡されるまでの間、機械式接点間に印加され続けることになる。この起電力Euv、EvwおよびEuwは、一般的に同期式モータ2を駆動する際に同期式モータ2に印加する電圧レベルと同程度の大きさとなり、例えば産業用の同期式モータ2では400Vを超える電圧レベルに達する場合もある。このような高電圧が機械式接点間に印加されている状態においてステップS203の短絡手段11による機械式接点間の閉路が実行されると、上述のチャタリングが発生し、アーク放電やグロー放電によるスパークが発生する。このようなスパークは、機械式接点同士を溶着させたり、機械式接点を磨耗させたりするので、接点寿命が著しく低下し、接点の交換などメンテナンスに負担がかかるという問題があった。また、機械式接点の溶着や磨耗を回避するため、接点容量の大きな機械式接点部品を使用しなければならず、コストがかかり、小型化が難しいという問題もあった。
これに対し、上述の短絡手段として、リレーや電磁接触器などのような機械式接点部品の代わりに、パワートランジスタなどの半導体スイッチング素子(すなわちインバータ内の半導体スイッチング素子とは別個のもの)を用いれば、上述のような機械式接点の接点寿命に関する問題は解消する。しかしながらこの場合は、短絡手段として、上述のダイナミックブレーキ用の半導体スイッチング素子と、この半導体スイッチング素子を動作させるための絶縁された1次側電源と、この半導体スイッチング素子をオンオフ制御するための絶縁された制御回路とを設けなければならず、リレーや電磁接触器などのような機械式接点部品でダイナミックブレーキを実現する方法に比べて、コストがかかり、小型化が難しいという問題があった。
一方、図14〜図16を参照して説明したインバータ内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作により回転中の同期式モータのモータ巻線間を短絡することにより発電制動をかけるダイナミックブレーキの方法は、上述のような機械式接点を用いたダイナミックブレーキの場合に比べ、同期式モータのモータ巻線間を短絡するための機械式接点やこの機械式接点を駆動するための回路を設けなくてもよい点で有利であり、また、機械式接点のメンテナンスを考慮する必要がないという点で有利である。しかしながら、同期式モータの回転エネルギーについてのジュール熱への変換をモータ巻線の抵抗分のみで行うので、ダイナミックブレーキ用抵抗器も用いて行う機械式接点を用いたダイナミックブレーキの場合に比べて制動時間が長くなってしまうという問題があった。
また、特許文献1(特許第3279102号公報)に記載された技術によれば、最初はモータ駆動するために元来備わっているインバータの上アームまたは下アームのいずれか一方に設けられたパワートランジスタ(半導体スイッチング素子)をオンオフ制御することでダイナミックブレーキでモータに流れる電流を一定電流に制御してモータを減速させ、その後、接点を閉じてダイナミック用抵抗器を介してモータ巻線を短絡する。より具体的には、前半の処理として、パワートランジスタをオンオフ制御して電機子電流を一定にし、一定の傾きで同期式モータを減速制御し、後半の処理として、パワートランジスタの上記オンオフ制御により同期式モータの誘起電圧が減少して電機子電流が一定電流にならなくなった時点でパワートランジスタの上記オンオフ制御を停止し、ダイナミックブレーキ用リレーの接点を閉路してダイナミックブレーキ用抵抗器を介してモータ巻線の相間を短絡するというものである。
しかしながら、特許文献1に記載されている技術によれば、前半の処理から後半の処理への切換え時において、パワートランジスタがオフの状態でダイナミックブレーキ用リレーの接点が閉路された場合には、接点は誘起電圧が印加された状態で閉路されることになるので、スパークが発生し、接点同士が溶着したり、機械式接点が磨耗したりするので、接点寿命が著しく低下するという問題がある。また、特許文献1に記載された技術によれば、ダイナミックブレーキを掛ける際には電機子電流が一定になるようにパワートランジスタをオンオフ制御するので、このための回路として、電機子電流検出器、整流器、加算器、比較器、遅延器などで構成されるダイナミックブレーキ制御回路が別途必要であり、回路構成が複雑となり、コストがかかるという問題がある。
従って本発明の目的は、上記問題に鑑み、ダイナミックブレーキをかけるために同期式モータのモータ巻線間を短絡するのに用いられる機械式接点部品の寿命が長く、ダイナミックブレーキの制動時間が短い、構造が容易で低コストのモータ駆動装置を提供することにある。
上記目的を実現するために、本発明によれば、直流を交流に変換してこれを駆動電力として同期式モータを駆動するモータ駆動装置は、還流ダイオードが逆並列にそれぞれ接続された複数の半導体スイッチング素子が上アームおよび下アームそれぞれに設けられ、上アームおよび下アームに設けられた半導体スイッチング素子がオンオフ制御されることで直流を交流に変換する、フルブリッジ式のインバータと、指令に従い閉路もしくは開放する切替スイッチを同期式モータのモータ巻線の相間に有する短絡手段と、ダイナミックブレーキ開始指令の受信時に、上アームまたは下アームのうち一方のアームの全ての半導体スイッチング素子をオンするとともにもう一方のアームの全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御し、さらに、切替スイッチを閉路するよう短絡手段を制御することで、同期式モータに減速トルクを発生させるダイナミックブレーキ制御手段と、を備える。
上記ダイナミックブレーキ制御手段は、短絡手段が有する切替スイッチの閉路後、切替スイッチを閉路する前にオンした上記全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御する。
上記ダイナミックブレーキ制御手段は、ダイナミックブレーキ開始指令受信時に上記全ての半導体スイッチング素子をオンしてから切替スイッチの閉路後に上記全ての半導体スイッチング素子をオフするまでの時間を、任意に設定可能な設定手段をさらに有してもよい。
上記短絡手段は、切替スイッチに直列に接続された抵抗器をさらに有してもよい。
本発明によれば、ダイナミックブレーキをかけるために同期式モータのモータ巻線間を短絡するのに用いられる機械式接点部品の寿命が長く、ダイナミックブレーキの制動時間が短い、構造が容易で低コストのモータ駆動装置を実現することができる。
本発明によれば、同期式モータに駆動用の交流電力を供給するフルブリッジ式のインバータの上アームまたは下アームいずれか一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子(パワートランジスタ)をオンするとともにもう一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフした後、同期式モータのモータ巻線間を短絡するのに用いられる機械式接点部品の接点を閉じるが、接点間のチャタリングが収まるまでの上記のように一方のアーム内の全ての半導体スイッチング素子をオンしたままにしておき、その後当該オンした半導体スイッチング素子をオフするので、機械式接点を閉じる際のスパークの発生を防止して機械式接点の溶着や磨耗を防ぐことができる。その結果、機械式接点の寿命を大幅に伸ばすことができる。また、機械式接点にダイナミックブレーキ用抵抗器を直列に接続することで、ダイナミックブレーキの制動距離や制動時間をより短縮することができる。
また、本発明によれば、半導体スイッチング素子のオフオンと、短絡手段の切替スイッチの接点のオンを予め決められたタイミングで1回行うだけの極めてシンプルな動作でダイナミックブレーキを実現するので、ダイナミックブレーキ制御手段を備えるモータ駆動装置を低コストで容易に構成することができる。
また、本発明によれば、機械式接点部品の接点によるモータ巻線の相間の短絡後、モータ巻線間を短絡する前にオンした全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御するが、このダイナミックブレーキ開始指令受信時に全ての半導体スイッチング素子をオンしてからモータ巻線の相間の短絡後に全ての半導体スイッチング素子をオフするまでの時間を、任意に設定可能な設定手段をさらに有してもよく、これによれば、ダイナミックブレーキの制動距離や制動時間を任意に調節することができる。
また、本発明によれば、制動距離に特に制限を設ける必要がない場合には、ダイナミックブレーキ用抵抗器を用いないでモータ巻線の相間を短絡してもよく、この場合、より一層、小型で低コストのモータ駆動装置を実現することができる。
本発明の実施例によるモータ駆動装置の回路構成図である。 図1に示す本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキの動作を説明するフローチャートである。 図1に示す本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキの動作を説明するタイミングチャートである。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の各段階における各回路構成要素の動作を説明する回路構成図であって、図2のステップS102の処理段階における各回路構成要素の動作を示す図である。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の各段階における各回路構成要素の動作を説明する回路構成図であって、図2のステップS103の処理段階における各回路構成要素の動作を示す図である。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の各段階における各回路構成要素の動作を説明する回路構成図であって、図2のステップS105の処理段階における各回路構成要素の動作を示す図である。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の、図2のステップS102の処理段階における等価回路図である。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の、図2のステップS103の処理段階における等価回路図である。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の、図2のステップS105の処理段階における等価回路図である。 本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ制御手段の構成を示す図である。 機械式接点および抵抗器を用いてダイナミックブレーキをかける従来一般的なモータ駆動装置の回路構成図である。 図11に示すモータ駆動装置においてインバータ内の全ての半導体スイッチング素子をオフしたときの等価回路図である。 図11に示すモータ駆動装置において抵抗器および機械式接点を用いたダイナミックブレーキの動作原理を説明するフローチャートである。 インバータ内の半導体スイッチング素子のスイッチング動作を用いてダイナミックブレーキをかける従来一般的なモータ駆動装置の回路構成図である。 図14に示すモータ駆動装置においてインバータ内の下アームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンしたときの等価回路図である。 モータ駆動装置における半導体スイッチング素子のスイッチング動作によるダイナミックブレーキの動作原理を説明するフローチャートである。
まず、本発明の実施例によるモータ駆動装置の回路構成について説明すると次の通りである。図1は、本発明の実施例によるモータ駆動装置の回路構成図である。本発明の実施例による直流を交流に変換してこれを駆動電力として同期式モータ2を駆動するモータ駆動装置1は、還流ダイオードが逆並列に接続された半導体スイッチング素子(パワートランジスタ)が上アームAおよび下アームBそれぞれに設けられ、各半導体スイッチング素子がオンオフ制御されることで直流を交流に変換する、フルブリッジ式のインバータ11と、指令に従い開閉する切替スイッチを同期式モータ2のモータ巻線の相間に有する短絡手段12と、非常停止信号やアラーム通知信号などのダイナミックブレーキ開始指令の受信時に、上アームAまたは下アームBのうち一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンするとともにもう一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御し、当該制御後さらに切替スイッチにモータ巻線の相間を短絡するよう短絡手段12を制御することで、同期式モータ2に減速トルクを発生させるダイナミックブレーキ制御手段13と、を備える。ここで、ダイナミックブレーキ制御手段13は、短絡手段12が有する切替スイッチの閉路後、さらに所定の期間経過した後、切替スイッチを閉路する前にオンした全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御する。
短絡手段12内の切替スイッチの例としてはリレーや電磁接触器などがある。なお、停電時などで電源の供給が遮断された場合や、ダイナミックブレーキ制御手段13や半導体スイッチング素子(パワートランジスタ)駆動回路が故障した場合など、ダイナミックブレーキ制御手段13が半導体スイッチング素子をオンすることができない異常時を想定し、このような異常時でもでも最終的にダイナミックブレーキが動作するよう安全面に配慮して、短絡手段12の切替スイッチの接点については、リレーや電磁接触器のノーマルクローズ接点(b接点)を使用するのが好ましい。短絡手段12の切替スイッチにノーマルクローズ接点のものを用いると、異常時には上述のスパーク発生からの接点保護の効果を享受することはできないが、最終的にはノーマルクローズ接点が閉じるので少なくともダイナミックブレーキについては確実に効かせることができるので、同期式モータ2が用いられる工作機械や産業機械の送り軸、産業用ロボット等の機械の安全性を確保することはできる。
また、図示の例では、短絡手段12は、切替スイッチに直列に接続されたダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを有する。この変形例として、後述するように、これらダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを有さない短絡手段であってもよい。
また、詳細については後述するが、ダイナミックブレーキ制御手段13は、ダイナミックブレーキ開始指令受信時に全ての半導体スイッチング素子をオンしてから短絡手段12の切替スイッチの閉路後に全ての半導体スイッチング素子をオフするまでの時間を、任意に設定可能な設定手段をさらに有してもよく、これによれば、ダイナミックブレーキの制動時間を任意に調節することができる。
なお、ここでは特に図示しないが、インバータ11の直流入力側Vdcには、商用の交流電源から入力された入力された交流を直流に変換して出力する順変換器が設けられる。
PWMスイッチング制御手段14は、インバータ11に対し、入力された直流を同期式モータ2の駆動のための所望の周波数の交流に変換するために、半導体スイッチング素子をPWM制御するためのPWMスイッチング指令を出力する。
上述のPWMスイッチング制御手段14とおよびダイナミックブレーキ制御手段13は、モータ駆動装置1内の制御部10に設けられる。
続いて、本発明の実施例によるモータ駆動装置のダイナミックブレーキ動作について説明する。ここでは、非常停止ボタンに連動した非常停止信号を受信しこれをダイナミックブレーキ開始指令として同期式モータにダイナミックブレーキをかける例について説明する。なお、安全装置からのアラーム通知信号を受信した場合についても、同様の動作であり、以下に説明する非常停止信号をアラーム通知信号に置き換えて適用すればよい。
図2は、図1に示す本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキの動作を説明するフローチャートであり、図3は、図1に示す本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキの動作を説明するタイミングチャートである。また、図4〜図6は、本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の各段階における各回路構成要素の動作を説明する回路構成図であって、図4は、図2のステップS102の処理段階における各回路構成要素の動作を示し、図5は、図2のステップS103の処理段階における各回路構成要素の動作を示し、図6は、図2のステップS105の処理段階における各回路構成要素の動作を示す図である。また、図7は、本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の、図2のステップS102の処理段階における等価回路図である。図8は、本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の、図2のステップS103の処理段階における等価回路図である。図9は、本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ動作時の、図2のステップS105の処理段階における等価回路図である。また、図10は、本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキ制御手段の構成を示す図である。
図3に示すように、正常時においては、制御部10内のPWMスイッチング制御手段14は、インバータ11に対し、入力された直流を同期式モータ2の駆動のための所望の周波数の交流に変換するために、半導体スイッチング素子をオンオフ制御するためのスイッチング指令を出力する。この間、非常停止信号は入力されず、インバータ11の上アームAおよび下アームBの半導体スイッチング素子(パワートランジスタ)は、PWMスイッチング制御手段14から出力されたスイッチング指令に従って、PWMスイッチング動作を行う。これにより、インバータ11は、入力された直流を同期式モータ2の駆動のための所望の周波数の交流に変換する。
ステップS101において、モータ駆動装置1内の制御部10は、非常停止信号を受信すると、これをダイナミックブレーキ開始指令として認識して、直流を交流に変換するためのPWMスイッチング指令の出力を停止し、同期式モータ2にダイナミックブレーキをかけるためのダイナミックブレーキ指令を出力する。
ステップS102では、図3および図4に示すように、制御部10内のダイナミックブレーキ制御手段13は、インバータ11の上アームAまたは下アームBいずれか一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンするとともにもう一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御するダイナミックブレーキ指令をインバータ11へ出力する。図示の例では、インバータ11の下アームBに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンするとともに、上アームAに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御している。
ステップS102の処理段階における等価回路は図7のように示される。同期式モータ2のモータ巻線の相間は、全ての半導体スイッチング素子がオン状態にある下アームBと、この下アームB内の半導体スイッチング素子に逆並列に接続された還流ダイオードとの働きにより短絡状態となる。永久磁石を用いた同期式モータ2には界磁磁束が存在するので、惰性により回転している同期式モータ2は発電機として働き、起電力Euv、EvwおよびEuwが発生するが、この起電力Euv、EvwおよびEuwにより生じた電流がダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを流れて、同期式モータ2の回転エネルギーがモータ巻線の抵抗分でジュール熱に変換され、ダイナミックブレーキがかかる。
なお、ステップS102の処理の段階では、短絡手段12の切替スイッチの接点間に印加される電圧は、起電力Euv、EvwおよびEuwによって流れる電機子電流によって半導体スイッチング素子から接点までの配線で発生する電圧降下分と、下アームB内の半導体スイッチング素子のオン電圧と還流ダイオードの順方向電圧との差分となり、上述した全ての半導体スイッチング素子をオフにしてダイナミックブレーキをかける従来技術と比べて、短絡手段12の切替スイッチの接点間にかかる電圧レベルを大幅に小さくすることができている。
次いでステップS103では、図3および図5に示すように、制御部10内のダイナミックブレーキ制御手段13は、同期式2のモータ巻線の相間をダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介して短絡するよう短絡手段12を制御するダイナミックブレーキ指令を短絡手段12へ出力する。上述のように短絡手段12は、ダイナミックブレーキ制御手段13による指令により同期式モータ2のモータ巻線の相間を閉路もしくは開放する切替スイッチを有するものであり、ステップS103においてダイナミックブレーキ制御手段13から受信した、同期式2のモータ巻線の相間の短絡を指示するダイナミックブレーキ指令に従い、短絡手段12の切替スイッチの接点を閉路する。ステップS103の処理の段階では、インバータ11の下アームに設けられた全ての半導体スイッチング素子はオン状態のままであるので、上述したように短絡手段12の切替スイッチの接点間にかかる電圧レベルが大幅に小さい状態にある。本発明では、このような接点間の電圧状態の下で、ステップS103において短絡手段12の切替スイッチの接点を閉路することになる。
ステップS103の処理段階における等価回路は図8のように示される。ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwの抵抗値は、インバータ11の下アームB内の内部抵抗の抵抗値よりも大きいので、起電力Euv、EvwおよびEuwにより生じた電流はインバータ11の下アームB内を流れる。このように、ステップS103において短絡手段12の切替スイッチの接点が閉路されても、同期式モータ2のモータ巻線の相間はインバータ11の下アームBの半導体スイッチング素子で短絡された状態となっているため、ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介さずに同期式モータ2のモータ巻線の相間を短絡するダイナミックブレーキが引き続き維持されている状態にある。
上述のステップS103において短絡手段12の切替スイッチの接点を閉路すると、接点間にチャタリングが発生する(図3)。そこで、ステップS104において、ダイナミックブレーキ制御手段13は、チャタリングが終了するまで、所定の時間待機し、短絡手段12の切替スイッチの接点間に発生するスパークを防止する。なお、待機時間の詳細については次のステップS105の処理に関連して説明する。
ステップS103において短絡手段12によ同期式モータ2のモータ巻線の相間を短絡した後、さらに所定の期間時間が経過するまで待機してチャタリングが収まった後(ステップS104)、ステップS105では、図3および図6に示すように、制御部10内のダイナミックブレーキ制御手段13は、同期式モータ2のモータ巻線間を短絡する前にステップS102においてオンした全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御するダイナミックブレーキ指令を、インバータ11へ出力する。図示の例では、ステップS102においてインバータ11の下アームBに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオンしていたので、このステップS10では下アームBに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフにする。
ステップS105の処理段階における等価回路は図9のように示される。インバータ11の下アームBに設けられた全ての半導体スイッチング素子がオフになるので、同期式モータ2のモータ巻線の相間は、ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介して短絡された状態となる。永久磁石を用いた同期式モータ2には界磁磁束が存在するので、惰性により回転している同期式モータ2は発電機として働き、起電力Euv、EvwおよびEwuが発生するが、この起電力Euv、EvwおよびEwuにより生じた電流がダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを流れて、同期式モータ2の回転エネルギーがダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwでジュール熱に変換され、ダイナミックブレーキがかかる。このように、インバータ11の下アームBに設けられた全ての半導体スイッチング素子がオフになると、ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介して同期式モータ2のモータ巻線の相間を短絡するダイナミックブレーキが実現される。このダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介したダイナミックブレーキは、ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwの抵抗値を予め同期式モータ2の特性に合わせて最適値に設定しておくことで、同期式モータ2に対するダイナミックブレーキの制動距離や制動時間を短くすることができる。
なお、上述したように、ステップS105の処理段階に入る前に、ステップS104において、ダイナミックブレーキ制御手段13はチャタリングが終了するまで所定の時間待機した。短絡手段12の切替スイッチの接点の閉路後からチャタリングが完全に終了するまでの時間は、使用するリレーや電磁接触器などの切替スイッチの仕様によって定まるので、使用するリレーや電磁接触器の最大チャタリング継続時間を実験で予め計測しておき、ステップS103において切替スイッチの接点が閉じてからステップS105において半導体スイッチング素子をオフするまでの上記「待機時間」を、計測結果に基づき当該最大チャタリング継続時間以上に設定する。本発明では、切替スイッチの接点間のチャタリングが完全に収まって接点同士が完全に密着して安定な状態になってから、ステップS105において、同期式モータ2のモータ巻線間を短絡する前にステップS102においてオンしておいた全ての半導体スイッチング素子をオフするので、従来例のように接点間でスパークが発生することはない。
このように、本発明の実施例によるモータ駆動装置におけるダイナミックブレーキは、ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介さないダイナミックブレーキ(図2のステップS103およびステップS104)とダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介したダイナミックブレーキ(図2のステップS105)の2段階からなる。この2段階のダイナミックブレーキを切り替えるタイミングを任意に調整することにより、短絡手段12の切替スイッチの接点におけるスパーク発生を防止して接点を保護しながら、同期式モータ2を所望の制動距離や制動時間でダイナミックブレーキをかけることができる。この2段階のダイナミックブレーキを切り替えるタイミングは、ダイナミックブレーキ制御手段13に、ダイナミックブレーキ開始指令受信時に全ての半導体スイッチング素子をオンしてから切替手段12の切替スイッチの閉路後に全ての半導体スイッチング素子をオフするまでの時間を、任意に設定可能な設定手段をさらに設ければよいが、その詳細については後述する。例えば、同期式モータ2が用いられる工作機械や産業機械の送り軸、産業用ロボット等の機械の用途によっては、減速トルクが大き過ぎると、機械側にダメージを与えてしまうような場合があり、本発明は、このような機械に対して、制動距離や制動時間を調整可能なダイナミックブレーキを実現することができるので有用である。
なお、上述の本発明の実施例では、短絡手段12の切替スイッチの接点を閉路したときにダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを介してモータ巻線の相間を短絡する構成としたが、この変形例として、短絡手段12内にダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを設けず、短絡手段12の切替スイッチの接点を閉路したときにモータ巻線の相間を直接短絡する構成としてもよい。例えば、同期式モータ2が用いられる工作機械や産業機械の送り軸、産業用ロボット等の機械の用途によっては、同期式モータ2の制動距離や制動時間に対する要求が厳しくない場合もあり、そのような機械に使用されるモータ駆動装置の場合には、ダイナミックブレーキ用抵抗器Ru、RvおよびRwを使用せずにモータ巻線を直接短絡する回路とした方が小型化やコストの点で有利である。
図3を参照して説明したように、ダイナミックブレーキ制御手段13の動作は、非常停止信号やアラーム通知信号の受信時に予め一方のアームの半導体スイッチング素子をオンしてから、短絡手段12の切替スイッチの接点を閉路した後に上述のオンした半導体スイッチング素子をオフするだけの動作であり、半導体スイッチング素子のオフオンと、短絡手段12の切替スイッチの接点のオンを予め決められたタイミングで1回行うだけの極めてシンプルな動作である。したがって、ダイナミックブレーキ制御手段13をハードウェアで実現する場合、図10に示すように、2つのディレータイマを含む極めてシンプルな構成で容易に実現が可能である。ダイナミックブレーキ制御手段13をマイコンを使用して実現する場合には、ソフトウェアでダイナミックブレーキ制御手段13の動作を設定できるので、ハードウェアの追加なしに既存のモータ駆動装置に対して本発明適用することができる。
上述したように、ダイナミックブレーキ制御手段13は、ダイナミックブレーキ開始指令受信時に全ての半導体スイッチング素子をオンしてから同期式モータ2のモータ巻線の相間の短絡後に全ての半導体スイッチング素子をオフするまでの時間を、任意に設定可能な設定手段をさらに有してもよい。ここで、図10を参照しながらこの設定手段について説明する。図10に示すディレータイマDL1は、非常停止信号を受信して一方のアームの半導体スイッチング素子をオンしてから、このオンした半導体スイッチング素子を次にオフするまでの時間を調整するタイマである。このタイマ時間は、外部から入力されるディレー時間設定信号により任意に設定可能であり、この設定により同期式モータ2の制動距離や制動時間を任意に調整することが可能である。ただし、設定可能なタイマ時間は、使用する短絡手段12(例えばリレーや電磁接触器など)の最大チャタリング継続時間以上に少なくともなるように予め調整しておくべきであり、これにより設定時間が最短である場合も接点が確実に保護できる。
また、図10に示すディレータイマDL2は、非常停止信号を受信して一方のアームの半導体スイッチング素子をオンしてから、機械式接点部品である短絡手段12の切替スイッチをオフするまでの時間を調整するタイマである。一般的に、半導体スイッチング素子であるパワートランジスタがオンするまでの遅延時間は数μ秒程度であるのに対して、機械式接点部品である短絡手段12の切替スイッチの接点が閉じるのに要する時間は数ミリ秒であり、半導体スイッチング素子のスイッチング動作の遅延時間に比べて大きい。したがって、非常停止信号を受信して一方のアームの半導体スイッチング素子がオン状態になった後に、短絡手段12の切替スイッチの接点が閉路するような動作を実現することができるのであれば、ディレータイマDL2を省略して、非常停止信号の受信時に短絡手段12の切替スイッチの接点を閉じる信号を出力するようにしてもよい。切替スイッチの接点を閉じる信号を非常停止信号の受信のタイミングで出力しても、リレーなどの機械式接点部品は動作の遅れが大きく、結果的に接点が閉じるタイミングは遅れるので、ディレータイマDL2を省略することができる。
次に、本発明と特許文献1(特許第3279102号公報)に記載された技術とを比較する。本発明によれば、フルブリッジ式のインバータの上アームまたは下アームいずれか一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子(パワートランジスタ)をオンするとともにもう一方のアームに設けられた全ての半導体スイッチング素子をオフした後、同期式モータのモータ巻線間を短絡するのに用いられる機械式接点部品の接点を閉じるが、接点間のチャタリングが収まるまでの一定の時間は、上記のように一方のアーム内の全ての半導体スイッチング素子をオンしたままにしておき、その後当該オンした半導体スイッチング素子をオフするので、機械式接点を閉じる際のスパークの発生を防止して機械式接点の溶着や磨耗を防ぐことができ、その結果、機械式接点の寿命を大幅に伸ばすことができる。しかしながら、特許文献1に記載されている技術によれば、パワートランジスタがオフの状態でダイナミックブレーキ用リレーの接点が閉路される可能性があり、この場合、接点は誘起電圧が印加された状態で閉路されることになるので、スパークが発生し、接点同士が溶着したり、機械式接点が磨耗したりするので、接点寿命が著しく低下するという欠点がある。
また、本発明によれば、非常停止信号やアラーム通知信号の受信時に予め一方のアームの半導体スイッチング素子をオンしてから、短絡手段12の切替スイッチの接点を閉じた後に上述のオンした半導体スイッチング素子をオフするだけの動作であり、すなわち半導体スイッチング素子のオフオンと短絡手段12の切替スイッチの接点のオンとを予め決められたタイミングで1回行うだけの極めてシンプルな動作であるので、ダイナミックブレーキ制御手段13を低コストで容易に構成することができる。しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、ダイナミックブレーキを掛ける際には電機子電流が一定になるようにパワートランジスタをオンオフ制御するので、このための回路として、電機子電流検出器、整流器、加算器、比較器、遅延器などで構成されるダイナミックブレーキ制御回路が別途必要であり、回路構成が複雑となり、コストがかかるという欠点がある。
本発明は、工作機械や産業機械の送り軸、産業用ロボット等に用いられる同期式モータを駆動するモータ駆動装置のダイナミックブレーキに適用することができる。
1 モータ駆動装置
2 同期式モータ
10 制御部
11 インバータ
12 短絡手段
A 上アーム
B 下アーム
Ru、Rv、Rw ダイナミックブレーキ用抵抗器

Claims (3)

  1. 直流を交流に変換してこれを駆動電力として同期式モータを駆動するモータ駆動装置であって、
    還流ダイオードが逆並列にそれぞれ接続された複数の半導体スイッチング素子が上アームおよび下アームそれぞれに設けられ、前記上アームおよび前記下アームに設けられた前記半導体スイッチング素子がオンオフ制御されることで直流を交流に変換する、フルブリッジ式のインバータと、
    指令に従い閉路もしくは開放する切替スイッチを同期式モータのモータ巻線の相間に有する短絡手段と、
    ダイナミックブレーキ開始指令の受信時に、前記上アームまたは前記下アームのうち一方のアームの全ての前記半導体スイッチング素子をオンするとともにもう一方のアームの全ての前記半導体スイッチング素子をオフするよう制御し、さらに、前記切替スイッチを閉路するよう前記短絡手段を制御し、前記切替スイッチの閉路後、前記切替スイッチの接点間のチャタリングが終了するまで所定の時間待機してから、前記切替スイッチを閉路する前にオンした前記全ての半導体スイッチング素子をオフするよう制御することで、同期式モータに減速トルクを発生させるダイナミックブレーキ制御手段と、
    を備えることを特徴とするモータ駆動装置。
  2. 前記ダイナミックブレーキ制御手段は、ダイナミックブレーキ開始指令受信時に前記全ての半導体スイッチング素子をオンしてから前記切替スイッチの閉路後に前記全ての半導体スイッチング素子をオフするまでの時間を、任意に設定可能な設定手段をさらに有する請求項に記載のモータ駆動装置。
  3. 前記短絡手段は、前記切替スイッチに直列に接続された抵抗器をさらに有する請求項1または2に記載のモータ駆動装置。
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