JP5416531B2 - 填料の前処理方法および前処理された填料を含有する紙 - Google Patents
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本発明では、填料にセルロースナノファイバーを混合する。セルロースナノファイバーとは、セルロース系原料を解繊することにより得られる幅2〜5nm、長さ1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルである。本発明では、特に、濃度2%(w/v)(すなわち、100mlの分散液中に2gのセルロースナノファイバー(乾燥質量)が含まれる)におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであるセルロースナノファイバーの水分散液を用いることが好ましい。こうしたセルロースナノファイバーは、適度な粘調性を有しており、所望の濃度に調整することができる。セルロースナノファイバーの2%(w/v)水分散液におけるB型粘度は、比較的低い方が取り扱いが容易であるため好ましく、具体的には、500〜2000mPa・s程度が好ましく、500〜1500mPa・s程度がより好ましく、500〜1000mPa・s程度がさらに好ましい。
式1で表される化合物のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、TEMPOと称する)、及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、4−ヒドロキシTEMPOと称する)を発生する化合物が好ましい。また、TEMPO又は4−ヒドロキシTEMPOから得られる誘導体も好ましく用いることができ、特に、4−ヒドロキシTEMPOの誘導体が最も好ましく用いることができる。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を、炭素数4以下の直鎖或いは分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化して得られる誘導体か、あるいは、カルボン酸又はスルホン酸でエステル化して得られる誘導体が好ましい。4−ヒドロキシTEMPOをエーテル化する際には、炭素数が4以下のアルコールを用いれば、アルコール中の飽和、不飽和結合の有無に関わらず、得られる誘導体が水溶性となり、酸化触媒として良好に機能する4−ヒドロキシTEMPO誘導体を得ることができる。
さらに、下記式5で表されるN−オキシル化合物のラジカル、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルも、短時間で、均一なセルロースナノファイバーを製造できるため、特に好ましい。
セルロース系原料を酸化する際に用いるTEMPOや4−ヒドロキシルTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物の量は、セルロース系原料をナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.05〜5mmol程度である。
カルボキシル基量〔mmol/gパルプ〕= a〔ml〕× 0.05/酸化パルプ質量〔g〕
また、1/1000規定のpDADMACを用いたコロイド滴定にて滴定可能なアニオン電荷密度として、セルロースナノファイバーの絶乾質量あたり0.1meq./g以上であり、0.5meq./g以上であることが好ましい。
本発明の填料としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、クレー、焼成カオリン、デラミカオリン、ホワイトカーボン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、炭酸カルシウム/シリカ複合体、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化亜鉛などの無機填料や、尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂及び微小中空微粒子等の有機填料、古紙を再生する工程や紙を製造する工程で発生したスラッジを焼却して得られる再生填料および再生填料の表面を炭酸カルシウムやシリカ、水酸化アルミニウムなどで被覆した填料等の公知の填料を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、カルシウムを含む無機粒子や有機無機複合体が好ましい。
本発明では、填料の水分散液に、セルロースナノファイバーを添加して混合することにより、填料を前処理する。なお、本発明における「前処理」とは、填料を紙料に添加する前に行なう処理のことをいう。
本発明のセルロースナノファイバーで前処理した填料を紙に添加することにより、紙力が良好で灰分が均一に分布した紙を得ることができる。紙の製造に用いることができるパルプ成分としては、化学パルプ(針葉樹の晒クラフトパルプ(NBKP)または未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹の晒クラフトパルプ(LBKP)または未晒クラフトパルプ(LUKP)等)、機械パルプ(グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等)、脱墨パルプ(DIP)等の再生パルプを単独または任意の割合で混合して使用してもよい。特に本発明では、炭酸カルシウムなどの含カルシウム無機物質を多く含む雑誌古紙を原料の一部とした再生パルプを配合している場合に好適である。
本発明のセルロースナノファイバーで前処理した填料を含有する紙には、表面処理剤を塗工してもよい。表面処理剤としては、表面強度やサイズ性の向上の観点から、水溶性高分子を主成分とする表面処理剤が望ましい。水溶性高分子としては、澱粉、酸化澱粉、加工澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の表面処理剤として通常使用されるものを単独で、あるいは混合して使用することができる。また、表面処理剤として、水溶性高分子の他に、耐水化及び表面強度の向上を目的とする紙力増強剤や、サイズ性付与を目的とする外添サイズ剤を用いてもよい。水溶性高分子を用いる場合には、水溶性高分子とセルロースナノファイバーとを混合して塗工することもできる。セルロースナノファイバーは、単独で塗工することもできる。この場合の片面当たりの塗布量としては、セルロースナノファイバーの固形分質量として、0.01〜10g/m2が好ましい。本発明ではまた、表面処理剤を塗工または塗工しない紙の上に、炭酸カルシウムやカオリン、二酸化チタンなどの顔料およびバインダーを含有する塗料を塗工しても良い。
本発明のセルロースナノファイバーで前処理した填料を含有する紙の種類、坪量等には制限はなく、上質紙、印刷用紙、新聞用紙、情報用紙、包装用紙、板紙、各種原紙など様々な用途に使用することができ、特に、再生パルプ由来の灰分や炭酸カルシウムなどの填料の歩留を向上することができる。
本発明のセルロースナノファイバーで前処理した填料が、填料の歩留りの向上と良好な紙力の保持を両立できる理由は明白ではないが、例えば以下のように考えられる。
<セルロースナノファイバーの製造例1>
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径24μm)15g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50mlを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpm、15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で5回処理したところ、透明なゲル状分散液が得られた。
粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより120MPaの圧力で5回処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより100MPaの圧力で5回処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
湿式微粒化処理において、超高圧ホモジナイザーの代わりに、回転刃ミキサー(周速37m/s、日本精機製作所社、処理時間30分)を用いた以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
TEMPOの代わりに、4−メトキシTEMPOを用いた以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
粉末セルロースの代わりに、漂白済みの未叩解サルファイトパルプ(日本製紙ケミカル社製)を用い、140MPaの超高圧ホモジナイザーで40回処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
粉末セルロースの代わりに、漂白済みの未叩解サルファイトパルプ(日本製紙ケミカル社製)を用い、回転刃ミキサー(周速37m/s、日本精機製作所社)で5時間処理した以外は、製造例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
次に、上記の方法により得られたセルロースナノファイバーを用いて填料を前処理し、紙料に添加して抄紙した例を示す。各例における評価測定は下記の方法で行い、結果を表2〜7に示した。なお、結果は、測定値の平均値で表す。また、特にことわらない限り、部および%は質量部および質量%を示す。
[評価測定方法]
・灰分:JIS P 8251:2003に従った。
・裂断長:JIS P 8113:1998に従った。
・曲げこわさ:ISO−2493に準じて、L&W Bending Tester Code 160(Lorentzen & Wettre社製)を用いて曲げ角度が15°の曲げこわさを測定した。
(填料の前処理)
軽質炭酸カルシウム(填料;ロゼッタ型、平均粒子径3.5μm、固形分濃度20.0%の水分散液)に対し、製造例1のセルロースナノファイバーを固形質量比で0.1となるように添加し(CNF:填料=1:10、CNFはセルロールナノファイバーを表す。)、スリーワン・モーターにて300rpmの速度で混合して、前処理した軽質炭酸カルシウム分散液を得た。
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、CSF(カナダ標準フリーネス)410ml)のスラリーに、スリーワン・モーターにて500rpmの速度で攪拌しながら、パルプ固形分質量に基づいて、上記の前処理した軽質炭酸カルシウムを10.0質量%添加し(紙中灰分9質量%に相当する)、さらに硫酸バンドを1.0固形分質量%、歩留向上剤(商品名:リアライザーR300、ソマール社製)を100ppmとなるように添加・混合し紙料を調製した。次に、JIS P 8209に基づいて手抄シート5枚を作製した。
軽質炭酸カルシウムに対し、製造例1のセルロースナノファイバーを固形質量比で0.07となるように(CNF:填料=1:15)混合した以外は、実施例1と同様にした。
軽質炭酸カルシウムに対し、製造例1のセルロースナノファイバーを固形質量比で0.03となるように(CNF:填料=1:30)混合した以外は、実施例1と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムに代えて、未処理の(セルロースナノファイバーと混合してない)軽質炭酸カルシウムを用いた以外は、実施例1と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムを15.0質量%添加した(紙中灰分12質量%に相当する)以外は、実施例1と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムを15.0質量%添加した(紙中灰分12質量%に相当する)以外は、実施例2と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムを15.0質量%添加した(紙中灰分12質量%に相当する)以外は、実施例3と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムに代えて、未処理の軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例4と同様にした。
紙力剤(商品名:ハーマイドEX288、ハリマ化成社製)を0.1質量%添加した以外は、比較例2と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムを20.0質量%添加した(紙中灰分15質量%に相当する)以外は、実施例1と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムを20.0質量%添加した(紙中灰分15質量%に相当する)以外は、実施例2と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムを20.0質量%添加した(紙中灰分15質量%に相当する)以外は、実施例3と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウムに代えて、未処理の軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例7と同様にした。
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、CSF(カナダ標準フリーネス)410ml)のスラリーに、スリーワン・モーターにて500rpmの速度で攪拌しながら、パルプ固形分質量に基づいて、実施例2の前処理した軽質炭酸カルシウム10.0質量%及び未処理の軽質炭酸カルシウム5.0質量%(填料合計で紙中灰分12質量%に相当する、前処理填料:未処理填量(固形分質量比)=2:1)を添加し、さらに硫酸バンドを1.0固形分質量%、歩留向上剤(商品名:リアライザーR300、ソマール社製)を100ppmとなるように添加・混合し紙料を調製した。次に、JIS P 8209に基づいて手抄シート5枚を作製した。
前処理した軽質炭酸カルシウム:未処理の軽質炭酸カルシウム(固形分質量比)を1:2とした以外は、実施例10と同様にした。
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP、CSF(カナダ標準フリーネス)410ml)のスラリーに、スリーワン・モーターにて500rpmの速度で攪拌しながら、パルプ固形分質量に基づいて、実施例2の前処理した軽質炭酸カルシウム7.5質量%及び未処理の軽質炭酸カルシウム7.5質量%(填料合計で紙中灰分12質量%に相当する、前処理填料:未処理填料(固形分質量比)=1:1)を添加し、さらに製造例1のセルロースナノファイバーを0.5固形分質量%、硫酸バンドを1.0固形分質量%、歩留向上剤(商品名:リアライザーR300、ソマール社製)を100ppmとなるように添加・混合し紙料を調製した。次に、JIS P 8209に基づいて手抄シート5枚を作製した。
前処理した填料に代えて、未処理の軽質炭酸カルシウムを使用し、かつ、製造例1のセルロースナノファイバーの添加量を1.0固形分質量%とした以外は、実施例12と同様にした。
新聞古紙と雑誌古紙を原料とする再生パルプ(DIP、CSF(カナダ標準フリーネス)210ml)のスラリーに、スリーワン・モーターにて500rpmの速度で攪拌しながら、パルプ固形分質量に基づいて、実施例2の前処理した軽質炭酸カルシウムを15.0質量%添加し(紙中灰分13質量%に相当する)、さらに硫酸バンドを1.0固形分質量%、歩留向上剤(商品名:リアライザーR300、ソマール社製)を100ppmとなるように添加・混合し紙料を調製した。次に、JIS P 8209に基づいて手抄シート5枚を作製した。
前処理した軽質炭酸カルシウム15.0質量%に代えて、前処理した軽質炭酸カルシウム10.0質量%及び未処理の軽質炭酸カルシウム5.0質量%(前処理填料:未処理填料(固形分質量比)=2:1に相当する)を使用した以外は、実施例13と同様にした。
前処理した軽質炭酸カルシウム:未処理の軽質炭酸カルシウム(固形分質量比)を1:2とした以外は、実施例14と同様にした。
前処理した填料に代えて、未処理の軽質炭酸カルシウムを使用した以外は、実施例13と同様にした。
Claims (9)
- 抄紙用填料にセルロースナノファイバーを混合することにより該填料を前処理する、填料の前処理方法であって、
前記セルロースナノファイバーのカルボキシル基量が0.5mmol/g以上である、前記方法。 - セルロースナノファイバーが、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜7000mPa・sである請求項1に記載の前処理方法。
- セルロースナノファイバーの填料に対する添加率が、填料固形分に対し、セルロースナノファイバー固形分として0.01〜100質量部である請求項1または2に記載の前処理方法。
- 前記填料として炭酸カルシウムを含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の前処理方法。
- 酸を添加することをさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の前処理方法。
- 酸が硫酸バンドである請求項5に記載の前処理方法。
- 前記セルロースナノファイバーが、
(1)N−オキシル化合物、及び
(2)臭化物、ヨウ化物及びこれらの混合物からなる群から選択される化合物
の存在下で、セルロース系原料を酸化剤を用いて酸化して酸化されたセルロースを調製する工程、及び
該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理してナノファイバー化させる工程
を含む方法により得られる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の前処理方法。 - 請求項1〜7のいずれか1項に記載の前処理方法により処理された填料を紙料に添加して抄紙することを含む、紙の製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載の前処理方法により処理された填料を含有する紙料を抄紙することにより得られる紙。
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